(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回折装置(20)は、定義された1つの次元(X)においてのみ示される、予め設定可能な格子状あるいは鋸歯状の回折構造(22)を調整するように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)は、前記回折装置(20)により調整可能な前記回折構造(22)の周期性(24)を修正するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)は、第1の基板(28)に配置された、実質的に平行な線状電極(26)を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)の基板(28、30)は、実質的に平行な前記線状電極(26)から分離された、平坦電極(32)を有することを特徴とする請求項4に記載の光変調装置。
前記第1及び第2の基板(28、30)の少なくともいずれかの実質的に平行な前記線状電極(26)及び前記平坦電極(32)、及び前記第1及び第2の基板(28、30)の少なくともいずれかは使用される光を透過することを特徴とする請求項6に記載の光変調装置。
基板(28)と隣接する中間電極層(56)との距離、及び2つの隣接する中間電極層(56)の距離の少なくともいずれかは予め設定可能であり、2つの隣接する電極(26、58)の距離の比、または前記基板(28)あるいは前記中間電極層(56)の実質的に平行な前記線状電極(26、58)の格子周期の比に対応して設定されることを特徴とする請求項8または9に記載の光変調装置。
前記第1の基板(28)の実質的に平行な前記線状電極(26)の方向は、前記第2の基板(30)の実質的に平行な前記線状電極(26、72)の方向に対して、0度から90度の間の予め定義された角度をなして設けられる
ことを特徴とする請求項11に記載の光変調装置。
基板(28、30)の実質的に平行な前記線状電極(26、72)の方向は、前記中間電極層(56)の実質的に平行な前記線状電極(58)の方向に対して、0度から90度の間の予め定義された角度をなして設けられる
ことを特徴とする請求項11または12に記載の光変調装置。
前記第1及び第2の基板(28、30)及び前記中間電極層(56)の少なくともいずれかの実質的に平行な前記線状電極(26)は、互いに実質的に平行となるように配向されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の光変調装置。
材料影響制御因子を変化させることにより、少なくとも1つの光の偏光方向に対しての屈折率における局所的な変化を実現可能な材料が、前記第1及び第2の基板(28、30)の間、基板(28)と隣接する中間電極層(56)との間、及び2つの隣接する電極層(56)の間の少なくともいずれかに設けられることを特徴とする請求項6乃至14のいずれか1項に記載の光変調装置。
液晶(34)が、前記第1及び第2の基板(28、30))の間、基板(28)と隣接する中間電極層(56)との間、2つの隣接する中間電極層(56)の間、の少なくともいずれかに設けられ、
前記液晶(34)の方向は、実質的に平行な前記線状電極(26)及び前記平坦電極(32)への予め設定可能な電圧供給により制御可能であり、該手段は、該電極の長手方向に平行な、液晶の事前方向を定義するように設けられる
ことを特徴とする請求項6乃至16のいずれか1項に記載の光変調装置。
実質的に平行な前記線状電極(26)と前記平坦電極(32)とは、少なくとも2つの異なる平面において少なくとも1つの基板に配置され、前記少なくとも2つの異なる平面は前記基板の表面と平行をなし、
実質的に平行な前記線状電極(26、54)は、前記平面間で重ならないように互いに横方向にずらして配置される
ことを特徴とする請求項5乃至17のいずれか1項に記載の光変調装置。
実質的に平行な前記線状電極(26)及び前記平坦電極(32)の屈折率は、該電極が配置される前記基板(28、30)の屈折率と実質的に同一である、あるいは該電極の材料及び前記基板の材料は、実質的に同一の屈折率を有するように設計されることを特徴とする請求項5乃至19のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)の前記電極は、予め定められた周期で、少なくとも局所的に鋸歯状屈折率分布を実現する電界分布が、前記回折装置(20)において得られるように動作されることを特徴とする請求項4乃至20のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)の前記電極は、実質的に一様な屈折率分布を実現する電界分布が、前記回折装置において得られるように動作されることを特徴とする請求項4乃至21のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記回折装置(20)の前記電極は、次に設定される実質的に均一な屈折率分布を準備する電界分布を実現するように動作されることを特徴とする請求項22に記載の光変調装置。
前記2つの回折装置(20、38)は、前記回折装置(20)の回折構造(22)の周期性の、前記予め定義された方向(X)あるいは構造が、前記別の回折装置(38)の回折構造の周期性の、前記予め定義された方向(Y)あるいは構造と実質的に垂直となるように互いに配置されることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1項に記載の光変調装置。
実質的に平行な前記線状電極(26)は、前記回折装置(20)により回折された光の分布が観測面において生成され、視認領域が与えられた眼球を有する観察者の隣の観察者の眼球における光量の発生が抑制されるように、水平線(60)に対して角度をなして配向されることを特徴とする請求項4乃至23及び27のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記光変調器(12)及び前記回折装置(20、38)の少なくともいずれかは、予め定義された周期性をもつ周期的構造を有することを特徴とする請求項1乃至28のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記回折装置(20、38)は、二進値、離散値、あるいは連続値が設定可能な個々の回折素子を有することを特徴とする請求項1乃至30のいずれか1項に記載の光変調装置。
少なくとも1つの温度センサと、ペルチェ素子を含む少なくとも1つの熱力学素子を有する動的な温度制御器を有するか、前記光変調器(12)に予め定義された位相プロファイルが書き込まれることにより実現可能であるかの少なくともいずれかである温度補償機構を有することを特徴とする請求項1乃至32のいずれか1項に記載の光変調装置。
前記光変調器(12)の前記第1及び第2の領域は、互いに繰り返し交互に配設されるか、前記光変調器(12)の前記第1及び第2の領域は互いに垂直に配設されるかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項40に記載のディスプレイ。
カラーフィルタは、前記光変調器(12)の個々の画素(181、182、183)に割り当てられるか、カラーフィルタは、前記回折装置(20、38)の個々の領域に割り当てられるかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項37乃至41のいずれか1項に記載のディスプレイ。
前記第1の基板(28)と前記少なくとも1つの中間電極層(56)とは、前記第1の基板(28)の実質的に平行な前記線状電極(26)が、前記中間電極層(56)の実質的に平行な前記線状電極(58)に対して実質的に平行に配置されるように、互いに並べられる
ことを特徴とする請求項45に記載の製造方法。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、上述の問題点を解消するような上記の種類の光変調装置、ディスプレイ、及び光変調装置の製造方法を提供し、かつ更に開発することである。特に、ホログラムディスプレイの観測者ウィンドウの追跡、または裸眼立体視ディスプレイのスイートスポットの追跡、あるいは多視点ディスプレイの光束の偏向を容易に実現可能な方法及び装置が以下に開示される。
【0009】
光変調装置に関して、本発明の目的は請求項1により達成される。本発明の更なる好適な実施形態及び改良は、従属項において定義される。
【0010】
本発明によれば、上記の種類の光変調装置は、光波場の伝播方向において光変調器の後に、少なくとも1つの回折装置が配置されることを特徴とする。この回折装置は可変回折構造を有する。該回折構造は、光変調器により変調された光波場を、予め設定可能な方向に回折する。
【0011】
本発明によれば、光波場の伝播方向において光変調器の後に可変回折構造を有する回折装置を配置することによって、少なくとも1つの観測者ウィンドウの追跡を特に実現できることが最初に判明した。このことは、回折デバイスが光変調器により操られた光波場の定義されたより高次の回折次数を生成する、あるいは回折を利用して現在の観測者の眼球位置に向けて光束を偏向するように、観測者の現在の眼球位置に応じて回折デバイスの回折構造を変更することに用いることができる。光変調器により操られた光波場の周期的再現は、個々の回折次数において生成される。光変調器により操られた光波場の再現、即ち観測者ウィンドウの再現が、ディスプレイを観測している観測者の現在の眼球位置でも生成されるように、回折装置の回折構造は設定あるいは制御部により制御される必要がある。従って、国際公開第2006/066919号に記載される原理に従って光変調器に書き込まれた情報を、観測者は視覚的に知覚できる。
【0012】
一般に、回折装置の回折構造は、何らかの周期構造を備えてもよい。この場合、2次元格子構造が特に考えられる。回折装置の好適な回折構造は、1次元格子構造または鋸歯構造である。水平に偏向された周期的再現あるいは回折次数の生成には、実質的に垂直な1次元線形格子構造が、回折装置において実現されてもよい。光波場の位相を変化させて、光波場の個々の部分を局所的に偏向することに回折装置が適しているため、回折装置は位相偏向器と呼ばれてもよい。一般に、水平線に対して予め設定可能な角度を有する1次元線形格子構造が、回折装置において実現されてもよい。
【0013】
回折装置の回折構造は、使用される光の波長の次数に実質的に存在する、格子周期あるいは周期的な距離または勾配を有するべきである。従って、200nm〜30μmの範囲の値を有する格子周期が一般に考慮される。この点に関して、回折装置の効果は、回折装置を通過する光を回折するだけではない。詳細には、例えば格子周期が10μm以上の範囲にある場合、光の位相を変調する素子としての効果も回折装置の効果である。この点を踏まえて、以下の説明中、回折装置はそのような効果も併せ持つという意味で理解されるべきである。
【0014】
垂直偏向のみを実現する回折装置と水平偏向のみを実現する回折装置の、2つの回折装置が設けられることが好ましい。これらの2つの回折装置は、画素が行のみまたは列のみに配列される以外は、位相変調SLMと同様に、使用される光の波長の0〜約2πまでの範囲の多数のステップを経て制御可能に位相を変調する、画素で構成された素子形状で設計される。
【0015】
従って、1次元または1つの方向(水平または垂直)に非常に微細な構造を実現されるため、小さな画素ピッチ(または小さな格子周期)が実現され、追跡の角度範囲を拡張することができる。もう一方の次元(垂直または水平)に関しては、画素は実質的に(位相偏向器あるいは位相配列の機能も実現しうる)回折装置全体の高さあるいは幅に渡って連続的に配置される。
【0016】
微細構造化された方向の画素ピッチは、照明に使用される光の波長、及び該波長についての所望の角度範囲に一致するように選択される。
【0017】
例えば、水平方向の追跡のみを必要とするディスプレイの場合、回折装置を1つだけ使用することが可能である。更に、追跡角度を拡大するため、あるいは水平及び垂直の少なくともいずれかの偏向を異なる方法で実現するために、回折装置と他の追跡装置とを組み合わせることも一般に可能である。
【0018】
この点に関して、「水平」及び「垂直」という用語は、一般化された概念として互いに対して垂直の向きを有する2つの次元を表現するものと理解されるべきである。一般に、一方の追跡方向が+45°対角線方向であれば、他方の追跡方向は−45°対角線方向になるように追跡装置全体が調整されることも可能だろう。
【0019】
一般に、位相変調型光変調器について知られている如何なる機能原理も、回折装置に適用できる。以下に示される実施形態は、液晶による位相変調に基づいた回折装置を例示的に説明する。
【0020】
