(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線の導電材としては、電気抵抗を小さくするという観点から、銀粉末が用いられる。具体的には、上記特許文献1に記載されているように、配線は、エラストマー分のポリマーに銀粉末を分散させた銀ペーストを、スクリーン印刷して形成される。センサの大きさとセンシングエリアとの関係上、配線を配置できるスペースは限られる。このため、一本一本の配線の幅が小さくなるように、銀ペーストを、できるだけ細く(幅を小さくして)印刷せざるを得ない。一方、配線の電気抵抗は小さい方がよい。加えて、配線には、繰り返される伸びや曲げに耐えられる耐久性も要求される。このため、銀ペーストを、できるだけ厚く印刷している。
【0006】
例えば、上記静電容量型センサを、自動車の座席や車椅子のシートセンサとして使用した場合、局所的に大きな荷重が加わりやすい。この場合、センサは大きく変形し、それに追従して配線も伸長される。上述したように、一本の配線の面積は小さい。また、電気抵抗を小さくするために、銀粉末が比較的多量に配合されているため、電極と比較して伸縮性に劣る。このため、局所的に大きな荷重が加わると、伸長により電気抵抗が著しく増加したり、断線するおそれがある。このように、柔軟なセンサにおいては、配線の耐久性向上が課題であるが、印刷法により形成できる厚さには限界がある。また、配線の厚さを大きくするだけでは、電気抵抗の増加や断線を抑制することは難しい。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、伸縮可能で耐久性に優れた配線部を備える柔軟な荷重センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の荷重センサは、荷重を検出する伸縮可能なセンサ部と、該センサ部に接続される配線部と、を備え、該配線部は、伸縮性を有する基材の表面に配置されエラストマーおよび導電性炭素粉末を含む第一導電層と、該第一導電層に積層され、該第一導電層よりも面積が小さく、エラストマーおよび金属粉末を含む第二導電層と、を有することを特徴とする。
【0009】
配線部は、少なくとも第一導電層と第二導電層とが積層された二層構造を有する。第一導電層および第二導電層は、いずれもエラストマーを母材とする。このため、基材と共に伸縮可能である。また、補強効果がある導電性炭素粉末を含む第一導電層を、従来の配線に相当する第二導電層と基材との間に介在させることにより、第二導電層を補強することができる。そして、第一導電層は導電性炭素粉末を含むため、金属粉末を含む第二導電層よりも弾性率が小さい。基材と第二導電層との間に柔軟な第一導電層を介在させることにより、伸縮時に生じる応力を、第一導電層で吸収させて緩和することができる。加えて、第一導電層においては、第二導電層と比較して、伸長された場合の電気抵抗の増加が小さい。このため、伸長時に第二導電層の電気抵抗が増加しても、あるいはクラックが発生して導通が断たれたとしても、接触する第一導電層を通して導通を確保することができる。
【0010】
例えば、面積の大きさが異なる二層を貼着して積層させる場合、面積の小さい小面積層を先に形成すると、その上に積層される面積の大きい大面積層と小面積層の側面との間に隙間が生じやすく、その部分に伸縮時の応力が集中してしまう。この問題については、印刷法で形成することにより、解消される。しかし、印刷法により、小面積層を先に形成した場合、後から印刷される大面積層において、小面積層のエッジに当接する部分の厚さが薄くなってしまう、という問題がある。これでは、積層による充分な補強効果を得ることができない。
【0011】
この点、本発明の配線部によると、基材/第一導電層(面積大)/第二導電層(面積小)の順で積層される。つまり、先に大面積層を形成してから小面積層を形成する。このため、貼着、印刷のいずれの方法で形成しても、上記問題は生じない。したがって、積層による補強効果を充分に発揮させることができる。以上説明したように、本発明によると、配線部の耐久性が向上する。したがって、本発明の荷重センサは、耐久性に優れる。
【0012】
なお、上記特許文献2には、絶縁性基板と、絶縁性基板上に印刷されたカーボン回路と、カーボン回路上に印刷された銀ペースト製の配線回路と、を有する配線板が開示されている。しかし、特許文献2に記載されているのは、プリント配線板や実装回路基板等の配線板である。荷重センサとは異なり、この種の配線板には伸縮性は要求されない。よって、当然ながら、カーボン回路および配線回路にも、伸縮性は必要ではない。カーボン回路は、銀配線のマイグレーションを抑制する役割を果たすものに過ぎない。特許文献2においては、伸びや曲げに対する銀配線の耐久性は、問題にされていない。また、上記特許文献3、4には、カーボンペーストと銀ペーストの二層構造の導電層が開示されている。しかし、いずれの導電層においても、伸縮性は必要ではない。このため、伸びや曲げに対する銀配線の耐久性は、問題にされていない。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記配線部において、前記第二導電層の一部は前記第一導電層に埋入されている構成とする方がよい。
