(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の巻線から前記第9の巻線および前記他の第1の巻線から前記他の第9の巻線のそれぞれの前記巻線は、直列に接続された第1のコイル巻線と第2のコイル巻線とを有し、前記第1のコイル巻線の巻き方向に対し、前記第2のコイル巻線の巻き方向は逆であり、
前記第1のコイル巻線は、前記巻始め線部に接続されて、互いに隣接する4つの前記ティースを囲んで巻かれ、前記第2のコイル巻線は、前記第1のコイル巻線が巻かれた4つの前記ティースに対し、隣り合う位置に配置され、互いに隣接する他の4つの前記ティースを囲んで巻かれ、前記巻終り連係線部に接続されていることを特徴とする請求項1記載の電動モータ。
前記第1の巻線から前記第9の巻線および前記他の第1の巻線から前記他の第9の巻線のそれぞれの前記巻線は、直列に接続された第1のコイル巻線と第2のコイル巻線とを有し、前記第1のコイル巻線の巻き方向に対し、前記第2のコイル巻線の巻き方向は逆であり、
前記第1のコイル巻線は、前記巻始め線部に接続されて、互いに隣接する4つの前記ティースを囲んで巻かれ、前記第2のコイル巻線は、前記第1のコイル巻線が巻かれた4つの前記ティースに対し、一つの前記ティースを挟んで隣り合う位置に配置され、互いに隣接する他の4つの前記ティースを囲んで巻かれていることを特徴とする請求項1記載の電動モータ。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車に搭載される電動モータとしては、ブラシ付きのコミュテータモータが多く使用されている。この電動モータは、円筒状のヨークと、このヨークの内周面上に配置された複数の永久磁石と、これら永久磁石の内側に配置されて、ヨークに対し回転可能なアーマチュアとを有している。このアーマチュアは、回転シャフトと、このシャフト上に固定され、複数の放射状に形成されたティースを有するアーマチュアコアと、ティースに巻かれたコイルを有している。コイルは、各ティースの間に形成されたスロットを通ってティースに捲かれた複数の巻線を有している。各巻線は、回転シャフトに固定されたコミュテータの複数のセグメントに接続されている。
【0003】
コミュテータは、金属片で形成されて、互いに絶縁され円柱状に配設された複数のセグメントを有し、セグメントのそれぞれに、巻線の巻き始め端、および巻き終わり端が接続されている。また、コミュテータのセグメントには、複数のブラシが摺接可能に接続されており、これらのブラシを介してコイルに電流が供給される。そして、コイルを通って流れる電流により、アーマチュアコアのティースには磁界が形成され、ヨーク上に固定された永久磁石とティースの間に生じる磁気的な吸引力や反発力によってアーマチュアが回転シャフトとともに回転する。
【0004】
この電動モータにおいて、電源のプラス電気端子に選択的に接続される低速用ブラシおよび高速用ブラシと、電源のマイナス電気端子に接続されたコモンブラシの計3個のブラシを備え、低速用ブラシと高速用ブラシの一方を選択的にプラス電気端子に接続することにより、電動モータに備わるアーマチュアの回転速度を可変することが可能なものがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
図9は、特許文献1に開示された永久磁石を4個(極対数2)、ティース(スロット)を16個、セグメントを16個有する4極16スロット16セグメントの電動モータ80の展開図である。永久磁石81はN極とS極が交互に配置されている。スロット83は、互いに隣接するティース82の間の空隙である。同図に示されるように、各ティース82および各セグメント84には、1番から16番の番号が付けられている。
【0006】
巻線87と、巻線87と点対称の位置に配置された巻線88は、いわゆるダブルフライヤにて略同時にティース82に巻装される。巻線87は2つのコイル巻線93A、93Bに分割され、異なる番号のティース82に巻かれている。すなわち、2番セグメント84eに接続された巻線87は、16番ティース82と1番ティース82の間のスロット83eをり、かつ、3番ティース82と4番ティース82の間のスロット83fを通り、1番、2番および3番ティース82の周りに順方向にn回(nは自然数)巻装されて、コイル巻線93Aが形成される。
【0007】
次に、巻線87は、7番ティース82と8番ティース82の間のスロット83gを通り、かつ、4番、5番のティース82の間のスロット83bを通り、5番、6番および7番のティース82の周りに逆方向にn回巻装され、3番セグメント84aに接続され、コイル巻線93Bが形成される。スロット83gは、スロット83fから周方向に機械角が90°ずれた位置に存在し、スロット83bは、スロット83eから周方向に機械角が90°ずれた位置に存在する。
【0008】
一方、巻線88は2つのコイル巻線93C、93Dに分割され、異なる番号のティース82に巻かれている。すなわち、10番セグメント84bに接続された巻線88は、8番ティース82と9番ティース82の間のスロット83hを通り、かつ、11番ティース82と12番のティース82の間のスロット83iを通り、9番、10番および11番のティース82の周りに順方向にn回(nは自然数)巻装されて、コイル巻線93Cが形成される。
【0009】
次に、巻線88は、15番ティース82と16番ティース82の間のスロット83jを通り、かつ、12番、13番のティース82の間のスロット83dを通り、13番、14番および15番のティース82の周りに逆方向にn回巻装され、11番セグメント84cに接続され、コイル巻線93Dが形成される。スロット83jは、スロット83iから周方向に機械角が90°ずれた位置に存在し、スロット83d、は、スロット83hから周方向に機械角が90°ずれた位置に存在する。
【0010】
電動モータ80は、このように巻装される巻線87および巻線88が、順次周方向に巻き始めのセグメント84を一つずつずらしながら8回巻装され、これらの巻線87及び巻線88によりアーマチュアコイルが形成される。
【0011】
2番セグメント84eと10番セグメント84b、および、3番セグメント84aと11番セグメント84cとが接続線90によって短絡されている。また、セグメント84に摺接するブラシ91は、電源のプラス電極端子に選択的に接続される低速用ブラシ92a、および高速用ブラシ92bと、電源のマイナス電極端子に接続されるコモンブラシ92cの3つのブラシで構成されている。低速用ブラシ92aとコモンブラシ92cは、互いに電気角で180°間隔をあけて配置されている。
【0012】
高速用ブラシ92bは、低速用ブラシ92aから周方向に所定の角度だけ離間した状態で配置されている。そして、低速用ブラシ92aとコモンブラシ92cの間に電源から電流が供給されると、電動モータ80は低速度で回転駆動され、高速用ブラシ92bとコモンブラシ92cの間に電源から電流が供給されると、電動モータ80は高速度で回転駆動される。2番セグメント84eと10番セグメント84b、および、3番セグメント84aと11番セグメント84cとが接続線90で短絡されて同電位であるいるため、磁極が4極の電動モータ80であっても、3つのブラシ92a、92b、92cで、電動モータ80の低速度回転駆動と高速度回転が可能である。
【0013】
