(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明の一実施の形態によるカーナビゲーション装置の構成を示す。
図1に示すカーナビゲーション装置は、受信手段101、センサ手段102、地図情報記憶手段103、地図補正量記憶手段104、画面音声出力手段105、経路探索指示手段106、走行位置指示手段107、及び演算手段110を備えている。
【0011】
受信手段101は、たとえばGPS(Global Positioning System)受信機などによって実現される。受信手段101は、アンテナを含んでおり、測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をこのアンテナで受信する。
【0012】
受信手段101はまた、ダウンコンバート、アナログデジタルコンバート、直交検波、C/A(coarse/acquisition)コード生成、相関検出及び復号の各処理機能を備えている。ダウンコンバート機能は、アンテナで受信した高周波の測位信号を低周波の測位信号へと変換するための機能である。アナログデジタルコンバート機能は、ダウンコンバート後の低周波の測位信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するための機能である。直交検波機能は、デジタル信号に変換された測位信号を検波するための機能である。C/Aコード生成機能は、測位衛星ごとに予め定められたC/Aコードと呼ばれる符号列を生成するための機能である。相関検出機能は、検波された測位信号と生成されたC/Aコードとの相関値を検出するための機能である。復号機能は、相関検出機能により検出された相関値に基づいて測位信号を復号するための機能である。
【0013】
受信手段101は、復号された測位信号に基づいて、測位衛星の軌道情報、発信状態の情報、電離層遅延計算パラメータなどを含む航法メッセージを検出する。また、測位信号の受信時刻、測位信号が表す擬似距離(衛星からの距離)、ドップラ周波数、信号強度などの観測データを測定する。そして、測定した受信時刻と航法メッセージ中の軌道情報に基づいて測位衛星の位置を算出し、この測位衛星の位置と測定した擬似距離に基づいて、アンテナが設置されている車両、すなわち
図1のカーナビゲーション装置を搭載している車両(以下、自車両と称する)の位置(受信位置)を算出する。また、受信時刻付近の測位衛星の位置から測位衛星の速度を算出し、その算出結果と測位衛星の位置及びドップラ周波数に基づいて、自車両の速度及び方位(速度ベクトル、受信速度及び受信方位)を算出する。
【0014】
なお、上記の説明は測位衛星がGPS衛星である場合を例としたが、GPS衛星の代わりにGLONASS衛星や擬似衛星などの測位衛星を利用してもよい。これらの測位衛星は、宇宙あるいは地上から測位のための信号を発信する装置である。
【0015】
センサ手段102は、自車両の速度を検出するための車速パルスカウンタ等の車速センサ、自車両の角速度を検出するためのジャイロ等の角速度センサ、及び自車両の加速度を検出するための加速度計等の加速度センサによって構成される。これらの各センサから、自車両の速度(センサ速度)、角速度(センサ角速度)及び加速度(センサ加速度)がそれぞれ出力される。なお、速度は自車両の前後方向に関するもの、角速度は自車両のロール角、ピッチ角及びヨー角に関するもの、加速度は上下方向に関するものである。
【0016】
ハードディスクやメモリなどによって構成される地図情報記憶手段103は、道路に関する道路情報や案内表示などの情報を所定のメッシュ領域ごとに格納している。道路情報は、各メッシュ領域について、当該メッシュ領域内の各道路を表すためのノード番号、ノード位置、リンク番号、始点ノード番号、終点ノード番号、道路の車線数などの各情報を含む。なお、ノードは道路上、交差点や分岐等に対応して設定された点であり、リンクは道路に沿って並んだ2つのノード間を結んだ線である。
【0017】
ハードディスクやメモリなどによって構成される地図補正量記憶手段104は、上記の地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報が表す各道路のうちノード位置が補正されたものについて、そのノード位置補正量を格納している。
【0018】
各道路におけるノード位置は、後述のような地図補正手段113の動作によって適宜補正される。ノード位置が補正された場合、当該ノードの経度方向及び経度方向の位置補正量が、当該ノードを識別するためのノード番号と関連付けて地図補正量記憶手段104に格納される。なお、地図補正量記憶手段104に格納されているノード位置補正量のデータは、メッシュを所定数に分割した各パーセルに対して予め設定されているパーセル番号ごとに管理されている。
【0019】
画面音声出力手段105は、モニタやスピーカなどによって構成される。画面音声出力手段105は、地図情報記憶手段103から道路情報を、地図補正量記憶手段104からノード位置補正量をそれぞれ読み込む。そして、読み込んだノード位置補正量に基づいて道路情報における各ノードの位置を補正し、補正後の各ノードの位置に合わせてリンクを描画することにより、道路地図を表示する。
【0020】
また画面音声出力手段105は、後述のマップマッチング手段112から、推定位置、推定方位、第一リンク候補点の位置、方位及びリンク番号、道路逸脱判定結果を受け取る。なお、これらの各情報の詳細については後で説明する。そして、マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路走行を表している場合、画面音声出力手段105は、第一リンク候補点の位置と方位をカーマークとして道路地図上に描画する。一方、マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路逸脱を表している場合、画面音声出力手段105は、推定位置と推定方位をカーマークとして道路地図上に描画する。
【0021】
さらに画面音声出力手段105は、後述の経路誘導手段114から、誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号の各情報を取得する。なお、これらの各情報の詳細については後で説明する。そして、経路誘導手段114からの道路誘導信号がオンである場合、画面音声出力手段105は、所定の案内表示を出力すると共に誘導方向を音声で出力する。
【0022】
経路探索指示手段106は、ユーザが目的地を入力して経路探索を指示するためのものであり、リモートコントローラ、タッチパネル、マイクなどによって構成される。経路探索指示手段106を用いてユーザから入力された目的地の情報は、経路探索手段115に送られる。
【0023】
走行位置指示手段107は、ユーザからの入力に基づいて車両の走行位置に対応する道路を指示するためのものであり、リモートコントローラ、タッチパネル、マイクなどによって構成される。走行位置指示手段107を用いてユーザから車両の走行位置に対応する道路が入力されると、その走行道路に対応するリンクのリンク番号が地図補正手段113に送られる。
【0024】
演算手段110は、CPU(central processing unit、中央演算処理装置)、メモリなどから構成される。演算手段110は、位置推定手段111、マップマッチング手段112、地図補正手段113、経路誘導手段114、及び経路探索手段115を機能的に備えている。
【0025】
位置推定手段111は、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位を入力すると共に、センサ手段102からセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を入力する。そして、これらの入力情報を用いて、カーナビゲーション装置の位置(推定位置)、方位(推定方位)及び速度(推定速度)を算出し、さらに推定位置及び推定方位の誤差共分散を算出する。
【0026】
マップマッチング手段112は、位置推定手段111により算出された推定位置から近い順に所定数(たとえば4つ)のメッシュを特定し、その各メッシュの道路情報とノード位置補正量とを、地図情報記憶手段103と地図補正量記憶手段104からそれぞれ読み込んで取得する。そして、位置推定手段111により算出された推定位置、推定方位及びそれらの誤差共分散と、取得した道路情報及びノード位置補正量とを用いて、各リンク候補点の評価量を計算する。なお、各リンク候補点の評価量の計算方法については、後で詳しく説明する。この評価量の計算結果に基づいて、自車両が走行している確率が最も高いリンク候補点を第一リンク候補点として特定し、その第一リンク候補点のリンク番号を設定すると共に、位置及び方位を算出する。
【0027】
そして、マップマッチング手段112は、自車両がリンク上を走行しているという帰無仮説及びその対立仮説を立てる。統計学的仮説検定に基づいて、位置推定手段111により算出された推定位置、推定方位推定方位及びそれらの誤差共分散と、取得した道路情報及びノード位置補正量とを用いて、所定の有意水準で帰無仮説が採択するかを判定することにより、自車両が道路を逸脱したかどうかを判定する。
【0028】
地図補正手段113は、並走路検出手段121、走行リンク判定手段122、リンク位置補正実施判定手段123、リンク位置補正範囲決定手段124、及びリンク位置補正手段125から構成されている。
【0029】
並走路検出手段121は、マップマッチング手段112から、位置推定手段111により算出された車両の推定位置及び推定方位と、第一リンク候補点を含む複数のリンク候補点の位置、方位及びリンク番号と、道路逸脱判定結果とを取得する。これらの情報に基づいて、第一リンク候補点に対応するリンクと、他のリンク候補点に対応するリンクとが、互いに並走している道路(並走路)であるか否かを判定する。そして、車両の推定位置及び推定方位と、並走路であると判定された各リンクに対応するリンク候補点の位置、方位及びリンク番号とを記憶する。
【0030】
