(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853000
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物の生成方法とその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20160120BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20160120BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20160120BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E
A23L1/30 Z
A61K35/74 A
A61P37/02
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-161899(P2013-161899)
(22)【出願日】2013年8月2日
(62)【分割の表示】特願2008-535199(P2008-535199)の分割
【原出願日】2006年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-12005(P2014-12005A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2013年8月28日
(31)【優先権主張番号】MI2005A001910
(32)【優先日】2005年10月11日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】MI2006A001212
(32)【優先日】2006年6月23日
(33)【優先権主張国】IT
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-18383
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-18384
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21019
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21020
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21021
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21022
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21023
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21380
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21381
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21382
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21383
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21384
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21385
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21387
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21388
【微生物の受託番号】BCCM LMG P-21389
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16506
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16507
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16603
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16604
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16605
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16606
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16607
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16590
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16591
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16592
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16593
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16594
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16595
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16596
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16597
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 16598
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17102
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17103
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17104
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17843
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17844
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 17845
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18295
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18296
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18297
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18298
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18299
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18300
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18301
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18302
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18350
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18351
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18352
【微生物の受託番号】DSMZ DSM 18353
(73)【特許権者】
【識別番号】309038720
【氏名又は名称】プロバイオティカル エス.ピー.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PROBIOTICAL S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モーニャ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ストロッツィ,ジアン パオロ
【審査官】
濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−261691(JP,A)
【文献】
特開平05−103595(JP,A)
【文献】
特開2004−041099(JP,A)
【文献】
特開2003−219866(JP,A)
【文献】
特開2001−061445(JP,A)
【文献】
特表2004−521653(JP,A)
【文献】
特表2007−508035(JP,A)
【文献】
特表2006−519759(JP,A)
【文献】
特表2002−501387(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/047489(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/052462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23L 1/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリアック病に侵されている人であって、グルテンおよび/または乳製品のアレルギー物質に特に敏感な人のための食料品または医薬品製剤の生成方法であって、
プロバイオティックバクテリアを非アレルギー性培地で培養して生成する工程を含む手段により得る少なくとも一つの非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物を使うことを含み、
前記非アレルギー性培地は、少なくとも一つのペプトンおよび/またはタンパク質加水分解物を含み、前記ペプトンおよび/またはタンパク質加水分解物は、植物および/または動物由来のペプトンおよび/またはタンパク質加水分解物を含む一群から選択され、
前記植物由来のペプトンは、米、イモ、栗、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、ソラマメ、豆科植物および/またはその混合物を含む一群から選択され、前記動物由来のペプトンは、肉ペプトンから選択される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記バクテリアは、以下のプロバイオティックバクテリア株を含む一群から選択される:
【表1】
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地は、複雑な多糖類に由来するグルコースおよび/または単糖もしくは二糖から選択される少なくとも一つの物質を含み、前記グルコースは、イモデンプン、またはテンサイもしくはサトウキビのショ糖に由来する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地は、イモデンプン、またはテンサイもしくはサトウキビのショ糖に由来する前記グルコースと、前記肉ペプトンを少なくとも一つと、米、イモ、栗、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、ソラマメ、豆科植物および/またはその混合物を含む一群から選択される前記植物由来のペプトンを少なくとも一つとを含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地と接触している前記バクテリアは、醗酵工程およびそれに続く冷凍乾燥工程の対象となる方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、得られた前記プロバイオティックバクテリア培養物は、検出限界以下のアレルゲンの量:グルコースは3ppm以下、ラクトースは7ppm以下およびラクトグロブリンは0.05ppm以下、を含有する方法。
