(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発熱体組成物は、耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱するものであって、電子レンジのマイクロ波を通じて発熱体表面温度を180℃以上に上昇させ、遠赤外線を1000W/m
2以上放出させながらも、加熱または加熱と冷却とを反復しても、発熱体組成物の塗布層と釉薬層、または発熱体組成物の塗布層と素地との間の表面割れが発生しないようにする。
【0023】
本発明の耐熱陶磁器は、100℃以上、望ましくは、150℃以上、さらに望ましくは、200℃以上、さらに望ましくは、250℃以上急熱、または急熱及び急冷を加えても、亀裂や破損されない磁器を意味する。
【0024】
本発明の耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物(以下、これを訳して、‘発熱体組成物’とも言う)は、酸化鉄を主成分とする金属酸化物からなる発熱材料(以下、これを訳して、‘発熱材料’とも言う)と前記発熱材料を素地及び釉薬と結合させるための結合材料とを含んでなる。
【0025】
本発明の発熱体組成物は、金属酸化物の発熱材料30ないし85重量%及び結合材料15ないし70重量%含んでなり、前記金属酸化物の発熱材料は、酸化鉄を50重量%以上含み、前記結合材料は、葉長石、長石90ないし99重量%とリチウム1ないし10重量%との混合物、コーディエライト及びムライトのうちから選択される何れか1つ以上を50重量%以上含む。
【0026】
発熱材料が前記下限値未満である場合、発熱体組成物が塗布された塗布面の温度がマイクロ波(電子レンジ700W、3分加熱基準)を吸収しても、180℃以上加熱されず、発熱材料が前記上限値を超過する場合、発熱体組成物が塗布された塗布面の温度はさらに高くなるが、結合材料の使用量が減り、また、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0027】
結合材料が前記下限値未満である場合、結合材料の使用量が減り、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0028】
結合材料が前記上限値を超過する場合、発熱材料の使用量が減り、発熱体組成物が塗布された塗布面の温度がマイクロ波(電子レンジ700W、3分加熱基準)を吸収しても、180℃以上加熱できない。
【0029】
長石とリチウムとの混合物において、リチウムが前記下限値未満である場合、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされて、リチウムが前記上限値を超過する場合、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0030】
本発明の発熱体組成物は、前記金属酸化物の発熱材料として、全体金属酸化物の発熱材料から酸化鉄を50重量%以上、望ましくは、酸化鉄を60ないし95重量%、さらに望ましくは、65ないし80重量%含む。または前記金属酸化物の発熱材料として、全体発熱体組成物から酸化鉄を20ないし65重量%、望ましくは、40ないし65重量%、さらに望ましくは、45ないし60重量%含む。
【0031】
酸化鉄含量が、前記下限値未満である場合、遠赤外線発熱陶磁器の表面、すなわち、発熱体組成物が塗布された塗布面の温度がマイクロ波(電子レンジ700W、3分加熱基準)を吸収して、180℃以上、望ましくは、250℃以上、さらに望ましくは、300℃以上、最も望ましくは、350ないし450℃まで加熱されず、発熱体の加熱が十分ではない場合、遠赤外線放射量が十分ではなくて、調理時間を短縮させることができず、酸化鉄含量が、前記上限値を超過する場合、発熱体組成物が塗布された塗布面の温度はさらに高くなるが、結合材料の使用量が減り、また、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0032】
本発明の発熱体組成物は、前記金属酸化物の発熱材料として酸化錫、酸化亜鉛及び二酸化マンガンのうちから選択される何れか1つ以上をさらに含みうる。酸化錫、酸化亜鉛または二酸化マンガンは、単独で使われる場合、マイクロ波による加熱効果を十分に果たすことができないが、酸化鉄と共に使われて加熱効果を増進させ、同時に結合材料との結合力を増進させる。
