(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の基本的な概念について説明する。
本発明は、オフサイト型水素ステーション及びオフサイト型水素ステーションに対する水素の供給方法を提供する。本発明は、従来に比べて、オフサイト型水素ステーション(以下単に「水素ステーション」という)に水素を供給するために他の場所より搬送されてきた水素輸送用容器から短時間でより多くの水素を当該水素ステーションに移送する(すなわち、短時間での水素の荷卸し)することを可能とする。これにより、水素輸送用容器の前記水素ステーションへの留め置きを不要とし、前記水素ステーションにおける設備面での負担を低減すると共に、前記水素ステーションに対する水素の供給コスト(特に、水素の輸送コスト)を低減する。
ここで、前記水素輸送用容器とは、主に他の場所で水素が充填されてトラクタやトラックなどの輸送用車両によって搬送される容器のことをいい、水素トレーラー、水素カードル、水素タンクなどが含まれる。
【0012】
具体的に、本発明による水素ステーションは、水素を水素燃料タンク(例えば、燃料電池自動車(FCV)の燃料タンク)に充填するものであり、水素を貯留可能な複数の蓄圧器を有する蓄圧ユニットと、各蓄圧器に貯留された水素を前記水素燃料タンクに充填可能なディスペンサーと、を備えている。また、本発明による水素ステーションは、当該水素ステーションに到着した前記水素輸送用容器に配管を介して接続可能に構成され、前記水素輸送用容器内の水素が差圧によって移送されると共に移送された水素を貯留可能な貯留容器を備えている。
【0013】
ここで、前記複数の蓄圧器の全部又は一部を前記貯留容器として利用できる。例えば、前記水素輸送用容器の到着時に当該水素輸送用容器内の圧力よりも内圧が低い状態にある一つ又は複数の蓄圧器を前記貯留容器として使用することができる。前記貯留容器として使用される蓄圧器は、前記ディスペンサーが前記水素燃料タンクに水素を充填したことによってその内圧が低下した蓄圧器でもよいし、貯留する水素が他の蓄圧器に移送されることによってその内圧が前記水素輸送用容器内の圧力よりも低い状態とされた蓄圧器でもよい。これらの場合には、前記水素輸送用容器が前記水素ステーションに到着した際に、例えば水素移送管を前記水素輸送用容器に装着して当該水素輸送用容器と前記蓄圧ユニットとを接続する。これにより、前記水素輸送用容器内の圧力と、前記貯留容器として使用される蓄圧器の内圧との差に応じた量の水素が前記水素輸送用容器から水素ステーションへと移送(供給)される。
【0014】
また、前記水素輸送用容器内の圧力より内圧の低い低圧容器を前記蓄圧ユニットとは別に設け、この低圧容器を前記貯留容器として使用してもよい。この場合には、前記水素輸送用容器が水素ステーションに到着した際に、例えば水素移送管を前記水素輸送用容器に装着して当該水素輸送用容器と前記低圧容器とを接続する。これにより、前記水素輸送用容器内の圧力と、前記低圧容器の内圧との差に応じた量の水素が前記水素輸送用容器から水素ステーションへと移送(供給)される。
なお、前記低圧容器は、前記水素輸送用容器から差圧によって水素が移送されると共に移送された水素を貯留する専用の容器とすることができる。また、例えば、水素ステーションが複数の圧縮機によって水素を複数段に昇圧させる構成である場合には、圧縮機の間に配置される容器(例えば、一段目の圧縮機で昇圧された水素を一時的に貯留する容器)を前記貯留容器として利用することができる。
【0015】
前記水素輸送用容器内の水素を差圧によって前記水素ステーションへと移送することにより、従来のように圧縮機などを稼働させて移送する場合に比べて、短時間でより多くの水素を水素輸送用容器から水素ステーションへと移送することができる。すなわち、前記水素ステーションへの水素の荷卸し時間を短縮することが可能となる。この結果、前記水素輸送用容器の前記水素ステーションへの留め置きを不要とし、例えば、前記水素輸送用容器を搭載等した前記輸送用車両が一回の運行で複数の水素ステーションを巡回して各水素ステーションに水素を供給することが可能となる。
【0016】
なお、前記輸送用車両が複数の水素ステーションを巡回する場合には、例えば当該輸送用車両が各水素ステーションから前記貯留容器の関する状態情報を入手し、前記貯留容器の内圧が高い水素ステーションから順番に巡回するようにするのが好ましい。また、前記輸送用車両が複数の水素輸送用容器を搭載してもよい。このようにすると、前記輸送用車両の一回の運行で、より多くの水素ステーションに対して水素を供給(荷卸し)することができる。
【0017】
さらに、前記水素ステーションが圧縮機を備える場合には、前記水素輸送用容器内の水素を差圧によって前記貯留容器(前記蓄圧器や前記低圧容器)に移送した後に、前記圧縮機を稼働させることにより、前記水素輸送用容器内の水素を前記圧縮機で昇圧させて前記蓄圧ユニットに移送するようにしてもよい。但し、この圧縮機を稼働させての水素の移送は、必ずしも実施する必要はなく、例えば、前記水素輸送用容器が前記水素ステーションに到着してからの経過時間を考慮して、前記水素輸送用容器の当該水素ステーションにおける滞在時間が長くならないように、予め設定された所定時間(例えば2時間)を超えない範囲で適宜実施すればよい。
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を適用した実施形態について具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による水素ステーション(オフサイト型水素ステーション)1Aの構成を示している。
