特許第5853859号(P5853859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5853859プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853859
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/14 20060101AFI20160120BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20160120BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160120BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20160120BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C09J175/14
   C09J4/00
   C09J11/06
   B32B37/02
   B32B37/12
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-114757(P2012-114757)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241508(P2013-241508A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐内 康之
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−087600(JP,A)
【文献】 特開平07−310065(JP,A)
【文献】 特開平05−320284(JP,A)
【文献】 特開平04−033973(JP,A)
【文献】 特開2011−225002(JP,A)
【文献】 特開2007−023147(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001855(WO,A1)
【文献】 米国特許第06518356(US,B1)
【文献】 特開2007−177169(JP,A)
【文献】 特開2010−008928(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043333(WO,A1)
【文献】 特開2010−102214(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111580(WO,A1)
【文献】 特開平01−156387(JP,A)
【文献】 特開2010−054720(JP,A)
【文献】 特開2011−236386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)成分を下記の割合で含むプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(A)ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物であるウレタン(メタ)アクリレート:(A)〜(C)成分(以下、「硬化性成分」という)の合計量中に10〜70重量%
(B)分子内に水酸基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物:硬化性成分の合計量中に3〜40重量%
(C)(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物:硬化性成分の合計量中に27〜65重量%
(D)ポリイソシアネート化合物:硬化性成分の合計量に対して1〜20重量%
(E)熱重合開始剤:硬化性成分の合計量に対して0.001〜10重量%
【請求項2】
さらに、(F)光ラジカル重合開始剤を硬化性成分の合計量に対して0.1〜20重量%を含む請求項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物である請求項1又は請求項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の重量平均分子量が3,000〜40,000である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
(B)成分が、1個の水酸基と1個のエチレン性不飽和基とを有する化合物である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
(B)成分が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである請求項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
(C)成分が、アクリルアミド化合物、炭素数1〜12のアルキル基を有するカルビトール(メタ)アクリレート及び脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
プラスチック製フィルム又はシートが難接着性プラスチック製フィルム又はシートである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
プラスチック製フィルム又はシートがポリオレフィン、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種以上である請求項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
下記工程1〜工程3を順次実施する積層体の製造方法。
工程1:基材の少なくとも一方に、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗工する。
工程2:前記塗工面に他の基材を貼合し、前記基材のいずれかの側から活性エネルギー線を照射するか、又は
前記塗工面に活性エネルギー線を照射した後、他の基材と貼合する。
工程3:工程2で得られた積層体を加熱する。
【請求項11】
前記工程2が、工程1で得られた塗工面に活性エネルギー線を照射した後、他の基材と貼合する工程であり、活性エネルギー線を照射した後の塗工面を半硬化状態とする請求項10記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
工程3における加熱温度が30〜120℃である請求項10又は請求項11記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線又は紫外線等の活性エネルギー線を照射し、さらに加熱することにより種々のプラスチック製フィルム又はシートを接着することが可能な活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関するものであり、高熱・高湿気雰囲気においても接着強度の低下が極めて少ない接着剤組成物に関するものである。本発明の組成物は、プラスチック製フィルム又はシートを含む薄層被着体の接着に好適に使用され、さらに液晶表示素子及び太陽電池バックシート等に使用される各種フィルム又はシートの製造に好適に使用されるものであり、これら技術分野で賞用され得るものである。
尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
又、以下において、特に明示する必要がない場合は、プラスチック製フィルム又はシートをまとめて「プラスチックフィルム等」と表し、フィルム又はシートをまとめて「フィルム等」と表す。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム等の薄層被着体同士、又はプラスチックフィルム等の薄層被着体とこれと他の素材からなる薄層被着体とを貼り合わせるラミネート法においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体やポリウレタン系重合体を含む溶剤型接着剤組成物を第1の薄層被着体に塗布して乾燥させた後、これに第2の薄層被着体をニップ・ローラー等にて圧着するドライラミネート法が主に行われている。
この方法で使用される接着剤組成物は、一般に組成物の塗布量を均一にするため溶剤を多く含むものであるが、このため乾燥時に多量の溶剤蒸気が揮散してしまい、毒性、作業安全性及び環境汚染性が問題となっている。又、当該接着剤組成物は、薄層被着体を貼り合わせた直後に、得られたラミネートフィルムを接着するためのヒートシール、溝を刻設する罫線工程等の後加工工程において、薄層被着体同士が剥離してしまうという問題を有している。
これらの問題を解決する接着剤組成物として、無溶剤系の接着剤組成物が検討されている。
【0003】
無溶剤系接着剤組成物としては、2液型接着剤組成物及び紫外線又は電子線等の活性エネルギー線により硬化する接着剤組成物が広く用いられている。
