特許第5852912号(P5852912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852912
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/02 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   C01B39/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-70881(P2012-70881)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203557(P2013-203557A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】504399853
【氏名又は名称】廣田 武次
(73)【特許権者】
【識別番号】512078731
【氏名又は名称】廣田 政士
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【弁理士】
【氏名又は名称】澤 喜代治
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】廣田 武次
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−247640(JP,A)
【文献】 特開2006−151734(JP,A)
【文献】 特開平04−349115(JP,A)
【文献】 特開2001−089133(JP,A)
【文献】 特開平03−040914(JP,A)
【文献】 特表2005−538836(JP,A)
【文献】 特開2008−094660(JP,A)
【文献】 特開2004−203731(JP,A)
【文献】 特開2005−231906(JP,A)
【文献】 株式会社セイワ技研 スーパーマグネチックスターラー SD−15型 カタログ,URL <http://www.seiwa-g.com/SD15-catalog.pdf>[検索日:2015年8月4日]
【文献】 化学大辞典4,1979年11月10日,縮刷版第23刷,796〜797ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物と、アルミニウム化合物と、鉄化合物と、を少なくとも含む主原料をアルカリ溶液に分散させてスラリーを調整する調整工程と、
前記スラリーを加熱する加熱処理工程と、
を実行することによって、前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化されたゼオライトを製造するゼオライトの製造方法であって、
前記加熱処理工程では、前記スラリーを鉄製の容器本体と、鉄製の蓋と、を具備する容器に収容したうえで、前記容器に永久磁石を張り付けることによって、前記スラリーを前記永久磁石によって生じさせた磁場に晒しながら加熱することを特徴とするゼオライトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゼオライトの製造方法において、
前記調整工程では、前記主原料に加えて、ハロゲン化アルカリ金属塩、又はハロゲン化アルカリ土類金属塩の少なくとも一方を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整するゼオライトの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゼオライトの製造方法において、
前記調整工程では、前記主原料に加えて、銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、又は銀化合物から選ばれた少なくとも一種以上を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整するゼオライトの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法において、
前記調整工程では、前記主原料の一部又は全部として、石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂から選ばれた少なくとも一種以上を用いるゼオライトの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法において、
前記加熱処理工程では、前記スラリーを20mT以上の磁束密度を有する磁場に晒すゼオライトの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法において、
前記加熱処理工程では、前記スラリーを200〜500℃の温度にて加熱するゼオライトの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゼオライトの製造方法において、
前記加熱処理工程では、前記容器本体の底面と前記蓋の表面に前記永久磁石を張り付け、且つ、前記容器本体の底面に張り付けた永久磁石と、前記蓋の表面に張り付けた永久磁石とが、互いに吸引し合う関係となるようにするゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、ケイ素元素(Si)が酸素元素(O)を介して結合されたケイ酸塩の一部のケイ素元素がアルミニウム元素(Al)に置き換わったアルミノケイ酸塩のうち、結晶構造中に比較的大きな空隙を持つものの総称である。アルミノケイ酸塩には、ケイ素元素がアルミニウム元素に置き換わることにより失われた陽電荷を補填する形でアルカリ金属イオン(M)などのカチオンが含まれており、前記カチオンの種類により多様な性質が与えられる。
【0003】
現在では、さまざまな性質が付加されたゼオライトが工業的に製造されており、分子ふるい、イオン交換材料、触媒、及び吸着剤などとして多岐の分野にわたって使用されている。
【0004】