【0033】
本発明の発熱体組成物は、前記金属酸化物の発熱材料として、全体金属酸化物の発熱材料から、前記酸化錫、酸化亜鉛及び二酸化マンガンのうちから選択される何れか1つ以上を5ないし40重量%含みうる。
【0034】
酸化錫、酸化亜鉛及び二酸化マンガンのうちから選択される何れか1つ以上の発熱材料が前記下限値未満である場合、発熱体の温度上昇幅に限界があり、発熱材料の使用量が増加する問題がある。前記上限値を超過する場合、発熱材料の中、酸化鉄の含量、または、結合材料の含量が減り、発熱体の温度上昇幅が限界を表す、あるいは、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0035】
前記酸化錫は、全体金属酸化物の発熱材料で10ないし40重量%、望ましくは、15ないし30重量%、さらに望ましくは、16ないし24重量%含まれることによって、酸化鉄の含量を低めながらも、マイクロ波の吸収能が増加して、同じ時間電子レンジを加熱しても、発熱体の温度上昇幅が酸化鉄単独使用時よりも高くなり、また、酸化鉄含量を低めることによって、結合材料の使用量を増大させ、素地または釉薬との融着がよくなされるようにする。
【0036】
前記酸化亜鉛は、全体金属酸化物の発熱材料で5ないし25重量%、望ましくは、8ないし20重量%、さらに望ましくは、10ないし16重量%含まれることによって、酸化鉄、または酸化鉄と酸化錫との含量を低めながらも、マイクロ波の吸収能が増加して、同じ時間電子レンジを加熱しても、発熱体の温度上昇幅が酸化鉄単独、または酸化鉄と酸化錫使用時よりも高くなり、また、結合材料の使用量を増大させ、素地または釉薬との融着がよくなされる。
【0037】
前記二酸化マンガンは、全体金属酸化物の発熱材料で1ないし20重量%、望ましくは、2ないし15重量%、さらに望ましくは、3ないし10重量%含まれることによって、酸化鉄、または酸化鉄と酸化錫との含量を低めながらも、マイクロ波の吸収能が増加して、同じ時間電子レンジを加熱しても、発熱体の温度上昇幅が酸化鉄単独、または酸化鉄と酸化錫使用時よりも高くなり、また、結合材料の使用量を増大させ、素地または釉薬との融着がよくなされる。
【0038】
本発明の発熱体組成物は、前記結合材料として全体結合材料で、葉長石、長石90ないし99重量%とリチウム1ないし10重量%との混合物、コーディエライト及びムライトのうちから選択される何れか1つ以上を50重量%以上、望ましくは、60ないし100重量%、さらに望ましくは、65ないし85重量%、さらに望ましくは、71ないし82重量%含む。または結合材料として全体発熱体組成物で、葉長石、長石90ないし99重量%とリチウム1ないし10重量%との混合物、コーディエライト及びムライトのうちから選択される何れか1つ以上を15ないし50重量%、望ましくは、16ないし30重量%含む。
【0039】
前記葉長石、コーディエライトまたはムライトは、いずれも金属酸化物の発熱材料が素地または釉薬でよく融着できるように助けることができるが、コーディエライトまたはムライトの場合、葉長石と同じ量で適用したときには、結合力が弱く、熱膨張係数を低める効果が弱くて、釉薬との熱膨張係数差が大きくなるので、葉長石を使うことが望ましく、葉長石の代替物質として長石90ないし99重量%とリチウム1ないし10重量%との混合物、望ましくは、長石93ないし97重量%とリチウム3ないし7重量%との混合物を使うことができる。また、葉長石自体を使わず、葉長石を多量で含む材料、例えば、70重量%以上、望ましくは、80重量%以上含む耐熱フリットが使われる。
【0040】
葉長石(Petalite)は、ケイ酸リチウムアルミニウムで熱膨張係数が非常に低いために、金属酸化物、特に、酸化鉄を30重量%以上の非常に高い含量で含んで発熱体組成物の熱膨張係数を低めて、釉薬との熱膨張係数差を減らし、素地または釉薬との結合力を増大させる。葉長石の含量が、前記下限値未満では、素地または釉薬との結合力を十分に発揮できず、前記上限値を超過する場合、発熱材料の使用量に制限が加えられるので、マイクロ波を十分に吸収できなくなる。
【0041】
本発明の発熱体組成物は、前記結合材料として骨灰、滑石及びベントナイトのうちから選択される何れか1つ以上をさらに含みうる。前記骨灰、滑石またはベントナイトは、葉長石を低めながらも、素地または釉薬との融着をよくさせることができるので、発熱材料の使用量を増大させ、したがって、マイクロ波の吸収を増大させて発熱温度を高め、遠赤外線放出量を高めうる。