走行リンク判定手段122は、並走路検出手段121により並走路であると判定された各リンクを道路単位でまとめたリンク列を求めることで、各並走路の並走区間に対応するリンク列を求める。こうして求めた各リンク列について、マップマッチング手段112により算出されたリンク候補点の評価量同士を比較し、その比較結果に基づいて、いずれかのリンク列を車両が走行している走行リンク列と判定し、他のリンク列を走行リンク列に並走する並走リンク列と判定する。
【0031】
リンク位置補正実施判定手段123は、所定の走行距離ごとに、車両の推定位置に対する走行リンク列の位置誤差を算出する。その結果、走行リンク列において1カ所でも位置誤差が所定の閾値以上であった場合、走行リンク列及び並走リンク列に対してリンク位置の補正を実施すると判定する。なお、この判定に用いられる閾値は、マップマッチングにおけるリンク位置誤差の許容量に相当する。
【0032】
リンク位置補正範囲決定手段124は、走行リンク列においてリンク位置補正実施判定手段123により算出された位置誤差が閾値を超えている部分と、走行リンク列の当該部分に対応する並走リンク列の部分とを含む範囲を、車両の走行軌跡をもとにリンク位置を補正する第一の補正範囲として決定する。また、第一の補正範囲の境界に位置する各ノードの位置と、当該ノードの位置補正量とに基づいて、第二の補正範囲を決定する。
【0033】
リンク位置補正手段125は、リンク位置補正範囲決定手段124により決定された第一の補正範囲及び第二の補正範囲について、それぞれのリンク位置の補正量を算出する。そして、算出した補正量に基づいて、走行リンク列及び並走リンク列に含まれる各ノードの位置を補正することにより、並走路の各リンクの位置を補正する。
【0034】
経路探索手段115は、経路探索指示手段106から目的地の情報を受け取り、マップマッチング手段112から第一リンク候補点のリンク番号を受け取る。そして、地図情報記憶手段103に格納されている道路情報に基づいて目的地に最も近いリンク番号を特定し、そのリンク番号及び第一リンク候補点のリンク番号に基づいて、それらのリンクをつなぐ複数の経路を探索する。こうして探索された経路の中で所定の条件を満たす経路、たとえば距離が最も短い経路を誘導経路として選定する。
【0035】
経路誘導手段114は、マップマッチング手段112から第一リンク候補点のリンク番号及び位置を取得し、経路探索手段115から誘導経路のリンク番号を取得し、地図情報記憶手段103から案内表示などの情報を取得する。第一リンク候補点の位置から誘導経路において右左折すべき分岐点までの距離が所定距離以下になると、経路誘導手段114は、道路誘導信号をオンにして、誘導方向を表す誘導方向信号に右左折の情報を設定する。そして、誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号などの誘導情報を画面音声出力手段105に送る。
【0036】
次に、以上説明した
図1のカーナビゲーション装置の動作手順を、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
ステップ201において、受信手段101は、測位衛星から送られてきた信号(測位信号)をアンテナで受信し、前述の各機能を用いて、測位衛星の軌道情報、発信状態の情報、電離層遅延計算パラメータなどを含む航法メッセージを検出すると共に、受信時刻、擬似距離、ドップラ周波数、信号強度などの観測データを測定する。そして、受信時刻及び軌道情報をもとに測位衛星の位置を算出し、測位衛星の位置及び擬似距離をもとに受信位置を算出する。また、軌道情報をもとに受信時刻付近の測位衛星の位置から測位衛星の速度を算出すると共に、測位衛星の位置及び速度、ドップラ周波数をもとに受信速度及び受信方位を算出する。こうして算出した受信位置、受信速度及び受信方位を位置推定手段111に送る。
【0038】
ステップ202において、センサ手段102は、自車両の車軸の回転に伴って出力される車速パルス数を計測し、そのパルス数に所定の速度センサの係数を掛け合わせて、速度(センサ速度)を算出する。また、自車両の角速度に対応した信号を出力し、この出力値から角速度センサのバイアス分を引き、所定の角速度センサの係数を掛け合わせて、角速度(センサ角速度)を算出する。さらに、自車両の加速度に対応した信号を出力し、この出力値から加速度センサのバイアスを引き、加速度(センサ加速度)を算出する。こうして算出したセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を位置推定手段111に送る。
【0039】
ステップ203において、位置推定手段111は、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位を受け取り、センサ手段102からセンサ速度、センサ角速度及びセンサ加速度を受け取って、これらに基づく位置推定処理を以下の動作手順により行う。
【0040】
位置推定手段111は、位置推定処理の動作手順において、自車両の位置、進行方向の速度、進行方向の加速度、方位、方位の角速度、及びピッチ角を状態量として、下記の数式1で表される状態方程式(連続型)を立てる。なお、数式1では、加速度及び角速度を一次マルコフ過程とおいた。
【0041】
数式1において、x(t)、y(t)、z(t)は経度、緯度、高さ方向の自車両の位置をそれぞれ表し、v(t)は進行方向の速度を表し、a(t)は進行方向の加速度を表し、θ(t)は方位を表し、ω(t)は方位の角速度を表し、φ(t)はピッチ角を表している。また、θpは方位の予測値を表し、φpはピッチ角の予測値を表し、αaは加速度の時定数の逆数を表し、αωは角速度の時定数の逆数を表し、σa、σω、σφは加速度、方位の角速度、ピッチ角の標準偏差をそれぞれ表し、w(t)は平均0、標準偏差1の白色雑音を表し、η(t)は状態量ベクトルを表している。
【0042】
さらに、位置推定処理の動作手順において、センサ速度、センサ角速度、センサ加速度、受信位置、受信速度、及び受信方位を観測量として、下記の数式2で表される観測方程式(連続型)を立てる。
【0043】
数式2において、vs(t)はセンサ速度を表し、gs(t)はセンサ加速度を表し、ωs(t)はセンサ角速度を表し、xr(t)、yr(t)、zr(t)は経度、緯度、高さ方向の受信位置をそれぞれ表し、vr(t)は受信速度を表し、θr(t)は受信方位を表し、gは重力加速度を表し、ε(t)は観測雑音ベクトルを表し、y(t)は観測量ベクトルを表している。また、θp(t)及びφp(t)は、数式5で算出される予測量ベクトルから得られる値である。
【0044】
【数1】
…(数式1)
【数2】
…(数式2)
【0045】
受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位の出力がある場合、位置推定手段111は、下記の数式3〜数式7を用いて、推定位置、推定速度、推定加速度、推定方位、推定角速度及び推定ピッチ角を算出する。数式3〜数式7を用いることで、カルマンフィルタによる計算ができる。
【0046】
数式3〜数式7において、K(k)はゲイン行列を表し、Rは観測雑音行列を表している。また、η(k|k)は推定量ベクトルを表し、η(k+1|k)は予測量ベクトルを表し、P(k|k)、P(k|k−1)はη(k|k)、η(k|k−1)の推定誤差共分散行列をそれぞれ表している。Φ(Δt,αa,αω)は状態遷移行列を表し、Δtはサンプリング間隔を表し、Q(k)はシステム雑音行列を表し、kは離散時間を表している。
【0047】
【数3】
…(数式3)
【数4】
…(数式4)
【数5】
…(数式5)
【数6】
…(数式6)
【数7】
…(数式7)
【0048】
一方、受信手段101から受信位置、受信速度及び受信方位の出力がない場合、位置推定手段111は上記の数式3〜数式7において、観測量ベクトルy、行列H及び観測雑音行列Rから、受信位置、受信速度及び受信方位に関連する要素をそれぞれ削除する。
【0049】
位置推定手段111は、以上説明したような手順により位置推定処理を行い、これによって得られた推定位置、推定方位及び推定速度と、位置及び方位の推定誤差共分散とをマップマッチング手段112に送る。
【0050】
ステップ204において、マップマッチング手段112は、以下のような手順によりマップマッチング処理を行う。
【0051】
マップマッチング処理では、まず、地図情報記憶手段103からノード番号、ノード位置、リンク番号、始点ノード番号、終点ノード番号、幅員などの道路情報を読み込む。また、地図補正量記憶手段104からノード番号及びノードの位置補正量を読み込む。そして、位置補正量が設定されているノードに関して、地図情報記憶手段103から読み込んだノード位置にその位置補正量を足し合わせて、ノード位置を補正する。
【0052】
次に、推定位置周囲の各リンクに対して前述のような方法でリンク候補点をそれぞれ求め、各リンク候補点のリンク方位と所定のリンクの位置誤差に基づいて、各リンク候補点の位置誤差の共分散を計算する。そして、計算した各リンク候補点の位置誤差の共分散及び所定の方位誤差の分散と、リンク候補点の位置及び方位と、推定位置及び推定方位と、それらの誤差の共分散に基づいて、各リンク候補点の評価量を計算する。この計算結果により、道路を走行している確率が最も高い評価量を持つリンク候補点を第一リンク候補点と決定する。
【0053】
また、リンクの位置、方位及びそれらの誤差分散と、幅員情報と、推定位置及び推定方位及びそれらの誤差共分散とに基づいて、自車両が道路を逸脱しているかどうかを判定する。
【0054】
マップマッチング手段112は、以上説明したようなマップマッチング処理の結果として、推定位置と、推定方位、第一リンク候補点の位置、方位及びリンク番号と、道路逸脱判定結果とを、経路探索手段115、経路誘導手段114及び画面音声出力手段105に送る。また、推定位置と、推定方位と、第一リンク候補点を含む複数のリンク候補点の位置、方位、評価量及びリンク番号と、道路逸脱判定結果とを、地図補正手段113に送る。
【0055】
なお、以上説明したようなステップ204のマップマッチング処理については、後で
図3を用いて詳細に説明する。
【0056】
ステップ205において、地図補正手段113は、以下のような手順によりリンク位置の補正を行う。