【請求項7】
セリアック病に侵された人であって、グルテンおよび/または乳製品のアレルギー物質に特に敏感な人のための食料品または医薬品製剤の生成方法であって、
少なくとも一つの非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物を使うことを含み、
前記培養物のプロバイオティックバクテリアは、以下の表1のプロバイオティックバクテリア株を含む一群から選択され、
前記培養物は、二次的もしくは意図しない汚染によるアレルゲンの痕跡を取り除くために酵素による前処理をされた非アレルギー性培地を介して前記バクテリアを生成する工程を含む手段により得られ
、
前記非アレルギー性培地は、少なくとも一つのペプトンおよび/またはタンパク質加水分解物を含み、前記ペプトンおよび/またはタンパク質分解物は、動物および/または植物由来のペプトンおよび/またはタンパク質分解物を含む一群から選択され、
植物由来の前記ペプトンは、米、イモ、クリ、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、種々の豆類およびその混合物を含む一群から選択され、動物由来の前記ペプトンは、肉ペプトンから選択される方法。
【表1】
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記酵素による前処理は少なくとも一つのタンパク質分解酵素および/または少なくとも一つの糖分解酵素の使用を含み、前記タンパク質分解酵素は、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、ペプシン、パパインおよびブロメラインを含む一群から選択される、プロテアーゼおよび/またはペプチターゼを含む一群から選択され、前記糖分解酵素は、α−グルコシダーゼおよびβ−グルコシダーゼとα−ガラクトシダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼを含む一群から選択される方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記酵素による前処理は、少なくとも一つのプロテアーゼおよび少なくとも一つのグルコシターゼの使用を含み、前記プロテアーゼは、アルカラーゼおよびブロメラインから選択され、前記グルコシダーゼはラクターゼおよびβ−ガラクトシダーゼから選択される方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、前記酵素による前処理は、アルカラーゼ、ラクターゼおよびブロメラインを順に使用することを含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記アルカラーゼと前記非アレルギー性培地は、温度45から55℃において15分から60分の間で、さらにpHが7から8の間、好ましくは7.5±0.20の間で、処理され、前記ラクターゼおよび前記非アレルギー性培地は、温度30から40℃で2時間から6時間の間、pH6から7、好ましくは6.5±0.2で処理され、
前記ブロメラインおよび前記非アレルギー性培地は、温度30から40℃の間で、1時間から6時間の間、pH5から6の間で処理される方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、酵素による前処理の工程の後には、前記一菌株の醗酵に適したpHの値に是正される工程と、90から145℃の間の温度で前記酵素による前処理に使用された酵素を変型および不活化する加熱工程と、の記菌株による醗酵工程とを含む方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地は、複雑な多糖類の加水分解に由来するグルコースおよび/または単糖もしくは二糖から選択される少なくとも一つの物質を含み、前記グルコースはイモまたは、テンサイもしくはサトウキビのショ糖に由来する方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地は、イモまたは、テンサイもしくはサトウキビのショ糖に由来するグルコースと、少なくとも一つの肉ペプトンと、米、イモ、クリ、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、種々の豆類およびその混合物を含む一群から選択される少なくとも一つの植物由来のペプトンと、を含む方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法であって、前記非アレルギー性培地を含有する前記バクテリアは醗酵工程に続いて冷凍乾燥工程の対象である方法。
【請求項16】
請求項7に記載の方法であって、前記プロバイオティックバクテリア培養物は、検出限界以下のアレルゲン量:グルテンでは3ppm以下、ラクトースでは7ppm以下、β−ラクトグロブリンでは0.05ppm以下、を含有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物の生成方法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
人の消化器管には、細菌叢とよばれる複雑な微生物の細菌群集があることが知られている。この細菌叢は、主に完全な嫌気性細菌からなり、局所的な消化器官レベルと、間接的に宿主の機能およびほぼ全ての臓器を含む一般的な全身レベルとにおいて影響を与える異なる活動を行いと、効果を持つ。
【0003】
