(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたシステムでは、通信時間を算出する回路やプログラムが新たに必要となる。このため、システムの製造コストが増加してしまう。また、通信時間の微差を検出するのは困難であるため、誤判定が生じることも考え得る。
【0008】
特許文献2に開示されたシステムでは、送信側の出力を制御するための回路やプログラムが新たに必要となる。このため、システムの製造コストが増加してしまう。また、ノイズ等の影響を受けた場合には、出力の変化を正確に検出するのは困難である。
【0009】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、装置の製造コストの増加を抑制しつつ、不正行為によるドアの解錠を精度よく阻止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第
1の観点に係るセキュリティシステムは、
ドアの解錠を行うためのコードを受信して、前記ドアの解錠を行うセキュリティシステムであって、
解除ユニットに記憶された、前記解除ユニットへ送信される出力信号の偏移量を、予め記憶する記憶手段と、前記コードに基づいて搬送波を周波数変調して、偏移幅が前記偏移量と等しい前記出力信号を生成する出力信号生成手段と、前記出力信号を送信する送信手段と、を備え、前記コードを、前記ドアの解錠を行う前記解錠ユニットへ送信する通信装置と、
前記通信装置から送信される出力信号の偏移量を記憶する記憶手段と、
前記通信装置から送信される前記出力信号を受信する受信手段と、
前記出力信号の偏移幅を検出する偏移幅検出手段と、
前記出力信号を復調して前記コードを検出するコード検出手段と、
前記偏移幅検出手段によって検出された前記出力信号の偏移幅と、前記記憶手段に記憶された前記偏移量とを照合する偏移量照合手段と、
前記コード検出手段によって検出された前記コードと、前記記憶手段に記憶された前記コードとを照合するコード照合手段と、
前記偏移量照合手段、及び前記コード照合手段の照合結果が肯定的である場合に、前記ドアを解錠する解錠手段と、
を備える。
【0013】
本発明の第
2の観点に係るセキュリティシステムは、
ドアの解錠を行うためのコードを受信して、前記ドアの解錠を行うセキュリティシステムであって、
解除ユニットに記憶された、前記解除ユニットへ送信される出力信号の第1偏移量と前記第1偏移量とは別の第2偏移量を、予め記憶する記憶手段と、第1コードに基づいて搬送波を周波数変調して、偏移幅が前記第1偏移量と等しい第1出力信号を生成し、前記第1コードとは別の第2コードに基づいて前記搬送波を周波数変調して、偏移幅が前記第2偏移量と等しい第2出力信号を生成する出力信号生成手段と、前記第1出力信号、及び前記第2出力信号を送信する送信手段と、を備え、前記コードを、前記ドアの解錠を行う解錠ユニットへ送信する通信装置と、
前記通信装置から送信される出力信号の第1偏移量及び第2偏移量を、それぞれ記憶する記憶手段と、
前記通信装置から送信される前記第1出力信号、及び前記第2出力信号を受信する受信手段と、
前記第1出力信号、及び前記第2出力信号の偏移幅を検出する偏移幅検出手段と、
前記第1出力信号を復調して前記第1コードを検出し、前記第2出力信号を復調して前記第2コードを検出するコード検出手段と、
前記偏移幅検出手段によって検出された前記第1出力信号の偏移幅と、前記記憶手段に記憶された前記第1偏移量とを照合し、前記偏移幅検出手段によって検出された前記第2出力信号の偏移幅と、前記記憶手段に記憶された前記第2偏移量とを照合する偏移量照合手段と、
前記コード検出手段によって検出された前記第1コードと、前記記憶手段に記憶された前記第1コードとを照合し、前記コード検出手段によって検出された前記第2コードと、前記記憶手段に記憶された前記第2コードとを照合するコード照合手段と、
前記偏移量照合手段、及び前記コード照合手段の照合結果が肯定的である場合に、前記ドアを解錠する解錠手段と、
を備える。
【0014】
本発明の第
3の観点に係る解錠方法は、
車両制御装置が、ドアの解錠を行うためのコードを受信して、前記ドアの解錠を行うための解錠方法であって、
前記コードに基づいて搬送波を周波数変調することにより生成される出力信号の偏移量を予め記憶する工程と、
前記出力信号を受信する工程と、
前記出力信号の偏移幅を検出する工程と、
前記出力信号を復調して前記コードを検出する工程と、
検出された前記出力信号の偏移幅と、予め記憶された前記偏移量とを照合する工程と、
検出された前記コードと、予め記憶された前記コードとを照合する工程と、
