(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853018
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】なだれを引き起こす装置
(51)【国際特許分類】
F42D 3/00 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
F42D3/00
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-503162(P2013-503162)
(86)(22)【出願日】2011年4月7日
(65)【公表番号】特表2013-524156(P2013-524156A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】FR2011050786
(87)【国際公開番号】WO2011124854
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】10/52682
(32)【優先日】2010年4月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512259053
【氏名又は名称】テクノロジー アルピン デ セキュリテ−タ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】フアリーツイ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ヌーヴィル,ジヤン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】ベルテ−ランボー,フイリツプ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,パスカル
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/080977(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0254449(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第02636729(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 3/00 − 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山腹(1)、例えば、山腹(1)に設けられたコンクリートスラブ上に取り付けるようにされた支持体(4)と、
開放端(19)を有し、支持体(4)に取り付けられるべき包囲体(3)であって、使用時に、前記包囲体(3)の開放端(19)が雪冠に面するようにされた包囲体(3)と、
爆発性ガス混合物を包囲体(3)に充填する充填手段(7)と、
ガス混合物の爆発を誘引するよう構成された点火手段と、
遠隔操作システムと
を備えているなだれを引き起こす装置(2)において、
・包囲体(3)が、ガス混合物を受けるようにされた内面を有し、その内面を支持体(4)の支持部分(12)上に取り付けることによって、取り外し可能に支持体(4)上に設けられ、かつ、前記支持部分(12)が上向きの切頭円錐形上側部分であり、
・包囲体(3)が、エネルギ供給に関して自律的であり、ガス混合物を生成するためのガスを貯蔵する手段(5,6)と、前記点火手段とを備えている
ことを特徴とするなだれを引き起こす装置。
【請求項2】
前記包囲体(3)の内面が、切頭円錐形状であり、
前記支持体(4)が、地面に固定される脚(10)を備え、
前記脚(10)の上端部に、包囲体(3)を支持するための支持部(12)が設けられ、
前記支持部(12)がリング形状基部(13)を有し、該基部(13)から、包囲体(3)の内面と同じテーパーの切頭円錐形上側部分(14)が上方に向けてのびている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持部(12)の前記上側部分(14)が、複数の上向きに収束する支柱(17)を備え、
前記支柱(17)の下端が、前記リング形状基部(13)上に固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持部(12)がスケート又はローラーのような包囲体(3)を案内する手段(18)を備えている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
