特許第5853857号(P5853857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5853857-汚染土壌の浄化方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853857
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20160120BHJP
   G21F 9/32 20060101ALI20160120BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   G21F9/28 Z
   G21F9/32 Z
   F23G7/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-112440(P2012-112440)
(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公開番号】特開2013-164410(P2013-164410A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-4679(P2012-4679)
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】井本 健夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 充高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学史
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−366800(JP,A)
【文献】 特開平02−201199(JP,A)
【文献】 特開2013−088360(JP,A)
【文献】 特開2013−104824(JP,A)
【文献】 特開2013−134085(JP,A)
【文献】 特開平03−264898(JP,A)
【文献】 特開平03−264897(JP,A)
【文献】 特開2013−122449(JP,A)
【文献】 特開2013−120136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/30
G21F 9/32
F23G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムを含み、かつ該放射性セシウムの30質量%以上が珪素を含む複合酸化物又は複合水酸化物として存在する汚染土壌600〜1450℃の温度域、かつ酸素分圧が0.01atm未満の雰囲気で、還元剤として金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物を用いてロータリーキルンで還元処理し、放射性セシウムCs2として気化して分離することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
気化分離された放射性セシウムを濃縮して回収することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、放射性元素を含有する土壌、焼却灰、スラッジなどの放射性汚染物から放射性元素を気化して分離することにより除去する方法、および、気化して分離した放射性元素を濃縮して回収する放射性汚染物の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀に大きく進歩した核利用技術は、原子力発電等のエネルギー利用を目的とした極めて重要な技術であり、化石燃料を必要としないことから、地球温暖化ガスである二酸化炭素の発生を伴わず、かつ、低コストな手段として、広く利用されていることは周知の通りである。この原子力エネルギー利用に伴って発生する有害な放射性物質が外部環境に漏洩しないように、放射性物質を外部環境から隔離することが必須であり、さまざまな安全対策が採られている。
【0003】
しかし、原子力発電の利用においては、2011年の津波により被害を受けた発電所から大量の放射性物質が外部に漏洩したように、外部環境への放射性物質の漏洩を完全に防止することが難しい場合もあり得る。
【0004】
このような事態が発生した際には、放射性物質が広範囲に飛散するため、極めて広い地域における土壌汚染などの問題を招き、農地としての使用制限や、半永久的な立ち入り禁止区域を設定しなければならない等の諸問題を招くことになる。
【0005】
特に、放射性セシウムは半減期が約30年といわれていることに加えて、通常は、高濃度に汚染された土壌の量も甚大である。従って、例えば地表50mmまでの汚染土壌を除去できた場合でも、保管量が少なくとも数千万tレベルに達すると想定される。
【0006】
