特許第5854211号(P5854211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854211
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】二次電池充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20160120BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160120BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   H02J7/35 B
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-267925(P2011-267925)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-121243(P2013-121243A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】家本 博
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−186196(JP,A)
【文献】 特開2004−064885(JP,A)
【文献】 特開2006−296063(JP,A)
【文献】 特開2009−049587(JP,A)
【文献】 特表2008−539561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
H03J9/00−9/06
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電器の出力電圧または二次電池の出力電圧を選択的に負荷に供給するための切り替え回路と、前記発電器出力電圧を入力して、前記二次電池を所定の充電終止電圧以下に充電する充電制御回路とを有する二次電池充電装置において、
制御信号に基づき前記充電制御回路の充電終止電圧を変更し、前記充電終止電圧の時間平均値を前記二次電池の満充電電圧以下に規制する充電規制手段と、
前記制御信号が一定時間以上得られない場合に、前記充電終止電圧を満充電電圧に切り替えるタイマ手段と、
を備えることを特徴とする二次電池充電装置。
【請求項2】
前記充電規制手段は、前記負荷と通信する上位システムから与えられる前記制御信号により前記充電終止電圧を変更することを特徴とする請求項1に記載の二次電池充電装置。
【請求項3】
前記充電規制手段は、前記発電器の発電能力予測情報または前記負荷の稼働状態の少なくともいずれかにより前記充電終止電圧を変更する前記制御信号を前記上位システムから受け取ることを特徴とする請求項2に記載の二次電池充電装置。
【請求項4】
前記充電規制手段は、前記上位システムからの前記制御信号が一定時間以上停止した場合に前記充電終止電圧を満充電電圧に切り替える前記タイマ手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の二次電池充電装置。
【請求項5】
前記充電規制手段は、前記二次電池の電圧値を前記上位システムに通知することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の二次電池充電装置。
【請求項6】
前記負荷は、無線手段により前記上位システムと通信するフィールド機器の内部回路であることを特徴とする請求項乃至5のいずれかに記載の二次電池充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電器の出力電圧または二次電池の出力電圧を、切り替え回路を介して選択的に負荷に供給すると共に、前記発電器出力電圧を入力して、前記二次電池を所定の充電終止電圧に充電する充電制御回路を有する二次電池充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電器として太陽電池などの環境エネルギーより発電した電力を二次電池に充電して動作し、プロセスの物理量を測定して上位装置に送信する無線伝送器は、プラント内のフィールドに配置され、用途に応じた各種センサを搭載して、無線通信を介して測定値を上位システムに送信するフィールド機器である。このような無線伝送器では、電池コストおよびメンテナンス工数削減のため、使用される二次電池の寿命をできるだけ長く延ばし、交換周期長くする管理が求められる。
【0003】
図4は、従来の二次電池充電装置の構成例を示す機能ブロック図である。太陽電池等で実現される発電器10(以下、太陽電池10)は、太陽光などの光エネルギーを電圧V1の電気エネルギーに変換する。
【0004】
電源回路20は、太陽電池10で発電した電力を二次電池21に蓄えて太陽電池10の発電の有無にかかわらず負荷30を構成する無線伝送器(以下、無線伝送器30)に電力を供給する。無線伝送器30は、無線通信により上位システム40と通信する。
【0005】
