特許第5853874号(P5853874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5853874焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853874
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20160120BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C22B1/20 B
   C22B1/16 L
   C22B1/16 N
   C22B1/20 L
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-138162(P2012-138162)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-1435(P2014-1435A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 一昭
(72)【発明者】
【氏名】矢部 英昭
(72)【発明者】
【氏名】樋口 謙一
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−330854(JP,A)
【文献】 特開平11−257872(JP,A)
【文献】 特開昭56−093830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填することを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法であり、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした充填層上層の擬似粒子原料が、
鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料を混合、造粒して擬似粒子原料を製造する工程と、前記工程で製造された擬似粒子原料に、更に炭材を添加して造粒する工程を、
実施して製造された擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、粉コークスであることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーであることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上30%以下であることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項6】
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーと粉コークスを混合したものであることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項7】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項6に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項8】
配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填し、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料が、
鉄鉱石、副原料及び石灰石系副原料と、
褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーを
一緒に混合、造粒し製造した擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項9】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上40%以下であることを特徴とする請求項に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項10】
配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填し、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料が、
褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーと粉コークスの混合物と、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料を混合、造粒し製造した擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【請求項11】
炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上部の層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項10に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鐵所における下方吸引型焼結機を用いた焼結鉱の製造は、次のようにして行われる。焼結原料は、主原料である鉄鉱石や製鉄プロセスで発生する製鉄ダストなどの鉄含有原料、焼結反応に必要となる石灰石や蛇紋岩などの副原料及び熱源としてのコークス粉等の炭材とを配合して形成される。
【0003】
焼結原料は、下方吸引型焼結機に装入する前に、ドラム型ミキサーなどの混合・造粒機を用いて、水添加しながら混合、造粒し、主として、粒径1mm以上の核粒子と、その周囲に付着した粒径0.5mm以下の付着粉とからなる擬似粒子とする。
このことにより、焼結機に装入した後、焼結パレット内に形成された原料充填層内の通気性を維持し、焼結原料の焼結反応を促進し、高い生産性を確保することができる。