図1に示すように、本実施形態による水素ステーション1Aは、蓄圧ユニット2と、ディスペンサー3と、制御装置4Aと、を備えている。
【0019】
蓄圧ユニット2は、当該蓄圧ユニット2に水素が流入する入口部2aと当該蓄圧ユニット2から水素が流出する出口部2bとを有している。
蓄圧ユニット2の入口部2aには、水素移送管4の一端が接続される。水素移送管4の他端は水素輸送用容器50に着脱可能に構成されており、この水素移送管4の他端が水素輸送用容器50に装着されることにより、当該水素移送管4を介して水素輸送用容器50と蓄圧ユニット2とが接続される。また、蓄圧ユニット2の出口部2bには、水素送出管5の一端が接続されており、水素送出管5の他端はディスペンサー3に接続されている。
【0020】
蓄圧ユニット2は、複数の(ここでは四つ)の蓄圧器バンク21を含み、各蓄圧器バンク21は、水素を貯留可能な複数(ここでは三つ)の蓄圧器211で構成されている。
蓄圧器211は、水素を充填する入口と水素を放出する出口が共通に構成されている。各蓄圧器211は、その出入口に設けられた専用の弁機構212と、蓄圧器バンク21毎に設けられた逆止弁22及び弁機構(例えば電磁弁)23を介して入口部2a(さらには水素移送管4)に接続されている。逆止弁22は、蓄圧器バンク21側から水素移送管4側へと向かって水素が流れることを防止する。また、各蓄圧器211は、その出入口に設けられた専用の弁機構212と、蓄圧器バンク21毎に設けられた弁機構(例えば電磁弁)24及び逆止弁25を介して出口部2b(さらには水素送出管5)に接続されている。逆止弁25は、水素送出管5側から蓄圧器バンク21側へと向かって水素が流れることを防止する。
【0021】
この蓄圧ユニット2では、弁機構24を全て閉じた状態で弁機構23及び弁機構212を選択的に開くことによって水素移送管4と所定の蓄圧器211とを連通させ、これにより、水素移送管4を介して蓄圧ユニット2に流入する水素を前記所定の蓄圧器211へと導く(すなわち、水素を充填する)ことができる。また、弁機構23を全て閉じた状態で弁機構24及び弁機構212を選択的に開くことによって水素送出管5と所定の蓄圧器211とを連通させ、これにより、前記所定の蓄圧器211から水素を放出させてディスペンサー3へと供給することができる。したがって、弁機構23及び弁機構212が本発明の「第1の機構」に相当し、弁機構24及び弁機構212が本発明の「第2の機構」に相当する。
【0022】
ディスペンサー3は、各蓄圧器211に貯留された水素を燃料電池自動車(FCV)の燃料タンク等の水素燃料タンクに充填することができる装置であり、具体的には、いずれかの蓄圧器211から放出された水素を前記水素燃料タンクに充填する。また、ディスペンサー3には、前記燃料電池自動車(FCV)などから前記水素燃料タンクに関する情報(残圧、最高使用圧力など)が入力される。
【0023】
制御装置4Aには、圧力検知部101によって検知された各蓄圧器211の内圧(残圧)やディスペンサー3に入力された前記水素燃料タンクに関する情報を含む各種情報が入力される。また、制御装置4Aは、圧力検知部101によって検知された各蓄圧器211の内圧(残圧)や前記水素燃料タンクに関する情報などを表示する表示部(図示省略)を有している。
そして、制御装置4Aは、入力された各種情報やオペレータによる動作指令などに基づいて、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を適宜制御する。なお、デフォルト状態において、弁機構23、弁機構24及び弁機構212は閉じているものとする。
【0024】
ここで、水素ステーション1Aで実施される処理について説明する。
(水素燃料タンクへの水素の充填)
制御装置4Aは、例えばオペレータから水素の充填指令が入力されると、充填対象の水素燃料タンクに関する情報(残圧や最高使用圧力など)及び各蓄圧器211の内圧(残圧)に基づいて、蓄圧ユニット2の有する複数の蓄圧器バンク21のうちいずれか一つの蓄圧器バンク21を選択する。
【0025】
具体的には、制御装置4Aは、まず前記水素燃料タンクの残圧及び最高使用圧力、各蓄圧器バンク21を構成する蓄圧器211の残圧状態などに基づき、充填対象の前記水素燃料タンクに対して最も効率的に水素を充填できる蓄圧器バンク21を選択する。但し、これに限るものではなく、オペレータによる選択指令に基づいて制御装置4Aが蓄圧器バンク21を選択するように構成してもよい。
【0026】
次に、制御装置4Aは、選択した蓄圧器バンク21に対応する弁機構24を開き、選択した蓄圧器バンク21の各蓄圧器211の内圧(残圧)及び前記水素燃料タンクの内圧を監視しながら、前記水素燃料タンクの内圧よりも高く、かつ、前記水素燃料タンクの内圧に最も近い残圧の蓄圧器211から水素を放出させるように弁機構212を制御する(すなわち、対応する弁機構212を開く)。
したがって、制御装置4Aは、前記水素燃料タンクへの水素の充填中に、水素を放出していた蓄圧器211の残圧が前記水素燃料タンクの内圧近くになると、当該蓄圧器211からの水素の放出を停止し、当該蓄圧器211よりも残圧の高い別の蓄圧器211から水素を放出させるように弁機構212を制御する。すなわち、水素を放出させる蓄圧器211を切り替える。このようにして前記水素燃料タンクへの水素の充填を行うことにより、水素の圧力エネルギーの損失等を抑制して効率的な水素の充填を行うことができる。
【0027】
その後、制御装置4Aは、前記水素燃料タンクの内圧がその最高使用圧力に応じて設定される所定圧力となった場合、又は、前記水素燃料タンクの内圧よりも高い残圧の蓄圧器211がなくなった場合に、蓄圧器211からの水素の放出を停止させるように弁機構212を制御して(すなわち、対応する弁機構212を閉じて)前記水素燃料タンクへの水素の充填を終了する。