装置(2)の機能的な機器(5,6,7,9)が包囲体(3)の外面に取り付けられており、
上記機器(5,6,7,9)が、
少なくとも一つの水素シリンダ(5)及び少なくとも一つの酸素シリンダ(6)のようなガス貯蔵手段(5,6)と、
調整弁やソレノイド弁のような包囲体(3)にガスを充填する充填手段(7)と、
マイクロコントローラのような制御手段と、
電池のような電気エネルギー貯蔵機器(9)と、
燃焼手段と
を備え、
機器の周囲に保護シェル(23)が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
機能的な機器(5,6,7,9)が減衰支持手段によって包囲体(3)の外面に固定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
装置(2)が、点火手段及び充填手段を監視して、包囲体(3)が支持体(4)に設置されていない時に、点火手段及び充填手段を動作不能にする電気接点のような安全保障システムを備えている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
装置(2)が、加速度計や地震計のような震動計測システムを備えている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
包囲体(3)が、ヘリコプターのような輸送用乗り物の牽引チェーン(22)を固定する手段を備え、
前記牽引チェーンを固定する手段が、
包囲体(3)の上端に固定される偏平形状リング(21)と、
牽引チェーン(22)の端部に固定されるようにされたキャッチング装置(24)と
を有し、
前記キャッチング装置(24)が、円錐形状包囲体の中央に配置された開放フック(25)を有し、前記円錐形状包囲体の上端(27)に、リング(21)の形状に合致する楕円形状の開口が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記支持部(12)が、支持体(4)の脚部(10)に回動自在に取り付けられている
ことを特徴とする請求項2〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
雪冠に対する包囲体(3)の開口(19)の位置を調整するために、
支持体(4)が、脚部(10)に対する支持部(12)の傾きを調整する手段(16)を備えている
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
支持体(4)に包囲体(3)を設置する間又は支持体(4)から包囲体(3)を取り外す間に、支持体(4)の周囲にヘリコプターを誘導するための参照部材を支持体(4)が備えている
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
太陽電池パネル又は風力タービンのようなエネルギ生成手段によって、エネルギ供給に関しては自律的である
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なだれ及び特に雪なだれを引き起こす装置に関するものである。
【0002】
かかる装置は、雪の堆積が、特に輸送の基幹施設、スキー場、居住地区や鉱山地区の存在に関連して、物や人々を危険にさらすなだれの重大な危険につながり得る場所においてなだれを予防的に引き起こすために用いられる。
【0003】
任意になだれを引き起こす装置及び技術は既に公知である。
【0004】
最初の技術は、なだれを引き起こそうとする特定の場所に作業者が爆発性装薬を設置することにある。この設置は、ヘリコプターから降下させることによるか又は地上から展開することにより行なわれ得、装薬は、適切な場所に堆積され、摺動され或いは投げ込まれ得る。装薬の点火は、両者の場合、一般的には暖燃導火芯によって或いは電気的に行なわれる。
【0005】
この技術に伴う危険は重大である。直接装薬を取扱うことに関連した危険に加えて、直接地上に介在しながら装薬を設置する作業者は、しばしば頂上の雪が安定していない険しい場所に入って行かなければならない。これらの介在はしばしば、油断ならない天候条件の下で地上において装薬を接地するかヘリコプター輸送するかどうかによりさらに行なわれなければならない。
【0006】