【0004】
擬似粒子化された焼結原料は、焼結機の給鉱部で、焼結パレット内に装入され、原料充填層を形成する。その後、点火炉で、その表面のコークス粉を着火するとともに、焼結機下層に空気を吸引することにより、コークス粉の燃焼点を下方に移動させる。
【0005】
燃焼熱により原料充填層の上層から下層にかけて焼結反応は順次進行し、焼結パレ
ットが移動し排鉱部に到達するまでに焼結は完了する。焼結パレット内の焼結ケーキ(塊)は、排鉱部から排出された後、破砕され、所定粒度の高炉用の焼結鉱が製造される。焼結鉱の製造において発生した高炉用の焼結鉱としての所定粒径より小さい焼結鉱粉は、返鉱として、焼結原料中に配合されて、再度焼結される。
【0006】
大量の銑鉄を製造する製鉄所の高炉にとって、焼結機の生産性の向上、焼結品質の向上及び焼結の成品歩留の向上が重要である。
【0007】
焼結機の生産性を向上させる手段として、焼結用燃料の燃焼性を向上させる技術が試みられてきた。
焼結用燃料の燃焼性を向上させる技術として、粉コークスの後添加技術がある。当該技術は、第一段階として鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料を混合、造粒して擬似粒子原料を製造し、次に、第二段階として前記擬似粒子原料に粉コークスを添加し、造粒して最終の擬似粒子原料を製造する。粉コークスは、第二段階で製造された擬似粒子の表面に付着されており、擬似粒子の中に埋没されないため、粉コークスの燃焼性が向上する。
【0008】
又、焼結用燃料の燃焼性を向上させる技術として、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭を加熱によって熱分解処理することにより得られるチャーを焼結用燃料に用いる技術がある。
【0009】
高炉用焼結鉱を製造する焼結用擬似粒子原料としては、平均粒径が2mm以上の粗粒の鉄鉱石を核とする第一層を有し、その第一層の外表面を覆うように石灰石系粉原料と炭材系粉原料を含まない平均粒径が2mm未満の細粒の鉄鉱石および、SiO含有原料を付着させた第二層を有するとともに、さらに第三層目以降として石灰石系粉原料および炭材系粉原料を付着させたことを特徴とする焼結用擬似粒子原料に関する発明が開示されている(特許文献1)。
【0010】
また、粉コークスを除く焼結原料を一度、ドラムミキサーに投入し、所定時間造粒後、粉コークスのみを投入し、再び造粒操作を行い製造した擬似粒子を用いた粉コークス後添加の焼結鍋試験の開示がある(非特許文献1)。
【0011】
また、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭を、循環流動層加熱炉で600℃から900℃の温度まで加熱して製造した燃焼性の高い石炭チャーを用いた焼結試験に関する開示がある(特許文献2)。
【0012】
また、石炭チャーより燃焼性の高い木炭チャーを用いた焼結試験に関する開示がある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−254929号公報
【特許文献2】国際公開第01/092588号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】鉄と鋼 vol.50(2004)No.8
【非特許文献2】ISIJ International,vol.49(2009)No.2,PP,195〜202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1の記載によれば、石灰石系粉原料および炭材系粉原料を擬似粒子原料の表面に付着させることにより、焼結生産性、焼結鉱の被還元性及びシャッター強度が向上する記載がある。しかし、焼結鉱の成品歩留に関しては記述がない。
非特許文献1の記載によれば、粉コークスの後添加により、焼結生産性向上以外に焼結鉱の成品歩留低下の記載がある。
特許文献2の記載によれば、配合原料中の凝結材使用割合が一定ならば、凝結材の燃焼速度が大きくかつ燃焼温度が高いほど、凝結材の燃焼完了時間が短くなりかつ焼結鉱の歩留が向上して、焼結鉱の生産性が向上する(段落「0009」)。
非特許文献2の記載によれば、燃焼性の高い木炭チャーの使用により焼結生産性は向上するが焼結鉱の強度が低下する。
【0016】
上記の特許文献、非特許文献によると、焼結用燃料の燃焼性を高めると、焼結生産性は向上するが、焼結鉱の成品歩留は、向上する記載もあるが低下する記載もあり、定かでない。これは、焼結操業の条件によって、焼結強度、焼結鉱の成品歩留が影響を受けるからであると考えられる。
【0017】
本発明の目的は、焼結生産性を向上させると共に、焼結鉱の成品歩留も向上させることができる操業を提供することである。そのために、焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、燃焼性を高めた固形燃料を焼結充填層の上層にのみ装入することにより、
焼結生産性を向上させると共に、焼結鉱の成品歩留も向上させることができるという知見
を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その発明の要旨は、以下のとおりであ
る。
(1)配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填することを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法であり、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした充填層上層の擬似粒子原料が、
鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料を混合、造粒して擬似粒子原料を製造する工程と、前記工程で製造された擬似粒子原料に、更に炭材を添加して造粒する工程を、
