【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゼオライ
トの製造方法は、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物と、鉄化合物と、を少なくとも含む主原料をアルカリ溶液に分散させてスラリーを調整する調整工程と、前記スラリーを
加熱する加熱処理工程と、を実行することによって、前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化されたゼオライ
トを製造するゼオライ
トの製造方法であって、前記加熱処理工程では、前記スラリーを
鉄製の容器本体と、鉄製の蓋と、を具備する容器に収容したうえで、前記容器に永久磁石を張り付けることによって、前記スラリーを前記永久磁
石によって生じさせた磁場に晒しながら
加熱することを特徴とする(以下、本発明製造方法と称する。)。
【0009】
前記「ケイ素化合物」とは、ケイ素、及び分子構造にケイ素を含む化合物を意味する。前記ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸金属塩、ハロゲン化ケイ素、シラン、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。
【0010】
又、前記「アルミニウム化合物」とは、アルミニウム、及び分子構造にアルミニウムを含む化合物を意味する。前記アルミニウム化合物としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、水素化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。なお、前記ケイ素化合物に対する前記アルミニウム化合物の配合割合としては、最終的に製造されるゼオライ
ト中のアルミウム分(Al分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し、20〜40%(モル)となるように、前記調整工程において、前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物との配合割合を調整することが好ましい。
【0011】
更に、前記「鉄化合物」とは、鉄、及び分子構造に鉄を含む化合物を意味する。前記鉄化合物としては、例えば、鉄、FeCl
2、FeCl
3などの塩化鉄、FeO、Fe
3O
4などの酸化鉄、FeSO
4、Fe
2(SO
4)
3などの硫酸鉄、硫化鉄等を挙げることができる。前記鉄化合物の配合割合としては、特に限定されるものではないが、最終的に製造されるゼオライ
ト中の鉄分(Fe分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し3〜20%(モル)となるように、前記調整工程において前記鉄化合物を配合することが好ましい。
【0012】
一方、前記主原料と混合されてスラリーを形成する前記「アルカリ溶液」とは、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオン(M
+)や、マグネシウムイオンやカルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等のカチオン(M
2+)を含む塩基性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水ガラス等)を意味する。通常、前記アルカリ溶液は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を水に溶解させることによって調整される。前記主原料に対する前記アルカリ溶液の混合割合としては、最終的に製造されるゼオライ
ト中のカチオン分(M分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し、1〜10%(モル)となるように、前記調整工程において、前記主原料と前記アルカリ溶液とを混合することが好ましい。
【0013】
前記調整工程においてスラリーを調整した後、本発明製造方法においては、前記スラリーを
加熱する加熱処理工程を実行する。前記加熱処理工程を実行することによって、前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化されたゼオライ
トが製造される。
【0014】
本発明製造方法において、前記「アルミノケイ酸塩」とは、一般式「xM
2O・yAl
2O
3・zSiO
2・nH
2O」にて表される化合物を意味する。なお、本発明製造方法において、「前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化された」状態とは、前記主原料中のケイ素化合物及びアルミニウム化合物の少なくとも一部がアルミノケイ酸塩として結晶化されている状態を意味する。
【0015】
そして、本発明製造方法においては、前記加熱処理工程の実行の際、前記スラリーを、永久磁
石によって生じさせた磁場に晒しながら
加熱する点に最も大きな特徴を有する。
【0016】
前記加熱処理工程の実行の際、前記スラリーを、磁場に晒しながら
加熱することによって製造されたゼオライ
トは、従来法によって製造された人工ゼオライトと比較して、被吸着成分、特に、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素などの気体成分に対する吸着能に
優れることが確認されている。
【0017】
前記「永久磁石」とは、外部から磁場や電流の供給を受けることなく磁石としての性質を比較的長期にわたって保持し続ける物体のことを意味する。前記永久磁石としては、例えば、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、及びネオジウム磁石等を挙げることができる。本発明製造方法においては、耐熱性に優れるサマリウムコバルト磁石を用いることが好ましい。
【0018】
一方、前記「電磁石」とは、通電することによって一時的に磁力を発生させる機械要素を意味する。前記電磁石としては、磁性材料の芯のまわりにコイルが巻き回されてなり、前記コイルに通電されることによって磁力を発生させるものが一般的である。
【0019】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料に加えて、ハロゲン化アルカリ金属塩、又はハロゲン化アルカリ土類金属塩の少なくとも一方を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整することが好ましい態様となる。
【0020】
前記調整工程において、ハロゲン化アルカリ金属塩やハロゲン化アルカリ土類金属塩などの電解質をスラリーに混合すれば、最終的に製造されるゼオライ
トが発現する分解能がより向上することが確認されている。
【0021】
前記「ハロゲン化アルカリ金属塩」の例としては、ナトリウムやカリウム等の塩化物や臭化物等を挙げることができる。又、前記「ハロゲン化アルカリ土類金属塩」の例としては、カルシウムやマグネシウム等の塩化物や臭化物等を挙げることができる。
【0022】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料に加えて、銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、又は銀化合物から選ばれた少なくとも一種以上を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整することが好ましい態様となる。
【0023】
前記調整工程において、銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、又は銀化合物から選ばれた少なくとも一種以上をスラリーに混合すれば、最終的に製造されるゼオライ
トが発現する分解能、特に二酸化炭素に対する分解能がより向上することが確認されている。銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、及び銀化合物とは、銅、コバルト、金、白金、及び銀の他、分子構造に銅、コバルト、金、白金、又は銀を含む金属化合物を意味する。銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、及び銀化合物の例としては、銅、コバルト、金、白金、銀及びこれらの酸化物、水酸化物、硫酸化物、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0024】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料の一部又は全部として、石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂から選ばれた少なくとも一種以上を用いることが好ましい態様となる。
【0025】
石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂は、いずれもケイ素化合物を豊富に含む廃材であり、安価で入手が容易なことと、廃棄物利用の観点において、その使用に利益がある。なお、「前記主原料の一部又は全部として」との文言の意味するところは、主原料として使用される石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂において、アルミニウム化合物や鉄化合物の含有量が少ない場合にあっては、アルミニウム化合物や鉄化合物を別途添加しても良いことを意味する。
【0026】
本発明製造方法においては、前記
加熱処理工程では、前記スラリーを鉄製の容器に収容した状態にて
加熱することが好ましい態様となる。
【0027】
鉄製の容器は、前記スラリーを鉄製の容器に収容した状態にて
加熱すれば、前記永久磁石や前記電磁石によって生じた磁場が妨げられない。又、容器中のスラリーを均一な磁場に晒すことが可能となる。更に、前記容器を鉄製の容器本体(器側)と鉄製の蓋とによって構成すれば、前記磁場によって、前記容器本体の開口部を前記蓋によって確実に閉じることができる。
【0028】
本発明製造方法においては、前記
加熱処理工程では、前記スラリーを20mT以上の磁束密度を有する磁場に晒すことが好ましい態様となる。
【0029】
本発明製造方法においては、前記
加熱処理工程では、前記スラリーを200〜500℃
の温度にて
加熱することが好ましい態様となる。
【0030】
本発明のゼオライ
トは、前記本発明製造方法によって製造されたことを特徴とする。