前記偏移量の照合結果と前記コードの照合結果とが肯定的である場合に、前記ドアを解錠する工程と、
を含む。
【0015】
本発明の第
4の観点に係るプログラムは、
コンピュータに、
ドアの解錠を行うためのコードに基づいて搬送波を周波数変調することにより生成される出力信号の偏移量を予め記憶する手順と、
前記出力信号の偏移幅を検出する手順と、
前記出力信号を復調して前記コードを検出する手順と、
検出された前記出力信号の偏移幅と、予め記憶された前記偏移量とを照合する手順と、
検出された前記コードと、予め記憶された前記コードとを照合する手順と、
前記偏移量の照合結果と前記コードの照合結果とが肯定的である場合に、前記ドアを解錠する手順と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、識別情報を示す出力信号の偏移幅が予め設定された偏移量と一致する場合に限り、ドアを解錠することが可能となる。このため、出力信号の偏移幅が、予め設定された偏移量と異なる場合には、ドアの解錠を行わないようにすることで、不正行為によるドアの解錠を精度よく阻止することができる。また、出力信号の受信は既存の装置を用いて行うことができる。このため、装置の製造コストの増加を抑制しつつ、不正行為によるドアの解錠を阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係るセキュリティシステム10を概略的に示す図である。セキュリティシステム10は、携帯通信端末20を所持したドライバ91が車両92に接近した場合に、車両92のドアを自動的に解錠するシステムである。
図1に示されるように、セキュリティシステム10は、携帯通信端末20、及び解錠ユニット30を有している。
【0019】
図2は、携帯通信端末20と解錠ユニット30のブロック図である。
図2に示されるように、携帯通信端末20は、送信装置21、携帯制御装置22、及び受信装置23を有している。
【0020】
受信装置23は、車両92に搭載された解錠ユニット30から送信される出力信号を受信する。そして、当該出力信号を復調することにより、出力信号に示される情報を検出する。受信装置23は、検出した情報を携帯制御装置22へ送信する。
【0021】
本実施形態では、解錠ユニット30から出力される出力信号は、携帯通信端末20に対して識別情報の送信を要求するためのコマンド(以下、識別情報送信コマンドという)を示している。したがって、受信装置23によって出力信号が受信されると、受信装置23から解錠ユニット30へ、識別情報送信コマンドが送信される。
【0022】
携帯制御装置22は、携帯通信端末20を統括的に制御するマイクロコンピュータである。
図3は、携帯制御装置22のブロック図である。
図3に示されるように、携帯制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)22a、主記憶部22b、補助記憶部22c、インタフェース22d、及び上記各部を接続するシステムバス22eを有している。
【0023】
CPU22aは、補助記憶部22cに記憶されたプログラムに従って、後述する処理を実行する。
【0024】
主記憶部22bは、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部22bは、CPU22aの作業領域として用いられる。
【0025】
補助記憶部22cは、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部22cは、CPU22aが実行するプログラムが記憶されている。また、車両92のドアを解錠する際に必要な識別情報、及び携帯通信端末20から出力される出力信号の偏移量を示す情報が記憶されている。
【0026】
図4は、識別情報と、当該識別情報に対応する各信号を模式的に示す図である。
図4に示されるように、上述した識別情報は、複数(例えば4つ)のコードC1〜C4から構成されている。各コードC1〜C4は、「0」と「1」との2値を構成要素とする例えば6ビット、8ビット又は16ビットのコードである。なお、このコードC1〜C4のビット数は、任意に決定することができる。
【0027】
また、偏移量とは、識別情報に基づいて搬送波を周波数変調することによって生成される出力信号の最大周波数或いは最小周波数と中心周波数との偏移幅を示す量である。なお、中心周波数は、搬送波の周波数と等価である。この偏移量Dは、例えばコードC1〜C4に対応づけて記憶される。ここでは、次表1に示されるように、コードC1に対応する偏移量がD1、コードC2に対応する偏移量がD2、コードC3に対応する偏移量がD1、コードC4に対応する偏移量がD2である。なお、後述するように、偏移量D1と偏移量D2は異なる値となっている。