2液型接着剤組成物としては、主に末端に水酸基を有するポリマーを主剤とし、末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、いわゆるポリウレタン系接着剤組成物が用いられている。しかしながら該組成物は、硬化に長時間を要するという欠点があり、このため薄層被着体の貼り合わせ直後に罫線工程等の後加工工程に入ることができない等の生産性上の問題がある。
これに対して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、硬化速度が速いことから生産性に優れ、最近注目されている。
【0004】
一方、液晶表示装置は、薄型、軽量及び省消費電力等の特長から、自動車用のナビゲーションシステム、携帯電話及びPDA等の小型電子機器から、ワープロやパソコンの画面、さらにはテレビ受像機にも普及している。
近年、当該液晶表示素子に使用される各種光学フィルム等の貼り合わせにも、活性エネルギー線硬化型接着剤が使用されてきている。
【0005】
光学フィルム等としては、偏光板、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、レンズシート及び拡散シート等が挙げられ、これらには様々な種類のプラスチックが用いられている。
【0006】
例えば、偏光板用としては、偏光子としてポリビニルアルコール、偏光子の保護膜としてトリアセチルセルロースが挙げられる。位相差フィルムとしては、ノルボルネン樹脂等のシクロオレフィンポリマー等が挙げられ、輝度向上フィルムをはじめとして、種々の用途にポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等が使用されている。
【0007】
偏光板用の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した組成物、光カチオン重合を利用した組成物及び光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用した組成物が知られている。
【0008】
光ラジカル重合を利用した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、水酸基等を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物(特許文献1)等が知られている。
しかしながら、当該組成物は、硬化時の収縮が大きく、被着体の種類によっては界面での応力発生により十分な剥離強度を得ることが困難であった。
又、この問題を解決するため、ウレタン(メタ)アクリレートやアクリルアミド誘導体を含む組成物が検討されている(例えば、特許文献2等)。
しかしながら、当該組成物は、親水性プラスチックに対する初期接着力は高いものの、実用上要求される耐水性や耐湿熱性が不十分という問題を有するものであった。又、硬化時の収縮応力を、接着剤組成物の柔軟性を向上させることで緩和することも可能であるが、このような手段は接着剤の耐熱性や耐水性を低下させるため、厳しい耐久性が要求される用途においては、ハガレや発泡、クラックといった不具合が発生するという問題があった。
【0009】
光カチオン重合を利用した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分とする組成物(特許文献3)や脂肪族エポキシと、脂環式エポキシ及び/又はオキセタンを含む組成物(特許文献4)等が知られている。
当該組成物は、光ラジカル重合を利用した前記組成物に対して、硬化時の収縮が比較的小さいため、界面での応力発生を抑制できるという利点がある。
しかしながら、光カチオン重合は、水分や塩基性物質による重合阻害が起こることが一般的に広く知られており、湿度の高い環境や、水分を多く含む基材、表面が塩基性の基材においては十分な剥離強度を得ることが困難であった。又、多官能エポキシ樹脂を主成分として含む組成物とすることで、重合阻害による硬化性低下の影響を小さくすることが可能であるが、このような組成物は、高い架橋密度により接着剤層と基材との間の応力が高くなり、接着力が不十分となる等の問題を有するものであった。
【0010】
光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、イソシアヌル環骨格を有する(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ化合物、水酸基を含有する化合物及び光酸発生剤を含む組成物(特許文献5)、2個以上のエポキシ基を有しこの基のうちの少なくとも1個が脂環式エポキシ基であるエポキシ樹脂、2個以上のエポキシ基を有しかつ脂環式エポキシ基を有さないエポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤及び重合性モノマーを含む組成物(特許文献6)、(メタ)アクリル基を2以上有する化合物、水酸基と1個の(メタ)アクリル基を有する化合物、(メタ)アクリル基を有するカチオン重合性化合物、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤を含む組成物(特許文献7)等が知られている。
【0011】
これらの組成物は、硬化時の収縮と水分による重合阻害という問題をハイブリッド化で解決するというものであるが、本発明者らの検討によると以下に示すような問題点があることが判明した。
【0012】
特許文献5で開示されている組成物は、イソシアヌル環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を必須成分として含むものであるが、本発明者らの検討によると、2官能性の光ラジカル重合性化合物が組成物中に多く含まれると、硬化時の収縮はそれほど小さくならず、界面での応力発生を抑制できず、このため、基材によっては十分な剥離強度を得ることが困難であることが判明した。
【0013】
特許文献6で開示されている組成物は、ハイブリッド化された組成物も概念として含むような記載が明細書内になされているが、実施例においては光カチオン重合性モノマーのみで構成された組成物しか示されておらず、具体性に欠けるものである。
【0014】
特許文献7で開示されている組成物は、(メタ)アクリル基を有するカチオン重合性化合物を必須成分として特定割合で含有するが、本発明者らの検討によると、当該化合物が組成物中に多く含まれると、硬化時の収縮はそれほど小さくならず、界面での応力発生を抑制できず、このため、基材によっては十分な剥離強度を得ることが困難であることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−009329号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−177169号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−245925号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2008−134384号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2008−233279号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2008−257199号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2008−260879号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記した用途で使用される各種プラスチックフィルム等において、特にフィルム表面をコロナ処理したとしても接着が困難なPETフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムのような難接着性プラスチックフィルム等に対する接着力が要求されている。さらに、厳しい耐久性が要求される用途に使用される場合、特に、高湿及び高温条件下においても、接着性能が低下しない性能が要求されることが多い。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、難接着性プラスチックフィルム等に対する接着力に優れ、高湿及び高温条件下においても接着力が低下することのない活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決するため種々の検討の結果、ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有するエチレン性不飽和基含有化合物、その他のエチレン性不飽和基含有化合物、ポリイソシアネート及び熱重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が、各種プラスチックフィルム等、その中でもPETフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルムのような難接着性プラスチックフィルム等に対する接着力に優れ、かつ、紫外線吸収剤や顔料等を含み代表的な活性エネルギー線である紫外線を透過させることが極めて困難な基材に対しても好適に使用でき、厳しい耐久性が要求される用途、特に高湿及び高温条件下においても十分な性能を有することを見出し本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の組成物は、各種プラスチックフィルム等、特に難接着性プラスチックフィルム等に対して高温及び高湿条件下においても高い接着力を維持することができ、各種プラスチックフィルム等の薄層被着体の接着に有効であり、特に液晶表示装置、太陽電池等に用いる、光学フィルムの製造に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、下記(A)〜(E)成分を下記の割合で含むプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。
