特許第5853772号(P5853772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

特許5853772α,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853772
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】α,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/087 20060101AFI20160120BHJP
   C07C 25/02 20060101ALI20160120BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C07C17/087
   C07C25/02
   C07C22/08
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-45361(P2012-45361)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-180976(P2013-180976A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152593
【弁理士】
【氏名又は名称】楊井 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】石井 章央
(72)【発明者】
【氏名】山崎 たか子
(72)【発明者】
【氏名】西宮 孝之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 峰男
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−537502(JP,A)
【文献】 特開2012−067037(JP,A)
【文献】 特開2006−290870(JP,A)
【文献】 特開2002−322101(JP,A)
【文献】 特表2000−509064(JP,A)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,1963年,85(11),p.1609-1615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00
C07C 22/00
C07C 25/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[]:
【化1】
[式中、Ar2芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基を表。]
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類を、フッ化水素、あるいは、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体から選ばれる1種以上のフッ素化剤と反応させる工程を含む、一般式[]:
【化2】
[式中、Ar2は一般式[]と同じである。]
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
フッ素化剤が、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
一般式[3]のAr2における置換芳香族炭化水素基が、該置換芳香族炭化水素基の任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせでハロゲン原子を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いる、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α,α−ジフルオロ芳香族化合物は、医農薬中間体として重要である(例えば、特許文献1)。該化合物の代表的な製造方法として、DASTまたはDeoxo−Fluorを用いる芳香族カルボニル化合物の脱オキソジフッ素化反応が挙げられる(非特許文献1、2)。
【0003】
一方で本発明に関連する技術として、ハロゲン化アルケン類またはフルオロシクロアルケン類のビニルフルオリド部位にフッ化水素を付加させるジェミナルジフルオロ化合物の製造方法(特許文献2、3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2011/154298号
【特許文献2】欧州特許第0634383号明細書
【特許文献3】国際公開2002/066409号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Org.Chem.(米国),1975年,第40巻,p.574
【非特許文献2】J.Org.Chem.(米国),1999年,第64巻,p.7048
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1および2に記載の製造方法は、高価なフッ素化剤を用いるため工業的な製造には不向きであった。
【0007】
特許文献2および3に記載の製造方法は、生成物のジフルオロメチレン(CF)基が芳香環に直接結合しておらず(α位ではなく)、本発明の目的物であるα,α−ジフルオロ芳香族化合物を対象とするものではなかった。
【0008】
一般にジェミナルジフルオロ化合物の製造においては、目的物中のCF基が芳香環に直接結合するか否かで収率が大きく影響されることが知られている。例えば、アセチレン化合物の三重結合にフッ化水素を2分子付加させるジェミナルジフルオロ化合物の製造方法が報告されているが[J.Org.Chem.(米国),1979年,第44巻,p.3872、J.Org.Chem.(米国),1962年,第27巻,p.4015]、2,2−ジフルオロヘキサンおよび3,3−ジフルオロヘキサンは高収率で得られるが(それぞれ70%、75%)、α,α−ジフルオロエチルベンゼンは低収率でしか得られない[液相法18%。比較例1;1−ブロモ−4−(1,1−ジフルオロエチル)ベンゼンも5%未満]。また、トリフルオロメチルカルボニルオキシ(CFCO)基を2つ有するアシラールを経るカルボニル化合物の脱オキソジフッ素化反応が報告されているが[J.Fluorine Chem.(オランダ),2010年,第131巻,p.29、特開平1−199922]、1,1−ジフルオロシクロヘキサンは記載の高収率(91%)を再現できるが、α,α−ジフルオロエチルベンゼンは全く再現できない[記載収率90%、比較例2;10%未満、1−ブロモ−4−(1,1−ジフルオロエチル)ベンゼンも15%程度]。さらに、本発明者らは、含フッ素硫酸エノールエステル類をフッ素化剤と反応させる工程を含むジェミナルジフルオロ化合物の製造方法を特許出願しているが(特願2011−166797/ジェミナルジフルオロ化合物の製造方法)、本製造方法においても目的物中のCF基が芳香環に直接結合する場合は収率が有意に低下した(比較例3vs.4)。よって、特許文献2および3においてビニルフルオリド部位にフッ化水素を付加させるジェミナルジフルオロ化合物の製造方法が開示されているからといって、構造的特徴が異なる本発明のα,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法として好適に採用できるか否かは全く不明であった。