【0057】
リンク位置の補正では、まず並走路検出手段121により、地図情報記憶手段103からノード番号、ノード位置、リンク番号、始点ノード番号、終点ノード番号、幅員などの道路情報を読み込む。また、マップマッチング手段112から推定位置、推定方位、第一リンク候補点を含む複数のリンク候補点の位置、方位、評価量及びリンク番号、道路逸脱判定結果を受け取る。そして、各リンク候補点に対応する各リンクの中から、互いに並走する並走路のリンクを判定し、並走区間を検出する。
【0058】
次に、走行リンク判定手段122により、各並走路の並走区間に対応するリンク列を求め、これらの各リンク列について、所定の走行距離ごとの車両の推定位置及び推定方位(走行軌跡)に基づいて、走行リンク列と並走リンク列のどちらであるかをそれぞれ判定する。あるいは、走行位置指示手段107から得た走行道路のリンクに基づいて、走行リンク列と並走リンク列のどちらであるかをそれぞれ判定する。
【0059】
次に、リンク位置補正実施判定手段123により、車両の走行軌跡に基づいて、走行リンク列の位置誤差を算出する。そして、算出した位置誤差が閾値以上である場合、リンク位置の補正を実施すると判定する。
【0060】
上記判定の結果、リンク位置の補正を実施すると判定した場合は、リンク位置補正範囲決定手段124により、車両の走行軌跡をもとに、第一の補正範囲及び第二の補正範囲を決定する。
【0061】
続いて、リンク位置補正手段125により、走行リンク列及び並走リンク列の各リンク位置を補正する。このとき第一の補正範囲では、走行リンク列から車両の走行軌跡までのベクトルを算出し、そのベクトルを走行リンク列及び並走リンク列の各ノードの位置補正量とすることで、各リンク位置を補正する。また、第二の補正範囲では、各リンクの方位誤差が所定の許容量以下になるように、走行リンク列及び並走リンク列の各ノード位置を補正する。
【0062】
なお、以上説明したようなステップ205のリンク位置の補正については、後で
図5、6を用いて詳細に説明する。
【0063】
ステップ206では、経路探索の入力の有無を判定する。経路探索指示手段106に対してユーザから目的地の入力があった場合、経路探索の入力ありと判定してステップ209に進む。このとき経路探索指示手段106は、その目的地の情報を経路探索手段115へ送る。一方、目的地の入力がない場合はステップ207に進む。
【0064】
ステップ207では、誘導経路の有無を判定する。誘導経路がある場合、ステップ208に進む。そうでない場合、ステップ211に進む。
【0065】
ステップ208では、自車両が誘導経路上にいるか否かを判定する。第一リンク候補点に対応するリンクが誘導経路のリンクに含まれている場合、自車両が誘導経路上にいると判定してステップ210に進む。一方、第一リンク候補点に対応するリンクが誘導経路のリンクに含まれていない場合は、自車両が誘導経路上にいないと判定してステップ209に進む。
【0066】
ステップ209において、経路探索手段115は、地図情報記憶手段103から目的地付近の道路情報を読み込み、目的地から周囲の各リンクまでの距離を計算して、その距離が最も近いリンク番号を目的地のリンクとする。そして、マップマッチング手段112から第一リンク候補点のリンク番号、位置及び方位を受け取り、第一リンク候補点のリンクからその方位に向かって、目的地のリンクまでつなぐ複数の経路を探索し、その中で所定の条件を満たす経路、たとえば最も短い距離の経路を誘導経路とする。こうして誘導経路を決定したら、経路探索手段115は、その誘導経路上のリンク番号を経路誘導手段114に送る。
【0067】
ステップ210において、経路誘導手段114は、経路探索手段115から誘導経路上のリンク番号を受け取り、マップマッチング手段112から第一リンク候補点の位置、方位、リンク番号、及び道路逸脱判定結果を受け取る。また、地図情報記憶手段103から誘導経路上のリンクに対応する案内表示などの情報を読み込む。
【0068】
マップマッチング手段112からの道路逸脱判定結果が道路走行を示している場合、経路誘導手段114は、第一リンク候補点の位置から右左折すべき分岐点までの距離が所定距離以下になったときに、道路誘導信号をオンにして、誘導方向を表す誘導方向信号を決定する。そうでないときには道路誘導信号をオフにする。道路誘導信号をオンにしたとき、経路誘導手段114は、誘導方向信号、案内表示、誘導車線などの情報を画面音声出力手段105に送る。
【0069】
ステップ211において、画面音声出力手段105は、地図情報記憶手段103からノード番号、ノード位置、リンク番号、幅員などの道路情報を読み込む。また、地図補正量記憶手段104からノード番号及びノードの位置補正量を読み込む。そして、車両周辺の道路地図を描画して表示する。このとき、位置補正量が設定されているノードについては、地図情報記憶手段103から読み込んだノード位置にその位置補正量を足し合わせ、ノード位置を補正してからリンクを描画することにより、道路地図を描画する。
【0070】
また画面音声出力手段105は、マップマッチング手段112から推定位置、推定方位、第一リンク候補点の位置、方位、リンク番号、及び道路逸脱判定結果を受け取る。そして、道路逸脱結果が道路走行である場合、第一リンク候補点の位置及び方位を道路地図上にカーマークとして描画する。一方、道路逸脱結果が道路逸脱である場合、画面音声出力手段105は、車両の推定位置及び推定方位をカーマークとして描画する。
【0071】
さらに画面音声出力手段105は、経路誘導手段114から誘導方向信号、案内表示、道路誘導信号を取得する。そして、道路誘導信号がオンである場合に案内表示を出力し、誘導方向を報知するための画像や音声を出力する。
【0072】
続いて、
図2のステップ204のマップマッチング処理についての詳細な説明を、
図3を用いて以下に行う。ステップ204のマップマッチング処理が開始されると、最初に
図3のステップ301が実行される。
【0073】
ステップ301において、マップマッチング手段112は、過去に道路情報を取得したか否かを判定する。地図情報記憶手段103から過去に道路情報を読み込んで取得している場合、ステップ302に進む。そうでない場合、ステップ303に進む。
【0074】
ステップ302において、マップマッチング手段112は、
図2のステップ203において位置推定手段111から送られた推定位置と過去に読み込んだ道路情報のメッシュ領域の端との間の距離が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。たとえば
図4に示すように、推定位置401と過去に道路情報を読み込んだ4つのメッシュ領域402の端との距離が所定距離よりも短く、推定位置401が4つのメッシュ領域402の端付近にある斜線領域403内に含まれる場合、ステップ303に進む。そうでない場合、ステップ304に進む。
【0075】
ステップ303において、マップマッチング手段112は、推定位置を含むメッシュ領域と、推定位置から近い所定数、たとえば3つのメッシュ領域とについて、地図情報記憶手段103から道路情報を読み込んで取得する。ここでは、ノード番号、ノード位置、リンク番号、始点ノード番号、終点ノード番号、幅員などの道路情報を地図情報記憶手段103から取得する。また、地図補正量記憶手段104から、ノード番号及びノードの位置補正量を読み込んで取得する。なお、既に道路情報やノードの位置補正量を取得済みのメッシュ領域については再び取得する必要はない。
【0076】
ステップ304において、マップマッチング手段112は、前回の処理で求められたリンク候補点があるか否かを判定する。前回の処理で求められたリンク候補点がある場合、ステップ306に進む。ない場合、ステップ305に進む。
【0077】
ステップ305において、マップマッチング手段112は、
図2のステップ203で求められた推定位置、推定方位、推定速度、及び推定位置と推定方位の誤差共分散を位置推定手段111から受け取る。そして、推定位置を含むメッシュ領域内の全てのリンクと推定位置との間の距離を算出し、その距離が短い順に所定数のリンクを選定する。このとき、地図補正量記憶手段104から取得したノード番号及びノードの位置補正量に基づいて、位置が補正されたノードを特定し、そのノードの位置を補正してから、そのノードを含むリンクと推定位置との間の距離を算出する。こうして選定した各リンクに対して、リンク候補点をそれぞれ生成する。ここでは、選定した各リンクに対して推定位置から下した垂線の足の各々をリンク候補点とする。
【0078】
上記のようにしてリンク候補点を生成したら、マップマッチング手段112は、各リンク候補点の方位を設定する。ここでは、各リンク候補点について、当該リンク候補点が存在するリンクの両進行方向を表す互いに反対向きの2つのリンク方位のうち、位置推定手段111から受け取った推定方位との差が90度以下になる方のリンク方位を当該リンク候補点の方位として設定する。なお、道路情報に含まれる一方通行の情報を有するリンクの場合はこの限りではなく、当該リンク候補点の方位を一方通行の方向に設定する。ステップ305を実行したらステップ308に進む。
【0079】
ステップ306において、マップマッチング手段112は、
図2のステップ203で求められた推定位置、推定方位、推定速度、及び推定位置と推定方位の誤差共分散を位置推定手段111から受け取る。そして、推定速度に所定の処理周期をかけることで走行距離を算出し、前回の処理で求められた各リンク候補点の位置を算出した走行距離分だけ前方に移動させる。このとき、各リンク候補点が存在する各リンクに沿って移動させる。
【0080】
ステップ307において、マップマッチング手段112は、ステップ306で算出した走行距離を前回の累積走行距離に足し合わせて今回の累積走行距離を算出し、これが所定距離以上であるか否かを判定する。今回の累積走行距離が所定距離以上である場合、累積走行距離をゼロに設定して、ステップ308に進む。そうでない場合は、ステップ310に進む。
【0081】
ステップ308において、マップマッチング手段112は、リンクへのマップマッチング処理を行う。ここでは、以下に説明するような手順で第一リンク候補点を求めることにより、リンクへのマップマッチング処理を行う。