1次元または1方向にのみ微細な構造を有するので、例えば(液滴駆動セルアレイの)行列状に配列された液体セルに比べて、回折装置の製造及びアドレス指定は、はるかに容易でることが好ましい。例えば、画面の対角線寸法が24インチであり、最小格子構造(格子周期)が2μmであるディスプレイにおいて、水平方向における回折を実現するための回折装置はちょうど265,000画素を有し、垂直方向の回折を実現するための回折装置は更に少ない数、すなわち、150,000画素を有するだろう。この場合、画素数は、VGA解像度を有する水平及び垂直に画素構造を有する光変調器の画素数より少ない。
【0021】
偏光格子のような固定回折構造を有する二値格子は、多くの場合に一定の格子周期を有しており、故に実質的に固定的な偏向角を実現する。これに対し、位相ステップの形で設計され、かつ回折装置に書き込み可能である、多数のまたは1組の回折構造によって位相ステップの量子化(即ち、数)及び直線位相プロファイルの勾配を変更することで、可変的に制御可能な回折装置により、回折装置を通過する光の偏向角または回折角は非常に微細なステップで可変的に制御されうる。
【0022】
最初に、例えば定義された正または負の偏向角に対応する、連続的に線形増加するあるいは線形減少する位相プロファイルが計算されてもよい。次に、回折構造の各画素についての位相値が2πを法として計算される。この計算値に対する差が最小である利用可能位相ステップ(量子化)が、回折構造の各画素に書き込まれる。2πを法とする計算は、光波面の連続相プロファイルを自動的に確保する。
【0023】
回折装置の位相値の計算は、ブレーズ格子と同様に考慮されてもよい。
【0024】
観測者ウィンドウの所望の横方向位置及び観測者ウィンドウからディスプレイまでの距離に基づき、ディスプレイまたは光変調器の1つの位置から観測者ウィンドウに向かって光を偏向する偏向角が決定される。
【0025】
所望の偏向角度に対応する格子周期を有するブレーズ格子が計算される。これは、次のような一般格子式を使用して実行される。
sinα+/−sinβ=mλ/g
ここで、αは入射光の角度、βは格子により偏向された光の角度、mは回折次数である。ブレーズ格子の場合、常にm=1である。更に、λは使用される光の波長、gはブレーズ格子の格子定数である。式の左側の正の演算子は、入射方向の垂線に対して、入射光束及び偏向光束が同一側にある場合に使用されるべきである。同一側にない場合は、負の演算子が適用される。
【0026】
該ブレーズ格子は、回折装置の画素ピッチに対応する操作ポイントの距離で走査され、得られた走査値が回折装置に書き込まれる。走査定理によれば、格子周期gが回折装置の画素ピッチの少なくとも2倍である場合に、ブレーズ格子を正しく走査できる。
g≧2p
ここで、pは回折装置の画素ピッチである。
【0027】
この条件を満たす場合、どのような格子周期を有するブレーズ格子でも一般に実現可能である。即ち、回折装置の画素ピッチの2倍の格子周期を有するブレーズ格子に対応する最大角度までの微細なステップ(すなわち、小さな追跡ステップ)において、調整可能な偏向角度を実現できる。
【0028】
理想的なブレーズ格子は、すべての光を1次の次数に偏向する。従って、ブレーズ格子自体により高次の次数が生成されるのではなく、ブレーズ格子が回折装置の画素ピッチによって走査されることによってのみ、高次の次数が生成されることが理想だろう。理想から外れた動作を想定すると、例えば以下の温度補償に関する説明に示されるような、更なるブレーズ次数も生成される可能性がある。
【0029】
一般に、追跡範囲を拡大するために回折装置の高次の次数が使用されうる。これは特にシングルユーザシステムにおいて可能である。回折装置の次数が高くなることは、回折装置の画素ピッチの2倍より小さいブレーズ格子の格子周期を使用することを意味すると考えられる。走査定理に反するにもかかわらず、回折装置の高次の次数における光の一部は所望の位置へ偏向される。しかし、この場合、通常観測者ウィンドウのより明るい反復が回折装置の0次の次数においても生じる。回折装置のピッチが十分に小さければ、それらの次数は眼球の間隔より更に遠く離れているので、一人のユーザの観測を妨げることはない。
【0030】
これに対し、特に阻害効果を有するような用途等、いくつかの異なる方法を使用することで、回折装置の高次の次数を減少または抑制することができる。この目的のために、例えば未公開の独国特許出願第10 2008 002 692.1号明細書、あるいは国際公開第2009/156191号に説明されるように、画素に対するアポダイゼーションなどの方法の使用が考えられる。
【0031】
マルチユーザシステムでは、即ち一人の観測者を追跡する際に生じる高次の次数が別の観測者を妨害すると考えられる場合は、高い次数の抑制は特に必要である。
【0032】
光変調器は2つの分離された回折装置と組み合されることが好ましい。ホログラムは、相対的に大きな画素ピッチ(例えば30μm×30μm)及び水平/垂直画素行列を有する光変調器において符号化される。一方の回折装置は、水平方向の追跡に使用され、他方の回折装置は垂直方向の追跡に使用される。各回折装置は微細なピッチ(例えば1μm)を有するが、1次元にのみ構造化されている。観測者の移動範囲は、例えば1μm×1μmの画素ピッチと1600億画素とを有する1つの光変調器を備え、符号化方式による追跡を利用する、はるかに複雑かつ高価なシステムにおける移動範囲と実質的に同じ広さになる。
【0033】
更に、回折装置において、対応する位相項及び適用可能であればプリズム項を考慮に入れることで、対物レンズの機能を少なくとも一部で可変制御できる。対物レンズ機能は、ディスプレイまたは光変調器の個々の横方向の位置において局所的に異なる偏向角に対応する。換言すれば、ここで回折装置に書き込まれるのは、回折装置の有効面の全体に渡って実質的に一定の格子周期を有する周期構造ではない。一方、回折装置の有効面の全体に渡って可変格子周期あるいは回折構造を有する回折装置について、有効面の全体に渡って格子構造あるいは回折構造を書き込むように設けられることで、対物レンズ機能が実現される。そして、回折装置の画素ピッチは、使用される回折次数に存在する観測者に対する、光変調器あるいはディスプレイの反対位置からの要求される最大の偏向角に対して、十分小さくなるように選択される必要がある。
【0034】
好適な一実施形態によれば、ディスプレイは、光学特性が不変である対物レンズを更に備える。この対物レンズは、平均観測者距離及び横方向における観測者位置の中央に光を集束する。対物レンズは屈折型または回折型のいずれであってもよく、回折型の対物レンズは、例えば適切な規模で適切に位置決めされたブラッグ格子により実現される。この場合、ブラッグ格子は一定の入射角を必要とするので、回折装置は光路におけるブラッグ格子の後段に配置されることが好ましい。屈折型の場合、屈折レンズは回折装置の前段あるいは後段のいずれに配置されてもよい。
【0035】
光軸に沿った方向、すなわち、光変調器の面に対して垂直な方向への観測者ウィンドウの追跡(Z追跡)は、追加のレンズを表す位相項を光変調器及び少なくとも1つの回折装置の少なくともいずれかに書き込むことにより実現されうる。ディスプレイに設けられる対物レンズの収差の補償は、少なくとも1つの回折装置及び光変調器における符号化により実現されうる。その場合、全ての対物レンズ機能を回折装置及び光変調器に組み込むときに必要となるよりも大きい回折装置の画素ピッチは、ある特定の追跡角度範囲を満たす。
【0036】
なお、いずれの場合にも、単なる偏向(プリズム項)とは異なり、球体レンズ機能(例えば、全ての対物レンズまたはZ追跡のための追加レンズの位相項)または収差補正を、2つの互いに独立した水平位相プロファイル及び垂直位相プロファイルに完全に分割することは不可能だろう。レンズ機能が関与する限り、これは1つの球体レンズと2つの交差する円柱レンズとの違いとして説明できる。円柱レンズの位相プロファイル及び球体レンズの位相プロファイルは、近軸近似においてのみ、すなわち、レンズ開口が小さい場合にのみ一致すると考えられる。大きなレンズの場合には、それらのプロファイルは異なるだろう。すなわち、ある特定の観測者位置に対して光を偏向することが要求されるディスプレイの水平位相プロファイルは、例えばディスプレイの中心に対して上縁部または下縁部とで異なり、また要求される垂直位相プロファイルは、例えばディスプレイの中心に対して左縁部または右縁部とで異なる。しかしながら、実用的に符号化された位相プロファイルの局所勾配は画素ピッチに反比例し、SLMは通常非常に大きい画素ピッチを有するため、位相プロファイルの全体がSLMだけにより表されることは不可能であろう。
【0037】
レンズ機能または収差補正を示す位相プロファイルφ(x、y)は、次のように分解されることが好ましい。
φ(x、y)=φ
1(x)+φ
2(y)+φ
3(x、y)
ここで、φ
1(x)は水平座標によってのみ決まる位相関数、φ
2(y)は垂直座標によってのみ決まる位相関数である。これらのφ
1(x)及びφ
2(y)部は、水平回折及び垂直回折について、それぞれ回折装置において符号化または補償され、小さいほうのφ
3(x、y)部は光変調器において符号化または補償される。
【0038】
ホログラムディスプレイ装置全体についての好適な一実施形態によれば、該装置は光導波管を有する照明装置を含んでおり、該光導波管を介して伝播する光は、光導波管に溶着された体積格子によりエバネッセント光として射出される。このような照明装置は、例えば独国特許出願公開第10 2009 028 984.4号明細書及び国際公開第2010/149583号に記載されている。この構成は指定可能な偏光を伴う実質的に平行な光波場を発生する。このような照明装置は非常に平坦な構成として製造できることが好ましい。このため照明装置は、平行光波場が光変調器に向かって伝播するように設計されかつ配置される。光変調器は、透過中または反射中に光波場の光を変調するように形成されてもよい。更に、ブラッグ格子のような対物レンズの機能を実現する要素が光波場の伝播方向で光変調器の後段に配置される。
【0039】
照明装置は、光変調器と回折装置との間に配置されることが特に好ましい。この照明装置は、この場合、「フロントライト」と呼ばれてもよい。対物レンズの機能を実現する素子が設けられる場合、照明装置は、光変調器と対物レンズの機能を実現する素子との間に配置される。この実施形態において、光変調器は、光変調器と相互作用する光の位相を変調できる反射型光変調器である。照明装置と光変調器との間にλ/4板またはそれに匹敵する光学素子が配置されるので、照明装置の外部で結合される光の偏光は、光変調器に向かって伝播する際にλ/4板またはそれに匹敵する光学素子により一度目の45°の回転が行われ、光変調器により反射された後にλ/4板またはそれに匹敵する光学素子を再び通過する際に二度目の45°の回転が更に行われる。その結果、照明装置に向かって伝播する光は、照明装置から射出される光に対して合わせて90°回転されることになるので、光変調器により反射された光は照明装置を、特にその体積格子を、実質的に妨害されることなく通過できる。照明装置、または対物レンズの機能を実現する素子に続いて配置される第1の回折装置は、水平方向または垂直方向のいずれかの方向への光の回折を実現する。第1の回折装置に続いて、垂直方向または水平方向のいずれかの方向への光の回折を実現する第2の回折装置が配置される。
【0040】
無論、実質的な平行光を提供するために、バックライト型の照明装置を使用してもよい。この場合、光波場の伝播方向においてバックライトの後に、透過型光変調器及び2つの回折装置が配置される。照明装置と光変調器との間、または光変調器と一方の回折装置との間に、対物レンズの機能を実現する素子が配置されてもよい。一般に、裸眼立体視ディスプレイ、あるいはセキュリティ上の理由から提示される画像コンテンツが、観測者の眼球に向かって偏向される、あるいは観測者の眼球に集束される従来の2Dディスプレイにも、回折装置を適用できる。前提条件として、そのようなディスプレイは、コヒーレントな照明または部分的にコヒーレントな照明を示す必要がある。
【0041】
回折装置における温度変動を補償する必要が生じる場合がある。電子部品及び照明装置での発熱が原因となって、ディスプレイの中央部から縁部に向かって温度勾配が生じることが多い。温度が変化すると、例えば液晶(LC)材料の複屈折が減少する。更に、LC材料の弾性定数も変化するので、所定の電圧におけるLC分子の配向が影響を受ける。従って、温度変化は回折装置の位相変調または回折作用に影響を及ぼす可能性がある。
【0042】
一般に、水平及び垂直に画素で構成された光変調器において、画素の制御を適切に調整することにより、この温度勾配を補償することは可能であろうが、行のみまたは列のみの構成の変調器、あるいは行のみまたは列のみの構成の回折装置では、それは不可能である。温度勾配が補償されないと、例えば垂直に向きを規定された列において、列の中央がその列の上部または下部とは異なる位相変調が行われるという危険が生じる。無論、このことは望ましくない。
【0043】
LC材料の複屈折が減少することにより、例えば実際の位相が目標位相に比例して減少するという結果になるだろう。これは、高さが違っているために2πジャンプが正しくなくなるブレーズ格子と同等だろう。その結果、高いブレーズ次数が生成すると考えられる。
【0044】
