特許第5853009号(P5853009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5853009アンモニウム含有廃水の処理方法および処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853009
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】アンモニウム含有廃水の処理方法および処理設備
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20160120BHJP
   B04C 5/08 20060101ALI20160120BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20160120BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20160120BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101B
   C02F3/34 101C
   C02F3/34 Z
   B04C5/08
   B01D21/26
   B03B5/28 B
   C12N1/20 F
   C12N1/20 D
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-230850(P2013-230850)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-210253(P2014-210253A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】13401040.4
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513280625
【氏名又は名称】デーモン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゲールト・ニュフイス
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−501845(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10023009(DE,A1)
【文献】 特開2013−027845(JP,A)
【文献】 特開2006−325512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
B01D 21/26
B03B 5/28
B04C 5/00−5/30
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの活性汚泥槽(3)を有する脱アンモニア設備(1)でのアンモニウム含有廃水(2)の処理のための方法であって、まず好気性酸化細菌(AOB)によりアンモニウムが亜硝酸塩に変換され、続いて嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)により、アンモニウムおよび亜硝酸塩が窒素に変換され、さらに活性汚泥槽(3)からの汚泥が液体サイクロン(5)に送られ、そこで主として嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)を含有する相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分とに分離され、相対的に重質の画分は活性汚泥槽(3)に返送される方法において、
少なくとも一時的に活性汚泥槽(3)からの活性汚泥が液体サイクロン(5)に導入され、液体サイクロン(5)での活性汚泥の分離後、相対的に重質の画分のみならず、主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の画分も、再び設備(1)の少なくとも一つの活性汚泥槽(3)に返送され、液体サイクロン(5)での活性汚泥の分離中に、好気性アンモニア酸化細菌(AOB)に比べより大きな密度を有する嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)を液体サイクロン(5)での遠心力および流体力により、液体サイクロン(5)の粗面化された内壁面(16)に沈降させ、高速で移動する嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)と、液体サイクロン(5)の固定され粗面化された内壁面(16)の間の相対運動により研削力を生じさせ、これによりアンモニア酸化細菌(Anammox)の上に存在する有機または無機の被覆が少なくとも部分的に除去されることを特徴とする方法。
【請求項2】