【0042】
本発明の発熱体組成物は、前記結合材料として全体結合材料で、前記骨灰、滑石及びベントナイトのうちから選択される何れか1つ以上を5ないし40重量%含みうる。
【0043】
前記骨灰、滑石及びベントナイトのうちから選択される何れか1つ以上の結合材料が前記下限値未満である場合、結合力を増大させず、前記上限値を超過する場合、葉長石、長石90ないし99重量%とリチウム1ないし10重量%との混合物、コーディエライト及びムライトのうちから選択される何れか1つ以の結合材料の使用量が減り、発熱体組成物の熱膨張係数が増加して、素地または釉薬との融着がなされず、釉薬や発熱体組成物が剥がされる。
【0044】
前記骨灰は、全体結合材料で5ないし40重量%、望ましくは、7ないし25重量%、さらに望ましくは、10ないし20重量%含まれることによって、葉長石を低めながらも、素地または釉薬との融着をよくさせることができるので、発熱材料の使用量を増大させ、したがって、マイクロ波の吸収も増大させることができる。
【0045】
前記滑石は、全体結合材料で1ないし20重量%、望ましくは、2ないし10重量%、さらに望ましくは、3ないし8重量%含まれることによって、材料の均一な混合を容易にして結合力を増大させることができる。
【0046】
前記ベントナイトは、全体結合材料で1ないし10重量%、望ましくは、2ないし8重量%含まれることによって、さらに結合力を増大させることができる。
【0047】
特に、本発明の発熱体組成物は、釉薬との熱膨張係数差を減らすために、酸化鉄と葉長石との重量比を10:3ないし10:5で保持することが望ましい。
【0048】
また、本発明は、前記耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙に関するものである。
【0049】
本発明の陶磁器用転写紙は、前記耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物を含む転写層を素焼きした成形体、素焼き後に釉薬を施釉した成形体または本焼きした成形体などの被塗布体の表面に転写させた後、焼成過程を通じて前記発熱体組成物を成形体の表面に融着させる。
【0050】
前記陶磁器用転写紙を使うことによって、前記発熱体組成物を成形体の表面に直接塗布することに比べて、均一な厚さで発熱体組成物を塗布し、同時に生産収率が著しく改善されうる。
【0051】
本発明の陶磁器用転写紙は、前記耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物を含むものであれば、その構造や製造方法は、特別に限定しない。例えば、前記陶磁器用転写紙は、転写用紙または離型層が形成された転写用紙上に前記発熱体組成物を30ないし80重量%を含む転写層を塗布して、乾燥させて製造することができる。
【0052】
前記発熱体組成物が前記下限値未満である場合、転写紙が塗布された塗布面の温度がマイクロ波(電子レンジ700W、3分加熱基準)を吸収しても、180℃以上加熱できない。
【0053】
発熱体の加熱が十分ではない場合、遠赤外線放射量が十分ではなくて、調理時間を短縮させることができない。前記上限値を超過する場合、転写紙から発熱体組成物が剥がされる。
【0054】
本願発明の陶磁器用転写紙は、転写用紙上に前記発熱体組成物を含む転写層を形成して製造される。前記転写用紙と転写層との間には、転写層の剥離が容易になるように離型層を形成し、また、前記転写層上には、転写層を保護するための保護層が形成されうる。
【0055】
前記転写用紙は、パルプ系の紙または柔軟性を有した合成樹脂フィルムからなるものを使うことができる。前記柔軟性合成樹脂フィルム材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、そして、エチレン酢酸ビニル共重合体のうちの1つまたはそれ以上の混合物を使い、約50μmないし0.2mmの厚さを有したフィルムを利用できる。
【0056】
前記転写用紙にコーティングされる離型層には、界面活性剤を含むか、水に溶解されて分解される澱粉糊、水溶性セルロース誘導体、アラビアガム、ゼラチン、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含み、またはポリアミド系、ポリオレフイン系、ポリエステル系、シリコン系、ワックス系などの熱可塑性樹脂が利用されうる。
