特許第5853832号(P5853832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853832
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】スチレンフィルム用印刷インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20160120BHJP
【FI】
   C09D11/02
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-83102(P2012-83102)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-213108(P2013-213108A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】飛田 賢吾
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163215(JP,A)
【文献】 特開2008−163231(JP,A)
【文献】 特開2009−244691(JP,A)
【文献】 特開2004−123990(JP,A)
【文献】 特開2009−286974(JP,A)
【文献】 特開2004−175858(JP,A)
【文献】 特開2009−249388(JP,A)
【文献】 特開2010−248466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、顔料および溶剤を含有することを特徴とする熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物であって、
バインダー樹脂が、
アクリル樹脂
ならびに
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂および/またはセルロー
ス・アセテート・プロピオネート(CAP)
であって、
アクリル樹脂が、
重量平均分子量2万〜13万
および
ガラス転移点(Tg)20〜80℃
および
メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルを含むアクリルモノマーより合成されてなり、
アルコール系およびエステル系の有機溶剤に溶解あるいは分散されてなり、
かつ、
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂が、
数平均分子量6万以下
であり、さらに、
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂が、
数平均分子量6万以下
であることを特徴とする熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂の固形分重量W1と
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂の固形分重量およびセルロース・
アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂の固形分重量の合計量W2と
の比率がW1:W2=30:70〜99:1であることを特徴とする請求項記載の熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物。
【請求項3】
さらに、可塑剤、フェニル基またはキシリル基を有する樹脂および粘着付与剤から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレンフィルムに対する印刷により意匠性付与を付与し、該フィルムとポリスチレンシートを熱圧着の工程を経て成型される食品用トレーの製造に好適なインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装物には装飾や表面保護のために印刷インキにより装飾が施されているのが一般的である。また、印刷インキの性能差による意匠性、高級感など印刷物の良し悪しによっては内容物に対する好感度や注目度、消費者の購買意欲をも左右し、そのまま製品の売り上げに直結するといっても過言ではない。
【0003】
惣菜容器や弁当容器などの食品用トレーは、ポリスチレンフィルム(以下PSフィルムと表記する)に意匠性の絵柄等を印刷し、該印刷フィルムを発泡のポリスチレンシートまたは耐衝撃性に優れたポリスチレンシート(以下ポリスチレンシートの総称をPSシートと表記する)とを熱圧着でラミネート(以降熱ラミネートと表記する)して作られる。この印刷用のインキとしては、アクリル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂を主成分とする印刷インキ組成物が知られている。
【0004】
食品トレーは惣菜容器等として食品が詰められコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売されている。食品トレーを製造する過程において、PSフィルムにグラビア印刷された印刷物(以下印刷物と表記する)とPSシートの熱ラミネートの工程があるが、印刷物に使用したインキとPSシート間の熱ラミ強度が不十分であれば、熱ラミ加工時の温度や圧力の影響により、印刷物とPSシート間に気泡状の未接着部(以下ブリスターと表記する)が発生し、気泡ができたようになって食品トレーの意匠性を損なわれるため商品として好ましくない。
【0005】
ブリスターの発生を改善する方法として、フィルムに対する印刷により絵柄等の意匠を付与した後に、その上面にメジウムと呼ばれる接着層を印刷またはコーティングする方法があるが、メジウムを塗工することで印刷工程が増えて煩雑になる、またコストの上昇が避けられないなどの問題があることから、実際上好ましい方法とは言い難い。
【0006】
また、接着層を塗布せずにインキ/PSシート間の熱ラミ強度を向上させようとすると、インキの主成分であるアクリル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂を熱ラミネートの温度で、インキ/PSシートが接着するように樹脂のガラス転移温度を調節する方法があるが、ブロッキング(インキ皮膜面同士がくっつく現象)のトラブルを起こしやすいという問題がある。さらにブロッキングを改善するために、インキ皮膜同士の接着を軽減するニトロセルロース樹脂を併用する方法が知られているが、アクリル樹脂との相溶性が乏しいことから保存安定性(インキ保存時に分離や沈殿が発生、粘度の上昇など)に乏しく、好ましい方法とは言い難い。即ち、接着層を用いず、接着層を用いない場合にはブロッキングを起こさないような印刷インキ組成物が求められている。