液体サイクロン(5)において分離された、活性汚泥の相対的に重質の画分および相対的に軽質の画分が、それぞれ再び全て同一の活性汚泥槽(3)に返送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体サイクロン(5)での活性汚泥の分離中に、主として嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する相対的に重質の画分が、液体サイクロン(5)の円錐部分(8)に配置された粗面化された内壁面(16)と接触し、続いて液体サイクロン(5)の重液流口(10)を通りそこから排出され、主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の画分が、液体サイクロン(5)の円筒部分(7)の平滑な内壁面(19)と接触し、続いて液体サイクロン(5)の軽液流口(12)を通りそこから排出されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
液体サイクロン(5)に活性汚泥が導入され、相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分とに分離され、重質画分も軽質画分も活性汚泥槽(3)に返送される第一の所定の期間後に、第二の所定期間中、活性汚泥でなく活性汚泥槽(3)から抜き出された余剰汚泥が液体サイクロン(5)に送られ、液体サイクロン(5)において、余剰汚泥を相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分に分離され、相対的に重質の画分だけが活性汚泥槽(3)に返送され、あるいは抜き出されて第二の設備の活性汚泥槽に送られ、一方相対的に軽質の相は除去されることを特徴とする請求項1〜3の少なくともいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
第一の期間の長さが、第二の期間の長さより長いことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
第一の期間の長さが、第二の期間の長さの1.5〜4倍であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
第一の期間中は活性汚泥が、第二の期間中は余剰汚泥が、交互にかつ連続的に液体サイクロン(5)に導入されることを特徴とする請求項〜6の少なくともいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの活性汚泥槽(3)および、活性汚泥槽(3)からの汚泥を、主として嫌気性アンモニウム酸化細菌(Anammox)を含有する相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分とに分離する少なくとも一つの液体サイクロン(5)を有し、液体サイクロン(5)が、配管的に活性汚泥槽(3)と結合された、汚泥を導入する流入口(9)、分離された相対的に重質の画分を活性汚泥槽(3)に返送する配管的に活性汚泥槽(3)と結合された重液流口(10)、および分離された相対的に軽質の画分を液体サイクロン(5)から排出する軽液流口(12)を備える、アンモニウム含有廃水(2)を処理するための脱アンモニア設備(1)であって、
液体サイクロン(5)に導入される汚泥が、活性汚泥からなり、液体サイクロン(5)の軽液流口(12)が、分離された主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の画分を活性汚泥槽(3)に返送するため配管的に活性汚泥槽(3)と結合されており、少なくとも一つの液体サイクロン(5)が、円筒部分(7)および円錐部分(8)を有しており、円錐部分(8)の内壁面(16)が、少なくとも部分的に粗面化されており、円錐部分(8)の粗面化された内壁面(16)が、円筒部分(7)の内壁面(19)より大きい粗さを有することを特徴とする脱アンモニア設備。
【請求項9】
液体サイクロン(5)の円錐部分(8)の粗面化された内壁面(16)が、少なくとも部分的に100μmまでの粒度の粗さを有することを特徴とする請求項8に記載の設備(1)。
【請求項10】
円錐部分(8)の内壁面(16)が、より大きい粗さを有する表面コート(18)を有することを特徴とする請求項8または9に記載の設備(1)。
【請求項11】
表面コート(18)と、円錐部分(8)の内壁面(16)とが一体に作られているか、表面コート(18)が、円錐部分(8)の内壁面(16)と材料結合で結合されていることを特徴とする請求項8〜10の少なくともいずれか一つに記載の設備(1)。
【請求項12】
液体サイクロン(5)が、少なくとも部分的に形態安定性合成樹脂および/または酸化アルミニウム製の表面コート(18)からなることを特徴とする請求項8〜11の少なくともいずれか一つに記載の設備(1)。
【請求項13】
表面コート(18)が、フィルムまたは織布からなることを特徴とする請求項8〜12の少なくともいずれか一つに記載の設備(1)。
【請求項14】
円錐部分(8)の内壁面(16)のより大きい粗さが、機械的および/または化学的加工法により作られることを特徴とする請求項8〜13の少なくともいずれか一つに記載の設備(1)。
【請求項15】
円筒部分(7)の内壁面(19)が、平滑に作られていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一つに記載の設備(1)。
【請求項16】
嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)がプランクトミケス(Planctomycetes)であり、プランクトミケス(Planctomycetes)粒の上に存在する有機または無機の被覆が少なくとも部分的に除去されることを特徴とする請求項1〜7の少なくともいずれか一つに方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの活性汚泥槽を有する脱アンモニア設備においてアンモニウム含有廃水を処理するための方法に関し、このとき、まず好気性酸化細菌(AOB)によりアンモニウムを亜硝酸塩に変換し、続いて嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)、特にPlanctomycetesによりアンモニウムおよび亜硝酸塩を元素状窒素に変換し、またこのとき汚泥を活性汚泥槽から液体サイクロンに送り、主として嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)を含む相対的に重質な画分と、相対的に軽質な画分とに分離し、その相対的に重質な画分を活性汚泥槽に返送する。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも一つの活性汚泥槽と、活性汚泥槽からの汚泥を、主として嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)を含む相対的に重質な画分と、相対的に軽質な画分とに分離する少なくとも一つの液体サイクロンとを有する、アンモニウム含有廃水を処理するための脱アンモニア設備に関し、ここに前記液体サイクロンには、汚泥を供給する配管的に活性汚泥槽と結合するフィード配管と、分離された相対的に重質な画分を活性汚泥槽に返送する配管的に活性汚泥槽と結合する重液流口と、分離された相対的に軽質な画分を液体サイクロンから抜き出す軽液流口とが備わる。
【背景技術】
【0003】
活性汚泥方法は、浄化設備において生物学的廃水浄化を行うための方法である。この場合、多くは都市下水を、好気性化学合成有機従属栄養微生物いわゆる活性汚泥の代謝活性により、有機不純物を高度に除去する、すなわち浄化する。この方法は、脱水、分離、消化、および焼却された粗粒部の分別あるいは沈降後に行われる。都市下水に関して、この方法は、従来型の高度浄化方法に属する。この方法の利点は、浮遊物質化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)および窒素化合物(N)の含量の減少のための廃水に関する汎用的応用性および良好な精製作用にある。
【0004】
活性汚泥方法設備は、連続的、すなわち流通運転(従来型の活性汚泥設備)にも、不連続的(SBR設備)にも運転できる。さらに、いわゆる膜分離活性汚泥設備もあり、この設備では膜により浄化水と汚泥が分離される。いずれの形態においても共通しているのは、水中に浮遊している、活性汚泥とも呼ばれる菌叢あるいはバイオマスが、廃水の生物的精製を行う点である。このため、いずれの設備においても少なくとも一つの活性汚泥槽備え、そこで廃水が活性汚泥と混合され、したがって活性汚泥と強く接触される。
【0005】
ここに、活性汚泥とは、好気性生物的排水浄化において、活性汚泥槽において廃水含有物質の分解により生成するバイオマスと定義できる。活性汚泥は実質的に細菌類、菌類、原虫類、EPS、および他の成分からなる。顕微鏡検査により、活性汚泥フロックには細菌類および原虫類が「活動している」のが確かめられる。このため活性汚泥フロックは活性汚泥と呼ばれる。この活性汚泥は、活性汚泥方法での実用時には、通常活性汚泥フロックの形態となっており、この活性汚泥フロックは生死両方のバイオマスに加えて、吸着されまた沈積した有機化合物、およびミネラル物質を含む。
【0006】
活性汚泥方法においては、廃水中の有害物質の活性汚泥による分解後、いわゆる最終沈殿において浄化水からの汚泥の分離がなされる。分離された汚泥の大部分は、返送汚泥、あるいは再循環汚泥として活性汚泥槽に戻される。これにより、活性汚泥槽柱の活性汚泥濃度が、適度に保持できる。返送汚泥中に含まれる活性フロックは、活性体の浄化力を更新する。再循環されない小流量の活性汚泥を、余剰汚泥と呼ぶ。すなわち余剰汚泥は、所望のバイオマス濃度に一定に保つため抜き出して、汚泥処理工程にポンプで送る活性汚泥の一部である。この除去されたバイオマス増加分は、通常、嫌気性汚泥消化一次汚泥とともに、最終的に汚泥脱水工程に送られる。
【0007】
従来型の浄化設備において、窒素除去には、現在ほとんど例外なく生物的硝化/脱窒法が用いられている。窒素除去とは、アンモニウム(NH)、亜硝酸塩(NO)および硝酸塩(NO)といった生物的に扱える窒素化合物を、無害な最終生成物品として大気中に放出できる元素状窒素(N)に変換することを意味する。硝化では、アンモニウムが、中間生成物の亜硝酸塩を経て硝酸塩に酸素によって酸化される。続く脱窒では、この硝酸塩が、第1段の還元工程で亜硝酸塩に、さらに第2段の還元工程で窒素に還元される。
【0008】
この生物的硝化/脱窒は、酸素使用量が多く、したがってエネルギー消費量が多いという欠点がある。加えて、脱窒において、有機炭素が消費され、これは引き続いての精製プロセス、および汚泥特性に不利に作用する。
【0009】
硝化/脱窒法に対し、脱アンモニア法は酸素を40%しか必要とせず、すなわち窒素除去のためのエネルギー消費を60%減らせる。脱アンモニア法は、独立栄養プロセスで、有機炭素を必要としない。このため精製プロセスの他工程がより安定になる。