【0029】
インタフェース22dは、送信装置21及び受信装置23をシステムバス22eに接続する。
【0030】
上述のように構成された携帯制御装置22では、受信装置23から識別情報送信コマンドが出力されると、CPU22aが、補助記憶部22cから、対応する識別情報を読み出す。そして、読み出した識別情報を示すコード信号を生成し出力する。このコード信号は二値の信号であり、ローレベルが、値が「0」である識別情報の構成要素に対応し、ハイレベルが、値が「1」である識別情報の構成要素に対応している。
【0031】
また、CPU22aは、補助記憶部22cから、偏移量Dn(n=1又は2)を読み出す。そして、出力信号の偏移幅を規定するための偏移量切替信号を生成する。この偏移量切替信号は、二値の信号であり、ローレベルが、偏移量D1に対応し、ハイレベルが、偏移量D2に対応している。
【0032】
CPU22aは、コード信号及び偏移量切替信号を生成すると、これらの信号をインタフェース22dを介して、送信装置21へ出力する。
【0033】
送信装置21は、携帯制御装置22から出力されたコード信号及び偏移量切替信号に基づいて、搬送波を周波数変調して出力信号を生成する。送信装置21からの出力信号は、ドアを解錠するため識別情報に基づいて搬送波が周波数変調されることによって生成されるFSK(Frequency Shift Keying)信号である。以下、この信号をFSK信号という。
【0034】
図4に示されるように、FSK信号は、偏移量切替信号がローレベルのときには偏移幅がD1の信号となる。この信号は、
図5に示されるように、中心周波数がfcとなり、パワースペクトラムが周波数f1−と周波数f1+に現れる信号である。したがって、中心周波数fcと周波数f1−との差の絶対値、及び中心周波数fcと周波数f1+との差の絶対値は偏移量D1と等しい。
【0035】
そして、FSK信号は、偏移量切替信号がハイレベルのときには偏移幅がD2(>D1)の信号となる。この信号は、
図6に示されるように、中心周波数がfcとなり、パワースペクトラムが周波数f2−と周波数f2+に現れる信号である。中心周波数fcと周波数f2−との差の絶対値、及中心周波数fcとび周波数f2+との差の絶対値は偏移量D2と等しい。
【0036】
送信装置21は、上述のように偏移量切替信号のレベルの変化に同期して偏移幅が変化するFSK信号を生成し出力する。
【0037】
図2に戻り、解錠ユニット30は、受信装置31、車両制御装置32、送信装置33,ドアロック装置34を有している。
【0038】
受信装置31は、車両92のドアハンドルに設けられた不図示のアンテナを有している。受信装置31は、
図1を参照するとわかるように、当該アンテナを中心とする半径が概ね1m程度の円Cに囲まれる領域に、携帯通信端末20を所持するドライバ91が位置しているときに、携帯通信端末20から送信されるFSK信号を受信する。
【0039】
受信装置31は、FSK信号を受信すると、当該FSK信号の偏移幅(偏移量)を検出する。具体的には、受信装置31は、まず受信したFSK信号に基づいて、大きさが振幅に相当し、角度が位相に相当するベクトルを算出する。
図7には、複素座標と、FSK信号から算出されるベクトルA1〜A4とが示されている。一組のベクトルA1,A2は、偏移量がD1のFSK信号から求められるベクトルである。また、一組のベクトルA3,A4は、偏移量がD2のFSK信号から求められるベクトルである。本実施形態では、コード信号が矩形波であるため、偏移量ごとに2本のベクトルが算出される。
【0040】
受信装置31によって受信されたFSK信号の偏移幅Swnは、次式(1)によって求めることができる。なお、nは1又は2である。また、f1
1は、ベクトルA1の角度であり、f1
2は、ベクトルA2の角度である。そして、f2
1は、ベクトルA3の角度であり、f2
2は、ベクトルA4の角度である。なお、ベクトルの角度とは、実軸Reとの角度をいうものとする。
【0041】
Swn=(fn
1−fn
2)/2 …(1)
【0042】
そこで、受信装置31は、ベクトルA1,A2それぞれの角度、或いはベクトルA3,A4それぞれの角度に基づいて、FSK信号の偏移幅を検出する。そして、検出した偏移幅を示す偏移幅検出信号(偏移量検出信号)を生成する。
図4に示されるように、この偏移幅検出信号の値は、FSK信号の偏移幅に応じたレベルに変化する。具体的には、偏移幅検出信号の値は、検出したFSK信号の偏移幅がD1のときにローレベルとなる。また、検出したFSK信号の偏移幅がD2のときにハイレベルとなる。受信装置31は、生成した偏移幅検出信号を車両制御装置32へ出力する。