【0028】
(水素ステーション1Aに対する水素の供給)
水素ステーション1Aには、水素輸送用容器50内の水素が供給される。より具体的には、水素輸送用容器50が水素ステーション1Aに到着すると、当該水素輸送用容器50から水素ステーション1へと水素が移送(荷卸し)される。
【0029】
図2は、水素輸送用容器50から水素ステーション1Aへの水素の移送(荷卸し)処理を示すフローチャートである。
ステップS1では、水素ステーション1Aに到着した水素輸送用容器50の水素供給口(図示省略)に水素移送管4(の前記他端)を装着する。これにより、水素輸送用容器50は、水素移送管4を介して蓄圧ユニット2(の入口部2a)に接続される。このとき、水素輸送用容器50は、前記輸送用車両に搭載され又は連結されたままの状態である。
【0030】
ステップS2では、水素輸送用容器50の水素供給弁(図示省略)を開く。この水素供給弁は、例えば前記水素供給口又はその近傍に設けられており、当該水素供給弁を開くことによって水素輸送用容器50から水素ステーション1Aへの水素の移送(荷卸し)が可能な状態となる。
【0031】
ステップS3では、水素輸送用容器50内の圧力よりも残圧(内圧)が低い状態にある蓄圧器211と水素輸送用容器50とを連通させるように、対応する弁機構23及び弁機構212を開く。これにより、水素輸送用容器50内の水素が当該水素輸送用容器50内の圧力よりも残圧(内圧)が低い状態にある蓄圧器211へと差圧によって移送される。
【0032】
ステップS4では、水素輸送用容器50と連通させた蓄圧器211の内圧変化量(又は内圧変化率)が所定値以下(例えば、ほぼ0)となったか否か(すなわち、差圧移送が完了したか否か)を判断し、前記内圧変化が前記所定値以下となるとステップS5に進む。なお、流量計等を設け、水素輸送用容器50と連通させた蓄圧器211への水素の流入速度(移送速度)が所定値以下(例えば、ほぼ0)になったか否かを判断するようにしてもよい。
ステップS5では、ステップS3で開いた弁機構23及び弁機構212を閉じる。
【0033】
ここで、水素輸送用容器50内の圧力よりも残圧(内圧)が低い状態にある蓄圧器211が複数ある場合には、ステップS13〜S15の処理は、当該複数の蓄圧器211に対して同時に行うようにしてもよいし、蓄圧器211毎に行うようにしてもよい。
【0034】
ステップS6では、前記水素供給弁を閉じる。
ステップS7では、水素移送管4を水素輸送用容器50の水素供給口から外す。
これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Aへの水素の移送(荷卸し)が完了する。また、水素輸送用容器50が搭載又は連結された輸送用車両の当該水素ステーション1Aからの移動が可能となる。このため、例えば水素輸送用容器50を別の水素ステーションへと移動させて当該別の水素ステーションに水素を供給することができる。
【0035】
本実施形態による水素ステーション1Aでは、水素輸送用容器50の到着時に当該水素輸送用容器50の圧力よりも残圧(内圧)が低い状態にある蓄圧器211を前記貯留容器として使用し、水素輸送用容器50から水素ステーション1Aへと差圧によって水素の移送(水素の荷卸し)を行うようにしている。これにより、水素ステーション1Aに対して速やかに水素を荷卸しすることができる。なお、本実施形態において、水素移送管4が本発明の「差圧移送管」に相当する。
【0036】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態による水素ステーション(オフサイト型水素ステーション)1Bの構成を示している。
図3において、第1実施形態による水素ステーション1A(
図1)と共通する要素については同一の符号を付し、その機能も同じであるものとする。
【0037】
第1実施形態による水素ステーション1Aと第2実施形態による水素ステーション1Bとの主な相違点は、第2実施形態による水素ステーション1Bは、水素を昇圧して蓄圧ユニット2に供給可能な圧縮機6と、水素送出管5から分岐して各蓄圧器211から放出された水素を圧縮機6の入口側に戻す水素戻し管7と、水素戻し管7を開閉する弁機構(例えば電磁弁)8と、を備えること、及び、蓄圧ユニット2の入口部2aに接続される水素移送管4が、圧縮機6が設けられた直管部41と、直管部41の途中で分岐して圧縮機6を迂回するバイパス管部42とで構成されていること、である。なお、バイパス管部42には逆止弁71が設けられている。
【0038】
第2実施形態において、各蓄圧器バンク21は、貯留する水素の圧力(充填圧力)を異ならせた複数(ここでは三つ)の蓄圧器211で構成されている。例えば、各蓄圧器バンク21は、40MPaの水素を貯留するように設定された蓄圧器211、70MPaの水素を貯留するように設定された蓄圧器211、及び、82MPaの水素を貯留するように設定された蓄圧器211で構成されている。また、第2実施形態において、水素輸送用容器50は、例えば45MPaの水素を充填可能に形成され、前記水素燃料タンクは、例えば70MPaの水素を充填可能に形成されている。
【0039】
制御装置4Bには、圧力検知部101によって検知された各蓄圧器211の内圧(残圧)やディスペンサー3に入力された前記水素燃料タンクに関する情報を含む各種情報が入力される。そして、制御装置4Bは、入力された各種情報やオペレータによる動作指令などに基づいて、圧縮機6、弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を適宜制御する。なお、弁機構23、弁機構24及び弁機構212と同様、デフォルト状態において、弁機構8は閉じているものとする。