【0014】
本構成によると、第一導電層と第二導電層との接触面積が大きくなり、両者の密着力が大きくなる。これにより、伸縮を繰り返しても、第一導電層と第二導電層とが剥離しにくい。また、第一導電層による第二導電層の補強効果も大きくなる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記第一導電層および前記第二導電層は、各々、印刷法により形成される構成とする方がよい。
【0016】
印刷法によると、長尺、細線、薄膜状の第一導電層および第二導電層を、容易に形成することができる。印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、塗膜厚さの調整が容易であり、寸法精度も高いという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
【0017】
上述したように、第二導電層の面積は、第一導電層の面積よりも小さい。このため、印刷法を採用しても、面積の小さい薄膜の上に面積の大きい薄膜を印刷する場合に、上側の薄膜が薄肉化するという印刷段差の問題は、生じない。
【0018】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記配線部は、前記第一導電層を形成するための第一導電塗料を前記基材の表面に塗布した後、半硬化状態の該第一導電塗料の表面に前記第二導電層を形成するための第二導電塗料を塗布して形成される構成とする方がよい。
【0019】
本構成において、半硬化状態とは、塗布された塗料が完全に硬化する前の状態を意味する。第一導電塗料を完全に硬化させる前に第二導電塗料を塗布すると、第二導電塗料の塗布圧により、第一導電塗料の塗膜表面が凹む。この状態で第一導電塗料および第二導電塗料を硬化させることにより、第二導電層の一部が第一導電層に埋入した上記(2)の構成の配線部を、形成することができる。
【0020】
また、第二導電層の面積は、第一導電層の面積よりも小さい。例えば、本構成と逆の順番で印刷すると、すなわち、小面積の第二導電塗料の上に大面積の第一導電塗料を印刷すると、第一導電塗料に含まれる大量の溶剤が、半硬化状態の第二導電塗料の塗膜表面を覆うことになる。これにより、第二導電塗料の塗膜中のポリマー分や金属粉末が第一導電塗料側に滲んでしまい、金属粉末の分散状態にむらが生じたり、第二導電層の寸法が変化してしまうおそれがある。これに対して、本構成においては、まず、大面積の第一導電塗料を印刷し、その後に小面積の第二導電塗料を印刷する。したがって、第二導電塗料の滲みによる上記問題は生じにくい。すなわち、本構成によると、金属粉末の分散状態が良好な第二導電層を、高い寸法精度で形成することができる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記配線部は、さらに、前記第一導電層および前記第二導電層を被覆する保護層を有する構成とする方がよい。
【0022】
保護層で被覆することにより、第一導電層および第二導電層は、空気に触れにくくなる。これにより、第二導電層の金属粉末が酸化しにくい。よって、長期間使用しても、第二導電層の導電性は、低下しにくい。また、保護層で被覆することにより、配線部と外部との絶縁性を確保することができる。さらに、配線部の補強効果も期待できる。保護層の材質としては、配線部の伸縮性を阻害しないよう、伸縮可能なエラストマーを採用することが望ましい。
【0023】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記配線部は、測定回路に電気的に接続される接続端部を有し、該接続端部は、前記第二導電層を被覆するように前記第一導電層に積層され、樹脂および導電性炭素粉末を含む補強層を有する構成とする方がよい。
【0024】
伸縮する配線部をコネクタ等に接続した場合、配線部の接続端部に応力が集中しやすい。本構成によると、補強効果がある導電性炭素粉末を含む補強層が、接続端部に配置される。これにより、接続端部の強度が大きくなり、配線部の耐久性が向上する。
【0025】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記センサ部は、ポリマー製の誘電層と、該誘電層の表側に配置され、伸縮性を有する表側基材と、該表側基材の該誘電層側の裏面に配置されエラストマーおよび導電性炭素粉末を含む表側電極と、を有する表側シート部材と、該誘電層の裏側に配置され、伸縮性を有する裏側基材と、該裏側基材の該誘電層側の表面に配置されエラストマーおよび導電性炭素粉末を含む裏側電極と、を有する裏側シート部材と、を備え、該誘電層を挟んで対向する該表側電極と該裏側電極との間に形成される検出部の静電容量の変化から荷重を検出可能であり、前記配線部は、該表側基材の裏面に配置され該表側電極に接続される表側配線部と、該裏側基材の表面に配置され該裏側電極に接続される裏側配線部と、からなり、該表側配線部の前記第一導電層は該表側電極と連続して形成され、該裏側配線部の該第一導電層は該裏側電極と連続して形成される構成とする方がよい。