【0057】
前記転写層は、粉末形態の前記発熱体組成物、前記発熱体組成物粉末に結合力を付与するための結合剤、前記発熱体組成物粉末及び結合剤を溶解させるための有機溶媒を混合して、転写用紙または離型層が形成された転写用紙に塗布して製造することができる。
【0058】
前記転写層に含まれる発熱体組成物粉末は、平均粒子サイズが10ないし600μm、望ましくは、50ないし500μm、さらに望ましくは、100ないし300μmであり、前記上限値を超過すれば、釉薬または素地との融着が難しく、前記下限値未満は、微粉砕のために追加工程が必要であり、コスト高となる。
【0059】
また、前記転写層に含まれる前記結合剤は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの粘性を有した合成樹脂を使い、前記溶媒は、結合剤を溶解させながら容易に乾燥されるものであれば、特別に限定せず、メタノール、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンなどを使うことができる。
【0060】
前記転写層は、前記発熱体組成物粉末30ないし80重量%、前記結合剤5ないし40重量%及び有機溶媒5ないし40重量%を混合して製造可能である。
【0061】
前記保護層には、透明または半透明の樹脂が使われ、アクリル樹脂またはパラフィンが利用されうる。
【0062】
前記本発明の陶磁器用転写紙を用いて素焼き成形体、素焼き後に釉薬を塗布した後、乾燥させた成形体または本焼き成形体などの被塗布体の表面に本発明の発熱体組成物を転写させる方法は、特別に限定しないが、例えば、陶磁器用転写紙を水に浸漬して、離型層が形成された転写用紙を転写層または保護層が結合された転写層を剥離し、その剥離された転写層または保護層が結合された転写層を被塗布体の表面に付着させた後に乾燥させ、再び焼成して成形体に融着させることができる。
【0063】
本発明は、前記耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を耐熱陶磁器の表面に塗布した後、焼成して製造される遠赤外線発熱陶磁器に関するものである。
【0064】
前記遠赤外線発熱陶磁器は、平板、円筒、球(sphere)、管(tube)、六面体、皿、焼き板、カップ、ヤカンまたは鍋状であり、食物調理用としては、蓋があるカップ、ヤカン、鍋状であり、遠赤外線湿布用としては、平板、円筒、球または任意の形状であり得る。
【0065】
前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙は、耐熱陶磁器の表面中に内面または外面どちらにも塗布し、両側面いずれも付着することもできるが、外面、その中でも底面に塗布することが望ましい。
【0066】
本発明の耐熱陶磁器は、葉長石40ないし70重量%及び
脈斑石4ないし18重量%を含む素地組成物で成形されたものであり得る。
【0067】
葉長石は、素地の熱膨張及び収縮を緩和するための基本原料として使われ、水分を除いた素地組成物全体で40ないし70重量%、望ましくは、55ないし68重量%使われる。前記下限値未満では、加熱と冷却とによる熱膨張性及び熱収縮性が大きくて、耐熱性が低くて破損可能性が高く、上限値を超過すれば、器物成形に必要なフリット、長石、滑石、カオリン、ケイ石、粘土などの含量が制限を受け、また、
脈斑石の含量にも制限を受け、成形不良率が高くなる。
【0068】
フリットは、高温で耐熱性を発揮し、素地と釉薬層との結合力を増進させるための原料として使うものであって、望ましくは、高火度耐熱フリットを使うものであり、水分を除いた素地組成物全体で3ないし15重量%、望ましくは、5ないし10重量%使われる。前記下限値未満では、加熱と冷却とによる熱膨張性及び熱収縮性が大きくて、耐熱性が低くて破損可能性が高く、上限値を超過すれば、器物成形に必要な長石、滑石、カオリン、ケイ石、粘土などの含量が制限を受け、また、
脈斑石の含量にも制限を受け、成形不良率が高くなる。
【0069】
また、前記フリットは、鉛を含有していないアルカリ性フリットまたはホウ酸フリットが望ましく、フリットの融点は、1200ないし1300℃である。フリットの組成を特別に限定しないが、例えば、SiO