【0043】
また、受信装置31は、FSK信号を復調することにより、FSK信号に示される識別情報を検出する。そして、識別情報を示すコード検出信号を生成する。このコード検出信号は、
図4に示されるコード信号と等価な信号となる。受信装置31は、識別情報を示すコード検出信号を生成すると、このコード検出信号を偏移幅検出信号と同期させて、車両制御装置32へ出力する。これにより、車両制御装置32へ、偏移幅検出信号とコード検出信号の双方が出力される。
【0044】
図8は、車両制御装置32のブロック図である。
図8に示されるように、車両制御装置32は、携帯制御装置22と同様に、CPU32a、主記憶部32b、補助記憶部32c、インタフェース32d、及び上記各部を接続するシステムバス32eを有している。
【0045】
CPU32aは、補助記憶部32cに記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。
【0046】
主記憶部32bは、RAM等を有している。主記憶部22bは、CPU22aの作業領域として用いられる。
【0047】
補助記憶部32cは、ROM、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部32cは、CPU32aが実行するプログラムが記憶されている。また、補助記憶部32cには、携帯制御装置22の補助記憶部22cと同様に、車両92のドアを解錠する際に必要な識別情報、及び携帯通信端末20から出力される出力信号の偏移量Dを示す情報が記憶されている。この識別情報は、コードC1〜C4からなる。そして、偏移量を示す情報は、上記表1に示されるように、各コードに対応づけされた状態で記憶される。
【0048】
インタフェース32dは、受信装置31、送信装置33、及びドアロック装置34をシステムバス32eに接続する。
【0049】
上述のように構成された車両制御装置32は、送信装置33に対して、識別情報の送信を促すための出力信号の送信を指示する。
【0050】
また、車両制御装置32は、受信装置31から出力された偏移幅検出信号及びコード検出信号を受信すると、コード検出信号からコードC1〜C4を順次検出する。同時に、FSK信号の偏移幅を示す偏移幅検出信号から、コードC1〜C2を検出したときのFSK信号の偏移幅を求める。
【0051】
次に、車両制御装置32は、受信したFSK信号の偏移幅と、偏移量D1とを比較する。そして、FSK信号の偏移幅と偏移量D1との差の絶対値が閾値以下である場合に、FSK信号の偏移幅が偏移量D1と等しいと判断する。また、FSK信号の偏移幅と偏移量D2との差の絶対値が閾値以下である場合に、FSK信号の偏移幅が偏移量D2と等しいと判断する。そして、コードC1を検出したときの偏移幅が偏移量D1に等しく、コードC2を検出したときの偏移幅が偏移量D2に等しく、コードC3を検出したときの偏移幅が偏移量D1に等しく、コードC4を検出したときの偏移幅が偏移量D2に等しい場合に、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報との照合を行う。
【0052】
そして、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致した場合に、ドアロック装置34に、ドアの解錠指令を通知する。
【0053】
送信装置33は、車両制御装置32から、出力信号の送信を指示されると、識別情報送信コマンドを示す出力信号を出力する。この出力信号は、
図1を参照するとわかるように、円Cに囲まれる領域に携帯通信端末20が位置する場合に限り、当該携帯通信端末20によって受信される。
【0054】
ドアロック装置34は、車両制御装置32から、ドアの解錠指令が通知されると、車両92のドアを解錠する。
【0055】
図9は、携帯通信端末20と解錠ユニット30との通信を模式的に示す図である。
図9に示されるように、上述のように構成されたセキュリティシステム10では、識別情報送信コマンドを示す出力信号CMが、解錠ユニット30から出力され、携帯通信端末20によって受信されると、携帯通信端末20から識別情報を構成するコードC1が出力される。次に、携帯通信端末20から出力されたコードC1が、解錠ユニット30に受信されると、解錠ユニット30から、コマンドを受信したことを意味する出力信号ANSが出力される。次に、この出力信号ANSが、携帯通信端末20によって受信されると、携帯通信端末20からコードC2が出力される。以降、上述の動作が繰り返されることで、コードC3,C4が携帯通信端末20から出力され、解錠ユニット30に受信される。
【0056】