る。
【0007】
特許文献1に記載のインキは、インキ組成物中にブロッキング防止成分が含まれていないため、印刷を施したフィルムの保管時にブロッキングし、作業性が良くない。
【0008】
特許文献2に記載のインキは、ブロッキング防止にニトロセルロース樹脂を使用しているため、アクリル樹脂との相溶性不足から経時安定性が悪いことや、インキ成分中に界面活性剤を含有しているため、熱ラミネート強度が劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−285245号公報
【特許文献2】特開2000−313833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、フィルムに印刷してPSシートと熱ラミネートして成型される食品用トレーにおいて、該フィルムに印刷するインキであって、保存安定性を維持しつつも耐ブロッキング性の良好なスチレンフィルム用印刷インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、樹脂組成としてバインダー樹脂が、アクリル樹脂ならびにセルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂および/またはセルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)であって、アクリル樹脂が、重量平均分子量2万〜13万およびガラス転移点(Tg)20〜80℃であり、かつ、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂が、数平均分子量6万以下であり、さらに、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂が、数平均分子量6万以下であることを特徴とするスチレンフィルム用印刷インキ組成物が上記特性を満たすことを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明は、バインダー樹脂、顔料および溶剤を含有することを特徴とする熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物であって、
バインダー樹脂が、
アクリル樹脂
ならびに
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂および/またはセルロー
ス・アセテート・プロピオネート(CAP)
であって、
アクリル樹脂が、
重量平均分子量2万〜13万
および
ガラス転移点(Tg)20〜80℃
および
メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルを含むアクリルモノマーより合成されてなり、
アルコール系およびエステル系の有機溶剤に溶解あるいは分散されてなり、
かつ、
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂が、
数平均分子量6万以下
であり、さらに、
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂が、
数平均分子量6万以下
であることを特徴とする熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物に関するものである。
【0014】
また、本発明は、前記アクリル樹脂の固形分重量W1と
セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂の固形分重量およびセルロース・
アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂の固形分重量の合計量W2と
の比率がW1:W2=30:70〜99:1であることを特徴とする上記の熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物に関するものである。
【0015】
さらに、本発明は、さらに、可塑剤、フェニル基またはキシリル基を有する樹脂および粘着付与剤から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする上記の熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物に関するものである。


【発明の効果】
【0016】
本発明のスチレンフィルム用印刷インキ組成物は、樹脂組成として、アクリル樹脂と、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂および/またはセルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)とすることで、インキの保存安定性を維持しつつも、耐ブロッキング性の良好なインキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明する。
印刷インキ組成物のバインダー樹脂であるアクリル樹脂はモノマーとして、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等を用いて合成される。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、 (メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、さらにブチル基以上の炭化水素鎖数を有する(メタ)アクリル酸アルキル、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらモノマーを1種または2種以上の使用することができる。その他、酢酸ビニルやブタジエンとの共重合体も使用できる。
本発明においては、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸ブチルを含むアクリルモノマーを主骨格とする重合体が、熱ラミネート強度などの物性面、かつコストの点から好ましい。
【0018】
また、アクリル樹脂の重量平均分子量は2万〜13万であるが、特に3万〜11万のものが好ましい。アクリル樹脂の重合平均分子量が2万未満になると、熱ラミネートの際にPSシートとの凝集力の低下傾向を示し、成型加工時にブリスターが発生するため好ましくなく、一方、重量平均分子量が13万を超えると樹脂の粘度が高くなり印刷時にインキがうまく転移せず意匠性の悪い印刷物となるため好ましくない。
【0019】
