(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
通信事業者の所有する建物(局)と加入者宅を結ぶ通信網は、アクセス系ネットワークと呼ばれる。昨今の通信容量の増大を受け、アクセス系ネットワークでは、光通信を利用することにより膨大な情報量の伝送を可能とする、光アクセス系ネットワークが主流になりつつある。
【0003】
光アクセス系ネットワークの一形態として受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)がある。PONは、局内に設けられる1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、複数の加入者宅にそれぞれ設けられる加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、光スプリッタとを備えて構成される。OLT及びONUと、光スプリッタとは、光ファイバで接続される。
【0004】
OLTと光スプリッタの間の接続には、一芯の光ファイバが用いられる。この一芯の光ファイバは、複数のONUにより共有される。また、光スプリッタは、安価な受動素子である。このように、PONは、経済性に優れ、また、保守も容易である。このため、PONの導入は、急速に進んでいる。
【0005】
PONでは、各ONUからOLTに送られる信号(以下、上り光信号と称することもある)は、光スプリッタで合波されてOLTに送信される。一方、OLTから各ONUに送られる信号(以下、下り光信号と称することもある)は、光スプリッタで分波されて各ONUに送信される。なお、上り光信号と下り光信号との干渉を防ぐために、上り光信号と下り光信号には、それぞれ異なる波長が割り当てられる。
【0006】
また、PONでは、様々な多重技術が用いられる。PONで用いられる多重技術には、時間軸上の短い区間を各加入者に割り当てる時分割多重(TDM:Time Division Multiplex)技術、異なる波長を各加入者に割り当てる波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)技術、異なる符号を各加入者に割り当てる符号分割多重(CDM:Code Division Multiplex)技術などがある。これらの多重技術の中で、TDMを利用するTDM−PONが、現在最も広く用いられている。
【0007】
TDM−PONでは、TDMA(Time Division Multiple Access)が用いられている。TDMAは、OLTが、各ONUの送信タイミングを管理して、異なるONUからの上り光信号同士が衝突しないように制御する技術である。
【0008】
通常、PONシステムでは、1つのOLTが、分岐された光伝送路、及びこの光伝送路の分岐先に接続されるONUを含む1つのPONブランチ(以下、単にブランチとも称する。)を管理している。ここで、例えば1つのPONブランチに含まれるONUが少ない場合、OLTを少ないONUで共有するためコストがかかる。そこで、ブランチ内のONUが少ないときは、1つのOLTが複数のブランチを管理するのが望ましい。一方、特定のOLTに負荷が集中している場合などは、1つのブランチを複数のOLTが管理するのが望ましい。
【0009】
そのために、TDM及びWDMを併用することによって、1つのOLTによって複数のブランチの通信を可能とするPONシステム(以下、TDM/WDM−PONとも称する)が提案されている。
【0010】
TDM/WDM−PONでは、OLTは、下り光信号の送信波長を変えることにより、異なるブランチに対して下り光信号を送ることができる。また、ONUはOLTから指示された波長の上り光信号を送ることで、特定のOLTに上り光信号を送ることができる。その結果、1つのOLTは、TDM/WDM−PONを構成する任意のブランチとの間で通信が可能となる。
【0011】
TDM/WDM−PONに用いられるOLTは、下り光信号の送信波長を変えるために、複数の光源を備え、送信波長を変えるたびに、光スイッチ及び電気スイッチの切り換えを行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の配置及び接続関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0022】
(TDM/WDM−PON)
図1を参照して、TDM/WDM−PONの概略構成について説明する。TDM/WDM−PON10は、N個(Nは2以上の整数)のOLT100、光ルーティング手段200、M個(Mは1以上の整数)のブランチ300を含んで構成されている。
【0023】