以下、
図10を参照しつつ、セキュリティシステム10の解錠動作について説明する。
図10は、車両制御装置32、及び携帯制御装置22によって実行される一連の処理を示すフローチャートである。車両制御装置32は、例えば、車両92のドアが施錠されると、識別情報送信コマンドを送信する(ステップS301)。識別情報送信コマンドの送信は、当該コマンドを示す出力信号CMを出力することにより行う。
【0057】
一方、携帯制御装置22は、カウンタ値nを初期化する(ステップS201)。これにより、カウンタ値nは、0に初期化される。携帯制御装置22は、識別情報送信コマンドを受信すると(ステップS202:Yes)、カウンタ値nをインクリメントする(ステップS203)。そして、コードCnを送信する(ステップS204)。なお、ここでは、カウンタ値nが1であるため、コードC1が送信される。
【0058】
車両制御装置32は、コードCnを受信すると(ステップS302:Yes)、コードCnを示すFSK信号の偏移幅が、予め記憶された偏移量と一致するか否かを判断する(ステップS303)。
図5を参照するとわかるように、コードC1は、本来偏移幅がD1のFSK信号として受信される。そこで、車両制御装置32は、受信したFSK信号の偏移幅を検出する。そして、検出した偏移幅を、予め記憶された偏移量D1と比較する。車両制御装置32は、偏移幅と偏移量D1との差の絶対値が閾値以下である場合には、偏移幅と偏移量D1が一致したと判断し(ステップS303:Yes)、送信装置33を介して、コードCnの受信を通知する(ステップS304)。この受信の通知は、送信装置33が、出力信号ANSを出力することにより行われる。
【0059】
携帯制御装置22は、送信装置33から出力された出力信号ANSを受信すると(ステップS205:Yes)ステップS202へ戻り、以降ステップS202〜S205の処理を繰り返し実行する。これにより、順次コードC2,C3,C4が出力される。一方、携帯制御装置は、出力信号ANSを受信できないときは(ステップS205:No)、ステップS201へ戻り、ステップS201〜S205の処理を繰り返し実行する。
【0060】
また、車両制御装置32は、識別情報送信コマンドを送信してから、所定時間内にコードCnを受信できなかった場合(ステップS302:No)、或いは、偏移幅と偏移量D1との差の絶対値が閾値より大きく、偏移幅と偏移量D1が一致しないと判断した場合(ステップS303:No)は、ステップS301へ戻り、ステップS301〜S303の処理を繰り返し実行する。これにより、解錠ユニット30からは、識別情報送信コマンドが定期的に送信される。
【0061】
車両制御装置32は、識別情報を構成するすべてのコードC1〜C4の受信が終わっていない場合には(ステップS305:No)、ステップS302へ戻り、以降ステップS302〜S305の処理を繰り返し実行する。これにより、携帯制御装置22から順次コードC2,C3,C4が出力され受信される。そして、コードCnが受信される毎に、コードCnを示すFSK信号から検出された偏移幅と、予め記憶された偏移量が比較される。
【0062】
一方、車両制御装置32は、識別情報を構成するすべてのコードC1〜C4を受信すると(ステップS305:Yes)、コードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報との照合を行う(ステップS306)。そして、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致した場合に(ステップS306:Yes)、ドアロック装置34に、ドアの解錠指令を通知する(ステップS307)。これにより、ドアロック装置34によって、車両92のドアが解錠される。
【0063】
また、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致しない場合には(ステップS306:No)、ステップS301に戻り、ステップS301以降の処理を繰り返し実行する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、車両のドアを解錠するために必要な識別情報が受信されるごとに、識別情報を示すFSK信号の偏移幅が、予め設定された偏移量と一致するか否かが判断される(ステップS303)。そして、この判断が肯定的である場合に限り、ドアロック装置34へ解錠指令が出力され、車両92のドアが解錠される。
【0065】
このため、犯罪行為によって、FSK信号を中継する中継器が用いられたとしても、中継器から出力されるFSK信号の偏移幅が、予め設定された偏移量と異なる場合には、ドアが誤って解錠されることがなくなる。これにより、不正行為によるドアの解錠を精度よく阻止することができ、犯罪行為を未然に防止することができる。