【0082】
最初にマップマッチング手段112は、ステップ305で生成した各リンク候補点、またはステップ306で前方移動した各リンク候補点について、その各リンク候補点から所定距離だけ前方にあるリンクの全てに対してリンク候補点を新たに追加する。ここでは、ステップ305と同様の方法により、前方の各リンクに対して追加のリンク候補点をそれぞれ設定する。
【0083】
次にマップマッチング手段112は、下記の数式8から数式11を用いて、ステップ305で生成した各リンク候補点、またはステップ306で前方移動した各リンク候補点と、上記で追加した各リンク候補点とについて、評価量Tをそれぞれ計算する。数式8〜数式11において、(x
e,y
e)は推定位置を表し、θ
eは推定方位を表し、(x
l,y
l)は各リンク候補点の位置を表し、θ
lは各リンク候補点の方位を表し、Σ
eは推定位置及び推定方位の誤差共分散行列を表し、Σ
lはリンク候補点の位置及び方位の誤差共分散行列を表し、σ
pl及びσ
θlは予め設定されたリンクの位置誤差及び方位誤差の分散を表し、nは距離系列データの数を表している。なお、距離系列データとは、自車両が走行した一定距離間隔の地点における推定量及びリンク候補点のデータである。
【0084】
【数8】
…(数式8)
【数9】
…(数式9)
【数10】
…(数式10)
【数11】
…(数式11)
【0085】
自車両が道路上を走行している場合、自車両に対応するリンク候補点の位置及び方位は、推定位置及び推定方位とほぼ一致するはずである。そのため、評価量Tが小さいリンク候補点ほど、そのリンク候補点に対応する道路上を自車両が走行している確率が高くなる。そこでマップマッチング手段112は、上記のようにして各リンク候補点の評価量Tを算出したら、評価量Tが小さい(道路を走行している確率が高い)順に所定数のリンク候補点を選定し、それ以外のリンク候補点の情報を除去する。そして、リンク候補点の中から評価量Tが最も小さい(道路を走行している確率が最も高い)リンク候補点を第一リンク候補点とする。推定位置及び推定方位の誤差、リンク位置及び方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、評価量Tは自由度2×nのχ二乗分布に従う。このため、評価量Tの値以上である自由度2×nのχ二乗分布の確率密度関数の積分値が、その道路を走行している確率に相当する。
【0086】
ステップ309において、マップマッチング手段112は、道路からの逸脱の判定を行う。ここでは、まずマップマッチング手段112は、下記に示すように、第一リンク候補点に対応するリンクを対象として、推定位置とリンクとの距離に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hp0:推定位置とリンクとの距離に差がない。
・対立仮説Hp1:推定位置とリンクとの距離に差がある。
【0087】
次にマップマッチング手段112は、下記の数式12〜数式15を用いて、推定位置とリンクとの距離を無次元化した検定量T
pを算出する。ここで、Σ
peは推定位置の誤差共分散を表し、Σ
plはリンク位置の誤差共分散を表している。
【0088】
【数12】
…(数式12)
【数13】
…(数式13)
【数14】
…(数式14)
【数15】
…(数式15)
【0089】
推定位置の誤差及びリンク位置の誤差が正規分布に従うと仮定すると、上記のようにして算出される検定量T
pは、自由度1のχ二乗分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する検定を自由度1のχ二乗分布に基づいて行うと、マップマッチング手段112は次のように仮説を採択できる。すなわち、検定量T
pが自由度1及び有意水準αのχ二乗値以下である場合は、帰無仮説を棄却できず、推定位置とリンクとの距離に差がないと判定する。一方、検定量T
pが自由度1及び有意水準αのχ二乗値よりも大きい場合は、帰無仮説を棄却し、推定位置とリンクとの距離に差があると判定する。
【0090】
さらにマップマッチング手段112は、下記に示すように、第一リンク候補点に対応するリンクを対象として、推定方位とリンク方位に差があるかどうかの仮説を立てる。
・帰無仮説Hθ0:推定方位とリンク方位に差がない。
・対立仮説Hθ1:推定方位とリンク方位に差がある。
【0091】
続いてマップマッチング手段112は、下記の数式16〜数式18を用いて、推定方位とリンク方位の差を無次元化した検定量T
θを算出する。
【0092】
【数16】
…(数式16)
【数17】
…(数式17)
【数18】
…(数式18)
【0093】
推定方位の誤差及びリンク方位の誤差が正規分布に従うと仮定すると、検定量T
θは正規分布に従う。そこで、有意水準αを定め、この仮説に対する両側検定を正規分布に基づいて行うと、マップマッチング手段112は以下のように仮説を採択できる。すなわち、検定量T
θの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値以下である場合は、帰無仮説を棄却できず、推定方位とリンク方位に差がないと判定する。一方、検定量T
θの絶対値が有意水準α/2の正規分布の値よりも大きい場合は、帰無仮説を棄却し、推定方位とリンク方位に差があると判定する。
【0094】
以上説明した各判定により、推定位置とリンクとの距離に差がなく、かつ推定方位とリンク方位に差がないと判定した場合、マップマッチング手段112は道路走行、すなわち自車両が道路を走行中であると判定する。そうでない場合、マップマッチング手段112は道路逸脱、すなわち自車両が道路から逸脱していると判定する。
【0095】
ステップ310において、マップマッチング手段112は、経路探索手段115、経路誘導手段114及び画面音声出力手段105に、位置推定手段111から受けた推定位置及び推定方位と、ステップ308で求められた第一リンク候補点の位置、方位及びリンク番号と、ステップ309で行われた道路逸脱の判定結果とを送る。また、地図補正手段113に、位置推定手段111から受けた推定位置及び推定方位と、ステップ308で求められた第一リンク候補点を含む各リンク候補点の位置、方位、評価量及びリンク番号と、ステップ309で行われた道路逸脱判定結果とを送る。
【0096】
ステップ310を実行したら
図2のステップ204のマップマッチング処理を終了し、ステップ205へ進む。ステップ204のマップマッチング処理では、以上説明したような処理がマップマッチング手段112によって行われる。
【0097】
続いて、
図2のステップ205のリンク位置の補正についての詳細な説明を、
図5、6を用いて以下に行う。ステップ205のリンク位置の補正が開始されると、最初に
図5のステップ501が実行される。
【0098】
ステップ501において、並走路検出手段121は、
図3のステップ307で累積走行距離が所定の距離以上であると判定され、ステップ308においてリンクへのマップマッチング処理が実施された場合、ステップ502に進む。リンクへのマップマッチング処理が実施されなかった場合、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0099】
ステップ502において、並走路検出手段121は、
図3のステップ310でマップマッチング手段112から送られた推定位置、推定方位、第一リンク候補点を含む各リンク候補点の位置、方位、評価量及びリンク番号、及び道路逸脱判定結果を受け取る。そして、第一リンク候補点とその他の各リンク候補点との間の距離及び方位差をそれぞれ算出すると共に、第一リンク候補点からその他の各リンク候補点への方向と第一リンク候補点の方位との間の角度をそれぞれ算出する。
【0100】
上記のようにして第一リンク候補点に対する距離、方位差及び角度を算出した他のリンク候補点のうち、その距離及び方位差がそれぞれ所定の閾値以内であり、かつ、その角度が90°から所定の範囲内にあるリンク候補点が存在するか否かを判定する。こうした条件を満たすリンク候補点が存在する場合、第一リンク候補点に対応するリンクと当該リンク候補点に対応するリンクとは、互いに並走している並走路であると判定する。なお、条件を満たすリンク候補点が複数存在する場合は、それらのリンク候補点に対応する各リンクと第一リンク候補点に対応するリンクとが互いに並走路であると判定される。一方、条件を満たすリンク候補点が1つも存在しない場合、各リンク候補点に対応するいずれのリンク同士も並走路ではないと判定する。
【0101】
たとえば
図7に示すように、車両の推定位置701からリンク704、705にそれぞれ垂線を下ろすことにより、第一リンク候補点702とリンク候補点703がマップマッチング手段112によって検出されていたとする。そして、第一リンク候補点702とリンク候補点703との間の距離706が所定の閾値以内であり、かつ、第一リンク候補点702の方位707とリンク候補点703の方位708との間の方位差が所定の閾値以内であったとする。さらに、第一リンク候補点702からリンク候補点703への方向と、第一リンク候補点702の方位707との間の角度709が、ほぼ90度であったとする。このような場合、ステップ502の処理により、リンク704とリンク705は並列路であると判定することができる。
【0102】
ステップ503において、並走路検出手段121は、車両の推定位置及び推定方位と、ステップ502で並走路であると判定された各リンクに対応するリンク候補点の位置、方位、評価量及びリンク番号と、道路逸脱判定結果を記憶する。なお、これらの情報は、
図3のステップ307に示す所定の距離ごとに記憶される。
【0103】
ステップ504において、走行リンク判定手段122は、ユーザから走行位置指示手段107に対して走行リンク情報の入力があったか否かを判定する。走行リンク情報の入力があった場合はステップ505に進み、なかった場合はステップ506に進む。
【0104】
ステップ505において、走行リンク判定手段122は、走行位置指示手段107から送られる走行道路のリンク番号、すなわちユーザから走行リンクとして入力された道路のリンク番号を受け取って記憶する。