(A)ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物であるウレタン(メタ)アクリレート〔以下、「(A)成分」という〕:(A)〜(C)成分(以下、「硬化性成分」という)の合計量中に10〜70重量%
(B)分子内に水酸基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(B)成分」という〕:硬化性成分中に3〜40重量%
(C)(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物〔以下、「(C)成分」という〕:硬化性成分の合計量中に27〜65重量%
(D)ポリイソシアネート〔以下、「(D)成分」という〕:硬化性成分の合計量に対して1〜20重量%
(E)熱重合開始剤〔以下、「(E)成分」という〕:硬化性成分の合計量に対して0.001〜10重量%
尚、本発明において硬化性成分とは、前記(A)〜(C)成分を意味し、エチレン性不飽和基を有する化合物で、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を意味する。
以下、必須成分の(A)〜(E)成分について説明する。
【0020】
1.(A)成分
(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートである。本発明では、(A)成分を含むことにより、得られる硬化物が高温又は高湿のいずれの条件下においても接着力に優れるものとなる。
(A)成分としては、オリゴマー及びポリマーのいずれも使用可能であり、重量平均分子量500〜50,000のものが好ましく、より好ましく3,000〜40,000のものである。
尚、本発明において、重量平均分子量とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0021】
(A)成分リオール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物である。さらに、(A)成分としては、ポリオールと有機ポリイソシアネートの反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物が好ましい。
【0022】
ポリオールとしては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するポリオールが好ましい。
又、(A)成分としては、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート〔以下、2官能ウレタン(メタ)アクリレートという〕であることが好ましく、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するジオール、有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物である2官能ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格を有するジオールと有機ジイソシアネートとの反応物に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた2官能ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0023】
ここで、ポリエーテル骨格を有するジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオールと、二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
二塩基酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0024】
有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート2量体、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート相互付加物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリス(トリレンジイソシアネート)付加物及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。又、有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましい。
【0025】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
(A)成分は、常法に従い製造されたもので良い。
例えば、ポリオールと有機イソシアネートと付加反応させ、イソシアネート基含有化合物を製造したのちに、これとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させる方法、及びポリオール、有機イソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを同時に反応させる方法等が挙げられる。
これらの反応には、ウレタン化のための触媒を添加することができる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート等のスズ化合物、ビスマスジオクテート等のビスマス化合物、カルシウムジオクテート等のカルシウム化合物が挙げられる。
これらの反応は、無溶剤で行うことも、溶剤存在下で行うこともできる。
【0027】
(A)成分としては、高湿度下の接着強度が特に優れ、組成物の経時的な粘度変化や粘度変化に伴う、硬化後の接着剤の経時的な接着力低下が少ないという点で、エステル結合を持たない、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系グリコールを用いたウレタンアクリレートが好ましい。
【0028】
(A)成分は、前記した化合物を、1種のみを使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(A)成分の割合は、硬化性成分の合計量中に10〜70重量%であり、好ましくは20〜60重量%である。(A)成分の割合が10重量%に満たないと、硬化物の耐熱性や耐水性が不十分となってしてしまい、70重量%を超えると、組成物の粘度が高くなり塗工性が低下したり、硬化物の接着力が不十分となってしまう。
【0029】
2.(B)成分
(B)成分は、分子内に水酸基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B)成分は、後述する(D)成分と併用することで、特に高温及び高湿度下において格段の接着力を向上させることができる。この理由は、(A)及び(C)成分のみの架橋体では、架橋点はエステル結合を介しており、高温、高湿度にさらされるとエステル結合切断が起こるために、架橋点の破断が起こり、耐久性が低下してしまうのに対し、本発明の接着剤組成物はウレタン結合を介した架橋点も含んでいるため、エステル結合の切断が起こっても、強度な接着剤層を保持できるものと考えられる。
又、難接着性プラスチックの接着においては、一般に難接着性プラスチックのコロナ処理が行われるが、コロナ処理により、プラスチック表面に発生した極性基がイソシアネートと結合する反応も起こっているものと推測している。
【0030】
(B)成分における、エチレン性不飽和基としては、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
当該水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を含有するポリオールモノ(メタ)アクリレート;