発破区域において設置に伴うこれらの危険を軽減するために、遠隔発破技術が用いられてきた。
【0007】
遠隔発破技術は、現場で爆発させるためにロケット発射装置や砲弾発射装置のような軍用武器を使用している。この形式の装置は、準備した装薬の貯蔵を禁止しているフランス国の法律のような幾つかの法律には適していない。
【0008】
商標名CATEXで知られた装置は、一つ又は幾つかのなだれ地帯上に走る爆発生移送ケーブルシステムを用いている。この形式の解決策は、なだれを引き起こす場所における移動に伴う危険を制限できれば、装薬の取扱及び貯蔵に関して如何なる解決にもならない。この装置はさらに、非常に長い距離にわたって輸送ケーブルを支持する鉄塔システムを敷設するのにコストがかかる。装薬の取り扱いに伴う危険を低減するための一方法は、なだれを引き起こすのに用いた衝撃波を発生する爆発性ガスを用いている。
【0009】
この原理によれば、ヘリコプター輸送によって現場に運ばれ得る輸送可能な装置は公知である。これらの装置は先行技術である特許文献1及び特許文献2に記載されており、両文献とも頂上の雪の上で爆薬を爆発させるために複数の爆発性が巣の混合物を使用している。特に特許文献2に記載の装置について記載され得る。この装置は、下向きに開放した拘束包囲体として表わされ、牽引チエ―ンによってヘリコプターから吊り下げられるようにしている。従って、この包囲体は、なだれが引き起こされることになる区域において、頂上の雪の上へヘリコプターによって運ばれる。なだれを引き起こすために、この包囲体には、空気より軽い爆発性ガス混合物が充填される。そしてこのガス混合物は、爆発を生じさせるためにほとんどの場合電気的に点火される。その結果生じる衝撃波は、頂上の雪を揺れ動かし、なだれを引き起こす。これらの装置の主な利点は、前もって装備されていない区域において使用される可能性があり、これが爆薬を取り扱うことなしに行なわれることにある。欠点は、ヘリコプターの使用が不可欠であり、すなわち動作コストが相当かかりしかも悪天候においては実施できないことにある。
【0010】
別の形式の装置は、GAZEXの名称で知られたものである。この形式の装置は、特許文献3に記載されており、コンクリート支持体に閉じた底部を装着し、それの開口を頂部の雪に向けた点火器管を有している。点火器管に酸化ガス及び燃料ガスを充填するガス回路が用いられ、点火器管の点火は、点火器管の背後に有利に装着した点火装置によって行われる。これによって生じる爆発の衝撃波は管の開口を通って頂部の雪に向けられ、それによってなだれを生じさせる。この形式の装置は、隣接した技術室に設けた一シーズン用の十分なガス貯蔵部と、遠隔制御型点火システムとを有し、この遠隔制御型点火システムを用いることにより、その他の利点の中で、作業者の完全な自主性及び完全な安全性が得られ得る。この装置の不変的な設置は、さらに、サイズの大きななだれ区域を保護するために十分な再生可能性及び持続可能性を達成する可能性が得られる。この形式の装置に伴う主要な欠点は、装置自体、隣接した技術的部屋及びそれらを繋ぐ結合ダクトについて相当な土木工学作業を必要とする重設備を構築する必要性、並びにアクセスの困難なかかる設備の現場で保守を行なう必要性がある。
【0011】
特許文献4には、地面に係留した脚部を有し、この脚部に管状支柱が係合し、管状支柱がガス混合容器に供給するガス溜めを支持し、ガス混合物の点火を達成するようにしたなだれを引き起こす装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2007/096524
【特許文献2】WO2009/080977
【特許文献3】FR2636729
【特許文献4】US2006/0254449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、これらの欠点を改善することを目的としている。
【0014】
従って本発明の基礎を成す技術的課題は、GAZEXのような常設設備の特性を備え、設備にコストがあまりかからず、保守点検が容易であり得るなだれを引き起こす装置を提供することから成る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、山腹例えばコンクリート板に取り付けるようにされた支持体及び一端の開放している包囲体を有し、該包囲体が支持体に装着され、包囲体の開放した端部が使用状態の下では頂上の雪に対向するようにされ、さらに、爆発性ガス状混合物を包囲体に充填する手段、混合物の爆発をトリガーするように構成した点火手段及び遠隔通信システムを有し、