【0105】
ステップ506において、走行リンク判定手段122は、並走路検出手段121に記憶されている情報に基づいて、車両の走行リンクが並走路であるか否かを判定する。ここでは、ステップ503で並走路が検出されたか否かにより、車両の走行リンクが並走路であるか否かを判定する。すなわち、ステップ503で並走路が検出された場合、その並走路のうちいずれか1つは、第一リンク候補点に対応する車両の走行リンクである。したがってこの場合、走行リンクが並走路であると判定し、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。一方、ステップ503で並走路が検出されなかった場合は、走行リンクが並走路ではないと判定し、ステップ507に進む。
【0106】
ステップ507において、走行リンク判定手段122は、走行リンク列が判定されていない並走路があり、その並走路を退出したかどうかを判定する。ここで、
図5、6のステップ502以降の処理を、
図3のステップ307に示す所定の距離ごとに繰り返し実行しているときに、現在から所定の処理回数よりも前に実行されたステップ502において並走路が検出され、かつ、前回の処理以前に実行されたステップ509において走行リンク列が判定されていなかったか否かにより、走行リンクが判定されていない並走路があり、その並走路を退出したか否かを判定する。すなわち、現在から所定の処理回数よりも前に実行されたステップ502において並走路が検出され、かつ、前回の処理以前に実行されたステップ509において走行リンク列が判定されていなかった場合はステップ508に進む。一方、走行リンク列が判定されていない並走路がなかった場合、すなわち、現在から所定の処理回数よりも前に実行されたステップ502において並走路が検出されなかった、あるいは、並走路が検出されたときに前回の処理以前に実行されたステップ509において既に走行リンク列が判定された場合は、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0107】
ステップ508において、走行リンク判定手段122は、並走路検出手段121に記憶されている情報に基づいて、並走路であると判定された各リンクのリンク番号を特定する。そして、特定したリンク番号に基づいて、並走路であると判定された各リンクによって構成されるリンク列の始点に対応する始点ノードと、このリンク列の終点に対応する終点ノードとを特定し、それぞれのノード番号及びノード位置の情報を地図情報記憶手段103から読み込む。これにより、並走路が存在する並走区間を検出し、各並走路の並走区間に対応するリンク列を求める。
【0108】
ステップ509において、走行リンク判定手段122は、走行リンク列及び並走リンク列の判定を行う。ここではまず、
図3のステップ308において求めた第一リンク候補点の評価量と、その次に評価が高いリンク候補点(第二リンク候補点)の評価量とを比較する。なお前述のように、評価量が小さいリンク候補点ほど、そのリンク候補点に対応する道路上を車両が走行している確率が高い。すなわち、第二リンク候補点とは、第一リンク候補点の次に評価量が小さいリンク候補点である。
【0109】
第一リンク候補点の評価量と第二リンク候補点の評価量とを比較した結果、これらの評価量の差が所定の閾値以上である場合は、第一リンク候補点があるリンクを車両の走行リンクと判定する。一方、評価量の差が閾値未満であり、かつ走行位置指示手段107から走行道路のリンク番号を取得していた場合は、当該リンク番号に対応するリンクを車両の走行リンクと判定する。なお、評価量の差が閾値未満であり、かつ走行位置指示手段107から走行道路のリンク番号を取得していない場合は、走行リンク列の判定を行わない。
【0110】
そして、ステップ508で求められた並走区間の各リンク列のうち、前述で判定した走行リンクにつながっているリンク列を走行リンク列とし、他のリンク列を並走リンク列とする。このとき、各リンク列のリンクの終点と走行リンクの始点のノード番号が同じであるか否かに基づいて、走行リンクと各リンク列がつながっているか否かを判定する。走行リンク判定手段122は、以上説明したようにして走行リンク列及び並走リンク列の判定を行う。
【0111】
ステップ510において、走行リンク判定手段122は、ステップ509で走行リンク列及び並走リンク列を判定できたか否かを判定する。走行リンク列及び並走リンク列を判定できた場合はステップ511に進む。一方、走行リンク列及び並走リンク列を判定できなかった場合は、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0112】
ステップ511において、リンク位置補正実施判定手段123は、走行リンク列の位置誤差を算出する。ここでは、走行リンク列上の各リンク候補点について、当該リンク候補点に対応する推定位置、すなわち当該リンク候補点を求めたときの推定位置との間の距離を算出する。なお、ここで算出される距離は、各推定位置に対する走行リンク列の位置誤差に相当する。
【0113】
ステップ512において、リンク位置補正実施判定手段123は、ステップ511で算出した走行リンク列の位置誤差に基づいて、リンク位置の補正実施の判定を行う。ここでは、各推定位置に対する走行リンク列の位置誤差として算出した各距離を所定の閾値とそれぞれ比較し、その中に一つでも所定の閾値以上のものがあった場合は、リンク位置の補正を実施すると判定する。一方、走行リンク列の位置誤差が全て閾値未満であった場合は、リンク位置の補正を実施しないと判定する。なお、この判定に用いられる閾値は、前述のように、マップマッチングにおけるリンク位置誤差の許容量に相当する。
【0114】
ステップ513において、リンク位置補正実施判定手段123は、ステップ512でリンク位置の補正を実施すると判定したか否かを判断する。リンク位置の補正を実施すると判定した場合はステップ514に進み、実施しないと判定した場合は、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0115】
ステップ514において、リンク位置補正範囲決定手段124は、車両の走行軌跡に基づいてリンク位置を補正する第一の補正範囲を決定する。ここでは、走行リンク列において位置誤差が閾値を超えている部分と、これに対応する並走リンク列の部分とを含む範囲を、第一の補正範囲として決定する。より具体的には、走行リンク列に含まれる各リンクのうちで、ステップ512で位置誤差が閾値以上であると判定されたリンク候補点にそれぞれ対応する1または2以上のリンクを特定する。そして、これらのリンクと、これらのリンクに対応する並走リンク列の各リンクとを全て含む範囲を、第一の補正範囲として設定する。
【0116】
ステップ515において、リンク位置補正手段125は、ステップ514で決定された第一の補正範囲に含まれる走行リンク列と並走リンク列について、ノード位置の補正量を算出する。ここではまず、第一の補正範囲に含まれる走行リンク列の各リンクについて、そのリンク上の各リンク候補点とそれに対応する各推定位置との間の距離をそれぞれ算出する。そして、算出した各距離の平均を求め、これを当該リンクの位置誤差e
lとする。
【0117】
次に、下記の数式19及び数式20を用いて、第一の補正範囲内にある走行リンク列に含まれる各ノードの位置補正量(Δx
rn,Δy
rn)を算出する。数式19において、e
l1、e
l2は当該ノードに接続する2つのリンクの位置誤差をそれぞれ表し、θ
l1、θ
l2は当該ノードに接続する2つのリンクの方位をそれぞれ表している。ここで、θ
l1、θ
l2は、当該リンク上のリンク候補点から対応する推定位置へ向かう方向に合わせて設定される。たとえば、リンク候補点があるリンク801と推定位置を含む走行軌跡802の位置関係が
図8に示すような場合、リンク801の方位は、リンク801から走行軌跡802に向かう方向804に合わせて、矢印803のように設定される。また、リンク候補点があるリンク901と推定位置を含む走行軌跡902の位置関係が
図9に示すような場合、リンク901の方位は、リンク901から走行軌跡902に向かう方向904に合わせて、矢印903のように設定される。
【0118】
【数19】
…(数式19)
【数20】
…(数式20)
【0119】
続いて、第一の補正範囲に含まれる並走リンク列の各ノードについて、当該ノードの両側に、当該ノードに近い走行リンク列内の2つのノードを求める。すなわち、当該ノードに接続する2つのリンクの各方向に対して、走行リンク列内で当該ノードからそれぞれ最も近い位置にあるノードをそれぞれ1つずつ求める。そして、下記の数式21を用いて、これらの2つのノードの補正量から、第一の補正範囲内にある並走リンク列に含まれる各ノードの位置補正量(Δx
pn,Δy
pn)を算出する。数式21において、L
np1、L
np2は、当該ノードから当該ノードに近い走行リンク列内の2つのノードまでの距離をそれぞれ表している。これにより、並走リンク列内の各ノードについても、走行リンク列内の各ノードと同等の位置補正量を求めることができる。
【0121】
なお、並走リンク列内のノードのうち、第一の補正範囲の境界にあるノードについては、上記の数式21を用いずに、走行リンク列内で第一の補正範囲の境界にあるノードの位置補正量と同じ位置補正量を設定する。
【0122】
ステップ516において、リンク位置補正範囲決定手段124は、第一の補正範囲の境界付近に、第二の補正範囲を決定する。ここではまず、第一の補正範囲の境界にそれぞれ位置する走行リンク列及び並走リンク列の各ノードからリンクに沿って、境界外に位置する各ノードまでの距離をそれぞれ算出する。この距離が下記の数式22で算出される距離L
m以内の範囲を第二の補正範囲とする。数式22において、e
bnは走行リンク列において第一の補正範囲の境界にあるノードの位置補正量のx成分Δx
pnbとy成分Δy
pnbの合成値、すなわち当該ノードに接続する第一の補正範囲内のリンクの位置誤差を表し、θ
pはマップマッチングにおける方位誤差の許容量を表している。
【0124】