N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;並びに
ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキプロピルビニルエーテル及びヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
さらに、(B)成分としては、分子内に1個の水酸基と1個のエチレン性不飽和基とを有する化合物が好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0031】
(B)成分は、前記した化合物を、1種のみを使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(B)成分の割合は、硬化性成分の合計量中に3〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。(B)成分の割合が3重量%に満たないと、接着力が不十分となってしまい、30重量%を超えると、硬化物の耐湿熱性や耐水性が不十分となってしまう。
【0032】
3.(C)成分
(C)成分は、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物であり、(A)及び(B)成分以外のエチレン性不飽和化合物であれば任意の化合物を使用することができる。
(C)成分としては、エチレン性不飽和基を含有する化合物であれば種々の化合物が使用できビニル化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、(メタ)アクリルアミド基を1個有する化合物が挙げられる。具体的には、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリレートの具体例としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という)及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「多官能(メタ)アクリレート」という)が挙げられる。
【0035】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する単官能(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する単官能(メタ)アクリレート;
エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート;並びに
(メタ)アクリロリルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のマレイミド基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートにおいて、2官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーも使用でき、エポキシポリ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
ビニル化合物としては、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール及びビニルナフタレンを挙げることができる。
【0038】
(C)成分としては、前記した化合物の中でも基材界面に応力がたまりにくいものが好ましく、(メタ)アクリルアミド化合物や、単官能(メタ)アクリレート及びアクリル当量の大きい多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
さらに、プラスチック浸食性が高い点で、(メタ)アクリルアミド化合物や、単官能(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。
炭素数が4〜12のアルキル差を持つ低Tgの(メタ)アクリレートも好ましく、具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレート、並びにエチルカルビトール(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等の炭素数が1〜12のアルキル基を有するカルビトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、硬化物が耐水性及び耐熱性に優れたものとなる点で、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(C)成分として特に好ましい化合物は、アクリルアミド化合物、炭素数1〜12のアルキル基を有するカルビトール(メタ)アクリレート及び脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上である。
【0039】
(C)成分は、前記した化合物を、1種のみを使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
(C)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量中に27〜65重量%であり、好ましくは35〜60重量%である。(C)成分の割合が27重量%に満たないと、十分な耐湿熱性が得られないものとなってしまい、65重量%を超えると、接着強度が低下したり、又用途に応じてガラス転移温度、透水率、吸水率等の二次的な性能を調節できなくなってしまう。
【0040】
4.(D)成分
(D)成分は、ポリイソシアネート化合物であり、接着剤組成物に活性エネルギー線を照射し、接着剤層が形成されたのちに、さらに、(D)成分を(B)成分の水酸基と反応させることで、耐熱性、耐湿熱性を大幅に向上させることができる。本成分は、過酷な高温・高湿度条件下において、(メタ)アクリレートからなる架橋体のエステル結合が切断された場合にも強固な接着剤層を保持するために必要な成分であり、一分子中に複数のイソシアネートを有していることが必要である。
【0041】
(D)成分としては種々のポリイソシアネートを用いることができる。
具体的には、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート2量体、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート相互付加物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリス(トリレンジイソシアネート)付加物及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。又、有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましい。
市販されているものとしては、日本ポリウレタン(株)製の、コロネートL、コロネートT−65、コロネートT−80、コロネートT−100、ミリオネートMT、ミリオネートMR等や、旭化成ケミカルズ(株)製のデュラネートシリーズ、TPA−100、TKA−100、MFA−75B、MHG−80B、TLA−100、TSA−100、TSS−100、TSE−100、24A−100等を挙げることができる。
【0042】
(D)成分としては、より短時間、低温で反応させる組成物が好ましい場合は、芳香族イソシアネート基を有する化合物が好ましく、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトチレンジイシシアネート二量体等が好ましい。又、反応に時間はかかるものの、長期の屋外暴露で着色が少ない組成物が好ましい場合は、脂肪族イソシアネート基を有する化合物が好ましく、1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体及びイソホロンジイソシアネート等が好ましい。又、特に耐候性が重要な場合は、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体が特に好ましい。
【0043】
(D)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量に対して1〜20重量%であり、好ましくは3〜10重量%である。(D)成分の含有割合が1重量%に満たないと、接着剤層の耐熱性及び耐湿熱性が不十分となり、20重量%を超えると、(D)成分による架橋のひずみを実用上十分なレベルまで低減できず、フィルムのそりが発生してしまう。
【0044】
5.(E)成分
(E)成分は、加熱により分解しラジカルを発生する熱重合開始剤である。
(E)成分を含むことにより、基材に組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射し、さらに加熱させて使用する場合において、基材に対する接着性を向上させることができる。
