【実施例】
【0035】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。なお、各例中の」「部」は「重量部「%」は「重量%」を表す。
【0036】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスA)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスAを作製した。
【0037】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスB)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量25000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスBを作製した。
【0038】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスC)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量125000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスCを作製した。
【0039】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスD)の作製>
アクリルモノマーとして、スチレン〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+100℃〕10部、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕27部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg50℃となるスチレン−アクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスDを作製した。
【0040】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスE)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕82部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕15部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg90℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスEを作製した。
【0041】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスF)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕90部、およびアクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=−56℃〕7部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量50000、Tg15℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスFを作製した。
【0042】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスG)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量140000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスGを作製した。
【0043】
<アクリル樹脂ワニス(アクリル樹脂ワニスH)の作製>
アクリルモノマーとして、メタクリル酸メチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+105℃〕37部、およびメタクリル酸ブチル〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+20℃〕60部、アクリル酸〔単独重合体のガラス転移温度Tg=+106℃〕3部の組成比となるように共重合し、重量平均分子量10000、Tg50℃となるアクリル樹脂を作製した。作製したアクリル樹脂を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、アクリル樹脂固形分が40%のアクリル樹脂ワニスHを作製した。
【0044】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスA)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量20000、butyryl36〜44%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスA)を得た。
【0045】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスB)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量5000、butyryl44〜48%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスB)を得た。
【0046】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスC)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量57000、butyryl49〜53%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスC)を得た。
【0047】
<セルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスD)の調整>
セルロース・アセテート・ブチレート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量70000、butyryl35〜39%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分10%のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂ワニス(CAB樹脂ワニスD)を得た。