【0026】
本構成の荷重センサは、静電容量型センサであり、表側シート部材に配置される表側電極と、裏側シート部材に配置される裏側電極と、の間の距離(検出部の厚さ)の変化に伴う静電容量の変化から、荷重を検出する。ここで、表側配線部の第一導電層と表側電極とは、いずれも、エラストマーおよび導電性炭素粉末を含む。同様に、裏側配線部の第一導電層と裏側電極とは、いずれも、エラストマーおよび導電性炭素粉末を含む。したがって、第一導電層と、表側電極および裏側電極と、を同じ材料で形成することができる。すなわち、表側電極および裏側電極を各々延長するだけで、容易に第一導電層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の荷重センサの実施の形態について説明する。
【0030】
[静電容量型センサの構成]
まず、本発明の荷重センサの一実施形態である静電容量型センサの構成について説明する。
図1に、本実施形態の静電容量型センサの上面透過図を示す。
図2に、
図1のII−II方向分解断面図を示す。
図3に、
図1の枠III内の拡大図を示す。
図4に、
図3のIV−IV方向断面図を示す。
図5に、
図3のV−V方向断面図を示す。
図1においては、表裏方向(厚さ方向)に積層される部材を透過して示す。
図1、
図3においては、保護層を省略して示す。
【0031】
図1、
図2に示すように、本実施形態の静電容量型センサ1は、誘電層11と、表側シート部材20と、裏側シート部材30と、を備えている。誘電層11は、ウレタンフォーム製であって、長方形のシート状を呈している。誘電層11の厚さは、300μmである。誘電層11は、XY方向(左右および前後方向)に延在している。ウレタンフォームは、本発明における「ポリマー」に含まれる。表側シート部材20と裏側シート部材30とは、誘電層11を挟んで積層されている。静電容量型センサ1において、センサ部10は、誘電層11を挟んで表側シート部材20および裏側シート部材30が積層された領域である。
【0032】
裏側シート部材30は、誘電層11の下側(裏側)に配置されている。裏側シート部材30は、裏側基材31と、裏側電極01Y〜08Yと、裏側配線部01y〜08yと、を有している。裏側基材31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であって、長方形状を呈している。
【0033】
裏側電極01Y〜08Yは、裏側基材31の上面(表面)に、合計8本形成されている。裏側電極01Y〜08Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜08Yは、各々、X方向(左右方向)に延在している。裏側電極01Y〜08Yは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。裏側電極01Y〜08Yは、各々、アクリルゴム、カーボンブラック、カーボンナノチューブを含んでいる。裏側電極01Y〜08Yの各々の左端部上面には、端子部330が配置されている。端子部330は、各々、長方形状を呈している。端子部330の一部は左方に延び、後述する裏側配線部01y〜08yの第二導電層33に接続されている。端子部330は、第二導電層33と同じ導電材料からなり、ウレタンゴムおよび銀粉末を含んでいる。
【0034】
裏側配線部01y〜08yは、裏側基材31の上面に、合計8本形成されている。裏側配線部01y〜08yは、各々、直線状を呈している。裏側配線部01y〜08yは、各々、裏側電極01Y〜08Yの左端部に接続されている。
図3に一部を拡大して、また、
図4に裏側配線部01yの断面図を示すように、裏側配線部01y〜08yは、接続端部300yを除いて、各々、第一導電層32と、第二導電層33と、保護層34と、を有している。
【0035】
第一導電層32は、裏側基材31の上面に配置されている。第一導電層32は、裏側電極01Y〜08Yと同じ導電材料からなり、アクリルゴム、カーボンブラック、カーボンナノチューブを含んでいる。第一導電層32は、裏側電極01Y〜08Yの各々と連続して形成されている。第一導電層32の幅は4mmであり、厚さは10μmである。第一導電層32の上面の表面粗さは、1.98μmである。第一導電層32の未伸長時の体積抵抗率は2.0×10
−1Ω・cmであり、50%伸長時の体積抵抗率は7.0×10
−1Ω・cmである。第一導電層32を形成する導電材料の弾性率は、20MPaである。第一導電層32の上面には、長手方向に延びる凹部320が形成されている。
【0036】
第二導電層33は、第一導電層32の上面に積層されている。第二導電層33の下部は、第一導電層32の凹部320に配置されている。第二導電層33は、ウレタンゴムおよび銀粉末を含んでいる。第二導電層33の幅は1mmであり、第一導電層32の幅よりも小さい。第二導電層33の厚さは50μmである。第二導電層33の体積抵抗率は、6.7×10