使用する基材が活性エネルギー線を透過し難い材料の場合、例えば、基材として使用するプラスチックフィルム又はシートが紫外線吸収剤又は/及び顔料等を含んでいる場合には、基材に組成物を貼合した後に活性エネルギー線照射しても十分な接着強度が発現するまで硬化させることができない場合がある。(E)成分を含むことにより、このような基材に組成物を塗工した後、他の基材を貼合して活性エネルギー線を照射した後、加熱するとにより、(B)成分の水酸基と(D)成分が反応するのみではなく、(A)〜(C)成分の未反応エチレン性不飽和基を反応させることでさらに強固に積層体を接着させることができる。特に、後記にするような、本発明の組成物を、基材に組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射し、接着剤層が半硬化状態で増粘してシロップ状になったのちに、基材を貼合して加熱する積層体の製造方法使用する場合においても、同様の作用で基材同士を強固を接着させることができる。
【0045】
(E)成分としては、有機過酸化物及びアゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジーメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0046】
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン及びアゾジ−t−ブタン等が挙げられる。
【0047】
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は、還元剤と組み合わせることによりレドックス触媒とすることも可能である。
(E)成分としては、得られる樹脂シートに気泡が発生することがないため、有機過酸化物が好ましい。
【0048】
(E)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量に対して0.001〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。(E)成分の含有割合が0.001重量%に満たないと、硬化性成分の重合が不十分となり、十分な接着強度がえられないばかりか、未反応成分による臭気が問題となるおそれがあり、10重量%を超えると加熱により急激に重合が進み、フィルム等に変形をもたらすおそれがある。
【0049】
6.その他の成分
本発明の組成物は、上記(A)〜(E)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
本発明の組成物を紫外線又は可視光線により硬化させる場合には、光重合開始剤〔以下、「(F)成分」という〕を配合することができる。又、例えば、自動車用途や太陽電池用途の様に屋外で使用される用途の場合、屋外での熱や光に対して長期にわたり十分な耐久性を保持するため酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤及びシランカップリング剤〔以下、「(G)成分」という〕等を配合することができる。又、湿気硬化性を改善する目的で、湿気硬化用触媒〔以下、「(H)成分」という〕を配合することができる。
以下、それぞれの成分について具体的に説明する。
【0050】
6−1.(F)成分
(F)成分は、光ラジカル重合開始剤である。
(F)成分は、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、エチレン性不飽和基を有する化合物の重合を開始する化合物である。活性エネルギー線として、電子線を用いる場合には(F)成分を配合する必要はない。
【0051】
(F)成分の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4-(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシー2−メチルー1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシー1−[4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノー2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414(旭電化製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチルー(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロー4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチルー9−オキソー9H−チオキサントンー2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピルーN,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0052】
いずれの化合物も配合量や活性エネルギー線照射条件の調節により好適に用いることができるが、活性エネルギー線照射後にフィルムを貼合することから、半硬化させた接着剤層の空気界面の表面タックが大きいほうが良好な接着強度を得られやすい。このことから、一般的に酸素阻害の影響を比較的受けやすく、表面硬化性にやや劣るものが扱いやすいと考えられる。このような観点から、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチルー(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【0053】
(F)成分は、前記した化合物を単独で使用しても、又は二種以上を使用してもよい。
(F)成分の割合は、硬化性成分の合計量に対して0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。(F)成分の割合を0.1重量%以上とすることで、組成物の光硬化性を十分なものとし接着性を向上させることができ、20重量%以下とすることで、接着層の内部硬化性の悪化を防止して接着性を向上させることができる。
【0054】
6−2.(G)成分
(G)成分は、接着剤層と親水性プラスチックとの界面接着強度を改善できるシランカップリング剤である。本発明に用いられるシランカップリング剤としては、基材との接着性向上に寄与できるものであれば特に限定されるものではない。
【0055】
(G)成分としては、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル-N-(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
(G)成分は、前記した化合物を1種のみを使用しても、又は二種以上を使用してもよい。
(G)成分を用いる時の使用割合は、組成物中に0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
(G)成分の使用割合を0.1重量%以上とすることで、組成物の接着力を向上させることができ、10重量%以下とすることで、接着力の経時変化を防止することができる。
【0057】
6−3.(H)成分
(H)成分は、湿気硬化用触媒である。
(H)成分としては、従来の湿気硬化型組成物で使用されているもの、及び湿気により前記(D)を反応させることができるものであれば、種々の化合物が使用可能である。
(G)成分の具体例としては、有機金属化合物や3級アミンを挙げることができる。
【0058】
有機金属化合物の例としては、有機錫化合物、有機鉄化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機ビスマス化合物等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトアセトナート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ及びフェルザチック酸スズ等の錫カルボン酸塩、並びにジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、テトラブチルチタネート及びテトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル、並びにチタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート化合物等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等のジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
有機ビスマス化合物としては、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)、ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)及びオクチル酸ビスマス等が挙げられる。