ここで、電動モータ80の巻線87および巻線88は、2つに分割されたコイル巻線とする構成を採用しているが、その理由は以下である。巻線87および巻線88を分割した場合には、コイル巻線の巻数を2つに分散(巻数がnとn)させることができる。しかしながら、分割しない場合には、巻線87はコイル巻線93Aが巻数を2nとなり、同様に巻線88はコイル巻線93Cの巻数が2nとなる。
【0014】
この場合、例えば、コイル巻線93Aのスロット83eからスロット83fへと渡る渡り線94A、およびコイル巻線93Cのスロット83hからスロット83iへと渡る渡り線94Cの本数が多くなる。そのため、重巻にて形成されるアーマチュアコイルにおいて、すでに巻装されたコイル巻線93Aおよび93Cの外側に重なるようにコイル巻線93Aおよび93Cコイル巻線を巻装した場合に、いわゆる巻太りが生じ、アーマチュアの軸方向寸法が大きくなるとともに、巻線の占積率が低下してしまう。
【0015】
そこで、アーマチュアの軸方向寸法の低減および巻線の占積率の向上のため、2つに分割されたコイル巻線の構成が採用されている。さらに、上記のように、4極以上の多極の電動モータにおいて、3つのブラシでアーマチュアの回転速度を可変することを可能とするとともに、アーマチュアの軸方向寸法の低減および巻線の占積率の向上のためには、アーマチュアに接続線を配置させる構造とするともに分割したコイル巻線の構成が有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、この発明の第1の実施形態が
図1から
図5に基づいて説明される電動モータ1は、例えば、自動車のワイパモータ、パワーウインドウモータ、およびファンモータ等の駆動装置として用いられるものであって、有底円筒形状のヨーク2と、ヨーク2の内壁上に固定された磁石4と、磁石4に囲まれてヨーク2内に配置され、ヨーク2に対し回転可能に支持されたアーマチュア3を有している。磁石4は、4極に着磁されており、電動モータ1は4極型の電動モータであり、極対数は2である。
【0026】
アーマチュア3は、回転軸5の上に固定されたアーマチュアコア6と、アーマチュアコア6に巻装されたアーマチュアコイル7と、回転軸5上固定されたコミュテータ(整流子)13とから構成されている。アーマチュアコア6は、複数の金属板が軸方向に積層されて形成されている。金属板の外周部にはT字型に形成されたティース9(
図2参照)が周方向に沿って等間隔に18個放射状に形成されている。複数枚の金属板が回転軸5に外嵌されることにより、アーマチュアコア6の外周には隣接するティース9の間に溝状のスロット11が形成されている。
【0027】
スロット11は回転軸5の軸方向に沿って延びており、周方向に沿って等間隔に18個形成されている。ここで、ティース9又はスロット11の数を18、極対数を2であり、スロット11の数は、極対数の9倍であり(18=9×2)、奇数倍となっている。また、このスロット11間には、エナメル被膜の複数の巻線12が巻装され、これによりアーマチュアコア6の外周にアーマチュアコイル7が形成されている。
【0028】
コミュテータ13は回転軸5の一つの端部上に固定されている。コミュテータ13の外周面上には、導電材で形成されたセグメント14が18枚取り付けられている。セグメント14は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に絶縁樹脂上に固定されている。各セグメント14のアーマチュアコア6側の端部には、折り返す形で折り曲げられたライザ15が一体に形成されている。
図3に示されるように、アーマチュアコイル7のそれぞれの巻線12は、導線(110、120)より形成された巻始め連係線部R1と巻終り連係線部R2を介して巻き始め端部30と巻き終わり端部31にそれぞれ連係される。そして、ライザ15には、アーマチュアコイル7の巻線12に巻始め連係線部R1と巻終り連係線部R2を介してそれぞれ連係された巻き始め端部30と巻き終わり端部31が接続されている。これにより、セグメント14とこれに対応するアーマチュアコイル7の巻線12とが電気的に接続される。ここで、巻線12の巻始め連係線部R1は、巻線12がセグメント14に接続された巻き始め端部30から、アーマチュアコア6のティースに巻かれている部分までであり、巻線12の巻終り連係線部R2は、アーマチュアコア6のティースに巻かれている部分から、セグメント14に接続された巻き終り端部31までである。
そして、図3に示されるように、巻線12の巻始め連係線部R1、巻線12の巻終り連係線部R2は、前記セグメントから11個目のセグメントに対向するティースを形成するスロットに達している。
【0029】
また、回転軸5を中心にして互いに点対称
の位置にて対向するセグメント14(本実施形態では8つ置きのセグメント14)にそれぞれ対応するライザ15は、各々接続線25によって接続されている。接続線25は、同電位となる複数のセグメント14を短絡するためのものであって、コミュテータ13とアーマチュアコア6との間に配置されている。
【0030】
回転軸5の端部5aは、ヨーク2に突出形成されたボス2aの内に配置された軸受け16によって回転自在に支持されている。ヨーク2の開口端にはカバー17が設けられており、このカバー17の内側にはホルダステー18が取り付けられている。ホルダステー18には周方向3箇所にブラシホルダ19が形成されている。ブラシホルダ19には、それぞれブラシ21がコイル形状の各々スプリングSを介して付勢された状態で出没自在に内装されている。これらブラシ21がコイル形状のスプリングSによって付勢されているため、ブラシ21の先端部はコミュテータ13に摺接しており、外部の電源(不図示)からブラシ21を介してコミュテータ13に電流が供給される。尚、スプリングSは、コイル形状のものに限定されるものではなく、板状のいわゆる板ばねであってよい。
【0031】
次に、
図3および
図4に基づいて電動モータ1に備わるアーマチュアコイル7の巻装構造が説明される。
図3は、アーマチュアの展開図であり、
図4は、アーマチュアの横断面図であり、隣接するティース9、9の間の空隙がスロット11に相当する。なお、
図3および
図4においては、コミュテータ13の各セグメント14、および各ティース9にそれぞれ番号が付されている。
【0032】
本発明の第1の実施形態のアーマチュアコイル7は、第1の導線110と第2の導線120とを備える。なお、
図3において、第1の導線110は実線にて、第2の導線120は破線にて示されている。
【0033】
アーマチュアコイル7は、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)と第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)を有する。そして、第1から第9の巻線(61から69)と、それに対応する他の第1から第9の巻線(71から79)は、それぞれ回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置されている。
【0034】