【0009】
この様な状況において、工業的に安価で且つ収率良く製造できるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のアセチレン化合物の三重結合にフッ化水素を2分子付加させるジェミナルジフルオロ化合物の製造方法は、フッ化水素が段階的に付加するものと考えられている(スキーム1、Fluorine in Organic Chemistry,Richard D.Chambers,2004,Blackwell,p.76〜77)。本発明者らは、鋭意検討した結果、Aがフェニル基の場合に収率が低い原因はフッ化水素の1段階目の付加過程にあり、2段階目の付加過程は極めて良好に進行することを見出し、本発明に到達した(Aがアルキル基の場合は、フッ化水素の2段階の付加過程が共に良好に進行するものと考えられる)。
【化1】
【0011】
具体的には、本発明者らは、1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類をフッ素化剤と反応させることによりα,α−ジフルオロ芳香族化合物が製造できることを見出した。1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類は、1位の芳香環部位が芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基であり、且つ2位の2つの置換基が共に水素原子であるものが好ましく、得られる生成物が医農薬中間体として特に重要である。フッ素化剤は、フッ化水素、あるいは、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体が好ましく、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体が特に好ましく、所望の反応が円滑に進行する。
【0012】
すなわち、本発明は[発明1]から[発明4]を含み、α,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法を提供する。本発明で開示する製造方法は、従来一切報告されておらず新規なものである。
【0013】
[発明1]
一般式[1]:
【化2】
【0014】
[式中、Arは芳香環基または置換芳香環基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、ArとR、ArとR、または、RとRは共有結合により環式構造を形成することもできる。]
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類を、フッ素化剤と反応させる工程を含む、一般式[2]:
【化3】
【0015】
[式中、Ar、RおよびRは一般式[1]と同じである。]
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法。
【0016】
[発明2]
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類が、一般式[3]:
【化4】
【0017】
[式中、Arは芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基を表す。]
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類であり、一般式[2]で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物が、一般式[4]:
【化5】
【0018】
[式中、Arは一般式[3]と同じである。]
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物である、発明1に記載の方法。
【0019】
[発明3]
フッ素化剤が、フッ化水素、あるいは、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体である、発明1または発明2に記載の方法。
【0020】
[発明4]
フッ素化剤が、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体である、発明1または発明2に記載の方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明で用いる1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類およびフッ素化剤は、比較的安価に大量規模で入手することができる。さらに、採用する反応条件が緩和なため選択性が高く収率も良好である。この様に、本発明はα,α−ジフルオロ芳香族化合物の工業的な製造方法として非常に有用である。
【0022】
また、本発明の一般式[3]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類を原料とする、一般式[4]で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の合成法が報告されているが[Tetrahedron(英国),1990年,第46巻,p.4255]、高価な反応剤を用いて2工程を必要としており、本発明の製造方法の優位性が明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のα,α−ジフルオロ芳香族化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0024】
本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、公開公報や特許出願等の特許文献、その他の非特許文献および成書は、参照として本明細書に組み込まれるものとする。
【0025】