ちなみに、放射能に汚染された物質の管理技術としては、例えば活性化炭素質材料で形成されて廃棄物(放射性汚染物)を収容する第一容器と、ゼオライトで形成されて第一容器を包囲する第二容器と、この第二容器を覆う土壌とからなる地下式廃棄物貯蔵施設(特許文献1参照)等のように、厳格な管理施設が要求されるが、上述した甚大な量に対する管理には、用地や管理設備などの面で極めて困難な問題を有している。しかも、これらの放射性汚染物は、単に土壌だけではなく、焼却灰やスラッジ等にも及び、このような放射性汚染物を大量に、かつ、経済的に浄化することは極めて困難な問題である。
【0007】
一方、放射能によって汚染された放射性汚染物の浄化方法としては、例えば、高温蒸気をパイプによって土中に吹き込む方法(特許文献2参照)や、微生物を利用した方法(特許文献3参照)等が提案されている。しかし、特許文献2に記載の方法では、吹き込んだ高温水蒸気が土中ですぐに冷却されてしまうため、極めて限定された領域での除去であり、実用的ではない。また、特許文献3に記載の方法では、微生物を利用するものであるため、その処理速度が遅く、大量の放射性汚染物の処理には適用が困難であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−269098号公報
【特許文献2】特開2004−243195号公報
【特許文献3】特開平4−204295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、汚染原因である放射性元素の化学的存在形態とそれに基づく化学反応などを詳しく調査研究することによって見出されたものであり、放射性汚染物中の放射性元素の還元反応を利用することによって、工業的に大量の放射性汚染物から放射性元素を分離除去して、浄化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、原子力発電所から漏えいして飛散した放射性元素を含む土壌、焼却灰、スラッジ等の放射性汚染物を浄化する方法に関する詳しい調査研究を行うことで、効率的な放射性元素の浄化技術を開発するに至り、その要旨は次のとおりである。
【0011】
(1)放射性セシウムを含み、かつ該放射性セシウムの30質量%以上が珪素を含む複合酸化物又は複合水酸化物として存在する汚染土壌600〜1450℃の温度域、かつ酸素分圧が0.01atm未満の雰囲気で、還元剤として金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物を用いてロータリーキルンで還元処理し、放射性セシウムCs2として気化して分離することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
)気化分離された放射性セシウムを濃縮して回収することを特徴とする(1)に記載の放射性汚染物の浄化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射性物質の飛散などによって発生し、放射性元素を含む大量の放射性汚染物を、大量に、迅速、かつ経済的に浄化処理を行うことできる。また、除去された放射性物質は高濃度に濃縮して回収することができ、これにより減容化して保管できることから、保管のための用地や設備等の負荷を大幅に低減できるほか、長期間に亘る保管のための監視や管理も容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の放射性汚染物の浄化方法について、ロータリーキルンを用いて行う汚染土壌を清浄化処理するプロセスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、図1を参照しながら説明する。なお、本発明は、図1に示されるようなロータリーキルン方式に限られるものではなく、放射性汚染物に対して電気を利用した加熱を行ったり、雰囲気制御を減圧容器内で処理するなど適宜応用することができるものである。
【0015】
図1において、ロータリーキルン1内には、その上部の出口フード9の近傍から放射性元素を含む汚染土壌3と金属アルミニウムを含有するアルミ灰4とがホッパー2を介して装入され、この挿入された汚染土壌3とアルミ灰4とはキルン1の回転によって混合されながらこのキルン1内を下方へと移動し、このキルン1内を移動する間に還元処理されて浄化した浄化土壌5は、キルン1の下部から土壌容器6内へと移動し、その所定量がこの土壌容器6内に蓄積された後に系外へと搬出される。
【0016】
また、ロータリーキルン1の下部には、ロータリーキルン1内の温度を上昇させるためのバーナー7と入口フード8とが設けられており、この入口フード8からキルン1内に導入された窒素ガスはバーナー7により加熱され、バーナー7の燃焼ガスと共にロータリーキルン1内を通過し、キルン1内を所定の温度にまで加熱すると共に、キルン1内を通過してキルン1上部の出口フード9から外部へと排出される。
【0017】
汚染土壌3中の放射性物質は、酸化物または水酸化物の形態で存在し、キルン1内でアルミ灰4中の金属アルミニウムにより還元され、放射性元素の金属蒸気(例えば放射性セシウムの場合はCs2など)になって気化分離し、または、微細ダストの状態となってキルン1内の窒素ガス及び燃焼ガスの流れに伴って出口フード9より排出される。排出された放射性元素を含む放射性物質は、図示はしていないが、湿式または乾式などの集塵方法によって捕集され、系外への排出を回避しつつ、濃縮して回収される。