包囲体が、ガス状混合物を受けるようにされた下方面を地表面作業され上向きに面した支持体の支持部分に固定することによって支持体に取り外し可能に装着され、また
包囲体が、エネルギー供給に関して自律的であり、この目的のためにガス混合物を形成するようにされるガスを貯蔵する手段及びガス状混合物の点火手段を備えていることを特徴とするなだれを引き起こす装置に関する。
【0016】
エネルギー供給に関して自律的であり、取り外し可能な包囲体が、ガスを貯蔵する手段及び点火手段を備えている、なだれを引き起こす装置を用いることにより、支持体から包囲体を取り外すことで、装置の設置される場所よりアク セスし易い場所に保守点検及び再装填作業を全て移す可能性が得られる。さらに、夏季においては、包囲体は支持体から取り外すことができ、これにより作業現場における視覚的な邪魔を制限することができる。ガスを貯蔵する手段を遠隔の技術的部屋内ではなく包囲体に設けることにより、該装置を設置するためのコストを低減することもできる。
【0017】
本装置は、包囲体の内面が爆発性ガス混合物を受ける包囲体と支持体に包囲体を装着する手段との両方を形成しているので、非常に単純であることが認められるべきである。
【0018】
包囲体及び支持体のそれぞれの構造を考慮することによって、支持体の支持部分に包囲体の内面を単純に嵌合することによって組立てが行われる限りにおいて、組立て及び分解は簡単かつ迅速に行われる。従って、組立て及び分解作業は垂直に対して僅かに傾斜した軸線に沿った簡単な移動に制限され、そして例えばヘリコプターに取り付けた牽引チェーンの端部に包囲体を移すことによって行われ得る。
【0019】
有利には、包囲体の内面は、一般的にはてテーパー形状であり、支持体は、地面におけるアンカー脚部を備え、それの上方端部には、包囲体を支持する支持部分を備え、支持部分はクラウン型の基部を備え、この基部からは包囲体の内壁と同じテーパーでテーパー形の部分が上向きにのびている。
【0020】
支持体に包囲体を取り付けるために、包囲体の内壁と同じテーパーでテーパー形の部分が上向きにのびているクラウン型の基部を備えた支持部分を用いることによって、支持体に包囲体の完全な保持を保証することで包囲体の安定した設置を行うことができる。
【0021】
有利には、支持部分の上方部分は、上向きに集中する幾つかのポストを備え、それらポストの下方端部はクラウン型の基部に固着される。
【0022】
支持部分のテーパー状の部分に対して複数のホストを用いることにより、包囲体の高さの全体又は一部にわたって包囲体の支持を得ると共に軽量構造にすることが可能である。
【0023】
好ましくは、支持部分は、スケート又はローラーのような包囲体の案内手段を備える。
【0024】
スケート又はローラーのような案内手段を用いることにより、支持体に包囲体を設置する際に、この作業中に支持体の近くに作業者が介在するのを避けながら、包囲体を案内することが可能である。
【0025】
有利には、包囲体の外面に装置の機器の機能部片が固着され、機器のこれら部片は、少なくとも一つの水素ボンベ及び少なくとも一つの酸素ボンベのようなガス貯蔵手段、エキスパンダー及びソレノイド弁のような包囲体にガスを充填する充填手段、マイクロコントローラのような制御手段、バッテリーのような電気エネルギーの蓄積機器、及び点火手段、機器の周囲全体に設けられる保護シエルから成っている。
【0026】
装置の取外し可能な包囲体における、例えばガスボンベ、充填手段及び電気エネルギーを蓄える機器の部片のような装置の機器の機能部片のレイアウトにより、装置の設置される場所より容易にアクセスし易い場所で保守点検を実施できる可能性が得られる。
【0027】
好ましくは、機器の機能部片は、緩衝支持体によって包囲体の外面に固着される。
【0028】
包囲体の外側に位置した緩衝支持体に機器の機能部片をこのように設けることにより、ガス回路及び電気回路における爆発の影響を制限できる可能性が得られる。
【0029】
有利には、装置は、包囲体が支持体に装着されていない場合に充填手段を非作動にするために点火手段及び充填手段を監視する電気接点のようなセキュリティシステムを有する。
【0030】
かかるセキュリティシステムは、包囲体がそれの支持体に適切に装着されていない場合に爆発を引き起こす可能性を全て阻止するので、保守点検場所と装置の設置場所との間で包囲体を安全に移送できるようにする。