ゼオライトを工業的に製造する方法としては、石炭灰などの灰分を主原料とし、この主原料とアルカリ溶液とを混合してスラリーを調整し、このスラリーを加熱する方法が一般的である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004‐203731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来法により製造されたゼオライトは、ガスや微粒子等の被吸着成分を吸着する能力については高いと言えるものであったが、吸着した被吸着成分を分解する能力については必ずしも十分であると言えないものであった。そのため、従来法により製造されたゼオライトは、被吸着成分を一定量吸着した時点で飽和状態となり、長期にわたって吸着能を維持し得るものではなかった。
【0007】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、長期にわたって吸着能を維持することができる新規なゼオライトを製造するためのゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゼオライトの製造方法は、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物と、鉄化合物と、を少なくとも含む主原料をアルカリ溶液に分散させてスラリーを調整する調整工程と、前記スラリーを加熱する加熱処理工程と、を実行することによって、前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化されたゼオライトを製造するゼオライトの製造方法であって、前記加熱処理工程では、前記スラリーを鉄製の容器本体と、鉄製の蓋と、を具備する容器に収容したうえで、前記容器に永久磁石を張り付けることによって、前記スラリーを前記永久磁石によって生じさせた磁場に晒しながら加熱することを特徴とする(以下、本発明製造方法と称する。)。
【0009】
前記「ケイ素化合物」とは、ケイ素、及び分子構造にケイ素を含む化合物を意味する。前記ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸金属塩、ハロゲン化ケイ素、シラン、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。
【0010】
又、前記「アルミニウム化合物」とは、アルミニウム、及び分子構造にアルミニウムを含む化合物を意味する。前記アルミニウム化合物としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、窒化アルミニウム、硫酸アルミニウム、水素化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。なお、前記ケイ素化合物に対する前記アルミニウム化合物の配合割合としては、最終的に製造されるゼオライト中のアルミウム分(Al分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し、20〜40%(モル)となるように、前記調整工程において、前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物との配合割合を調整することが好ましい。
【0011】
更に、前記「鉄化合物」とは、鉄、及び分子構造に鉄を含む化合物を意味する。前記鉄化合物としては、例えば、鉄、FeCl、FeClなどの塩化鉄、FeO、Feなどの酸化鉄、FeSO、Fe(SOなどの硫酸鉄、硫化鉄等を挙げることができる。前記鉄化合物の配合割合としては、特に限定されるものではないが、最終的に製造されるゼオライト中の鉄分(Fe分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し3〜20%(モル)となるように、前記調整工程において前記鉄化合物を配合することが好ましい。
【0012】
一方、前記主原料と混合されてスラリーを形成する前記「アルカリ溶液」とは、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオン(M)や、マグネシウムイオンやカルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等のカチオン(M2+)を含む塩基性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水ガラス等)を意味する。通常、前記アルカリ溶液は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を水に溶解させることによって調整される。前記主原料に対する前記アルカリ溶液の混合割合としては、最終的に製造されるゼオライト中のカチオン分(M分)の占める割合が、ケイ素分(Si分)の占める割合に対し、1〜10%(モル)となるように、前記調整工程において、前記主原料と前記アルカリ溶液とを混合することが好ましい。
【0013】
前記調整工程においてスラリーを調整した後、本発明製造方法においては、前記スラリーを加熱する加熱処理工程を実行する。前記加熱処理工程を実行することによって、前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化されたゼオライトが製造される。
【0014】
本発明製造方法において、前記「アルミノケイ酸塩」とは、一般式「xMO・yAl・zSiO・nHO」にて表される化合物を意味する。なお、本発明製造方法において、「前記主原料中の前記ケイ素化合物と前記アルミニウム化合物とがアルミノケイ酸塩として結晶化された」状態とは、前記主原料中のケイ素化合物及びアルミニウム化合物の少なくとも一部がアルミノケイ酸塩として結晶化されている状態を意味する。
【0015】
そして、本発明製造方法においては、前記加熱処理工程の実行の際、前記スラリーを、永久磁石によって生じさせた磁場に晒しながら加熱する点に最も大きな特徴を有する。
【0016】
前記加熱処理工程の実行の際、前記スラリーを、磁場に晒しながら加熱することによって製造されたゼオライトは、従来法によって製造された人工ゼオライトと比較して、被吸着成分、特に、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素などの気体成分に対する吸着能に優れることが確認されている。
【0017】