【0010】
脱アンモニア法は、例えば高アンモニウム濃度の廃水でも、効率的な生物的窒素除去方法である。浮遊バイオマスでの生物的脱アンモニア法においては、2つの細菌群が関与しており、一つはアンモニウムを亜硝酸塩に変換する好気性アンモニア酸化細菌(AOB)であり、他方は嫌気性アンモニウム酸化を行い、元素状窒素を生成する細菌(Anammox)、特にPlanctomycetesであり、この2つの細菌群は先に生成された亜硝酸塩を用いてこの工程を実施する。
【0011】
好気性アンモニア酸化細菌(AOB)は、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)よりも、物質収量で10倍も多くの新規細菌を生成する。したがって、1汚泥層システムにおいては、汚泥の滞留時間は、成長の遅い嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)が増殖できるだけの長さが必要である。
【0012】
1段法、ないし2段法での脱アンモニア方法は、例えばWO2007/033393A1(特許文献1)あるいはEP0327184B1(特許文献2)によって、既に十分に知られている。
【0013】
このとき、特に、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)の好気性アンモニア酸化細菌(AOB)よりも10倍ときわめて長い世代時間が欠点として判明した。これによると、安定なシステムは、汚泥ないし細菌の槽中での滞留時間が十分に長いときにのみ達成できる。さらに、これには、大きな反応容積と、これに対応するように作られた槽が必要になる。
【0014】
さらに、十分に高い廃水温度(>25℃)が、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)の生存あるいは増殖のための必要条件である。しかし廃水を加温するにはエネルギー面で多大な費用がかかるので、温度の低い廃水の場合は上記の方法は、経済的に使用不能あるいは実施不能である。
【0015】
加えて、生成する亜硝酸塩を好気性条件下で硝酸塩に変換する細菌群(NOB)の存在が不都合であることが分かっている。この細菌群は、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)に比べて、10倍も世代時間が短い。この世代時間の相違を埋めるために1汚泥層システムでの通気工程を非常に低い酸素水準(<0.4mgO/L)で運転することが考えられてきた。これにより硝酸塩を生成する細菌(NOB)に全くあるいは少量しか亜硝酸塩と反応させる酸素が提供されず、このことがまた嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)には、非常に好適な条件となる。しかし、通気工程での酸素供給の減少は、好気性アンモニウムの亜硝酸塩への変換が酸素により制約され、これにより非常に遅くなるという欠点をもたらす。
【0016】
上記の亜硝酸塩生成細菌(AOB)に比べ世代時間が10倍も長い、増殖の遅いPlanctomycetesは、非常に多くの個別細菌が球形の集合体、いわゆるプランクトミケス粒を形成するという特殊な性質を有する。このプランクトミケス粒は非常に密度が高い(1010細菌/mL)。
【0017】
処理すべき廃水は、分解すべきアンモニウムの他、有機酸等の有機物質、さらに、「溶解性COD」という和パラメータで表され、値として数百mg/L(典型的には100−2000mg/L)となる有機物質を含む。これらの有機物質は、非常に増殖の速い従属栄養性細菌により分解される。この従属栄養性細菌はしばしばプランクトミケス粒上に生息し、プランクトミケス粒を有機被覆層あるいは任意のカバーで覆う。この被覆層は拡散を制限し、このため、基質(NHおよびNO)は、変換のためにPlanctomycetesに供給する前にまずこの被覆層を透過しなければならないので、アンモニウム(NH)および亜硝酸塩(NO)の元素状窒素(N)への変換は困難となる。
【0018】
しばしば嫌気性汚泥消化(浄化汚泥の嫌気性安定化)からの廃水や、窒素濃度の高い一般廃水である、処理すべき廃水は、アンモニウム(NH)および分解性有機物質の他に例えば炭酸カルシウムおよび/またはスツルバイトといった無機物質を含み、これらもプランクトミケス粒の表面に沈積する可能性がある。また廃水に含まれる数百mg/L(典型的には50〜1000mg/L)にのぼる浮遊物質もプランクトミケス粒の被覆層を生成したりその厚さを増したりする。
【0019】
プランクトミケス粒の被覆は、拡散の制限により脱アンモニア設備の著しい能力低下を引き起こす。裸の、被覆されていないプランクトミケス粒と、被覆のある粒とでの窒素の相対収量(mg・N/g・TS)の比較測定では4〜6倍の差が示された。
【0020】
プランクトミケス粒上への沈着物あるいは被覆は、肉眼でも既に検知できる。裸の、被覆されていない粒は、鮮やかな赤色/赤錆色であるが、被覆で覆われた粒は被覆の程度に応じて弱い赤/茶色から暗褐色である。
【0021】