【0040】
次に、水素ステーション1Bで実施される処理について説明する。
(水素燃料タンクへの水素の充填)
第2実施形態による水素ステーション1Bにおいても、制御装置4Bが第1実施形態の制御装置4Aと同様の処理を行うことにより前記水素燃料タンクへの水素の充填を行う。
【0041】
(蓄圧器バンク21間(蓄圧器211間)における水素の移送)
複数の水素燃料タンクに対して水素の充填を行うと、全ての蓄圧器211の残圧が低くなってしまい、どの蓄圧器バンク21を選択しても充填対象の水素燃料タンクに十分な水素を充填できなくなるおそれがある。そこで、このようなおそれを可能な限り解消するため、本実施形態による水素ステーション1Bでは、蓄圧器バンク21間(さらに言えば、蓄圧器211間)における水素の移送を可能としている。この水素の移送は、制御装置4Bが、圧縮機6、弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を適宜制御することによって実施される。
【0042】
制御装置4Bは、少なくとも一つの蓄圧器バンク21が所定値以上の残圧の蓄圧器211を有する状態を維持するように、蓄圧器バンク21間で水素を移送させる。すなわち、所定の蓄圧器バンク21を構成する蓄圧器211から他の蓄圧器バンク21を構成する蓄圧器211へと水素を移送させる。制御装置4Bは、例えば、二つの蓄圧器バンク21の全ての蓄圧器211の残圧が前記所定値未満となった場合に、一方の蓄圧器バンク21から他方の蓄圧器バンク21へと水素を移送させるように、圧縮機6、弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を制御することができる。ここで、前記所定値は任意に設定することができるが、前記水素燃料タンクの最高使用圧力以上の値(例えば、蓄圧器211の最高設定圧力である82MPa)とすることが好ましい。
【0043】
具体的には、制御装置4Bは、まず、前記二つの蓄圧器バンク21の各蓄圧器211の残圧に基づいて前記二つの蓄圧器バンクのうち残留水素が少ない方の蓄圧器バンク21を水素の移送元の蓄圧器バンク21、残留水素が多い方の蓄圧器バンク21を水素の移送先の蓄圧器バンク21として決定する。次に、制御装置4Bは、弁機構8、前記移送先の蓄圧器バンク21に対応する弁機構23及び前記移送元の蓄圧器バンク21に対応する弁機構24を開く。そして、制御装置4Bは、圧縮機6を稼働させると共に、前記移送先の蓄圧器バンク21の蓄圧器バンク211のうち残圧の最も高い蓄圧器211の出入口に設けられた弁機構212を開き、圧縮機6を稼働させ、前記移送元の蓄圧器バンク21の各蓄圧器211の出入口に設けられた弁機構212を選択的に開くように制御する。
これにより、前記移送元の蓄圧器バンク21の蓄圧器211内の水素は、水素戻し管7を介して圧縮機6の入口側へと導かれ、圧縮機6で昇圧されて前記移送先の蓄圧器バンク21の前記記残圧の最も高い蓄圧器211へと移送される。
【0044】
制御装置4Bは、前記移送先の蓄圧器バンク21の前記残圧の最も高い蓄圧器211内の圧力が前記所定値以上となると、蓄圧器バンク21間における水素の移送処理を終了する。ここで、前記移送元の蓄圧器バンク21に残留した水素を前記移送先の蓄圧器バンク21の他の蓄圧器211に移送するようにしてもよい。また、前記移送元の蓄圧器バンク21に残留した水素は、前記移送先の蓄圧器バンク21とは別の蓄圧器バンク21の全ての蓄圧器211の残圧が前記所定値未満となった場合に、当該別の蓄圧器バンク21に移送する水素として利用することもできる。
【0045】
制御装置4Bは、このような蓄圧器バンク21間における水素の移送処理を実施することにより、少なくとも一つの蓄圧器バンク21が前記所定値以上の残圧の蓄圧器211を有する状態を維持する。但し、これに限るものではなく、制御装置4Bは、様々な態様での蓄圧器バンク21間又は蓄圧器211間における水素の移送処理が可能である。
【0046】
(水素ステーション1Bに対する水素の供給(荷卸し))
(1)事前処理
本実施形態においては、水素輸送用容器50内の水素が差圧によって移送されると共に移送された水素を貯留する貯留容器として、複数(四つ)の蓄圧器バンク21のうちの少なくともいずれか一つの蓄圧器バンク21を使用する。そのため、水素ステーション1Bでは水素輸送用容器50の到着前に事前処理が実施される。この事前処理は、所定の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211から他の蓄圧器バンク21を構成する蓄圧器211へと水素を移送させ、これにより、当該所定の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211の内圧を水素輸送用容器50内の圧力よりも低い状態として(さらに言えば、ほぼ空にして)当該所定の蓄圧器バンク21を前記貯留容器として準備するものである。
なお、この事前処理は、水素輸送用容器50の到着前に実施されるものであればよく、上述した蓄圧器バンク21間(蓄圧器211間)における水素の移送処理も前記事前処理に含まれるものとする。
【0047】
図4は、前記事前処理を示すフローチャートである。
このフローチャートは、例えば、オペレータが制御装置4Bに前記事前処理の実施指令を入力することにより、制御装置4Bが実施する。
ステップS11では、各蓄圧器211の残圧(内圧)を入力する。