−5Ω・cmであり、50%伸長時の体積抵抗率は2.0×10
−3Ω・cmである。第二導電層33を形成する導電材料の弾性率は、100MPaである。第二導電層33は、裏側電極01Y〜08Yの端子部330の各々と連続して形成されている。
【0037】
保護層34は、裏側基材31の上面に、第一導電層32および第二導電層33を被覆するように配置されている。保護層34は、シリコーンゴムからなる。
【0038】
裏側配線部01y〜08yの各々の前端部には、図示しない測定回路に電気的に接続される接続端部300yが配置されている。
図5に裏側配線部01yの断面図を示すように、接続端部300yは、各々、第一導電層32と、第二導電層33と、補強層35と、を有している。補強層35は、第二導電層33を被覆するように第一導電層32の上面に積層されている。第二導電層33は、第一導電層32と補強層35との間に挟装されている。補強層35は、ポリエステル樹脂およびカーボンブラックを含んでいる。
【0039】
表側シート部材20は、誘電層11の上側(表側)に配置されている。表側シート部材20は、表側基材21と、表側電極01X〜08Xと、表側配線部01x〜08xと、を有している。表側基材21は、PET製であって、裏側基材31と同じ長方形状を呈している。
【0040】
表側電極01X〜08Xは、表側基材21の下面(裏面)に、合計8本形成されている。表側電極01X〜08Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜08Xは、各々、Y方向(前後方向)に延在している。表側電極01X〜08Xは、X方向(左右方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。表側電極01X〜08Xは、各々、アクリルゴム、カーボンブラック、カーボンナノチューブを含んでいる。表側電極01X〜08Xの各々の前端部下面には、裏側電極01Y〜08Yと同様に、端子部が配置されている。端子部の一部は前方に延び、後述する表側配線部01x〜08xの第二導電層に接続されている。
【0041】
表側配線部01x〜08xは、表側基材21の下面に、合計8本形成されている。表側配線部01x〜08xは、各々、直線状を呈している。表側配線部01x〜08xは、各々、表側電極01X〜08Xの前端部に接続されている。表側配線部01x〜08xの構成は、裏側配線部01y〜08yの構成と同じである。よって、以下、簡単に説明する。
【0042】
表側配線部01x〜08xは、接続端部200xを除いて、各々、第一導電層と、第二導電層と、保護層と、を有している。第一導電層は、表側基材21の下面に配置されている。第一導電層は、表側電極01X〜08Xと同じ導電材料からなり、表側電極01X〜08Xの各々と連続して形成されている。第一導電層の下面には、長手方向に延びる凹部が形成されている。第二導電層は、第一導電層の下面に積層されている。第二導電層の上部は、第一導電層の凹部に配置されている。第二導電層の幅は、第一導電層の幅よりも小さい。第二導電層は、表側電極01X〜08Xの端子部の各々と連続して形成されている。保護層は、表側基材21の下面に、第一導電層および第二導電層を被覆するように配置されている。
【0043】
表側配線部01x〜08xの各々の左端部には、図示しない測定回路に電気的に接続される接続端部200xが配置されている。接続端部200xは、各々、第一導電層と、第二導電層と、補強層と、を有している。補強層は、第二導電層を被覆するように第一導電層の下面に積層されている。第二導電層は、第一導電層と補強層との間に挟装されている。
【0044】
表側シート部材20および裏側シート部材30の周縁部には、
図1にハッチングで示すように、複数の融着部12が配置されている。複数の融着部12は、誘電層11の周囲を囲うように、点線状に配置されている。表側シート部材20と裏側シート部材30は、融着部12において、接合されている。
【0045】
検出部A0101〜A0808は、表側電極01X〜08Xと、裏側電極01Y〜08Yと、が上下方向から見て交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A0808は、各々、表側電極01X〜08Xの一部と、裏側電極01Y〜08Yの一部と、誘電層11の一部と、を備えている。検出部A0101〜A0808は、合計64個(=8個×8個)配置されている。検出部A0101〜A0808は、誘電層11の略全面に亘って、略等間隔に配置されている。検出部A0101〜A0808を包囲するセンサ部10において、荷重分布が検出される。検出部の符合「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X〜08Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y〜08Yに対応している。
【0046】