また、アクリル樹脂のTgは20℃〜80℃であるが、好ましくは30〜65℃である。アクリル樹脂のTgが20℃未満であると、常温でアクリル樹脂が軟らかい状態となっているためブロッキングが発生しやすくなり好ましくなく、一方、Tgが80℃を超えると熱ラミネート時の熱圧着の熱で樹脂が軟らかくならず、PSシートとの密着性が低下するため好ましくない。
【0020】
さらに、アクリル樹脂は、アルコール系およびエステル系の有機溶剤に溶解あるいは分散されてなるものが印刷物の乾燥性の点から好ましい。アルコール系溶剤ではメタノールまたはエタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールのいずれか1種またはこれらの混合溶剤であることが好ましく、エステル系溶剤では酢酸エチルまたはノルマル酢酸プロピルのいずれか1種またはこれらの混合溶剤であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、アクリル樹脂にCAB樹脂および/またはCAP樹脂を配合したところに特徴があり、PSフィルムの印刷に特に適したビヒクル樹脂成分となる。また、本発明の印刷インキ組成物は、収縮フィルム用のPSフィルムなどの熱ラミネート用途以外の用途においても本発明を適用することができる。
【0022】
CAB樹脂、CAP樹脂の数平均分子量は6万以下であるが、1万〜3万のものが好ましい。
CAB樹脂、CAP樹脂の数平均分子量は、分子量が低いほど樹脂の粘度が低下するが、所望の耐ブロッキング性が低下することはない。数平均分子量が6万を超えると樹脂の粘度が高くなり、印刷時にインキがうまく転移せず意匠性の悪い印刷物となるため好ましくない。
【0023】
可塑剤、フェニル基、キシリル基を有する樹脂および粘着付与剤については、印刷インキ組成物中に添加することで、印刷インキ組成物中の樹脂および/またはPSフィルムおよび/またはPSシートのいずれか1種以上に対して可塑化、分子間相互作用の向上、粘着性の付与等の効果により、熱ラミネート強度を更に向上させるものである。
可塑剤については、印刷インキ組成物中に0.01%〜5.0%、さらには0.05%〜2%の添加量が好ましい。可塑剤の具体例としては、クエン酸エステル、フタル酸系、アジピン酸エステル系、セバシン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、トリメリット酸系等が挙げられる。
【0024】
フェニル基、キシリル基を有する樹脂については、印刷インキ組成物中に0.05%〜15.0%、さらには0.1%〜5%の添加量が好ましい。フェニル基、キシリル基を有する樹脂の具体例としては、スチレン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
粘着付与剤については、印刷インキ組成物に0.05%〜15.0%、さらには0.1%〜5%の添加量が好ましい。粘着付与剤の具体例としては、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂などが挙げられる。
【0025】
溶剤としては、ポリスチレンは耐溶剤性が低いため、酢酸エチルやノルマル酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール等の低級アルコールおよびエステルを使用し、エステル系溶剤の比率が30〜70質量部に対し、アルコール系溶剤の比率を30〜70質量部で混合した混合溶剤を使用することができる。また、遅乾性溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が少量使用することができる。
【0026】
本発明で使用される印刷インキ組成物には、粘度、流動性等印刷インキの特性維持と印刷面のスリップ性付与、つや出し、つや消し等の目的で体質顔料、ワックス、プラスチック微粉末を配合することができる。体質顔料としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、沈降性バリウム等を使用することができる。ワックスとしては、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、パーフルオロエチレン系ワックスを好適に使用することができる。
【0027】
印刷構成としてはPSフィルム/印刷インキ層/PSシートまたはPSフィルム/印刷インキ層/メジウム層/PSシート、PSフィルム/印刷インキ層/接着剤層/PSシートなどがあるが、印刷工程の煩雑さやコストの点から、PSフィルム/印刷インキ層/PSシートの構成が好ましい。
【0028】
本発明においては、アクリル樹脂、CAB及び/またはCAP樹脂以外の樹脂成分として、本発明の上記作用効果を損なわない範囲で他樹脂を併用することができる。併用する樹脂としては、アクリル樹脂、CAB及び/またはCAP樹脂と相溶性があり、グラビア印刷もしくは、フレキソ印刷インキに用いられるものは適宜併用することができる。
例えば、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、硝化綿樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、硝化綿樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用される樹脂成分の割合は、アクリル樹脂の固形分重量W1とCAB樹脂の固形分重量およびCAP樹脂の固形分重量の合計量W2との比率がW1:W2=30:70〜99:1であるが、好ましくはW1:W2=60:40〜97:3の範囲である。アクリル樹脂の固形分重量W1が30部未満になると、熱ラミネート性が損なわれるため好ましくなく、またW1が99部を超えるとブロッキングが発生しやすくなるため好ましくない。
【0030】
本発明のスチレンフィルム用印刷インキ組成物においては、通常グラビア印刷インキに用いる顔料を特に制限なく使用することができる。例えば、群青、紺青、弁柄、鉄黒、黄色酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、イソイレドリン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ピロロピロール系顔料等の有機顔料を使用することができる。
上記の着色顔料の使用量は、目的とする色調、濃度によって変化するが、メジウムも含めインキ全量中の0〜50質量部の範囲で使用される。
【0031】
インキの製造は、通常のグラビアインキと同様に、樹脂、顔料、溶剤および助剤を秤量し、良く撹拌してからペイントシェーカーやアトライター、サンドミル等の練肉分散機により練肉して仕上げる。