温度勾配によって偏向角度が正しくなくなった場合、光変調器の1つの回折次数において、光変調器の追加の直線位相プロファイルによりこれを補償できる。しかし、回折装置またはディスプレイ全体を能動的に温度制御することで温度勾配を回避するように設計された素子を使用することが好ましい。光変調器を適切に符号化するか、及び回折装置の温度を例えばペルチェ効果を利用して制御するかの少なくともいずれかにより、温度補正が実現されてもよい。
【0045】
対物レンズが使用されかつ光が対物レンズを最初に通過するように、すなわち、回折装置を通過する前に対物レンズを通過するように光路に配置される場合、これは、光が斜めから回折装置に入射できるという効果、すなわち、回折装置への入射角度が空間的に変化するという効果を有する。しかし、この入射角度は既知であり、かつ不変の光学的特性を有する対物レンズにおいては一時的に一定である。このことを補償に利用できる。
【0046】
回折装置の位相変調が複屈折材料に基づく場合、光が斜めに通過するときに有効複屈折が変化するということに注意しなければならない。位相変調型光変調器または回折装置が同一の厚さであっても、斜めに当たった光束は、直角に当たった光束とは異なる位相変調を受けるだろう。制御値を変更することにより位相変調を変化させることは、限られた範囲でのみ可能である。回折装置が行として編成されている場合、例えば制御電圧を変更することにより、左から右へ変化する入射角を補償することは容易にできない。
【0047】
しかし、位相変調層に予め設定可能な不変の厚さ勾配を与えることは可能である。行として編成されている回折装置において、光が20°の角度で入射する場合、LC層の厚さは、中央部から少なくとも左縁部及び右縁部に向かってわずかに、通常は10%増減するだろう。2つの交差する回折装置が交互に配置される場合、光は第1の回折装置から第2の回折装置へ可変的な傾斜角で入射する。必要とされる追跡範囲は、通常、垂直方向より水平方向の方が広い。従って、垂直方向に対応する回折装置は、第1の光路に配置されることが好ましい。これは、そのような配置にすることにより、水平方向に対応する後続の回折装置に対する入射角が2つの回折装置を逆に配置した場合と比較して小さくなるからである。
【0048】
回折装置に対する入射方向が傾斜しているという点に関する限り、回折装置の動作電圧を変更することで、偏向方向に入射角を補償することもできる。光がそのような傾斜角で入射する場合、一般に光線が回折装置の隣接画素に干渉するということが生じる。例えば、高い複屈折を有する材料を使用することによってLC層の層厚を減少させることにより、干渉を最小限に抑えることができる。傾斜角が既知である場合、一般に、回折装置のいずれかの基板に構造化電極を設けるか、及び回折装置のいずれかの基板の電極を千鳥配列にするかの少なくともいずれかとすることで干渉を補償できる。
【0049】
更に、対物レンズの機能を実現する要素が設けられているため、LC層の厚さを回折装置に適応させる、あるいは回折装置の双方の基板が適切な電極の千鳥配列を有することにより、回折装置を光が斜めに通過することによる影響を補償できる。このことは、対物レンズ機能を実現する要素が、通過する光について、予め設定可能で既知の回折角をいずれの位置においても有しているため、可能となる。いずれにしても、回折装置の予め設定可能な位置に対応する入射角は既知である。
【0050】
回折装置の動作に関与する限り、TFTディスプレイは、画素ごとに画素に配置された1つのトランジスタを通常有する。2μmのピッチを有する回折装置のように、ディスプレイの画素ピッチが小さい場合、トランジスタの幅は個々の行または列より広くなることもある。ディスプレイパネルの縁部は千鳥配置されて扇形に広がった設計になっているので、基板に薄膜トランジスタ(TFT)を有する制御回路を収容できる。あるいは、電極を制御するために、基板にチップオングラス(CoG)回路が適用されてもよい。
【0051】
好適な一実施形態によれば、回折装置は、1つの次元にのみ延出する回折装置に対して予め設定可能な格子型回折構造を調整または書き込み可能であるように設計される。言い換えれば、回折装置に書き込まれる回折構造は単なる線状格子構造である。この格子構造は、個々のセクションで二進プロファイル、不連続プロファイルまたは連続プロファイル、あるいはそれらの混合形態を有することができる。
【0052】
回折装置は、回折装置により調整される回折構造の周期性が可変であるように設計されることが好ましい。
【0053】
設計の面に関する限り、回折装置は、第1の基板に溶着された実質的に平行な線状の電極を備えてもよい。従って、電極は縞状であってもよい。回折装置の第1の基板または1つの基板は、基板上の実質的に平行な電極から絶縁された平面電極を有してもよい。回折装置は、第1の基板から離間して配置された第2の基板を備えてもよい。第2の基板は、平面電極及び複数の実質的に平行な線状電極の少なくともいずれかを有してもよい。第2の基板が複数の実質的に平行な線状電極を備える場合、それらの電極は、第1の基板の線状電極に実質的に対向するように配置される、または第1の基板の線状電極に対して横方向へ予め設定可能な距離だけずれて配置されてもよい。2つの基板の電極の向きは互いに実質的に平行になるだろう。
【0054】
好適な一実施形態によれば、
図3に示されるような略垂直な立下り端を有する、実質的に鋸歯型のプロファイルを生成できる電界分布を光変調装置の電極により実現可能にするために、2つの基板の間に少なくとも1つの中間電極層が設けられる。中間電極層は電極を備える。中間電極層が詳細にどのように設計されるかに応じて、中間電極層の少なくとも一方の面に電極が融着されてもよい。2つの基板の間に4つの中間電極層を設けることが特に好ましい。少なくとも1つの中間電極層は、基板の面と平行に位置合わせされることが好ましい。2つの基板の間に指定された理想の電位プロファイル、または所望の理想の電位プロファイルに可能な限り近い定義された電位プロファイルを実現するように、基板に溶着された電極及び中間電極層に溶着された電極の双方は、個々に電気的にアドレス指定可能である。
【0055】
中間電極層の電極は、少なくとも一方の基板上の電極の配列と同様に、実質的に線状であり、互いに実質的に平行に配列され、予め設定可能な向きに配置される。中間電極層の電極は、一方の基板上に配置された電極の格子周期に実質的に相当する格子周期を有してもよい。
【0056】
好適な一実施形態によれば、基板と隣接する中間電極層との距離及び2つの隣接する中間電極層の距離の少なくともいずれかは指定されてもよい。該距離は、2つの隣接する電極間の距離の比、あるいは基板または中間電極層の電極の格子周期の比であってよい。一例を挙げると、電極の長手方向に沿った電極の幅が1μm、2つの隣接する電極の距離が1μm、第1の基板と隣接する中間電極層との距離が0.5μm、中間電極層と隣接する中間電極層との距離も0.5μmであってもよい。この例において、基板と隣接する中間電極層との距離あるいは2つの隣接する中間電極層の距離は、2つの隣接する電極の距離より小さい2分の1であり、これより狭くてもよい。
【0057】
一般に、第1の基板の平行な線状電極、第2の基板の平行な線状電極、及び中間電極層の平行な線状電極の少なくともいずれかは、予め設定可能な方向に向きを規定されていてもよい。更に、第1の基板の平行な線状電極の向きは、第2の基板の平行な線状電極の向きに対して、定義された角度を成すように設定されてもよく、その角度は0°〜90°の範囲である。角度は実質的に0°を有することが好ましい。しかし、角度の値は例えば10°でも適切だろう。代わりにあるいは加えて、一方の基板の平行な線状電極の向きは、中間電極層の平行な線状電極の向きに対して定義された角度を成すように設定されてもよい。その角度は0°〜90°の範囲であり、0°であることが好ましい。以下に更に詳細に説明する。
【0058】
好適な一実施形態によれば、基板または中間電極層の複数の電極は、1つのセグメントを形成するように組み合わされる。セグメントを形成するように組み合わされる電極は、回折装置の少なくとも1つの動作状況で共通してアドレス指定される。そのようなアドレス指定は、特に、セグメントの電極における実質的に同時のスイッチオフ、あるいは予め設定可能な電位の設定を含んでもよいであろう。本実施形態によれば、基板ごとにまたは中間電極層ごとに複数のセグメントが規定されてもよい。このような実施形態は、個々のセグメント(縞型領域)がスイッチオン/オフされるか、または順次走査されるセグメント化された照明装置(走査背面光または走査正面光)と関連して使用されることが特に好ましい。その場合、セグメント化された照明装置の「オン」動作及び「オフ」動作と同期される「走査オフ」機能を有する回折装置または光変調器を設けることが必要である。回折装置の第1の基板の電極26は、例えば「オフ状態」の線状電極72(第2の基板に溶着されてもよい)に対して80°の角度で配列され、
図19に概略的に示されるように、例えば5つの個々の電極群としてアドレス指定されてもよい。
図19の概略図は、セグメント74を形成するように組み合わされた第2の基板(
図19には図示せず)の「オフ状態」の電極72に対して90°の角度を成す第1の基板(
図19には図示せず)の電極26を簡略化された形で示す。
図19を参照すると、番号1〜20及び記号U
PGは、予め設定可能なそれぞれ異なる電圧を個々の電極26に印加可能であることを示す。
図19の下方の番号1〜5及び記号U
OFFは、セグメント74の電極72に共通電圧を印加可能であることを示す。照明装置の走査は、通常、光変調器に対する画素コンテンツの書き込みと同期して実行されるので、「オフ状態」の電極72は、書き込まれるべき光変調器のセグメントと同期してアドレス指定可能なセグメントに分割されることが好ましい。従って、セグメントの「オフ状態」の電極72の領域は、照明装置のセグメントの領域と実質的に重なり合って配置されるように形成されてもよい。あるいは「オフ状態」の電極72は、その後書き込まれ、続いて照射される光変調器のセグメントに従って、設計及びセグメント分割の少なくともいずれかがされてもよい。オフ状態電界駆動光変調器において、「オフ状態」の線状電極は、照明装置の走査方向と平行に配列されてもよく、これは、「オフ状態」の電極72のF櫛型構造(すなわち、「オフ状態」の電極72が電極26に対して実質的に垂直の向きである構造)を防止するのに有効である。このことは、例えば
図19に示される。
【0059】
基板面と平行に作動する電界(平面電界)の成分の大きな絶対値を実現可能にするために、次のような例示的な層構造が提供される。すなわち、第1の基板|平面ITO電極|100nmの誘電体|個々にアドレス指定可能な線状電極26|50nmの誘電体|例えば、3μmの厚さのLC層|50nmの誘電体|電極26に対して80°の角度を有し、電極群74としてアドレス指定可能である「オフ状態」の電極72|100nmの誘電体|平面ITO電極|第2の基板(カバーガラス板)から成る構造である。
【0060】
この場合、第1の基板の実質的に平行な線状電極、第2の基板の実質的に平行な線状電極及び中間電極層の実質的に平行な線状電極の少なくともいずれかは、互いに実質的に平行な向きに配列されてもよい。この配列を実現するために、本発明に係る光変調装置の製造中、個々の層に配置されるあるいは個々の基板に溶着される電極が、常に互いに完全に平行に位置合わせされるように確認することが必要である。
【0061】
第1の基板及び第2の基板の少なくともいずれかの電極は、使用される光を透過する。第1の基板及び第2の基板の少なくともいずれかは、使用される光にを透過する。電極の屈折率は、基板の屈折率と実質的に同一であることが好ましい。言い換えれば、電極の材料及び基板の材料は、実質的に同一の屈折率を示すように選択または提供される。特に、使用される波長の光に対して実質的に同一の屈折率を示すように規定される。
【0062】
好適な一実施形態によれば、材料に影響を及ぼす制御因子を変調することで、光の偏光の少なくとも1つの方向に対して屈折率の局所変化を実現することが可能な材料が、第1の基板と第2の基板との間、基板と隣接する中間電極層との間、及び2つの隣接する中間電極層の間の少なくともいずれかに配置される。材料に影響を及ぼす制御因子は電圧または電流であってもよく、電圧または電流が変動すると、それに従って材料の個々の要素の向き及び光学的特性の少なくともいずれかが変化する。材料は、例えば液晶、あるいは液晶または楕円形ナノ粒子を含むポリマー層、特にポリイミド層であってもよい。詳細にはナノ粒子は、永久電気双極分布を有する金属カーボンナノチューブまたはナノ粒子を含んでもよい。更に、使用される光に対して複屈折を示し、例えば電界の中で空間的に配向可能ないかなる形状のナノ粒子が使用されてもよい。
【0063】
光変調装置が少なくとも1つの中間電極層を有する場合、材料は、相対的に安定し、適切に設計されたポリマー膜を含み、ポリマー膜の隙間に液晶または楕円形ナノ粒子を有してもよい。その場合、中間電極層の電極は製造工程中にポリマー膜に直接溶着される。中間電極層の電極の導電性材料がポリマー膜の中に拡散するのを防止するために、中間電極層の電極を溶着できるようになる前に、必要に応じてポリマー膜を薄い保護層で被覆しなければならない場合もある。あるいは、材料は、ナノ粒子が混入または包含された可撓性の透明層または粘度の高い透明層であってもよい。