ステップS12では、ステップS11で入力した各蓄圧器211の残圧(内圧)に基づいて水素を放出させる移送元の蓄圧器バンク21を決定する。例えば、各蓄圧器211の残圧(内圧)に基づき各蓄圧器バンク21における水素消費量又は残留水素を推定し、水素消費量が最も多い又は残留水素が最も少ない蓄圧器バンク21を、水素を放出させる移送元の蓄圧器バンク21として決定する。
【0048】
ステップS13では、前記移送元の蓄圧器バンク21から放出された水素を移送する移送先の蓄圧器バンク21を決定する。例えば、前記移送元の蓄圧器バンク21に残留している水素の全てを充填可能な状態にある蓄圧器バンク21が前記移送先の蓄圧器バンク21として決定される。
【0049】
ステップS14では、水素戻し管7に設けられた弁機構8、前記移送先の蓄圧器バンク21に対応する弁機構23及び前記移送元の蓄圧器バンク21に対応する弁機構24を開く。
ステップS15では、圧縮機6を稼働させる。
ステップS16では、前記移送元の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211の出入口に設けられた弁機構212及び前記移送先の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211の出入口に設けられた弁機構212を選択的に開き、これにより、前記移送元の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211内の水素を前記移送先の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211へと移送させる。
【0050】
ステップS17では、前記移送元の蓄圧器バンク21からの水素の放出が完了したか否かを判断し、水素の放出が完了するとステップS18に進む。例えば、前記移送元の蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211の残圧が所定圧力以下(例えばほぼ0)となった場合に、当該移送元の蓄圧器バンク21からの水素の放出が完了したと判断することができる。
【0051】
ステップS18では、開いた状態の弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を閉じる
ステップS19では、圧縮機6を停止させる。
【0052】
以上の事前処理によって、水素ステーション1Bの有する複数の蓄圧器バンク21のうちの少なくともいずれか一つの蓄圧器バンク21(を構成する各蓄圧器211)がほぼ空の状態となり、当該蓄圧器バンク(すなわち、前記移送元の蓄圧器バンク)21が前記貯留容器として準備される。なお、ここでは、各蓄圧器211の残圧(内圧)に基づいて前記移送元の蓄圧器バンク21、すなわち、前記貯留容器となる蓄圧器バンク21を決定しているが、前記貯留容器となる蓄圧器バンク21があらかじめ特定されていてもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、制御装置4Bが、入力された前記事前処理の実施指令に基づいて、圧縮機6、弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を制御している。しかし、これに限るものではなく、前記表示部に表示された各蓄圧器211の内圧(残圧)等に基づいて、オペレータが制御装置4Bを介して圧縮機6、弁機構8、弁機構23、弁機構24及び弁機構212を直接的に制御するようにしてもよい。
【0054】
(2)水素輸送用容器50からの水素の移送(荷卸し)
前記事前処理の終了後、水素輸送用容器50が水素ステーション1Bに到着すると当該水素輸送用容器50から水素ステーション1Bへと水素が移送(荷卸し)される。
図5は、水素輸送用容器50から水素ステーション1Bへの水素の移送(荷卸し)処理を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS21では、水素ステーション1Bに到着した水素輸送用容器50の水素供給口(図示省略)に水素移送管4(の前記他端)を装着する。これにより、水素輸送用容器50は、直管部41によって圧縮機6を介して蓄圧ユニット2の入口部2aに接続されると共に、直管部41の一部及びバイパス管部42によって圧縮機6を迂回して蓄圧ユニット2の入口部2aに接続される。
【0056】
ステップS22では、水素輸送用容器50の水素供給弁(図示省略)を開く。これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Bへの水素の移送(荷卸し)が可能な状態となる。
【0057】
ステップS23では、前記貯留容器として準備された蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211と水素輸送用容器50とを連通させるように、対応する弁機構23及び弁機構212を開く。これにより、水素輸送用容器50内の水素が、水素移送管4のバイパス管部42を介して、差圧によって前記貯留容器として準備された蓄圧器バンク21の各蓄圧器211へと移送される。
【0058】
ステップS24では、水素輸送用容器50と連通させた蓄圧器211の内圧変化量(又は内圧変化率)が所定値以下(例えば、ほぼ0)となったか否か(すなわち、差圧移送が完了したか否か)を判断し、前記内圧変化量(又は内圧変化率)が前記所定値以下となるとステップS25に進む。
【0059】
ステップS25では、圧縮機6を稼働させる。圧縮機6が稼働すると、水素輸送用容器50内の水素が圧縮機6で昇圧されて蓄圧ユニット2に移送される。
【0060】