【0018】
このときの還元処理温度は、600℃以上1450℃以下、好ましくは700℃以上1100℃以下に設定される。温度下限を600℃と規定したのは、放射性物質の内、最も問題となる放射性セシウムが金属として還元されたときにその蒸気圧の発生が促進される温度以上の確保が必要であることによる。一方、上限の1450℃の規定理由は、本発明者らが一般の田園、畑の土の加熱溶融実験を行った際に測定された融点が1450℃であり、この融点を超えた場合には、濃度の高い化合物として析出状態にある放射性元素の化合物が周囲の物質中に速やかに拡散融解して活量が著しく低下し、還元反応の進行が大きく阻害されるためである。また、好ましい温度範囲の上限値を1100℃と規定した理由は、セシウムとシリカを含む複合酸化物の融点がおおむね1100℃以下であり、この温度を超えた場合には、複合酸化物が溶融し土壌中へ拡散して固溶し、活量低下の影響による還元反応低下を回避し難くなるからである。このときの還元処理温度は、処理対象となる放射性汚染物のバルク温度を意味しており、熱電対や放射温度計などにより測定することができる。
【0019】
また、放射性汚染物と接する雰囲気ガスの酸素ポテンシャルが高い場合には、還元反応が阻害されるため、雰囲気の酸素分圧は0.03atm以下、好ましくは0.005atm以下に制御する必要がある。なお、酸素分圧の下限値は低いほど好ましく、特に限定されるものではない。
【0020】
なお、本発明の浄化方法を実施するための浄化装置については、放射性汚染物を還元処理する際の処理条件を実現できる装置であれば、特に制限されるものではなく、上述したようなロータリーキルンのほか、減圧下での電気加熱が可能な電気炉、黒鉛などによる加熱方式を伴う雰囲気制御設備等の装置を例示することができる。このうち、大量の放射性汚染物を処理するという観点から、好ましくは図示された放射性汚染物の連続処理が可能なロータリーキルン等の装置であるのがよく、この場合、金属アルミニウム等のような還元剤と汚染土壌とが適正温度で均一に混合されて効率よく反応を促進させることが可能であるため、最も好ましい形態である。
【0021】
ちなみに、本発明の方法は、浄化対象として種々の放射性元素を含有した汚染物に適用することが可能であり、放射性セシウムのほか、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素等を挙げることができるが、特に、半減期が長期で特に分離除去が困難である放射性セシウム〔Cs134(134Cs),Cs137(137Cs)など〕の浄化に好適に適用することができる。また、放射性汚染物としては、例えば、上記の放射性元素を含む土壌、焼却灰、スラッジ、粉塵、ばい塵等を挙げることができる。
【0022】
また、分離除去対象物質が放射性セシウムである場合、土壌や焼却灰、スラッジなどに混入したセシウムは、周囲に大量に存在するシリカと容易に反応して安定な複合酸化物や複合水酸化物を形成している。そこで、例えば、極めて熱力学的に安定とされるCs2O・4SiO2として存在している場合、本発明の浄化方法に従って還元処理を行う際には、下記の(1)式に従ってCs2O・4SiO2は還元され、生成した放射性セシウムが金属蒸気となって土壌成分から分離し、除去される。従って、このような比較的高温を利用した還元反応プロセスは、特に、シリカと化学的に安定結合した物質に対して有効である。
3(Cs2O・4SiO2)+2Al→3Cs2↑+Al23+12SiO2 ……(1)
【0023】
すなわち、本発明者らの実験的な知見によれば、放射性セシウムの30質量%以上が珪素を含む複合酸化物または複合水酸化物として放射性汚染物に含有されている場合には、CsOHやCsCO3などの単独で存在する場合に適用される様な、例えば水溶液による除去等の簡易的な方法では分離除去することが困難であることが分った。ところが、本発明によれば、放射性セシウムの30質量%以上が珪素を含む複合酸化物または複合水酸化物として含有されている場合でも、放射性セシウムを気化させて分離除去することが可能であり、本発明による還元反応利用プロセスを行うことが特に有効である。
【0024】
また、還元剤としては、金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物のほか、気体水素や固体炭素、金属シリコンなどの各種還元剤が使用可能であるが、還元処理の前後でも蒸気圧が低く、また、還元力が最も強く、しかも、融点が660℃であって反応性の良い液体状態で混合できる金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物が還元剤として最も適している。特に、多くの汚染土壌中のセシウムなどの濃度は殆どの場合1ppm未満の微量濃度であるため、還元剤として必要とされる金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金の量は少量でよく、安価な還元剤としてはアルミ灰などの適用が適している。