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表す。その中でもRおよびRが共に水素原子が好ましい。該アルキル基は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のものである。該芳香環基は、炭素数1〜18の、フェニル基、ナフチル基およびアントリル基等の芳香族炭化水素基、またはピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基である。該置換アルキル基および置換芳香環基は、それぞれ前記のアルキル基および芳香環基の、任意の炭素原子または窒素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有する。係る置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子、ニトロ基、メチル基、エチル基およびプロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基およびブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基およびブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基およびブチリルオキシ基等の低級アシルオキシ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびプロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の芳香環基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。さらに、該置換アルキル基は、前記のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、任意の数および任意の組み合わせで、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置き換わることもできる(当然、これらの不飽和結合に部分的に置き換わったアルキル基は、前記の置換基を同様に有することもできる。また、これらの不飽和結合にフッ化水素が付加する可能性もあるが、本発明の好適な反応条件を採用することにより所望の反応だけを選択的に行うことができる)。なお、本明細書において、"低級"とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。また、前記の“係る置換基は”の“芳香環基”には、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ホルミルオキシ基、低級アシルオキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基およびヒドロキシル基の保護体等が置換することもできる。さらに、ピロリル基、インドリル基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。
【0026】
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類のArは、芳香環基または置換芳香環基を表す。該芳香環基および置換芳香環基は、一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類のRおよびRに記載した芳香環基および置換芳香環基と同じである。その中でも芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基が好ましい。
【0027】
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類のArとR、ArとR、または、RとRは、共有結合により環式構造を形成することもできる。具体的には、ArとR、ArとR、または、RとRの間で、任意の炭素原子同士で(窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を介することもできる)、且つ任意の数および任意の組み合わせで、共有結合により環式構造(例えば、単環式、縮合多環式、架橋、スピロ環、環集合等)を形成することもできる[但し、共有結合に関与することができない置換基(水素原子)は除かれる]。
【0028】
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類としては、Arが芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基であり、且つRおよびRが共に水素原子であるものが好ましい(一般式[3]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類に対応)。
【0029】
一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類は、Org.Synth.(米国),1999年,第76巻,p.159、Tetrahedron(英国),1990年,第46巻,p.4255等を参考にして同様に製造することができる。
【0030】
フッ素化剤は、フッ化水素、あるいは、有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体等である。
【0031】
“有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体”における有機塩基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,4−コリジン、2,4,5−コリジン、2,5,6−コリジン、2,4,6−コリジン、3,4,5−コリジン、3,5,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等である。但し、これらに限定されず、有機合成において一般的に用いられる有機塩基も採用することができる。その中でもトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましく、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが特に好ましい。これらの有機塩基は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0032】
有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体の、有機塩基とフッ化水素のmol比は、100:1から1:100の範囲で用いれば良く、50:1から1:50が好ましく、25:1から1:25が特に好ましい。アルドリッチ(Aldrich、2009−2010カタログ)から市販されている“トリエチルアミン1molとフッ化水素3molとからなる錯体”または“ピリジン〜30%(〜10mol%)とフッ化水素〜70%(〜90mol%)とからなる錯体”を用いるのが便利である。
【0033】
フッ素化剤としては、フッ化水素、あるいは、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体が好ましく、ピリジンとフッ化水素とからなる塩または錯体が特に好ましい。
【0034】
フッ化水素、あるいは、有機塩基とフッ化水素とからなる塩または錯体の使用量は、一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類1molに対して、フッ化水素(HF)として0.7mol以上を用いれば良く、0.8〜1000molが好ましく、0.9〜500molが特に好ましい。