【0032】
意匠性を付与するために本発明の印刷インキ組成物が使用されるPSフィルムは、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。
【0033】
ラミネートされる基材としては、熱可塑性のプラスチックが使用される。好ましくはポリスチレン系の樹脂がよく、体質顔料が配合されていてもよい。又、炭酸ガスやブタンガス、空気等で発泡させたシートでもよい。
【0034】
印刷インキの印刷は、一般的なグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷等の任意の方式が用いられるが、グラビア印刷が好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中の」「部」は「重量部「%」は「重量%」を表す。
【0036】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスA)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスAを作製した。
【0037】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスB)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量25000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスBを作製した。
【0038】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスC)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量125000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスCを作製した。
【0039】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスD)の作製>
アクリルモノマーとして、スチレン〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+100℃〕10部、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕27部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg50℃となるスチレン−アクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスDを作製した。
【0040】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスE)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕82部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕15部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg90℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスEを作製した。
【0041】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスF)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕90部、およびアクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=−56℃〕7部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg15℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスFを作製した。
【0042】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスG)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量140000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスGを作製した。
【0043】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスH)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量10000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスHを作製した。
【0044】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスA)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量20000、butyryl36〜44%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスA)を得た。
【0045】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスB)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量5000、butyryl44〜48%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスB)を得た。
【0046】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスC)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量57000、butyryl49〜53%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスC)を得た。
【0047】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスD)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量70000、butyryl35〜39%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分10%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスD)を得た。