【0025】
また、本発明の方法において、還元処理により放射性汚染物から気化して分離された放射性元素は、これを濃縮して回収するのがよく、好ましくは湿式または乾式などの集塵方法によって、濃縮して回収される。ここで、乾式集塵方法としては、気化して分離された放射性元素をゼオライトに吸着させて回収する方法が例示でき、一方、湿式集塵方法としては、気化して分離された放射性元素を水中に吹き込んで集塵捕集し、その後、水分を蒸発させて回収する方法が例示できる。いずれの集塵方法も、放射性物質が濃縮されて回収できるため、処理対象の放射性元素含有物の容積に対して、減容化することが可能である。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例でさらに説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0027】
参考例1〜2、実施例〜7及び比較例1〜4)
本発明の効果を確認するために、浄化装置として3kg規模の試験ロータリーキルンを用い、以下の実験(参考例1〜2、実施例〜7及び比較例1〜4)を実施した。
【0028】
キルンの加熱は空気+LPGバーナーを用いて行い、実験中の温度測定は熱電対を用いて行い、キルン内ガス雰囲気の採取は吸引ガスサンプリングにより行った。また、サンプリングされたキルン内ガスについては、ジルコニア型濃淡電池法を用いた酸素濃度分析に供し、酸素濃度を測定して酸素分圧に換算した。
【0029】
また、浄化対象の汚染土壌としては、シリカ分90質量%以上を含有し、その他成分として、マグネシア、アルミナ、水分などを含んだ土壌2kg中に、放射性セシウムに代えて試薬配合による焼成セシウム化合物Cs2O・4SiO2(炭酸セシウムとシリカをモル比1:4で混合し、800℃×60分の条件でAr雰囲気下に焼成して得られたもので、粉末X線にて同定するとCs2O・4SiO2がほぼ100質量%のもの)20gを添加し、混合して調製した模擬汚染土壌を用いた。化学反応は同位体元素である放射性元素でも同一の結果が得られることから、本実験においては、安全面から、放射性セシウムは用いず、試薬セシウムを用いた疑似試験を行った。因みに、放射性元素を用いた実験の時には、濃度測定をガンマ線等の発生率で評価してもよい。
【0030】
更に、還元剤としては、微粉炭(1mmアンダー品)、フェロシリコン(Si品位52質量%)、及びアルミ灰(金属Al含有率:約20質量%)を用い、模擬汚染土壌中に土壌中Cs還元に必要な化学量論的量の10倍の割合で添加した。
【0031】
参考例1〜2、実施例〜7及び各比較例1〜4において、上記の模擬汚染土壌2kgをキルン中に装入し、表1に示す還元剤を用い、また、キルン内には窒素ガスを導入し、表1に示す処理条件で還元処理を20分間行い、還元処理後の土壌中のセシウム濃度を化学分析によって求め、その除去率を計算した。
結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の参考例1及び2は、還元剤をそれぞれ炭材、金属シリコン含有物を用いたものであるが、共に90%以上の高い除去率が得られている。また、本発明の実施例3、4は、還元剤をアルミ灰としてそれぞれ、800℃、1050℃にて実験した結果であるが、残留セシウムは分析限界以下まで除去できており、極めて良好な特性が得られた。更に、本発明の実施例5は、実験温度を630℃と比較的低温で行ったものであるが、除去率は98.2%と良好な結果が得られている。また、更に、実験温度をそれぞれ1200℃、1400℃に高めた実施例6,7でも90%以上の除去率が得られているが、いずれも95%以上の除去率には到達していない。これは、上記条件によって得られたセシウム化合物が融解して、一部、土壌に固体内拡散して除去しにくくなっているものと考えられる。
【0034】
一方、比較例1では、還元剤としてアルミ灰を用いているが、酸素分圧が高いことに起因して、還元反応が不十分であり、また、比較例2では、還元剤としてアルミ灰を用いているが、処理温度が低すぎることに起因して、還元反応が不十分であるため、70%以上の除去率には達していない。また、比較例3,4では、土壌が液体状態に溶融しており、セシウム化合物の活量低下がみられ、低い除去率となっている。
【0035】
また、実験中にキルンの出口フードから排出された排ガス(窒素ガスと燃焼ガス)を300ccの水(集塵水)中に吹き込み、排ガス中の塵等を捕集し、この集塵水中に溶け込んだセシウムの量と、キルン内に残留したダスト中のセシウムの量とを化学分析にて測定し、この実験によるセシウムの回収効率を評価した。結果は、模擬汚染土壌から気化して分離したセシウムを、系外に排出させることなく、集塵水とダスト中に効率良く濃縮して回収できることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
1:ロータリーキルン
2:ホッパー
3:アルミ灰
4:金属アルミ
5:浄化土壌
6:土壌容器
7:バーナー
8:入口フード
9:出口フード
図1