電源回路20は、二次電池21を充電する充電制御回路22を備え、この充電制御回路22は、二次電池21の電圧V2が充電終止電圧V0以上に上昇しないように充電制御する。
【0006】
二次電池21は、リチウムイオン電池を想定する。その電池容量は、太陽電池10が発電しない期間に無線伝送器30に電力を供給するのに必要な容量を持つ。例えば天候不良で連続4日間発電しない期間があっても無線伝送器30に電力供給を可能とする場合、4日間に無線伝送器が使用する電力以上を蓄電できる容量となる。
【0007】
ダイオードD1、D2はV1またはV2を選択して無線伝送器30に供給するスイッチ回路(切り替え回路)を形成する。ダイオードD1は、太陽電池10が発電したときの電力をOUT端子から無線伝送器30に供給すると共に、太陽電池が発電しない場合は二次電池21に充電した電力が太陽電池10側に逆流しないようにする。
【0008】
ダイオードD2は、太陽電池10が発電しないときには、二次電池21から放電した電力をOUT端子から無線伝送器30に供給すると共に、太陽電池10が発電した場合に放電経路を逆流して二次電池21を充電しないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−97878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来装置では次のような問題がある。
(1)充電制御回路22は、太陽電池10が発電する限り、将来発電できない最長期間に備えて二次電池21を満充電電圧に維持するように動作する。一方、二次電池21としてリチウムイオン電池を用いる場合には、充電電圧が高いほど電池が劣化する性質があるため、太陽電池10の発電する期間が長くなる程、二次電池21は満充電電圧に維持されて電圧が高い期間が続くため、電池寿命が短くなるという欠点がある。
【0011】
(2)電池寿命が短くなることを回避するため、充電終止電圧V0を低く設定する一方、二次電池21の容量を増やすことで、二次電池トータルの充電電力を維持することも可能であるが、電池容量を増やした分の電池実装体積が増加し、電池自体も必要な容量が増えてコストが増加する。
【0012】
本発明の目的は、二次電池の充電電圧を平均的に低下させることにより、電池容量を増やすことなく、電池寿命を延ばすことを可能とする二次電池充電装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)発電器の出力電圧または二次電池の出力電圧を選択的に負荷に供給するための切り替え回路と、前記発電器出力電圧を入力して、前記二次電池を所定の充電終止電圧以下に充電する充電制御回路とを有する二次電池充電装置において、
制御信号に基づき前記充電制御回路の充電終止電圧を変更し、前記充電終止電圧の時間平均値を前記二次電池の満充電電圧以下に規制する充電規制手段と、
前記制御信号が一定時間以上得られない場合に、前記充電終止電圧を満充電電圧に切り替えるタイマ手段と、
を備えることを特徴とする二次電池充電装置。
【0014】
(2)前記充電規制手段は、前記負荷と通信する上位システムから与えられる前記制御信号により前記充電終止電圧を変更することを特徴とする(1)に記載の二次電池充電装置。
【0015】
前記充電規制手段は、前記発電器の発電能力予測情報または前記負荷の稼働状態の少なくともいずれかにより前記充電終止電圧を変更する前記制御信号を前記上位システムから受け取ることを特徴とする(2)に記載の二次電池充電装置。
【0016】
前記充電規制手段は、前記上位システムからの前記制御信号が一定時間以上停止した場合に前記充電終止電圧を満充電電圧に切り替える前記タイマ手段を備えることを特徴とする(2)又は(3)に記載の二次電池充電装置。
【0017】
(5)前記充電規制手段は、前記二次電池の電圧値を前記上位システムに通知することを特徴とする(2)乃至(4)のいずれかに記載の二次電池充電装置。
【0018】
(6)前記負荷は、無線手段により前記上位システムと通信するフィールド機器の内部回路であることを特徴とする()乃至(5)のいずれかに記載の二次電池充電装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)本発明では、二次電池21の充電終止電圧を、上位システム40から変更できるため、今後の日照が十分見込める場合は二次電池の充電終止電圧を二次電池の21の満充電電圧より低く設定することができる。
【0020】
(2)このため、必要な電力量以上に二次電池21を充電しないため、二次電池の電圧を低くすることができて二次電池の劣化が抑制され、無線伝送器30のメンテナンス期間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した二次電池充電装置の一実施例を示す機能ブロック図である。
図2】本発明を適用した二次電池充電装置の他の実施例を示す機能ブロック図である。
図3】本発明を適用した二次電池充電装置の他の実施例を示す機能ブロック図である。
図4】従来の二次電池充電装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用した二次電池充電装置の一実施例を示す機能ブロック図である。図4で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