2 40ないし45重量部、Na
2O 12ないし18重量部、K
2O 1.5ないし2.5重量部、BaO 2ないし3重量部、NiO 0.5ないし1.0重量部、MnO 0.5ないし1.0重量部、CuO 0.5ないし1.2重量部、CoO 0.1ないし0.2重量部及びCaO 5ないし10重量部を含んでなるものを使うことができる。
【0070】
脈斑石は、地質学的に花崗岩類に属し、岩石名で石英−モンゾナイトとして石英と長石とが細かく混ぜられている岩石で素地組成物に
脈斑石が添加されることによって、長期間水分を吸収させた後、直火加熱時に安定性を増大させる。
脈斑石は、水分を除いた素地組成物全体で4ないし18重量%、望ましくは、8ないし16重量%使われ、前記下限値未満では、耐熱性が弱くなり、上限値を超過すれば、熱膨張及び収縮を抑制するための
脈斑石の含量に制限を受けるか、器物成形に必要なフリット、滑石、カオリン、粘土などの含量の制限を受ける。
【0071】
本発明の耐熱陶磁器の素地組成物には、器物の成形のために長石、滑石、カオリン、ケイ石及び粘土のうちから選択される何れか1つ以上の素地原料をさらに含む。これら含量は、水分を除いた素地組成物全体で滑石0.2ないし4重量%、カオリン6ないし18重量%、粘土4ないし16重量%含まれることが望ましく、前記含量範囲を外れれば、器物の成形が難しいか、焼成時に亀裂が発生するか、十分な耐熱性を有することができない可能性が高い。
【0072】
本発明では、前記本発明の素地組成物で器物を成形して素焼きをした後、葉長石及び
脈斑石を含む釉薬を施釉することが、器物と釉薬との熱膨張及び収縮率差を減らし、24時間浸漬したとき、水分吸収率を2ないし5重量%まで低めるために望ましい。
【0073】
本発明の釉薬は、葉長石52ないし68重量%、フリット8ないし19重量%、滑石0.2ないし4重量%、ケイ灰石1ないし8重量%及び
脈斑石8ないし25重量%含有することが望ましく、前記範囲を外れる場合、陶磁器を加熱するとき、微細な亀裂が発生する可能性が高い。釉薬に使うフリットは、素地組成物に使われるフリットと同じか異なることもある。しかし、望ましくは、素地組成物に使われるフリットの特性と類似しているか、同じ釉薬を使うことが、釉薬と素地層との結合力を増進させるのに望ましい。
【0074】
本発明の釉薬は、長石、カオリン及び石灰石のうちから選択された何れか1つ以上の釉薬原料をさらに含み、この際、前記張錫儀含量は、1.5ないし5重量%、カオリン含量は、2.5ないし5重量%、石灰石含量は、1ないし5重量%であることが望ましい。
【0075】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器で、前記発熱体組成物と釉薬との40ないし800℃での熱膨張係数の差は、2×10
−6/℃以下、望ましくは、1×10
−6/℃以下である。前記発熱体組成物と釉薬との熱膨張係数差が、前記範囲を超過する場合、発熱体が釉薬と一体に素地に融着されない。
【0076】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器で、前記発熱体組成物の塗布量は、20ないし80mg/cm
2、望ましくは、40ないし70mg/cm
2であるものであって、前記上限値を超過する場合、発熱体が釉薬と一体に素地に融着されず、前記下限値未満では、十分な発熱と遠赤外線放射量とが得られない。
【0077】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器で、前記発熱体組成物は、耐熱陶磁器の表面のうちの全面に塗布され、望ましくは、陶磁器の内面または外面を選択して何れか一面にのみ塗布されても、発熱と遠赤外線の生成とに十分である。但し、陶磁器の外面、その中でも、外部底面に塗布することが、耐熱陶磁器の内部で調理される食べ物と発熱層とが直接接することを避けることができるという点で望ましい。
【0078】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器は、前記耐熱陶磁器の表面に塗布されてマイクロ波を吸収して発熱する発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を如何なる段階の如何なる被塗布体に塗布するかによって、それぞれ異なる方法で製造可能である。
