(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理基板の下方に配置される蒸発源から蒸着材料を上方に向けて蒸発させる上方蒸着方式の蒸着装置が知られている。しかし、上方蒸着方式の場合、被処理基板を蒸発源上方で把持する必要があるため、その把持部分に成膜を行うことができない。そこで、載置された被処理基板の上方から蒸着材料を下方に向けて蒸発させて多面的な成膜を行うことができる下方蒸着方式の蒸着装置のニーズが高まってきている。
【0003】
下方蒸着装置の従来例として、例えば特許文献1には、焼結体の底部を有するリザーバに収容された蒸着材料が加熱電極によって加熱され、溶融した蒸着材料が焼結体の孔から下方に飛散する蒸着装置が開示されている。特許文献2にも、多数の蒸発孔を下面に有する加熱トレーに材料供給手段から蒸着材料が供給されるとともに加熱され、溶融された蒸着材料が蒸発孔から滲み出て蒸発することによって下方への蒸着が行われる蒸着装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、加熱されるホルダの上方から金属線材が供給され、溶融した金属材料がホルダ及びハースライナーに保持され、焼結体のハースライナーの下面に浸み出した溶融金属が、下方からのプラズマビームの誘導により蒸気ビームとして下方に出射される成膜装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1乃至3のいずれの装置も、溶融した蒸着材料を溜めておくリザーバ等の底部の孔から溶融材料を蒸発させる構成のため、孔が目詰まりする場合があり、蒸発量が安定し難いという問題があった。また、孔径が小さ過ぎると溶融材料が底部下面に到達できず、孔径が大き過ぎると溶融材料が液体又は固体となって底部から落下する可能性があり、最適な孔径を設定するのが難しいという問題があった。あるいは、蒸着材料によって最適な孔径が異なるため、複数種類の蒸着材料に対応して異なるリザーバ等を用意しておく必要があり、装置のコストアップの要因となっていた。
【0007】
また、特許文献1乃至3のいずれの装置においても、溶融した蒸着材料をリザーバ等に溜めた状態で蒸発工程が行われるので、蒸発レートの制御はリザーバ等の温度制御によって行うしかない。しかし、この構成では、リザーバ等への投入電力を変化させてから実際にリザーバ等の温度が変化するまでに時間がかかり、さらにリザーバ等の温度が変化してから溶融レート(蒸発レート)が変化するまで時間がかかる。従って、蒸発レートの制御性及び応答性が悪いという問題があった。
【0008】
またさらに、蒸発工程終了時に、溶融材料をリザーバ等に残した状態でその温度を低下させると、固化した材料がリザーバに残り、次回使用時に異なる材料を使用することができなくなる。逆に、蒸発工程終了時に、残った溶融材料を完全に蒸発させるまで加熱を行うと、無駄に蒸着材料を消費してしまうばかりか、無用な電力を消費してしまうことになり、好ましくない。
【0009】
上記問題点は全て、溶融した蒸着材料をリザーバ等に溜めておく構成に起因するものである。そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、溶融した蒸着材料を溜めておくことなく下方蒸着を行う蒸着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の蒸着装置は、真空槽、真空槽内部に配置され基板を載置する基板ステージ、真空槽内部で前記基板ステージよりも上方に配置され下面に加熱面を有する抵抗加熱ボード、及び真空槽内部に配置され抵抗加熱ボードの下面加熱面に線蒸着材の先端を接触させる線蒸着材供給部を備える。これにより、リザーバ等を設けたり底に孔を設けたりする必要がなく、簡素かつ低コストな構成で、成膜動作の制御性及び応答性に優れた蒸着装置を提供することができる。また、成膜終了時に蒸着材料を使い切る必要がなく、線蒸着材又は加熱電力を無駄に消費せずに済む。
【0011】
ここで、線蒸着材供給部が、線蒸着材の送り速度を調整する送り速度調整部を備えることができる。これにより、蒸発レートの制御性をさらに向上することができる。
【0012】
また、抵抗加熱ボードの少なくとも下面加熱面が、熱分解窒化ボロンからなるコーティングを有することが望ましい。これにより、蒸着材料であるアルミ又はスズの溶融に対する抵抗加熱ボードのぬれ性を向上して均質な態様の蒸発を行うことができる。
【0013】
また、基板ステージと抵抗加熱ボードが鉛直方向においてオーバーラップしない位置に配置することが望ましい。これにより、蒸着材料が蒸発せずに固化又は液化してしまった場合でも被成膜対象物への影響をなくすことができる。
【0014】
さらに、基板ステージを水平方向に回転させる回転駆動機構を備えることが望ましい。これにより、被成膜対象物の各面への均一な成膜が可能となる。
【0015】
好ましくは、下面加熱面に対する線蒸着材の接触角が15°以上45°以下となるように線蒸着材供給部が配置される。これにより、成膜時の線蒸着材供給部による影を減らしつつも線蒸着材と下面加熱面との接触程度の制御性を確保することができる。
【0016】
さらに、基板を成膜位置まで搬送し又は成膜位置から搬送する搬送機構、及び搬送機構及び送り速度調整部を制御する制御部を備え、制御部が、基板が成膜位置にない場合には、送り速度調整部に線蒸着材の送りを停止させるように構成するようにしてもよい。これにより、線蒸着材の無駄な消費を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例.