有機鉄化合物及び有機亜鉛化合物は好ましい化合物であり、後記に詳述する。
【0059】
3級アミン化合物としては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;テトラメチルエチレンジアミン及びテトラメチルヘキサンジアミン等のテトラアルキルアルキレンジアミン;ペンタメチルジエチレントリアミン等のペンタアルキルジアルキレントリアミン;トリメチルアミノエチルピペラジン及びメチルヒドロキシエチルピペラジン等のピペラジン;ジメチルアミノエトキシエタノール等のジアルキルアミノアルキルアルコール;トリメチルアミノエチルエタノールアミンのトリアルキルアミノアルキルアルコール;1,2−ジメチルイミダゾール等のN−アルキルイミダゾール;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル;トリエチレンジアミン〔1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)〕;並びに2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミンが挙げられる。
これら以外の例としては、N−メチルモルホリン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0060】
本発明においては、(A)成分に含まれるウレタン化触媒に由来する金属分を減らすことができ、組成物の絶縁信頼性により優れたものとなることから、(H)成分として有機鉄化合物及び有機亜鉛化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される金属化合物を触媒として使用して製造されたものがより好ましい。
M(X)n ・・・(1)
〔式(1)において、MはFe又はZnを表し、Xは同一又は異なってβ−ジケトン、ハロゲン原子、アシルオキシ基又はアルコキシ基を表し、nは2又は3の整数を表す。〕
【0061】
MはFe又はZnを表し、触媒活性により優れる点でFeが好ましい。
Xで表されるβ−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ノナンジオン、2,8−ジメチルノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニルtert−ブチル及びヘキサフルオロアセチルアセトン等が挙げられ、これらの中でも、アセチルアセトンが、安価である上ウレタン化反応の活性に優れるため好ましい。
Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子及び臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
Xで表されるアシルオキシ基としては、例えば、炭素数3〜20のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基及びオクタデカノイル基等が挙げられる。
Xで表されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及び2−エチルヘキシロキシ基等を挙げることができる。
Xは上記のいずれか1種でも良いし、2種以上の組み合わせでも良い。
これらの中でも、Xとしては、硬化物の電気特性に特に優れたものとなる点でハロゲン原子以外の官能基が好ましく、アセチルアセトン及びヘキサフルオロアセチルアセトンがより好ましく、反応液や組成物への溶解性に優れる点で、特に好ましくはアセチルアセトンである。
【0062】
これらの中でも、下記式(2)で表される鉄のβ−ジケトン錯体が、ウレタン化反応の反応性に特に優れるため好ましい。
Fe(X’)3 ・・・(2)
〔式(2)において、X’はβ−ジケトンを表す。〕
X’で表されるβ−ジケトンとしては、上記のXで表されるβ−ジケトンを選択することが出来る。
【0063】
Xの数を表すnは、2又は3の整数であり、製造安定性が良いため、MがFeの場合はnが3のものが、MがZnの場合はnが2のものが好ましい。
【0064】
金属化合物の具体例としては、Xがβ−ジケトンの場合には、例えば、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)鉄、トリス(テトラフルオロアセチルアセトナート)鉄、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)亜鉛、ビス(テトラフルオロアセチルアセトナート)亜鉛等が挙げられる。Xがハロゲン原子の場合は、例えば、塩化第二鉄及び塩化亜鉛等が挙げられる。Xがアシルオキシ基の場合には、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)鉄、ナフテン酸鉄、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛及びナフテン酸亜鉛等が挙げられる。Xがアルコキシ基の場合は、例えば、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、ジエトキシ亜鉛及びジイソプロポキシ亜鉛等が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、MがFeでありnが3のものが、ウレタン化反応の触媒活性に優れるためより好ましい。具体例としては、トリス(アセチルアセトナート)鉄や塩化第二鉄等を挙げることができ、式(2)で表されるトリス(アセチルアセトナート)鉄が触媒活性に優れるため特に好ましい。
【0066】
(H)成分としては、硬化性に優れる点で、有機錫化合物、有機鉄化合物及び3級アミンが好ましい。
【0067】
(H)成分は、前記化合物を、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
(H)成分の配合割合としては、組成物中に5重量%以下含有することが好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%である。
(H)成分を添加することで湿気硬化時間が短縮でき、一方、5重量%以下にすることにより、組成物の保存安定性を良好にすることができる。
【0068】
6−4.その他成分
本発明の組成物には、前記以外にも、接着剤組成物で通常使用されるその他の成分を配合することができる。
【0069】
耐久性を向上させるための添加剤としては、たとえばフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジt−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を挙げることができる。市販されているものとしては、(株)アデカ製のAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が挙げられる。これらの誘導体で市販品としては、たとえば(株)アデカ製、アデカスタブPEP−4C、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、HP−10、260、522A、329K、1178、1500、135A、3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)アデカ製AO−23、AO−412S、AO−503A等が挙げられる。
これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。これら酸化防止剤の好ましい組合せとしては、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用、及びフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤の併用が挙げられる。
酸化防止剤を用いる時の使用割合は、組成物中に0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。
使用割合が0.1重量%以上とすることで、組成物の耐久性を向上させることができ、5重量%以下とすることで、硬化不足や接着力不足を防止することができる。
【0070】
耐光性を向上させる目的で、紫外線吸収剤を用いてもよく、(株)BASF製チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479等のトリアジン系紫外線吸収剤や、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
これらは1種を用いても2種類以上を用いてもよい。
紫外線吸収剤を用いる時の使用割合は、組成物中に0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。5重量%以下とすることで、組成物の硬化性低下を防止することができる。