すなわち、第1の導線110および第2の導線120により形成される第1の巻線の対(61、71)、第2の巻線の対(62、72)、第3の巻線の対(63、73)、第4の巻線の対(64、74)、第5の巻線の対(65、75)、第6の巻線の対(66、76)、第7の巻線の対(67、77)、第8の巻線の対(68、78)、第9の巻線の対(69、79)は、それぞれ回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置されている。
【0035】
第1から第9の巻線(61から69)は、同じく第1の導線110から形成される9本の接続線25、25・・・を介して、それぞれ一連に繋がれている。すなわち、第1の巻線61、接続線25、第2の巻線62、接続線25、第3の巻線63、接続線25、第4の巻線64、接続線25、第5の巻線65、接続線25、第6の巻線66、接続線25、第7の巻線67、接続線25、第8の巻線68、接続線25、第9の巻線69、接続線25の順に、第1の導線110にて一連に形成されている。また、この第1から第9の巻線(61から69)を接続する接続線25の各接続線は、それぞれ互いに回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置された一対のセグメント14、14に形成されたライザ15、15に電気的かつ機械的に接続されている。
【0036】
一方、他の第1から第9の巻線(71から79)は、同じく第2の導線120から形成される9本の接続線25、25・・・を介して、それぞれ一連に繋がれている。すなわち、第1の巻線71、接続線25、第2の巻線72、接続線25、第3の巻線73、接続線25、第4の巻線74、接続線25、第5の巻線75、接続線25、第6の巻線76、接続線25、第7の巻線77、接続線25、第8の巻線78、接続線25、第9の巻線79、接続線25の順に、第2の導線110にて一連に形成されている。また、この他の第1から第9の巻線(71から79)を接続する接続線25の各接続線は、それぞれ互いに回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置された一対のセグメント14、14に形成されたライザ15、15に電気的かつ機械的に接続されている。
【0037】
第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から79)は、それぞれ直列に接続された第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bとを有する。また、第1のコイル巻線7Aは、互いに隣接する4つのティース9、9、9、9を囲んで12回巻かれ、第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが巻かれた4つのティース9、9、9、9に対し、右方向D1に隣り合う位置に配置され、互いに隣接する他の4つのティース9、9、9、9を囲んで12回巻かれている。ここで、第2のコイル巻線7Bの巻き方向は、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆である。
【0038】
第1のコイル巻線7Aの端部30(巻始め端30)はコミュテータ13の一つのセグメント14に接続され、第2のコイル巻線7Bの端部31(巻終わり端31)は、第1のコイル巻線7Aの端部30(巻始め端30)が接続されたセグメント14に隣り合うセグメント14に接続される。ここで、上述のように第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aに対し、右方向D1に配置され、一方、端部31(巻終わり端31)は、端部30(巻始め端30)が接続されるセグメント14に対し、左方向D2に配置されるセグメント14に接続される。
【0039】
本実施形態において、第1の導線110および第2の導線120は、いわゆるダブルフライヤ式の巻線機にてアーマチュアコア6に形成され回転軸5を中心にして点対称に対向するティース9、9、・・に略同時に巻かれる。第1の導線110により第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25が形成され、第2の導線120により他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25が形成される。
【0040】
以下、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25について、第1の巻線61から説明する。第1の巻線110により形成される第1の巻線61は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bをと有し、第1のコイル巻線7Aは、同じく第1の導線110から形成される接続線21aと一連に繋がれており、一方、第2のコイル巻線7Bは、同じく第1の導線110から形成される接続線25bに一連に繋がれている。
【0041】
第1の導線110から形成される接続線25aの始点である端部40は、3番セグメント14に形成されたライザ15に電気的かつ機械的に接続され、接続線25aは、左方向D2に配索され、接続線25aの終点である端部41が12番セグメント14に形成されたライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、3番セグメント14と12番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。接続線25aの端部41と第1のコイル巻線7Aの始点である端部30は、一連に繋がれており、第1の導線110により形成される第1のコイル巻線7Aは、端部30にて12番セグメント14に接続された後に
巻始め連係線部R1を介して18番ティース9と1番ティース9の間に導かれ、ティース9に巻かれる。
【0042】
第1のコイル巻線7Aは、18番ティース9と1番ティース9の間に形成されるスリット11aと、4番ティース9と5番ティース9の間に形成されるスリット11bを通り、互いに近接する1番ティース9から4番ティース9を囲んで、時計回りに12回巻かれる
。
【0043】
第1のコイル巻線7Aと同じく第1の導線110より形成され、かつ、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bの配列につき以下説明する。第2のコイル巻線7Bは、8番ティース9と9番ティース9の間に形成されるスリット11cと、4番ティース9と5番ティース9の間に形成されるスリット11bを通り、1番ティース9から4番ティース9に対し隣り合い、互いに近接する5番ティース9から8番ティース9を囲んで、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆の反時計回りに12回巻かれる。第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが対向する磁極の極性(同図においてS極)に対し、極性の異なる磁極(同図においてN極)に対向するため、第1のコイル
巻線
7Aとは逆向きに巻かれている。
【0044】
第2のコイル巻線7Bに連なる巻終り連係線部R2の端部31は、第1のコイル巻線7Aの端部30が接続された12番セグメント14に対し、右方向D1と逆の左方向D2にて隣接する11番セグメント14に形成されたライザ15に接続される。このように接続することにより、端部31近傍の第2のコイル巻線7Bで、端部30近傍の第1のコイル巻線7Aを外側から抑えることができ、この付近での第1の巻線61の巻き太りを防止することができる