図1A及び1Bは本発明の蒸着装置の概略構成のそれぞれ正面図及び上面図であり、いずれも基板1が成膜位置P3にある場合の図である。
図2A及び2Bは、基板1がそれぞれ格納位置P1及び方向転換位置P2にある場合の蒸着装置の正面図である。なお、以降の図面において、図の明瞭化のため、同一の部材が複数ある場合にはその1つのみについて符号を付すものとする。また、図面は寸法通りではなく、図の明瞭性を担保するために各部材を適宜省略、誇張、変形等して示している。蒸着装置は真空槽10、仕込室16及び準備室18を備え、真空槽10について、搬送機構20、抵抗加熱部30、及び線蒸着材供給部40を備える。蒸着装置はまた、必要に応じて、モニタ50、シャッタ55、RF電圧印加手段60、及び制御部70を備えていてもよい。基板1の上面にはモジュール、回路基板、電子部品等の被成膜対象物2が載置される。
【0019】
真空槽10と仕込室16の間にゲートバルブ15、仕込室16と準備室18の間にゲートバルブ17が設けられ、これらの構成により、未処理基板は大気圧状態の準備室18から真空状態の真空槽10に搬入され、処理済み基板は真空空状態の真空槽10から大気圧状態の準備室18に搬出される。真空槽10及び仕込室16には不図示の真空排気手段が設けられているものとする。
【0020】
基板1が準備室18から真空槽10に搬入される場合、まず、ゲートバルブ15/17がそれぞれ閉状態/開状態とされて基板1が準備室18から仕込室16に搬入される。次に、ゲートバルブ15/17が閉状態/閉状態とされて仕込室16が真空引きされる。仕込室16が真空状態になると、ゲートバルブ15/17がそれぞれ開状態/閉状態とされて基板1が真空槽10に搬入される。逆に、基板1が真空槽10から準備室18へ搬出される場合、ゲートバルブ15/17が閉状態/閉状態とされて仕込室16が真空引きされる。仕込室16が真空状態になると、ゲートバルブ15/17がそれぞれ開状態/閉状態とされて基板1が真空槽10から仕込室16に搬出される。次に、ゲートバルブ15/17が閉状態/閉状態とされて仕込室16が真空から大気圧に戻される。仕込室16が大気圧に戻ると、ゲートバルブ15/17がそれぞれ閉状態/開状態とされて基板1が仕込室16から準備室18に搬出される。仕込室16は少なくとも2枚の基板を収納してそれぞれの基板を搬送機構20に接続する切換え機構を備え、ゲートバルブ15/17をそれぞれ開状態/閉状態として、処理済み基板を真空槽10から仕込室16に搬出し、未処理基板を仕込室16から真空槽10に搬入する。真空槽10の成膜中は、ゲートバルブ15/17をそれぞれ閉状態/開状態として、処理済み基板を仕込室16から準備室18に搬出し、未処理基板を準備室18から仕込室16に搬入する。
【0021】
搬送機構20は、水平経路21、鉛直経路22、水平搬送手段23、基板ステージ24、昇降機構25、及び回転駆動機構26を備える。なお、昇降機構25と回転駆動機構26は1つのブロックで示してあるが、個別の機構で構成してもよい。搬送機構20は、上述の仕込室16から水平経路21の格納位置P1(
図2A参照)に搬入された未処理基板を鉛直経路22の成膜位置P3(
図1A参照)まで移動させ、成膜が終了すると処理済み基板を成膜位置P3から格納位置P1に移動させるように構成される。なお、本明細書における格納位置とは、方向転換位置P2とゲートバルブ15の間のいずれかの箇所をいうものとする。
【0022】
水平経路21は水平方向に延在する中空体からなり、基板1を格納位置P1と方向転換位置P2(