【0079】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器の製造方法の1つの実施例として、素地組成物で器物を成形した後、その成形体を700ないし1100℃で素焼きする段階と、前記素焼きされた成形体の表面に、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を塗布する段階と、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙が塗布された成形体に釉薬を施釉し、1200ないし1350℃で本焼きする段階と、を含んで製造することができる。
【0080】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器の製造方法の他の1つの実施例として、素地組成物で器物を成形した後、その成形体を700ないし1100℃で素焼きする段階と、前記素焼きされた成形体の表面に釉薬を施釉する段階と、前記釉薬が施釉された成形体の表面に、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を塗布する段階と、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙が塗布された成形体を1200ないし1350℃で本焼きする段階と、を含んで製造することができる。
【0081】
本発明の遠赤外線発熱陶磁器の製造方法のさらに他の1つの実施例として、素地組成物で器物を成形した後、その成形体を700ないし1100℃で素焼きする段階と、前記素焼きされた成形体の表面に釉薬を施釉し、1200ないし1350℃で本焼きする段階と、前記本焼きされた成形体の表面に、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を塗布する段階と、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙が塗布された成形体を800ないし1350℃で3回焼きする段階と、を含んで製造することができる。
【0082】
前記本焼き、または、3回焼き時の温度が下限値未満である場合、発熱体組成物、あるいは、発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙と素地との融着が足りないことがある。また、前記温度が上限値を超えると、発熱体組成物や釉薬の表面が裂ける恐れがある。
【0083】
前記発熱体組成物を塗布する場合、素焼き後に釉薬を施釉した成形体に塗布する場合、発熱体組成物を所望の厚さで厚く塗布するのに限界があり、本焼きした成形体に発熱体組成物を塗布する場合、室温で塗布が難しく、本焼きした成形体を60ないし100℃で加熱して、数回反復塗布しなければならない煩わしさがあって、素焼きした成形体の表面に発熱体組成物を塗布することが最も望ましい。
【0084】
一方、発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を塗布する場合には、前記素焼き成形体の表面には起工があって、付着に問題が発生し、また、前記素焼き後に釉薬を施釉した成形体でも、付着に問題が発生するか、不良が発生するので、作業性や不良率の減少のためには、本焼きした成形体の表面に陶磁器用転写紙を塗布することが最も望ましい。
【0085】
また、前記発熱体組成物を含む器物を成形した後、前記発熱体組成物、または前記発熱体組成物を含む陶磁器用転写紙を素焼きされた成形体の表面に塗布した後、または釉薬を施釉した後には、これを乾燥する過程が当然含まれる。
【0086】
また、前記釉薬を施釉する方法において、釉薬をスプレー塗布することがさらに望ましい。
【0087】
以下、実施例、比較例及び製造例を通じて、本発明をより詳しく説明する。下記の実施例は、本発明を説明するための例示的なものであり、これによって本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではない。
【0088】
本発明の実施例及び比較例に使われたフリットを除いた原材料の化学組成を表1に表わした。
【0090】
前記表1の含量は、単位は重量%、前記化学組成に表わしていない残りは、微量組成及び加熱減量が含まれている。素地用原材料のうち、フリットの融点は、1200℃である。
