(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明で用いる用語を説明する。シートは、フィルムおよびテープと同義語である。被着体は、シートを貼り付ける相手方をいう。
【0019】
本発明の導電性接着剤は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性複合微粒子(単に「導電性微粒子」ということがある)とを含有する。導電性接着剤は、例えば、剥離シート上に塗工することで、導電性接着剤層(単に「導電層」ということがある)を形成し、導電性接着シートとして使用することができる。導電性接着シートは、さらに絶縁層を備えることで電磁波シールドシートとして使用することができる。
【0020】
<導電性接着剤>
《熱硬化性樹脂》
熱硬化性樹脂は、カルボキシル基を有することを特徴とする。カルボキシル基は加熱により硬化剤と反応して導電性接着剤層を硬化し、接着させる役割を持つ。さらに、導電性複合微粒子の表面に存在する銅原子とキレート結合して導電性接着剤中の導電性複合微粒子を分散安定化させる役割を持つと同時に、導電性接着剤中における導電性微粒子の沈降を抑制し塗工スジなどの塗工欠点の発生を抑制する効果がある。カルボキシル基を有さない熱硬化性樹脂では上記の効果を得ることができない。
熱硬化性樹脂は、カルボキシル基の他に硬化剤と反応可能な他の官能基を複数有することができる。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ化合物、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ピペラジンポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、付加型エステル樹脂、縮合型エステル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらの中でも分散安定性と接着強度の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、付加型エステル樹脂、エポキシ化合物、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ピペラジンポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0021】
熱硬化性樹脂の酸価は、3〜100mgKOH/gが好ましく、5〜70mgKOH/gがより好ましい。特に好ましくは、3〜40mgKOH/gである。熱硬化性樹脂の酸価を3〜100mgKOH/gの範囲にすることで導電性微粒子の分散安定性と、湿熱経時後の接続信頼性がより向上する。
【0022】
熱硬化性樹脂のガラス転移温度は−30〜30℃が好ましく、−20〜20℃がより好ましい。ガラス転移温度を−30〜30℃の範囲にすることで、折り曲げ後の接続信頼性および接着強度がより向上する。
【0023】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、20,000〜100,000が好ましい。重量平均分子量は、20,000〜100,000とすることで、折り曲げ後の接続信頼性および接着強度がより向上する
【0024】
本発明では熱硬化性樹脂に加え、熱可塑性樹脂を併用できる。
熱可塑性樹脂としては、前記硬化性官能基を有しないポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、α−オレフィン化合物などのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレンプロピレンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、α−オレフィンポリマー等が挙げられる。
ビニル系樹脂は、酢酸ビニルなどのビニルエステルの重合により得られるポリマーおよびビニルエステルとエチレンなどのオレフィン化合物とのコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、部分ケン化ポリビニルアルコール等が挙げられる。
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレンや(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド類などからなるホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリルコポリマー、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
ジエン系樹脂は、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物のホモポリマーまたはコポリマーおよびそれらの水素添加物が好ましい。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンブロックコポリマー等が挙げられる。テルペン樹脂は、テルペン類からなるポリマーまたはその水素添加物が好ましい。具体的には、例えば、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂が挙げられる。