ステップ517において、リンク位置補正手段125は、下記の数式23を用いて、第二の補正範囲内にある各ノードの位置補正量(Δx
ns,Δy
ns)を算出する。数式23において、L
nsは第一の補正範囲の境界にあるノードから当該ノードまでのリンクに沿った距離を表し、θ
lbは第一の補正範囲の境界にあるリンクの方位を表している。
【0126】
ステップ518において、リンク位置補正手段125は、上記ステップ515、517でそれぞれ算出した各ノードの位置補正量とそのノード番号とを、地図補正量記憶手段104内に格納する。このとき前述のように、当該ノードに対応するパーセル番号の記憶領域にこれらの情報を格納する。
【0127】
続いて本願発明の作用効果について説明する。車両の走行軌跡を用いてリンクの位置を補正する従来の道路データの補正方法では、複数の道路が互いに隣接して並走する並走路を補正対象とした場合、車両が走行したリンクの位置のみを補正していた。そのため、次に車両がその並走路を走行したときに、ミスマッチが生じてしまうことがあるという問題があった。
【0128】
その様子を
図10の例を用いて以下に説明する。
図10では、本道1001と側道1002が並走している並走路において、本道1001、側道1002をそれぞれ表しているリンク1003、1004の位置がずれて設定されている場合を例示している。このような場合、従来の補正方法では、側道1002を車両が走行すると、リンク1004の位置を補正後のリンク1005の位置に補正する。すると、側道1002を表す補正後のリンク1005と、本道1001を表すリンク1003との位置関係が逆転してしまう。その結果、次に車両が本道1001を走行したときに、リンク1003ではなく、側道1002を表す補正後のリンク1005にミスマッチしてしまうことになる。
【0129】
これに対して、以上説明したような本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、並走路を補正対象とした場合に、車両が走行したリンクのみならず、そのリンクに並走するリンクの位置も合わせて補正する。そのため、次に車両がその並走路を走行したときに、ミスマッチが生じるのを防止することができる。
【0130】
その様子を
図11の例を用いて以下に説明する。
図11では、
図10と同様に、本道1001と側道1002が並走している並走路において、本道1001、側道1002をそれぞれ表しているリンク1003、1004の位置がずれて設定されている場合を例示している。側道1002を車両が走行すると、本発明では前述のように、車両の走行軌跡をもとにリンク1004の位置誤差を算出する。そして、
図11に示すように、リンク1004の位置を補正後のリンク1005の位置に補正するとともに、これと同等の位置補正量を用いて、リンク1003の位置も補正後のリンク1006の位置に補正する。このようにして、車両の走行リンク及びそれに並走するリンクの位置を同じ補正量で補正する。その結果、次に車両が本道1001を走行したときには補正後のリンク1006の位置に正しくマッチし、次に車両が側道1002を走行したときには補正後のリンク1005の位置に正しくマッチすることができる。
【0131】
また、本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、
図6のステップ516、517において、走行リンク列の位置誤差が閾値以上である第一の補正範囲の外側に第二の補正範囲を決定し、この第二の補正範囲内にある各ノードの位置を補正する。そのため、第一の補正範囲内のリンク位置を補正しても、そのリンクと接続されているリンクに生じる方位誤差を低減することができる。その結果、マップマッチング処理における評価量への悪影響を低減し、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0132】
その様子を
図12の例を用いて以下に説明する。
図12では、リンク列1203、1204に対して、第一の補正範囲1201及び第二の補正範囲1202を設定し、これらのリンク列を補正後のリンク列1205、1206の位置にそれぞれ補正する場合を例示している。このとき第二の補正範囲1202は、前述の数式22によって示されるように、第一の補正範囲1201の境界におけるノード位置補正量1207を所定の方位誤差許容量1208の正接で割って得られた距離1209だけリンクに沿って離れた範囲として設定される。なお、方位誤差許容量1208は、マップマッチングにおける方位誤差の許容量である。このようにして第二の補正範囲1202を設定し、その範囲内の各ノード位置を補正する。したがって、第一の補正範囲1201内の各リンク位置を補正することで生じる第二の補正範囲1202内の各リンクの方位誤差を、方位誤差許容量1208以下に抑えることができる。
【0133】
なお、
図12において、方位誤差許容量1208をマップマッチングにおける方位誤差の許容量ではなく、地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報におけるリンクの方位誤差のばらつきに基づいて設定してもよい。このようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0134】
本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、
図6のステップ512において、走行リンク列の位置誤差を所定の閾値と比較することにより、リンク位置の補正実施の判定を行う。そして、ステップ514において、この判定結果に基づいて第一の補正範囲を決定する。この閾値は前述のように、マップマッチングにおけるリンク位置誤差の許容量に相当するものである。これにより、補正後のリンクの位置誤差をマップマッチングの許容量以下にすることができる。そのため、マップマッチング処理における評価量への悪影響を低減して、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。なお、この閾値をマップマッチングにおけるリンク位置誤差の許容量ではなく、地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報におけるリンクの位置誤差のばらつきに基づいて設定してもよい。このようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0135】
また、走行リンク列や並走リンク列の全てを第一の補正範囲とはせずに、上記のようにして第一の補正範囲を決定することとしたため、第一の補正範囲を適切に設定することができる。したがって、リンク位置の補正に要する処理時間を短縮すると共に、位置補正を行うノードの数を低減することができる。その結果、地図補正量記憶手段104の容量を抑えてカーナビゲーション装置の製品コストを低減することができる。
【0136】
本発明のカーナビゲーション装置の動作手順によれば、走行位置指示手段107によりユーザから走行リンク情報が入力された場合、走行リンク判定手段122は、
図5のステップ504及びステップ505において、そのリンクに対応するリンク番号を受け取る。そして、ステップ509において、当該リンク番号に対応するリンクを車両の走行リンクと判定する。したがって、確実に走行リンクを判定してリンク位置を補正し、並走路において誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0137】
なお、本発明のカーナビゲーション装置は、上記で説明したような実施の形態に限定されるものではなく、様々に変形して適用することができる。以下では、本発明のカーナビゲーション装置の変形例について説明する。
【0138】
(変形例1)
上記実施の形態では、
図5のステップ508において、並走路であると判定された各リンクによって構成されるリンク列を求めて並走区間の範囲を決定している。しかし、並走路の合流点または分岐点から並走区間を決定してもよい。このようにしても、走行リンク列及び並走リンク列の位置をそれぞれ適切に補正し、次に車両がその並走路を走行したときにミスマッチが生じるのを防止することができる。
【0139】
(変形例2)
上記実施の形態では、
図3のステップ308で行うリンクへのマップマッチング処理において、前述の数式8〜数式11を用いて評価量Tを計算している。しかし、位置補正後のリンクについては、数式9において、各リンク候補点の方位θ
lの代わりに補正前のリンク方位を用いて、評価量Tを計算してもよい。このようにすれば、位置補正によって生じたリンク方位の誤差を取り除いて、評価量Tの誤差を低減することができる。その結果、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0140】
(変形例3)
上記実施の形態では、リンク位置を補正すると、前述の
図12に示したように、第二の補正範囲内にある各リンクにおいて、方位誤差許容量1208に応じた方位誤差が発生する。そこで、こうした補正によるリンクの方位誤差を次のようにして取り除くようにしてもよい。
【0141】
図6のステップ518において、リンク位置補正手段125は、補正対象の各ノードについて、前述のノード番号及びノードの位置修正量に加えて、さらに当該ノードが属する補正範囲の種類(第一の補正範囲または第二の補正範囲)を地図補正量記憶手段104に格納する。この補正範囲の種類に基づいて、マップマッチング手段112は、
図3のステップ308でリンクへのマップマッチング処理を行うときに、ステップ305でその位置を補正したノードが第一の補正範囲または第二の補正範囲のいずれに属するかを判断する。すなわち、評価量Tを計算するリンク候補点に対応するリンクの両端のノードのうち少なくとも一方のノードの位置がステップ305で補正されていた場合は、そのノードが第一の補正範囲または第二の補正範囲のいずれに属するかを判断する。
【0142】