図2B参照)の間で移動させる水平搬送手段23が底部に設けられている。なお、方向転換位置P2は鉛直経路22の直下(即ち、成膜位置P3の直下)の位置である。本実施例では、水平搬送手段23はローラ23a及びローラ駆動手段23bで構成されるが、ベルトコンベア、磁石を用いた非接触搬送等、他の搬送手段を用いることもできる。中空体の水平経路21の内部で基板1を搬送することにより、搬送中の基板1、ローラ23a等に蒸発材料が付着するのを防止することができる。本実施例では、水平経路21の搬送方向に垂直な断面が矩形のものを用いるが、円形のものであってもよい。
【0023】
鉛直経路22は鉛直方向に延在する開口中空体からなり、下端が水平経路21に接続され、上端の開口端付近が成膜位置P3となる。基板1が水平搬送手段23によって格納位置P1から方向転換位置P2に搬送されると、
図2Bに示すように基板ステージ24に載せられる。昇降機構25は、鉛直経路22に沿って、基板ステージ24を方向転換位置P2から成膜位置P3まで上昇させ、成膜が終了すると成膜位置P3から方向転換位置P2まで降下させる。鉛直経路22の水平方向断面の内周形状は基板1又は基板ステージ24の外周形状と略相似であることが望ましい。本実施例では、基板1は円盤状であり、鉛直経路22は円筒形である。両者の水平断面が相似形である(即ち、基板1の外径が鉛直経路22の内径よりも僅かに小さい)ことにより、基板1と鉛直経路22との隙間が小さくなり、成膜時に鉛直経路22の上方から拡散される蒸発材料が鉛直経路22に入り込むのを防止することができる。なお、本実施例では基板1と鉛直経路22の水平断面が円形であるが、多角形等の他の形状としてもよい。また、本実施例では基板ステージ24よりも基板1の水平断面が大きいため基板1と鉛直経路22の水平断面を相似形としたが、基板1よりも基板ステージ24の水平断面が大きい場合は、基板ステージ24と鉛直経路22の水平断面を相似形とし、基板ステージ24の外径が鉛直経路22の内径よりもわずかに小さい構成とすればよい。
【0024】
回転駆動機構26は、基板ステージ24の軸部24aを回転させて基板ステージ24を水平方向に回転させる。これにより、基板1上の被成膜対象物2の底面以外の全面(例えば、被成膜対象物2が直方体の場合は底面以外の5面)に均一に成膜を行うことができる。
【0025】
なお、成膜位置P3の上方であって抵抗加熱ボード31の下方に、成膜位置P3を開放及び遮蔽可能なシャッタ55を備えていてもよい。シャッタ55は、蒸発レートが不安定な期間に基板1を遮蔽して成膜を均質化させる。
【0026】
ここで、基板ステージ24の上面は中心部分が外周部分よりも低い凹形状となっている。これは、基板ステージ24と基板1との接触(摩擦)を確実に得るためである。即ち、基板ステージ上面を平坦なものとすると、基板の下面又は基板ステージの上面が完全に平坦でない場合に、基板の中心付近と基板ステージの中心付近のみが強く接触し、基板ステージの回転が基板に充分に伝達しない状態が生じる可能性があるからである。従って、基板ステージ24の上面を凹形状とすることによって基板ステージ24の回転を確実に基板1に伝達して回転させることができる。
【0027】
また、基板1が円盤状である場合、基板1の進行方向先端及び後端付近ではローラ23aとの接触面積が小さく、ローラ23aの動力が基板1に効率的に伝達し難い場合がある。そこで、本実施例では、
図3Aに示すような基板トレー27を用いる。基板トレー27は外周が矩形で内周が円形の枠形状であり、基板1の外縁部を下から支持するように形成される。
図3Bに示すように、水平経路21において、基板トレー27の矩形外周部がローラ23aと確実に接触するのでローラ23aの動力が基板トレー27の枠部に効率的に伝達され、スムーズな搬送が行われる。
【0028】
また、基板トレー27の枠部の内寸は基板ステージ24の外寸よりも大きい。従って、