石油系樹脂は、ジシクロペンタジエン型石油樹脂、水添石油樹脂が好ましい。セルロース系樹脂は、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAポリカーボネートが好ましい。ポリイミド系樹脂は、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸型ポリイミド樹脂が好ましい。
【0025】
《硬化剤》
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えばエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、有機金属化合物、酸無水物基含有化合物、フェノール化合物等の公知の化合物が挙げられる。
好ましくは、エポキシ化合物、またはアジリジン化合物である。
硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0026】
エポキシ化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0027】
前記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、α−ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0028】
前記グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0029】
前記グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0030】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、およびテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンが好ましい。これらのエポキシ化合物を用いることにより、導電性接着剤の湿熱経時後の抵抗値と接着力がより向上する。
【0031】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2−クロロアニリン)、メチレンビス(2−メチル−6−メチルアニリン)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、n−ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。
【0033】
アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0034】
有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0035】
前記有機アルミニウム化合物はアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物は、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等が挙げられる。
【0036】
前記有機チタン化合物はチタンキレート化合物が好ましい。チタンキレート化合物は、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタン−1.3−プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリチタンアセチルアセチルアセトナート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、ダーシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等が挙げられる。
【0037】
前記有機ジルコニウム化合物はジルコニウムキレート化合物が好ましい。ジルコニウムキレート化合物は、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも有機チタン化合物が熱硬化反応性と硬化後の耐熱性の点から好ましい。
【0038】
硬化剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部含むことが好ましく、3〜30重量部がより好ましく、3〜20重量部がさらに好ましい。
【0039】
《導電性複合微粒子》
導電性複合微粒子は、導電性接着シートおよび電磁波シールドシートの導電層に導電性を付与する機能を有する。導電性複合微粒子は、核体の表面を被覆した被覆層を有する導電性微粒子である。ここで核体は、安価で導電性が高い銅であり、被覆層は、導電性が高く酸価による抵抗値の劣化が少ない銀である。銀は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、マンガン、錫、およびインジウム等との合金であってもよい。
核体の銅と被覆層の銀の界面はマイグレーションにより合金化し、銅/銅と銀の合金層/銀の層構成となっているが、銀表面に銅が一部移行している箇所もある。また銅粉を電解メッキする過程において銀被膜の一部にピンホールが形成され銅が露出している。