。
【0045】
第1の巻線61と、第1の巻線61に引き続きステータコア6に巻かれる第2の巻線62とは、第1の導線110により形成される接続線25bにて一連に繋がれる。接続線25bの始点である端部42と、第1の巻線61に備わる第2のコイル巻線7Bの端部31とは一連に繋がれており、端部42は11番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。そして、接続線25bは、左方向D2に配索され、接続線25bの終点である端部43が2番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、11番セグメント14と2番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。
【0046】
接続線25bの端部43と、第1の巻線61に引き続き巻装される第2巻線62の第1のコイル巻線7Aの始点である端部32とは、一連に繋がれている。そして、第2の巻線62の第1のコイル巻線7Aは、8番ティース9と9番ティース9の間に形成されるスリット11cと、12番ティース9と13番ティース9の間に形成されるスリット11gを通り、9番ティース9から12番ティースを囲んで時計回りに12回巻かれる。以下、前述と同様の工程が繰り返され、アーマチュアコア6は、第1から第9の巻線(61から69)および9本の接続線25を備える。
【0047】
このように第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割し、アーマチュアコア6に巻装されている。したがって、分割しないで巻装する場合に比べ、一のスロット11から他のスロット11に渡る渡り線7Cの本数も少なく、その太さは小さくなっている。また、第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25は、単一の第1の導線110をアーマチュアコア6およびコミュテータ13に配索し、形成されている。そのため、予めコミュテータ13に接続線をコミュテータ13に配索し、その後に、巻線を配索するものに比べ、巻線作業の時間が短縮され、接続線および巻線のアーマチュアコアおよびコミュテータ13への装着が簡易になっている。
【0048】
上述のように、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれと、それに対応する第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれとは、いわゆるダブルフライヤ式の巻線機にてアーマチュアコア6の回転軸5を中心にして点対称に対向するティース9に略同時に巻かれる。
【0049】
従って、第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれの巻線12に対応する他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、互いに回転軸5を中心にして点対称に対向する位置に配列される。すなわち、他の第1の巻線71は、第1の巻線61に対向する位置に配置され、他の第2の巻線72は、第2の巻線62に対向する位置に配置され、他の第3の巻線73は、第3の巻線63に対向する位置に配置され、他の第4の巻線74は、第4の巻線64に対向する位置に配置される。さらに、他の第5の巻線75は、第5の巻線65に対向する位置に配置され、他の第6の巻線76は、第6の巻線66に対向する位置に配置され、他の第7の巻線77は、第7の巻線67に対向する位置に配置され、他の第8の巻線78は、第8の巻線68に対向する位置に配置され、他の第9の巻線79は、第9の巻線69に対向する位置に配置される。
【0050】
以下、第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25について、他の第1の巻線71から説明する。
【0051】
第2の導線120により形成される他の第1の巻線71は、第1のコイル巻線7Aと、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bをと有し、第1のコイル巻線7Aは、同じく第2の導線120から形成される接続線21cと一連に繋がれており、一方、第2のコイル巻線7Bは、同じく第2の導線120から形成される接続線25dに一連に繋がれている。
【0052】
第2の導線120から形成される接続線25cの始点である端部45は、12番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続され、接続線25cは、左方向D2に配索され、接続線25cの終点である端部46が3番セグメント12のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、12番セグメント14と3番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。接続線25cの端部46と第1のコイル巻線7Aの始点である端部34は、一連に繋がれており、第2の導線120により形成される第1のコイル巻線7Aは端部34からティース9に巻かれる。
【0053】
第1のコイル巻線7Aは、9番ティース9と10番ティース9の間に形成されるスリット11dと、13番ティース9と14番ティース9の間に形成されるスリット11eを通り、互いに近接する10番ティース9から13番ティース9を囲んで、時計回りに12回巻かれる。
【0054】
第1のコイル巻線7Aと同じく第2の導線120より形成され、かつ、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bの配列につき以下説明する。第2のコイル巻線7Bは、17番ティース9と18番ティース9の間に形成されるスリット11fと、13番ティース9と14番ティース9の間に形成されるスリット11eを通り、10番ティース9から13番ティース9に対し、右方向D1にて隣り合い、かつ、互いに近接する14番ティース9から17番ティース9を囲んで、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆の反時計回りに12回巻かれる。第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが対向する磁極の極性(同図においてS極)に対し、極性の異なる磁極(同図においてN極)に対向するため、第1のコイル7巻線Aとは逆向きに巻かれている。
【0055】
第2のコイル巻線7Bの端部35は、第1のコイル巻線7Aの端部34が接続された3
番セグメント14に対し、右方向D1と逆の左方向D2にて隣接する2番セグメント14に形成されたライザ15に接続される。このように接続することにより、端部35近傍の第2のコイル巻線7Bで、端部34近傍の第1のコイル巻線7Aを外側から抑えることができ、この付近での他の第1の巻線71の巻き太りを防止することができる。
【0056】