[静電容量型センサの製造方法]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の製造方法について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1の製造方法は、シート部材作製工程と、積層工程と、融着工程と、を有している。
【0047】
シート部材作製工程においては、表側基材21に、表側電極01X〜08Xおよび表側配線部01x〜08xを形成して、表側シート部材20を作製する。同様に、裏側基材31に、裏側電極01Y〜08Yおよび裏側配線部01y〜08yを形成して、裏側シート部材30を作製する。
【0048】
まず、次の四種類の塗料を調製する。
(1)表側電極01X〜08X、裏側電極01Y〜08Y、表側配線部01x〜08xおよび裏側配線部01y〜08yの第一導電層、を形成するための第一導電塗料。
(2)表側配線部01x〜08xおよび裏側配線部01y〜08yの第二導電層を形成するための第二導電塗料。
(3)保護層34を形成するための保護層用塗料。
(4)補強層35を形成するための補強層用塗料。
【0049】
次に、調製した四種類の塗料を、適宜、表側基材21の下面(
図1における下面。印刷時には上向きに配置する。)にスクリーン印刷して、加熱硬化させることにより、表側電極01X〜08Xおよび表側配線部01x〜08xを形成する。同様に、調製した四種類の塗料を、適宜、裏側基材31の上面にスクリーン印刷して、加熱硬化させることにより、裏側電極01Y〜08Yおよび裏側配線部01y〜08yを形成する。
【0050】
一例として、
図6に、裏側配線部01yの形成工程を示す。
図6(a)に示すように、裏側基材31の上面に、第一導電塗料321をスクリーン印刷する。その後、形成された第一導電塗料321の塗膜を予備乾燥して、半硬化状態にする。続いて、
図6(b)に示すように、半硬化状態の第一導電塗料321の塗膜の上面に、第二導電塗料331をスクリーン印刷する。この際、第二導電塗料331の塗布圧により、第一導電塗料321の塗膜の上面が押圧され、上面に凹部320が形成される。これにより、第二導電塗料331の塗膜の下部は、第一導電塗料321の塗膜に埋入される。その後、形成された第二導電塗料331の塗膜を予備乾燥して、半硬化状態にする。次に、接続端部300y以外の部分においては、
図6(c)に示すように、半硬化状態の第一導電塗料321の塗膜および第二導電塗料331の塗膜を被覆するように、保護層用塗料341を、裏側基材31の上面にスクリーン印刷する。また、接続端部300yにおいては、
図6(d)に示すように、半硬化状態の第二導電塗料331の塗膜を被覆するように、補強層用塗料351を、第一導電塗料321の塗膜の上面にスクリーン印刷する。そして、形成した塗膜を、加熱により硬化して、裏側配線部01yを形成する。この際、端子部330を含む裏側電極01Yも、同時に形成される。
【0051】
積層工程においては、下から順に、裏側シート部材30、誘電層11、および表側シート部材20を積層する。すなわち、裏側基材31の上面に形成した裏側電極01Y〜08Yと、表側基材21の下面に形成した表側電極01X〜08Xと、の間に誘電層11が介装されるように、裏側シート部材30、誘電層11、および表側シート部材20を積層する。
【0052】
融着工程においては、積層された表側シート部材20および裏側シート部材30の周縁部を、所定の間隔でスポット融着する(
図1の融着部12参照)。このようにして、本実施形態の静電容量型センサ1を製造する。
【0053】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の動きについて説明する。まず、静電容量型センサ1に荷重が加わる前(初期状態)に、表側電極01X〜08X、裏側電極01Y〜08Yに電圧を印加して、検出部A0101〜A0808ごとに、静電容量Cを算出する。すなわち、検出部A0101から検出部A0808までを、あたかも走査するように、静電容量Cを算出する。続いて、静電容量型センサ1に荷重が加わった後も同様に、検出部A0101〜A0808ごとに、静電容量Cを算出する。荷重が加わった部分の検出部においては、表側電極と裏側電極との距離が小さくなる。これにより、当該検出部の静電容量Cは、大きくなる。この静電容量Cの変化量ΔCから、検出部A0101〜A0808ごとの荷重が算出される。
【0054】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、裏側配線部01y〜08yは、各々、第一導電層32と第二導電層33とを有する。同様に、表側配線部01x〜08xも、各々、第一導電層と第二導電層とを有する。裏側配線部01y〜08yと表側配線部01x〜08xとは、構成が同じであるため、同じ作用効果を奏する。よって、ここでは両者を代表して、裏側配線部01y〜08yの作用効果を説明する。
【0055】