その結果、少なくとも一方のノードが第二の補正範囲に属すると判断した場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、補正前のノード位置に応じたリンク方位を用いて評価量Tを計算する。一方、両端のノードがいずれも第一の補正範囲に属すると判断した場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、補正後のノード位置に応じたリンク方位を用いて評価量Tを計算する。また、それ以外の場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報が表す各ノードのノード位置からリンク方位を算出し、これを用いて評価量Tを計算する。このようにすれば、位置補正によって生じたリンク方位の誤差を取り除いて、評価量Tの誤差を低減することができる。その結果、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0143】
(変形例4)
上記実施の形態において、
図1の地図補正量記憶手段104を削除してもよい。この場合、
図6のステップ518において、リンク位置補正手段125は、補正対象の各ノードについて、地図情報記憶手段103に格納されているノード位置を補正後のノード位置に変更する。このようにしても、上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また、地図補正量記憶手段104を削除することができるため、カーナビゲーション装置の製品コストを低減することができる。
【0144】
(変形例5)
上記実施の形態において、
図6のステップ515、ステップ517でノードの位置補正量を算出するときに、当該ノードに接続するリンクの数が3つである場合、次のようにしてもよい。
【0145】
たとえば
図13に示すように、リンク1301、1302および1303が接続されているノード1304の位置補正量を算出する場合を考える。なお、リンク1301及び1302は、走行リンク列または並走リンク列に含まれているとする。このような場合、走行リンク列または並走リンク列に含まれていないリンク1303の方向に沿って、ノード1304を補正後のノード1305の位置に移動させる。そして、この補正後のノード1305の位置に合わせて、リンク1301、1302をそれぞれ補正後のリンク1306、1307の位置にそれぞれ移動させると共に、リンク1303を移動させる。このようにすると、補正後のリンク1303は、その方位が変化しないために方位誤差が発生しない。その結果、マップマッチングに悪影響を与えず、ミスマッチングを防ぐことができる。
【0146】
(変形例6)
また、上記実施の形態において、
図6のステップ515、ステップ517でノードの位置補正量を算出するときに、当該ノードに接続するリンクの数が4つ以上である場合、下記の数式24〜数式26を用いてもよい。具体的には、数式24〜数式26を繰返し計算し、当該ノードに接続している各リンクの方位変化量の二乗和に相当する数式24のE
jの値が最小となるような位置補正量(x
d,y
d)を算出する。数式24〜数式26において、mは当該ノードに接続しているリンクの数を表し、(x
n0,y
n0)は当該ノードの位置を表し、(x
ni,y
ni)は当該ノードに接続している各リンクで当該ノードとは反対側にある各ノードの位置をそれぞれ表し、jは繰返し計算の回数を表している。
【0147】
【数24】
…(数式24)
【数25】
…(数式25)
【数26】
…(数式26)
【0148】
なお、上記説明では、ノードに接続するリンクの数が4つ以上である場合を例として説明したが、ノードに接続するリンクの数が4つ未満、すなわち2つまたは3つである場合に本変形例を適用してもよい。
【0149】
(変形例7)
上記実施の形態において、
図1のセンサ手段102を削除すると共に、
図2のステップ202におけるセンサ手段102の処理を削除してもよい。この場合、ステップ203の位置推定処理において、位置推定手段111は、前述の数式1〜数式7においてセンサ手段102の測定値に関する要素を不要な要素として削除することが好ましい。すなわち、数式1〜数式7のうち、状態量ベクトルη(t)、行列F、行列G、状態遷移行列Φ(Δt、αa、αω)及びQ(k)の各々から、ピッチφ(t)に関連する要素を削除する。また、観測量ベクトルy、行列H及び観測雑音行列Rの各々から、センサ速度vs(t)、センサ角速度ωs(t)、センサ加速度gs(t)に関連する要素を削除する。これにより、センサ手段102及び計算処理量を削減できるため、カーナビゲーション装置の製品コストを低減できる。
【0150】
(変形例8)
上記実施の形態において、
図5のステップ504、ステップ505及びステップ506の順番を、
図14に示すように、ステップ506、ステップ504、ステップ505の順に変更してもよい。この場合、ステップ505の終了後はステップ508に進む。このようにすると、走行リンク判定手段122は、ステップ506で車両の走行リンクが並走路であると判定した場合に、ステップ505で走行位置指示手段107から走行道路のリンク番号を取得して、ステップ509で走行リンク列及び並走リンク列を判定できる。そして、リンク位置補正手段125は、車両前方も含むその走行リンク列及び並走リンク列について、
図6のステップ515及びステップ517でノード位置の補正量を算出してリンクの位置を補正できる。その結果、車両が初めて走行する並走路においてリンクの位置誤差が大きい場合であっても、正しいリンクにマッチすることができる。
【0151】
本変形例では、地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報において位置ずれのある並走路を車両が走行しているときに、ユーザが走行位置指示手段107を用いて車両の走行位置に対応する道路を指示すると、走行リンク判定手段122により走行リンク列と並走リンク列の判定を直ちに行うことができる。その結果、リンク位置補正手段125により走行リンク列及び並走リンク列の位置を直ちに補正し、その補正後の位置に合わせて、画面音声出力手段105に表示されている道路地図上で走行リンク列及び並走リンク列をそれぞれ移動することができる。
【0152】
(変形例9)
上記実施の形態において、
図5及び
図14のステップ502では、道路逸脱判定結果を考慮しても、並走路を検出できる。すなわち、
図3のステップ309で道路走行と判定され、かつ、道路逸脱第一リンク候補点に対する距離、方位差及び角度を算出した他のリンク候補点のうち、その距離及び方位差がそれぞれ所定の閾値以内であり、かつ、その角度が90°から所定の範囲内にあるリンク候補点が存在する条件を満たすリンク候補点が存在する場合、第一リンク候補点に対応するリンクと当該リンク候補点に対応するリンクとは、互いに並走している並走路であると判定する。
【0153】
(変形例10)
上記実施の形態において、
図5のステップ515では、第一の補正範囲内に含まれる並走リンク列の各ノードから走行リンク列に垂線を下ろした点を求め、当該点の両側に、当該点に近い走行リンク内の2つのノードを求める。L
np1及びL
np2は、それぞれ、当該点から当該点に近い走行リンク列内の2つのノードまで距離であるとしても、並走リンク列に含まれる当該ノードの位置補正量を算出することができる。
【0154】
(変形例11)
上記実施の形態において、
図5及び
図6、
図14及び
図6のフローチャートで、道路逸脱結果が道路逸脱である場合、ノード位置の補正量を算出しなくてもよい。具体的には、
図5のステップ503とステップ504の間、ステップ504とステップ506の間、あるいは、
図14のステップ503とステップ506の間に、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0155】
(変形例12)
また、上記実施の形態において、
図5または
図14のステップ507で走行リンク列が判定されていない並走路がなかったと判定された場合に、
図15のフローチャートに示す動作手順を行うようにしてもよい。このようにすると、並走路でない道路のリンクの位置を補正することができる。本実施の形態において、
図15のステップ1512、1513で、走行リンク列の位置誤差が閾値以上である第三の補正範囲の外側に第四の補正範囲を決定し、この第四の補正範囲内にある各ノードの位置を補正する。そのため、第三の補正範囲内のリンク位置を補正しても、そのリンクと接続されているリンクに生じる方位誤差を低減することができる。その結果、マップマッチング処理における評価量への悪影響を低減し、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0156】
図15のフローチャートに示す動作手順を以下に説明する。
ステップ1501において、走行リンク判定手段122は、ユーザから走行位置指示手段107に対して走行リンク情報の入力があったか否かを判定する。走行リンク情報の入力があった場合はステップ1502に進み、なかった場合はステップ1503に進む。
【0157】
ステップ1502において、走行リンク判定手段122は、走行位置指示手段107から送られる走行道路のリンク番号、すなわちユーザから走行リンクとして入力された道路のリンク番号を受け取って記憶する。
【0158】
ステップ1503において、走行リンク判定手段122は、現在の道路逸脱判定結果が道路走行である場合、ステップ1504に進む。道路逸脱である場合、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0159】
ステップ1504において、走行リンク判定手段122は、
図5、
図6、
図15のステップ502以降の処理を、
図3のステップ307に示す所定の距離ごとに繰返し実行しているときに、1回前の処理から現在の間に分岐を通過したか否かを判定する。分岐を通過した場合、ステップ1505に進む。通過していない場合、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0160】
ステップ1505において、走行リンク判定手段122は、走行リンク列の判定を行う。ここでは、前回、