前記「永久磁石」とは、外部から磁場や電流の供給を受けることなく磁石としての性質を比較的長期にわたって保持し続ける物体のことを意味する。前記永久磁石としては、例えば、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、及びネオジウム磁石等を挙げることができる。本発明製造方法においては、耐熱性に優れるサマリウムコバルト磁石を用いることが好ましい。
【0018】
一方、前記「電磁石」とは、通電することによって一時的に磁力を発生させる機械要素を意味する。前記電磁石としては、磁性材料の芯のまわりにコイルが巻き回されてなり、前記コイルに通電されることによって磁力を発生させるものが一般的である。
【0019】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料に加えて、ハロゲン化アルカリ金属塩、又はハロゲン化アルカリ土類金属塩の少なくとも一方を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整することが好ましい態様となる。
【0020】
前記調整工程において、ハロゲン化アルカリ金属塩やハロゲン化アルカリ土類金属塩などの電解質をスラリーに混合すれば、最終的に製造されるゼオライトが発現する分解能がより向上することが確認されている。
【0021】
前記「ハロゲン化アルカリ金属塩」の例としては、ナトリウムやカリウム等の塩化物や臭化物等を挙げることができる。又、前記「ハロゲン化アルカリ土類金属塩」の例としては、カルシウムやマグネシウム等の塩化物や臭化物等を挙げることができる。
【0022】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料に加えて、銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、又は銀化合物から選ばれた少なくとも一種以上を前記アルカリ溶液中に溶解又は分散させてスラリーを調整することが好ましい態様となる。
【0023】
前記調整工程において、銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、又は銀化合物から選ばれた少なくとも一種以上をスラリーに混合すれば、最終的に製造されるゼオライトが発現する分解能、特に二酸化炭素に対する分解能がより向上することが確認されている。銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、及び銀化合物とは、銅、コバルト、金、白金、及び銀の他、分子構造に銅、コバルト、金、白金、又は銀を含む金属化合物を意味する。銅化合物、コバルト化合物、金化合物、白金化合物、及び銀化合物の例としては、銅、コバルト、金、白金、銀及びこれらの酸化物、水酸化物、硫酸化物、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0024】
本発明製造方法においては、前記調整工程では、前記主原料の一部又は全部として、石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂から選ばれた少なくとも一種以上を用いることが好ましい態様となる。
【0025】
石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂は、いずれもケイ素化合物を豊富に含む廃材であり、安価で入手が容易なことと、廃棄物利用の観点において、その使用に利益がある。なお、「前記主原料の一部又は全部として」との文言の意味するところは、主原料として使用される石炭灰、フライアッシュ、製紙スラッジ灰、及び鋳物廃砂において、アルミニウム化合物や鉄化合物の含有量が少ない場合にあっては、アルミニウム化合物や鉄化合物を別途添加しても良いことを意味する。
【0026】
本発明製造方法においては、前記加熱処理工程では、前記スラリーを鉄製の容器に収容した状態にて加熱することが好ましい態様となる。
【0027】
鉄製の容器は、前記スラリーを鉄製の容器に収容した状態にて加熱すれば、前記永久磁石や前記電磁石によって生じた磁場が妨げられない。又、容器中のスラリーを均一な磁場に晒すことが可能となる。更に、前記容器を鉄製の容器本体(器側)と鉄製の蓋とによって構成すれば、前記磁場によって、前記容器本体の開口部を前記蓋によって確実に閉じることができる。
【0028】
本発明製造方法においては、前記加熱処理工程では、前記スラリーを20mT以上の磁束密度を有する磁場に晒すことが好ましい態様となる。
【0029】
本発明製造方法においては、前記加熱処理工程では、前記スラリーを200〜500℃の温度にて加熱することが好ましい態様となる。
【0030】
本発明のゼオライトは、前記本発明製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、長期にわたって吸着能を維持することができる新規なゼオライトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明製造方法によって製造されたゼオライトの電子顕微鏡写真である。
図2図2は、図1に示すゼオライトに含まれる成分元素を解析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
‐調整工程‐
下記表1の成分からなる石炭灰50重量部に、酸化鉄(Fe)2重量部を加えて主原料とし、この主原料に、更に、塩化ナトリウム0.5重量部、塩化カルシウム0.5重量部、水酸化アルミニウム0.25重量部、硫酸コバルト0.15重量部、銅0.1重量部及び水4重量部を加えた上で、アルカリ溶液としての水ガラス(3号水ガラス(NaO・3SiOaq))42.5重量部を混合することによってスラリーを得た。
【0035】
【表1】
【0036】
加熱処理工程‐
鉄製の容器の容器本体(縦700mm×横500mm×深さ50mm)に前記スラリーを注ぎ入れ、上部開口を鉄製の蓋にて覆った。なお、前記蓋の内側面には、100mm角の格子状の仕切り(高さ50mm)が設けられており、前記容器本体の上部開口を前記蓋にて覆うと、前記容器内が100mm角の複数の小室に区分けされる仕組みとなっている。
【0037】
