(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853313
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】ロータリーコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 39/00 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
H01R39/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-27758(P2012-27758)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-152914(P2013-152914A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】511040388
【氏名又は名称】株式会社ヒサワ技研
(72)【発明者】
【氏名】沢田 博史
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−222463(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/012875(WO,A1)
【文献】
特開平10−223346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 39/00
H01R 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が円形である外周部材と、前記外周部材に対して相対的に回転自在であり、前記外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、前記外周部材及び前記軸体間で半径方向に弾性変形しながら遊星運動するよう回転自在に配設されるローラ集電子とを備え、前記ローラ集電子を介して、前記外周部材及び前記軸体を電気的に接続するコネクタにおいて、前記外周部材と前記軸体とローラ集電子で構成される空間に、回転自在に配設される回転スペーサを備え、前記回転スペーサが前記外周部材の内周面または前記軸体の外周面との接触を防止するため、前記回転スペーサの一部を支えて公転軌道を規制する公転軌道溝を備えるガイドプレートを備えることを特徴とするロータリーコネクタ。
【請求項2】
前記回転スペーサは、その一部が前記公転軌道溝に支えられ、前記外周部材の前記内周面または前記軸体の外周面と接触しない大きさで、かつ接触しない位置に設定されることを特徴とする請求項1記載のロータリーコネクタ。
【請求項3】
前記回転スペーサおよび前記ローラ集電子は、前記軸体と前記外周部材と前記ガイドプレートとにより形成される円環状空間に交互にかつ同数配列され、かつ静止状態においては前記ローラ集電子と前記回転スペーサの間に隙間が形成されるよう配設されることを特徴とする請求項1記載のロータリーコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面が円形である外周部材と、外周部材に対して相対的に回転自在であり、外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、外周部材及び軸体間に、半径方向の弾性変形を伴い回転自在に配設されるローラ集電子とを備え、このローラ集電子を介して、外周部材及び軸体を電気的に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相対的に回転する部材同士を電気的に接続し、これらの間で電流を送給するための構造として、ローラ集電子型のロータリーコネクタが考案されている。
【0003】
ローラ集電子が配設されたローラ集電子型ロータリーコネクタでは、外周部材と軸体が相対的に回転運動するとローラ集電子は外周部材と軸体間の円環状空間で自転しながら公転運動を行う、いわゆる遊星運動を行う。複数のローラ集電子が配設されたローラ集電子型ロータリーコネクタを回転させた場合、外周部材と軸体の芯ずれ、ローラ集電子のすべりなどにより、ローラ集電子の間隔が一定に保たれず、ローラ集電子同士が接触することがある。ローラ集電子同士が接触することにより磨耗粉が発生し、接触抵抗の増加、製品寿命が短くなるなどの問題が発生する。
【0004】
このためローラ集電子型ロータリーコネクタではローラ集電子同士の接触を防ぎ、ローラ集電子相互の位置関係を一定の範囲内に収める構造とする必要がある。先行技術ではローラ集電子相互の間に円筒形状のリテーナスペーサを配設することでローラ集電子同士の接触を防ぐ構造となっている。この構造によれば部品点数の少ない簡易な構造でローラ集電子型ロータリーコネクタが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/012875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先行技術ではリテーナスペーサは導電性リングと当接した状態で内側電極と外側電極で構成される円環状空間に配設されており、また上記リテーナスペーサの外径は内側電極の円形外周面と外側電極の円形内周面の間隔と同一か、あるいは僅かに小さい寸法となっている。
