特許第5852925号(P5852925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5852925
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   F16F13/10 J
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-135156(P2012-135156)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-257031(P2013-257031A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】畑中 桂史
(72)【発明者】
【氏名】清水 頼重
(72)【発明者】
【氏名】市川 浩幸
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−207629(JP,A)
【文献】 特開2008−196630(JP,A)
【文献】 実開平02−006834(JP,U)
【文献】 特開2013−210093(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されており、該第2の取付部材によって支持された仕切部材を挟んで一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で形成された受圧室が形成されていると共に、他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室が形成されて、更にそれら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が形成されていると共に、該仕切部材に形成された収容空所には可動膜が配設されて、該可動膜の両面に該受圧室の液圧と該平衡室の液圧の各一方が及ぼされている流体封入式防振装置において、
前記収容空所の壁内面に設けられて前記可動膜の打ち当たり面を覆う緩衝ゴムが、該可動膜に対する連結部をもって該可動膜と一体形成されて、該収容空所の該壁内面に重ね合わされて配置されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記緩衝ゴムが前記可動膜の両面にそれぞれ一体形成されており、前記収容空所の前記受圧室側の壁内面と前記平衡室側の壁内面とにそれぞれ該緩衝ゴムが重ね合わされて配置されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記収容空所の前記受圧室側の壁内面と前記平衡室側の壁内面との少なくとも一方において、該壁内面に重ね合わされて配置される前記緩衝ゴムが、それぞれ前記可動膜と一体形成された複数の分割緩衝ゴムによって構成されている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記可動膜を前記仕切部材に対して周方向で位置決めする位置決め手段が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記可動膜から厚さ方向外方に突出して前記連結部が形成されていると共に、該連結部の突出先端から屈曲して該可動膜と平行に広がる状態で前記緩衝ゴムが形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
前記可動膜の外周部分に前記連結部が突設されており、該連結部から該可動膜の径方向で反対側に向かって前記緩衝ゴムが延びるように広がっている請求項5に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記可動膜の一方の面に対向位置する前記緩衝ゴムと、該可動膜の他方の面に対向位置する前記緩衝ゴムとが、
該可動膜の径方向で対向する両端縁部から相互に反対面側に突出する2つの前記連結部をもって設けられており、該可動膜の径方向で互いに反対向きに延びるように広がっている請求項6に記載の流体封入式防振装置。
【請求項8】
前記可動膜において前記連結部から更に外方に突出した形状で前記緩衝ゴムが一体形成されており、該可動膜の前記収容空所への配設によって該緩衝ゴムが該収容空所の壁内面に押し当てられて倒れた状態で該収容空所の壁内面に重ね合わされている請求項1〜4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項9】
前記連結部が、前記緩衝ゴムよりも弾性変形し易くされている請求項8に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に用いられる防振装置に関するものであって、特に内部に封入された流体の流動作用に基づいた防振効果を利用する流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されてそれら部材を相互に防振連結乃至は防振支持せしめる防振装置の一種として、流体封入式防振装置が知られており、自動車のエンジンマウント等への適用が検討されている。流体封入式防振装置は、例えば特開2009−52675号公報(特許文献1)に示されているように、振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第1の取付部材と、振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる第2の取付部材とが、本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有している。更に、第2の取付部材によって支持された仕切部材を挟んで、一方の側には壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧室が形成されていると共に、他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室が形成されており、それら受圧室と平衡室がオリフィス通路によって相互に連通されている。