図15のステップ1505を実施した第一リンク候補点のリンクから現在の第一リンク候補点のリンクまでがつながっている否かを判定する。各第一リンク候補点のリンクがつながっている場合は、第一リンク候補点があるリンクを含むリンク列を車両の走行リンク列と判定する。一方、各第一リンク候補点のリンクがつながっておらず、かつ走行位置指示手段107から走行道路のリンク番号を取得していた場合は、当該リンク番号に対応するリンクを含むリンク列を車両の走行リンク列と判定する。なお、各第一リンク候補点のリンクがつながっておらず、かつ走行位置指示手段107から走行道路のリンク番号を取得していない場合は、走行リンク列の判定を行わない。ここで、あるリンクの始点と別のリンクの終点のノード番号が同じであるか否かに基づいて、リンクがつながっているかどうか否かを判定する。
【0161】
ステップ1506において、走行リンク判定手段122は、ステップ1505で走行リンク列を判定できたか否かを判定する。走行リンク列を判定できた場合はステップ1507に進む。一方、走行リンク列を判定できなかった場合は、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0162】
ステップ1507において、リンク位置補正実施判定手段123は、走行リンク列の位置誤差を算出する。ここでは、走行リンク列上の各リンク候補点について、当該リンク候補点に対応する推定位置、すなわち当該リンク候補点を求めたときの推定位置との間の距離を算出する。なお、ここで算出される距離は、各推定位置に対する走行リンク列の位置誤差に相当する。
【0163】
ステップ1508において、リンク位置補正実施判定手段123は、ステップ1507で算出した走行リンク列の位置誤差に基づいて、リンク位置の補正実施の判定を行う。ここでは、各推定位置に対する走行リンク列の位置誤差として算出した各距離を所定の閾値とそれぞれ比較し、その中に一つでも所定の閾値以上のものがあった場合は、リンク位置の補正を実施すると判定する。一方、走行リンク列の位置誤差が全て閾値未満であった場合は、リンク位置の補正を実施しないと判定する。なお、この判定に用いられる閾値は、前述のように、マップマッチングにおけるリンク位置誤差の許容量に相当する。
【0164】
ステップ1509において、リンク位置補正実施判定手段123は、ステップ1508でリンク位置の補正を実施すると判定したか否かを判断する。リンク位置の補正を実施すると判定した場合はステップ1510に進み、実施しないと判定した場合は、
図2のステップ205のリンク位置の補正を終了してステップ206へ進む。
【0165】
ステップ1510において、リンク位置補正範囲決定手段124は、車両の走行軌跡に基づいてリンク位置を補正する第三の補正範囲を決定する。ここで、走行リンク列において位置誤差が閾値を超えている範囲を、第三の補正範囲と決定する。より具体的には、走行リンク列に含まれる各リンクのうちで、ステップ1508で位置誤差が閾値以上であると判定されたリンク候補点にそれぞれ対応する1または2以上のリンクを特定する。そして、これらのリンクを全て含む範囲を、第三の補正範囲として設定する。
【0166】
ステップ1511において、リンク位置補正手段125は、第三の補正範囲に含まれる走行リンク列に対するノード位置の補正量を算出する。ここでは、走行リンク列の各リンクについて、そのリンク上の各リンク候補点とそれに対応する各推定位置との間の距離をそれぞれ算出し、これらの平均を当該リンクの位置誤差e
lとする。そして、前述の数式19及び数式20を用いて、走行リンク列に含まれる各ノードの位置補正量(Δx
rn,Δy
rn)を算出する。
【0167】
ステップ1512において、リンク位置補正範囲決定手段124は、第三の補正範囲の境界付近に、第四の補正範囲を決定する。ここではまず、第三の補正範囲の境界にそれぞれ位置する走行リンク列の各ノードからリンクに沿って、境界外に位置する各ノードまでの距離をそれぞれ算出する。この距離が数式22で算出される距離L
m以内の範囲を第四の補正範囲とする。ここでは、数式22において、e
bnは走行リンク列において第三の補正範囲の境界にあるノードの位置補正量のx成分Δx
pnbとy成分Δy
pnbの合成値、すなわち当該ノードに接続する第三の補正範囲内のリンクの位置誤差を表し、θ
pはマップマッチングにおける方位誤差の許容量を表している。
【0168】
ステップ1513において、リンク位置補正手段125は、数式23を用いて、第四の補正範囲内にある各ノードの位置補正量(Δx
ns,Δy
ns)を算出する。ここでは、数式23において、L
nsは第三の補正範囲の境界にあるノードから当該ノードまでのリンクに沿った距離を表し、θ
lbは第三の補正範囲の境界にあるリンクの方位を表している。
【0169】
ステップ1514において、リンク位置補正手段125は、ステップ1511、1513で算出した各ノードの位置補正量とそのノード番号とを、地図補正量記憶手段104内の当該ノードに対応するパーセル番号の記憶領域に格納する。
【0170】
(変形例13)
変形例12の実施の形態では、リンク位置を補正すると、第四の補正範囲内にある各リンクにおいて、方位誤差許容量に応じた方位誤差が発生する。そこで、こうした補正によるリンクの方位誤差を次のようにして取り除くようにしてもよい。
【0171】
図15のステップ1514において、リンク位置補正手段125は、補正対象の各ノードについて、前述のノード番号及びノードの位置修正量に加えて、さらに当該ノードが属する補正範囲の種類(第三の補正範囲または第四の補正範囲)を地図補正量記憶手段104に格納する。この補正範囲の種類に基づいて、マップマッチング手段112は、
図3のステップ308でリンクへのマップマッチング処理を行うときに、ステップ305でその位置を補正したノードが第三の補正範囲または第四の補正範囲のいずれに属するかを判断する。すなわち、評価量Tを計算するリンク候補点に対応するリンクの両端のノードのうち少なくとも一方のノードの位置がステップ305で補正されていた場合は、そのノードが第三の補正範囲または第四の補正範囲のいずれに属するかを判断する。
【0172】
その結果、少なくとも一方のノードが第四の補正範囲に属すると判断した場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、補正前のノード位置に応じたリンク方位を用いて評価量Tを計算する。一方、両端のノードがいずれも第三の補正範囲に属すると判断した場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、補正後のノード位置に応じたリンク方位を用いて評価量Tを計算する。また、それ以外の場合は、当該リンク候補点の方位θ
lの代わりに、地図情報記憶手段103に記憶されている道路情報が表す各ノードのノード位置からリンク方位を算出し、これを用いて評価量Tを計算する。このようにすれば、位置補正によって生じたリンク方位の誤差を取り除いて、評価量Tの誤差を低減することができる。その結果、誤ったリンクへのマッチングを防ぐことができる。
【0173】
(変形例14)
上記実施の形態において、地図補正量記憶手段104は、ノードの位置補正量とそのノード番号に加えて、さらに当該ノードの補正回数を記憶する。
図6のステップ515、517、
図15のステップ1511、1513において、地図補正量記憶手段104に、位置補正量を算出するノードの位置補正量が記憶されているかどうかを探索し、記憶されていない場合、数式19及び数式20、数式21、あるいは、数式23を用いて、ノードの位置補正量を算出する。記憶されている場合、数式19及び数式20、数式21、あるいは、数式23を用いて、ノードの位置補正量を算出するとともに、そのノードの位置補正量、ノード番号及び補正回数を読み込み、数式27を用いて、ノードの位置補正量(Δx
na,Δy
na)を算出する。ここで、(Δx
nm,Δy
nm)及びn
mは地図補正量記憶手段104に記憶されているノードの位置補正量及び補正回数を表し、(Δx
nc,Δy
nc)は
図6のステップ515、517、
図15のステップ1511、1513において数式19及び数式20、数式21、あるいは、数式23を用いて算出されたノードの位置補正量を表している。
【0175】
図6のステップ518及び
図15のステップ1514において、リンク位置補正手段125は、
図6のステップ515、517、
図15のステップ1511、1513において算出した各ノードの位置補正量とそのノード番号に加えて、さらに当該ノードの補正回数を地図補正量記憶手段104内の当該ノードに対応するパーセル番号の記憶領域に格納する。ここで、ノードの位置補正量が地図補正量記憶手段104に記憶されている場合、記憶されている補正回数に1を加えたものを格納し、記憶されていない場合、補正回数を1として格納する。本実施の形態では、補正回数分のノードの位置補正量を用いて、平均できるため、ノードの位置補正量の精度が向上する。
【0176】
(変形例15)
上記実施の形態において、
図3のステップ308で評価量Tを算出する数式9、及び、ステップ309で検定量T
pを算出する数式13において使用されるリンク候補点の位置(x
l,y
l)の代わりに、リンク1603の幅員及車両の走行方向を考慮して、
図16に示すように、推定位置1601に最も近い車線の中央に配置した位置1602(x
ll,y
ll)を用いてもよい。本実施の形態を用いると、道路の幅員が考慮されて、推定位置とリンク候補点との距離1604が算出できるため、評価量Tの精度が良くなり、間違ったリンクにミスマッチすることを低減できる。
【0177】
なお、以上説明した実施の形態および各変形例では、車両に搭載されて使用されるカーナビゲーション装置の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両以外の様々な移動体に搭載されて使用されるナビゲーション装置において適用可能である。また、移動体に搭載されて使用されるナビゲーション装置以外の様々な種類の情報端末、たとえば携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等においても適用可能である。
【0178】
以上説明した実施の形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。