これら表面に存在する銅は、前述した熱硬化性樹脂のカルボキシル基とキレート結合することで導電性接着剤中における導電性複合微粒子の分散安定化に寄与する。また、導電性接着剤層を熱硬化させる際にこのキレート結合が熱硬化性樹脂との熱架橋剤として働き、硬化後の架橋密度を上げるため、導電層の湿熱経時後の接続信頼性や折り曲げ後の接続信頼性を向上させる。
【0040】
上記導電性複合微粒子表面の銅原子濃度、および銀原子濃度の定量は、ESCAによる微粒子の測定により求めることができる。詳細な条件は後述する。
【0041】
導電性複合微粒子表面の銅原子濃度は、銅原子濃度および銀原子濃度の合計を100%としたときに占める銅原子濃度の割合である。(以下、表面銅濃度と呼ぶ)。
この導電性複合微粒子の表面銅濃度は、5〜30%が好ましく、6〜25%がより好ましい。表面銅濃度を5%以上にすることで導電性接着剤中の導電性複合微粒子の分散安定性と沈降性を向上することが出来る。30%以下であることにより、粘度安定性に優れた導電性接着剤とすることが出来る。
このように、導電性複合微粒子の表面の銅原子濃度を特定の範囲とすることで、カルボキシル基を有する熱硬化性樹脂とともに用いた場合に、分散安定性だけでなく、導電性接着剤層としたときの湿熱経時試験後や、折り曲げ後の高い接続信頼性を有することができるものとなる。
【0042】
導電性複合微粒子表面の、銅に対する銀の被覆量(銀コート量)は、導電性複合微粒子全体に対して1〜15重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。銀の被覆量を上記の範囲にすることでコストを抑えつつ表面銅濃度が5〜30%である導電性微粒子を作製することが容易となる。
【0043】
導電性複合微粒子の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。また、これらの異なる形状の導電性複合微粒子を2種類混合しても良い。
導電性複合微粒子は、単独または2種類以上併用できる。
【0044】
導電性複合微粒子の平均粒子径は、D50平均粒子径が、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmがより好ましく、5〜15μmがより好ましい。平均粒子径がこの範囲にあることで沈降性と接着強度に優れたものとすることが出来る。なお、D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置によって求めることが出来る。
【0045】
導電性複合微粒子の製造方法は例えば、還元メッキ被覆法、置換メッキ被覆法によって作成することができる。
還元メッキ被覆法は、銅粒子の表面に、還元剤で還元された銀微粒子を緻密に被覆させていく方法であり、例えば、還元剤溶存した水溶液中で金属銅粉と硝酸銀を反応させる方法である(参考文献:特開2000−248303号公報)。
置換メッキ被覆法は、銅粉微粒子の界面で、銀イオンが金属の銅と電子の授受を行い、銀イオンが金属の銀に還元され、代わりに金属の銅が酸化され銅イオンになることで、銅粉微粒子の表面層を銀層とする方法である(参考文献:特開2006−161081号公報)。また、銅粉を水に分散させ、キレート剤を添加した後、水に可溶な銀塩を加えて置換反応させて銅粉粒子の表面層を銀に置換させた後、得られた複合微粒子を溶液から取り出してキレート剤を用いて洗浄することを特徴とする方法もある(参考文献:特開2013−1917号公報等)。
本発明においては、置換メッキ被覆法が製造コストの点から好ましい。
【0046】
本発明において導電層は、等方導電性または異方導電性を有することが好ましい。等方導電性とは、導電性接着シート及び電磁波シールドシートを水平に置いたときに垂直方向(縦方向)と水平方向(面方向)に導電することをいう。また、異方導電とは、導電性接着シート及び電磁波シールドシートを水平に置いたときに垂直方向(縦方向)に導電することをいう。等方導電性は、フレーク状、または樹枝状の導電性微粒子を使用する方法等公知の方法で得られる。また、異方導電性は、球状または樹枝状の導電性微粒子を使用する方法等で得られる。なお、導電層が樹枝状の導電性微粒子を大量に含む場合、等方導電性が得られる。また導電層が樹枝状の導電性微粒子を少量含む場合、異方導電性が得られる。
【0047】
導電性複合微粒子の配合量は、例えば異方導電層を形成する場合、熱硬化性樹脂100重量部に対して、10〜200重量部を配合することが好ましく、20〜100重量部がより好ましい。また、等方導電層を形成する場合、熱硬化性樹脂100重量部に対して、100〜1500重量部を配合することが好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。
【0048】
導電性接着剤は、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0049】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して得ることができる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等の公知の攪拌装置を使用できる。