【0003】
また、特許文献1の流体封入式防振装置では、オリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数の振動入力に対して有効な防振効果を得るために、可動膜を用いた液圧吸収機構が設けられている。即ち、仕切部材の内部に形成された収容空所に可動膜を収容配置して、可動膜の微小変形によって受圧室の微小な容積変化を許容することで、高周波小振幅振動の入力に対して低動ばね化による振動絶縁効果が発揮されるようになっている。
【0004】
ところで、このような液圧吸収機構では、オリフィス通路がチューニングされた周波数域の振動入力時に受圧室の内圧変動を効率的に惹起させるために、可動膜の変形量が収容空所の壁内面への当接によって制限されるようになっており、受圧室の容積変化が規制されている。
【0005】
ところが、可動膜を収容空所の壁内面に当接させて、その変形乃至は変位を制限しようとすると、可動膜が収容空所の壁内面に打ち当たる際の衝撃力に起因して、打音が発生するという不具合があった。
【0006】
なお、収容空所の壁内面に緩衝ゴム層を被着形成することで、可動膜の打ち当たりによる衝撃力を緩和して打音を抑制することも考えられるが、部品点数の増加や製造工程数の増加等が避け難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−52675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部品点数の少ない簡単な構造によって、可動膜の仕切部材への当接に起因する打音を低減乃至は防止することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の第1の態様は、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、該第2の取付部材によって支持された仕切部材を挟んで一方の側には壁部の一部が該本体ゴム弾性体で形成された受圧室が形成されていると共に、他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室が形成されており、更にそれら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が形成されていると共に、該仕切部材に形成された収容空所には可動膜が配設されて、該可動膜の両面に該受圧室の液圧と該平衡室の液圧の各一方が及ぼされている流体封入式防振装置において、前記収容空所の壁内面に設けられて前記可動膜の打ち当たり面を覆う緩衝ゴムが、該可動膜に対する連結部をもって該可動膜と一体形成されて、該収容空所の該壁内面に重ね合わされて配置されていることを、特徴とする。
【0010】
このような第1の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、可動膜が収容空所の壁内面に当接することで生じる打音が、緩衝ゴムの内部摩擦等に基づくエネルギー減衰作用によって低減される。そこにおいて、緩衝ゴムが連結部をもって可動膜と一体形成されていることにより、部品点数の増加を要することなく緩衝ゴムを配設することができて、打音の低減を簡単な構造によって実現することが可能となる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記緩衝ゴムが前記可動膜の両面にそれぞれ一体形成されており、前記収容空所の前記受圧室側の壁内面と前記平衡室側の壁内面とにそれぞれ該緩衝ゴムが重ね合わされて配置されているものである。
【0012】
第2の態様によれば、収容空所における受圧室側の壁内面と平衡室側の壁内面とのそれぞれに緩衝ゴムが重ね合わされていることにより、可動膜の当接による打音がより効果的に低減される。更に、各壁内面に重ね合わされる緩衝ゴムが何れも可動膜と一体形成されていることから、部品点数の増加が回避される。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記収容空所の前記受圧室側の壁内面と前記平衡室側の壁内面との少なくとも一方において、該壁内面に重ね合わされて配置される前記緩衝ゴムが、それぞれ前記可動膜と一体形成された複数の分割緩衝ゴムによって構成されているものである。
【0014】
第3の態様によれば、比較的に小さな分割緩衝ゴムの複数によって、収容空所の壁内面を広い範囲に亘って覆うことが可能となる。それ故、脱型時に緩衝ゴムの千切れ等が防止されると共に、収容空所への配設状態において緩衝ゴムが自重で垂れ下がって収容空所の壁内面から離れてしまうといった不具合が回避される。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜を前記仕切部材に対して周方向で位置決めする位置決め手段が設けられているものである。
【0016】