【0091】
〔製造例1:陶磁器用素地の製造〕
前記表1の素地原材料で325meshで残渣1重量%未満である原料は、そのまま混合し、次の表2の重量比でボールミルに原材料及び水を入れ、325meshで残渣1重量%未満、平均粒子サイズが1ないし40μmになるように粉碎しながら混合して、水分含量22ないし23重量%の素地を製造した。
【0093】
〔製造例2:素地組成物を異ならせた陶磁器の製造〕
前記表2の製造例1−1ないし1−8の素地を用いて器物(直径280mm、高さ120mm、底面の厚さ4mm、反り3mmである鍋)を機械ロクロ法で成形した。
【0094】
前記成形体を室温で15時間乾燥させた後、850℃で素焼きをし、葉長石60重量%、フリット13重量%、滑石2重量%、カオリン5重量%、ケイ灰石5重量%及び
脈斑石15重量%からなる釉薬(製造例4−2)を施釉した後、1320℃で20時間本焼きをして、それぞれ製造例2−1ないし2−8の耐熱陶磁器を製造した。
【0095】
〔実験例1:素地による耐熱陶磁器の特性〕
製造例2−1ないし2−8の耐熱陶磁器の成形性、微細亀裂程度、水分吸収率、耐熱性及び熱膨張係数を測定して、表3に表わした。
【0096】
成形性は、器物成形が可能であり、素焼き及び本焼き過程を通じて器物の崩れや変形が発生しなければ、良好(○)、器物成形は可能であるが、素焼き及び本焼き過程で器物の変形が一部発生すれば、普通(△)、器物成形自体が不可能であるか、素焼き及び本焼き過程で器物の崩れが発生すれば、不良(×)と判定した。
【0097】
微細亀裂程度は、肉眼観察を通じて良好(○)、普通(△)、不良(×)と判定した。
【0098】
水分吸収率は、24時間浸漬後、吸収された水分含量の百分率で計算した。
【0099】
耐熱性は、試料をそれぞれ500℃オーブンに入れて1時間保持させた後、4℃水に入れて急冷して、クラックの発生有無を確認した。
【0100】
熱膨張係数は、直径7mm、高さ50mmの円周長形測定用試料をドイツネッチ社の熱膨張係数測定装置(NETZSCH、ドイツ)を用いて40ないし800範囲で熱膨張係数を測定した。
【0102】
製造例1−1ないし1−4の素地は、製造例1−5ないし1−8の素地に比べて成形性に優れ、水分吸収率が5重量%以下であることを確認することができ、製造例1−8に比べて耐熱性に優れ、熱膨張係数が低かった。
【0103】
〔製造例3:発熱体組成物を異ならせた遠赤外線発熱陶磁器の製造〕
前記製造例1−3の素地を用いて器物(直径280mm、高さ120mm、底面の厚さ4mm、反り4mmである鍋)を機械ロクロ法で成形した。
【0104】
前記成形体を室温で15時間乾燥させた後、850℃で素焼きをし(
図1A参照)、表4の製造例3−1ないし3−9の発熱体組成物混合粉末を水にどろどろに希釈して、発熱体組成物基準に50mg/cm
2で内面に塗布した後(
図1B及び
図1C参照)、乾燥させ(
図1D参照)、釉薬(製造例4−2)を施釉した後(
図1E参照)、乾燥させ(
図1F参照)、1320℃で20時間本焼きをして(
図1G参照)、それぞれ製造例3−1ないし3−9の遠赤外線発熱陶磁器を製造した。
【0105】
図1Aないし
図1Gは、製造例3−3の遠赤外線発熱陶磁器の各段階別の写真を示したものであり、
図2Aは、製造例3−7の釉薬を施釉した後に乾燥させたときの写真であり、
図2Bは、製造例3−7の遠赤外線発熱陶磁器完製品の内面の写真であり、
図2Cは、製造例3−8の遠赤外線発熱陶磁器完製品の内面の写真である。
【0106】
製造例3−10の遠赤外線発熱陶磁器は、器物成形と素焼きまでは製造例3−1ないし3−9と同一にした後、素焼き後、成形体に発熱体組成物を成形体の内面ではない外面に表4の製造例3−10の発熱体組成物混合粉末を水にどろどろに希釈して、発熱体組成物基準に50mg/cm
2で内面に塗布した後、乾燥させ(
図3A参照)、釉薬(製造例4−2)を施釉した後、乾燥させ、1320℃で20時間本焼きをして(
図3B参照)、製造例3−10の遠赤外線発熱陶磁器を製造した。
【0107】
製造例3−11の遠赤外線発熱陶磁器は、器物成形と素焼きまでは製造例3−10と同一にした後、素焼き後、成形体に発熱体組成物を塗布せず、直ちに釉薬(製造例4−2)を施釉した後、乾燥させ、1320℃で20時間本焼きをした後、製造例3−10の発熱体組成物粉末60重量%、アクリル樹脂20重量%及びトルエン20重量%を混合して製造した転写層組成物を水溶性セルロース誘導体が離型層で塗布された紙上に発熱体組成物を基準に50mg/cm