【0035】
本発明は、一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類を酸触媒の存在下にフッ素化剤と反応させることにより、一般式[2]で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物が格段に収率良く得られる場合がある。但し、本発明の好適な反応条件を採用することにより、酸触媒の非存在下でも所望の反応を円滑に行うことができる(本発明に酸触媒は必須でない)。係る酸触媒としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、過塩素酸、フルオロ硫酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、三フッ化ホウ素、三弗化アンチモン、五弗化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三弗化二塩化アンチモン、五弗化ヨウ素および七弗化ヨウ素等の無機酸、ならびに2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸触媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0036】
反応溶媒は、n−ヘキサンおよびn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンおよびα,α,α−トリフルオロトルエン等のハロゲン系、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランおよび2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系、酢酸エチルおよび酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリルおよびプロピオニトリル等のニトリル系、ならびにジメチルスルホキシド等である。その中でもハロゲン系、エーテル系、アミド系およびニトリル系が好ましく、ハロゲン系およびエーテル系が特に好ましい。これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0037】
反応溶媒の使用量は、一般式[1]で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類1molに対して0.0001L(リットル)以上を用いれば良く、0.0005〜30Lが好ましく、0.001〜15Lが特に好ましい。本反応は、反応溶媒を用いずにニートの状態で行うこともできる。
【0038】
反応温度は、−50〜+150℃の範囲で行えば良く、−40〜+125℃が好ましく、−30〜+100℃が特に好ましい。
【0039】
反応時間は、48時間以内の範囲で行えば良く、原料基質、反応剤および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
【0040】
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、一般式[2]で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物を得ることができる。粗生成物は、必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することができる。
【0041】
[実施例]
以下、実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
フッ素樹脂ライニングの反応容器に、下記式:
【化6】
【0043】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類200mg(ガスクロマトグラフィー純度97.9%、0.974mmol、1.00eq)と塩化メチレン1.00mL(1.03L/mol)を加え、5℃に冷却し、ピリジンとフッ化水素とからなる錯体610mg(フッ化水素含有率65.0%、フッ化水素として19.8mmol、20.3eq)を加え(2相系)、同温度で5時間25分激しく攪拌した。反応終了液をクロロホルム5mLで希釈し、水5mLで洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液5mLで洗浄し、回収有機層を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、下記式:
【化7】
【0044】
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物が0.978mmol含まれていた。内部標準法による収率は100%であった。回収有機層のガスクロマトグラフィー分析より変換率と純度は、それぞれ100%、98.6%(4−ブロモアセトフェノンが1.1%)であった。回収有機層のHと19F−NMRを下に示す。
【0045】
H−NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;1.89(t、3H)、7.46(Ar−H、4H)。
【0046】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;73.93(q、2F)。
【実施例2】
【0047】
フッ素樹脂ライニングの反応容器に、下記式:
【化8】
【0048】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類33.0g(ガスクロマトグラフィー純度90.8%、149mmol、1.00eq)と塩化メチレン147mL(0.987L/mol)を加え、5℃に冷却し、ピリジンとフッ化水素とからなる錯体45.0g(フッ化水素含有率65.0%、フッ化水素として1.46mol、9.80eq)を加え(2相系)、同温度で2時間20分激しく攪拌した。反応終了液をクロロホルム100mLで希釈し、水50mLで2回洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し、10%食塩水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、下記式:
【化9】
【0049】
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の粗体を得た。粗体を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、上記式で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物が140mmol含まれていた。内部標準法による収率は94%であった。粗体のガスクロマトグラフィー分析より変換率と純度は、それぞれ99%、92.3%(4−ブロモアセトフェノンが1.5%)であった。