第4の態様によれば、位置決め手段によって可動膜と一体形成された緩衝ゴムも仕切部材に対して位置決めされることから、緩衝ゴムが収容空所の壁内面に対して所定の位置に重ね合わされて配置される。それ故、目的とする当接打音の低減効果を有効に得ることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜から厚さ方向外方に突出して前記連結部が形成されていると共に、該連結部の突出先端から屈曲して該可動膜と平行に広がる状態で前記緩衝ゴムが形成されているものである。
【0018】
第5の態様によれば、緩衝ゴムが予め可動膜と平行に広がる状態で形成されていることから、収容空所の壁内面に重ね合わされて配置されることによる緩衝ゴムおよび連結部の変形が防止される。それ故、外力の非入力状態における初期応力を低減することができて、耐久性の向上が図られ得る。
【0019】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜の外周部分に前記連結部が突設されており、該連結部から該可動膜の径方向で反対側に向かって前記緩衝ゴムが延びるように広がっているものである。
【0020】
第6の態様によれば、緩衝ゴムの長さを大きく確保することができて、少ない連結部の数で収容空所の壁内面を広範囲に亘って緩衝ゴムで覆うことができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜の一方の面に対向位置する前記緩衝ゴムと、該可動膜の他方の面に対向位置する前記緩衝ゴムとが、該可動膜の径方向で対向する両端縁部から相互に反対面側に突出する2つの前記連結部をもって設けられており、該可動膜の径方向で互いに反対向きに延びるように広がっている。
【0022】
第7の態様によれば、連結部の形成によって剛性が大きくなる部分が、径方向一方向で対向する2箇所に配置されることから、可動膜の変形態様が安定すると共に、可動膜の中央部分における弾性変形が充分に許容される。
【0023】
本発明の第8の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜において前記連結部から更に外方に突出した形状で前記緩衝ゴムが一体形成されており、該可動膜の前記収容空所への配設によって該緩衝ゴムが該収容空所の壁内面に押し当てられて倒れた状態で該収容空所の壁内面に重ね合わされているものである。
【0024】
第8の態様によれば、緩衝ゴムが連結部から更に外方に突出した形状で形成されることから、可動膜の厚さ方向で組み合わされる簡単な金型構造によって、緩衝ゴムを一体で備えた可動膜を成形することができる。しかも、可動膜の収容空所への配設状態において、緩衝ゴムが収容空所の壁内面に押し当てられて倒れた状態で収容空所の壁内面に重ね合わされることから、緩衝ゴムおよび連結部の弾性によって緩衝ゴムが収容空所の壁内面に押し付けられた状態に保持される。それ故、自重による垂れ下がり等が防止されて、可動膜と緩衝ゴムとの対向面間距離が安定して所定寸法に維持される。
【0025】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記連結部が、前記緩衝ゴムよりも弾性変形し易くされているものである。
【0026】
第9の態様によれば、緩衝ゴムが収容空所の壁内面に押し当てられて、連結部が弾性変形することで、緩衝ゴムが倒れて収容空所の壁内面に重ね合わされる。これにより、配設時に緩衝ゴムの変形が低減されて、変形によるばね定数の変化が抑えられることから、目的とする緩衝作用を安定して得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、収容空所の壁内面における可動膜の打ち当たり部分を覆う緩衝ゴムが、可動膜に対して連結部をもって一体で形成されている。これにより、可動膜の収容空所の壁内面に対する当接によって生じる打音が、部品点数の少ない簡単な構造によって低減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2中のI−I断面に相当する図。
図2図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材の平面図。
図3図2のIV−IV断面図。
図4図3のIV−IV断面図。
図5図2に示された仕切部材を構成する弾性可動体の斜視図。
図6図5に示された弾性可動体の平面図。
図7図6のVII−VII断面図。
図8】本発明の第2の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
図9図8に示されたエンジンマウントを構成する弾性可動体の斜視図。
図10図9に示された弾性可動体の平面図。
図11図10のXI−XI断面図。
図12】本発明の別の1実施形態としてのエンジンマウントを構成する弾性可動体の縦断面図。
図13】本発明の第3の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、軸方向である図1中の上下方向を言う。
【0031】
より詳細には、第1の取付部材12は、鉄やアルミニウム合金等で形成された高剛性のブロック体であって、軸方向中間部分には外周側に突出するフランジ部18が一体形成されている。また、第1の取付部材12には、上面に開口して上下に直線的に延びるねじ穴20が形成されており、内周面にねじ山が形成されている。
【0032】
第2の取付部材14は、全体として略円筒形状を有しており、第1の取付部材12と同様の材料で形成された高剛性の部材とされている。また、第2の取付部材14の軸方向中間部分には段差部22が設けられており、段差部22よりも下方には上側よりも大径のかしめ片24が一体形成されている。更に、第2の取付部材14の上端部分には、上方に向かって拡開するテーパ部26が設けられており、テーパ部26の上端には外周側に突出するフランジ状の嵌着片28が一体形成されている。