腸内微生物叢は、多種多様な異なる株(400から500)からなり、腸粘膜と取り込まれた食べ物の欠片にコロニーを形成することができ、そして個人の健康状態を強く調整できる。
【0004】
腸内微生物叢の構成は、いくつかの要因により変化することがある。例えば、年齢、個人の健康状態、異なる病原菌の存在、ストレスと特に食事などがあげられる。
【0005】
内因的および外因的な負の要因に起因して、有用なバクテリア(特に、小腸に存在する乳酸菌グループと大腸に存在するビフィズス菌に属するバクテリア)が減少し、連鎖球菌やクロストリジウム菌などの病原性腸内細菌が増加している。
【0006】
医療行為、食事療法、添加物や特に食べ物(「機能性」または「栄養補助」食品と呼ばれる)による特定のプロバイオティクスの投与は、腸の機能を最適に修正することにより宿主の微生物叢を再平衡化させる。
【0007】
「プロバイオティック」という言葉は、通常、健康な人の腸内微生物叢から選ばれた、生きている微生物と関係し、最適な量が適切な時間で投与されると、これは一時的であっても腸管の異なる領域でコロニーを形成することができ宿主の生物の健康に有意な効果を与えることができる。
【0008】
プロバイオティクスに属するのは、主にラクトバシラス属、ビフィドバクテリウム属、連鎖球菌属、四連球菌属、乳酸球菌属、プロピオン酸菌属、リューコノストック属の株であり、また、まれに、サッカロミセス属、バシラス属およびエンテロコッカス属の株もある。
【0009】
世界中で実施された厳しい試験とプロバイオティクスを摂取した消費者で示された健康的かつ有用な効果として、
1.免疫機構の刺激;
2.抗変異原性と抗遺伝毒性の誘導;
3.たとえば、大腸癌、乳癌、膀胱癌などに関連する抗腫瘍性および抗転移性作用;
4.栄養吸収の向上;
5.乳糖不耐性症状の減少;
6.pHの低下による便秘の解消と腸内運動の向上;
7.コレステロールと脂肪吸収の抑制;
8.女性の尿生殖器系の感染症を防ぐ抗下痢作用、抗高血圧作用、抗糖尿病作用;
9.加齢病状の予防作用;などが挙げられる。
【0010】
経口投与されるプロバイオティクスは以下の一般的かつ機能的な条件で特徴付けられていなければならない:
i)人間の腸由来である;良好な健康状態の個人から採取されたもの;
ii)バイオセーフティーである;副作用を引き起こさない、特に弱っている人や免疫力の低下した人において副作用を引き起こさない;
iii)耐性と有効性;胃液、膵臓の分泌液、胆汁に対して生存できる耐性があり、回腸と結腸にダメージを受けずに到達でき、それでいて有効である。
【0011】
プロバイオティック微生物と病原性微生物叢の競合は、摂取されたあと、プロバイオティック微生物が胃の酸性環境や高濃度の胆汁塩において生存することができ、腸管に到達できた時にのみ起こり得る。一般的に、プロバイオティック微生物は腸管に到達すると、腸柔毛突起に対する特定の接着機能を持つタンパクおよび/または炭水化物による接着機構を介して競合を開始すると言われている。
【0012】
工業レベルでは、プロバイオティクスは冷凍乾燥のバクテリア培養物の形状で作られる。すなわち、適切な培養液にいる細胞の成長を判断し(醗酵)、そして次に、菌体量の濃縮と精製に続いて同細胞の脱水が冷凍乾燥により行われる。このような工程は、バクテリアを適切な数に繁殖させ(醗酵工程)さらに長期間バクテリアを保存できるようにする(冷凍乾燥工程)のに必要である。
【0013】
醗酵工程を問題なく実行し、さらに十分な量産生するためには、細胞に炭素源、窒素源、オリゴ成分と生物活性剤を適量加えることが必要である。
【0014】
伝統的には、一般的に「乳酸」菌と呼ばれるものを取り扱う時は、窒素源として使用されている基質は、血清、乳清タンパク、加水分解物質、カゼインペプトン、カゼイネートなどであり、一方で炭素源としては、ほぼ全ての生物で簡単に代謝されることから乳糖とブドウ糖が一般的に使用されている。
【0015】
近年、おそらく食事が多様性に欠けすぎていることや、タンパク質と脂肪が多すぎるために、ヨーロッパと西側諸国では、アレルギー性の病状で苦しむ人の微妙な増加が報告されている。
【0016】
IV型またはIgE介在型の免疫反応は「アレルギー」と呼ばれ、最初の感応性接触(人生のどの時にでも起こり得るもので、また胎内においても起こり得る)の後、ヒスタミン介在機構により特定のIgEが生成される。
【0017】
このような反応は、「アレルゲン」と呼ばれる分子のほんのわずかな量でも引き起こされ、小さな皮膚の反応からアナフィラキシーショックや死まで変化する臨床結果を招く。
【0018】
これらの物質が危険である人達もいるため、ヨーロッパ地域では、「製造時に使用するものと食品中に存在するもの」という表示に以下に示すクラス(上記指令の附則IIIの2)が明確に記載されなければならないという規則を適用している(指令2000/13/ECの6条2項、指令2003/89/ECで変更):
グルテンを含む穀物(すなわち、小麦、ライ麦、大麦、オート麦、スペルト小麦、カムット小麦もしくはそれらの交雑種)およびそれらに由来する生産物;甲殻類および甲殻類から作られる生産物;卵および卵から作られる生産物;魚および魚から作られる生産物;ピーナッツおよびピーナッツ製品;大豆および大豆製品;ミルクおよび乳製品(乳糖を含む);殻を有する果物、すなわちアーモンド(Amigdalus communis L.)、ヘーゼルナッツ (Corylus avellana)、一般的なクルミ(Juglans regia)、カシューナッツ(Western Anacardium)、ピーカンナッツ [Carya illinoiesis (Wangenh) K.Koch]、ブラジルクルミ(Bertholletia excelsa)、ピスタチオ(Pistacia vera)、クインズランド ウォルナット(Macademia ternifolia)とそれに由来する生産物、セロリとセロリから作られる生産物、カラシとカラシ食品、ゴマとゴマから作られる生産物、二酸化硫黄とSO
2で表される濃度が10mg/kgもしくは10mg/lよりも高濃度なサルファイト。
【0019】