図4に示した従来構成に追加される本発明の特徴部は、電源回路20に対して充電規制手段100を設けた構成にある。充電規制手段100は、無線伝送器30を経由して上位装置40から与えられる制御信号Cを保持するレジスタ101と、このレジスタ保持値をアナログ値の電圧設定信号Vsに変換するD/A変換器102よりなる。
【0024】
D/A変換器102から出力される電圧設定信号Vsは、充電終止電圧の設定値として充電制御回路22に入力され、この充電終止電圧は、無線通信を介して制御され、上位システム40側から変更することが可能となる。
【0025】
以下、本発明装置の動作を説明する。上位システム40は、例えば将来の日照情報などの電源管理情報Fを収集し、充電終止電圧を求める。例えば、今後数日間にわたり日照が十分である場合は、その日の夜間に使用する電力を賄うだけの充電終止電圧として必要以上に電池電圧が高くならないようにする。電源管理情報Fは、太陽電池10の発電能力予測情報、無線伝送器30の稼働状態情報等である。
【0026】
今後数日間日照が無く発電できない場合は、その日数分の電力を賄うことができる充電終止電圧に設定して発電可能期間に充電する。このように、今後の発電量予測に基づき、充電終止電池を今後必要な電力量に応じて設定できるので、二次電池21の平均電圧を低下させ満充電電圧以下にして、二次電池の劣化を抑えることができる。
【0027】
本発明によって、二次電池21の寿命が延びるため、メンテナンスを少なくし無線伝送器30が動作する期間を従来構成に比べて延長させることができる。制御信号Cや無線通信の不良が起きて充電終止電圧を設定するレジスタ101が更新できない場合でも、一定期間後に充電終止電圧を最大(例えば満充電電圧)に変更することで、充電容量を最大限確保してフェールセーフとすることができる。
【0028】
図2は、本発明を適用した二次電池充電装置の他の実施例を示す機能ブロック図である。図1の充電規制手段100の構成に追加される要素は、固定値を保持するレジスタ103、切り替えスイッチ104、タイマ105である。
【0029】
以下、動作を説明する。タイマ105に設定された一定期間内にレジスタ101が制御信号Cより再設定されないと、切り替えスイッチ104により、充電終止電圧をレジスタ101の出力値Vsからレジスタ103の固定値に切り替える。
【0030】
レジスタ103の値は、固定値または制御信号Cから設定される値で、例えば二次電池の最大充電電圧(満充電電圧)とする。制御信号Cもしくは上位システム40との無線通信が不良となった場合は、レジスタ101による設定が更新されないため、タイマ105に基づく一定時間後レジスタ103の値に基づく充電終止電圧で充電するように充電制御回路22は動作する。このことで、制御信号や無線通信が不良の時でも、無線伝送器30の動作可能時間を従来回路と同等とすることができる。
【0031】
図3は、本発明を適用した二次電池充電装置の更に他の実施例を示す機能ブロック図である。図1の充電規制手段100の構成に追加される要素は、A/D変換器106を設けた構成にある。このA/D変換器106は、二次電池21の電圧値V2をデジタル値に変換して制御信号Cとして無線伝送器30を経由し上位装置40に通知する。
【0032】
このような二次電池電圧の上位装置40への読み返しにより、今後無線伝送器30に必要となる電力量に基づく充電終止電圧と現在の二次電池電圧に基づいて、二次電池21で現在不足する充電に必要な電力量を推定することができる。
【0033】
太陽電池がその日に発電可能な電力量が、現時点において二次電池で不足している電力量より余剰である場合は、太陽電池が発電する期間の前半では意図的に充電終止電圧を必要な充電終止電圧より低く設定し、太陽電池が発電する期間の後半に必要な充電終止電圧に変更することで、二次電池の平均電圧をさらに低く抑制することができる。これにより、電池の劣化が抑えられ電池寿命をさらに延長することが可能となる。
【0034】
以上説明した実施例では、発電器10を太陽電池として説明したが、将来の発電電力量が上位システムで予測が可能である環境エネルギーを用いて発電する発電器、例えば温度差発電や振動発電などを用いた場合でも、その予測に基づき同様に二次電池の充電終止電圧を最適化することで電池寿命を延ばすことができる。
【0035】
実施例では、負荷10を無線伝送器として説明したが、無線伝送器の内部回路でもよく、無線伝送器内に電源回路20が内蔵されてもよい。また、負荷10は、伝送線またはネットワークを介して上位システム40と通信する伝送器一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 発電器(太陽電池)
20 電源回路
21 二次電池
22 充電制御回路
30 負荷(無線伝送器)
40 上位システム
100 充電規制手段
101 レジスタ
102 D/A変換器
103 レジスタ
104 切り替えスイッチ
105 タイマ
106 A/D変換器
図1
図2
図3
図4