ステップS26では、水素輸送用容器50が水素ステーション1Bに到着してから所定時間が経過したか否かを判断し、前記所定時間が経過するとステップS27に進む。前記所定時間は、例えば水素ステーション1Bが特別な設備を有することなく水素輸送用容器50を滞在させることのできる時間(例えば2時間)に基づいてあらかじめ設定される。
【0061】
ステップS27では、前記水素供給弁及びステップS23で開いた弁機構23及び弁機構212を閉じる。
ステップS28では、圧縮機6を停止させる。
ステップS29では、水素移送管4を水素輸送用容器50の水素供給口から外す。
これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Bへの水素の移送(荷卸し)が完了する。
ここで、ステップS25、ステップS26及びステップS28の処理、すなわち、圧縮機6を稼働しての水素の移送(昇圧移送)を省略してもよい。この場合には、第1実施形態(
図2)と同様に差圧による水素の移送のみが実施される。
【0062】
本実施形態による水素ステーション1Bでは、前記事前処理によって複数の蓄圧器バンク21のうちの少なくともいずれか一つの蓄圧器バンク21内の水素を他の蓄圧器バンク21へと移送させ、当該一つの蓄圧器バンク21を前記貯留容器として準備する。これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Bへの速やかな水素の移送(すなわち、水素の荷卸し)を可能としている。
但し、これに限るものではなく、前記事前処理を省略してもよい。この場合には、水素輸送用容器50が水素ステーション1Bに到着した時点で、水素輸送用容器50内の圧力よりも内圧が低い状態にある一つ又は複数の蓄圧器211を前記貯留容器として利用することになる。
また、本実施形態においては、貯留する水素の圧力(充填圧力)を異ならせた複数(三つ)の蓄圧器211によって各蓄圧器バンク21が構成されているが、複数の蓄圧器211の一部又は全部の貯留する水素の圧力(充填圧力)が同じであってもよい。すなわち、蓄圧器バンク21を構成する各蓄圧器211への水素の充填圧力は任意に設定することができる。
さらに、前記貯留容器となる蓄圧器バンク(すなわち、移送元の蓄圧器バンク)21及びこの蓄圧器バンク21から水素が移送される蓄圧器バンク21(すなわち、移送先の蓄圧器バンク)を特定しておくと共に、これらの蓄圧器バンク21の間に圧縮機を設け、当該圧縮機を稼働させることによって、これらの蓄圧器バンク21の間で水素の移送を行うようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、水素移送管4における直管部41が「昇圧移送管」に相当し、水素移送管4の直管部41の一部及びバイパス管部42が「差圧移送管」に相当する。
【0063】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態による水素ステーション1Bでは、水素輸送用容器50内の水素が差圧によって移送されると共に移送された水素を貯留する貯留容器として、複数の蓄圧器バンク21のうちのいずれかの蓄圧器バンク21を使用する。これに対し、変形例による水素ステーションは、二つの圧縮機によって水素を二段階に昇圧させる構成とし、複数の蓄圧器バンク21のうちのいずれかの蓄圧器バンク21に加えて、前記二つの圧縮機の間に配置された中圧容器(中圧バンク)も前記貯留容器として使用する。
なお、以下の説明において、第1、第2実施形態による水素ステーション1A、1Bと共通する要素については同一の符号を付し、その機能も同一であるものとする。
【0064】
図6は、第2実施形態の変形例による水素ステーション1Cを示している。
図6に示すように、この変形例による水素ステーション1Cは、二つの圧縮機(第1圧縮機11,第2圧縮機12)と、この二つの圧縮機11,12の間に配置された中圧容器(中圧バンク)13と、水素移送管4のバイパス管部42の中間位置と中空容器13の入口側とを接続する接続管14と、を有する点で第2実施形態による水素ステーション1Bと相違する(その他の構成については、基本的に第2実施形態による水素ステーション1Bと同じである)。
【0065】
第1圧縮機11は、第2実施形態における圧縮機6に相当する。中圧容器13は、第1圧縮機11によって昇圧された水素を貯留する。中圧容器13は例えば30〜40MPaの水素を貯留する。第2圧縮機12は、中圧容器13内の水素を昇圧して蓄圧ユニット2に供給する。この水素ステーション1Cでは、例えば、前記水素燃料タンクへの水素の充填によって蓄圧器バンク21の水素が減ると、当該蓄圧器バンク21に対して中圧容器13内の水素を補給できるようになっている。
【0066】
水素ステーション1Cに対して水素を供給する場合も第2実施形態と同様に、前記事前処理を実施し、その後、水素輸送用容器50から水素ステーション1Cへの水素の移送が実施される。この変形例の場合、
図5のステップS22、S23において水素輸送用容器50側の水素供給弁、弁機構23及び弁機構212を開くと、水素輸送用容器50内の水素が、水素移送管4の直管部41の一部及びバイパス管部42を介して前記事前処理によって前記貯留容器として準備された蓄圧器バンク21の各蓄圧器211へと差圧移送されると共に、接続管14を介して中圧容器13へも差圧移送される。
その後、
図5のステップS25において第1圧縮機11及び第2圧縮機12を稼働させると、中圧容器13内の水素が第2圧縮機12で昇圧されて蓄圧ユニット3に移送され、水素輸送用容器50内の水素が第1圧縮機11及び第2圧縮機12で昇圧されて蓄圧ユニット2に移送される。
【0067】