【0048】
<セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂ワニス(CAP樹脂ワニス)の調整>
セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量25000、propionyl43〜47%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・プロピオネート樹脂ワニス(CAP樹脂ワニス)を得た。
【0049】
<ニトロセルロース樹脂ワニスの調整>
ニトロセルロース樹脂〔稲畑産業株式会社、規格 L1/2、商品名 DLX30−50〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のニトロセルロース樹脂ワニスを得た。
【0050】
(実施例1〜12、比較例1〜8)
まず、表1に示す配合比で、実施例1〜12および比較例1〜8のスチレンフィルム用印刷インキ組成物を調製した。
なお、顔料、可塑剤、フェニル基含有樹脂、粘着付与剤については、下記のものを用い、表示の成分をペイントシェーカーに表示量配合して、攪拌して分散させ、それぞれのインキ組成物を得た。
顔料 チタニックスJR603〔酸化チタン、テイカ株式会社製〕
可塑剤 サンソサイザーDOS〔セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、新日本理化株式会社性製〕
フェニル基含有樹脂 マイティエースK125〔フェノール共重合体、ヤスハラケミカル株式会社製〕をイソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分50%にしたもの。
粘着付与剤 エステルガム105〔荒川化学株式会社〕をイソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分50%にしたもの。
【0051】
<評価試験>
上記の配合及び手順で作成した実施例の(1)〜(12)および比較例(1)〜(7)の印刷インキ組成物をグラビア印刷機を使用し、印刷速度40m/分、線数175線、版深30μmの網グラビア版で、厚さ25μmのポリスチレン(PS)フィルム(大石産業株式会社製、スチロファン)に印刷を行った。その後、印刷効果(印刷物の意匠性の良さ)、耐ブロッキング性、インキの保存安定性、熱ラミネート適性、ラミネート強度及び成形適性について評価した。評価結果を表2に示す。なお、各評価方法は、以下に記した方法による。
【0052】
<印刷効果>
PSフィルムに対するインキ組成物の転移性を目視にて評価した。
○ インキがフィルム上に非常に均一に転移しており、外観が良好なもの。
△ インキの転移性が若干悪いが、外観は実用上問題ないもの。
× インキの転移性が悪く、外観が製品として実用上支障のあるもの。
【0053】
<インキの保存安定性>
試験インキを40℃下で7日間放置し、経過時間による粘度測定データを離合社製ザーンカップで測定し、インキの仕上り直後と経過時間後の粘度の差からインキの保存安定性の評価を行った。
○ 経時粘度が仕上がり直後の1.5倍未満であるもの。
△ 経時粘度が仕上がり直後の1.5倍〜2倍程度であり、実用上問題ないもの。
× 経時粘度が仕上がり直後の2以上、または分離・沈殿・分離を起こし実用場支障があるもの。
【0054】
<耐ブロッキング性>
印刷物と同じ大きさに切った印刷インキのグラビア印刷を施し、0.5Kgの荷重をかけ、40℃80%湿度の雰囲気下で24時間放置したものの耐ブロッキングを評価した。
○ インキが全く剥離しないもの
△ 剥離抵抗を感じるが、実用上問題のないもの。
× インキ皮膜にとられる面積が10%以上であり、実用上支障があるもの
【0055】
<熱ラミネート強度>
高発泡のPSシート(株式会社JSP製)の上に、室温で一日放置した印刷物の印刷皮膜面を合わせ、印刷物のフイルム面に厚さ12μmのポリエステルフイルムを置き、ラミネーターを用いて、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行い、その後ポリエステルフイルム〔熱ラミネートしない)は取り払った。熱ラミネートされた積層体のPSフィルム面にクラフトテープ〔東洋インキ性〕)を貼り付けて2 5 m m の幅に切り、引張試験機〔インテスコ製〕により剥離速度30 0mm/分、剥離角度90度の条件でラミネート強度を測定した。ここでは印刷インキが介在した状態におけるPSフィルムとPSシートの積層体(幅25mm)との剥離強度( 層間接着強度)を測定している。
◎ ラミネート強度が非常に強く、剥離するとPSフィルムが切れる
○ ラミネート強度が非常に良好。剥離界面は凝集破壊となる
△ ラミネート強度が若干弱いが、実用上問題ないもの
× ラミネート強度が弱く、実用上支障があるもの。
【0056】
一般に剥離強度試験においては、積層体のラミネート強度を測定した場合、最も接着強度の弱い箇所から剥離する。例えばPSフィルム/インキ/PS シートの積層体の場合、PS フィルム/インキ間で剥離した場合は、P Sフィルムに対するインキの密着が弱い事の目安となる。またインキ/PSシート間剥離の場合は、インキのPSシートに対する熱ラミ強度が弱いという目安となる。そしてPSフィルムへの密着と熱ラミ強度がいずれも強い場合、剥離界面は「層」で剥離はせず、PSフィルムとPSシートの両方にインキが引っ張られて引きちぎられた様になる。これは凝集破壊と呼ばれる現象であり、最も好ましい剥離と考えられる。
【0057】
〔成形適性試験〕
高発泡Pシートの上に、室温で一日放置した印刷物の印刷皮膜面を合わせ、印刷物のフイルム面に厚さ12μmのポリエステルフイルムを置き、ラミネータを用いて、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行なった。その後ポリエステルフイルムを取り除いたラミネート物を、真空成形機〔formech300X〕を用いて1辺50mm幅の正方形上の容器を作製し、ブリスターが発生しなかったものを(○)、ブリスターが発生したものを(×)として表示した。ブリスターとは膜面が部分的に剥離してふくれ、水ぶくれのようになる現象をいう。
【0058】
表2に示すように、実施例(1)〜(12)のアクリル樹脂及びCAB又はCAP樹脂を用いたものは、要求物性を全て満たしているのに対し、比較例(1)〜(8)では、要求物性のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】