プロバイオティクスの製造において典型的には、ミルク(窒素源として)および通常はデンプン(小麦デンプンも)に由来するブドウ糖(炭素源として)とそれに由来するものが基質として使われるため、プロバイオティクスを特に過敏な人に投与することは非常に危険になることもあり、たとえ、それらがアレルゲン(つまり、ミルクおよび/またはグルテンに由来するもの)を実際には微量しか含んでいなかったとしても危険である。
【0020】
ミルクの場合は、この食品による有害反応には独立した2つの要因がある。牛乳のタンパク質に対するアレルギー(APLV)と乳糖不耐症である。
【0021】
ミルクと共に卵は、よりアレルギーを誘因する食品である。ミルクと卵のこのような特徴はこれらに含まれるタンパク質によって決定される。すなわち、主にα―ラクトアルブミン、β―ラクトグロブリンとカゼインである。
【0022】
牛乳タンパクに対するアレルギーは、生後1年間は比較的よくある病態である。症状としては、50から70%の場合において消化器系の症状があり、50から70%の場合において皮膚障害、20から30%の場合で呼吸器障害、さらに5から9%の割合で全身的な障害(アナフィラキシー)がみられる。
【0023】
APLVは、生後1年を過ぎるとしだいに弱まり、10歳頃には消える傾向にあり、成人では稀である。
【0024】
乳糖不耐症は逆で、生後1年間は非常に稀で、成人において非常に多い。特に、特定の人種で多い(アフリカ系、アジア系、アメリカ系インディアン)。
【0025】
ミルクは、基本的な食べ物であることから、出生時および新生児でミルクの糖分、乳糖、を分解して簡単な成分であるグルコースとガラクトースに分解するのに必要な酵素をすでに生成している。生後1年経つと、ミルクは重要な食べ物ではなくなり、ラクターゼが自然に減少するため、多くの成人がミルクに対して不耐(アレルギーではない)となる。
【0026】
セリアック病とは、穀物において自然に「貯蔵」タンパクとして含まれるグルテンを摂取することで引き起こされる腸疾患性の慢性的な自己免疫疾患である。
【0027】
この食物不耐症は、遺伝的に罹患しやすい人に影響する。これらの人達は、小麦グルテン、スペルト小麦(小麦の一種)、カムット小麦およびスペラ小麦(小麦の一種)、大麦、ライ麦、ライ小麦(小麦とライ麦の交配種)およびそれらの誘導体の典型的なタンパク部分の摂取に対して異常な反応を起こす免疫機構を有している。オーツ麦のタンパクに対して不耐を表す人もいる。
【0028】
技術的に「グルテン」とは、上述の穀物のタンパク質の「グリアジン」と呼ばれる簡単なプロラミン性タンパク(プロリンが豊富)と「グルテニン」と呼ばれるグルテリン性タンパク(グルタミンが豊富)の混合を言う。
【0029】
セリアック病において、「グルテン」とは、通常、穀物に含まれる全てのタンパクを言い、たとえグルテンを形成するタンパク部分であっても、グリアジンが最も有害のようである。
【0030】
セリアック病にかかっている人は、少量であっても、グルテンの摂取は免疫機構の異常な反応を引き起こし得る。トランスグルタミナーゼ、腸粘膜組織に存在する酵素、はグリアジンと結合し脱アミノ反応を通してT細胞(免疫機構の細胞で、タンパク抗原に対する免疫反応全てを制御できる)を活性化できる分子に変化させ、結果として抗トランスグルタミナーゼIgGおよびIgAと抗エンドマイスIgA免疫グロブリンを生成する。
【0031】
初期段階では、腸管上皮細胞内の活性化T細胞の増加が起きる。病気の進行と共に、活性化T細胞の増加はリンパ球および自身の基底膜の浸潤プラズマ細胞の両方と関連し、柔毛突起を縮める原因であるメタロプロティナーゼを生成するため、腸粘膜にダメージを与える。
【0032】
セリアック病の進行を防ぐもしくは治療する可能性は現在のところない。したがって、セリアック病患者にとって完璧な健康を保証する療法としては、グルテンを含まない食事を生きている間徹底的に行うしかない。
【0033】
グルテンの摂取は、微量であっても、自己免疫反応を引き起こせるので、セリアック病患者は危険な穀物の小麦粉を微量であっても取り除かなくてはならない。
【0034】
摂取されたグルテンの量と腸管レベルで起こる有害な効果を現す比が未だ定義されていないため、「微量」という言葉は、セリアック病の治療と食品法律案において根本的な実用上の重要性がある。なぜなら、セリアック病患者の食事に適した食品の「許容できる」グルテン(閾値)の上限と関連するからである。
【0035】
1日100mgのグリアジン、200mgのグルテンに相当する、すなわち3gのパンで、ほとんどのセリアック病患者において、継続的な腸管の炎症の予兆である腸管上皮細胞内リンパ球の増加を引き起こすのに十分であると全ての当業者は同意している。
【0036】
下限に関し、今までに行われた数少ない科学的研究では、1日10mgのグリアジンの摂取(グルテン100万部に対して20部に相等)なら腸粘膜を繊細に傷つけることはないと示しているが、稀に消化器官の症状が認められる。
【0037】
国際法レベルにおいて、現在も施行中の旧式の基準「Codex Standard for Gluten−Free Foods」では100gの乾燥物中に0.05の窒素(小麦でんぷんと参照して)を食事療法製品中のグルテン成分の上限としており、これは500ppmのグルテン部分に相当する。
【0038】
しかしながら、上述のガイドラインに対する正しくかつ適切な見直しが行われており、この見直しにおいて、グルテンを天然に含まない材料からできたグルテンを含まない食品は、20ppmを超えるグルテンを含まないと予測しており、一方でグルテンを含む穀物から作られるグルテンを含まない食品は最大で200ppmのグルテンを有する可能性があると予測している。
【0039】
フランス、イギリスとオランダでは、上述のガイドラインの見直しを待っており、これらの国々ではグルテンなしの製品の上限を200ppmと考えている。
【0040】
各国の範囲では、現在の規則は共同体や国際的なものよりも慎重で、実際にもともとグルテンを含まない原料から作られた食品およびそれらが精製された食品の両方において“100万分の20”という制限が設定されている。
【0041】