EP2163524B1(特許文献3)により、冒頭に記述した種類の方法および脱アンモニア設備は既に教示されている。開示された方法では、設備内のバイオマス濃度を一定にするためここから抜き出された余剰汚泥は、除去され嫌気性汚泥消化に送られるのでなく、液体サイクロンに送られ相対的に重い画分(重液流)および相対的に軽い画分(軽液流)に分けられる。このとき余剰汚泥に含まれる両方の細菌群(Anammox/AOB)の密度差が、余剰汚泥を、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)が主として含まれる重質相と、軽質相(AOB)とに分離するのに利用され。重質相に含まれる細菌群(Anammox)を設備内の活性汚泥槽に返送することによって、増殖の遅い細菌群(Anammox)が汚泥槽内に濃縮される。
【0022】
分離する2つの汚泥画分、すなわち相対的軽質画分および相対的重質画分は、密度だけでなく生物的特徴が明確に異なっている。細菌群が全く異なっているのである。多数の個別細菌からなるプランクトミケス粒は、フロック状の好気性アンモニア酸化細菌(AOB)よりはるかに大きい密度を有する。この2つの細菌群間に存在する密度の相違によって、抜き出された余剰汚泥は、重いプランクトミケス粒を含有する相と、軽いフロック状の汚泥部分を含有する相に分離できる。プランクトミケス粒は、密度差のためフロックよりはるかに重質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】WO2007/033393A1
【特許文献2】EP0327184B1
【特許文献3】EP2163524B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、アンモニウム含有廃水を処理するための改良された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、アンモニウム含有廃水を処理するための改良された脱アンモニア設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第一の目的は、請求項1に記載の特徴による方法によって達成される。本発明のさらなる形態は、従属請求項2〜7に示されている。
【0026】
すなわち、本発明によるアンモニウム含有廃水の処理方法によれば、少なくとも一時的に活性汚泥槽からの活性汚泥が液体サイクロンに導入され、また、液体サイクロンでの活性汚泥の分離後、相対的に重質の(比重の大きい)画分のみならず、主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の(比重の小さい)画分も、再び前記設備の少なくとも一つの活性汚泥槽に返送され、液体サイクロンでの活性汚泥の分離中に、好気性アンモニア酸化細菌(AOB)に比べより大きな密度を有する嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)を液体サイクロンでの遠心力および流体力により、液体サイクロンの粗面化された内壁面に沈降させ、高速で移動する嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)と、液体サイクロンの固定され粗面化された内壁面の間の相対運動により研削力を生じさせ、これによりアンモニア酸化細菌(Anammox)、特にプランクトミケス粒の上に存在する有機または無機の被覆を少なくとも部分的に除去することが想定される。
【0027】
これにより、プランクトミケス粒として存在する嫌気的アンモニア酸化細菌(Anammox)の上の、拡散を制限する有機または無機の被覆が除去されることによって、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)によるアンモニウムおよび亜硝酸塩の元素状窒素への変換が容易になるので、改良されたアンモニウム含有廃水の処理方法が提供され得る。このとき、被覆は、粒からこれを傷めずに削除され、あるいは洗い落とされるので、粒自身は研削力で壊されることはない。この粒構造の維持は、この設備で狙う窒素変換にとって非常に重要である。これにより、液体サイクロンでの分離後、相対的に重質の画分のみならず相対的に軽質の画分もが、再び、液体サイクロンに導入された活性汚泥が抜き出されたと同一の活性汚泥槽に返送され、設備中、あるいは生物的システム中での脱アンモニアに必要な細菌類、すなわち嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)、特にプランクトミケス粒、および好気性アンモニア酸化細菌(AOB)、特にNitrosomonasの割合を維持できる。同時に、被覆の除去により、窒素収量が増加される。フロック状に存在する好気性アンモニア酸化細菌は、主として活性汚泥の相対的に軽質の画分に含有されるので、効率の良い脱アンモニアおよび良好な窒素収量のためには、プランクトミケス粒に加え相対的に軽質の画分も活性汚泥槽に返送することは不可欠である。
【0028】
液体サイクロンにおいて、多数の個別細菌の集合体として存在するプランクトミケス粒は、フロック状に存在する好気性アンモニア酸化細菌と比べ密度が大きいので、液体サイクロンの粗面化した内壁面に沈降する。この粗面化した内壁面は、隣り合う内壁面や、従来の液体サイクロンの内壁面と比べ粗度が高い。このとき、内壁面自身を粗面化してもよいし、または粗面化したあるいは粗度が高く作られた表面コートを付けてもよい。粗面化された内壁面と接触することで、研削力が粒に働くが、これによれば粒上の有機または無機の被覆が粒を傷めずに除去され、個別細菌の集合体あるいは個別細菌自身は破壊されない。被覆の除去後、粒は液体サイクロンの重液流口から活性汚泥槽に返送される。