他の第1の巻線71と他の第2の巻線72とは、同じく第2の巻線120により形成される接続線25dにて一連に繋がれる。接続線25dの始点である端部47と、他の第1の巻線71に備わる第2のコイル巻線7Bの端部35とは一連に繋がれており、端部47は2番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。そして、接続線25dは、左方向D2に配索され、接続線25dの終点である端部48が11番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、2番セグメント14と11番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。
【0057】
接続線25dの端部48と、他の第1の巻線71に引き続き巻装される他の第2巻線72の第1のコイル巻線7Aの始点である端部36とは、一連に繋がれている。そして、他の第2の巻線72の第1のコイル巻線7Aは、17番ティース9と18番ティース9の間に形成されるスリット11hと、3番ティース9と4番ティース9との間に形成されるスリット11iを通り、18番ティース9から3番ティースを囲んで時計回りに12回巻かれる。以下、前述と同様の工程が繰り返され、アーマチュアコア6は、他の第1から第9の巻線(71から79)および9本の接続線25を備える。
【0058】
このように他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割し、アーマチュアコア6に巻装されており、分割しないで巻装する場合に比べ、一のスロット11から他のスロット11に渡る渡り線7Cの太さは小さくなっている。また、他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25は、単一の第1の巻線71をアーマチュアコア6およびコミュテータ13に配索し、形成されている。そのため、予めコミュテータ13に接続線をコミュテータ13に配索し、その後に、巻線を配索するものなどに比べ、巻線作業の時間が短縮され、接続線および巻線のアーマチュアコアおよびコミュテータ13への装着が簡易になっている。
【0059】
このように、第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割され、アーマチュアコア6に巻装されており、それぞれの渡り線7Cの太さは細くなっている。そのため、それぞれ既に巻装された巻線12の外側から順次重なるように巻装される第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から72)により形成されるアーマチュアコイル7は、渡り線7Cの重なりによる巻き太りが軽減される。
【0060】
これにより、渡り線7Cが存在する部分である軸方向の小型化が図られる。また、巻き太りの軽減により、第1および第2の導線110、120のスロット11内への挿入が容易になり、巻線12のスロット11内の空間に閉める割合、すなわち占積率が向上する。このため、スロット11内の空間を小さくすることが可能となり、アーマチュアコア6の径方向寸法の小型化が図れる。これにより、電動モータ1全体の小型が達成される。
【0061】
図3に示すように、互いに回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置された第1の巻線61と他の第1の巻線71は、互いに接続線25aと接続線25cにより接続されている。そのため、接続線25aと接続線25cにより、第1の巻線61と他の第1の巻線71は、並列に接続されている。このように、第1から第9の巻線(61から69)と他の第1から第9の巻線(71から79)のうち互いに回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置された巻線12、12は、それぞれ2本の接続線12、12により、並列に接続されている。このため、本実施形態のように4極の電動モータ1であっても、基本的には、電気角180度の角度に配置された2箇所からの給電により、アーマチュア3を回転させることができる。
【0062】
図4に示されるように、ブラシ21は、電源の陽極(第1の電力供給端子)に選択的に接続されている低速用ブラシ21a、および高速用ブラシ21bと、これら低速用ブラシ21a又は高速用ブラシ21bとに共通使用され、電源の陰極(第2の電力供給端子)に接続されている共通ブラシ21cとで構成されている。低速用ブラシ21aと共通ブラシ21cは互いに電気角で180°、機械角で周方向に90°間隔をあけて配設されている。一方、高速用ブラシ21bは、低速用ブラシ21aから周方向に角度αだけ離間して配置されている。なお、この実施形態では、共通ブラシ21cが電源の陰極(第2の電力供給端子)に接続され、低速用ブラシ21a及び高速用ブラシ21bが陽極(第1の電力供給端子)に接続されているが、反対に接続されてもよい。
【0063】
ここで、コミュテータ13における同電位となるセグメント14、すなわち、回転軸5を中心にして互いに回転軸5を中心にして点対称に対向して配置されたセグメント14同士は接続線25によって短絡されているため、ブラシ21が摺接していないセグメントも接続線25を介して給電される。したがって、
図3に2点鎖線で示されるように、各ブラシ21a、21b、21cの回転軸5を中心にして対向する位置にもそれぞれブラシ21a’、21b’、21c’が存在するように、同電位となるセグメント14には電流が供給される。
【0064】
これによれば、高速用ブラシ21b’は低速用ブラシ21aよりも角度θだけ進角した位置に存在していることになる。そして、電動モータ1は、低回転駆動時において、共通ブラシ21cと低速用ブラシ21aによって、高回転駆動時には共通ブラシ21cと高速用ブラシ21bによって電流が供給される。このため、高回転駆動時は、高速用ブラシ21bによって電動モータ1は進角され、低回転駆動時よりも高回転で作動する。ここで、進角させる角度θは、本実施形態において、20°から35°に設定されている。
【0065】
コミュテータ13に同電位となるべきセグメント14を短絡する接続線25が設けられているため、低速用ブラシ21aと、この低速用ブラシ21aから周方向に角度αだけ離間して配置された高速用ブラシ21bと、これら低速用ブラシ21a、および高速用ブラシ21bに共通使用される共通ブラシ21cとの3つのブラシが設置されることにより、回転速度の切換え可能な電動モータ1を提供することが可能になる。さらに、極対数が2であってもブラシの数が増大することがないので、電動モータ1の製造コストは増大しない。
【0066】
次に、本実施形態の電動モータ1に生じるトルクリップルについて、
図6に基づき説明する。
図6は、アーマチュア3がある位置に配置されたときに、アーマチュアに生じるトルクリップルを説明する図である。アーマチュア3が同図に示す位置に配置されたとき、2番ティース9と磁石4bとの間、7番ティース9と磁石4cとの間、11番ティース9と磁石4dとの間、および16番ティース9と磁石4aとの間に、それぞれスラスト方向(周方向)に傾いた磁束線(η1からη4)が生じる。
【0067】
このようにティース9と磁石4の間に磁束線が生じると、磁気エネルギを最小にしようとする自然法則により、磁束線の長さを最短にするべく作用する吸引力がティース9と磁石4との間に生じる。ここで、磁束線(η1からη4)は、スラスト方向(周方向)に傾いているため、ティース9と磁石4との間に生じる吸引力には、スラスト方向(周方向)の吸引力が含まれる。このスラスト方向の吸引力により、2番ティース9、7番ティース9、11番ティース9および16番ティース9には、スラスト方向のトルク(T1からT4)がそれぞれ生じる。このトルク(T1からT4)の総和がトルクリップルとなる。