【0048】
<セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂ワニス(CAP樹脂ワニス)の調整>
セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂〔関東化学株式会社、数平均分子量25000、propionyl43〜47%〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のセルロース・アセテート・プロピオネート樹脂ワニス(CAP樹脂ワニス)を得た。
【0049】
<ニトロセルロース樹脂ワニスの調整>
ニトロセルロース樹脂〔稲畑産業株式会社、規格 L1/2、商品名 DLX30−50〕20部を、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分20%のニトロセルロース樹脂ワニスを得た。
【0050】
(実施例1〜12、比較例1〜8)
まず、表1に示す配合比で、実施例1〜12および比較例1〜8のスチレンフィルム用印刷インキ組成物を調製した。
なお、顔料、可塑剤、フェニル基含有樹脂、粘着付与剤については、下記のものを用い、表示の成分をペイントシェーカーに表示量配合して、攪拌して分散させ、それぞれのインキ組成物を得た。
顔料 チタニックスJR603〔酸化チタン、テイカ株式会社製〕
可塑剤 サンソサイザーDOS〔セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、新日本理化株式会社性製〕
フェニル基含有樹脂 マイティエースK125〔フェノール共重合体、ヤスハラケミカル株式会社製〕をイソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分50%にしたもの。
粘着付与剤 エステルガム105〔荒川化学株式会社〕をイソプロピルアルコールと酢酸エチルを等量ずつ混合した混合溶剤中に溶解させ、固形分50%にしたもの。
【0051】
<評価試験>
上記の配合及び手順で作成した実施例の(1)〜(12)および比較例(1)〜(7)の印刷インキ組成物をグラビア印刷機を使用し、印刷速度40m/分、線数175線、版深30μmの網グラビア版で、厚さ25μmのポリスチレン(PS)フィルム(大石産業株式会社製、スチロファン)に印刷を行った。その後、印刷効果(印刷物の意匠性の良さ)、耐ブロッキング性、インキの保存安定性、熱ラミネート適性、ラミネート強度及び成形適性について評価した。評価結果を表2に示す。なお、各評価方法は、以下に記した方法による。
【0052】
<印刷効果>
PSフィルムに対するインキ組成物の転移性を目視にて評価した。
○ インキがフィルム上に非常に均一に転移しており、外観が良好なもの。
△ インキの転移性が若干悪いが、外観は実用上問題ないもの。
× インキの転移性が悪く、外観が製品として実用上支障のあるもの。
【0053】
<インキの保存安定性>
試験インキを40℃下で7日間放置し、経過時間による粘度測定データを離合社製ザーンカップで測定し、インキの仕上り直後と経過時間後の粘度の差からインキの保存安定性の評価を行った。
○ 経時粘度が仕上がり直後の1.5倍未満であるもの。
△ 経時粘度が仕上がり直後の1.5倍〜2倍程度であり、実用上問題ないもの。
× 経時粘度が仕上がり直後の2以上、または分離・沈殿・分離を起こし実用場支障があるもの。
【0054】
<耐ブロッキング性>
印刷物と同じ大きさに切った印刷インキのグラビア印刷を施し、0.5Kgの荷重をかけ、40℃80%湿度の雰囲気下で24時間放置したものの耐ブロッキングを評価した。
○ インキが全く剥離しないもの
△ 剥離抵抗を感じるが、実用上問題のないもの。
× インキ皮膜にとられる面積が10%以上であり、実用上支障があるもの
【0055】
<熱ラミネート強度>
高発泡のPSシート(株式会社JSP製)の上に、室温で一日放置した印刷物の印刷皮膜面を合わせ、印刷物のフイルム面に厚さ12μmのポリエステルフイルムを置き、ラミネーターを用いて、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行い、その後ポリエステルフイルム〔熱ラミネートしない)は取り払った。熱ラミネートされた積層体のPSフィルム面にクラフトテープ〔東洋インキ性〕)を貼り付けて2 5 m m の幅に切り、引張試験機〔インテスコ製〕により剥離速度30 0mm/分、剥離角度90度の条件でラミネート強度を測定した。ここでは印刷インキが介在した状態におけるPSフィルムとPSシートの積層体(幅25mm)との剥離強度( 層間接着強度)を測定している。
◎ ラミネート強度が非常に強く、剥離するとPSフィルムが切れる
○ ラミネート強度が非常に良好。剥離界面は凝集破壊となる
△ ラミネート強度が若干弱いが、実用上問題ないもの
× ラミネート強度が弱く、実用上支障があるもの。
【0056】
一般に剥離強度試験においては、積層体のラミネート強度を測定した場合、最も接着強度の弱い箇所から剥離する。例えばPSフィルム/インキ/PS シートの積層体の場合、PS フィルム/インキ間で剥離した場合は、P Sフィルムに対するインキの密着が弱い事の目安となる。またインキ/PSシート間剥離の場合は、インキのPSシートに対する熱ラミ強度が弱いという目安となる。そしてPSフィルムへの密着と熱ラミ強度がいずれも強い場合、剥離界面は「層」で剥離はせず、PSフィルムとPSシートの両方にインキが引っ張られて引きちぎられた様になる。これは凝集破壊と呼ばれる現象であり、最も好ましい剥離と考えられる。
【0057】
〔成形適性試験〕
高発泡Pシートの上に、室温で一日放置した印刷物の印刷皮膜面を合わせ、印刷物のフイルム面に厚さ12μmのポリエステルフイルムを置き、ラミネータを用いて、温度180℃、速度5m/分の条件で熱ラミネートを行なった。その後ポリエステルフイルムを取り除いたラミネート物を、真空成形機〔formech300X〕を用いて1辺50mm幅の正方形上の容器を作製し、ブリスターが発生しなかったものを(○)、ブリスターが発生したものを(×)として表示した。ブリスターとは膜面が部分的に剥離してふくれ、水ぶくれのようになる現象をいう。
【0058】
表2に示すように、実施例(1)〜(12)のアクリル樹脂及びCAB又はCAP樹脂を用いたものは、要求物性を全て満たしているのに対し、比較例(1)〜(8)では、要求物性のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】