図3Cに示すように、基板1を載せた基板トレー27が方向転換位置P2に到達し、昇降機構25が基板ステージ24を上昇させると、
図3Dに示すように、基板ステージ24上には基板1のみが載り、基板トレー27は方向転換位置P2に取り残される。従って、基板トレー27を用いる場合でも、成膜位置P3には基板1のみが配置されることになる。また、基板1を格納する場合、基板ステージ24が昇降機構25によって成膜位置P3から方向転換位置P2まで降下されると、基板1は方向転換位置P2に取り残されていた基板トレー27の枠部に収容される。そして、基板1が基板トレー27の枠部に支持された状態で基板トレー27は水平搬送手段23によって方向転換位置P2から格納位置P1に搬送される。なお、本実施例では、基板トレー27の内周形状を円形としたが、基板が下方から支持され、かつ、基板ステージ24の外寸よりも大きい内寸であれば、多角形等の他の形状であってもよい。
【0029】
抵抗加熱部30は、基板ステージ24の成膜位置P3よりも上方に配置される一対の抵抗加熱ボード31及び電源32で構成される。なお、ここでいう上方とは、基板ステージ24が成膜位置P3にあるときに、抵抗加熱部30の下面31aが、基板ステージ24の上面が確定する平面よりも真空槽10の天井側にあることをいうものとする。抵抗加熱ボード31はその下面31aが水平に配置され、電源32からの通電により加熱される。この加熱された抵抗加熱ボード31の下面31aに線蒸着材3が接触されて蒸発が行われる。
【0030】
抵抗加熱ボード31は、少なくともその下面加熱面がPBN(熱分解窒化ボロン)製からなるコーティングを有することが好ましい。これは、PBNコーティングにより、蒸着材料であるアルミ又はスズが溶融されたときに適度なぬれ性を得ることができるからである。溶融された蒸着材料は抵抗加熱ボード31の下面31aにぬれ性をもって均一に拡散し、それが均質な態様で蒸発していく。
【0031】
抵抗加熱ボード31と基板ステージ24(成膜位置P3)とは鉛直方向においてオーバーラップしない位置に配置されることが望ましい。即ち、
図1Bに示すように、蒸着装置の上面図において、抵抗加熱ボード31と基板ステージ24が重ならないようにすることが望ましい。これは、抵抗加熱ボード31の下面31aから蒸着材料が蒸発せずに液体状又は固体状で落下した場合に、基板1が影響を受けないようにするためである。
【0032】
線蒸着材供給部40は、ドライブローラ41、ボビン42、ガイド43、及び送り速度調整部44で構成される。線蒸着材3はボビン42に巻かれた状態で保持され、ドライブローラ41によって引き出され、ガイド43によって線蒸着材3の先端部の位置が規制される。ドライブローラ41は、所望の蒸着レートに応じて決定された送り速度で線蒸着材3が送り出されるように送り速度調整部44によって駆動される。抵抗加熱ボード31は、接触された線蒸着材3を瞬時に溶融する能力があるものとする。
【0033】
図4は、抵抗加熱ボード31と、ガイド43に支持される線蒸着材3との位置関係を説明する図である。抵抗加熱ボード31の下面31aと線蒸着材3とのなす接触角αは10°〜90°の範囲であれば蒸発は可能であるが、接触角αがより90°に近い場合、下面31aに対する線蒸着材3の接触程度の制御が容易となるが、線蒸着材供給部40が成膜の際の影となり、成膜可能範囲が狭くなる。また、接触角αがより10°に近い場合、下面31aに対する線蒸着材3の接触程度の制御性が悪くなる。上記の観点から、接触角αは15°〜45°の範囲とすることが望ましく、33°±6.5°の範囲がより好ましいことが確認されている。
【0034】