【0007】
つまりリテーナスペーサは前後2個の導電性リングに当接した状態であり、外側電極と内側電極が相対的に回転した場合、リテーナスペーサは、この前後2個の導電性リングの自転運動により外側電極側に押し出されるか、または内側電極側に押し込まれることになる。
【0008】
そのためリテーナスペーサは外側電極の円形内周面または内側電極の円形外周面で摩擦されることになる。この摩擦状態は通常の自公転運動の転がり摩擦とは異なり、自転方向が逆向きのため、より激しく摩擦されることになる。あるいはリテーナスペーサが外側電極の円形内周面または内側電極の円形外周面に沿って転動した場合、導電性リングと当接しているリテーナスペーサは、導電性リングと同じ方向に公転運動しているため、リテーナスペーサと導電性リングの当接箇所では相対的に2倍の速さで摺動摩擦することになる。
【0009】
いずれにしても外側電極の内周面、内側電極の外周面または導電性リングの外周面のいずれかで樹脂のリテーナスペーサと激しく摺動摩擦することになり、その結果、通電部に樹脂の磨耗粉が付着することになり、電気抵抗の増加をもたらすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明の一つでは、内周面が円形である外周部材と、前記外周部材に対して相対的に回転自在であり、前記外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、前記外周部材及び前記軸体間で半径方向に弾性変形しながら遊星運動するよう回転自在に配設されるローラ集電子とを備え、前記ローラ集電子を介して、前記外周部材及び前記軸体を電気的に接続するコネクタにおいて、前記外周部材と前記軸体と前記ローラ集電子で構成される空間に球体または円柱状の回転スペーサを配設し、また前記回転スペーサが前記外周部材の内周面または前記
軸体の外周面と接触しないよう、回転スペーサの公転軌道を規制する公転軌道溝を備えたガイドプレートを有する構造とする。
【0012】
更に本発明の他の発明では、前記回転スペーサは、その一部が前記公転軌道溝に支えられ、前記外周部材の前記内周面または前記軸体の外周面と接触しない大きさで、かつ接触しない位置に設定されることを特徴とする。
【0013】
更に本発明の他の発明では、前記回転スペーサおよびローラ集電子は、前記軸体と前記外周部材と前記ガイドプレートとにより形成される円環状空間に交互にかつ同数配列され、かつ前記ローラ集電子と前記回転スペーサの間に隙間を持って配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
外側電極の円形内周面側または内側電極の円形外周面側とスペーサとの接触を防止し、電気抵抗の安定した長寿命のロータリーコネクタを実現できる。さらにローラ集電子または回転スペーサの位置決め調整などの必要がなく、組み立てが簡単で部品点数の少ないロータリーコネクタが実現できる。また、回転スペーサは、その一部が公転軌道溝に支えられ、外周部材内周面または軸体外周面と接触しない大きさ、かつ接触しない位置に設定されるため確実に摩擦接触を低減でき、摩耗分の発生を効果的に抑制できる。さらに、回転スペーサおよびローラ集電子は、軸体と外周部材とガイドプレートとにより形成される円環状空間に交互にかつ同数配列され、かつローラ集電子と回転スペーサの間に隙間を持って配設されているため、ローラ集電子と回転スペーサとの摩擦接触を低減でき、これら両者間での摩耗分の発生を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】 本発明によるロータリーコネクタの回転軸方向の断面図である
【
図2】
図1に記載の線に沿った断面を矢印A−A方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、内周面が円形である外周部材と、前記外周部材に対して相対的に回転自在であり、前記外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、前記外周部材及び前記軸体間で半径方向に弾性変形しながら遊星運動するよう回転自在に配設されるローラ集電子とを備え、前記ローラ集電子を介して、前記外周部材及び前記軸体を電気的に接続するコネクタにおいて、前記外周部材と前記軸体と前記ローラ集電子で構成される空間に球体または円柱状の回転スペーサを配設し、また前記回転スペーサが前記外周部材の内周面または前記内周部材の外周面と接触しないよう、回転スペーサの公転軌道を規制する公転軌道溝を備えたガイドプレートを有する構造としている。
【0017】
そして、ガイドプレートの公転軌道溝の形状は、回転スペーサが球体の場合、この球体の直径に適合する断面R形状とし、公転軌道溝は、回転スペーサが外周部材の内周面または軸体の外周面と接触しない位置に配設される。さらに上記ガイドプレートを外周部材の軸方向両端に外周部材と一体に取り付けることにより、回転スペーサまたはローラ集電子の軸方向の動きを一定の範囲内に規制する。
【0018】