OLT100及び光ルーティング手段200は、局50内に設置されうるが、光ルーティング手段200は、局50外に設置されても良い。
【0024】
ブランチ300は、一芯の光ファイバで構成される光伝送路700、光スプリッタ400及びONU500をそれぞれ含んでいる。光伝送路700は、光スプリッタ400によって分岐されており、光伝送路700の分岐先にONU500がそれぞれ接続されている。ONU500は、例えば加入者宅に設置される。
【0025】
OLT100と光ルーティング手段200との間は、光ファイバによって構成される光伝送路600で接続されている。
【0026】
N個のOLT100は、M個のブランチ300を管理し、これらM個のブランチ300に含まれるONU500との間で、データの送受信を行うことができる。
【0027】
OLT100は上位ネットワーク(NW)20と接続されている。OLT100は、上位NW20から受け取った下りデータ信号を下り光信号に変換し、いずれかのブランチ300を経てユーザ端末30に送る。また、OLT100は、ユーザ端末30からいずれかのブランチ300を経て受け取った上り光信号を上りデータ信号に変換し、上位NW20に送る。
【0028】
TDM/WDM−PON10は、局50内に上位スイッチ(SW)110、及び統合制御部120を備えている。上位SW110は、下りデータ信号の宛先に応じて定まるOLT100に下りデータ信号を送る。また、上位SW110は、各OLT100から受け取った上りデータ信号を上位NW20に送る。また、上位SW110は、トラフィックや、上位NW20から送られる下りデータ信号の宛先などのトラフィック情報を統合制御部120に通知する。
【0029】
統合制御部120は、リンク情報として、TDM/WDM−PON10のPONリンク情報を管理している。統合制御部120は、各OLT100が有する局側制御部から、当該OLT100が登録しているONU、すなわち、PONリンクが確立しているONUの情報を受け取り、PONリンク情報として、RAM(Random Access Memory)などの記憶部(図示を省略する)に読み出し及び書き換え自在に格納している。また、統合制御部120は、上位SWから受け取るトラフィック情報と、PONリンク情報に基づいて送信プランを作成する。また、統合制御部120は、送信プランに基づいて、波長設定信号を生成しOLT100に送る。また、統合制御部120は、ルーティングテーブルを生成して、上位SW110に送る。上位SW110は、ルーティングテーブルに基づいて経路を設定する。
【0030】
図1では、4つのOLT100−1〜4と4つのブランチ300−1〜4を備える構成例を示しているが、OLT100及びブランチ300の数はこれに限定されない。以下の説明では、OLT100が局50内に、複数設けられる場合、複数のOLT100と統合制御部120と上位SW110を併せて、統合OLTと称することもある。
【0031】
光ルーティング手段200は、例えば、光波長フィルタを並べて構成されたアレー型光導波路ルータ(AWGR:Arrayed Waveguide Grating Router)であり、光信号を入出力可能な複数の光通信ポートを有している。
【0032】
複数の光通信ポートは、OLT100と光伝送路600を介して接続される第1のグループと、ブランチ300の光伝送路700と接続される第2のグループとに分けられている。光ルーティング手段200は、一方のグループの光通信ポートに入力された光信号を、光信号の波長に応じて定まる、他方のグループの光通信ポートから出力する。
【0033】
なお、以下の説明では、第1のグループに含まれる光通信ポート220を、局側ポート220とも称する。また、第2のグループに含まれる光通信ポート230を、加入者側ポート230とも称する。
図1に示す構成例では、第1〜第4の局側ポート220−1〜4は、それぞれ、第1〜第4のOLT100−1〜4と一対一で対応して接続されている。また、第1〜第4の加入者側ポート230−1〜4は、それぞれ、第1〜第4のブランチ300−1〜4と一対一で対応して接続されている。
【0034】
AWGRでは、基準となる波長λと、λからλ
FSRの整数倍だけ離れた波長λ+nλ
FSRは、同一の波長として扱われる(なお、nは0以外の整数とする)。この特性は、AWGRの周回性と呼ばれ、λ
FSRはフリースペクトラムレンジと呼ばれる。従って、AWGRでは、一方のグループのある光通信ポートに上記関係を満たす波長の光信号が入力された場合、波長λにより定まる、他方のグループの光通信ポートから出力される。
【0035】
図2に、上り光信号及び下り光信号の波長と、入出力される局側ポート220及び加入者側ポート230の各番号との関係の一例を示す。