【0050】
本発明の導電性接着剤は、導電性が必要な種々の用途に制限なく使用できる。
主な用途としては、ビアホール用導電ペースト、回路形成用導電ペースト、導電性接着剤等が挙げられる。
また、導電性接着剤を用い、導電性接着シート、または電磁波シールドシートを形成することに適している。
【0051】
<導電性接着シート>
本発明の導電性接着シートは、上述の導電性接着剤から形成してなる導電性接着剤層を備えたものである。導電性接着シートは、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電性接着剤層を形成する。また、導電性接着剤層のほかに他の機能層を積層することもできる。機能層とはハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、低誘電率、高誘電率性、耐熱性等を有する層のことである。
【0052】
塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等の公知の塗工方法を使用できる。塗工に際して、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。
【0053】
導電性接着剤層の厚みは、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。厚みが1〜100μmの範囲にあることで導電性と、その他の物性を両立しやすくなる。
【0054】
導電性接着シートの用途としては、異方導電性シート、静電除去シート、グランド接続用シート、メンブレン回路用、導電性ボンディングシート、熱伝導性シート、ジャンパー回路用導電シート等が、好適な例として挙げられる。
【0055】
導電性接着シートを用いてFPCと金属補強板を接着して、FPCを補強しさらに電磁波シールド性を付与する使い方もある。これは、FPCのグランド回路と金属補強板を導電性接着シートによって電気的な接続を取り、その金属補強板をシールド層として機能させるものである。
【0056】
前記FPCは少なくとも絶縁性基材上に配線回路が形成され、その上部にカバーコート層を備えている。前記配線回路はグランド回路を備えグランド回路上のカバーコート層にはグランド接続用のスルーホールが形成されている。前記絶縁性基材は耐熱性の点から、ポリイミドおよび液晶ポリマーが一般的である。
【0057】
前記補強板は、導電性の金属およびその合金が好ましい。具体的にはスレンレス、銅箔、アルミニウムなどが挙げられる。
【0058】
<電磁波シールドシート>
本発明の電磁波シールドシートは、上述の導電性接着剤から形成してなる導電性接着剤層、および絶縁層を備えたものであり、次の2つの態様が好ましい。第一の態様は、
図1の(a)に示す通り絶縁層1、および導電性接着剤層2を備えている。また、第二の態様は、
図1の(b)に示す通り絶縁層1、金属層3、および導電層2を備えている。
【0059】
金属層を使用すると電磁波をさらに高いレベルでシールドできるところ、特に高周波(例えば、1GHz〜100GHz)の信号を伝送する配線板でノイズ等をより抑制できるため、金属層の厚みは、10nm〜20μmが好ましい。
【0060】
金属層は、例えば金属箔、金属蒸着膜、金属スパッタ膜を使用できる。
金属箔に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金等の導電性金属が好ましく、シールド性、接続信頼性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましく、電解銅箔がより好ましい。電解銅箔を使用すると金属層の厚さをより薄くできる。また、金属箔はメッキで形成してもよい。金属箔の厚みは0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
金属蒸着膜に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金が好ましく、銅、銀がより好ましい。金属蒸着膜の厚みは、0.1〜3μmが好ましい。
金属スパッタ膜に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、クロム、金、鉄、パラジウム、ニッケル、白金、銀、亜鉛、酸化インジウム、アンチモンドープ酸価錫が好ましく、銅、銀がより好ましい。金属スパッタ膜の厚みは、10〜1000nmが好ましい。
電磁波シールドシートは第二の態様を採用するとシールド効果がさらに向上する。
【0061】
絶縁層は、絶縁性樹脂組成物を使用して導電性接着剤層と同様の方法で作成することができる。または、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の絶縁性樹脂を成形したフィルムを使用することもできる。
【0062】
絶縁層の厚みは、通常2〜10μm程度である。
【0063】
電磁波シールドシートの第一の態様の作製方法を説明する。具体的には、導電性接着剤層と絶縁層とを貼り合わせて作製できる。また、導電性接着剤層に絶縁性樹脂組成物を塗工することで絶縁層を形成することもできる。
【0064】