【0064】
楕円形ナノ粒子は、例えばλ/2nより小さいサイズを有する金属楕円体の形で実現されてもよい。ここでλは使用される光の波長、nは金属楕円体が埋め込まれる媒体または材料の屈折率である。金属楕円体及び埋め込み媒体は、上述した材料を表すと考えられる。金属楕円体は電気双極子を有する。双極子の自由電子は、入射光により誘起される電界の双極子の長軸に対して垂直な方向には振動できない。しかし、金属楕円体の電子は双極子の長軸と平行な方向には振動できるため、プラズモン共鳴が起こる。すなわち、実質的に平行な向きに規定された金属楕円体は、異方性の1つの形態を表す。埋め込み媒体の中で金属ナノ粒子が適切な濃度を有しているとすれば、金属楕円体及びその埋め込み媒体により複屈折を実現でき、その複屈折は金属楕円体の向きによって異なる。製造中に処理パラメータを適切に変化させることにより幾何学形状を調整できる金属カーボンナノチューブによって、これに匹敵する機能原理が得られる。金属カーボンナノチューブの長さも同様にλ/2n未満となるように選択される。これに匹敵する材料として、長さが相当に大きく異なる2つの長軸を有するその大きさの金属分子も同様に使用可能だろう。
【0065】
詳細には、第1の基板と第2の基板との間、基板と隣接する中間電極層との間、及び2つの隣接する中間電極層の間の少なくともいずれかに液晶が配置されてもよい。電極に予め設定可能な電圧を印加することで、液晶の配向が調整されてもよい。液晶が電極と電気的に接触しないように、第1の基板及び第2の基板の少なくともいずれかの電極は絶縁層を有することが好ましい。絶縁層も、その屈折率が電極の屈折率及び基板の屈折率の少なくともいずれかに可能な限り近くなるように、かつ絶縁層が使用される光を透過するように選択されるべきである。更に、絶縁層は、実質的に平坦な基板に電極材料を塗布することによって生じる、高さの違いを均すのに有効である。最後に、絶縁層は、液晶層に隣接する実質的に平坦な面を形成してもよい。
【0066】
液晶を利用する回折装置の場合、液晶は、例えば電気制御複屈折SLM(ECB‐SLM)のように設計されてもよい。通常、電界が存在しない場合、液晶は、その表面力によって基板と実質的に平行になるような配向に配列される。基板と平行なこの平面において、製造中に(例えば、機械的に摩擦することにより)向きが設定される。このため、例えば機械的に(例えば、ブラッシングによって)適切なくぼみを形成することにより、液晶に好適な配向を与える層が形成されてもよい。
【0067】
線状電極を有する回折装置において、LC分子は、基板面の電極の長手方向と平行になるような向きに配列されることが好ましい。それにより、電圧を印加した場合の隣接電極間のLC配向状態の遷移がより鮮鋭になるからである。
【0068】
液晶の制御に基づく構成において、電極の寸法は、2πの位相変調に必要とされるLC層の厚さと同一の値を有するが、液晶が個々の電極を介して完全に独立して制御されないような状況が起こる場合がある。例えば、屈折方向に見てある特定の位置で実現される位相値は、電極に印加される電圧に従属するだけでなく、少なくとも1つの隣接する電極に印加される電圧にも従属する。
【0069】
各画素がある特定の位相値を実現するように各画素が独立してアドレス指定される位相変調SLMとは異なり、本発明の一実施形態において、各格子周期に対応する各組の電極が所望の位相プロファイルを生成するように各組の電極の電圧値を決定するためにそれぞれ異なる周期を有するブレーズ格子を実現することが提案される。それらの電圧値は、アドレス指定のために、例えばメモリに利用可能な状態で保持されていてもよい。
図7に示されるように対向する基板に配列された電極の構成は、この目的に特に効果的である。
【0070】
回折装置は、回折装置の回折構造と相互に作用する光の局所的な位相変化を実現できる回折構造(位相格子)を生成するのに特に有効である。回折構造の小さな周期を実現するに際して、回折装置の予め設定可能な位相設定を実現するために、ごくわずかな数の電極、例えば5つの電極のみを限られた空間に配置するだけでよいので、そのような小さな周期の実現に問題が生じる可能性がある。回折構造または予め設定可能な位相設定の好適な一例は、例えば回折装置の液晶層で実現可能な鋸歯プロファイルである。これは
図8に示される。
図8に示される電極構成は、
図5の電極構成、すなわち、上面に平面電極32が配置され、平面E
1に平面電極に対向して線状電極26が配置される構成に匹敵する(基板は
図8に示されていない)。φ(x)は、電極32の電位U
cに対して電極26にある特定の電圧分布が印加された場合に回折装置を通過する光について得られる液晶層の例示的な位相プロファイルである。
【0071】
電極が周期の80%に対応するように電極の幅がかなり広い場合、例えば電極の空間比が0.5〜0.8である場合、ステップの小さい位相ランプを実現することは可能だろうが、その一方で、
図8に図中符号PSにより示される2πの位相ずれまたは2πステップの部分では、
図8に示されるステップより小さくなるだろう。このような形の局所的な区別がなく、可変調整が不可能な全体的な平滑化は、低域フィルタを表す。すなわち、この種の平滑化は、表わすことができる合成可変位相格子の最大空間周波数を減少する。
【0072】
2πの位相ずれの鮮鋭な端部を同時に維持しつつ位相ランプが実現されるような軌跡でステッププロファイルの平滑化を実現するために、平面E
2に配置され、例えば第1の電極層と同一の距離及び同一あるいは異なる電極空間比を有する透明電極54の第2の埋め込み層が意図的に使用されうる。このことは
図9に示される。
【0073】
鋸歯位相ステップの好ましくは直線状に立ち上がる端部の領域で、平面E
2にある電極54は、例えば平面E
1にあるその電極に隣接する2つの電極の電圧の平均電圧を供給される。しかし、実現されるべき2πの位相ずれのすぐ下方に位置する平面E
2の電極54は、この原則から除外される。それらの電極は、可能な限り鮮鋭な端部を実現するように選択された電圧U
2πを供給される。
【0074】
第2の埋め込み電極櫛型構造の利点は、可能であれば使用されるコンタクトコピーリソグラフィの分解能限界で、双方の電極櫛型構造が共通の平面に配置された場合に必要とされる線幅の実質的に2倍の幅の線を適用できることである。
【0075】
好適な一実施形態によれば、上部基板(
図10には図示せず)の電極層も、2つの平面E
3及びE
4において2つの積層電極櫛型構造の形で実現される。このことは
図10に示される。
図9に示される実施形態と比較して、この構造は、位相ずれの領域で更に急な傾きの端部を得るために有効である。電極26、54は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)から形成され、光学的に位相格子として作用しないようにSF66などの屈折率の高いガラスの中に埋め込まれる。
【0076】
言い換えれば、回折装置の基板の表面に平行な少なくとも2つの異なる平面のうち、少なくとも1つの基板に電極は配置されることが好ましい。異なる平面に配置される電極は、側方に位置がずれるように配列されてもよい。電極のサイズ及び互いの距離の少なくともいずれかは、異なっていても実質的に同一であってもよい。
【0077】
特に好適な一実施形態によれば、回折装置の電極は、予め設定可能な周期性を有する鋸歯型屈折率分布を少なくとも局所的に実現する電界分布が回折装置において得られるように制御される。これは、例えば一方向に関して隣接する電極に異なる電圧を供給することによって実現されてもよい。これにより、鋸歯型屈折率分布が得られるように2つの基板の間に配置された材料に影響を及ぼす電界が回折装置の2つの基板の間で発生される。これは、2次元及び3次元の少なくともいずれかの画像コンテンツが生成される活性状態である。
【0078】
更に、回折装置が異なる回折構造を含む別の活性状態の準備段階として、実質的に平坦な屈折率分布を実現する電界分布が回折装置において得られるように回折装置の電極が動作されることも可能だろう。これを実現するために、一方の基板の隣接する電極は、例えば正に帯電した電極から他方の基板の対向して配置された電極に向かってではなく、2つの隣接する負に帯電した電極に向かって電界線が走るような電圧を供給されてもよい。その結果、基板面に対して相対的に小さな角度を成す電界線を有する電界分布が得られるので、2つの基板の間の中央領域で、2つの基板の面と実質的に平行な向きを有する電界線が得られる。これは、2次元及び3次元の少なくともいずれかの画像コンテンツがまったく提示されない不活性状態である。これにより、2つの基板の間に配置された材料は定義された中立状態に非常に急速に切り替わることができることが好ましく、材料は、この中立状態から異なる回折構造が実現される活性状態に戻ることができる。
【0079】
高いリフレッシュレートを実現することをための次の活性状態に備えて、予め設定可能な回折構造または屈折率分布を迅速に得られるようにするために、好適な一実施形態によれば、実質的に平坦な屈折率分布を設定する段階で、次に生じる屈折率分布に備えて作用する電界分布が得られるように、回折装置の電極は既に制御されている。これは、例えば大きな屈折率差または大きな位相ずれが実現されるべき位置に配置された電極に、それらの位置で既に不活性状態の段階で所望の屈折率分布を得る準備を整えるか、または既に部分的にそのような分布が得られるような電圧を供給することにより実現されてもよい。
【0080】
回折構造を非常に迅速に得られるようにするために、回折装置の電極は、当初、所望の屈折率分布を調整するために必要であると考えられる電圧より高い電圧を一時的に供給される。次に、電圧は所望の屈折率分布を調整するために必要な値まで減少される。
【0081】
2次元または3次元画像コンテンツを提示するための光変調装置において、回折装置及び光変調器の応答時間を短くすることが必要とされてもよい。そこで、150Hz以上のリフレッシュレートを持たない光変調器の使用が可能になるように回折装置及び光変調器の応答時間を短縮することを目的とする使用可能な構成を説明する。
【0082】
カラー画像コンテンツを提示するために、光変調器及び回折装置は、例えば赤、緑及び青の三原色の光のような異なる波長の光を順次供給されてもよい。その場合、回折装置は、それぞれ対応する照明状況に合わせて同期して調整可能である。
【0083】
好適な一実施形態によれば、左眼または右眼に対する情報が光変調器全体に書き込まれるように、光変調器は制御部により制御可能であってもよい。光変調器により左眼または右眼に対して適切に変調された光波場は、回折装置により少なくとも一人の観測者の左眼または右眼へ偏向されてもよい。左眼または右眼に対する情報は、光変調器に順次書き込まれる。
【0084】
あるいは、光変調器は、左眼に対する情報及び右眼に対する情報がそれぞれ書き込まれる第1の領域及び第2の領域、例えば第1の列及び第2の列を有してもよい。光変調器の第1の領域及び第2の領域は、回折装置の第1の領域及び第2の領域にそれぞれ割り当てられる。光変調器及び回折装置は、光変調器の第1の領域による影響を受けた光波場、すなわち、光変調器の第1の領域に書き込まれた情報により実質的に変調された光波場が、回折装置の第1の領域により少なくとも一人の観測者の左眼に向かって偏向されるように制御されてもよい。光変調器の第2の領域による影響を受けた光波場、すなわち、光変調器の第2の領域に書き込まれた情報により実質的に変調された光波場は、回折装置の第2の領域により少なくとも一人の観測者の右眼に向かって偏向される。
【0085】
光変調器の第1の領域及び第2の領域は、交互にかつ互いに繰り返しそれぞれ配列される。その代わりにまたはそれに加えて、光変調器の第1の領域及び第2の領域は垂直方向、詳細には光変調器の列に、向きを定められる。
【0086】
光変調器の個々の画素に色フィルタが割り当てられるか、回折装置の個々の領域に色フィルタが割り当てられるかの少なくともいずれかであってもよい。
【0087】
詳細には、光変調器の後に、実質的に水平方向に有効な光束偏向のための回折装置が配置されてもよい。垂直方向に照明領域、いわゆるスイートスポットを拡張する働きをする手段、例えば適切な拡散箔などが設けられる。
【0088】
従って、異なる波長に対して同一の偏向角度または予め設定可能な偏向角度が得られるように、それぞれの波長の光に適応する回折構造が回折装置に書き込まれるのに同期して、光変調器及び回折装置を異なる波長の光によって順次照射することが一般に可能である。それと同期して、光変調器に対するそれぞれの波長の光に対応する画像コンテンツがそれらの波長に対して順次書き込まれてもよい。
【0089】