【0036】
なお、この実施の形態では、局側ポート220に入力される下り光信号は、
図2に示すようにλ1〜λ4のいずれかに設定され、加入者側ポートに入力される上り光信号は、λ1〜λ4の各波長にnλ
FSRを加えた値に設定されている。
【0037】
例えば、第1の局側ポート220−1に入力される波長λ1の下り光信号は、第1の加入者側ポート230−1から出力され、第1の加入者側ポート230−1に入力される波長λ1+nλ
FSRの上り光信号は、第1の局側ポート220−1から出力される。また、第1の局側ポート220−1に入力される波長λ2の下り光信号は、第2の加入者側ポート230−2から出力され、第2の加入者側ポート230−2に入力される波長λ2+nλ
FSRの上り光信号は、第1の局側ポート220−1から出力される。
【0038】
既に説明したように、第1〜第4の局側ポート220−1〜4は、それぞれ、第1〜第4のOLT100−1〜4と一対一で対応して接続され、第1〜第4の加入者側ポート230−1〜4は、それぞれ、第1〜第4のブランチ300−1〜4と一対一で対応して接続されている。従って、各OLT100は、下り光信号の波長を変更することによって、M個のブランチ300の1つのブランチを選択して、下り光信号を送信することができる。一方、各ONU500は、上り光信号の波長を変更することによって、N個のOLT100の1つを選択して各々上り光信号を送信することができる。
【0039】
なお、局側生成部160が生成する下り制御信号には、上り光信号の送信タイミングの情報に加えて下り光信号及び上り光信号の波長の情報が含まれることもある。
【0040】
(局側装置)
図3を参照して、OLT100について説明する。OLT100は、統合OLT142内に複数設けられていて、電気信号処理部150及び光信号処理部170を備える。
【0041】
電気信号処理部150は、インタフェース(I/F)152、下り電気信号生成部154、バッファ156、上り電気信号処理部158及び局側制御部160を備えている。
【0042】
インタフェース152、下り電気信号生成部154、上り電気信号処理部158及び局側制御部160は、任意好適な従来周知のOLTと同様に構成できるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
インタフェース152は、上位NWとの間で、上りデータ信号及び下りデータ信号の送受信を行う。また、インタフェース152は、トラフィック情報を局側制御部160に送る機能を有していても良い。
【0044】
下り電気信号生成部154は、インタフェース152から受け取った下りデータ信号、及び局側制御部160から受け取った下り制御信号に基づいて下り電気信号を生成する。下り電気信号は、バッファ156に送られる。
【0045】
バッファ156は、下り電気信号を格納し、局側制御部160から受け取る読出指示信号に応答して、下り電気信号を読み出して、光信号処理部170に送る。なお、バッファ156はインタフェース152と下り電気信号生成部154の間に設けられてもよい。
【0046】
上り電気信号処理部158は、光受信部172から受け取った上り電気信号を、上りデータ信号と上り制御信号とに分離する。上りデータ信号は、インタフェース152を介して上位SW110に送られ、上り制御信号は、局側制御部160に送られる。上り制御信号には、例えば、各ONUが要求する帯域の情報が含まれる。
【0047】
制御部は、例えば制御信号生成手段、及びバッファ制御手段を含んでいる。制御信号生成手段は、上り制御信号に基づいて各ONUに上り光信号の送信タイミングや送信量を指示する、すなわち、各ONUを制御する下り制御信号を生成する。バッファ制御手段は、読出指示信号を生成する。
【0048】
なお、局側生成部160が生成する下り制御信号には、上り光信号の送信タイミングの情報に加えて下り光信号及び上り光信号の波長の情報が含まれることもある。
【0049】
光信号処理部170は、波長可変光源180、光受信部172及び合分波部174を備えている。波長可変光源180は、例えばTLD(Tunable Laser Diode:可変波長光送信器)などの、波長の変更が可能な、任意好適な電気/光変換手段を有して構成されている。波長可変光源180は、統合制御部120が生成した波長設定信号に基づいて下り光信号の波長を設定する。
【0050】
波長可変光源180で生成された下り光信号は、合分波部174及び光ルーティング手段200を経て各ブランチ300に送られる。
【0051】