【0029】
フロック状をなしており、主として軽質の画分に存在する好気性アンモニア酸化細菌(AOB)は、粒に比べて実質的に密度が小さいので、液体サイクロン中で内側に形成し上方に向う内側旋回流により、液体サイクロンの軽液流口から排出される。このためこの細菌(AOB)は、粗面化した円錐部分の内壁面に強く接触することがなく、そのためこの細菌フロックは研削力にさらされることもなく実質的に無傷で液体サイクロンから排出され活性汚泥槽に返送可能となる。これにより、ただでさえ悪いフロック状細菌の沈降特性が少なくとも維持され得る。これに対しフロック構造が破壊されたとすると、そうした沈降特性がさらに悪化し、脱アンモニアに必要な好気性アンモニア酸化細菌(AOB)が汚泥水と伴に生物的システムあるいは活性汚泥槽から排出されてしまうであろう。
【0030】
本発明の方法および拡散を制限する有機または無機の被覆のプランクトミケス粒からの除去により、窒素の単位収量(mg・N/g・TS)が4〜6倍増加する。
【0031】
さらに、実施においては、液体サイクロンにおいて活性汚泥に重力加速度の30〜180倍の遠心力をかけるのが特に有利であることが示されている。こうした強さの遠心力、およびその結果としての活性汚泥、特に重質画分の高い速度によって、プランクトミケス粒上の被覆は、ほぼ完全に除去される。この値が小さいと、被覆の削除は、起こらず、あるいはごくわずかしか起こらず、値がさらに大きいと多くの個別細菌からなる粒あるいは個別細菌自身が破壊される。
【0032】
さらに、液体サイクロンで分けられた、活性汚泥の相対的に重質の画分および相対的に軽質の画分のそれぞれ全てを、再び活性汚泥槽に返送するのが有利であることが分かっている。この返送により、活性汚泥槽から液体サイクロンに導入された活性汚泥が全量、再度同じ活性汚泥槽に返送され、これにより設備の活性汚泥槽で、脱アンモニアに関与しているバクテリア種類(嫌気性アンモニア酸化、AOB)間の調和のとれた割合が確保される。
【0033】
本方法の有利なさらなる発展形態は、また、液体サイクロンでの活性汚泥の分離中に、主として嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する相対的に重質の画分は、液体サイクロンの円錐部分に配置された粗面化された内壁面に接触し、続いて液体サイクロンの重液流口を通ってそこから排出され、主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の画分は、液体サイクロンの円筒部分の平滑な内壁面と接触し、続いて液体サイクロンの軽液流口を通ってそこから排出されることによって達成される。これにより、研削力はもっぱらプランクトミケス粒に作用し、それにより有機または無機の被覆を除去し、これに対し好気性アンモニア酸化細菌(AOB)はもっぱら円筒部分の平滑な内壁面と接触する。これによりフロック状で存在する好気性アンモニア酸化細菌の破壊は防がれる。選ぶべき内壁面の粗さは液体サイクロン円筒部分の直径に依存する。円筒部分の直径が大きいほど、それだけ選ぶべき粗さも大きくする。実験によれば、表面の粒度は100μmまでが良いと示された。
【0034】
本方法の特に有利なさらなる発展形態は、また、液体サイクロンに活性汚泥を導入し、相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分に分離し、重質画分も軽質画分も活性汚泥槽に返送した第一の所定期間の後に、第二の所定期間中、活性汚泥でなく活性汚泥槽から抜き出した余剰汚泥を液体サイクロンに送り、液体サイクロンにおいて、この余剰汚泥を相対的に重質の画分と、相対的に軽質の画分に分離し、相対的に重質の画分だけを活性汚泥槽に返送し、あるいは抜き出して第二の設備の活性汚泥槽に送り、一方相対的に軽質の相は除去することによって実現される。
【0035】
第一の期間中、相対的に重質の画分に含有されるプランクトミケス粒は、洗浄されあるいは粒上に付いた有機または無機の被覆が少なくとも部分的に除去される。これに対し第二の期間中は、軽質の画分の除去および重質の画分の設備の活性汚泥槽への返送により、嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)の増殖の遅い群が生物的システムあるいは活性汚泥槽で濃縮される。第二の期間中に嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)の割合が増加し得るので、その分、槽の反応容積が減少し、設備のプロセス安定性が向上する。
【0036】
この場合、第一の期間の長さが、第二の期間の長さより長いことが特に実用的であると判明している。実際には、第一の期間の長さが、第二の期間の長さの約1.5〜4倍であることが有利であると判明している。特に好ましくは液体サイクロンの全運転時間の70%は、活性汚泥を液体サイクロンに導入し、全運転時間の30%を余剰汚泥導入とする。このときそれぞれの期間の長さは、液体サイクロンの数、それぞれの大きさ、活性汚泥槽の大きさ、ならびに達成すべき設備の窒素収量に合わせて選ばれる。