あるいは、空間色多重化、すなわち、色フィルタを伴う光変調器が使用されてもよい。提示されるべき画像コンテンツは、複数の波長の光に対して同期して、照明状況に応じて、あるいは1回の符号化処理によって光変調器に書き込まれてもよい。これにより、応答時間の長い光変調器と応答時間の短い回折装置との組み合わせが可能になる。例えば、光変調器は120Hzのリフレッシュレートを有してもよく、回折装置は360Hzのリフレッシュレートを有してもよい。光変調器の個々の画素は色フィルタに割り当てられてもよく、画素のそれらの色フィルタは、通常使用される原色、例えば赤、緑及び青に対応することが好ましい。情報は光変調器の画素に書き込まれる。すなわち、一般的な場合、画素の特定の色割り当てとは無関係に書き込まれる。光変調器は、好ましくは光変調器のすべての画素に対する書き込み動作が完了した時点で、原色の色フィルタに対応する異なる波長の光によって順次照射される。照明の変調はkHz範囲で可能であるので、これは時間を制限する要因にはならない。光変調器の個々の画素は、それぞれ割り当てられた色フィルタに従って動作する。回折装置は、対応する照明状況と同期して動作される。
【0090】
好適な一実施形態によれば、書き込み動作は色割り当てに応じて実行される。まず、1つの原色のすべての画素に情報が書き込まれ、次に、その他の原色の画素に対してその後の原色の光による照明と同一の順序で情報が順次書き込まれる。例えば、すべての赤色画素がアドレス指定され、次に、すべての緑色画素がアドレス指定され、最後にすべての青色画素がアドレス指定される。その後、すべての赤色画素が照射され、次にすべての緑色画素が照射され、最後にすべての青色画素が照射される。RGB光変調器の3原色の制御行列は、3つの単色光変調器のインタリーブとして理解されてもよく、それらの単色光変調器は、時間的に2π/3の位相遅延を伴ってアドレス指定される。すなわち、互いに対して時間的にリフレッシュレートの3分の1だけずれている。利用可能な応答時間、すなわち、画素がアドレス指定されてから対応する原色の光によって照射されるまでの時間の間に、画素は所望の変調状態に適応できるので、その他の色の書き込み時間及び照明時間に対応する最小値を有するという好ましい結果が得られる。
【0091】
電極構造が実質的に平行な線状電極のみを備える1以上の回折装置が設けられる場合、例えば異なる波長の光に適合された回折装置の回折構造を利用して、空間分割多重化も可能である。本発明の普遍性を損なうことなく、以下の説明中、水平方向のみが考慮される。その場合、回折装置のある特定の空間領域は、光変調器のある特定の列に割り当てられる。回折装置の個々の空間領域に対応する光変調器の画素列の光がある特定の角度だけ偏向されるように、それらの空間領域に回折構造が書き込まれる。回折装置の個々の空間領域の回折構造が適切に構成されているので、隣接する赤色画素、緑色画素、及び青色画素の光は、例えば同一の角度だけ偏向されてもよい。更に、観測者の左眼及び右眼に向けられるべき画像コンテンツを異なる角度で偏向することも可能である。その場合、観測者の左眼及び右眼に対する情報は、空間分割多重化によって光変調器に同時に書き込まれてもよい。色多重化の場合、光変調器及び回折装置の双方が色フィルタを備えることも可能である。これにより、光変調器の画素列に割り当てられていない回折装置の空間領域に対する光変調器の画素列の干渉を実質的に完全に排除できる。
【0092】
光変調器の画素列の各部分を回折装置のそれぞれ異なるセクションに割り当てることによって、多重化が実行されてもよい。例えば、画素列の左半分からの光がその部分に割り当てられた回折装置の空間領域によりある特定の方向に偏向される一方で、画素列の右半分からの光は、その部分に割り当てられた回折装置の別の空間領域により異なる方向に偏向されてもよい。この方法を使用して、複数の観測者の同一の眼球に同一の画像コンテンツを提示できる。それぞれ対応する画素列に割り当てられた回折装置の複数の領域への空間分割を実行するのではなく、複数の偏向関数の重ね合わせを回折装置に書き込むことも任意に可能である。そのような重ね合わせの結果、一般に複素値偏向関数が得られる。しかし、複素値偏向関数は位相変調回折装置への関数書き込みの目的のために位相関数により近似されてもよい。この近似は、反復フーリエ変換(IFTA)のような既知の方法を使用して実現されてもよい。あるいは、光の振幅及び位相の双方を変調することにより光を回折する回折装置が使用されてもよい。振幅及び位相の双方を変調することによる回折は、2つの回折装置を相前後して配置することによって実現されてもよい。その場合、回折装置の電極構造は実質的に平行な線状電極を備え、一方の回折装置は光の振幅を変調しかつ他方の回折装置は光の位相を変調する。例えば、回折装置が液晶の利用に基づく場合、光の適切な偏光を選択することにより、例えば偏光子及び遅延板の少なくともいずれかを使用することにより、振幅または位相のいずれか一方の変調が実現されてもよい。
【0093】
複数の観測者の同一の眼球、すなわち、複数の左眼または複数の右眼に同一の画像コンテンツを提示するための光変調器について可能な別の構成は、先の場合と同様に、リフレッシュレートの低い光変調器とリフレッシュレートの高い回折装置とを組み合わせた構成である。左眼に対する実質的に不変の情報、例えばホログラムまたは立体画像が光変調器に書き込まれる間、回折装置は、個々の観測者のそれぞれ対応する眼球位置へ光を順次偏向する。
【0094】
更に、時間分割または空間分割により色及び観測者の眼球を多重化する上述の種々の方法は、互いに組み合わされてもよい。例えば、120Hzのリフレッシュレート及び色フィルタを有する光変調器が720Hzのリフレッシュレートを有する回折装置と共に使用されてもよい。左眼に対する情報は光変調器に書き込まれ、光の3つの異なる色は、回折装置により二人の観測者の左眼に向かって順次偏向されるだろう。その後、右眼に対する情報が光変調器に書き込まれ、光変調器は個々の色の光によって順次照射され、そして個々の色の光は、照明状況と同期して回折装置により二人以上の観測者の右眼に向かって順次偏向されるだろう。その場合にも、例えば赤色光または緑色光がまだ左眼へ偏向されている間に、右眼に対する青色の情報が既に光変調器に書き込まれ始めてもよい。
【0095】
光波場の伝播方向に見て回折装置の下流側に別の回折装置が配置されることが好ましい。光変調器の後に配置された(第1の)回折装置の調整された回折構造の周期性の方向または構造とは異なる方向及び構造を有する予めに定義された周期性を有するこの別の回折装置において、回折構造が調整されてもよい。これにより、第1の回折装置で可能な方向とは異なる方向への追跡を実現することが可能である。
【0096】
2つの回折装置は、(第1の)回折装置の回折構造の周期性の方向または構造が別の回折装置の回折構造の周期性の予めに定義された方向または構造に対して実質的に垂直になるように互いに対して配置されてもよい。詳細には、第1の回折装置及び第2の回折装置は、予めに規定された向きに配列された実質的に平行な線状電極を有する基板をそれぞれ備えてもよい。2つの回折装置は、第1の回折装置の線状電極が第2の回折装置の線状電極に対して実質的に垂直になるように互いに対して配置される。2つの回折装置の電極は実質的に平行な平面に配置されてもよい。
【0097】
好適な一実施形態によれば、視認領域を有する観測者の眼球の隣に存在する観測者の眼球において、光量の生成を幅広く抑制する観測者平面において、回折装置により回折された光の分布が生じるように、回折装置の平行な線状電極は、水平線に対して角度を成して配向される。このことは、国際公開第2006/0669191号に記載される原理に従って動作するホログラム3次元画像コンテンツを提示するためのディスプレイに、本発明に係る光変調装置が使用される場合に特に重要である。この場合、光変調装置で符号化される3次元シーンは、少なくとも一人の観測者に対して少なくとも部分的にコヒーレントな光によってホログラムとして再構成されてもよい。観測者の位置に対して形成されていた視認領域にある観測者平面と観測者の眼球の位置が一致した場合、観測者はその再構成、すなわち、3次元シーンを知覚する。そこで観測者がディスプレイに対する距離を変更するか、あるいはディスプレイの前方で側方へ移動した場合、視認領域は新たな位置まで追跡される。これを実行可能にするために、位置検出システムは、観測者の眼球の位置を検出しかつ観測者の眼球に向かう光束のディスプレイの中心軸に対する偏向角度を判定し、位置情報を更新する。位置検出システムは、制御手段を介して光変調器に接続される。2つの隣接する回折次数の間、従って2つの隣接する光源画像の間の領域に、検出された観測者の眼球の視認領域が形成される。これは、輝度ピークがこの眼球位置に来ることにより、再構成を注視する場合の観測者の妨げとなるような事態を防止するためである。変調器セルの開口の形状は、生成される個々の光源画像に対する光源の全輝度の分布を決定する。一般に、現在形成されている視認領域の脇に位置する眼球において、輝度の干渉または回折次数の知覚が起こりうる。しかし、いくつかの方法を使用してこの影響を最小限に抑えるかまたは完全に抑制することが可能である。光変調器の下流側に配置された少なくとも1つの回折装置でも同様の影響が誘起される可能性があり、そのような影響も最小限に押さえられるかまたは抑制されるべきである。これは、電極を水平線に対して予め設定可能な角度で適切に配列することにより実現できることが好ましい。
【0098】
光変調器及び回折装置の少なくともいずれかは、少なくとも一方向に予めに定義された周期性を有する周期構造を備える。通常、光変調器は行列構造、すなわち2つの異なる次元の格子構造を有する。これに対し、回折装置は、1次元のみの周期構造を有することが好ましい。詳細には、光変調器及び回折装置は予めに定義された周期性を持つ周期構造を有する。回折装置の周期性は光変調器の周期性より小さい。回折装置の周期性は、例えば光変調器の周期性の1/2〜1/150倍の範囲であってもよい。
【0099】
回折装置は、2進値、不連続値または連続値を設定可能な個々の回折素子を備える。詳細には、それらの値は、回折装置のそれぞれの回折素子を通過する光の位相変化に影響を及ぼす液晶の予めに定義された配向に対応するだろう。回折装置の回折素子の設定値または書き込み値は、回折構造を形成する。回折素子は、詳細には電極及びその電極に隣接して配置されたLC材料であってもよい。
【0100】
ディスプレイの対物レンズの機能は、予めに定義された位相項を回折装置に書き込むことによって実現されてもよい。その代わりにまたはそれに加えて、ディスプレイの対物レンズの機能を実現する光学集束素子が設けられてもよい。光学集束素子は、予め設定可能な特性を有するブラッグ格子であってもよい。
【0101】
先に簡単に述べたように、少なくとも1つの温度センサと、少なくとも1つの熱力学素子、例えばペルチェ素子とを有するアクティブ温度制御装置を備える温度補償機構が設けられる。ペルチェ素子は、冷却、加熱及び温度測定(U(T))の少なくともいずれかのために、局所的に使用されてもよい。代わりにまたはそれに加えて、予め設定可能な位相プロファイルを光変調器に書き込むことによって温度補償が実現される。
【0102】
光変調器及び回折装置が波長の異なる光によって順次照射されるのであれば、異なる波長の光に対応する予め設定可能な偏向角度を設定可能だろう。それと同期して、現在使用されている波長に適合する回折構造が回折装置に書き込まれる。これは赤、緑、及び青の三原色に対して実行可能であるので、ディスプレイによって画像コンテンツをカラーで提示することが可能になる。
【0103】
回折装置は光変調器に隣接して配置されることが好ましい。別の回折装置が設けられる場合、該回折装置は第1の回折装置に隣接して配置される。この点に関して、「隣接して」という用語は、特に、光変調器と回折装置との間または2つの回折装置の間に別の光学素子が配置されない、あるいはそれぞれの素子が互いに空間的に近接して配置されるものとして理解されるべきである。空間的に近接するとは、2つの素子の距離が0〜10μmであることを表してもよい。更に、光変調器、回折装置及び別の回折装置のうち少なくとも2つの素子はサンドイッチ構造の形で構成されることも考えられる。この場合、製造工程中、一方の素子は他方の素子に直接溶着される。サンドイッチ構造の個々の素子は、共通する素子、特に共通の基板を有してもよい。対物レンズの機能を実現する素子も、このサンドイッチ構造に一体に組み込まれてもよい。
【0104】
ディスプレイに関して、上記の目的は、特許請求の範囲における請求項37の教示により達成される。本発明に係るディスプレイは、特許請求の範囲の請求項1乃至36のいずれか1項に記載の光変調装置を特徴とする。ディスプレイは、立体画像コンテンツ、立体マルチビュー画像コンテンツ、及びホログラム画像コンテンツの少なくともいずれかを提示できるように構成される。そのようなディスプレイ(3Dディスプレイ)は、人間の眼によって知覚できるように3次元画像コンテンツを3次元で示すことが可能である。光変調装置の可能な実施形態に関しては、繰り返しを避けるために先の説明を参照のこと。
【0105】
3Dディスプレイは3Dモードと2Dモードとの切り換えが可能であることが好ましく、従来の2次元画像コンテンツは2Dモードで送信され、提示されてもよい。