ここで、前記事前処理において、中空容器13内に水素が残っている場合には、第2圧縮機12を稼働させることによって中圧容器13内の水素をあらかじめ蓄圧ユニット2に移送させるようにしてもよい。このようにすると、中圧容器13をほぼ空の状態とした上で前記貯留容器として準備することができ、水素ステーション1Cにより多くの水素を差圧移送することが可能となる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第1、2実施形態による水素ステーション1A,1Bでは、水素輸送用容器50内の水素が差圧によって移送されると共に移送された水素を貯留する貯留容器として、複数の蓄圧器バンク21のうちの少なくともいずれか一つの蓄圧器バンク21を使用する。これに対し、第3実施形態による水素ステーションでは、水素輸送用容器50内の圧力よりも内圧の低い低圧容器(低圧バンク)を蓄圧ユニット2(蓄圧器バンク21)とは別に設け、この低圧容器を前記貯留容器として使用する。なお、以下の説明においては、第1、第2実施形態による水素ステーション1A、1Bと共通する要素については同一の符号を付し、その機能も同一であるものとする。
【0069】
図7は、第3実施形態による水素ステーション1Dの構成を示している。
図7に示すように、第3実施形態による水素ステーション1Dは、第2実施形態による水素ステーション1Aと同様、水素を貯留可能な蓄圧ユニット2と、蓄圧ユニット2(各蓄圧器211)に貯留された水素を前記水素燃料タンクに充填可能なディスペンサー3と、制御装置4Dと、水素を昇圧して蓄圧ユニット2に供給可能な圧縮機6と、を備えている。
【0070】
また、水素ステーション1Dは、水素輸送用容器50に着脱可能な第1水素移送管31及び第2水素移送管32と、水素輸送用容器50内の圧力よりも内圧の低い低圧容器(低圧バンク)33と、低圧容器33と圧縮機6の入口側とを接続する接続管34と、接続管24を開閉する弁機構(例えば、電磁弁)35と、を備えている。
【0071】
第1水素移送管31は、水素輸送用容器50の第1水素供給口(図示省略)に装着されることにより、水素輸送用容器50と低圧容器33とを接続する。第2水素移送管32は、水素輸送用容器50の第2水素供給口(図示省略)に装着されることにより、水素輸送用容器50と圧縮機6とを接続する。接続管34は、低圧容器33内の水素を圧縮機6に供給する供給管としての機能を有している。なお、第2水素移送管32を省略することもできる。
【0072】
本実施形態において、制御装置4Dには、圧力検知部101によって検知された各蓄圧器311の内圧(残圧)、前記水素燃料タンクに関する情報(残圧、最高使用圧力など)、圧力検知部102によって検知された低圧容器23の内圧(残圧)を含む各種情報が入力される。そして、制御装置4Dは、入力された各種情報やオペレータ等による動作指令などに基づいて、弁機構23,24、弁機構35及び弁機構212を適宜制御する。
【0073】
本実施形態による水素ステーション1Dおいても、制御装置4Dが、弁機構24及び弁機構212を制御することにより、第1、第2実施形態による水素ステーション1A、1Bと同様に、所定の蓄圧器211から水素を放出させて前記水素燃料タンクに水素を充填することができる。
【0074】
(水素ステーション1Dに対する水素の供給(荷卸し))
水素輸送用容器50が水素ステーション1Dに到着すると当該水素輸送用容器50から水素ステーション1Dへと水素が移送される。
図8は、水素ステーション1Dへの水素の移送(荷卸し)処理を示すフローチャートである。この処理は、主に水素ステーション1Dが第2水素移送管22を有さない場合に実施される。
ステップS31では、水素ステーション1Dに到着した水素輸送用容器50の第1水素供給口(いずれも図示省略)に、第1水素移送管31を装着する。これにより、水素輸送用容器50は、第1水素移送管31を介して低圧容器33と接続される。ここで、第1水素移送管31は、前記輸送用車両に搭載又は連結された状態の水素輸送用容器50の第1水素供給口に装着される。
【0075】
ステップS32では、水素輸送用容器50の第1水素供給弁(図示省略)を開いて水素輸送用容器50と低圧容器33とを連通させる。前記第1水素供給弁は、例えば上記第1水素供給口又はその近傍に設けられており、当該第1水素供給弁を開くことによって水素輸送用容器50内の水素が低圧容器33へと差圧によって移送される。移送された水素は当該低圧容器33に貯留される。
【0076】
ステップS33では、低圧容器33の内圧変化量(又は内圧変化率)が所定値以下(ほぼ0)となったか否かを判断し、前記内圧変化量(又は内圧変化率)が前記所定値以下となるとステップS34に進む。
ステップS34では、前記第1水素供給弁を閉じる。
ステップS35では、第1水素移送管31を水素輸送用容器50(の第1水素供給口)から外す。
これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Dへの水素の移送(荷卸し)が完了する。また、水素輸送用容器50が搭載又は連結された輸送用車両の当該水素ステーション1Dからの移動が可能となる。
【0077】
その後、ステップS36において、低圧容器33に貯留した水素を蓄圧ユニット2に移送する。具体的には、弁機構35を開くと共に圧縮機6を稼働し、所定の蓄圧器211に対応する弁機構23及び弁機構212を開き、これにより、低圧容器33内の水素を圧縮機6で昇圧して蓄圧ユニット2(前記所定の蓄圧器211)へと移送する。所定の蓄圧器211は一つであってもよいし、複数であってもよい。そして、低圧容器33内の水素が十分に蓄圧ユニット2に移送されると(例えば、低圧容器33の内圧(残圧)がほぼ0になると)、弁機構35、前記所定の蓄圧器211に対応する弁機構23及び212を閉じると共に、圧縮機6を停止して低圧容器33に貯留した水素の蓄圧ユニット2への移送を終了する。