もし、食品の成分もしくは食品を形成する一以上の材料(香料、添加物もしくはアジュバント)にグルテンもしくはグルテン由来の物質を含有する穀物が存在する場合および/または製造工程によってグルテンの量が解析的に判断して100万分の20より多く最終製品に入るような製品であれば、成分表示の最後に明確に“グルテンを含有する製品”とラベルに表示しなければならないとしている。
【0042】
しかしながら、元々グルテンを含まない穀物やそれらに由来する製品(デンプン、小麦粉、デンプン粉など)の汚染現象が製粉工業レベルですでに起き得ることを考慮すると、食品から完全にグルテンを除外することは、容易ではない。
【0043】
そのような製品は、その後食品業界によって、複数の技術的材料、添加物および由来と性質の異なるアジュバントを有する複合食品の生産に使用される。
【0044】
最近の調査で、「理論的」にグルテンを含まない製品中の最大で6%が、申告された材料を基にすると、実際には100gの最終製品中に30mgのグリアジンを含んでおり、これは600ppmのグルテンに相当することが示された。
【0045】
したがって、グルテン汚染の可能性を除外するためには、商品化された食品の一つ一つにおいて、使用された全材料と全加工工程だけでなく、原材料の一つ一つの全生産工程を考慮する必要がある。
【0046】
したがって、ミルク、穀物を原料にした醗酵基質の使用または意図しないもしくは二次的な汚染に起因するアレルギー物質を含まないプロバイオティックバクテリア培養物を製造する必要がある。
【0047】
実際、二次的、意図しないおよび事故的な汚染により、製造工程において使用されたいくつかの成分が微量のアレルゲンを持ち込んでしまう可能性はあり得る。
【0048】
そのため、醗酵も含む一つ一つの工程において、非アレルギー性物質が使用されるプロバイオティックバクテリア培養物の生成方法の提供が必要とされている。特に、窒素源と炭素源として優れているミルクおよび乳製品とグルテンを含む穀物ではない醗酵基質の同定と選択が望まれている。
【0049】
したがって、今日まで使用されている基質の代わりとして、また同時に二次的、意図しない、および事故的な汚染を、もし起きた際には、抑制させることができる、プロバイオティックバクテリア培養物の生成方法の提供が非常に必要であるとこの分野の全ての人において意見が一致している。
【0050】
とりわけ、アレルギー物質の欠如に関して二重レベルでの安全性を想定したプロバイオティックバクテリア培養液の生成方法の提供が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
本発明の目的は、既知の技術の限界を解決する培養物の生成方法を提供することである。
【0052】
本発明の他の目的は、全ての人達、アレルギーを持っている人達にも処方できる安全なプロバイオティックバクテリア培養物の生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0053】
これらとその他の目的は、後述の詳細な説明で明らかになるが、本出願人によって達成されており、プロバイオティックバクテリアの培養物の製造工程におけるアレルゲンの欠如に関して二重レベルの安全性を含む方法を向上させた。
【0054】
特に、本出願人は、プロバイオティック培養物における十分な窒素源と炭素源を保証できる選択された非アレルギー性醗酵基質(非アレルギー性原材料)を使用する製造方法を立ち上げた。
【0055】
非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物の製造方法と、前記培養物を含む成分と「機能性」もしくは「栄養補助食品」の製造のための前記培養物の使用とは本発明の目的であり、特徴は添付の特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明の実施形態において、前記バクテリア培養物の菌株は、ラクトバシラス属、ビフィドバクテリウム属、連鎖球菌属、四連球菌属、乳酸球菌属、プロピオン酸菌属、バシラス属、サッカロミセス属、エンテロコッカス属、リューコノストック属に属する。
【0057】
好ましくは、ラクトバシラス属の中でも以下の菌株が使われた。L.pentosus、L.plantarum、L.casei、L.casei ssp.paracasei、L.casei ssp.rhamnosus、L.acidophilus、L.delbrueckii ssp. bulgaricus、L.fermentum、L.gasseri。
【0058】
前記菌株のうち使用された菌株の例は、添付の表2および表3に記載されている。好ましくは、ビフィドバクテリウム属の中でも以下の菌株が使用された。B.longum、B.breve、B.lactis、B.adolescentisとB.pseudocatenulatum。
【0059】
前記菌株のうち使用された菌株の例は、添付の表2および表3に記載されている。好ましくは、乳酸球菌属の中でも以下の菌株が使用された。L.lactisとL.lactis ssp. Lactis。
【0060】
前記菌株のうち使用された菌株の例は、添付の表2および表3に記載されている。好ましくは、連鎖球菌属の中でも以下の菌株が使用された。S.thermophilus。
【0061】
前記菌株の中でも使用された菌株の例は、添付の表2および表3に記載されている。
【0062】
本発明の特に好ましい実施形態において前記バクテリア培養物のバクテリアは添付の表2および表3に記載されたプロバイオティックバクテリアを含む一群から選択される。
【0063】
本出願人は、特定の非アレルギー性原材料選択し、適用することが有用であることを見出した。特に本出願人は、窒素源として、もともとグルテンとミルク由来のアレルゲンを含んでいない植物および/または動物由来のペプトンおよび/またはタンパク質の加水分解物、さらに炭素源として、もともとグルテンとミルク由来のアレルゲンを含んでいない植物に典型的な多糖の加水分解から生成されるグルコースおよび/またはその他の単糖もしくは二糖を見出した。
【0064】