前記容器本体を前記蓋にて覆った後、16kgの吸着力を有する磁石(サマリウムコバルト磁石)を前記容器の底面側に五個、前記蓋の表面に五個、それぞれサイコロの5の目の配置となるように張り付けた。この際、前記容器の底面側に張り付けた磁石と、前記蓋の表面に張り付けた磁石とが、互いに吸引し合う関係となるように、各々の磁極の向きを揃えて張り付けた。これにより、前記容器本体に向かって前記蓋が強く引き付けられた状態となる。又、前記容器内に収納された前記スラリーは、前記磁石によって生じた磁場(磁束密度:100mT)に晒されることになる。
【0038】
この状態の容器を電気炉にて、300℃の温度で15分加熱することによって、ゼオライトを得た。このゼオライトの電子顕微鏡写真を図1に示し、その成分元素解析グラフを図2に示す。
【0039】
<比較例1>
前記実施例1と同様の調整工程を実行した後、加熱処理工程において磁場に晒すことなく加熱を行うことによって、比較例1に係るゼオライトを得た。下記表2に、前記実施例1及び前記実施例1の内容を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
<吸着試験>
実施例1にて得られたゼオライト、及び比較例1にて得られたゼオライトを下記に示す手順からなる吸着試験に供した。
【0042】
‐吸着試験‐
(1)各ゼオライトをミルにて粉砕する。
(2)1リットルのテトラバッグを用意し、各ゼオライトの粉砕物30gを各々前記テトラバッグに入れる。
(3)各テトラバッグそれぞれに被吸着物(気体成分(NH又はCO))の濃度が、NHにつき0.35体積%、COにつき1体積%となるように調整された原ガスを注入する。
(4)注入直後の各バッグ内の被吸着物の濃度をガスクロマトグラフにて測定した後、各テトラバックを室内(25℃)に静置し、以後、7分、30分、1時間、2時間、及び8時間経過後の各バッグ内の被吸着物の濃度をガスクロマトグラフにて測定する。
【0043】
前記吸着分解試験の結果を下記表3に示す。なおガスクロマトグラフの測定限界下限値は0.05体積%であった。
【0044】
【表3】
【0045】
表3に示す結果より、磁場に晒した状態にて加熱処理工程を実行したゼオライトは、被吸着成分としての気体成分のNHやCOをいずれも効率よく吸着していることが認められた。
【0046】
一方、加熱処理工程時において磁場に晒すことなく加熱された比較例1に係るゼオライトは、被吸着成分としての気体成分のNHに対する吸着能は認められたが、短時間(1時間程度)で飽和状態となっており、長期にわたって吸着能を維持し得るものではないことが認められた。
【0047】
更に、比較例1に係るゼオライトは、被吸着成分としての気体成分のCOに対する吸着能ほとんど認められなかった。
【0048】
これより、加熱処理工程時において磁場に晒せば、長期にわたって吸着能を維持することができる新規なゼオライトを製造することができることが確認された。
【0049】
<実施例2〜5>
下記表4に、前記実施例1と同様の調整工程を実行した後、磁場の磁束密度や加熱温度を適宜変更して加熱処理工程を実行した実施例2〜5の内容を示す。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例2〜5にて得られたゼオライトを、前記吸着分解試験に供した結果を下記表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示す結果より、実施例2〜5にて得られたゼオライトは、前記実施例1にて得られたゼオライトと同様、被吸着成分としての気体成分のNHやCOをいずれも効率よく吸着していることが認められた。
【0054】
<実施例6〜7、比較例2>
下記表6に、調整工程において、スラリー中の鉄化合物の含有量を適宜変更したスラリーを調整した後、前記実施例1と同様の加熱処理工程を実行した実施例6〜7、及び比較例2の内容を示す。
【0055】
【表6】
【0056】
実施例6〜7にて得られたゼオライト、及び比較例2にて得られたゼオライトを、前記吸着試験に供した結果を下記表7に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
表7に示す結果より、実施例6〜7にて得られたゼオライトは、前記実施例1にて得られたゼオライトと同様、被吸着成分としての気体成分のNHやCOをいずれも効率よく吸着していることが認められた。
【0059】
一方、スラリー中に鉄化合物を含有させることなく、加熱処理工程に供された比較例2に係るゼオライトは、被吸着成分としての気体成分のNHに対する吸着能は認められたが、短時間で飽和状態となり長期にわたって吸着能を維持し得るものではないことが認められた。
【0060】
更に、比較例2に係るゼオライトは、被吸着成分としての気体成分のCOに対する吸着能も分解能もほとんど認められなかった。
【0061】
<実施例8〜10>
下記表8に、調整工程において調整されるスラリーの成分を適宜変更した後、前記実施例1と同様にして加熱処理工程を実行した実施例8〜10の内容を示す。
【0062】
【表8】
【0063】
実施例8〜10にて得られたゼオライトを、前記吸着試験に供した結果を下記表9に示す。
【0064】
【表9】
【0065】
表9に示す結果より、実施例8〜10にて得られたゼオライトは、前記実施例1にて得られたゼオライトと同様、被吸着成分としての気体成分のNHやCOをいずれも効率よく分解除去していることが認められた。
【0066】
特に、ハロゲン化アルカリ金属塩(塩化ナトリウム)やハロゲン化アルカリ土類金属塩(塩化カルシウム)などの電解質が配合されたスラリーを加熱して得られた実施例9に係るゼオライト、及び、コバルト化合物(硫酸コバルト)や銅化合物(銅)などの鉄以外の金属化合物が配合されたスラリーを加熱して得られた実施例10に係るゼオライト、Cに対する吸着能がいずれも非常に向上していることが認められた。
【0067】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、ガスや微粒子などの種々の被吸着成分の除去に用いられる新規材料として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
ゼオライト
図1
図2