【0071】
7.プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物
本発明の組成物は、前記(A)〜(E)成分を必須とするものである。
組成物の製造方法としては、前記(A)〜(E)成分を、必要に応じてさらにその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。
この場合、必要に応じて加熱することもできる。加熱温度としては、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良いが、30〜80℃が好ましい。但し、(D)成分は、(B)成分と混合することで緩やかに反応が進み、(E)成分は加熱によりラジカルを発生しエチレン性不飽和結合の重合が起こる可能性があるため、あらかじめ(D)成分及び(E)以外の成分を配合しておき、塗工する直前に(D)成分及び(E)を加え、なるべく40℃以下で撹拌・混合することが好ましい。又、(D)成分配合後は、なるべく速やかに使い切ることが好ましい。
本発明の組成物の粘度は目的に応じて適宜設定すれば良いが、(D)成分を除いた混合物の粘度として、100〜5,000mPa・sが好ましく、より好ましくは300〜4,000mPa・sである。
【0072】
本発明の組成物は、プラスチックフィルム等同士の接着、プラスチックフィルム等とこれ以外の種々の基材(以下、その他基材という)の接着に使用することができる。
尚、以下において、単に「基材」と表記した場合は、プラスチックフィルム等及びその他基材の総称を意味する。
その他基材としては、フィルム状又はシート状ではないプラスチック(以下、「非フィルム状プラスチック」という)、紙及び金属等が挙げられる。
【0073】
プラスチックフィルム等における材質としては、例えばポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;セルロース及びトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ABS樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリビニルアルコール;ノルボルネン樹脂等のシクロオレフィンポリマー;ポリメチルメタクリレート;アクリル/スチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;並びに塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの中でも、特に難接着性とされるプラスチックフィルム等にも好ましく適用できる。具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
プラスチックフィルム等の膜厚としては、目的に応じて種々の膜厚のものが使用でき、5〜100μmが好ましい。
非フィルム状プラスチックの材質としても、前記と同様のものが挙げられる。なお、本発明において使用される基材は透明である必要はなく、紫外線吸剤入りフィルムのように紫外線を透過しないものや、顔料入りのフィルム、銅箔、アルミニウム箔のような金属箔、あるいは鋼板などであってもよい。
紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙及び段ボール紙等が挙げられる。
金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0074】
組成物の使用方法としては、常法に従えば良く、基材に塗布した後、活性エネルギー線照射を行い、接着剤組成物をシロップ状としたのちにもう一方の基材と貼り合せ、加熱方法等が挙げられる。活性エネルギー線照射を行わずに加熱のみを行うことでも組成物を硬化させることはできるが、基材として膜厚が薄いフィルムを用いる場合には、加熱による熱に加え多大な重合熱が積層体に発生するため、フィルムの変形が起こり、良好な積層体を得ることができない。
【0075】
基材に対する塗工は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、コンマコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ダイコーター及びカーテンコーター等の方法が挙げられる。
又、本発明の組成物の塗布厚さは、使用する基材及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは1〜25μmである。
【0076】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線及び電子線等が挙げられるが、安価な装置を使用することができるため、紫外線が好ましい。
紫外線により硬化させる場合の光源としては、様々のものを使用することができ、例えば加圧或いは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯及びLED等が挙げられる。
電子線により硬化させる場合には、使用できるEB照射装置としては種々の装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型及び共振変圧器型の装置等が挙げられる。
プラスチックフィルム等が顔料等を含み、紫外線硬化が困難に場合でも、電子線照射によれば、組成物を好ましく硬化させることができる。
【0077】
本発明の組成物は、活性エネルギー線を照射したのちに、フィルムを積層し、積層体を加熱することで高い接着力を発現する。
この場合の加熱温度としては、30〜120℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。加熱温度を30以上にすることにより、短時間で効率的に硬化反応を行うことができ、120℃以下とすることによりプラスチックフィルムの熱変形を防ぐことができる。
加熱方法としては、熱風乾燥器等を挙げることができる。
【0078】
8.積層体の製造方法
本発明の組成物は、積層体の製造に好ましく使用することができる。
好ましい積層体の製造方法としては、下記工程1〜工程3を順次実施する製造方法である。
工程1:基材の少なくとも一方に、組成物を塗工する。
工程2:前記塗工面に他の基材を貼合し、前記基材のいずれかの側から活性エネルギー線を照射するか、又は
前記塗工面に活性エネルギー線を照射した後、他の基材と貼合する。
工程3:工程2で得られた積層体を加熱する。
工程1〜工程3において、塗工方法、活性エネルギー線照射方法及び加熱方法、並びにそれらの条件等は、上記と同様の方法に従えば良い。
【0079】
本発明においては、前記工程2が、工程1で得られた塗工面に活性エネルギー線を照射した後、他の基材と貼合する工程であり、活性エネルギー線を照射した後の塗工面を半硬化状態とする積層体の製造方法が好ましい。
当該積層体の製造方法は、使用する基材が活性エネルギー線を透過し難い材料を使用する場合に好適に使用することができる。例えば、前記したプラスチックフィルム等が、紫外線吸収剤又は/及び顔料等を含む場合等が挙げられる。
【0080】
塗工面を半硬化状態とする方法としては、活性エネルギー線の照射条件として、照射強度及び照射時間(コンベアスピード)を調整し、組成物が半硬化状態となる積算光量を適宜設定する。
本発明において半硬化状態とは、塗工面に活性エネルギー線を照射した後の硬化膜が触手でタックを有する状態を意味する。さらに、本発明においてタックを有する状態とは、活性エネルギー線照射前後の組成物について赤外線吸収スペクトルを測定し、活性エネルギー線照射前後の組成物のエチレン性不飽和基の吸収強度変化より算出した反応率が、5〜60%であることを意味する。
【0081】
本発明の組成物から得られたラミネートフィルム等の積層体は、高温及び高湿条件下における接着力に優れているため、液晶表示装置等に用いる偏光板、保護フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルム、並びに太陽電池用バックシート等の耐久性を求められるフィルムに好適に使用できる。
【0082】
偏光板の製造における使用方法としては、偏光子と保護膜の接着、偏光子と偏光子の接着、保護膜と位相差フィルムの接着が挙げられる。この場合、偏光子としては、ポリビニルアルコール等が挙げられ、保護フィルムとしては、トリアセチルアセチルセルロース及びポリメチルメタクリレート等が挙げられ、位相差フィルムとしてはノルボルネン樹脂等のシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。
偏光板の製造における使用方法としては、偏光子と保護膜の接着、偏光子と偏光子の接着、保護膜と位相差フィルムの接着が挙げられる。この場合、偏光子としては、ポリビニルアルコール等が挙げられ、保護フィルムとしては、トリアセチルアセチルセルロース及びポリメチルメタクリレート等が挙げられ、位相差フィルムとしてはノルボルネン樹脂等のシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。