植物由来のペプトンは、以下を含む一群から選択される:米、イモ、トウモロコシ、栗、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、様々な豆とその混合物であるが、ミルクまたはグルテン系のアレルゲンを生成せずに醗酵によるバクテリアの成長を促進できる。
【0065】
好ましい第一実施形態において、本発明の目的である方法では、窒素源として、一以上のペプトンおよび/または非アレルギー性のタンパク質加水分解物を使用し、さらに炭素源として、複雑な多糖類(非アレルギー性原材料)の加水分解から生成されるグルコースおよび/または単糖もしくは二糖を使用している。
【0066】
好ましい第二実施形態において、本発明の目的である方法は、生産および/または販売過程において起きた二次汚染に由来するアレルゲンがあっても、その痕跡を取り除くのに適した酵素で原材料を前処理する。
【0067】
本発明において、培地は、グルテンもしくはミルク由来のアレルゲンおよび上述の指令の附則IIIの2のリストに含まれる全物質を元々含んでいない(非アレルギー性原材料)植物および/または動物由来の非アレルギー性の培地である。
【0068】
上述の非アレルギー性原材料の使用により、上述の各国指令の附則IIIの2のリスト含まれる物質を使用せず、さらに製造業者によってこのような物質を含んでいないことが保証された材料を使用していることが確実なため、アレルギーを持つ人への使用が保証されたプロバイオティクスを得られるようになる。
【0069】
そして、あるサンプルに化学物質が含まれないことは科学的に証明できないが、存在するかもしれない量が利用された解析方法(たとえ、より敏感で且つ是正された既知の方法が使用されたとしても)によって検出限界を下回ることを簡単に判断できることから、酵素による前処理は結果的に新たな保証にもなる。
【0070】
例示として、プロバイオティックバクテリア培養物の成長用の培養液のいくつかの非アレルギー性製剤を以下に記す。
【0071】
前記培養液の成分は、窒素源(この場合は、ペプトンおよび/またはタンパク質の加水分解物)、炭素源(この場合は、複雑な多糖の加水分解に由来するグルコースおよび/または単糖もしくは二糖)、生物成長活性剤、ビタミン(この場合は、酵母抽出液由来)と無機塩を必ず含まなければならない。
【0072】
例えば、培養液は:
好ましくは、トウモロコシデンプン、イモ、テンサイのショ糖もしくはさとうきびのショ糖から選択されるグルコース;
米、イモ、トウモロコシ、栗、タピオカ、キャッサバ、エンドウ豆、種々の豆、豆もしくは一般的に豆科牧草類とその混合物から好ましくは選択されるペプトン;
肉から選択されるペプトン;
酵母抽出液;
無機塩(例示として、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素、塩化物、クエン酸塩、硫酸塩など);
界面活性剤(もし必要であれば、例えば、Tweenやレシチンなど)と、
飲料水と、を含むことができる。
【0073】
ラクトバシラス属とビフィドバクテリウム属の菌株の成長に適した配合の一つとして、以下の材料が好ましくは含まれる:
グルコース(上記に並べられた原料由来)10から100g/l、
米ペプトン10から50g/l、
肉ペプトン 10から50g/l、
酵母抽出液 2から20g/l、
無機塩 1から10g/l、
界面活性剤 0から5ml/l、
飲料水 所望の適量まで。
【0074】
非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養液の好ましい実施例は以下でもよい:
グルコース(トウモロコシデンプン由来) 20g/l、
米ペプトン 10g/l、
肉ペプトン 10g/l、
酵母抽出液 5g/l、
酢酸ナトリウム 5g/l、
クエン酸アンモニウム 2g/l、
二塩基性リン酸カリウム 2g/l、
硫酸マグネシウム 0.1g/l、
硫酸マンガン 0.05g/l、
Tween80 1ml/l、
飲料水 所望の適量まで。
【0075】
醗酵は、既知の方法に従い一般的に使用される実験条件で行われた。
【0076】
本出願人は、本発明の対象である原材料上に成長するプロバイオティック培養物にアレルゲンの痕跡があるかないかを確認した。
【0077】
例えば、ミルク由来のアレルゲンの場合、最終製品におけるβ−ラクトグロブリンおよび乳糖を正確かつ敏感な方法(「牛β−ラクトグロブリン エライザ 定量キット−Bethyl Laboratories社」タイプのβ−ラクトグロブリン特異的なエライザキット、検出限界0.05ppm、による解析と、「乳糖/D−グルコース−ベーリンガーマンハイム社、コード10986119」タイプの乳糖検出用の化学酵素キットおよび紫外線−可視光線検出、検出限界7ppm、による解析)による解析的な方法で検査したところ陰性結果が出され、したがって、このような物質がもしあったとしても検出限界を下回る。
【0078】
同時に、より精密で、今のところ、より敏感であることが確認されている方法(ELISA RIDASCREEN欧州登録商標 Gliadin kit −R−バイオファーム社 AG、ダルムシュタット、ドイツ、検出限界は3ppm)によりグルテンが含まれていないことが確認できる。さらに、たとえグルテンが存在していたとしても、その濃度は検出限界を下回る、すなわち3ppm以下である。
【0079】
必須条件の機能として行われるかもしくは行われない、原材料の酵素による前処理はミルクおよび微量のミルクに由来する物と培養液に事故的に入ってしまったグルテンおよびグルテンに由来する物を加水分解できる。
【0080】
このような処理は、アレルギーを持つ人および特に過敏な人達が使用するための最高の安全性基準を提供する。
【0081】
この製造方針は、DSS−二重安全性システム(Double Safety System)と呼ばれる非アレルギー性安全度を伴うプロバイオティクスの製造に適している。
【0082】
酵素の前処理は、少なくともタンパク質分解酵素の使用および/または少なくともグリコシダーゼを使う。
【0083】