【0068】
ここで、本実施形態では。ティース9の数が「18」、極対数が「2」であり、ティース9の数は、極対数の「9」倍である。このように、ティース9の数が極対数の奇数倍である場合には、トルク(T1からT4)のうち互いに隣り合う、トルク(T1からT4)は、異なる回転方向に作用する。すなわち、トルクT1およびトルクT3は、同図において反時計方向に作用し、トルクT2とトルクT4は時計方向に作用する。そのため、トルクT1およびトルクT3と、トルクT2とトルクT4とは、互い相殺されあう。よって、トルク(T1からT4)の総和であるトルクリップルは低減され、トルクリップルは小さなものとなる。
【0069】
トルクリップルが電動モータの音、振動の要因の一つとなる。また、トルクリップルの大きさと、音、振動の大きさは比例的な関係になる。従って、本実施形態のようにトルクリップルの低減がされることにより、電動モータ1の音、振動は低減される。
【0070】
次に、
図7および
図8に基づいて、本発明の第2の実施形態の電動モータ1に備わるアーマチュアコイル7の巻装構造が説明される。
図7は、アーマチュアの展開図であり、
図7は、アーマチュアの横断面図であり、隣接するティース9、9の間の空隙がスロット11に相当する。また、
図7および
図8においては、コミュテータ13の各セグメント14、および各ティース9にそれぞれ番号が付されている。
【0071】
本発明の第2の実施形態の電動モータ1と、上述の第1の実施形態の電動モータ1とは、アーマチュアコイル7の巻線構造のみ異なり、その他の部分は同一である。従って、以下、アーマチュアコイル7の巻線構造についてのみ説明し、その他の部分についての説明は省略する。
ここで、第1の実施形態と同様に第2の実施形態においても、
図7に示されるように、アーマチュアコイル7のそれぞれの巻線12は、導線(110、120)より形成された連係線Rを介して巻き始め端部30と巻き終わり端部31にそれぞれ連係される。そして、ライザ15には、アーマチュアコイル7の巻線12に連係線Rを介してそれぞれ連係された巻き始め端部30と巻き終わり端部31となる巻線12が接続されている。これにより、セグメント14とこれに対応するアーマチュアコイル7の巻線12とが電気的に接続される。また、
図7に示されるように、巻き始め端部30と巻き終わり端部31を巻線12にそれぞれ連係する
。
【0072】
本発明の第2の実施形態のアーマチュアコイル7は、第1の導線110と第2の導線120とを備える。なお、
図7において、第1の導線110は実線にて、第2の導線120は破線にて示されている。
【0073】
アーマチュアコイル7は、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)と第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)を有する。そして、第1から第9の巻線(61から69)と、それに対応する他の第1から第9の巻線(71から79)は、それぞれ回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置されている。
【0074】
すなわち、第1の導線110および第2の導線120により形成される第1の巻線の対(61、71)、第2の巻線の対(62、72)、第3の巻線の対(63、73)、第4の巻線の対(64、74)、第5の巻線の対(65、75)、第6の巻線の対(66、76)、第7の巻線の対(67、77)、第8の巻線の対(68、78)、第9の巻線の対(69、79)は、それぞれ回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置されている。
【0075】
第1から第9の巻線(61から69)は、同じく第1の導線110から形成される9本の接続線25、25・・・を介して、それぞれ一連に繋がれている。すなわち、第1の巻線61、接続線25、第2の巻線62、接続線25、第3の巻線63、接続線25、第4の巻線64、接続線25、第5の巻線65、接続線25、第6の巻線66、接続線25、第7の巻線67、接続線25、第8の巻線68、接続線25、第9の巻線69、接続線25の順に、第1の導線110にて一連に形成されている。また、この第1から第9の巻線(61から69)を接続する接続線25の各接続線は、それぞれ互いに回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置された一対のセグメント14、14に形成されたライザ15、15に電気的かつ機械的に接続されている。
【0076】
一方、他の第1から第9の巻線(71から79)は、同じく第2の導線120から形成される9本の接続線25、25・・・を介して、それぞれ一連に繋がれている。すなわち、第1の巻線71、接続線25、第2の巻線72、接続線25、第3の巻線73、接続線25、第4の巻線74、接続線25、第5の巻線75、接続線25、第6の巻線76、接続線25、第7の巻線77、接続線25、第8の巻線78、接続線25、第9の巻線79、接続線25の順に、第2の導線110にて一連に形成されている。また、この他の第1から第9の巻線(71から79)を接続する接続線25の各接続線は、それぞれ互いに回転軸5を中心にして点対称となる対向した位置に配置された一対のセグメント14、14に形成されたライザ15、15に電気的かつ機械的に接続されている。
【0077】
第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から79)は、それぞれ直列に接続された第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bとを有する。また、第1のコイル巻線7Aは、互いに隣接する4つのティース9、9、9、9を囲んで12回巻かれ、第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが巻かれた4つのティース9、9、9、9に対し、一つのティース9を挟んで右方向D1に隣り合う位置に配置され、互いに隣接する他の4つのティース9、9、9、9を囲んで12回巻かれている。ここで、第2のコイル巻線7Bの巻き方向は、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆である。
【0078】
第1のコイル巻線7Aの端部30(巻始め端30)はコミュテータ13の一つのセグメント14に接続され、第2のコイル巻線7Bの端部31(巻終わり端31)は、第1のコイル巻線7Aの端部30(巻始め端30)が接続されたセグメント14に隣り合うセグメント14に接続される。ここで、上述のように第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aに対し、右方向D1に配置され、一方、端部31(巻終わり端31)は、端部30(巻始め端30)が接続されるセグメント14に対し、左方向D2に配置されるセグメント14に接続される。
【0079】