実施して製造された擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(2)前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、粉コークスであることを特徴とする(1)に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(3)炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする(2)に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(4)前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーであることを特徴とする(1)に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(5)炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上30%以下であることを特徴とする()に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(6)前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料に用いられる充填層上層の炭材が、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーと粉コークスを混合したものであることを特徴とする()に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(7)炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする()に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(8)配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填し、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料が、
鉄鉱石、副原料及び石灰石系副原料と、
褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーを
一緒に混合、造粒し製造した擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(9)炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上層部層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上40%以下であることを特徴とする()に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(10)配合原料をドワイトロイド式焼結機のパレット上に上下2層に充填し、下方に向けて空気を吸引しながら配合原料に含まれる炭材を燃焼させ、その燃焼熱により配合原料を焼結させて焼結鉱を製造する方法であって、
パレット上の充填層下層には、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料及び炭材を混合、造粒して製造した擬似粒子原料を充填し、
パレット上の充填層上層には、炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填し、
前記炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料が、
褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭の少なくともいずれかを加熱して熱分解処理することにより得られるチャーと粉コークスの混合物と、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料を混合、造粒し製造した擬似粒子原料であることを特徴とする焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
(11)炭材を充填層下層の炭材より高燃焼性とした擬似粒子原料を充填する充填層上部の層厚の充填層全部の層厚に対する割合が、10%以上50%以下であることを特徴とする(10)に記載の焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
炭材の燃焼性を高め、焼結生産性を向上させると共に、焼結鉱の成品歩留も向上させる操業として、焼結層の上層に高燃焼性炭材を配合した焼結鉱の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】焼結鍋試験装置の概略図。
図2】原料充填層の高さ方向の焼結ケーキの低密度領域の比率を示す図。
図3】原料の焼成過程における排ガス中の酸素濃度を示す図。
図4】粉コークスの後添加の効果を示す図。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。
図5】粉コークス及びチャーの燃焼性を示す図。(A)は粉コークス、(B)はチャー1、(C)はチャー2の燃焼性である。
図6】チャー1の後添加の効果を示す図。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。
図7】チャー1の前添加の効果を示す図。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。
図8】粉コークスとチャー1の混合物を前添加した場合の効果を示す図。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