モニタ50は蒸着材料の蒸発レートを検出する水晶モニタからなる。モニタ50は、そのセンサ面がいずれの抵抗加熱ボード31の直下にも位置しないように配置される。なお、制御部70において、検出される蒸発レートが目標レートとなるように線蒸着材3の送り速度が決定されるようにし、決定された送り速度に基づいて送り速度調整部44がドライブローラ41を駆動するフィードバックを構成してもよい。
【0035】
RF電圧印加手段60はRFアンテナ61及びRFアンテナ61に高周波電圧を印加するRF電源62からなる。成膜処理中にRFアンテナ61からのRF電界によってプラズマが発生され、イオンプレーティングによる成膜を行うことができる。
【0036】
制御部70は、搬送機構20(水平搬送手段23、昇降機構25、回転駆動機構26)、抵抗加熱部30(電源32)、線蒸着材供給部40(送り速度調整部44)、シャッタ55及びRF電圧印加手段60(RF電源62)を統括的に制御する。例えば、昇降機構25による基板1の昇降動作中(成膜位置P3に基板1がない状態)においては、制御部70が、送り速度調整部44に線蒸着材3の送りを停止し、その蒸発を中断させるようにしてもよい。
【0037】
以上のように、本発明は、基板ステージ24よりも上方に配置されて加熱面を下面に有する抵抗加熱ボード31、及び抵抗加熱ボード31の下面加熱面に線蒸着材3を接触させる線蒸着材供給部40を備えるので、従来技術のように孔径の最適設計等を要することなく簡易な設計で下方蒸着装置を構成することができる。また、線蒸着材及び基板の供給機構を備えるため、大気開放せずに連続的に基板を処理することができる。
【0038】
また、本発明によると、電源32から抵抗加熱ボード31に印加される電力を調整するのではなく、線蒸着材3の送り速度を調整するだけで蒸発レートを制御できるので、蒸発レートの制御性及び応答性に優れる下方蒸着装置を提供することができる。
【0039】
またさらに、本発明によると、蒸発工程終了時に、線蒸着材3の送りを停止するだけで蒸発を停止できるので、従来技術のように残った溶融材料の処理を要することなく無駄な蒸着材料及び電力を消費することがなく好適である。従って、連続的に多数の基板を処理する場合の成膜インターバル中にも線蒸着材3の供給と電源32への通電を停止して蒸発を中断できるので、本発明は、連続的に多数の基板を処理する装置において特に有利である。
【0040】
上記実施例に本発明の最も好適な例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。例えば、上記実施例では
図1Bに示すように、一対の抵抗加熱ボード31の外側端部から線蒸着材3を接触させる構成を示したが、
図5Aに示すように、1つの抵抗加熱ボード31の一端又は両端側から線蒸着材3を接触させる構成としてもよい。また、上記実施例では
図1Bに示すように、一対の抵抗加熱ボード31に対してその長手軸に対して対称位置に一対の成膜位置P3を配置したが、
図5Bに示すように、二対の成膜位置P3を配置してもよい。即ち、基板ステージが抵抗加熱ボードの直下に配置されず、かつ、(蒸着材料の無駄を防止するために)抵抗加熱ボードの長手方向が分ける2つの領域の両方に基板ステージが配置されるようにすれば、抵抗加熱ボード及び成膜位置の位置及び数は適宜設定可能である。なお、
図5Bの構成の場合には、(図の左側に)さらに2セットの仕込室16及び準備室18を備える。
【0041】
また、上記実施例では線蒸着材3を直線上にして送り出す構成を示したが、
図6に示すように、線蒸着材3を一定の曲率で曲げた状態で送り出すようにしてもよい。この場合、ガイド45は上記曲率を持った誘導部を有する。この構成により、線蒸着材供給部の設置位置に自由度をもたせることができ、成膜時の線蒸着材供給部による影を減らして成膜位置P3を広く設定することができる。