光受信部172は、合分波部174を経て送られる上り光信号を上り電気信号に変換する。光受信部172は、例えばPD(Photo Diode:光受信器)などの任意好適な光電変換素子を備えて構成されている。PDは、少なくともONU500が設定し得る波長帯の上り光信号を受光できるように設定されている。上り電気信号は、上り電気信号処理部158に送られる。
【0052】
合分波部174は、波長可変光源180で生成された下り光信号を光ルーティング手段200に送るとともに、光ルーティング手段200から受け取った上り光信号を光受信部172に送る。合分波部174は、例えばWDMフィルタなどの任意好適な合分波器を備えて構成されている。既に説明したように、この実施の形態では、下り光信号にはλ1〜λ4の波長帯の光が、また、上り光信号にはλ1+nλ
FSR〜λ4+nλ
FSRの波長帯の光が用いられる。このため、WDMフィルタを利用することによって、上り光信号と下り光信号とを合波及び分波することができる。
【0053】
(加入者側装置)
図4を参照して、ONU500の構成について説明する。
【0054】
図4に示すように、この実施の形態では、電気信号処理部550、及び光信号処理部570を含んでONU500が構成されている。
【0055】
電気信号処理部550は、インタフェース(I/F)552、バッファ556、上り電気信号生成部554、下り電気信号処理部558、及び加入者側制御部560を備えている。また、光信号処理部570は、光送信部580、光受信部572、合分波部574及び波長可変フィルタ576を備えている。
【0056】
送信波長を可変にするために、光送信部580に、TLDなどの波長可変光源が用いられる。また、光受信部572の帯域を下り光信号の設定される波長を含むようにすればよい。
【0057】
なお、TDM/WDM−PONでは、1つのブランチに複数のOLTから異なる波長の下り光信号が送られることがある。このため、各ONUでは、PONリンクが確立しているOLT以外のOLTからの光信号を受信しないため、波長可変フィルタ576を、光受信部572のOLT側に設けている。なお、複数のOLTが互いに協働して、これらの光信号が干渉しない場合、波長可変フィルタ576を設けない構成にしても良い。
【0058】
この波長可変光源580及び波長可変フィルタ576の波長の設定は、例えば、下り制御信号に基づいてなされる加入者側制御部560からの指示で行われる。他の構成については、従来のONUと同様なので説明を省略する。
【0059】
(制御方法)
以下の説明では、第1のOLTが第1のブランチに含まれる全てのONUを管理し、第2のOLTが第2のブランチに含まれる全てのONUを管理している状態で、第2のブランチに含まれるONUの一部又は全部について、上り光信号の送信先あるいは、下り光信号の送信元のOLTを第2のOLTから第1のOLTに切り換える例について説明する。
【0060】
すなわち、第1のOLTが切換先のOLTであり、第2のOLTが切換元のOLTである。また、第2のブランチに含まれるONUが切換対象のONUである。なお、ここでは、切換元のOLTと切換先のOLTはそれぞれ1つずつの場合について説明するが、これに限定されない。すなわち、1又は複数の切換元のOLTから、1又は複数の切換先のOLTへの切換が可能である。
【0061】
以下の説明では、下りデータ信号、並びに、下りデータ信号を含む下り光信号及び下り電気信号を単に下り信号と称し、上りデータ信号、並びに、上りデータ信号を含む上り光信号及び上り電気信号を単に上り信号と称することもある。
【0062】
(第1の制御方法)
図5を参照して、第1の制御方法として、切換対象のONUへの下り光信号の送信元を、切換元の第2のOLT(OLT2)から切換先の第1のOLT(OLT1)に切り換える制御方法について説明する。
図5は、第1の制御方法を説明するためのシーケンス図である。
【0063】
上位NWから送られた下りデータ信号は、ルーティングテーブルに従って、上位SW110で振り分けられる。ここでは、第1のブランチ(ブランチ1)300−1宛の下りデータ信号は、OLT1に送られ、第2のブランチ(ブランチ2)300−2宛の下りデータ信号は、OLT2に送られている。
【0064】
OLT1とブランチ1とのPONリンク情報及びOLT2とブランチ2とのPONリンク情報は、統合制御部120に送られ、管理されている(S10)。なお、OLT2からOLT1への切り換えの際に、既に、統合制御部120がPONリンク情報を取得していれば、S10を省略しても良い。また、後述するS20における休止予告の受け取りに応答して、OLT2が、切換対象のONUのPONリンク情報を統合制御部120に送る構成にしても良い。
【0065】
ここで、ブランチ2に含まれるONUへ下りデータ信号を送信するOLTをOLT2からOLT1に切り換える。