本実施形態において、第1の導線110および第2の導線120は、いわゆるダブルフライヤ式の巻線機にてアーマチュアコア6に形成され回転軸5を中心にして点対称に対向するティース9、9、・・に略同時に巻かれる。第1の導線110により第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25が形成され、第2の導線120により他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25が形成される。
【0080】
以下、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25について、第1の巻線61から説明する。第1の巻線110により形成される第1の巻線61は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bをと有し、第1のコイル巻線7Aは、同じく第1の導線110から形成される接続線21aと一連に繋がれており、一方、第2のコイル巻線7Bは、同じく第1の導線110から形成される接続線25bに一連に繋がれている。
【0081】
第1の導線110から形成される接続線25aの始点である端部40は、3番セグメント14に形成されたライザ15に電気的かつ機械的に接続され、接続線25aは、左方向D2に配索され、接続線25aの終点である端部41が12番セグメント14に形成されたライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、3番セグメント14と12番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。接続線25aの端部41と第1のコイル巻線61の始点である端部30は、一連に繋がれており、第1の導線110により形成される第1のコイル巻線7Aは端部30に接続された後に、ティース9に巻かれる。
【0082】
第1のコイル巻線7Aは、18番ティース9と1番ティース9の間に形成されるスリット11aと、4番ティース9と5番ティース9の間に形成されるスリット11bを通り、互いに近接する1番ティース9から4番ティース9を囲んで、時計回りに12回巻かれる
。
【0083】
第1のコイル巻線7Aと同じく第1の導線110より形成され、かつ、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bの配列につき以下説明する。第2のコイル巻線7Bは、9番ティース9と10番ティース9の間に形成されるスリット11dと、5番ティース9と6番ティース9の間に形成されるスリット11bを通り、1番ティース9から4番ティース9に対し、5番ティース9を挟んで隣り合い、互いに近接する6番ティース9から9番ティース9を囲んで、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆の反時計回りに12回巻かれる。第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが対向する磁極の極性(同図においてS極)に対し、極性の異なる磁極(同図においてN極)に対向するため、第1のコイル7巻線7Aとは逆向きに巻かれている。
【0084】
第2のコイル巻線7Bに連なる巻終り連係線部R2の端部31は、第1のコイル巻線7Aの端部30が接続された12番セグメント14に対し、右方向D1と逆の左方向D2にて隣接する11番セグメント14に形成されたライザ15に接続される。このように接続することにより、端部31近傍の第2のコイル巻線7Bで、端部30近傍の第1のコイル巻線7Aを外側から抑えることができ、この付近での第1の巻線61の巻き太りを防止することができる
。
【0085】
第1の巻線61と、第1の巻線61に引き続きステータコア6に巻かれる第2の巻線62とは、第1の導線110により形成される接続線25bにて一連に繋がれる。接続線25bの始点である端部42と、第1の巻線61に備わる第2のコイル巻線7Bの端部31とは一連に繋がれており、端部42は11番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。そして、接続線25bは、左方向D2に配索され、接続線25bの終点である端部43が2番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、11番セグメント14と2番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。
【0086】
接続線25bの端部43と、第1の巻線61に引き続き巻装される第2巻線62の第1のコイル巻線7Aの始点である端部32とは、一連に繋がれている。そして、第2の巻線62の第1のコイル巻線7Aは、8番ティース9と9番ティース9の間に形成されるスリット11gと、12番ティース9と13番ティース9の間に形成されるスリット11hを通り、9番ティース9から12番ティースを囲んで時計回りに12回巻かれる。以下、前述と同様の工程が繰り返され、アーマチュアコア6は、第1から第9の巻線(61から69)および9本の接続線25を備える。
【0087】
このように第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割し、アーマチュアコア6に巻装されている。したがって、分割しないで巻装する場合に比べ、一のスロット11から他のスロット11に渡る渡り線7Cの本数も少なく、その太さは小さくなっている。また、第1から第9の巻線(61から69)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25は、単一の第1の導線110をアーマチュアコア6およびコミュテータ13に配索し、形成されている。そのため、予めコミュテータ13に接続線をコミュテータ13に配索し、その後に、巻線を配索するものに比べ、巻線作業の時間が短縮され、接続線および巻線のアーマチュアコアおよびコミュテータ13への装着が簡易になっている。
【0088】
上述のように、第1の導線110により形成される第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれと、それに対応する第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれとは、いわゆるダブルフライヤ式の巻線機にてアーマチュアコア6の回転軸5を中心にして点対称に対向するティース9に略同時に巻かれる。
【0089】
従って、第1から第9の巻線(61から69)のそれぞれの巻線12に対応する他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、互いに回転軸5を中心にして点対称に対向する位置に配列される。すなわち、他の第1の巻線71は、第1の巻線61に対向する位置に配置され、他の第2の巻線72は、第2の巻線62に対向する位置に配置され、他の第3の巻線73は、第3の巻線63に対向する位置に配置され、他の第4の巻線74は、第4の巻線64に対向する位置に配置される。さらに、他の第5の巻線75は、第5の巻線65に対向する位置に配置され、他の第6の巻線76は、第6の巻線66に対向する位置に配置され、他の第7の巻線77は、第7の巻線67に対向する位置に配置され、他の第8の巻線78は、第8の巻線68に対向する位置に配置され、他の第9の巻線79は、第9の巻線69に対向する位置に配置される。