【0066】
また、偏移幅の検出は既存の受信装置を用いて行うことができる。このため、システムの製造コストの上昇を抑制することができる。
【0067】
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態に係るセキュリティシステム10では、コードを送信するごとに、FSK信号の偏移幅を変更したが、第2の実施形態に係るセキュリティシステム10では、コードを送信するごとに、FSK信号の中心周波数を変更する。
【0068】
以下、本実施形態に係るセキュリティシステム10について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0069】
本実施形態では、携帯制御装置22の補助記憶部22cには、コードCに対応する中心周波数に関する情報が記憶されている。次表2に示されるように、コードC1には中心周波数fc1が対応し、コードC2には中心周波数fc2が対応し、コードC3には中心周波数fc1が対応し、コードC4には中心周波数fc2が対応している。なお、後述するように、中心周波数fc1と中心周波数fc2は異なる値となっている。
【0071】
CPU22aは、補助記憶部22cから、中心周波数fcnを読み出す。そして、
図11に示されるように、出力信号の中心周波数を規定するための中心周波数切替信号を生成する。この中心周波数切替信号は、二値の信号であり、ローレベルが、中心周波数fc1に対応し、ハイレベルが、中心周波数fc2に対応している。
【0072】
CPU22aは、インタフェース22dを介して、生成した中心周波数切替信号を、コード信号とともに、送信装置21へ出力する。
【0073】
携帯通信端末の送信装置21は、携帯制御装置22から出力されたコード信号及び中心周波数切替信号に基づいて、搬送波を周波数変調してFSK信号を生成する。
図11に示されるように、FSK信号は、中心周波数切替信号がローレベルのときには中心周波数がfc1の信号となる。この信号は、
図12に示されるように、中心周波数がfc1となり、パワースペクトラムが周波数f1−と周波数f1+に現れる信号である。
【0074】
そして、FSK信号は、中心周波数切替信号がハイレベルのときには中心周波数がfc2(>fc1)の信号となる。この信号は、
図13に示されるように、中心周波数がfc2となり、パワースペクトラムが周波数f2−と周波数f2+に現れる信号である。なお、
図12,13に示されるように、FSK信号の偏移幅はD1と一定である。
【0075】
送信装置21は、上述のように中心周波数切替信号のレベルの変化に同期して、中心周波数が変化するFSK信号を生成し出力する。
【0076】
解錠ユニット30の受信装置31は、FSK信号を受信すると、当該FSK信号の中心周波数を検出する。具体的には、受信装置31は、まず受信した出力信号に基づいて、大きさが振幅に相当し角度が位相に相当するベクトルを算出する。
図14には、複素座標と、FSK信号から算出されるベクトルA1,A2とが示されている。また、
図15には、複素座標と、FSK信号から算出されるベクトルA3,A4とが示されている。一組のベクトルA1,A2は、中心周波数がfc1のFSK信号から求められるベクトルである。また、一組のベクトルA3,A4は、中心周波数がfc2のFSK信号から求められるベクトルである。本実施形態では、コード信号が矩形波であるため、中心周波数ごとに2本のベクトルが算出される。
【0077】
受信装置31によって受信されたFSK信号の中心周波数fcnは、次式(2)によって求めることができる。nは1又は2である。また、f1
1は、ベクトルA1の角度であり、f1
2は、ベクトルA2の角度である。そして、f2
1は、ベクトルA3の角度であり、f2
2は、ベクトルA4の角度である。
【0078】
fcn=(fn
1+fn
2)/2 …(2)
【0079】
そこで、受信装置31は、ベクトルA1,A2それぞれの角度、或いはベクトルA3,A4それぞれの角度に基づいて、FSK信号の中心周波数を検出する。そして、検出した中心周波数を示す中心周波数検出信号を生成する。
図11に示されるように、この中心周波数検出信号の値は、FSK信号の中心周波数に応じたレベルに変化する。具体的には、中心周波数検出信号の値は、検出したFSK信号の中心周波数がfc1のときにローレベルとなる。また、検出したFSK信号の中心周波数がfc2のときにハイレベルとなる。受信装置31は、生成した中心周波数検出信号を、コード信号と等価なコード検出信号とともに、車両制御装置32へ出力する。