【0106】
一般に、本発明に係る3Dディスプレイにおいて追跡を実現し続け、提示されるコンテンツに関して、3Dシーンの情報を2D画像コンテンツと置き換えることが考えられる。しかし、2D表示モードへの切り換えは、一定の大きさの視認領域を形成することにより、観測者の眼球の現在位置までの小さな観測者ウィンドウの追跡が不要になるように実現されることが好ましいだろう。
【0107】
従って、3D‐2D切り換えの方法として次の2つが提案される。
【0108】
a)切り換え可能な拡散媒体を備えた別の光学素子が設けられる。この媒体は不活性状態「オフ」の場合に透明である。活性状態「オン」になると、媒体は拡散効果を示す。切り換え可能な拡散媒体は、例えばポリマー分散液晶(PDLC)であってもよい。別の光学素子は、ディスプレイの最後の光学素子として、ディスプレイの観測者に向いた側に配置されてもよい。この光学素子が活性状態にある場合、回折装置は非動作状態にされなければならない。これにより、3Dディスプレイの2Dモードが実現されるだろう。光学素子が非動作状態にされかつ回折装置が起動されると、3Dディスプレイは3Dモードで動作する。従って、この構成が利用される場合、ディスプレイの構成の中に追加の素子を配置することが必要である。
【0109】
実現可能な第2の好適な構成は次の通りである。
【0110】
b)回折装置自体が2つの動作モードの間で切り替えられる。一方の動作モード(3Dモード)において、回折装置は光を特定の位置に向けて偏向するように動作される。他方の動作モード(2Dモード)において、回折装置は拡散効果を示すように動作される。これを実現できるようにするために、符号化拡散機能が必要である。これは、例えばランダム位相分布により実現されるか、あるいは回折装置をそれぞれ制御することにより連続格子の代わりに書き込まれる特別に最適化された位相分布によって実現されてもよい。2つの交差する回折装置が使用される場合、第1の回折装置は水平制御に使用され、第2の回折装置は垂直制御に使用される。
【0111】
ホログラムディスプレイにおいて、全方向視差ホログラムまたは単一視差ホログラムが使用される。単一視差ホログラムは、計算処理及び符号化処理に関して簡略化されたホログラムである。特に、符号化方向または視差方向にコヒーレンスを示すだけである照明装置を使用できることが単一視差ホログラムの利点である。観測者ウィンドウは一方向(符号化方向に)生成され得、かつスイートスポットは別の方向(符号化方向に対して垂直な方向)に生成される。例えば、国際公開第2006/027228号を参照。
【0112】
通常、回折装置は追跡のためにコヒーレント光を必要とする。しかし、回折装置の表面領域全体でコヒーレンスが必要なわけではない。格子の数周期でコヒーレンスが存在していれば、回折装置の正しい機能を十分に確保できる。
【0113】
故に、回折装置の複数の格子周期が幅広く、互いに空間的にコヒーレントに照射され、かつSLMの個々の画素が幅広く、互いにコヒーレントに照射されるように、部分的なコヒーレンスが回折装置において符号化方向に垂直に実現されることで、単一視差ホログラム符号化を採用する装置における追跡を可能にするために、光のポインティングベクトル分布に関して寸法、特性、及び特に角度スペクトルを考慮し、周知のファンシーターゼルニケ定理を利用して照明装置を設計することが提案される。これにより、スイートスポットの生成は可能なままでコヒーレント光による追跡を実行できる。
【0114】
SLMが例えば50μmの画素ピッチを有し、回折装置が例えば2μmのピッチを有するならば、回折装置の約25の格子周期をコヒーレントに照射し、SLMの隣接する画素を幅広く非コヒーレントに照射することが可能だろう。
【0115】
光変調装置の製造方法に関して、上記の目的は、特許請求の範囲の請求項46の教示により達成される。本発明に係る方法は、特許請求の範囲の請求項1乃至36のいずれか1項に記載の光変調装置の製造に適用される。製造方法は、
a)第1の基板を電極で被覆する処理工程と、
b)第1の基板の面に材料層を溶着する処理工程と、
c)電極で被覆された第2の基板を溶着する処理工程とを備え、第1の基板の平行な線状電極が第2の基板の平行な線状電極と実質的に平行な向きになるように、2つの基板は位置合わせされる。
【0116】
行程b)において、液晶、カーボンナノチューブまたは楕円形金属ナノ粒子を含むポリマー薄膜が基板に積層されてもよい。
【0117】
行程e)において、例えば別のポリマー膜のような別の材料層がその上に更に積層されてもよい。
【0118】
更に、次の処理工程が含まれてもよい。
【0119】
d)行程b)の完了後に材料層の上に電極を含む中間電極層が溶着される。
【0120】
e)中間電極層の上に別の材料層が溶着される。
【0121】
f)行程d)及びe)は、少なくとももう一度実行されてもよい。
【0122】
この場合、第1の基板及び少なくとも1つの中間電極層は、第1の基板の平行な線状電極が中間電極層の平行な線状電極と実質的に平行に配列されるように互いに対して位置合わせされてもよい。
【0123】
処理工程a)において基板に電極を溶着するために、あるいは処理工程d)において材料層に電極を溶着するために、リフトオフ処理が使用されてもよい。あるいは、液体相または気体相から導電膜を基板または材料層に溶着することによって電極が溶着されてもよい。遠心処理によりフォトレジストが積層されるか、吹き付けられるか、または塗布される。フォトレジストはストライプパターンに従って露光される。この露光は、例えばコンタクトコピーの形で実行されてもよい。ストライプは、例えば二重ビーム干渉パターンの形で作成されてもよい。露光済みフォトレジストは、例えばKOH(AZ Hoechst)によって現像される。導電層の露出した線は、溶液によるエッチングによって除去される。残ったフォトレジストは剥離剤を使用して分離される。電極の間の間隙は、例えば液体相または気体相から十分に透明な非導電性材料を溶着することにより充填されてもよい。
【0124】
回折装置の基板の電極と実質的に平行に延出するワイヤグリッド偏光子である偏光子を電極の平面に配置すべき場合、例えば3本または4本の線が一体となって回折装置の1つの電極を形成するように、偏光子の複数の線または導電性構造が共通の接点によって接合されてもよい。このようにして形成された電極は、一方の端部または両側の端部から電気的にアドレス指定されるように接合されてもよい。
【0125】
あるいは、ワイヤグリッド偏光子線の上にそれらのワイヤグリッド偏光子線と電気的に接触するように、それらのワイヤグリッド偏光子線と平行にITO電極線が塗布されてもよい。これは、例えばセクションごとの露光(スイッチング)を利用して実行されてもよい。その場合、半導体製造に際しては標準的である15nmの重ね合わせ誤差を必ずしも考慮しなくてよい。ここで提案されているITO電極線の製造には、150nm〜250nmの重ね合わせ誤差で十分である。この方法は、ITO電極線及びITO電極線と電気的に接触しているワイヤグリッド偏光子の線の導電率がITO構造単独の場合より相当に高く、それにより、例えば1kHzを超える範囲の高いスイッチング周波数が可能になるという利点を有する。
【0126】
回折装置の電極としてワイヤグリッド偏光子を使用することの利点は、ワイヤグリッド偏光子の導電率がITOの導電率より高いこと及び個々の回折次数に存在する光の形のホログラムディスプレイの遠距離場において振幅変調または位相変調が顕著ではないと考えられることである。ITOと組み合わせると導電率は更に高くなり、ワイヤグリッド偏光子の中断された線を使用するという選択肢もある。
【0127】
以下の説明は、回折装置の基板が実質的に平行な線状電極から絶縁された平面電極を有するという特徴、及び第1の基板の実質的に平行な線状電極が第2の基板または中間電極層の実質的に平行な線状電極に対して0°〜90°、好ましくは0°の予め設定可能な角度を成して配列される特徴の少なくともいずれかに関する。これにより、ある特定のLCモードを実現するためにLC分子の構成を非常に高速にオン/オフ切り換えできるか、またはLC分子の配向を通常規定されている角度範囲を超えて拡張できる。本発明に関して、以下の説明は回折装置のみに適用されるわけではないので、以下の説明は、更に広い意味で光変調器、SLM及びLCディスプレイの少なくともいずれかにも関連する。
【0128】
例えば応答時間、すなわちディスプレイパネルの画素においてLC分子の所望の配向が実現されるまでの遅延時間は、LCディスプレイを使用する場合の重大なパラメータである。応答時間は、どのリフレッシュレートでディスプレイが動作可能になるかを決定する。多くの場合、スイッチオフ時間をスイッチオン時間と可能な限り同じ速さにすることが重要である。
【0129】
通常、電界により駆動されるのは、スイッチオン及びスイッチオフのうちいずれか一方のみである。一般に、LC分子は整合層を介して好適な配向を与えられる。電力が印加されると、LC分子は、例えばLC材料の誘電異方性と印加された電界との相互作用により誘導されるような向きに配向される。この過程の速度は電界強度によって影響を受ける。
【0130】
電力の供給が停止されると、電界は消滅し、LC分子は、整合層により決定された好適な配向に戻る(弛緩)。この弛緩の速度は、通常LC材料の粘度のような材料特性によってのみ決定され、多くの場合スイッチオン段階における配向より遅い。
【0131】
しかし、スイッチオン及びスイッチオフの双方の過程が電界によりトリガされる構成によって、更に高速なLC応答を実現できる。スイッチオフ段階において、LC分子の好適な配向と実質的に平行である配向を誘導する電界が印加された場合、双方の過程、すなわち、電界印加過程及び本来の弛緩過程が共に作用する。電界は好適な配向への再配向を支援し、加速する。
【0132】
そこで、スイッチオン段階においてLC分子の好適な配向からの変化を誘導し、かつスイッチオフ段階ではLC分子を好適な配向に戻すように誘導する電界を印加しうる、適切な電極構成が説明されるべきである。
【0133】
更に、例えば誘電結合の代わりに、電界に応じて直線的に変化し、符合が反転した場合にLC分子の回転方向が変化するような、フレキソエレクトリック型の相互作用が採用されるならば、従来の電極構成を使用することも可能である。これは、例えば国際公開第2008/104533号に記載される。しかし、大半のLCディスプレイの場合のように、電界と一致する効果を有する誘電相互作用が符号と無関係である場合、幾分複雑な電極構成が必要とされる。
【0134】
本発明に係る光変調装置の実施形態に関して、線状電極の格子は、例えば回折装置において鋸歯型位相プロファイルを生成してもよい。第1の基板と第2の基板との間の対応する面外電界によって起こるLC分子の可変面外配向を介して、鋸歯プロファイルが設定されてもよい。線状電極配列によって面内電界の印加も可能になる。面内電界は、LC分子がその好適な配向により決定される面内配向に戻されることによってスイッチオフ過程を加速する。
【0135】
例えば、面内スイッチング(IPS)またはフリンジ電界スイッチング(FFS LMモード)に基づく他の種類の回折装置または光変調器は、電界内におけるLC分子の面内回転と同様に面内にある好適な配向との組み合わせを利用する。そのような場合、先に説明したような高速スイッチオフのための面内電界の原理を直接適用することは不可能である。
【0136】
Yan Li他は、その論文「Fast‐response liquid-crystal displays using crossed fringe fields」(Journal of the SID、2008年10月16日、1,069〜1,074ページ)の中で、電極が互いに対して60°の角度で上部基板及び下部基板に配列されている振幅変調型光変調器を説明している。LC分子の好適な配向は、下部基板の電極に対して10°傾斜している。これにより、スイッチオン段階の回転方向が決定される。振幅変調を実現するために、LC分子はその平面で最大限45°回転する必要がある。分子が45°回転されると、分子は上部基板の電極と実質的に平行になるが、それらの電極に対して約5°の小さな傾斜角度を保つ。そこで、上部基板のフリンジ電界は分子の再配向を加速する。
【0137】
従って、高速スイッチオフを実現し、IPS、FFSなどのLCモードと組み合わせて、特に位相変調光変調器または回折装置と組み合わせて使用するのに適する電極構成が説明されるべきである。
【0138】
LC分子が面内配向を有するような位相変調光変調器またはディスプレイにおいて、2πまでの位相変調が実現されるべき場合、LC分子は180°の角度範囲で回転できることが必要である。この問題を解決しようとする試みは、本明細書に参考として全内容が取り入れられている独国特許第10 2009 059095.1号公報で説明されている。1つの方法は、切り換え可能な整合層を含む。しかし、この場合、この切り換え可能な整合層を実現可能にするために、LCディスプレイパネルの製造中に追加の特殊な材料層を処理する必要がある。そのため、LCディスプレイの標準的な素子によってLC分子の配向の広い角度範囲を実現することが望ましい。