【0066】
この場合、統合制御部120は、切換元のOLT2に対して、休止予告を送る(S20)。また、統合制御部120は、切換対象のONU宛の下りデータ信号を、OLT1に送るように、ルーティングテーブルを書き換える。この書き換えられたルーティングテーブルは、上位SW110に送られる(S30)。書き換えられたルーティングテーブルを受け取った上位SW110は、切換対象のONU宛の下りデータ信号を、OLT1に送る。
【0067】
さらに、統合制御部120は、切換対象のONUに関するPONリンク情報をOLT1に通知して、OLT1と切換対象のONUとの接続を指示する(S40)。
【0068】
S40の後、切換対象のONU宛の下りデータ信号は、OLT1に送られるが、OLT1及びOLT2は、ONUに対してこれまでと同様の送信を行う。すなわち、OLT1は、切換対象のONU宛の下りデータ信号は、バッファリングしておき、ONU宛に送信しない。また、OLT2は、バッファに残存する切換対象のONU宛の下りデータ信号の送信をそのまま継続する。
【0069】
OLT2は、バッファ中の切換対象のONU宛の下りデータ信号を、全て送信したとき、すなわち、バッファ中に切換対象のONU宛の下りデータ信号がなくなったとき、統合制御部120にその旨を通知する送信完了通知を送る(S50)。
【0070】
統合制御部120は、OLT2からの送信完了通知を受けて、OLT1に対して、切換対象のONU宛に下り光信号の送信を開始させる(S60)。この場合、統合制御部120は、OLT1に対して、ブランチ1に含まれるONUに対しては、送信波長λ1で送信し、ブランチ2に含まれる切換対象のONUに対しては、送信波長λ2での送信を行う送信プランを新たに作成し、その送信プランを、OLT1の局側制御部に通知する。
【0071】
なお、S20〜S60までの過程の順序は、この例に限定されない。S20、S30及びS40の順序は、任意に設定可能である。また、S40の過程は、S50の後に行うことができ、S40とS60をS50の後に一元化して行っても良い。
【0072】
OLT1は、統合制御部120から受け取ったPONリンク情報を用いて、新たな送信プランに従って、切換対象のONUを含む各ONUに対して下りデータ信号の送信を行う。
【0073】
この制御方法によれば、切換対象のONUへの下り信号の送信元をOLT2からOLT1に変更するに当たり、OLT1と切換対処のONUとのリンクが確立した後、OLTを変更するので、通信が途絶えることがない。
【0074】
なお、OLT2が下り信号を送信していた先の全てのONUについて、下り信号の送信元をOLT2からOLT1に切り換えた場合、OLT2は、下り信号の送信を行わない。従って、OLT2の下り信号の送信に係る部分をスリープ状態にすることができる。この場合、OLTが下りデータ信号を送信していた全てのONUが切換対象のONUとなる。
【0075】
OLT2は、バッファ中の下りデータ信号を全て送信したとき、すなわち、バッファ中に下りデータ信号がなくなったとき、送信完了通知として、統合制御部120にその旨を通知する(S50)。
【0076】
通信完了通知を受けた統合制御部120は、OLT2に対して、下り信号の処理に係る部分をスリープ状態にする指示を送る(S70)。この下り信号の処理に係る部分とは、光信号処理部の可変波長光源、及び、電気信号処理部の下り電気信号生成手段等が該当する。これら下り信号の処理に係る部分の少なくとも一部をスリープ状態にすることで、消費電力の低減が図られる。
【0077】
また、ここでは、1つのブランチの、OLT2が管理している全てのONUをOLT1に切り換える例を説明したが、これに限定されず、切換先のOLTを複数のOLTに分けても良い。
【0078】
なお、この第1の制御方法では、OLT1から切換対象のONU宛の下り信号が送られるが、上りデータ信号の宛先については、変更されずにOLT2に送られる。
【0079】
(第2の制御方法)
図6を参照して、第2の制御方法として、切換対象のONUからの上り光信号の送信先を、切換元のOLT2から切換先のOLT1に切り換える制御方法について説明する。
図6は、第2の制御方法を説明するためのシーケンス図である。
【0080】
ここでは、ブランチ1からの上りデータ信号は、OLT1に送られ、ブランチ2からの上りデータ信号は、OLT2に送られている。
【0081】
OLT1とブランチ1とのPONリンク情報及びOLT2とブランチ2とのPONリンク情報は、統合制御部120に送られ、管理されている(S110)。なお、OLT2からOLT1への切り換えの際に、既に、統合制御部120がPONリンク情報を取得していれば、S110を省略しても良い。また、後述するS120における休止予告の受け取りに応答して、OLT2が、切換対象のONUのPONリンク情報を統合制御部120に送る構成にしても良い。