電磁波シールドシートの第二の態様の作製方法を説明する。具体的には、剥離性シート上に導電性接着剤層を形成し、銅キャリア付電解銅箔の電解銅箔面側に導電性接着剤層を重ねてラミネートした後に、銅キャリアを剥がす。そして、銅キャリアを剥がした面と、別途剥離性シート上に形成した絶縁層とを重ねてラミネートする方法がある。また、剥離性シート上に導電性接着剤層を形成し、その表面に無電解メッキ処理により金属層を形成し、別途剥離性シート上に形成した絶縁層と前記金属層とを重ねてラミネートする方法等が挙げられる。
【0065】
電磁波シールドシートは、導電性接着剤層に含まれる熱硬化性樹脂と硬化剤が未硬化状態で存在し、配線板と加熱圧着により硬化することで、所望の接着強度を得ることが出来る。なお、前記未硬化状態は、硬化剤の一部が硬化した半硬化状態を含む。
【0066】
剥離性シートは、紙やプラスチック等の基材に、公知の剥離処理を行ったシートである。
【0067】
なお電磁波シールドシートは、異物の付着を防止するため、導電性接着剤層および絶縁層に剥離性シートを貼り付けた状態で保存することが一般的である。
【0068】
電磁波シールドシートは、導電性接着剤層および絶縁層のほかに、他の機能層を備えることができる。他の機能層とは、ハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、熱伝導性、低誘電率、高誘電率性または耐熱性等の機能を有する層である。
【0069】
本発明の電磁波シールドシートは、電磁波をシールドする必要がある様々な用途に使用できる。例えば、フレキシブルプリント配線板は元より、リジッドプリント配線板、COF(Chip On Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、フレキシブルコネクタ、液晶ディスプレイ、タッチパネル等に使用できる。また、パソコンのケース、建材の壁および窓ガラス等の建材、車両、船舶、航空機等の電磁波を遮蔽する部材としても使用できる。
【0070】
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、導電性接着シートまたは電磁波シールドシートと、信号配線および絶縁性基材を備えた配線板とを有するものであることが好ましい。
また、電磁波シールドシートと、絶縁層(カバーコート層)と、信号配線および絶縁性基材を備えた配線板とを有するものであっても良い。
【0071】
本発明のプリント配線板は、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に搭載されることが好ましい。
【0072】
導電性接着シートを備えた態様(A態様)、および電磁波シールドシートを備えた態様(B態様)について詳述する。
【0073】
《導電性接着シートを備えた態様(A態様)》
A態様であるプリント配線板4は、
図2に示す通り、配線板7と、金属補強板6と導電性接着シート5を備えている。また、導電性接着シート5は、配線板7の絶縁層(カバーコート層)8aおよび8b、ならびにグランド配線11と接着できる。また、導電性接着シートを備えたプリント配線板の態様が、
図2に限定されないことは言うまでも無い。
【0074】
プリント配線板4の実施態様をさらに説明する。配線板7は、絶縁性基材10と接する面であって金属補強板6と対向する面に電子部品13を実装することで、プリント配線板4に必要な強度が得られる。金属補強板6を備えることで、プリント配線板4に曲げ等の力が加わった際の半田接着部位、ないし絶縁性基材10に対するダメージを防止できる。また、導電性接着シート5は、プリント配線板4の上方向から下方向に対する電磁波をシールドすることができる。
【0075】
金属補強板6の金属板6aは、例えば金、銀、銅、鉄およびステンレス等の導電性金属が挙げられる。これらの中で補強板としての強度、コストおよび化学的安定性の面でステンレスが好ましい。金属補強板6の厚みは、一般的に0.04〜1mm程度である。
金属補強板6は、その表面に、金、ニッケル、パラジウム等のメッキ層6bを備えることもできる。メッキ層6bを備えることで、金属補強板6の酸化や腐食を防ぎ、より高い導電安定性が得られる。なお、図示しないが金属補強板6は、メッキ層6bを有しなくとも良い。
【0076】
配線板7は、絶縁層(カバーコート層)8aおよび8b、接着剤層9aおよび9b、ならびにグランド配線11、ならびに信号配線12、ならびに絶縁性基材10を備えている。また配線板7は、ビア14(Via)といわれる円柱状ないしすり鉢状の穴を備えている。なおグランド配線および信号配線を総称して配線回路という。
【0077】
絶縁層8aおよび8bは、カバーコート層ともいい、少なくとも樹脂を含む。樹脂は、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、イレタンウレア樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アミドイミド樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。また、樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂から適宜選択して使用できるが、耐熱性の面で熱硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独または2種類以上を併用できる。絶縁層(カバーコート層)8aおよび8bの厚みは、通常5〜50μm程度である。