【0031】
好ましくは、装置は、加速度計や地震計のような振動測定システムを有する。
【0032】
かかる振動測定システムは、装置を使用する際に、爆発の発生をチェックする手段を提供する。
【0033】
有利には、包囲体は、ヘリコプターのような輸送車両の牽引索を固着する手段を備え、牽引索を固着する手段は、片手で包囲体の上方端部に固着する平型のリング及び牽引索の端部に固着するようにされた掴み装置を備え、掴み装置は、円錐状包囲体の中央に位置した開放フックを備え、それの上方端部にはリングの形状に合致した長方形の開口を備えている。
【0034】
牽引索を固着するかかる手段は、その現場で作業者が直接介入することなしに、ヘリコプターのような輸送車両に設けた牽引索に包囲体を固着できる可能性をもたらす。かかる可能性によって、包囲体の重量のため地上の作業者に危険であり得るこの作業を安全にできるようになる。
【0035】
好ましくは、支持部分は支持体の脚部に回動可能に装着される。
【0036】
有利には、支持体は、頂上の雪に対して包囲体の開口の配置を調整するように、脚部に対して支持部分の傾斜を調整する手段を備える。
【0037】
このように支持部分を回動装着することによって、装置を用いてなだれを引き起こす観点において爆発の衝撃波を最良に案内するために、頂上の雪に対して包囲体及び従って包囲体の開口を適切に傾斜させることが可能である。
【0038】
有利には、支持体はその周囲に、支持体における包囲体の取付け又は取外し中に、ヘリコプターを案内するようにされた参照部材を備えている。
【0039】
かかる部材は、ヘリコプターの操縦士が保守点検作業を実施するために包囲体を配置するか又は包囲体をピックアップできるようにし、長い位置測定作業を実施せずに、支持体の位置を測定しそれにより支持体に包囲体を或いは包囲体に固着手段を配置することを可能にする。
【0040】
有利には、装置は、ソーラーパネルや風力タービンのようなエネルギー発生手段によって、エネルギーを供給することについては自律的にされる。
【0041】
ソーラーパネルや風力タービンのようなエネルギー発生手段を用いることによって、電気蓄積手段を再充電する各操作の間にこれら手段の付加的なエネルギー供給が増加できるので、装置における保守点検の介入を制限することができる。
【0042】
本発明は、本発明を限定しない例としてなだれを引き起こす装置の実施形態を示す添付図面を参照して以下の説明から良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】包囲体をそれの支持体に配置している間における山腹に装置を設置している状態を示す斜視図。
【
図2】外側シエルを部分的に外した装置の包囲体の斜視図。
【
図3】包囲体を輸送牽引索に係留するシステムの拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1には、山腹1に、本発明によるなだれを引き起こす装置2を設置するため、包囲体3をそれの支持体4に配置している状態を側面図で示している。かかる装置2は、山腹1に固着するようにされた支持体4に装着した包囲体3を備えている。装置2はさらに、ガスを貯蔵する手段5、6、包囲体に爆発性ガス混合物を充填する手段7、前記混合物を爆発させるようにされた点火手段、包囲体内に配置された遠隔通信システム8、及び電気エネルギー蓄積手段9を有している。
【0045】
支持体はほぼ垂直な脚部10を備え、この脚部10は基部材11によって山腹1に固着される。この基部材11はコンクリート板に取付けられ得る。脚部10の上方端部には、包囲体の支持部分12が設けられ、この支持部分12はクラウン型の基部13を備え、この基部13からテーパー状の部分14が包囲体13の内壁と同じテーパーで上向きにのびている。支持部分12は軸15によって脚部10に回動自在に取り付けられている。脚部10における支持部分12の結合部には、例えばねじアクチュエータ16のような傾きを調整する手段16が設けられている。これらのねじアクチュエータ16の一端は脚部10に結合され、アクチュエータ16の他端は支持部分12の基部13の周囲に結合される。これらのアクチュエータ16は脚部10における支持部分12に対する付加的な支持体を成している。従って支持部分12の傾きは、ねじアクチュエータ16の長さを変えることによって調整され得る。
【0046】