【0033】
そして、第1の取付部材12が第2の取付部材14の上方に配置されて、それら第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を有しており、小径端部が第1の取付部材12に加硫接着されていると共に、大径端部が第2の取付部材14の内周面に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第1,第2の取付部材12,14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0034】
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所30が形成されている。大径凹所30は、本体ゴム弾性体16の大径端面に開口する凹所であって、上部が略逆向きすり鉢状を呈すると共に、下部が略一定の直径で延びる円柱状を呈している。
【0035】
更にまた、本体ゴム弾性体16の上方には、ストッパゴム32が本体ゴム弾性体16と一体形成されて、第1の取付部材12のフランジ部18の上面および外周面に固着されている。そして、第1の取付部材12のフランジ部18と、第2の取付部材14の嵌着片28にかしめ固定されたストッパ筒部材34との対向面間に、ストッパゴム32が配設されており、それらフランジ部18とストッパ筒部材34がストッパゴム32を介して当接することで、第1の取付部材12と第2の取付部材14の相対変位を緩衝的に制限するストッパ手段が構成される。
【0036】
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径端面から下方に延び出す略円筒状のシールゴム層36が一体形成されて、第2の取付部材14の内周面に固着されている。本実施形態のシールゴム層36は、内周面が下方に向かって次第に内径寸法が大きくなるテーパ面とされており、後述する仕切部材48を容易に挿入可能とされている。
【0037】
また、第2の取付部材14には、可撓性膜38が取り付けられている。可撓性膜38は、薄肉の略円板形状を呈するゴム膜であって、厚さ方向で充分に弛んでいる。更に、可撓性膜38の外周端部には、固定部材40が固着されている。固定部材40は、全体として略円環板形状とされて、上下両面の内周部分が可撓性膜38の外周端部に固着されており、上下両面の内周部分が可撓性膜38の外周端部で覆われている。
【0038】
そして、可撓性膜38は、固定部材40の外周部分が第2の取付部材14のかしめ片24によってかしめ固定されることで、第2の取付部材14の下端開口を閉鎖するように配設されている。本実施形態では、カップ状で取付ボルト42を植設されたブラケット44が、固定部材40と共に第2の取付部材14にかしめ固定されている。
【0039】
このような可撓性膜38の第2の取付部材14への取付けによって、本体ゴム弾性体16と可撓性膜38の対向面間には、外部空間から流体密に隔てられた流体封入領域46が形成されて、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域46に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が、何れも好適に採用され得る。更に、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を有利に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
【0040】
また、流体封入領域46には、仕切部材48が配設されている。仕切部材48は、図2図4に示されているように、全体として厚肉大径の略円板形状とされており、仕切部材本体50と底板部材52とを含んで構成されている。
【0041】
仕切部材本体50は、金属や合成樹脂で形成された厚肉大径の略円板形状を呈する部材であって、径方向中央部分には上面に開口する肉抜凹所54と下面に開口する嵌着凹所56が形成されている。更に、肉抜凹所54の底壁部には、4つの上透孔58が上下に貫通して形成されており、それら4つの上透孔58の周方向間には、十文字に延びる上桟部60が形成されている。更にまた、嵌着凹所56の底面には上収容凹所62が開口しており、上収容凹所62は、嵌着凹所56よりも小径とされていると共に、上部が下部よりも小径の段付き形状とされて、段差部分(下部の底面)が環状の上挟持面64とされている。また、仕切部材本体50の外周端部には、外周面に開口する周溝66が周方向に一周弱の長さで延びて形成されている。なお、肉抜凹所54と上収容凹所62は、上透孔58を通じて相互に連通されている。
【0042】
底板部材52は、金属や合成樹脂で形成された薄肉大径の略円板形状を呈する部材であって、径方向中央部分が外周部分よりも厚肉の嵌着部68とされている。また、嵌着部68の径方向中央部分には、上面に開口する下収容凹所70が形成されており、その外周側には嵌着部68の内周端上面を利用して下挟持面72が設けられている。更に、下収容凹所70の底壁部には、4つの下透孔74が上下に貫通して形成されており、それら4つの下透孔74の周方向間には、十文字に延びる下桟部76が形成されている。なお、下透孔74は、それぞれ上透孔58と略同一の断面形状で上下に延びており、4つの下透孔74が4つの上透孔58と周上で位置合わせされている。
【0043】
そして、仕切部材本体50の下方から底板部材52が重ね合わされて、底板部材52の嵌着部68が仕切部材本体50の嵌着凹所56に嵌め込まれている。このように仕切部材本体50と底板部材52が組み合されることにより、それら仕切部材本体50と底板部材52の間には、上収容凹所62と下収容凹所70を利用して、収容空所78が形成されている。収容空所78は、軸方向上下端部が小径とされていると共に、軸方向中間部分が大径とされて、外周端部において上下の挟持面64,72が軸方向に対向している。