【0080】
車両制御装置32は、受信装置31から出力された中心周波数検出信号及びコード検出信号を受信すると、コード検出信号からコードC1〜C4を順次検出する。同時に、FSK信号の中心周波数を示す中心周波数検出信号から、コードC1〜C2を検出したときのFSK信号の中心周波数を求める。
【0081】
次に、車両制御装置32は、受信したFSK信号から検出された中心周波数と、予め記憶された中心周波数fc1とを比較する。そして、検出された中心周波数の値とfc1との差の絶対値が閾値以下である場合に、受信したFSK信号の中心周波数がfc1であると判断する。また、検出された中心周波数の値とfc2との差の絶対値が閾値以下である場合に、受信したFSK信号の中心周波数がfc2であると判断する。そしてコードC1を検出したときの中心周波数がfc1であり、コードC2を検出したときの中心周波数がfc2であり、コードC3を検出したときの中心周波数がfc1であり、コードC4を検出したときの中心周波数がfc2である場合に、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報との照合を行う。
【0082】
そして、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致した場合に、ドアロック装置34に、ドアの解錠指令を通知する。
【0083】
次に、
図16に示されるフローチャートを参照しつつ、セキュリティシステム10の解錠動作について説明する。このフローチャートは、ステップS302に続くステップS403の処理以外の処理は、
図10におけるフローチャートにおける処理と等しい。
【0084】
車両制御装置32は、例えば、車両92のドアが施錠されると、識別情報送信コマンドを送信する(ステップS301)。識別情報送信コマンドの送信は、当該コマンドを示す出力信号CMを出力することにより行う。
【0085】
一方、携帯制御装置22は、カウンタ値nを初期化する(ステップS201)。これにより、カウンタ値nは、0に初期化される。携帯制御装置22は、識別情報送信コマンドを受信すると(ステップS202:Yes)、カウンタ値nをインクリメントする(ステップS203)。そして、コードCnを送信する(ステップS204)。なお、ここでは、コードC1が送信される。
【0086】
車両制御装置32は、コードCnを受信すると(ステップS302:Yes)、コードCnを示すFSK信号の中心周波数が、予め記憶された周波数と一致するか否かを判断する(ステップS403)。
図12を参照するとわかるように、コードC1は、本来中心周波数がfc1のFSK信号として受信される。そこで、車両制御装置32は、受信したFSK信号の中心周波数を検出する。そして、検出した中心周波数を、予め記憶された中心周波数fc1と比較する。車両制御装置32は、検出した中心周波数と、予め記憶された中心周波数fc1との差の絶対値が閾値以下である場合には、検出した中心周波数と記憶された中心周波数fc1が一致したと判断し(ステップS403:Yes)、送信装置33を介して、コードCnの受信を通知する(ステップS304)。この受信の通知は、送信装置33が、出力信号ANSを出力することにより行われる。
【0087】
携帯制御装置22は、送信装置33から出力された出力信号ANSを受信すると(ステップS205:Yes)ステップS202へ戻り、以降ステップS202〜S205の処理を繰り返し実行する。これにより、順次コードC2,C3,C4が出力される。一方、携帯制御装置は、出力信号ANSを受信できないときは(ステップS205:No)、ステップS201へ戻り、ステップS201〜S205の処理を繰り返し実行する。
【0088】
また、車両制御装置32は、識別情報送信コマンドを送信してから、所定時間内にコードCnを受信できなかった場合(ステップS302:No)、或いは、検出した中心周波数と、予め記憶された中心周波数fc1とが一致しないと判断した場合(ステップS403:No)は、ステップS301へ戻り、ステップS301,S302,S403の処理を繰り返し実行する。これにより、解錠ユニット30からは、識別情報送信コマンドが定期的に送信される。
【0089】
車両制御装置32は、識別情報を構成するすべてのコードC1〜C4の受信が終わっていない場合には(ステップS305:No)、ステップS302へ戻り、以降ステップS302〜S305,S403の処理を繰り返し実行する。これにより、携帯制御装置22から順次コードC2,C3,C4が出力され受信される。そして、コードCnが受信される毎に、コードCnを示すFSK信号から検出された中心周波数と、予め記憶された中心周波数が比較される。