第一導電層32および第二導電層33は、いずれもエラストマーを母材とする。このため、裏側基材31と共に伸縮可能である。また、補強効果がある導電性炭素粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブ)を含む第一導電層32を、従来の配線に相当する第二導電層33と裏側基材31との間に介在させることにより、第二導電層33を補強することができる。ここで、第一導電層32の弾性率は、第二導電層33の弾性率よりも小さい。したがって、裏側基材31と第二導電層33との間に、柔軟な第一導電層32を介在させることにより、伸縮時に生じる応力を、第一導電層32で吸収させて緩和することができる。加えて、第一導電層32においては、第二導電層33と比較して、伸長された場合の電気抵抗の増加が小さい。このため、伸長時に第二導電層33の電気抵抗が増加しても、あるいはクラックが発生して導通が断たれたとしても、接触する第一導電層32を通して導通を確保することができる。
【0056】
第一導電層32および第二導電層33は、各々、スクリーン印刷法により形成される。ここで、第二導電層33の面積は、第一導電層32の面積よりも小さい。このため、面積の小さい薄膜の上に面積の大きい薄膜を印刷する場合に、上側の薄膜が薄肉化するという印刷段差の問題は、生じない。したがって、積層による補強効果を充分に発揮させることができる。また、第一導電層32と、裏側電極01Y〜08Yと、は同じ材料から形成される。このため、裏側電極01Y〜08Yを各々延長するだけで、容易に第一導電層32を形成することができる。
【0057】
裏側配線部01y〜08yは、第一導電塗料321を裏側基材31の上面に塗布し、第一導電塗料321を完全に硬化する前に第二導電塗料331を塗布して形成される。これにより、第一導電層32の上面に凹部320が形成され、第二導電層33の下部が凹部320に埋入される。したがって、第一導電層32と第二導電層33との接触面積が大きくなり、両者の密着力が大きくなる。よって、伸縮を繰り返しても、第一導電層32と第二導電層33とが剥離しにくい。また、第一導電層32による第二導電層33の補強効果も大きくなる。また、大面積の第一導電塗料321を印刷し、その後に小面積の第二導電塗料331を印刷する。したがって、第二導電塗料331のポリマー分や銀粉末が、第一導電塗料321側に滲むおそれは小さい。したがって、銀粉末の分散状態が良好な第二導電層33を、高い寸法精度で形成することができる。
【0058】
第一導電層32の上面(第二導電層33が積層される面)の表面粗さは、1.98μmである。当該表面粗さの値は、第一導電層32の厚さの約1/5である。第一導電層32の上面の表面粗さが大きいため、アンカー効果により、第一導電層32と第二導電層33との密着力は大きい。したがって、伸縮を繰り返しても、第一導電層32と第二導電層33とが剥離しにくい。
【0059】
裏側配線部01y〜08yは、接続端部300yを除いて、保護層34を有する。これにより、裏側配線部01y〜08yは、さらに補強される。また、第二導電層33に含まれる銀粉末の酸化が抑制される。よって、長期間使用しても、第二導電層33の導電性は、低下しにくい。また、保護層34は絶縁性を有するため、裏側配線部01y〜08yと外部との絶縁性を確保することができる。一方、裏側配線部01y〜08yの接続端部300yは、補強層35を有する。これにより、接続端部300yの強度が大きくなり、裏側配線部01y〜08yの耐久性がより向上する。
【0060】
このように、静電容量型センサ1においては、表側配線部01x〜08xおよび裏側配線部01y〜08yの耐久性が高い。したがって、静電容量型センサ1は、耐久性に優れる。
【0061】
<その他>
以上、本発明の荷重センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0062】
上記実施形態においては、本発明の荷重センサを静電容量型センサとして具現化した。しかし、本発明の荷重センサのセンサ部は、静電容量を検出する構成に限定されるものではない。例えば、センサ部を、圧力により電気抵抗が変化する感圧導電エラストマー等から構成してもよい。また、静電容量型センサの場合でも、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、表側シート部材、裏側シート部材を備えずに、誘電層の表裏両面に、各々、電極および配線部を配置してもよい。
【0063】
誘電層や保護層としては、エラストマーまたは樹脂を用いればよい。例えば、静電容量を大きくするという観点では、比誘電率が高いものが望ましい。好適なエラストマーとしては、例えばシリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム等が挙げられる。また、好適な樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン(架橋発泡ポリスチレンを含む)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ポリエチレン(PE)および/またはエチレンプロピレンゴム(EPR)により変性したポリプロピレン(変性PP)を用いてもよい。また、これらの樹脂の二種以上を含むポリマーアロイまたはポリマーブレンドを用いてもよい。