【0044】
このような構造を有する仕切部材48は、第2の取付部材14によって内挿状態で支持されており、流体封入領域46内において軸直角方向に広がっている。これにより、流体封入領域46は、仕切部材48を挟んで軸方向両側に二分されており、仕切部材48の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧室80が形成されている一方、仕切部材48の下方には、壁部の一部が可撓性膜38で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室82が形成されている。なお、受圧室80と平衡室82には、非圧縮性流体が封入されている。
【0045】
また、仕切部材48の外周面がシールゴム層36を介して第2の取付部材14に重ね合わされており、周溝66の外周開口が第2の取付部材14によって流体密に覆蓋されて、トンネル状の流路が形成されている。このトンネル状流路の周方向一方の端部が上連通孔83を通じて受圧室80に連通されていると共に、他方の端部が下連通孔84を通じて平衡室82に連通されて、受圧室80と平衡室82を相互に連通するオリフィス通路85が形成されている。なお、オリフィス通路85は、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)に応じて設定される流動流体の共振周波数(チューニング周波数)が、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数に設定されている。
【0046】
ここにおいて、収容空所78には弾性可動体86が収容配置されている。弾性可動体86は、ゴム弾性体で形成されており、図5図7に示されているように、可動膜88と、上緩衝ゴム90および下緩衝ゴム92とを備えている。
【0047】
可動膜88は、略円板形状のゴム膜であって、径方向中央部分が略一定の厚さ寸法を有する膜部94とされていると共に、外周端部が、内周側が大径となるように異径の略半円形を組み合わせた断面形状を有する外周挟持部96とされている。
【0048】
上下の緩衝ゴム90,92は、略長手矩形板状のゴム弾性体であって、上緩衝ゴム90が可動膜88の上方に所定の距離を隔てて対向配置されていると共に、下緩衝ゴム92が可動膜88の下方に所定の距離を隔てて対向配置されている。また、本実施形態の緩衝ゴム90,92は、略一定の厚さ寸法で形成されており、可動膜88に比して薄肉とされている。更に、上下の緩衝ゴム90,92には、長手方向端部に係止突部98が一体形成されている。この係止突部98は、略四角柱形状とされて、緩衝ゴム90,92の厚さ方向に突出するように設けられており、上緩衝ゴム90では上方に突出していると共に、下緩衝ゴム92では下方に突出している。更にまた、係止突部98には、緩衝ゴム90,92の長手方向に開口して短手方向に延びる係止凹溝100が形成されている。なお、係止突部98における係止凹溝100よりも突出先端側は、突出先端に行くに従って緩衝ゴム90,92の長手方向で狭幅とされている。
【0049】
かくの如き可動膜88と上下の緩衝ゴム90,92は、図5図7に示されているように、連結部102a,102bを介して一体形成されている。連結部102は、可動膜88における膜部94の外周部分に一体形成されており、膜部94の厚さ方向両面にそれぞれ設けられて、略一定の矩形断面で厚さ方向外方に向かって突出している。そして、可動膜88の上面から上方に突出した連結部102aの突出先端が上緩衝ゴム90の長手方向端部と一体で接続されていると共に、可動膜88の下面から下方に突出した連結部102bの突出先端が下緩衝ゴム92の長手方向端部と一体で接続されている。これにより、可動膜88の両面に緩衝ゴム90,92の各一方が連結部102a,102bをもって一体形成されている。換言すれば、上下の緩衝ゴム90,92が、連結部102a,102bの各一方の突出先端から屈曲して可動膜88と略平行に広がる状態で形成されており、可動膜88に対して上下各一方の側に所定の距離を隔てて対向配置されている。このように、可動膜88と上下の緩衝ゴム90,92が連結部102a,102bを介して接続一体化されていることにより、可動膜88と上下の緩衝ゴム90,92とを一体で備えた弾性可動体86が構成されている。なお、分かり易さのために、可動膜88の上面に突設されるのを連結部102a、可動膜88の下面に突設されるのを連結部102bとする。
【0050】
なお、本実施形態では、連結部102a,102bが膜部94の外周部分に一体形成されており、緩衝ゴム90,92が連結部102a,102bから径方向(図6中、左右方向)で反対側に向かって延びるように広がっている。また、上緩衝ゴム90と可動膜88を連結する連結部102aと、下緩衝ゴム92と可動膜88を連結する連結部102bとが、膜部94における径方向で対向する両端部に設けられており、連結部102aの突出先端から延びる上緩衝ゴム90と、連結部102bの突出先端から延びる下緩衝ゴム92とが、径方向で互いに反対側に向かって延びるように広がっている。
【0051】
そして、弾性可動体86は、仕切部材48の収容空所78に配設されている。即ち、可動膜88は、大径とされた収容空所78の軸方向中央部分に配設されて、外周端部を上挟持面64と下挟持面72との対向面間で挟持されている。一方、上緩衝ゴム90が小径とされた収容空所78の軸方向上端部に配設されて、収容空所78の受圧室80側の壁内面104に重ね合わされていると共に、下緩衝ゴム92が小径とされた収容空所78の軸方向下端部に配設されて、収容空所78の平衡室82側の壁内面106に重ね合わされている。