【0078】
図9は、水素ステーション1Dへの水素の移送(荷卸し)処理の別の例を示すフローチャートである。
ステップS41では、水素ステーション1Dに到着した水素輸送用容器50の第1、第2水素供給口(いずれも図示省略)に、第1水素移送管31、第2水素移送管32を装着する。これにより、水素輸送用容器50は、第1水素移送管31を介して低圧容器33と接続されると共に、第2水素移送管32を介して圧縮機6と接続される。
ステップS42〜44は、
図9のステップS32〜34と同じである。
【0079】
ステップS45では、水素輸送用容器50の第2水素供給弁(図示省略)を開く。
ステップS46では、所定の蓄圧器211に対応する弁機構23及び弁機構212を開く。所定の蓄圧器211は一つであってもよいし、複数であってもよい。
ステップS47では、圧縮機6を稼働させる。圧縮機6が稼働すると、水素輸送用容器50内の水素が圧縮機6で昇圧されて蓄圧ユニット2(より具体的には、前記所定の蓄圧器211)に移送される。
【0080】
ステップS48では、水素輸送用容器50が水素ステーション1Dに到着してから所定時間が経過したか否かを判断し、所定時間が経過するとステップS49に進む。この所定時間は、例えば水素ステーション1Dが特別な設備を有することなく水素輸送用容器50を滞在させることのできる時間(例えば、2時間)に基づいてあらかじめ設定される。
【0081】
ステップS49では、前記第2水素供給弁を閉じる。
ステップS50では、圧縮機6を停止させる。
ステップS51では、第1水素移送管31及び第2水素移送管32を水素輸送用容器50(の第1水素供給口、第2水素供給口)から外す。
これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Dへの水素の移送(荷卸し)が完了する。また、水素輸送用容器50が搭載又は連結された輸送用車両の当該水素ステーション1Dからの移動が可能となる。
【0082】
その後、ステップS52において、
図9のステップS36と同様、弁機構35を開くと共に圧縮機6を稼働し、弁機構23及び弁機構212を選択的に開くことにより、低圧容器33に貯留した水素を蓄圧ユニット2に移送して本フローを終了する。
【0083】
本実施形態による水素ステーション1Dは、水素輸送用容器50内の圧力よりも内圧の低い低圧容器33を有しており、この低圧容器33を前記貯留容器として使用している。これにより、水素輸送用容器50から水素ステーション1Dへの速やかな水素の移送(すなわち、水素の荷卸し)を可能としている。なお、本実施形態において、第1水素移送管21が本発明の「第1差圧移送管」に相当する。
【0084】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態による水素ステーションの構成を示している。
なお、前記各実施形態による水素ステーションと共通する要素については同一の符号を付し、その機能も同じものであるとする。
図10に示すように、第4実施形態による水素ステーション1Eは、前記各実施形態による水素ステーションと蓄圧ユニットの構成が異なる。
【0085】
第4実施形態による水素ステーション1Eの蓄圧ユニット2Bでは、水素を充填する入口と水素を放出する出口とが別々に設けられた蓄圧器211Bによって蓄圧バンク21Bが構成されている。各蓄圧器211Bの入口側(圧縮機6側)には、逆止弁221が設けられており、各蓄圧機211Bの出口側(ディスペンサー3側)には、各蓄圧器211Bからの水素の放出を許容し又は停止する弁機構(例えば、電磁弁)222が設けられている。各弁機構222が開くと、対応する蓄圧器211Bから水素が放出される。
【0086】
また、蓄圧ユニット2Bは、圧縮機6に接続される一つ又は複数の蓄圧器211Bを選択可能な選択装置223を備えている。圧縮機6で昇圧された水素は、選択装置223によって選択された蓄圧器211に供給される。
【0087】
水素ステーション1Eの制御装置4Eは、各蓄圧器211Bの内圧(残圧)や前記水素燃料タンクに関する情報(残圧、最高使用圧力等)を含む各種情報やオペレータによる動作指令等に基づいて、圧縮機6、水素戻し管7を開閉する弁機構8、各蓄圧器211Bの入口側の弁機構222及び選択装置223等を適宜制御する。なお、この実施形態においては、選択装置223が本発明の「第1の機構」に相当し、弁機構222が本発明の「第2の機構」に相当する。
この水素ステーション1Eにおいても第2実施形態による水素ステーション1Bと同様の処理を実施することができる。特に、本実施形態による水素ステーション1Eでは、各蓄圧器バンク21Bを構成する蓄圧器211B同士でも水素の移送が可能である。
【0088】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の改良や変更が可能である。
例えば、
図11に示すように、第2実施形態(又はその変形例)と第3実施形態とを組み合わせることも可能である。このようにすると、水素ステーション1Fは、複数の蓄圧器バンク21のうちのいずれかの蓄圧器バンク21、低圧容器33(及び中圧容器13)を、水素輸送用容器50内の水素が差圧によって移送されると共に移送された水素を貯留する前記貯留容器として使用できるので、水素輸送用容器50から水素ステーション1Fへと、短時間でより多くの水を移送することができる。なお、この場合、水素移送管4のバイパス管部42が本発明の「第2差圧移送管」に相当する。
また、第4実施形態の蓄圧ユニット2Bを前記各実施形態に適用することもできる。