【0139】
上記の問題は、2つの基板の間にLC層を備えた光変調器または回折装置によって解決できる。光変調器または回折装置は、LC分子の実質的に面内の回転または配向により円偏光された光の位相変調を実現することが好ましい。光変調器または回折装置は、第1の基板及び第2の基板に溶着された実質的に平行な線状電極を備える。更に、第1の基板の平行な線状電極の向きは、第2の基板の平行な線状電極の向きに対して、0°〜90°の範囲の予め設定可能な角度を成す。
【0140】
面内LC配向の角度は、第1の基板の電極を適切に制御することにより電界を介して微細に調整されてもよい。第2の基板の電極を適切に制御することにより、LC分子は電界内で更に急速に好適な配向に戻るので、LC分子の配向の角度範囲を拡大できるか、回復段階またはスイッチオフ段階を加速できるかの少なくともいずれかである。回折装置または光変調器の基板は、実質的に平行な電極から絶縁された平面電極を有することができる。
【0141】
このことは、2つの実施形態により説明される。
図17(a)は、基板28上における縞状電極配列、すなわち電極26の配列及び電界が印加されていない間の表面整合層の好適な向きR、従ってLC分子70の配向を示す平面図である。この向きは、電極26の長手方向に対する垂線に対して小さな角度φ、この例では10°の角度で傾斜している。これにより、電界が印加された場合のLC分子70の反時計回りの回転方向が決定される。
【0142】
位相変調を実現するために、強力な電界が印加された場合にLC分子70が第1の(すなわち、下部)基板28と平行になるように、大きな角度の回転が実現されることが好ましい。この動作状態は
図17(b)に示される。第2の(すなわち、上部)基板30の電極72は、LC分子配向のその最大角度に対し、それらの電極がLC分子の長手方向軸に対して小さな角度、例えばφだけ傾斜するように配列される。上部基板30の電極72に電界が印加されると、LC分子70は、
図17(a)に示される状態に急速に戻る。詳細には、この場合、光変調器または回折装置において全体的に、または例えば行ごとに加速されたスイッチオフを実現できる。
【0143】
所望の位相プロファイルまたは画素化位相値を作成するために、第1の基板28の電極26は、回折装置では個々にアドレス指定可能でなければならず、光変調器においては画素ごとにアドレス指定可能でなければならない。しかし、第2の基板30の電極72は、例えば光変調器の1行分または全回折装置をLC分子の好適な同一の配向に戻す共通の制御信号を使用してもよい。詳細には、回折装置においては小さな電極でも大きな回折角を実現できるので、回折装置は、通常第1の基板28上で非常に微細に構造化された電極26を使用する。これに対し、第2の基板30の電極72は、回折角に直接関連していないので、より目の粗い構造を有することが好ましい。
【0144】
第1の基板28の平行な線状電極26の向きは、表面整合層の好適な向きRに対して予め設定可能な(小さな)角度φを有する。第2の基板30の実質的に平行な線状電極72の向きは、第1の基板28の電極26の向きに対して角度βを成し、その角度βは、例えば90°−φであってもよい。
【0145】
LC分子70の好適な配向の急速な回復を支援するもう1つの方法は、それぞれの基板28、30の電極26、72の間に、LC分子70を面外に動かすが、その後、単なる面内弛緩過程と比較して好適な配向の回復を加速する面外電界を短時間印加する方法だろう。
【0146】
それらの構成は、LC分子の回転の角度範囲を拡大するために使用される、独国特許第10 2009 059 095.1号公報に記載されるような切り換え可能な好適な配向と組み合わされてもよい。
図18は、電極26、72を静止表面整合層と組み合わせることによりLC分子70の回転または配向の角度範囲の拡大を実現する実施形態を示す平面図である。これは光変調器に適することが好ましく、2つの基板28、30それぞれの電極26、72の画素ごとのアドレス指定を必要とする。
図18(a)は、
図17(a)と同様に、第1の基板28の電極26及び静止表面整合層の好適な向きRを示す平面図である。
図18(b)は、第2の(上部)基板30の電極72を示す平面図である。第2の基板30の電極72に電界を印加することにより、LC分子70の配向は、第1の基板28の電極26に対する垂線に対して角度ψだけ変化されてもよい。第2の基板30の電極72は、電界が印加された場合に第1の基板28の電極26に対して、
図18(c)に示されるように異なる回転方向、この場合は時計回りの回転方向が可能になるように配列される。従って、第2の基板30に(
図18(b)の下方のLC分子70により示されるように)電界が印加されるかまたは(
図18(b)の上方のLC分子70により示されるように)電界が印加されないことによって、スイッチオンが実現される。回転方向は、LC分子70の好適な初期配向として異なる配向を選択することにより設定される。LC分子70の所望の総回転角度は、第1の基板28の電極26により微調整される。LC分子70の好適な配向のスイッチオフまたは回復は、第2の基板30に電界を印加することにより更に加速されてもよい。このように、活性表面整合層または可変表面整合層を使用することなく、LC分子の配向の使用可能な角度範囲を拡大できる。
【0147】
本発明の教示を実現し、発展させるためのいくつかの可能性がある。その点に関して、特許請求の範囲第1項に続く従属特許請求の範囲を参照すると共に、添付の図面を含む以下の本発明の好適な実施形態の説明を参照する。本発明の教示の一般に好適な物理的形態及び発展形態は、本発明の好適な実施形態の説明及び添付の図面と関連して説明される。
【0148】
すべての図において、同一または同様の部分は同一の図中符号により示される。
【発明を実施するための形態】
【0150】
図1は、2次元及び3次元の少なくともいずれかの画像コンテンツを提示するためのディスプレイ(図示せず)の光変調装置10を示す。光変調装置10は光変調器12(SLM)及び制御部14を備える。光変調器12は、
図1において矢印により示される平行光波場16により照射される。光変調器12の場所に応じて、光変調器12により平行光波場16の位相及び振幅の少なくともいずれかを変化させることができる。これを実現するために、光変調器12は、行列として配列された個々の画素18(図では拡大表示されている)を備える。光変調器12は制御部14により動作される。本発明によれば、光波場16の伝播方向において、光変調器12の後段に少なくとも1つの制御可能な回折装置20が配置される。回折装置20も制御部14により動作される。しかし、回折装置20は、別の制御部により動作されてもよい。回折装置20は、回折装置20が実際にどのように動作されるかに応じて変化する回折構造を備える。この回折構造は、光変調器12により先に変調されていた光波場16を予め設定可能に様々に回折する。
【0151】
図3は、回折装置20に書き込まれた例示的な回折構造22を示す概略図である。この場合、回折装置20により光波場16に与えられる位相ずれは、光変調器12の水平方向(X方向)に見た画素または場所の関数として示される。回折装置20は、回折装置20により設定される回折構造22の周期性を可変に構成される。詳細には、回折構造22の周期性24を拡大または縮小することができる。更に、回折構造22の形態も可変である。これにより、具体的に使用されている回折装置20の特定の構造に応じて、例えば矩形関数、鋸歯関数、正弦関数または別の予め設定可能な関数を精密にまたは近似して不連続ステップを介してまたは連続的に回折装置20に書き込むことが可能になる。
【0152】
図4は、実質的に平行な線状電極26を有する回折装置20の一実施形態を示す部分展開図である。電極26は、第1の基板28に配置され、基板28の実質的に全長に沿って延出する。電極26または第1の基板28の上端部に、電極26を電気的に接続し、制御部(
図4には図示せず)からの電圧を供給可能である電極26の接点29が設けられる。回折装置20は、第1の基板28から離間して配置された第2の基板30を備える。第2の基板30は平面電極32を有する。
【0153】
図5は、回折装置20の断面図を示し、この場合、回折装置20は、
図1に示される光変調器12の全幅を覆うように回折装置20が左右に、すなわち、両側に続いていると理解されるべきである。本実施形態において、第1の基板28に配置された線状電極26は、1.5μmの幅Bを有する。2つの隣接する電極26の間の間隙Gの幅は0.5μmである。電極26及び隣接する電極26の間の間隙は、上記の値とは異なる幅を有することも可能であり、幅は、特にディスプレイの所期の用途及び光変調器12の具体的な構造によって決まる。
図6は回折装置20の別の実施形態の断面図であり、本実施形態では、線状電極26は第1の基板28及び第2の基板30の双方に設けられる。
【0154】
図7は、
図6の回折装置20の構造に実質的に匹敵する構造を有する回折装置20の別の実施形態の断面図である。しかし、
図7に示される回折装置20の場合、上部基板28に配置された線状電極26は、下部基板30に配置された線状電極26に対して側方へずれている。
【0155】
図5及び
図6に示される回折装置20の第1の基板28と第2の基板30との間に、液晶(LC)を含む層34が設けられる。電極26に印加される予め設定可能な電圧により、液晶の配向に影響を与えることができる。図中符号36は、液晶と電極26及び32との接触を防止する働きをする絶縁層を示す。
【0156】
第1の基板28及び第2の基板30の電極26、32は、使用される光を透過する。第1の基板28及び第2の基板30も、使用される光を透過する。電極26、32の屈折率は、基板28、30の屈折率と実質的に同一である。更に、電極26、32の屈折率は絶縁層36の屈折率と実質的に同一である。
【0157】
図2は、本発明に係る光変調装置10の別の実施形態を示す。本実施形態において、光波場16の伝播方向において、第1の回折装置20の後に、別の回折装置38が配置される。この別の回折装置38において、光変調器12の後に配置された(第1の)回折装置20の調整された回折構造22の周期性24の方向Xとは異なる方向Yまたは周期性24の構造とは、異なる構造を有する周期性によって回折構造を調整できる。詳細には、(第1の)回折装置20の回折構造22の周期性24の方向Xまたは構造が別の回折装置38の回折構造の周期性の方向Yまたは構造に対して実質的に垂直になるように、2つの回折装置20、38は互いに関連して配置されてもよい。これにより、第1の回折装置20は水平方向Xの観測者の眼球の追跡を実現し、第2の回折装置38は垂直方向Yの観測者の眼球の追跡を実現する。
【0158】
第1の回折装置20及び第2の回折装置38は、共に、実質的に平行な線状電極26が配置された基板を有する。2つの回折装置20、38は、第1の回折装置20の線状電極26が第2の回折装置38の線状電極26に対して実質的に垂直になるように互いに関連して配置される。光変調器12並びに第1の回折装置20及び第2の回折装置38は、制御部14により制御される。
【0159】
光変調器12及び回折装置20は予め設定可能な周期性を持つ周期構造を有し、回折装置20の周期性は光変調器12の周期性より小さい。詳細には、制御方式及び具体的な構造に応じて、回折装置20の周期性は2μmである。光変調器の周期性は水平方向及び垂直方向の双方で50μmである。モアレ効果を回避するために、相対的に適切な周期を使用することも可能である。
【0160】
回折装置38の電極26は、予め設定可能な電圧を印加することにより液晶層34の一部と相互作用しながら、不連続の値または連続する値が設定される個々の回折素子として理解されてもよい。
【0161】
図1及び
図2に示されるディスプレイにおいて、ブラッグ格子型の光学集束素子40を設けることで、ディスプレイの対物レンズ機能が実現されてもよい。この素子は、光変調器12を通過する光波場16の光束を中央の観測者位置42に向かって集束または偏向する。中央の観測者位置42は、光変調層10の中心軸44に関して対称に、光変調器12から距離Dだけ離間して配置される。中央の観測者位置42は、2つの観測者ウィンドウ46、48を備える。追跡に対応する回折構造22が回折装置20に書き込まれるため、回折装置20により、観測者の眼球50、52の現在の位置に対する、観測者ウィンドウ46、48の横方向追跡を実現できる。追跡された観測者ウィンドウは図中符号46’及び48’により示される。
【0162】
図1または
図2に示されるような光変調装置10を含むか、特許請求の範囲の請求項1乃至20のいずれか1項に従って設計されたかの少なくともいずれかであるディスプレイは、立体画像コンテンツ、立体マルチビュー画像コンテンツ、及びホログラム画像コンテンツの少なくともいずれかを提示可能なように特に設計されてもよい。
【0163】
図11は、
図6の回折装置20の構造に実質的に匹敵する構造を有する回折装置20の別の実施形態を示す側面図である。しかし、