【0090】
一方、車両制御装置32は、識別情報を構成するすべてのコードC1〜C4を受信すると(ステップS305:Yes)、コードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報との照合を行う(ステップS306)。そして、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致した場合に(ステップS306:Yes)、ドアロック装置34に、ドアの解錠指令を通知する(ステップS307)。これにより、ドアロック装置34によって、車両92のドアが解錠される。
【0091】
また、車両制御装置32は、受信したコードC1〜C4からなる識別情報と、予め記憶された識別情報とが一致しない場合には(ステップS306:No)、ステップS301に戻り、ステップS301以降の処理を繰り返し実行する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、車両のドアを解錠するために必要な識別情報が受信されるごとに、識別情報を示すFSK信号の中心周波数が、予め記憶された中心周波数と一致するか否かが判断される(ステップS403)。そして、この判断が肯定的である場合に限り、ドアロック装置34へ解錠指令が出力され、車両92のドアが解錠される。
【0093】
このため、犯罪行為によって、FSK信号を中継する中継器が用いられたとしても、中継器から出力されるFSK信号の中心周波数が、予め記憶された中心周波数と異なる場合には、ドアが誤って解錠されることがなくなる。これにより、不正行為によるドアの解錠を精度よく阻止することができ、犯罪行為を未然に防止することができる。
【0094】
また、中心周波数の検出は既存の受信装置を用いて行うことができる。このため、システムの製造コストの上昇を抑制することができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、識別情報が4つのコードC1〜C4から構成されている場合について説明した。これに限らず、識別情報は5つ以上のコードから構成されていてもよい。また、識別情報は、2つ或いは3つのコードから構成されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、識別情報が複数のコードから構成されている場合について説明した。これに限らず、識別コードは、1つのコードであってもよい。この場合にも、コードが不正に読み取られたとしても、FSK信号の偏移幅が本来の偏移幅ではない場合や、中心周波数が本来の周波数ではない場合には、誤ってドアが解錠されることがない。これにより、犯罪行為を未然に防止することが可能となる。
【0097】
上記実施形態では、1つのコードを、偏移幅或いは中心周波数が等しいFSK信号として送信した。これに限らず、例えば、
図17に示されるように、コードが、トレーニング、ID、識別情報等を示す部分コードに分かれている場合には、各部分コードごとに、FSK信号の偏移幅、或いは中心周波数を変えて、コードを送信することとしてもよい。
【0098】
上記実施形態では、FSK信号の偏移幅が、2つの偏移量D1,D2になるように、FSK信号の偏移幅を変化させた。これに限らず、FSK信号の偏移幅が、3つ以上の偏移量になるように、FSK信号の偏移幅を変化させてもよい。
【0099】
上記実施形態では、FSK信号の中心周波数が、2つの中心周波数fc1,fc2になるように、FSK信号の中心周波数を変化させた。これに限らず、FSK信号の中心周波数が、3つ以上の中心周波数になるように、FSK信号の中心周波数を変化させてもよい。
【0100】
上記実施形態に係る携帯通信端末20としては、スマートキー、スマートホン、wi−fiを利用することが可能な通信装置等が考えられる。
【0101】
上記実施形態に係る遠隔操作装置の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
【0102】
上記実施形態において携帯通信端末20及び解錠ユニット30の補助記憶部に記憶されているプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することとしてもよい。
【0103】
また、プログラムは、全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報を通信ネットワークを介して送受信しながら、上述の処理を実行することとしてもよい。
【0104】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。