【0090】
以下、第2の導線120により形成される他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25について、他の第1の巻線71から説明する。
【0091】
第2の導線120により形成される他の第1の巻線71は、第1のコイル巻線7Aと、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bをと有し、第1のコイル巻線7Aは、同じく第2の導線120から形成される接続線21cと一連に繋がれており、一方、第2のコイル巻線7Bは、同じく第2の導線120から形成される接続線25dに一連に繋がれている。
【0092】
第2の導線120から形成される接続線25cの始点である端部45は、12番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続され、接続線25cは、左方向D2に配索され、接続線25cの終点である端部46が3番セグメント12のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、12番セグメント14と3番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。接続線25cの端部46と第1のコイル巻線7Aの始点である端部34は、一連に繋がれており、第2の導線120により形成される第1のコイル巻線7Aは端部34からティース9に巻かれる。
【0093】
第1のコイル巻線7Aは、9番ティース9と10番ティース9の間に形成されるスリット11dと、13番ティース9と14番ティース9の間に形成されるスリット11eを通り、互いに近接する10番ティース9から13番ティース9を囲んで、時計回りに12回巻かれる。
【0094】
第1のコイル巻線7Aと同じく第2の導線120より形成され、かつ、第1のコイル巻線7Aに直列に接続される第2のコイル巻線7Bの配列につき以下説明する。第2のコイル巻線7Bは、18番ティース9と1番ティース9の間に形成されるスリット11aと、14番ティース9と15番ティース9の間に形成されるスリット11fを通り、10番ティース9から13番ティース9に対し、14番ティース9を挟んで右方向D1にて隣り合い、かつ、互いに近接する15番ティース9から18番ティース9を囲んで、第1のコイル巻線7Aの巻き方向と逆の反時計回りに12回巻かれる。第2のコイル巻線7Bは、第1のコイル巻線7Aが対向する磁極の極性(同図においてS極)に対し、極性の異なる磁極(同図においてN極)に対向するため、第1のコイル7巻線Aとは逆向きに巻かれている。
【0095】
第2のコイル巻線7Bの端部35は、第1のコイル巻線7Aの端部34が接続された3
番セグメント14に対し、右方向D1と逆の左方向D2にて隣接する2番セグメント14に形成されたライザ15に接続される。このように接続することにより、端部35近傍の第2のコイル巻線7Bで、端部34近傍の第1のコイル巻線7Aを外側から抑えることができ、この付近での他の第1の巻線71の巻き太りを防止することができる。
【0096】
他の第1の巻線71と他の第2の巻線72とは、同じく第2の巻線120により形成される接続線25dにて一連に繋がれる。接続線25dの始点である端部47と、他の第1の巻線71に備わる第2のコイル巻線7Bの端部35とは一連に繋がれており、端部47は2番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。そして、接続線25dは、左方向D2に配索され、接続線25dの終点である端部48が11番セグメント14のライザ15に電気的かつ機械的に接続される。ここで、2番セグメント14と11番セグメント14は、回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置されている。
【0097】
接続線25dの端部48と、他の第1の巻線71に引き続き巻装される他の第2巻線72の第1のコイル巻線7Aの始点である端部36とは、一連に繋がれている。そして、他の第2の巻線72の第1のコイル巻線7Aは、17番ティース9と18番ティース9の間に形成されるスリット11fと、3番ティース9と4番ティース9との間に形成されるスリット11hを通り、18番ティース9から3番ティースを囲んで時計回りに12回巻かれる。以下、前述と同様の工程が繰り返され、アーマチュアコア6は、他の第1から第9の巻線(71から79)および9本の接続線25を備える。
【0098】
このように他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割し、アーマチュアコア6に巻装されており、分割しないで巻装する場合に比べ、一のスロット11から他のスロット11に渡る渡り線7Cの太さは小さくなっている。また、他の第1から第9の巻線(71から79)およびそれらを一連に繋ぐ接続線25は、単一の第1の巻線71をアーマチュアコア6およびコミュテータ13に配索し、形成されている。そのため、予めコミュテータ13に接続線をコミュテータ13に配索し、その後に、巻線を配索するものなどに比べ、巻線作業の時間が短縮され、接続線および巻線のアーマチュアコアおよびコミュテータ13への装着が簡易になっている。
【0099】
このように、第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から79)のそれぞれの巻線12は、第1のコイル巻線7Aと第2のコイル巻線7Bに分割され、アーマチュアコア6に巻装されており、それぞれの渡り線7Cの太さは細くなっている。そのため、それぞれ既に巻装された巻線12の外側から順次重なるように巻装される第1から第9の巻線(61から69)および他の第1から第9の巻線(71から72)により形成されるアーマチュアコイル7は、渡り線7Cの重なりによる巻き太りが軽減される。
【0100】
これにより、渡り線7Cが存在する部分である軸方向の小型化が図られる。また、巻き太りの軽減により、第1および第2の導線110、120のスロット11内への挿入が容易になり、巻線12のスロット11内の空間に閉める割合、すなわち占積率が向上する。このため、スロット11内の空間を小さくすることが可能となり、アーマチュアコア6の径方向寸法の小型化が図れる。これにより、電動モータ1全体の小型が達成される。
【0101】
図3に示すように、互いに回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置された第1の巻線61と他の第1の巻線71は、互いに接続線25aと接続線25cにより接続されている。そのため、接続線25aと接続線25cにより、第1の巻線61と他の第1の巻線71は、並列に接続されている。このように、第1から第9の巻線(61から69)と他の第1から第9の巻線(71から79)のうち互いに回転軸5を中心にして点対称に対向した位置に配置された巻線12、12は、それぞれ2本の接続線12、12により、並列に接続されている。このため、本実施形態のように4極の電動モータ1であっても、基本的には、電気角180度の角度に配置された2箇所からの給電により、アーマチュア3を回転させることができる。