図11に示される回折装置20は、3つの中間電極層56を特徴とする。各中間電極層56は複数の電極58を備え、それらの電極の幅、距離及び配列は、第1の基板28、及び場合によっては第2の基板30に配置された電極26の幅、距離及び配列と実質的に同様である。第1の基板28と隣接する中間電極層58との間に、ポリイミド層を構成する材料62が配置される。ポリイミド層は、実質的に不変の形状を維持する構造で、かつ液晶が導入される空隙(図示せず)を含むように構成される。個々の電極26または58に電圧を印加することにより、ポリイミド層の中で移動自在である液晶を、電圧印加によって発生する電界の電界分布に従って配向することができ、その結果、回折装置20を通過する光に影響を与えることができる。個々の中間電極層56の間、及び第2の基板30と隣接する中間電極層56との間にも材料62は配置される。連続する線は、本発明に係る回折装置20の製造中に被覆処理に際して溶着される電極58の電極材料が材料層62の中へ拡散することを防止する絶縁層64を示す。
【0164】
中間電極層56の電極58は、第1の基板28及び第2の基板30の電極に対して横方向へずれるように、それぞれ対応する中間電極層56に配置されてもよい。少なくとも1つの中間電極層56の個々の電極58の幅及び距離は、電極26の幅及び距離とは異なるように設定されることが可能である。
【0165】
図12は、第2の回折装置20’の電極26の向きに対する、第1の回折装置20の電極26の向きの一実施形態を示す概略図である。第1の回折装置20の電極26は、水平線60に対して角度α=55°を成す向きを有する。第2の回折装置20の電極26は、水平線60に対してα+90°=145°の角度を成す向きを有する。従って、第1の回折装置20の電極26は、第2の回折装置20’の電極26に対して直角を成す。回折装置20、20’のそれぞれの基板で電極26がこのように配列されているため、電極26をそれぞれの基板の4辺すべてで接合できる。
【0166】
図13〜
図15は、回折装置20の詳細をそれぞれ示す。
図13の回折装置20は、画像コンテンツの提示に関して非動作状態にある。この状態では、電界線66は2つの基板の間の中央領域において基板の面と実質的に平行に走る。本実施形態において、この状態は、一方の基板の隣接する電極に符号の異なる電圧(「+」及び「−」により示される)が供給され、その結果、電界線66が正に帯電した電極26から他方の基板の対向して配置されている電極26へ走るのではなく、2つの隣接する負に帯電した電極26へ走ることによって実現される。これにより、2つの基板の間に配置された材料(図示せず)は、規定された中立状態へ、非常に高速に切り替われることが好ましい。材料は、この中立状態から異なる回折構造が実現される活性状態に戻される。
【0167】
図13に示されるような電極の接続状態とは別の状態として、
図14に示されるような電極の接続状態が考えられる。この状態によれば、2つの基板の電極に実質的に楔型の電圧勾配が供給される。この場合、第1の基板の電極及び第2の基板の電極の双方に同一の極性の電圧が供給される。この状態は、図の最も左側にある電極に予め設定可能な電圧(「1+」により示される)が供給され、そして微量ずつ上昇された予め設定可能な電圧(「2+」、...、「16+」により示される)が右側の隣接する電極に順次供給されることによって実現されてもよい。その結果、2つの基板の間に、回折装置20の右側で最高値であり、左に向かって実質的に楔型に下方へ傾斜する電界分布が生じる。これは、
図14の電界線66の太さにより示される。ここで、
図13〜
図15において電界線66は概略的に示されているに過ぎないことを指摘しておかなければならない。実際の電界線は、電極の所定の接続型または他の接続型に対して異なる構成を有してもよい。
【0168】
図15は、画像コンテンツの提示に関して不活性状態にある回折装置20の電極26の接続の別の実施形態を示す。この場合、実質的に均一な屈折率分布を調整する時点で既に、回折装置20の電極26は、次に調整されるべき屈折率分布φ(x)(破線)をいつでも調整できるような電界分布を実現するように動作される。これは、大きな屈折率差または大きな位相ずれが実現されるべき位置68において、既に非動作状態である際に所望の屈折率分布が準備されるように、それらの位置68にある電極26に予め設定可能な正電圧を供給することによって実現される。その他の電極26には予め設定可能な負電圧が供給される。これにより、次の活性状態に対応する予め設定可能な回折構造または屈折率分布を非常に迅速に調整できるので、リフレッシュレートは非常に速くなる。
【0169】
図16は、回折装置20の電極26に印加できる電圧プロファイルを示す時間の経過に伴う電圧曲線の一実施形態を示す。この曲線によれば、回折装置20の少なくとも1つの電極26は、最初に、所望の屈折率分布を調整するために必要であると考えられる電圧より高い電圧U
0を一時的に供給される。次に、電圧は所望の屈折率分布を調整するために必要な値U
Sまで減少される。これにより、異なる回折構造を非常に迅速に実現できるので好ましい。
【0170】
図20は、赤色フィルタを有する画素181、緑色フィルタを有する画素182及び青色フィルタを有する画素183を備える光変調器12を示す概略図である(図中、すべての画素は拡大して示されている)。
【0171】
図20Aは、ある時点(または時間間隔)t1において、635nmの波長を有するレーザー光のような赤色波長の光波場161によって光変調器12が照射されていることを示す。
【0172】
赤色フィルタを有する光変調器12の画素181は、それらの画素181に書き込まれた情報によってその光を変調する。緑色フィルタを有する画素182及び青色フィルタを有する画素183は、それらの画素182、183に書き込まれた情報には関係なく、色フィルタの作用によってその光を阻止する。
【0173】
制御部14は、赤色波長の光を回折することにより観測者50に向かって光を偏向する回折構造を回折装置20に既に書き込んでいる。
【0174】
図20Bは、異なる時点(または時間間隔)t2において光変調器12が異なる光波場162によって照射されること、すなわち、緑色波長の光によって照射されることを示す。緑色フィルタを有する光変調器12の画素182は、それらの画素182に書き込まれた情報によって該光を変調する。赤色フィルタを有する画素181、及び青色フィルタを有する画素183は、該光をそれぞれ阻止する。制御部14は、緑色波長の光を同様に観測者50に向かって偏向するように回折する別の回折構造を回折装置20に既に書き込んでいる。
【0175】
第3の時点(または第3の時間間隔)t3(
図20には図示せず)において、光変調器12は青色波長の第3の光波場によって照射される。青色フィルタを有する光変調器12の画素183は、それらの画素182に書き込まれた情報によってその光を変調する。赤色フィルタを有する画素181及び緑色フィルタを有する画素182は、その光をそれぞれ阻止する。制御部14は、青色波長の光を同様に観測者50に向かって偏向するように回折する、更に別の回折構造を回折装置20に既に書き込んでいる。言い換えれば、
図20は、順次照射される色フィルタ181、182、183を有する光変調器12を含む実施形態を示す。本実施形態において、光の伝播方向において光変調器12の後段に配置された回折装置20は、実際の照明状況、すなわち、それぞれ対応する波長の光に適合する個々の回折構造が回折装置に書き込まれるように動作される。
【0176】
図21は、回折装置20は光変調器12のリフレッシュレートより速いリフレッシュレートで動作されるが、光変調器12は制御部14により先の実施形態より遅いリフレッシュレートで動作される実施形態を示す。回折装置20及び対物レンズ40により、光変調器12に書き込まれた同一の情報が、複数の観測者の左眼または右眼(例えば、50’、50”)へ順次回折される。制御部14は、3D立体画像またはホログラムのようなある特定の情報を光変調器12の画素18に既に書き込んでいる。左眼50’及び50”並びに右眼52’及び52”を有する二人の観測者は、回折装置20及び光変調器12の前方の異なる位置にいる。光変調器12は光波場16により照射される。
【0177】
図21Aを参照すると、制御装置14は、ある時点(または時間間隔)t1において照明光を第1の観測者の左眼50’へ偏向するように回折する回折構造を回折装置20に書き込み終わっている。
【0178】
図21Bを参照すると、光変調器12に書き込まれた情報は異なる時点(または異なる時間間隔)t2において変化しないままであり、この時点で、制御部14は、光を第2の観測者の左眼50”へ偏向するように回折する異なる回折構造を回折装置20に書き込み終わっている。
【0179】
同様に、観測者の右眼に対応する情報が光変調器12(
図21には図示せず)に書き込まれている間に二人の観測者の右眼52’、52”に向かって光が相次いで回折されて偏向されるように、更に別の時間間隔t3及びt4において更に別の2つの回折構造が回折装置20に順次書き込まれる。
【0180】
光変調器12に対する観測者の眼球50’、50”、52’、52”の位置は、例えば位置検出システムにより検出可能である。位置検出システムは、回折装置20の追跡範囲内にいる観測者の人数に関する情報を更に提供するように構成されてもよい。本実施形態において、光変調器12に情報が書き込まれる際のリフレッシュレートは、検出された観測者の人数によって左右されない。制御部14が回折装置20に回折構造を書き込むリフレッシュレートは、ある特定の上限までの現在検出されている観測者の人数に適応されてもよい。この上限は、光変調器12の特性に従属するのではなく、回折装置20の特性によって決まる。
【0181】
図21は、1つの回折装置20を有するシステムを示す。複数の回折装置の組み合わせ、例えば2つの交差する回折装置(
図21には図示せず)を可能にするために、この構成を同様に連続して配置してもよい。その場合、時間間隔t1の間に、一方の回折装置は観測者の左眼の水平位置へ光を回折し、他方の回折装置は左眼の垂直位置へ光を回折する。しかし、例えば垂直拡散媒体を備え、従って、観測者位置を水平方向にのみ追跡するだけでよいシステムにおいては、1つの回折装置を使用するだけで十分である。
【0182】
図21は、光変調器12から実質的に同一の距離Dだけ離間した位置に二人の観測者がいる例を示す。しかし、例えば偏向部分を含むだけではなく、回折装置20に対する集束部分をも備える回折構造を書き込むことにより、対物レンズ40と回折装置20との組み合わせの焦点距離を変化させることも可能である。このようにすると、光変調器12に対して異なる距離にいる観測者の眼球に対して光を順次偏向することができる(
図21には図示せず)。
【0183】
図22は、光変調器12及び回折装置20を備え、左眼50’及び50”を有する二人の観測者を含む更なる実施形態を示す。
図21に示される実施形態とは対照的に、本実施形態において、光変調器12に書き込まれた情報は、二人の観測者の左眼50’及び50”に向けて実質的に同時に偏向されるように、回折装置20により時間間隔tの間に回折される。これを実現するために、光変調器12の各画素18は、例えば垂直に配列され、1つの画素の2分の1の幅を有する回折装置20の2つの専用空間領域に割り当てられる。一方の観測者の眼球50’に向かって光を偏向する回折構造が、回折装置20の一方の領域に書き込まれる。他方の観測者の眼球50”に向かって光を偏向する回折構造が、回折装置20の第2の領域に書き込まれる。言い換えれば、本実施形態において、1つの時間間隔の間に観測者の左眼または右眼に関する情報のみが光変調器12に書き込まれ、二人の観測者の左眼または右眼50’、50”に向かう偏向方向に関して回折装置20で空間分割多重化が実行されるということになる。位置検出システムにより複数の観測者、すなわち、N人の観測者が検出された場合、光変調器12の各画素18に回折装置20のN個の空間領域が割り当てられてもよい。その場合、回折装置20のN個の空間領域の各々は、N人の観測者の左眼または右眼に向かって光を偏向する。
【0184】
図23は、光変調器12及び回折装置20を含み、左眼50’及び右眼52’を有する一人の観測者を含む更なる実施形態を示す。光変調器12のある特定の画素184は、観測者の右眼52’に対応するある特定の情報を含み、他の画素185は、観測者の左眼50’に関するある特定の情報を含む。それらの画素184、185は、観測者のそれぞれの眼50’、52’に向かって光が偏向されるように光を回折するそれぞれ異なる回折構造が書き込まれた回折装置20の空間領域に割り当てられる。言い換えれば、本実施形態において、観測者の両眼に対応する情報が1つの時間間隔の間に光変調器12に書き込まれるということになる。光変調器12及び回折装置20の双方は、観測者の左眼50’、50”に向かう偏向方向に関して空間分割多重化を実行する。
【0185】
最後に、以上説明した実施形態は特許請求される教示を例示するものであって、特許請求される教示は上記の実施形態に限定されないと理解されるべきであることを述べておかなければならない。