下方吸引型焼結機を用いた焼結鉱の製造において、炭材の燃焼性を高めると、燃料の燃焼速度が早くなり、焼結速度が向上し、焼結時間は短縮し、焼結生産性は向上する。
一方、前述の特許文献等によると、炭材の燃焼性を高めた場合、焼結鉱の成品歩留は、向上することもあるが低下することもあり、定かでない。
そこで、本発明者は、炭材の燃焼性を高めた場合の焼結鉱の成品歩留への影響を検討した。
【0022】
炭材の燃焼性を高めた場合の原料充填層内の温度と層高毎の焼結密度を測定する実験を行った。実験に用いた焼結鍋試験装置の概略図を図1に示す。
この焼結鍋試験装置は、点火炉1、焼結鍋2、風箱3、ブロアー4及び分析計5を備える。焼結鍋2の直径は、300mm、層高600mmであり、焼結鍋2に試験体となる炭材の燃焼性を高めた擬似粒子原料を装入し、点火炉1で点火して表面の炭材を加熱する。同時にブロアー4を起動して、風箱3を介して焼結鍋2で生じた排気ガスを排出し、この排気ガスを分析計5で分析する。
燃焼性を高めた擬似粒子原料は、粉コークスの後添加により作成したものである。即ち、鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料に水分を外添し、直径1,000mmのドラムミキサーを用いて1分間混合したのち3分40秒間造粒して擬似粒子を製造した後に、更に、粉コークスを添加して20秒間、造粒して製造した擬似粒子原料である。このように作成された擬似粒子原料は、一旦製造した鉄鉱石等の擬似粒子の表面を粉コークスにより被覆することから、粉コークスが擬似粒子内に埋没されることがなく、粉コークスの燃焼性を高めることができる。
混合、造粒した配合原料を焼結鍋試験装置に充填し、点火90秒、吸引負圧12kPa一定の条件で焼成した。焼成中は、層高の異なる3ヶ所で焼結層内の温度を測定し、排ガス中のCO、CO、Oの濃度も測定した。試験に用いた原料配合を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表2に原料充填層の上層、中層及び下層における焼成中の最高温度を測定した結果を示す。ベースは、通常の混合・造粒方法の場合、即ち、粉コークスを鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料と一緒に混合、造粒して擬似粒子原料を製造した場合である。後添加試験は、粉コークスの後添加により擬似粒子原料を製造し、粉コークスの燃焼性を高めた場合である。
又、上層、中層及び下層の位置は、原料充填層の最下面からの距離である。
【0025】
【表2】
【0026】
表2において、ベースに対し、粉コークスの後添加により上層の最高温度は上昇したが、中層、下層の最高温度は低下した。
【0027】
X線は固体を透過する性質があり、さらにこの透過度は固体の密度に依存する。この性質を利用すると、焼結ケーキの空隙と固体を分離することができ、さらに固体領域中の密度に関する情報を得ることができる。固体領域でX線透過度の比較的高い部分は低密度であり、全固体の体積に対する低密度領域の体積比率が高いと歩留が低くなることを事前の試験で確認した。
図2に原料充填層の高さ方向の低密度領域比率(%)を示す。
図2において、粉コークスの燃焼性を高めた後添加試験では、ベースに対し、原料充填層の上層の焼結鉱の密度は上昇したが、中層、下層の焼結鉱の密度は低下した。このことは、上述の上層の最高温度の増加と中層、下層の最高温度の低下に対応する。
【0028】
次に、図3に原料の焼成過程における排ガス中の酸素濃度を示す。排ガス温度が最高になった時間を焼成完了時間として、経過時間に対する焼成完了時間の比を焼成完了位置と定義し、図3の横軸に記載した。点火初期は、原料の温度が低いことから、不活発な燃焼状態で粉コークスと反応することなく排気される酸素の量は多いが、焼成が進むにつれて活発な燃焼状態となり、排気中の酸素は、低くなる。原料の焼成が完了すると、送風中の酸素は、粉コークスとの反応しなくなるため、排気中酸素濃度は上昇する。ベースに対し、後添加により粉コークスの燃焼性を高めた場合、排ガス中の酸素は、低い。投入した炭素量、排ガス組成および排ガス流量から粉コークス中の炭素のガス化率を算出することができるが、炭素のガス化率は、ベースが92.9%であるのに対し、粉コークスの燃焼性を高めた後添加試験では、98.2%で粉コークスの炭素は、有効に燃焼している。
【0029】
表2、図2図3の結果より、粉コークスの燃焼性を高めた後添加試験においては、原料充填層の中層、下層の温度は、若干低下するが、上層の温度が大幅に上昇し、全体として原料充填層の上層、中層、下層の温度が均一化し、焼結密度が向上する。
【0030】
ここで、粉コークスの燃焼性を高めることにより、原料充填層の中層、下層の温度が若干低下する理由は、以下のように考える。
焼結機においては、単位時間当たりに吸引する空気量は一定である。粉コークスの後添加により、擬似粒子原料の粉コークスの燃焼性が高まるので、単位時間に燃焼する燃料燃焼量は増加し、焼結速度は向上する。
【0031】
焼結機の吸引ガスは室温の空気であるが、燃焼が完了した高温領域を吸引空気が通過し、燃焼領域に供給される。この高温ガスは燃焼領域の予熱作用を持つ。ただし、充填層上層で予熱作用は小さくなると考えられる。これは上層において燃焼領域よりも上に形成される高温領域は下層に比べて小さいためである。実際に充填層下層で、焼成温度が上昇し、焼結鉱密度は高くなり、充填層上部で、焼成温度が低下し、焼結鉱密度は低くなった。
又、焼結機の単位時間当たりに吸引する空気量は一定であるから、粉コークスを高燃焼性にすれば、その燃焼に消費される酸素量は増加し、排ガス中の酸素量は減少する。
擬似粒子原料に含まれる固形燃料の燃焼性が向上すると、燃焼速度が速くなり、燃焼完了時間が短くなる。その結果、充填層下層の原料が燃焼する際、その上部から供給される高温ガスにより予熱される時間が短くなることとなる。すなわち、充填層下層の擬似粒子原料で、固形燃料の燃焼性向上により燃焼温度が高くなるというプラスの要素と、供給される高温ガスで予熱される時間が短くなるという、マイナスの要素を合わせ持つ。その結果、操業条件により、歩留が上がることもあれば、下がることもありうる。