【0052】
さらに、上緩衝ゴム90の係止突部98が仕切部材本体50に貫通形成された係止孔108に挿通されて係止されていると共に、下緩衝ゴム92の係止突部98が底板部材52に貫通形成された係止孔110に挿通されて係止されている。これにより、上下の緩衝ゴム90,92は、連結部102a,102bへの接続側とは反対側の長手方向端部も、収容空所78の壁内面104,106に重ね合わされた状態で保持されている。なお、本実施形態では、係止突部98が係止孔110に挿通されることで周方向に係止されており、上下の緩衝ゴム90,92およびそれらと一体形成された可動膜88を仕切部材48に対して周方向で位置決めする位置決め手段が構成されている。
【0053】
また、収容空所78は、上透孔58を通じて受圧室80に連通されていると共に、下透孔74を通じて平衡室82に連通されており、可動膜88の上面に受圧室80の液圧が及ぼされていると共に、可動膜88の下面に平衡室82の液圧が及ぼされている。これにより、振動入力によって受圧室80と平衡室82の間で相対的な圧力変動が生じると、可動膜88が微小変形することで受圧室80の液圧が平衡室82に伝達されるようになっており、もって液圧伝達機構が構成されている。
【0054】
さらに、可動膜88が振動入力時の弾性変形によって当接する収容空所78の壁内面104,106は、上下の緩衝ゴム90,92によって覆われており、可動膜88が収容空所78の壁内面104,106に対して上下の緩衝ゴム90,92を介して当接するようになっている。
【0055】
このような構造とされたエンジンマウント10は、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14がブラケット44を介して図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着されて、パワーユニットを車両ボデーに防振連結するようになっている。
【0056】
かかる車両装着状態において、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室80と平衡室82の相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路85を通じた流体流動が惹起される。これにより、流体の共振作用等の流動作用に基づいて、目的とする防振効果(振動減衰効果)が発揮される。
【0057】
なお、低周波大振幅振動の入力時には、可動膜88が収容空所78の壁内面104,106に押し当てられて実質的に拘束されることから、液圧伝達機構において発揮される液圧伝達作用が制限されるようになっている。これにより、受圧室80の内圧変動が効率的に惹起されて、オリフィス通路85を通じて流動する流体の量が充分に確保されることから、流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0058】
さらに、収容空所78の壁内面104,106には、緩衝ゴム90,92が重ね合わされていることから、可動膜88が収容空所78の壁内面104,106に当接する際の衝撃力が緩衝ゴム90,92によって緩和されて、当接時の打音が低減される。
【0059】
そこにおいて、緩衝ゴム90,92は、連結部102a,102bによって可動膜88に接続されており、それら可動膜88と緩衝ゴム90,92が弾性可動体86として一体形成されている。これにより、可動膜88の仕切部材48への当接による打音を、少ない部品点数で低減することができる。
【0060】
さらに、緩衝ゴム90,92が連結部102a,102bを介して可動膜88で支持されており、緩衝ゴム90,92を収容空所78の壁内面104,106に接着することなく、可動膜88の上下両側に緩衝ゴム90,92を配置することができることから、緩衝ゴム90,92の配設が容易である。
【0061】
しかも、本実施形態では、上緩衝ゴム90の連結部102aと反対側の端部と、下緩衝ゴム92の連結部102bと反対側の端部とに、それぞれ係止突部98が設けられており、係止突部98が仕切部材48の係止孔108,110の各一方に係止されている。これにより、上下の緩衝ゴム90,92の仕切部材48に対する相対回転が防止されていると共に、それら緩衝ゴム90,92を収容空所78の壁内面104,106に重ね合わされた状態で位置決め保持されて、特に上緩衝ゴム90が自重によって可動膜88側に撓むのを防ぐことができる。
【0062】
また、上緩衝ゴム90に接続される連結部102aと、下緩衝ゴム92に接続される連結部102bが、膜部94における径方向一方向で対向する外周部分に設けられている。それ故、膜部94において連結部102a,102bの形成によって剛性が変化する部分が、径方向で対向する両側に設けられて、膜部94の変形態様の安定化が図られる。
【0063】
さらに、上下の緩衝ゴム90,92がそれぞれ連結部102a,102bから可動膜88の径方向で反対側に向かって延びるように形成されている。それ故、上下の緩衝ゴム90,92の長さを大きく確保して、収容空所78の壁内面104,106を広い範囲に亘って緩衝ゴム90,92で覆うことができる。
【0064】