【0037】
本発明においては、さらに、第一の期間中は活性汚泥が、第二の期間中は余剰汚泥が、交互にかつ連続的に液体サイクロンに導入されることが想定される。すなわち、第二の期間中に余剰汚泥を導入した後、再度第一の期間を続け、この第一の期間に活性汚泥を液体サイクロンに導入する。
【0038】
本発明の2番目に記述した目的は、請求項8に記載の特徴に従う脱アンモニア設備により達成される。本発明のさらなる形態は従属請求項9〜15が教示している。
【0039】
本発明は、すなわち、アンモニウム含有廃水の処理のための脱アンモニア設備であり、この設備では、液体サイクロンに導入される汚泥は、活性汚泥として形成され、液体サイクロンの軽液流口は、分離された主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)を含有する相対的に軽質の画分を活性汚泥槽に返送するため配管的に活性汚泥槽に結合されており、少なくとも一つの液体サイクロンが、円筒部分および円錐部分を有しており、ここに円錐部分の内壁面は、少なくとも部分的に粗面化されており、円錐部分の粗面化された内壁面は円筒部分の内壁面より大きい粗さを有する。
【0040】
そうした液体サイクロンの形態および液体サイクロンと活性汚泥槽の配管的結合により、アンモニウム含有廃水を処理するための改良された脱アンモニア設備が提供され得る。本発明による設備により、プランクトミケス粒上に存在する有機または無機の被覆を粒を傷めずにかつその際非常に効率よく除去できる。拡散を妨げるように働く被覆を除去することにより、Planctomycetesによるアンモニウムおよび亜硝酸塩の元素状窒素への変換が非常に容易になる。
【0041】
液体サイクロンの円錐部分が、円筒部分より大きな粗さであることにより、被覆を除去するのに必要な研削力がもっぱら相対的に重質の画分にかかることが確実となる。相対的に軽質の画分は、密度が小さいことで、液体サイクロン中で形成し上方に向う内側旋回流により、軽液流口を通り排出されるので、相対的に軽質の画分は、粗面化した液体サイクロンの円錐部分の内壁面に直接接触することがない。このため軽質の画分に研削力がかかることがなく、したがって軽質の画分に含有されるフロック状細菌(AOB)は破壊されない。これはこの汚泥画分の非常に悪い沈降特性にとって大変有利となる。破壊が生じると沈降特性はさらに悪化し、その結果、この細菌は生物的システムあるいは活性汚泥槽から排出されてしまい、脱アンモニアに対して使用不能となってしまう。
【0042】
液体サイクロンの円錐部分の内壁面が、少なくとも部分的に100μmまでの粒度の粗さを有するのが特に実際的であることが知られている。粒度がさらに大きいと、集合体中に存在する嫌気性アンモニア酸化細菌、すなわちプランクトミケス粒が破壊される可能性がある。個々の場合に選択すべき粗さは、特に液体サイクロンの選択される直径に依存する。液体サイクロンの円筒部分の直径が大きいほど、選択すべき粗さは大きくすべきである。
【0043】
本発明の形態の一つでは、円錐部分の内壁面に大きな粗さの表面コートが付いていることが想定される。このとき表面コートと円錐部分の内壁面が一体に作られていても、あるいは表面コートが材料結合で、例えば接着により円錐部分の内壁面と結合されていてもよい。
【0044】
このとき、液体サイクロンが少なくとも部分的に形態安定性合成樹脂および/または酸化アルミニウム製表面コートからなっているのが特に有利であるとされている。液体サイクロンのこの形態によれば、液体サイクロンの簡単かつ再現性良い製造が確実にできる。この場合、液体サイクロンは射出成型で製造でき、合成樹脂を充填する前に、表面コートとなる酸化アルミニウムを、金型中に入れ、あるいはコアに貼っておく。冷却過程で酸化アルミニウムは液体サイクロンの内壁面と結合し、一体化した部品となる。酸化アルミニウムを液体サイクロン表面に包含させることで、酸化アルミニウムを信頼性高く内壁面に固定できる。意図する表面コートの粒度に応じて、酸化アルミニウムの量および/または粒径を調整してよい。
【0045】
特に簡単には、表面コートをフィルムまたは織布で形成することもできる。これらは、材料結合で液体サイクロンの該当面に固定できる。
【0046】
本発明によれば、さらに円錐部分の内壁面のより大きな粗さを機械的および/または化学的加工方法により作り得ることが想定される。このときは、粗さを液体サイクロンの内壁面に直接作ることができる。
【0047】
本発明の有利な形態においては、円筒部分の内壁面を平滑に作ることが想定される。これにより、好気性アンモニア酸化細菌が、円筒部分の内壁面に接触したときに壊れてしまうのが防止できる。
【0048】
本発明には、多様な実施形態が可能である。その原理をさらに明らかにするためにこの原理の1つを図に示しかつ以下に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】アンモニウム含有廃水を処理するための設備の簡略化した模式図である。
図2図1に示した液体サイクロン中の流れの関係を示す斜視図である。