予熱効果を期待できない充填層上層は燃焼性を高めて焼結温度を上昇させることが重要と考える。一方、予熱効果を期待できる充填層下層は、焼成時間の短縮による予熱時間の減少を防止して予熱時間を確保することが重要と考えられる。この二つを満足する焼結方法によって焼結機全体の生産性を維持し、歩留を向上させることができるとわかった。
そこで、本願発明者は、「炭材を高燃焼性とした擬似粒子原料をパレット充填層上層にのみ充填すること」により、焼結速度を維持しつつ、充填層上層の層内温度を上昇し、焼結鉱密度を高め、焼結鉱の歩留を向上させることができるとわかった。
粉コークスを後添加した擬似粒子原料を充填層の上層のみに充填することにより、原料充填層上層のFFSが上昇し、焼結速度を向上するとともに、充填層上層の温度を上げ、焼結鉱の歩留を向上させることができる。
一方、原料充填層下層では、固形燃料は通常の粉コークスであり、FFSの上昇はなく、原料の予熱時間の短縮がないため、焼結温度の落ち込みもないと考えた。
【0032】
本発明は、下方吸引型焼結機を用いた焼結鉱の製造において、焼結鉱製造設備のパレット上に給鉱された原料充填層の上層に燃焼性を高めた炭材を装入することを特徴とする。
【実施例1】
【0033】
[実施例1]
図1に示す焼結鍋試験装置を用い、粉コークスの後添加により燃焼性を高めた擬似粒子原料を原料充填層の上層に充填し、生産性と歩留に及ぼす影響を調査する試験を行った。試験に用いた原料配合は表1に示すものである。
粉コークスの燃焼性を高めた擬似粒子原料を充填した上層の全層厚に対する割合を0.1〜1.0に変化させた。ベースは、燃焼性を高めた擬似粒子原料のない、通常の操業であり、上層の全層厚に対する割合が1.0は、原料充填層の全層が、燃焼性を高めた擬似粒子原料の場合である。図4に粉コークスの後添加の効果を示す。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。
図4の、ベースに対し、生産性は向上する。歩留は、燃焼性を高めた擬似粒子原料の上層の全層厚に対する割合を0.1〜0.5の場合に、ベースに対し向上するが0.6以下では、若干、低下する。
粉コークスの後添加により燃焼性を高めた擬似粒子原料を上層にのみ充填することにより、生産性、歩留がともに、向上する。
【0034】
[実施例2]
燃焼性が高い固形燃料として、褐炭、亜瀝青炭又は高揮発瀝青炭を800℃に加熱して熱分解処理することにより得られるチャーを用いて実験を行った。低品位炭を加熱して熱分解すると、石炭中の揮発分は石炭ガスとして放出され、同時にタールも石炭ガスとともに放出され、残留後の残渣の固形分は、チャーとなる。チャーは、粉コークスと比較し、燃焼速度が速い。
表3に、試験に用いたチャー及び、その原料である原炭の性状を示す。
【0035】
【表3】
【0036】
示差熱天秤を用いて、室温から700℃までN雰囲気中で加熱し、700℃でAir燃焼させることにより燃焼速度を評価した。表3に示すチャーの燃焼速度を粉コークスと比較して、図5に示す。(A)は粉コークス、(B)はチャー1、(C)はチャー2の燃焼性である。燃焼により減少した重量の全重量に対する比率をTG(wt%)とすると、TG(wt%)の減少が速いほど高燃焼速度であることを示す。チャー2のTG(wt%)の低下は早く、燃焼速度は、チャー2>チャー1>粉コークスであった。
【0037】
チャー1の後添加により燃焼性を高めた擬似粒子原料を原料充填層の上層に充填し、生産性と歩留に及ぼす影響を調査する試験を行った。図6にチャー1の後添加の効果を示す。チャー1の後添加により燃焼性を高めた擬似粒子原料を用いた上層の全層厚に対する割合が0.1〜0.3の場合、粉コークスを後添加した場合に比べ、生産性及び歩留の向上は大きかった。図中、チャー2の後添加により燃焼性を高めた擬似粒子原料を用いた上層の全層厚に対する割合が0.3(●印)の場合の結果を示すが、燃焼速度が速いチャー2は、チャー1の場合より、若干、生産性及び歩留が向上した。
又、図中、粉コークスとチャー2を1:1に混合した炭材を後添加して、原料充填層の上層に充填した試験例(×印)を示す。混合した炭材の場合、粉コークスまたはチャーの単独の場合に比較して、生産性及び歩留は、低かった。即ち相乗効果は見られなかった。
【0038】
[実施例3]
図7にチャー1の前添加の効果を示す。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。チャー1の前添加とは、チャー1を鉄鉱石、副原料、石灰石系副原料と共に混合、造粒して擬似粒子を製造し、原料充填層の上層に充填する場合である。原料充填層の上層の全層厚に対する割合が0.1〜0.4の範囲で、歩留の向上が見られた。しかし、図6のチャー1の後添加に比べ、生産性及び歩留の向上は、若干劣る。前添加の場合、チャーは、擬似粒子の中に埋没され、燃焼性の低下を招いたためと考えられる。
【0039】
[実施例4]
図8に粉コークスとチャー1を1:1に混合した炭材を前添加して、原料充填層の上層に充填した場合の効果を示す。(A)は歩留の変化、(B)は生産性変化である。原料充填層の上層の全層厚に対する割合が0.1〜0.5の範囲で、歩留の向上が見られた。しかし、図7のチャー1の前添加に比べ、生産性及び歩留の向上は、若干劣った。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、焼結生産性を向上させると共に、焼結鉱の成品歩留も向上させることができる操業として利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…点火炉、2…焼結鍋、3…風箱、4…ブロアー、5…分析計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8