支持部分12のテーパー状の部分14は、上向きに集中した三本のポスト17を備え、ポストの下方端部はクラウン型の基部13に固定されている。これら三本のポスト17には、複数のキャスター18が設けられ、それらの回転軸線は支持部分12のポスト17に垂直でありしかもテーパー状の部分13の円錐形包囲体に接している。従って、支持体4に包囲体3を設置する際には、包囲体3の内壁は低減した摩擦でこれらキャスター18に沿って摺動し得る。
【0047】
支持体には、必要に応じて、支持体4における包囲体3の取付け又は取外し中にヘリコプターを案内するようにされた参照部材が設けられ得る。これらの部材は、ヘリコプターの操縦士が支持体4に接近する際に支持体4の位置測定できるようにしている。支持体4にはまた、ステップボードを設けてもよく、それで必要な場合には作業者は支持体4に対して包囲体3を取付けたり取り外したりする際に包囲体3を掛けたり外したりできる。
【0048】
図2に示すように、包囲体3は一般にテーパー形状の金属包囲体3であり、その包囲体の基部19は開いている。開いた基部19は、包囲体3を支持体4に装着する際に、頂上の雪に向くようにされている。この包囲体3はその外面に、ガス貯蔵手段5、6のような装置の機器の機能部片5、6、7、9及び遠隔通信システムと同じ包囲体内に位置決めされた制御手段8を支持している。また上方部分20には、ヘリコプターのような輸送車両からの牽引索22に対する固着手段21が設けられている。包囲体はさらに、包囲体及び装置の機器の機能部片のまわりに位置決めされた保護シエル23を備えている。
装置の機器の機能部片5、6、7、9は、水素ボンベ5及び酸素ボンベ6のような燃料ガス及び酸化ガス用のガス貯蔵手段5、6、ガス貯蔵手段5、6に接続され、エキスパンダー及びソレノイド弁であり得るガス分配手段7、例えばスパークプラグの圧電システム、火花を発生させる装置や加熱抵抗のような、ガス分配手段7で得られたガス混合物を点火する点火手段、ガス分配手段7及び点火手段を制御するマイクロコントローラのような制御手段、通常移動電話システム又は無線測定システムを用いた長距離遠隔通信システム、安全機器、及び一組のバッテリー9を備えている。機器の機能部片5、6、7、9のこの組立体は、ガス回路及び電気回路における爆発の影響を限定するために包囲体の外側の緩衝支持体に位置決めされている。
【0049】
保護シエル23は、ヘリコプターによる輸送作業に特有の衝撃の危険及び悪天候から機器の機能部片5、6、7、9を保護するために、包囲体3の周囲に位置決めされた機器の機能部片5、6、7、9の組立体のまわりに設けられる。こうするために、保護シエル23は、一般的には卵型でありそして包囲体3を取り囲み、底部の開口は、包囲体3の開放基部19の周囲に保護シエル23を固着するようにされている。上方部分における開口は、固着手段21を通すことのできるように形成されている。保護シエル23の下方部分は、ヘリコプターによる輸送に関する多重衝撃に耐え得る材料、例えば鋼で構成され、また上方部分は複合材料のような比較的軽量の材料で構成される。
【0050】
装置2に設けられた、牽引索22用の固着手段21は、
図3に示すように、一方では包囲体3の上方端部20に固定される平型の細長いリング21及び他方では、牽引索22の端部に固着するようにされるキャッチ装置24を備えている。このキャッチ装置24は、円錐状包囲体26の中心に位置した開放フック25を含み、その上方端部27はリング21の形状に合った長方形の開口を備えている。
【0051】
装置2はまた、装置2の動作を保証し制御するためにセキュリティ及び制御機器を備えている。従って、包囲体3には、支持部分12に接触して包囲体19の開口に位置決めされた電気接点のようなセキュリティシステムが設けられ、包囲体3が支持体4に取付けられていない時には非作動状態となるように点火手段及び充填手段を制御している。装置はさらに、なだれを引き起こす有効性を制御するために、爆発の発生に関する包囲体の振動を測定できる加速度計屋地震計のような振動測定システムを備えている。装置はまた、測候所のような室外条件を測定する手段を備え得る。
【0052】
装置2はまた、エネルギー供給について自律的にさせるバッテリー9のような電気エネルギー蓄積手段9が包囲体3に設けられる。これらの手段は、ソーラーパネルや風力タービンのようなエネルギー発生手段に結合され得る。これらの手段は包囲体の保護シエル23に設けられ得る。
【0053】