太陽電池の製造における使用方法としては、太陽電池セルとバックシート材の接着に使用することができる。太陽電池セルは、非フィルム状プラスチックに該当し、シリコン等で構成されるセルがエチレン−酢酸ビニル共重合体等の封止されている。当該セルの下部には、保護フィルムとしてのバックシート材を有しており、当該セルの下部とバックシート材の接着に使用することができる。
バックシート材としては、ポリフッ化ビニル、PETフィルム及びシクロフィンフィルム及びポリオレフィン等が挙げられる。が使用される。
バックシート材は、複数のフィルムから構成される場合があり、バックシート材製造において、それぞれのフィルムの接着に使用することができる。この場合のフィルムとしては、PETフィルム、シクロフィンフィルム及びポリオレフィン、並びにアルミ箔等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の各例における「部」は重量%を意味する。
【0084】
○実施例1〜同5、比較例1〜同4
下記表1及び表2に示す(A)〜(C)、(F)、(G)成分を、60℃で1時間加熱撹拌して溶解させ(D)成分及び(E)成分を除く混合物を得た。当該(D)成分及び(E)成分を除く混合物について、25℃における粘度をE型粘度計より測定した。それらの結果を表1及び表2に示す。
使用直前で、前記混合物中に下記表1及び表2に示す(D)成分及び(E)成分を30℃で1時間加熱撹拌して活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を製造した。
得られた組成物を、下記の試験方法に従い評価した。それらの結果を表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び表2における括弧の数字は部数を意味する。又、表1及び表2における略号は、下記の通りである。
1)(A)成分
・KY−303:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量:15,000、根上工業(株)製、商品名アートレジンKY−303
・OT−1001:ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量:40,000、東亞合成(株)製、商品名アロニックスOT−1001
・UN−9200:ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、重量平均分子量:1,000、根上工業(株)製、商品名アートレジンUN−9200A
2)(B)成分
・HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトエステルHOP−A
・HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製4−HBA
3)(C)成分
・IBXA:イソボルニルアクリレート、共栄社化学(株)製 ライトアクリレートIB−XA
・#190:エチルカルビトールアクリレート、大阪有機化学工業(株)製 ビスコート190
・THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートTHF−A
・DMAA:ジメチルアクリルアミド、(株)興人製 DMAA
・M−140:N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、東亞合成(株)製 アロニックスM−140
・FA−513AS:ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業(株)製 FA−513AS
4)(D)成分
・TPA−100:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体、旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートTPA−100
・CNL−45:トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの反応物からなるポリイソシアネート、日本ポリウレタン(株)製 コロネートL−45
5)(E)成分
・PV:t−ヘキシルパーオキシピバレート、日油(株)製 パーヘキシルPV
・BP:ナイパーBO、日油(株)製 過酸化ベンゾイル
6)(F)成分
・TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF製 DAROCUR TPO
・Irg819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF製 IRGACURE819
・Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF製 IRGACURE184
7)(G)成分
・AO−80:3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、(株)アデカ製 アデカスタブAO−80
・TV900:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(株)BASF製 TINUVIN900
【0088】
○積層体の製造方法
下記4種のプラスチック製フィルムを使用し、積層体を製造した。
・PET:PETフィルム、東レ(株)製 ルミラーT−60(50μm)
・COP:シクロオレフィンフィルム、日本ゼオン(株)製 ゼオノア(100μm)
・OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、サン・トックス(株)製 サントックス−OP PA−21(40μm)
・EVA:エチレン酢酸ビニル樹脂系シート、長谷川化学工業株式会社 サンエーシート(1mm)
プラスチック製フィルム上に前記で得られた組成物をバーコーターにより25μmの厚みに塗布した後、120W/cm集光型のメタルハライドランプを用いて、コンベアスピ−ド30m/minで紫外線照射して硬化させ、半硬化状態とした。紫外線強度は500mW/cm2、積算光量は170mJ/cm2であった(いずれも365nmでの値)。紫外線照射後の硬化膜を触手したところ、タックを有していた。
実施例及び比較例の組成物の半硬化状態を確認するため、活性エネルギー線照射前後の組成物について、Spectrum 100 FTIR Spectrometer(Perkin−Elmer社製)を使用して赤外線吸収スペクトルを測定した。活性エネルギー線照射前後のアクリロイル基の吸収強度変化より、反応率を算出した。それらの結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
ついで、もう一枚のプラスチック製フィルムを貼合し、試験体であるラミネートフィルムを製造した。
【0091】
得られた試験体を使用し、60℃及び80℃の温度でそれぞれ24時間加熱し、積層体を製造した。
その後、下記の条件で剥離強度を引張試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン5564)により測定した。
加熱方法としては、熱風乾燥機をそれぞれ60℃及び80℃の温度に設定し、その中に試験体を入れそれぞれ24時間加熱した。
・試験片:25mm×100mm
・試験方法:T字剥離
・剥離速度:200mm/min
次に、上記と同様にして3つの温度で加熱した後の試験体を、下記条件で高温試験及び温水試験を行った後、上記と同様の方法及び条件で剥離強度を測定した。数値がないものは、温水中で積層体が剥がれたものである。
・温水浸漬試験後:85℃温水で24時間
以上の結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
本発明の組成物である実施例1〜同5の組成物は、初期接着強度に優れ、温水浸漬後の接着強度も優れるものであった。
これに対して、(B)成分と(D)成分を含まない比較例1、2の組成物は、活性エネルギー線照射後に貼合、加熱しても全く接着強度が得られなかった。(A)成分を含まない比較例3の組成物は、活性エネルギー線照射による硬化性が低いため、加熱中に未反応成分が揮発し、接着剤層が得られなかった。(E)成分を含まない比較例4の組成物は活性エネルギー線照射により半硬化はできるものの、加熱時にエチレン性不飽和基を有する化合物の反応率を上げることができないため、本来の接着強度が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の組成物は、各種プラスチックフィルム等の接着剤として、中でも難接着プラスチック等の接着剤として使用することができ、特に液晶表示装置等の光学フィルムの製造、太陽電池バックシート等に好適に使用できる。