また回転スペーサとローラ集電子は軸体と外周部材の内周面で構成される円環状空間に多少の隙間を持って配設される。また球体の回転スペーサの直径はローラ集電子の回転軸方向の長さより幾分長くなるよう設定する。この回転スペーサの、ローラ集電子の軸方向より幾分長くなった部分が、ガイドプレートの公転軌道溝にはまり込むことにより回転スペーサの公転軌道が規制され、回転スペーサが外周部材の内周面または軸体の外周面と接触するのを防止することができる。
【0019】
また外周部材と内周部材が相対的に回転運動すると、ローラ集電子の公転運動に伴い、回転スペーサは断続的にローラ集電子と接触することになる。この接触に際し回転スペーサはローラ集電子の自転方向に引っぱられて従属的にローラ集電子の自転方向とは逆方向に自転し、またローラ集電子の公転方向と同方向に公転するため、ローラ集電子と回転スペーサとは摺動することなく、ローラ集電子同士の間隔を一定の範囲に収め、ローラ集電子同士の接触を防ぐことができる。
【0020】
この構造によれば、通電部における摩耗粉の発生を低減でき、ローラ集電子または回転スペーサの位置決め調整などの必要がなく、組み立てが簡単で部品点数の少ない長寿命のロータリーコネクタが実現できる。
【0021】
図を参考に実施形態をさらに詳細に説明する。
図1および
図2において、軸体1は、内周面が円形である外周部材2に対し、相対的に回転自在でありかつ前記内周面と同軸となるようベアリング3、ベアリングホルダ8を用いて外周部材2と一体に取り付けられる。また中心に内径部を持つガイドプレート4を外周部材2の軸方向両端に、前記ガイドプレート4の内径部と外周部材2の内周面が同軸になるように取り付ける。
【0022】
ガイドプレート4の内径寸法は、軸体1の外径より大きく、またガイドプレート4は、その内径部と同心円上に球体の回転スペーサ5の公転軌道を規制するため、回転スペーサ5の一部を支える断面R形状の公転軌道溝6を持つ。公転軌道溝6は回転スペーサ5(
図1、2の実施例では球形のスペーサ)の一部が公転軌道溝にはまり込んだ際、外周部材2の内周面または軸体1の外周面と接触しない大きさ、また接触しない位置に設定される。
【0023】
また、ローラ集電子7と球体の回転スペーサ5は、軸体1と外周部材2、さらに外周部材2の軸方向両端に取り付けられる2枚のガイドプレート4で構成される円環状空間に交互にかつ同数となるよう、またローラ集電子7と回転スペーサ5の間に、静止状態においては、多少の隙間を持って配設される。この際ローラ集電子7は半径方向の弾性変形を伴い配設され、回転スペーサ5はガイドプレート4の公転軌道溝6にはまり込んで配設される。
【0024】
組み立て手順はローラ集電子7と回転スペーサ5を交互に、円を描くよう順次配置していくだけであり、ローラ集電子7と回転スペーサ5の円周方向の配置に調整の必要はなく、また軸方向の位置も、ローラ集電子または回転スペーサがガイドプレートに軽く接触するまで押し込むだけでよく、こちらも調整の必要がない。球体の回転スペーサ5の直径はローラ集電子7の軸方向長さより若干長くなるよう設定されその一部を支えるため回転スペーサ5がガイドプレート4の公転軌道溝6にガイドされることになる。
【0025】
また、公転軌道溝6の配置はローラ集電子7の公転軌道直径と一致する必要はなく、ローラ集電子の直径と回転スペーサの直径を確定した場合でもローラ集電子の公転軌道直径より大きい場合と小さい場合に設定できる。回転スペーサの材質は潤滑性のよい樹脂が考えられるが、本発明者の知見ではジュラコン
(登録商標)またはMCナイロン
(登録商標)が適しており、前記2材料よりも潤滑性にすぐれるPTFEではうろこ状の磨耗片が発生することが確認された。
【0026】
この構造によれば、外周部材2と軸体1の相対的な回転運動に伴うローラ集電子7の公転運動により、ローラ集電子7と回転スペーサ5は断続的に接触するが、この接触に際し回転スペーサ5はローラ集電子7の自転方向とは逆方向に自転し(ローラ集電子7の自転に引っぱられて従属的に自転)、またローラ集電子の公転方向と同方向に公転するため、ローラ集電子7と回転スペーサ5は摺接することなく、ローラ集電子7同士が相互に摩擦接触することを防ぐことができる。
【0027】
また、ローラ集電子7との接触により回転スペーサ5は外周部材2の内周面方向または軸体1の外周面方向に力を受けるが、回転スペーサ5の公転軌道はガイドプレート4の公転軌道溝6により規制されており、いずれの部材とも接触することがなく、通電部の磨耗粉の発生、付着を防止できる。
また構造が簡単であり、組み立て調整にも熟練の必要がないロータリーコネクタが実現できる。
【0028】
さらに回転スペーサは円柱または円筒形状としてもよく、その際ガイドプレート4の公転軌道溝6の断面形状は回転スペーサの直径に即した矩形とする。
ただし回転トルクを小さくしたい、高速回転の必要がある、振動環境であるなどの場合は球体の回転スペーサが有効となる。
【0029】
さらに、外周部材、軸体、ローラ集電子により囲まれた空間部が大きい場合、回転スペーサをその空間に複数個設けて、相互の位置関係を安定させるようにしてもよい。その際、個々のローラ集電子と回転スペーサが接触した場合の各部材の自転方向に注意しなければならない。
【符号の説明】
【0031】
1 軸体
2 外周部材
3 ベアリング
4 ガイドプレート
5 回転スペーサ(球体)
6 公転軌道溝
7 ローラ集電子
8 ベアリングホルダ