支持体4に包囲体3を取付ける作業は、次のようにして行なわれる。包囲体予め充電及び充填される電気蓄積手段9及びガス貯蔵手段5、6は、フックを用いてヘリコプターから牽引索22の端部に取付けられ、それの開閉操作はヘリコプターから好ましくは電気的に制御され、そして包囲体3に固着手段21が位置決めされる。包囲体3は支持体4上に運ばれる。この操作中、操縦士は、包囲体3を支持台4上に正確に位置させるために、支持体4のまわりに設けた参照(基準)部材を用い、包囲体3の開口19を支持部分12のテーパー状の部分14と整列させる。その後、包囲体3は、支持部分12におけるキャスター18の存在によって摩擦を最初に低減して支持部分12上の合致する部分14に沿って降下される。この降下中に、包囲体3は支持部分13の基部13上に置かれる。こうして包囲体3は適位置に設置され、電気制御型フックを開放することによってか又は支持体4に設けたステップボードを用いてフックを開く作業者の介在によって外される。包囲体3は適位置に設置され、セキュリティシステムは、支持体4の支持部分12上に包囲体3を配置することによって解放されて、使用のために準備される。
【0054】
装置2によって予防のためのなだれを引き起こす際には、作業者は設置場所から離れた位置で安全に、遠隔通信システムを用いて装置2を作動するための指令を送る。これらの指令はマイクロコントローラで処理されて、これらの指令に依存して、燃料ガス及び酸化ガスのガスソレノイド弁を予定の時間の間開放する。空気より軽いものであるように選択した一般的に水素及び酸素であるこれらのガスは、包囲体3を充填する。意図した混合物が達成されると、マイクロコントローラは、爆発を引き起こすために点火手段を制御する。爆発の衝撃波は頂上の雪に向かって集中される。こうしてエネルギーは既に不安定な頂上の雪に伝達され、なだれや予防的ななだれを引き起こすことができる。この爆発中、爆発の衝撃波は、包囲体3に上向きの推進力を作用させることで、包囲体3にエネルギーの一部を伝達する。その後、包囲体3は支持部分12のポスト17に接触したまま上方へ変位される。最高高さに到達すると、支持部分12のポスト17に位置したキャスター18であるガイド手段18によって案内された包囲体3は、再び下方へ動き、そして支持部分12の基部13に接触する。包囲体3のこの動きは、振動測定システムによって記録され、そして長距離遠隔通信システムを通して作業者に伝送される。
【0055】
装置の貯蔵手段5、6、蓄積手段9の保守点検又は再装填動作中の操作は次のとおりである。ヘリコプターは、牽引索22及び装置2における牽引索の固着システムの部分を備えて現場の上空へ移動し、包囲体3の上方に位置し、キャッチ装置24の円錐状包囲体26の基部を、包囲体3の上方部分20に設けたリング21に対向させる。牽引索22を降下させて円錐状包囲体26がリング21を包囲するようにし、円錐状包囲体26の縁部でリング21を包囲体26の中心に案内する。円錐状包囲体26の頂部に位置した長方形開口27は、リング21の平型形状によって円錐状包囲体26を回転させ、それによりリング21がこの開口27内に貫通するようにする。円錐状包囲体26のこの回転により、包囲体3に設けられたリング21に対して開放フック25を適当に位置決めすることができる。この状態において、
図3に示すように、フック25はリング21を受けるため開放し、そして再び閉じてリング21を保持する。その後ヘリコプターは、支持体4から包囲体3を外すため包囲体3を持ち上げながら飛び去る。そして包囲体3は必要な保守点検及び再充填作業を実施するために保守点検場所へ輸送される。
【0056】
明らかなように、本発明は、上記で例として説明してきたなだれを引き起こす装置の単一実施形態に限定されるものではなく、例えばテーパー形状以外の形状の包囲体を使用する或いは水素以外の燃料ガスを使用するような代わりの全ての実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0057】
2:なだれを引き起こす装置
3:包囲体
4:支持体
5:ガスを貯蔵する手段
6:ガスを貯蔵する手段
7:充填手段
8:遠隔通信システム
9:電気エネルギー蓄積手段
10:垂直な脚部
11:基部材
12:包囲体の支持部分
13:クラウン型の基部
14:テーパー状の部分
15:軸
16:ねじアクチュエータ
17:ポスト
18:キャスター
19:基部
20:上方部分
21:固着手段
22:牽引索
23:保護シエル
24:キャッチ装置
25:開放フック
26:円錐状包囲体
27:上方端部