【0064】
配線部が形成される基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂フィルム、エラストマーシート、伸縮布等が挙げられる。上記実施形態においては、配線部を、保護層または補強層を含んで構成した。しかし、保護層、補強層は無くてもよい。
【0065】
配線部の第一導電層および第二導電層を構成するエラストマーとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等が好適である。両層のエラストマーは、同じでも異なっていてもよい。
【0066】
第一導電層の導電性炭素粉末としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等が挙げられる。これらの一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。例えば、第一導電層の未伸長時の体積抵抗率は、1×10
1Ω・cm以下であることが望ましい。第一導電層を形成する導電材料の未伸長時の体積抵抗率は、第二導電層を形成する導電材料の未伸長時の体積抵抗率より、大きくてもよい。しかし、第一導電層の未伸長時の体積抵抗率と、第二導電層の未伸長時の体積抵抗率と、の差は5桁以下であることが望ましい。
【0067】
第一導電層の体積抵抗率は、伸長しても増加しにくいことが望ましい。例えば、未伸長時に対する50%伸長時の体積抵抗率の変化が、10倍以下であることが望ましい。また、柔軟性を高めて伸縮しやすくするという観点から、弾性率は50MPa以下であることが望ましい。このような特性を実現するために、導電性炭素粉末の種類および配合量を、適宜調整すればよい。例えば、導電性炭素粉末の配合量は、エラストマーの100質量部に対して、10質量部以上であることが望ましい。一方、導電性炭素粉末の配合量が多くなると柔軟性が低下する。よって、導電性炭素粉末の配合量は、エラストマーの100質量部に対して、100質量部以下であることが望ましい。
【0068】
第一導電層と第二導電層との界面に凹凸があると、両層の密着力が大きくなる。すなわち、導電層の積層面の表面粗さが大きいと、アンカー効果により、伸縮を繰り返しても、導電層が剥離しにくい。また、積層される導電層同士の密着力が大きいと、伸縮時の応力が一方の導電層だけでなく導電層全体に伝達されるため、導電層全体としての耐久性が向上する。アンカー効果による密着性向上効果を得るためには、例えば、第一導電層の表面粗さを、自身の厚さの1/200以上にするとよい。一方、凹凸が大き過ぎると、凹部(層が薄い部分)に応力が集中しやすくなり、クラックが生じるおそれがある。よって、第一導電層の表面粗さを、自身の厚さの2倍以下にするとよい。
【0069】
本明細書においては、第一導電層の表面粗さとして、次の方法により算出された値を採用する。まず、配線部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、第一導電層の界面の基準線を決定する。次に、基準線から突出した山部の面積の総和(S1)と、凹んだ谷部の面積の総和(S2)と、を算出する。そして、次式(1)により、表面粗さを算出する。
表面粗さ=(S1+S2)/基準線の長さ・・・(1)
第二導電層の金属粉末としては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等が挙げられる。これらの一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いればよい。なかでも、銀粉末が好適である。導電性をより高くするという観点から、第二導電層の未伸長時の体積抵抗率は、5×10
−2Ω・cm以下、さらには1×10
−3Ω・cm以下であると好適である。
【0070】
金属粉末の配合量は、所望の体積抵抗率になるように適宜決定すればよい。例えば、エラストマーの100質量部に対して、100質量部以上であることが望ましい。一方、金属粉末の配合量が多くなると柔軟性が低下する。よって、金属粉末の配合量は、エラストマーの100質量部に対して、500質量部以下であることが望ましい。
【実施例】
【0071】
次に、配線部を構成する第一導電層および第二導電層の実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0072】
<第二導電塗料Aの調製>
次のようにして第二導電塗料Aを調製した。まず、ウレタンゴムポリマー(東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)BX1001」)100質量部を、溶剤のブチルカルビトールアセテートに溶解させた。このウレタンゴム溶液に、銀粉末(福田金属箔粉工業(株)製「Ag−XF301」)400質量部を添加して、攪拌した。
【0073】
<第一導電塗料B〜Dの調製>