一方、アイドリング振動や走行こもり音等の中乃至高周波数の小振幅振動が入力されると、入力振動の周波数よりも低周波数にチューニングされたオリフィス通路85は、反共振によって実質的に遮断される。また、入力振動が小振幅であることから、受圧室80と平衡室82の相対的な圧力変化に基づいて可動膜88が厚さ方向に微小変形することで、受圧室80の液圧が平衡室82に伝達されて、平衡室82の容積変化で吸収される。それ故、受圧室80の圧力上昇による高動ばね化が防止されて、目的とする防振効果(振動絶縁効果)が発揮される。なお、可動膜88の膜部94と緩衝ゴム90,92が相互に略平行に広がっており、それら膜部94と緩衝ゴム90,92の間には所定の隙間が形成されていることから、膜部94の微小変形が緩衝ゴム90,92によって制限されることなく生じて、液圧伝達作用が有効に発揮されるようになっている。
【0065】
図8には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第2の実施形態として、自動車用のエンジンマウント120が示されている。なお、以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0066】
本実施形態のエンジンマウント120は、仕切部材48の収容空所78に弾性可動体122が配設されている。弾性可動体122は、図9図11に示されているように、可動膜88と、分割緩衝ゴムとしての一対の上緩衝ゴム124,124および一対の下緩衝ゴム126,126とを、一体で備えている。
【0067】
上緩衝ゴム124は、上下方向に延びる長手板状のゴム弾性体であって、連結部102aを介して可動膜88における膜部94の上面外周部分に一体で接続されている。要するに、可動膜88の上面から上方に向かって一体形成された板状のゴム弾性体が突出しており、その基端部が連結部102aとされていると共に、連結部102aから更に上方に延び出した先端部が上緩衝ゴム124とされている。また、上緩衝ゴム124は、径方向一方向で対向して一対が設けられており、後述する倒れ変形後にそれら一対の上緩衝ゴム124,124の突出先端が相互に当接しないように、上緩衝ゴム124,124の突出高さと径方向での対向間距離とが設定されている。
【0068】
下緩衝ゴム126は、上緩衝ゴム124と同様に、上下方向に延びる長手板状のゴム弾性体であって、連結部102bを介して可動膜88における膜部94の下面外周部分に一体で接続されている。要するに、可動膜88の下面から下方に向かって一体形成された板状のゴム弾性体が突出しており、その基端部が連結部102bとされていると共に、連結部102bから更に下方に延び出した先端部が下緩衝ゴム126とされている。また、下緩衝ゴム126は、径方向一方向で対向して一対が設けられており、後述する倒れ変形後にそれら一対の下緩衝ゴム126,126の突出先端が相互に当接しないように、下緩衝ゴム126,126の突出高さと径方向での対向間距離とが設定されている。なお、一対の上緩衝ゴム124,124と一対の下緩衝ゴム126,126は、互いに同じ位置で上下反対側に向かって突出するように形成されている。
【0069】
そして、このような構造とされた弾性可動体122は、仕切部材48の収容空所78に配設されている。そこにおいて、上緩衝ゴム124と下緩衝ゴム126は、弾性可動体122の収容空所78への配設時に、図11に矢印および2点鎖線で示されているように、各連結部102が弾性変形することで、径方向内方に倒れて可動膜88の膜部94と略平行に広がった状態で収容空所78の壁内面104,106に重ね合わされている(図8参照)。なお、上緩衝ゴム124と下緩衝ゴム126の倒れ変形は、弾性可動体122の収容空所78への配設時に、それら上緩衝ゴム124と下緩衝ゴム126が収容空所78の壁内面104,106に押し当てられることで実現される。
【0070】
このような本実施形態に従う構造のエンジンマウント120においても、第1の実施形態と同様に、可動膜88が収容空所78の壁内面104,106に当接することによる打音を、少ない部品点数で低減することができる。
【0071】
しかも、本実施形態の弾性可動体122は、収容空所78に配設される前の弾性可動体122単品において、上下の緩衝ゴム124,126が上下に直線的に突出していることから、弾性可動体122を上下2分割の簡単な金型構造によって成形することが可能であり、安価且つ効率的に製造することができる。
【0072】
さらに、可動膜88の上面において一対の連結部102a,102aが径方向一方向で対向する外周部分に設けられており、一対の上緩衝ゴム124,124が径方向に対向して配置されている。これにより、各上緩衝ゴム124の長さを小さくしつつ、収容空所78の受圧室80側の壁内面104を広い範囲に亘って覆うことができる。同様に、一対の下緩衝ゴム126,126が径方向に対向して配置されており、下緩衝ゴム126においても長さを小さくしつつ、収容空所78の平衡室82側の壁内面106を広い範囲に亘って覆うことができる。なお、上下の緩衝ゴム124,126の長さが小さくされていることにより、成形後の脱型性にも優れており、切れ等の損傷を生じることなく金型から容易に取り外すことができる。
【0073】
なお、図12に示された弾性可動体130のように、連結部132を充分に薄肉とすることで、連結部132を上下の緩衝ゴム124,126よりも弾性変形し易くして、緩衝ゴム124,126を倒れ易くすることもできる。なお、連結部132の厚さは特に限定されるものではなく、極めて薄肉のバリ状とされていても良いし、緩衝ゴム124,126に比して薄肉の板状とされていても良い。また、本実施形態では、径方向内側に開口する溝状のすぐり部が形成されることによって、連結部132が薄肉とされているが、径方向外側や径方向の内外両側に開口するように、すぐり部が形成されることで、連結部が薄肉とされていても良い。