【0050】
上記で得られたα,α−ジフルオロ芳香族化合物の粗体全量を単蒸留(沸点71℃、減圧度1.4kPa)することにより、精製品27.6gを回収した。精製品のガスクロマトグラフィー純度は96.6%であった。純度換算した回収率は86%であった。精製品のHと19F−NMRは実施例1と同等であった。
【実施例3】
【0051】
フッ素樹脂ライニングの反応容器に、下記式:
【化10】
【0052】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類1.90g(ガスクロマトグラフィー純度97.9%、9.25mmol、1.00eq)とクロロホルム24.4mL(2.64L/mol)を加え、窒素ガスを同伴させながらフッ化水素12.7g(635mmol、68.6eq)を20℃で20分かけて吹き込み、同温度で35分攪拌した。実施例1と同様の後処理操作を行い、回収有機層のガスクロマトグラフィー分析より変換率と、下記式:
【化11】
【0053】
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の純度は、それぞれ100%、92.8%(4−ブロモアセトフェノンが6.2%)であった。回収有機層のHと19F−NMRは実施例1と同等であった。
【実施例4】
【0054】
フッ素樹脂ライニングの反応容器に、下記式:
【化12】
【0055】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類10.0g(ガスクロマトグラフィー純度90.7%、74.3mmol、1.00eq)と塩化メチレン73.0mL(0.983L/mol)を加え、5℃に冷却し、ピリジンとフッ化水素とからなる錯体22.7g(フッ化水素含有率65.0%、フッ化水素として737mmol、9.92eq)を加え(2相系)、同温度で1時間45分激しく攪拌した。反応終了液をクロロホルム50mLで希釈し、水20mLで2回洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液50mLで洗浄し、10%食塩水20mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、下記式:
【化13】
【0056】
で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物の粗体を得た。粗体を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、上記式で示されるα,α−ジフルオロ芳香族化合物が60.3mmol含まれていた。内部標準法による収率は81%であった。粗体のガスクロマトグラフィー分析より変換率と純度は、それぞれ100%、96.3%(アセトフェノンが2.0%)であった。
【0057】
上記で得られたα,α−ジフルオロ芳香族化合物の粗体全量を単蒸留(沸点57℃、減圧度5.7kPa)することにより、精製品5.69gを回収した。精製品のガスクロマトグラフィー純度は99.0%であった。純度換算した回収率は66%であった。精製品のHと19F−NMRを下に示す。
【0058】
H−NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;1.92(t、3H)、7.47(Ar−H、5H)。
【0059】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;74.02(q、2F)。
【0060】
[参考例1]
塩化メチレン218mL(0.995L/mol)に、下記式:
【化14】
【0061】
で示される4−ブロモスチレン40.0g(219mmol、1.00eq)を加え、5℃に冷却し、トリエチルアミン1molとフッ化水素3molとからなる錯体106g(657mmol、3.00eq)とN−ブロモスクシンイミド58.5g(329mmol、1.50eq)を加え、同温度で20分、室温で6時間攪拌した。反応終了液に5%炭酸カリウム水溶液300mLと5%炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加え、酢酸エチル300mLで抽出し、回収水層を酢酸エチル100mLで抽出し、回収有機層を合わせて1N塩酸100mLで洗浄し、水100mLで洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し、10%食塩水100mLと5%炭酸カリウム水溶液50mLの混合液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、下記式:
【化15】
【0062】
で示される1−ブロモ−4−(1−フルオロ−2−ブロモエチル)ベンゼンの粗体75gを得た。粗体のHと19F−NMRを下に示す。
【0063】
H−NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;3.61(m、2H)、5.58(m、1H)、7.39(Ar−H、4H)。
【0064】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;−12.44(m、1F)。
【0065】
テトラヒドロフラン170mL(0.776L/mol)に、上記で得られた1−ブロモ−4−(1−フルオロ−2−ブロモエチル)ベンゼンの粗体全量(219mmolとする、1.00eq)とフェノチアジン100mgを加え、5℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン35.7g(234mmol、1.07eq)を加え、室温で4時間40分攪拌した。反応終了液中に析出した塩を濾過し、n−ヘキサン50mLで洗浄し、濾洗液から溶媒210mLを減圧濃縮し、残渣にn−ヘキサン100mLを加え、析出した塩を濾過し、n−ヘキサン100mLで洗浄し、濾洗液を減圧濃縮し、単蒸留(沸点51〜83℃、減圧度0.7〜0.5kPa)することにより、下記式:
【化16】
【0066】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類の精製品33.9gを得た。精製品のガスクロマトグラフィー純度は90.8%であった。純度換算した4−ブロモスチレンからのトータル収率は70%であった。精製品のHと19F−NMRを下に示す。
【0067】
H−NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;4.98(m、2H)、7.46(Ar−H、4H)。
【0068】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;53.65(m、1F)。
【0069】
[参考例2]
クロロホルム480mL(0.500L/mol)に、下記式:
【化17】
【0070】