次のようにして第一導電塗料Bを調製した。まず、アクリルゴムポリマー(日本ゼオン(株)製「ニポール(登録商標)AR42W」)100質量部と、架橋剤のエチレンジアミン0.1質量部と、をロール練り機にて混合し、アクリルゴム組成物を調製した。続いて、調製したアクリルゴム組成物を、ブチルカルビトールアセテートに溶解させて、アクリルゴム溶液を調製した。このアクリルゴム溶液に、カーボンナノチューブ(昭和電工(株)製「VGCF(登録商標)」)20質量部、およびカーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製「ケッチェンブラックEC300JD」)17質量部を添加して、撹拌した。また、カーボンナノチューブおよびカーボンブラックの配合量を変更した以外は、第一導電塗料Bと同様にして、第一導電塗料C、Dを調製した。
【0074】
<導電層の物性および表面粗さの測定>
調製した各導電塗料を基材(離型PETフィルム)にバーコート印刷して、A〜Dの導電層を製造した。そして、各導電層の弾性率、切断時伸び、未伸長時の体積抵抗率、50%伸長時の体積抵抗率、および表面粗さを測定した。測定方法は次の通りである。各導電層の組成、および物性等の測定結果を、下記表1に示す。表1中、原料の配合量の単位は質量部である。
【0075】
[弾性率]
JIS K7127(1999)に準じた引張試験を行って、得られた応力−伸び曲線から弾性率を算出した。試験片にはタイプ2を使用した。
【0076】
[切断時伸び]
JIS K6251(2010)に準じた引張試験を行って、切断時伸び(E
b)を算出した。試験片にはダンベル状5号形を使用し、伸長速度は100mm/minとした。
【0077】
[体積抵抗率]
JIS K6271(2008)の平行端子電極法に準じて、体積抵抗率を測定した。未伸長時の電極間距離は、10mmとした。試験片を支持する絶縁樹脂製支持具には、市販のシリコーンゴムシート(クレハエラストマー(株)製)を用いた。
【0078】
[表面粗さ]
導電層の断面のSEM写真から、上述した式(1)により、表面粗さを算出した。
【表1】
【0079】
<配線部の製造>
基材の上面に、第一導電塗料B〜Dのうちの一つから第一導電層を形成し、その上に第二導電塗料Aから第二導電層を形成して、二層からなる配線部を製造した。基材には、ウレタンエラストマーシートを使用した。第一導電塗料B〜Dのいずれかから形成される第一導電層の大きさは、幅10mm、長さ20mm、厚さ10μmとした。第二導電塗料Aから形成される第二導電層の大きさは、幅2mm、長さ20mm、厚さ25μmとした。実施例1〜3の配線部は、本発明の配線部に含まれる。
【0080】
[実施例1]
次のようにして、基材の上面に第一導電層B/第二導電層Aからなる配線部を製造した。まず、基材の上面に、第一導電塗料Bをスクリーン印刷した。そして、形成された第一導電塗料Bの塗膜を予備乾燥して、半硬化状態にした。次に、半硬化状態の第一導電塗料Bの塗膜の上面に、第二導電塗料Aをスクリーン印刷した。最後に、形成した塗膜を、加熱により硬化して、A、B二層の導電層を形成した。
【0081】
[実施例2]
実施例1における第一導電塗料Bを第一導電塗料Cに変更して、基材の上面に第一導電層C/第二導電層Aからなる配線部を製造した。
【0082】
[実施例3]
実施例1における第一導電塗料Bを第一導電塗料Dに変更して、基材の上面に第一導電層D/第二導電層Aからなる配線部を製造した。
【0083】
[比較例1]
基材の上面に、第一導電塗料Bをスクリーン印刷し、加熱により塗膜を硬化して、第一導電層Bのみからなる配線部を製造した。
【0084】
[比較例2]
基材の上面に、第二導電塗料Aをスクリーン印刷し、加熱により塗膜を硬化して、第二導電層Aのみからなる配線部を製造した。
【0085】
<電気抵抗の測定>
上側の第二導電層の長さ方向両端部に端子を配置して、未伸長時の電気抵抗と、伸縮耐久試験後の50%伸長時の電気抵抗と、を測定した。伸縮耐久試験は、次のようにして行った。まず、配線部が形成された基材の両端部を、一対のジグで挟持した。次に、ジグの一方を固定し、他方を50mm/分の速度で往復動させることにより、配線部を伸縮させた。配線部の伸長率は50%とし、伸縮回数は7000回とした。表2に、測定結果を示す。
【表2】
【0086】
表2に示すように、第一導電層および第二導電層を備える実施例1〜3の配線部においては、初期(未伸長時)の電気抵抗が小さく、かつ、伸縮を7000回繰り返した後の50%伸長時の電気抵抗も、初期の体積抵抗率の10
5倍以下であった。これに対して、第一導電層のみを備える比較例1の配線部においては、伸縮を7000回繰り返した後に50%伸長させても、電気抵抗の増加は小さかった。しかし、比較例1の配線部は、初期の電気抵抗が大きいため、配線には適さない。また、第二導電層のみを備える比較例2の配線部においては、初期の電気抵抗は小さいものの、伸縮を7000回繰り返した後に50%伸長させると、電気抵抗が大幅に増加した。
【0087】
以上より、第一導電層および第二導電層を備える本発明の配線部においては、自然状態における導電性が高く、かつ、伸縮を繰り返しても導電性の低下が小さいことが、確認された。