【0074】
また、上下の緩衝ゴム124,126を収容空所78の壁内面104,106に押し当てて、可動膜88と略平行に広がるように倒れ込ませる際に、上下の緩衝ゴム124,126が内周側に倒れ易くするために、上下の緩衝ゴム124,126の突出先端面を傾斜面で構成したり、上下の緩衝ゴム124,126の全体を予め突出先端に向かって内周側に傾斜するように形成しても良い。
【0075】
図13には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第3の実施形態として、自動車用のエンジンマウント140が示されている。このエンジンマウント140では、仕切部材48の収容空所78に弾性可動体142と下緩衝ゴム144とが収容配置されている。
【0076】
弾性可動体142は、第1の実施形態に示された弾性可動体86から下緩衝ゴム92およびそれに接続された連結部102bを取り除いたような構造とされており、可動膜88と上緩衝ゴム90とを連結部102aで一体化した構造を有している。
【0077】
下緩衝ゴム144は、弾性可動体142とは別体とされた略略矩形板形状のゴム弾性体であって、下方に突出する係止突部146が一体形成されている。この係止突部146は、基部(上部)148が略一定の矩形断面を有していると共に、端部(下部)150が逆向きの略四角錐台形状とされて、端部150の大径側端部が基部148よりも大きな断面形状を有していることで、係止段差部152が形成されている。
【0078】
そして、弾性可動体142が上収容凹所62に配設されており、可動膜88の外周挟持部96が仕切部材本体50と底板部材52の間で挟持されていると共に、上緩衝ゴム90が上収容凹所62の受圧室80側の壁内面104に重ね合わされている。更に、下緩衝ゴム144は、下収容凹所70に配設されており、係止突部146が下収容凹所70の底壁部に貫通形成された係止孔110に挿通係止されることで、底板部材52に対して位置決めされている。
【0079】
このように下緩衝ゴム144が弾性可動体142と別体とされた構造においても、可動膜88が収容空所78の壁内面104,106に当接する際の打音が有効に低減される。しかも、上緩衝ゴム90が可動膜88と一体形成されていることから、上下の緩衝ゴムが何れも可動膜88とは別体で設けられる場合に比して、部品点数の削減も図られる。
【0080】
なお、弾性可動体が可動膜88と下緩衝ゴム92を連結部102bを介して一体形成した構造とされていると共に、上緩衝ゴムが弾性可動体とは別体で設けられていても良い。要するに、本発明に係る構造では、上緩衝ゴムと下緩衝ゴムの少なくとも一方が、可動膜88と一体で形成されていれば良く、必ずしも両方の緩衝ゴムが可動膜88と一体である必要はない。
【0081】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、連結部102が可動膜88の膜部94の外周部分に設けられていたが、連結部は可動膜88の径方向中央部分に設けられていても良い。このように連結部を径方向の中央部分に設ける場合には、緩衝ゴムは、少なくとも収容空所78への配設状態において外周側に向かって延びるように形成されることで充分な長さが確保されて、収容空所78の壁内面104,106に対して広い範囲で重ね合わせることができる。
【0082】
また、緩衝ゴムは、径方向に延びるものに限定されず、軸直角方向で径方向以外に延びていても良い。
【0083】
また、緩衝ゴムは、可動膜88と平行をなして略軸直角方向に延びるものと、可動膜88と直交して略軸方向に延びるものだけには限定されず、例えば突出先端側(連結部と反対側の端部)に向かって次第に可動膜88から離隔するように傾斜して広がっていても良い。これによれば、弾性に基づいて緩衝ゴムを収容空所78の壁内面104,106に押し当てることができると共に、収容空所78への配設状態で過大な変形を防止することで耐久性の向上が図られ得る。
【0084】
また、前記第1,第3の実施形態では、位置決め手段として、緩衝ゴム90,92と一体形成された係止突部98が、仕切部材48に形成された係止孔108,110に挿通係止された構造が例示されているが、位置決め手段はこのような例示によって限定的に解釈されるべきではない。即ち、例えば、収容空所78の周上に部分的な拡径部を設けると共に、可動膜88の外周挟持部96の周上に部分的に外周側に突出する大径部を設けて、大径部を拡径部に嵌め入れることで、可動膜88を仕切部材48に対して位置決めする位置決め手段が構成されていても良い。
【0085】
また、第2の実施形態の構造において、上緩衝ゴム124と下緩衝ゴム126をそれぞれ周上で等間隔に4つずつ設けて、軸方向視で略十文字形状を呈する上下の桟部60,76が略全体に亘って緩衝ゴム124,126で覆われるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0086】
10,120,140:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第1の取付部材、14:第2の取付部材、16:本体ゴム弾性体、38:可撓性膜、48:仕切部材、78:収容空所、80:受圧室、82:平衡室、85:オリフィス通路、86,122,130,142:弾性可動体、88:可動膜、90,124:上緩衝ゴム(緩衝ゴム)、92,126:下緩衝ゴム(緩衝ゴム)、98:係止突部(位置決め手段)、102,132:連結部、104,106:壁内面、108,110:係止孔(位置決め手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13