で示されるスチレン100g(960mmol、1.00eq)を加え、5℃に冷却し、トリエチルアミン1molとフッ化水素3molとからなる錯体309g(1.92mol、2.00eq)とN−ブロモスクシンイミド188g(1.06mol、1.10eq)を加え、同温度で1時間、室温で終夜攪拌した。反応終了液を5%炭酸カリウム水溶液200mLで洗浄し、水100mLで洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し、10%食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、下記式:
【化18】
【0071】
で示される1−フルオロ−2−ブロモエチルベンゼンの粗体を得た。粗体の19F−NMRを下に示す。
【0072】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;−12.44(m、1F)。
【0073】
テトラヒドロフラン700mL(0.729L/mol)に、上記で得られた1−フルオロ−2−ブロモエチルベンゼンの粗体全量(960mmolとする、1.00eq)とフェノチアジン400mgを加え、5℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン160g(1.05mol、1.09eq)を加え、同温度で15分、室温で2時間攪拌した。反応終了液中に析出した塩を濾過し、n−ヘキサン100mLで洗浄し、濾洗液から溶媒500mLを減圧濃縮し、残渣中に析出した塩を濾過し、単蒸留(沸点50〜67℃、減圧度4.0〜3.5kPa)することにより、下記式:
【化19】
【0074】
で示される1−フルオロ−1−芳香環置換エテン類の精製品77.4gを得た。精製品のガスクロマトグラフィー純度は90.7%であった。純度換算したスチレンからのトータル収率は60%であった。精製品のHと19F−NMRを下に示す。
【0075】
H−NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;4.95(m、2H)、7.45(Ar−H、5H)。
【0076】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;53.85(m、1F)。
【0077】
[比較例1]
フッ素樹脂ライニングの反応容器に、フッ化水素220mg(11.0mmol、19.9eq)と塩化メチレン0.300mL(0.543L/mol)を加え、5℃に冷却し、下記式:
【化20】
【0078】
で示される1−ブロモ−4−エチニルベンゼン100mg(0.552mmol、1.00eq)を加え(2相系)、同温度で2時間激しく攪拌した。反応終了液をクロロホルム5mLで希釈し、水5mLで洗浄し、5%炭酸カリウム水溶液5mLで洗浄し、回収有機層を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、下記式:
【化21】
【0079】
で示される1−ブロモ−4−(1,1−ジフルオロエチル)ベンゼンが27.6μmol未満しか含まれていなかった。内部標準法による収率は5%未満であった。回収有機層のガスクロマトグラフィー分析より変換率と純度は、それぞれ100%、0.6%(4−ブロモアセトフェノンが87.5%)であった。
【0080】
[比較例2]
下記式:
【化22】
【0081】
で示されるアセトフェノン1.00g(8.32mmol、1.00eq)に、トリフルオロ酢酸無水物4.37g(20.8mmol、2.50eq)を加え、35℃で4日間攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィー分析より変換率と、下記式:
【化23】
【0082】
で示されるCFCO基を2つ有するアシラール、および、下記式:
【化24】
【0083】
で示されるトリフルオロ酢酸エノールエステルの純度は、それぞれ52%、15.2%、16.4%であった。反応終了液に対して特開平1−199922の実施例1と同様の後処理操作を行い、さらに同様のフッ素化工程を行ったが、下記式:
【化25】
【0084】
で示されるα,α−ジフルオロエチルベンゼンが0.832mmol未満しか含まれていなかった。内部標準法による収率は10%未満であった。
【0085】
別に原料基質として4−ブロモアセトフェノンを用いて同様のアシラール化工程とフッ素化工程を行ったが、対応する1−ブロモ−4−(1,1−ジフルオロエチル)ベンゼンの収率は15%程度であった。
【0086】
一方でシクロヘキサノンは、1,1−ジフルオロシクロヘキサンを収率87%で与えた。
【0087】
[比較例3]
フッ素樹脂ライニングの反応容器を−5℃の冷媒浴に浸し、フッ化水素3.45g(172mmol、20.0eq)、下記式:
【化26】
【0088】
で示される含フッ素硫酸エノールエステル類2.00g(8.61mmol、1.00eq)、クロロホルム0.200mL(0.0232L/mol)とトリフルオロ酢酸196mg(1.72mmol、0.200eq)を加え、−5℃で3時間15分攪拌した。反応終了液をクロロホルム10mLで希釈し、水10mLと5mLで2回洗浄し、10%炭酸カリウム水溶液10mLで洗浄し、10%食塩水5mLで洗浄し、回収有機層を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;ヘキサフルオロベンゼン)で定量したところ、下記式:
【化27】
【0089】
で示されるジェミナルジフルオロ化合物が6.59mmol含まれていた。内部標準法による収率は77%であった。19F−NMRを下に示す。
【0090】
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl)、δ ppm;71.45(m、2F)。
【0091】
[比較例4]
フッ素樹脂ライニングの反応容器を−5℃の冷媒浴に浸し、フッ化水素1.56g(78.0mmol、19.7eq)、下記式:
【化28】
【0092】
で示される含フッ素硫酸エノールエステル類1.00g(3.96mmol、1.00eq)、クロロホルム0.100mL(0.0253L/mol)とトリフルオロ酢酸90.3mg(0.792mmol、0.200eq)を加え、−5℃で3時間攪拌した。反応終了液をクロロホルム5mLで希釈し、水5mLと2.5mLで2回洗浄し、10%炭酸カリウム水溶液5mLで洗浄し、10%食塩水2.5mLで洗浄し、回収有機層を19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;ヘキサフルオロベンゼン)で定量したところ、下記式:
【化29】
【0093】
で示されるジェミナルジフルオロ化合物が0.396mmol未満しか含まれていなかった。内部標準法による収率は10%未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明で対象とするα,α−ジフルオロ芳香族化合物は、医農薬中間体として重要である。