2になるように転写層組成物を反復印刷した後、乾燥させて陶磁器用転写紙を製造し、使用前に水に浸漬して紙を除去した後、前記陶磁器用転写紙を前記本焼き成形体の表面に塗布した後(
図4A参照)、900℃で4時間焼成して、製造例3−10の遠赤外線発熱陶磁器を製造した(
図4B参照)。
【0109】
〔実験例2:発熱体組成物による遠赤外線発熱陶磁器の特性〕
製造例1−3の素地に製造例4−2の釉薬を施釉するが、発熱体組成物を施釉していない製造例2−3の耐熱陶磁器と製造例3−1ないし3−11の発熱体組成物を塗布した遠赤外線発熱陶磁器との熱膨張係数、発熱体塗布部位の表面状態、表面温度及び遠赤外線放出量を測定して、表5に表わした。
【0110】
熱膨張係数は、実験例1と同じ方法で測定した。
【0111】
発熱体塗布部位の表面状態は、肉眼観察を通じて釉薬層の剥離が全然ない場合、良好(○)、染みが生じた場合は、普通(△)、釉薬及び発熱体組成物が剥がされて素地が現われた場合を、不良(×)と判定した。
【0112】
遠赤外線放出量は、韓国建設生活環境試験研究院のKCL−FIR−1005方法(FT−IRスペクトロメーターを利用した黒体に比べて、測定結果値)によって発熱体部位表面温度の3ないし20μm波長の遠赤外線放射率を測定して表わした。
【0114】
前記製造例3−7及び3−8の表面温度は、発熱体組成物が剥がされていない部分の表面温度を測定したものである。
【0115】
製造例2−3の耐熱陶磁器は、表面状態が滑らかであったが、電子レンジに3分加熱しても、表面温度がほとんど上昇せず、遠赤外線放出量も微小であった。
【0116】
これに比べて、製造例3−1ないし3−4、製造例3−10及び3−11の遠赤外線発熱陶磁器は、300℃以上に加熱されることはもとより、製造例2−3に比べて遠赤外線放出量が12倍以上著しく増加した。
【0117】
製造例3−5及び3−6は、発熱材料の組成は製造例3−3と同一であるにも結合材料の組成に差があって、表面に染みが表われ、表面温度及び遠赤外線放射量が相対的に製造例3−3に低かった。
【0118】
製造例3−7及び3−8は、製造例3−1ないし3−4とは異なって、
図2B及び
図2Cに示したように、発熱体組成物と釉薬とが素地に融着されず、完全に剥がされる現象が発生し、発熱層が剥がされていない部分は、表面温度は製造例3−3に比べては低いが、製造例3−2と類似したレベルであったが、遠赤外線放出量は、製造例3−2に比べても著しく低かった。
【0119】
製造例3−9は、表面状態で割れることはなかったが、表面温度の上昇や遠赤外線放射率が、製造例3−1ないし3−4の遠赤外線発熱陶磁器に及ぶことができなかった。
【0120】
〔実験例3:発熱体組成物の塗布量による遠赤外線発熱陶磁器の特性〕
製造例3の製造例3−3と同様に遠赤外線発熱陶磁器を製造するが、製造例3−3の発熱体組成物の塗布量をそれぞれ10、30、70及び90mg/cm
2で異ならせて遠赤外線発熱陶磁器を製造して、それぞれの発熱体塗布部位の表面状態及び表面温度を確認して、表6に表わした。
【0122】
発熱体組成物が、塗布量が10mg/cm
2である場合には、同じ加熱時間十分な表面温度の上昇を期待することができなく、発熱体組成物が、塗布量が70mg/cm
2である場合には、表面に染みが発生し始めたが、表面温度は、50mg/cm
2を塗布した製造例3−3に比べて高く、発熱体組成物の塗布量が90mg/cm
2である場合には、釉薬と融着されず、表面が荒れながら割れて完製品として使用が不可能であった
【0123】
〔製造例4:釉薬を異ならせた遠赤外線発熱陶磁器の製造〕
製造例1−3の素地を用いて器物(直径280mm、高さ120mm、底面の厚さ4mm、反り4mmである鍋)を機械ロクロ法で成形した。
【0124】
前記成形体を室温で15時間乾燥させた後、850℃で素焼きをし、製造例3−3の発熱体組成物を50mg/cm
2に塗布した後、乾燥させ、表7の製造例4−1ないし4−6の釉薬で施釉した後、1320℃で20時間本焼きをして、遠赤外線発熱陶磁器を製造した。
【0126】
〔実験例4:釉薬による遠赤外線発熱陶磁器の特性〕
実験例1と同じ方法で遠赤外線発熱陶磁器の微細亀裂程度、水分吸収率及び耐熱性を測定して、表8に表わした。