図3図1に示した液体サイクロンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、アンモニウム含有廃水2を処理するための脱アンモニア設備1を示す。設備1は、逐次バッチ反応器設備(Sequencing Batch Reactor)として、従来型の最終沈殿を伴う活性汚泥設備として、あるいはバイオマスの保持のための膜を有するいわゆる膜処理設備として構成できる。設備1は少なくとも一つの活性汚泥槽3を有し、その内部で廃水2が懸濁バイオマスと、あるいは活性汚泥と混合され、強く接触させられる。
【0051】
ポンプ4により、汚泥−水・混合物からなる活性汚泥が、活性汚泥槽3から、液体サイクロン5に供給される(方向矢印6)。液体サイクロン5には、円筒部分7および円錐部分8がある。円筒部分7は、直径50mm〜250mmである。液体サイクロン5には、液体サイクロン5の円筒部分7の直径に応じて1.1〜2.1barとなる供給圧でポンプ4によって送液される。円筒部分7に流入する流入口9から、活性汚泥は液体サイクロン5に導入され、その内部で主として嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)、特にプランクトミケス粒を含有する相対的に重質の画分と、主として好気性アンモニア酸化細菌(AOB)、特にNitrosomonasを含有する相対的に軽質の画分とに分離される。相対的に重質の画分は、円錐部分8を抜け、重液流口10を通り液体サイクロン5から排出され、活性汚泥槽3に返送される(方向矢印11)。相対的に軽質の画分は、液体サイクロン5の軽液流口12を通り、同様に活性汚泥槽3に返送される(方向矢印13)。したがって、活性汚泥槽3から液体サイクロン5に導入された活性汚泥は全量が再び同じ活性汚泥槽3に返送される。ただし相対的に重質の画分および相対的に軽質の画分に分けられている。ここに液体サイクロン5の流入口9に送入された活性汚泥容積の約80%が相対的に重質の画分であり、約20%を相対的に軽質の画分が占める。
【0052】
図2は、図1に示した液体サイクロン5中の流れの関係を表しており、図3は、液体サイクロン5の側面図を示している。活性汚泥槽3からの活性汚泥は、流入口9を通って、接線方向に液体サイクロン5の円筒部分7に導入される。これにより活性汚泥は円軌道を描かされ、下方を向いた外側旋回流14として下方に流れる。液体サイクロン5の円錐部分8が狭められているので空間が内側に押しのけられ円錐部分8の下側の領域がせき止められ、これによって内側の上向きの内側旋回流15が形成され、この内側旋回流15は軽液流口12を通って液体サイクロン5から出ていく。相対的に重質の画分は、液体サイクロン5の内壁面16に沈積し重液流口10を通り液体サイクロン5から排出され、一方、相対的に軽質の画分は軽液流口12を通り液体サイクロン5から排出される。活性汚泥には、図示された液体サイクロン5で、重力加速度gの30〜180倍の遠心力が加えられる。
【0053】
液体サイクロン5の内部空間17を向いた円錐部分8の内壁面16には粗面化した表面コート18があり、同様に液体サイクロン5の内部空間17を向いた円筒部分7の内壁面19より高い粗面度を有する。表面コート18の粒度は100μmまであり、例えば酸化アルミニウムにより構成され、液体サイクロン5の合成樹脂材料と一体に結合される。表面コート18に選ぶべき粗さは、選んだ液体サイクロン5の直径に依存する。選んだ円筒部分7の直径が大きいほど、選ぶべき表面コート18の粗さも大きくするべきである。
【0054】
設備1の活性汚泥槽3でのアンモニウム含有廃水2の脱アンモニアにおいては、まず好気性酸化細菌(AOB)によりアンモニウムが亜硝酸塩に変換される。続いて嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)、特にPlanctomycetesにより、アンモニウムおよび亜硝酸塩が元素状窒素に変換される。Planctomycetesは、このとき多数の個別細菌からなる粒で存在し、フロック状で存在する嫌気性アンモニア酸化細菌(AOB)に比べ大きな密度を示す。この活性汚泥槽3中存在する活性汚泥は、流入口9を通って接線方向に液体サイクロン5に導入される。活性汚泥は、液体サイクロン5中で、その場の遠心力および流体力により、密度の大きい嫌気性アンモニア酸化細菌(プランクトミケス粒)を含有する相対的に重質の画分と、主として(フロック状の)好気性酸化細菌を含有する相対的に軽質の画分とに分けられる。高速で動く相対的に重質の画分中の嫌気性アンモニア酸化細菌(Anammox)と、固定されている液体サイクロン5の粗面化された内壁面16との間の接触および相対運動により、重質画分が重液流口10を通り液体サイクロン5から排出される前に、プランクトミケス粒の上に付いた有機および/または無機の被覆が、少なくとも部分的に除去される。これに対し、相対的に軽質の画分は、粗面化した円錐部分8の内壁面16にとりたてて接触することなく、発生する内側旋回流15により、軽液流口12を通り液体サイクロン5から排出される(図3の破線で示される方向矢印20)。活性汚泥の相対的に重質の画分も、相対的に軽質の画分も、液体サイクロン5での分離後、再び全てが活性汚泥槽3に返送される。
【0055】
研削力ないし研削効果は、液体サイクロン5の大きさ、特に円筒部分7の直径、円錐部分8の内壁面16の粗さ、および液体サイクロン5の滞留時間を、生物的システムの大きさ、ないし、活性汚泥槽3の容積と関連して適宜組み合わせることによって調節できる。
図1
図2
図3