【0082】
ここで、ブランチ2に含まれるONUからの上りデータ信号の送信先をOLT2からOLT1に切り換える。
【0083】
この場合、統合制御部120は、切換元のOLT2に対して、休止予告を送る(S120)。
【0084】
さらに、統合制御部120は、切換対象のONUに関するPONリンク情報をOLT1に通知して、OLT1と切換対象のONUとの接続を指示する(S140)。
【0085】
次に、OLT2は、切換対象のONUに対して、送信波長の、OLT1に対する波長への変更を指示する(S145)。切換対象のONUは、この指示に応答して、OLT1に対して上りデータ信号を送信する。
【0086】
OLT2は、バッファリングされている切換対象のONUからの上りデータ信号を全て上位NWに送信したときに、送信完了通知を統合制御部120に送る(S150)。なお、S120〜S150までの過程の順序は、この例に限定されない。例えば、S120の過程はS140の後に行ってもよい。また、S140の過程はS145の後に行ってもよい。
【0087】
この制御方法によれば、切換対象のONUからの上りデータ信号の送信先をOLT2からOLT1に変更するに当たり、OLT1と切換対象のONUとのリンクが確立した後、OLTを変更するので、通信が途絶えることがない。
【0088】
なお、OLT2に対して上りデータ信号を送信していた全てのONUからの上りデータ信号の送信先をOLT2からOLT1に切り換えた場合、OLT2は、上り信号の受信を行わない。従って、上り信号の受信に係る部分をスリープ状態にすることができる。この場合、OLTに上りデータ信号を送信していた全てのONUが切換対象のONUとなる。
【0089】
OLT2は、バッファ(図示を省略する)中の上りデータ信号を全て送信したとき、すなわち、バッファリングされている上りデータ信号がなくなったとき、送信完了通知として、統合制御部120にその旨を通知する(S150)。
【0090】
統合制御部120は、OLT2に対して、上り信号の処理に係る部分をスリープ状態にする指示を送る(S170)。この上り信号の処理に係る部分とは、光信号処理部の光受信部、及び、電気信号処理部の上り電気信号処理手段等が該当する。これら上り信号の処理に係る部分の少なくとも一部をスリープ状態にすることで、消費電力の低減が図られる。
【0091】
また、ここでは、1つのブランチの、OLT2へ上り信号を送信している全てのONUの送信先をOLT1に切り換える例を説明したが、これに限定されず、切換先のOLTを複数のOLTに分けても良い。
【0092】
なお、この第2の制御方法では、切換対象のONUからは、OLT1に対して上り信号が送られるが、下り信号については、変更されずにOLT2から送られる。
【0093】
(第3の制御方法)
第3の制御方法は、第1の制御方法と第2の制御方法を統合したものである。すなわち、第3の制御方法によれば、第1の制御方法と第2の制御方法の両方を実行することにより、ブランチ2への下り光信号をOLT1が送信し、ブランチ2からの上り信号をOLT1が受信するように変更する。
【0094】
OLT2が送受信を行っている全てのONUについて、下り信号の送信元をOLT1に変更し、上り信号の送信先をOLT1に変更した場合、OLT2は、上り信号の受信及び下り信号の送信を行わない。従って、上り信号の受信及び下り信号の送信に係る部分をスリープ状態にすることができる。この場合、OLT2に上りデータ信号を送信していた全てのONU及びOLT2から下りデータ信号を受信していた全てのONUが切換対象のONUとなる。
【0095】
下り信号の送信元、及び、上り信号の送信先を変更した後、OLT2をスリープ状態とする。なお、このスリープ状態は、OLT全体ではなく、例えば、消費電力の大きいものを選択してスリープさせるなどしても良い。
【0096】
(第4の制御方法)
第4の制御方法は、第1及び3の制御方法を実行するに当たり、ONUが可変波長フィルタを備える場合に実行可能な方法である。ONUが可変波長フィルタを備える場合、切換対象のONUへの下り光信号の送信元をOLT2からOLT1に切り換えると、切換対象のONUは、受け取る下り光信号の波長が変わるため、下り光信号を受け取ることができない場合がある。そこで、OLT2は、送信完了通知を統合制御部120に送るとともに、切換対象のONUに対して、受信波長を、OLT1からの下り光信号を受信可能な波長への切換を指示する。
【0097】
これにより、ONUが可変波長フィルタを備える場合であっても、送信元のOLTの変更が可能になる。