本発明において、タンパク質分解酵素とは、タンパク質分解を行うことができる酵素である。タンパク質分解酵素は、プロテアーゼおよび/またはペプチターゼを含む一群から選択される。
【0084】
プロテアーゼ及びペプチターゼは、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、ペプシン、パパインおよびブロメラインを含む一群から選択される。好ましくは、プロテアーゼおよびペプチターゼはペプシンおよび/またはブロメラインから選択される。
【0085】
本発明において、グリコシダーゼはグリコシドの加水分解ができる。グリコシダーゼは、α−グルコシダーゼおよびβ−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼを含む一群から選択される。
【0086】
有利には、プロバイオティクス用の成長培養液を形成している原材料の酵素による処理は、プロテアーゼ(アルカラーゼとブロメライン)とグリコシダーゼによって行われる。
【0087】
グリコシダーゼは、ラクターゼ(もしくはβ−ガラクトシダーゼ)を含む一群から選択される。好ましい実施形態において、原材料の前処理は、アルカラーゼ、ラクターゼおよびブロメラインを含む三つの酵素を順に使用する。
【0088】
好ましい実施形態では、選択される酵素とそれらの順番は以下の通りである。
アルカラーゼ:ほぼ全てのタンパク質を加水分解し、特にミルク由来のタンパクを加水分解する;
ラクターゼ:乳糖を加水分解する;
ブロメライン:グルテンを加水分解する。
【0089】
上述の順番は、塩基性から酸性の範囲における最適な加水分解pHの機能である。このようにすると、培養液は栄養特性を保つ。
【0090】
アルカラーゼは、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンおよびカゼインにたいして活性を持ち、もし、ミルクに由来する物による偶然且つ意図しない二次汚染が起きたとしても、アレルギー性の残留物を除去することができる。
【0091】
このような処理は、水に溶解された原材料に0.0025から0.0500g/l、つまり0.001−0.020AU/l(アンソンユニット/リットル)の範囲の酵素が加えられる。
【0092】
この溶液は、その後、15分から60分の間45から55℃の温度に加熱される。このときpHは7から8にされ、好ましくはpHが7.5±0.2に調整される。
【0093】
ラクターゼ、別名β−ガラクトシダーゼ、は二糖ラクトースのグルコースとガラクトースのグリコシド結合を加水分解する役割を担っている。
【0094】
ラクターゼによる処理は、タンパク質アルカラーゼによる加水分解後の培養液のpHを6から7にしてから行われる。好ましくは、250から2.000NLU/l(中性ラクターゼ単位/リットル)を加えることにより、有機酸(好ましくは乳酸)を含んだpHが6.5±0.2にされる。これは5.00NLU/gで滴定された0.05から0.40mlの酵素溶液に相当する。
【0095】
この溶液は、2から6時間の間37±5℃に保たれる。最後に、ブロメラインは、天然にパイナップルに含有されるタンパク質分解酵素で、グリアジンを、免疫機構で認識されない小断片に加水分解できるため非アレルギー性である。
【0096】
この処理は、醗酵培養液に0.005から0.01g/l(110から220GDU/lに相当、ゼラチン消化単位/リットル)の酵素を添加した後、有機酸(好ましくは乳酸を使用)でpHを5.0から6.0の間に適正して行われる。作業温度としては、1から6時間の間37±5℃に保たれなければならない。
【0097】
3つの酵素による処理後は、1つの菌株の醗酵に最適なpHに戻す必要がある(好ましくは、塩基化するために5N NaOH、もしくは酸性化するために乳酸)。
【0098】
次に、培養液の精製のための加熱処理が行われる(温度90から145℃の間で、数秒から45分で変移する時間で行われる)。しかしながら、この加熱処理は、添加された酵素を変性させて不活化するが、使用された酵素の残留によって最終製品およびそれらを利用しようとする人に危険性はない。
【0099】
典型的な工業用製造デザインは、したがって以下の工程を含む。
a.非アレルギー性原材料の選択。
b.原材料を水に溶解する。
c.タンパク質分解酵素、好ましくはアルカラーゼ、を使用するのに適したpHと温度に調整する。
d.該酵素の添加とその反応に必要な時間反応させる。
e.糖分解酵素、好ましくはラクターゼ、を使用するのに適したpHと温度に適正する。
f.該酵素の添加とその反応に必要な時間反応させる。
g.タンパク質分解酵素、好ましくはブロメライン、を使用するのに適したpHと温度に適正する。
h.該酵素の添加とその反応に必要な時間反応させる。
i.醗酵に好適なpHに適正する。
j.低温殺菌および/または滅菌処理による精製。
k.製造中のプロバイオティック株の典型的な接種温度に下げる(37±2℃)。
l.該株の播種。
m.醗酵。
n.バイオマスの精製とクリオプロテクションに分ける。
o.冷凍乾燥。
【0100】
その後、本発明は、非アレルギー性のプロバイオティック株を生成し、さらに特にアレルゲン、より好ましくはミルクおよびグルテン由来のアレルゲンを完全に除去し、全ての人達が安全に使用できるようにする。
【0101】
有利には、本発明の記載に従って生成された非アレルギー性プロバイオティックバクテリア培養物は、医薬品製剤用に効果的に使用できる。
【0102】
ミルクに対するアレルギーを持つ人達の多さ(2歳以下の人口で3から5%)とセリアック病患者(全人口の1%)を鑑みて、これらの人達にも投与できるプロバイオティックバクテリアを開発することは有用である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、有用である:
消費者にとって、ラベルの表示が明瞭であることが基本である;
製造者にとって、このようにすると非アレルギー性性質を完璧に保証できるため、全ての消費者人口に提案できる。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】