【0078】
接着剤層9aおよび9bは、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、およびアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化樹脂に使用する硬化剤は、エポキシ硬化剤、イソシアネート硬化剤、およびアリジリン硬化剤等が挙げられる。接着剤層9aおよび9bは、絶縁層(カバーコート層)8aおよび8bと、グランド配線11および配線回路12を備えた絶縁性基材9とを接着するために使用し、絶縁性を有する。接着剤層9aおよび9bの厚みは、通常1〜20μm程度である。
【0079】
グランド配線11および信号配線12は、銅等の金属箔をエッチングして形成する方法、ないし導電性ペーストを印刷することで形成する方法が一般的である。図示はしないが配線板7は、グランド配線および信号配線を複数有することができる。グランド配線は、グランド電位を保つ回路であり、信号配線は、電子部品等に電気信号を送信する回路である。グランド配線11および信号配線12の厚みは、それぞれ通常5〜50μm程度である。
【0080】
絶縁性基材10は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレート等の絶縁性を有するフィルムであり、配線板7のベース材である。絶縁性基材10は、リフロー工程を行なう場合、ポリフェレンサルファイドおよびポリイミドが好ましく、リフロー工程を行なわない場合、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。絶縁性基材10の厚みは、通常5〜100μm程度である。また、プリント配線板がリジッド配線板の場合、絶縁性基材10は、ガラスエポキシが好ましい。
【0081】
ビア14は、グランド配線11および信号配線12から適宜選択した回路パターンの一部を露出するためにエッチングやレーザー等により形成される。
図2によるとビア14によりグランド配線11の一部が露出しており導電性接着剤層5を介してグランド配線11と金属補強板6とが電気的に接続されている。ビア14の直径は、通常0.5〜2mm程度である。
【0082】
本発明のプリント配線板の製造方法は、少なくとも配線板7、導電性接着シート5、および金属補強板6を圧着する工程を備えていることが必要である。圧着は、例えば、配線板7と導電性接着シート5および金属補強板6を重ね圧着を行い、次いで電子部品を実装する方法が挙げられるが、圧着の順序は限定されない。
本発明では配線板7、導電性接着シート5、および金属補強板6を圧着する工程を備えていれば良く、他の工程は、プリント配線板の構成ないし使用態様に応じて適宜変更できる。
前記圧着は、導電性接着シート5が熱硬化型樹脂を含むため、硬化促進の観点から同時に加熱することが特に好ましい。導電性接着シート5が、さらに熱可塑性樹脂を含む場合であっても密着が強固になり易いため加熱することが好ましい。加熱は130〜210℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。また、圧着は、2〜120kg/cm
2が好ましく、3〜40kg/cm
2がより好ましい。
圧着装置は、平板圧着機またはロール圧着機を使用できるが、平板圧着機を使用する場合、一定の圧力を一定の時間かけることができるため好ましい。圧着時間は、配線回路基板6、導電性接着剤層5、および金属補強板6が十分密着すればよいので特に限定されないが、通常30分〜2時間程度である。
【0083】
《電磁波シールドシートを備えた態様(B態様)》
B態様であるプリント配線板15は、
図3に示す通り、配線板7と、電磁波シールドシートである導電性接着剤層2、金属層3、および絶縁層1とを備えている。なお、図示しないが、電磁波シールドシートは、絶縁層1、および導電性接着剤層2を含む構成も好ましい。
また、電磁波シールドシートを備えたプリント配線板の態様が、
図3に限定されないことは言うまでも無い。
【0084】
絶縁層(カバーコート層)8aおよび8bは、配線板の信号配線を覆い外部環境から保護する絶縁材料である。絶縁層(カバーコート層)8aおよび8bは、熱硬化性樹脂付きポリイミドフィルム、熱硬化型または紫外線硬化型のソルダーレジスト、感光性カバーレイフィルムが好ましく、微細加工をするためには感光性カバーレイフィルムがより好ましい。
【0085】
信号配線は、アースを取るグランド配線11、電子部品に電気信号を送る信号配線12を有する。両者は銅箔をエッチング処理することで形成することが一般的である。
絶縁性基材10は、配線板がフレキシブルプリント配線板(FPC)である場合、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の屈曲可能なプラスチックが好ましく、ポリイミドがより好ましい。また、配線板がリジッド配線板の場合、絶縁性基材10の構成材料は、ガラスエポキシが好ましい。これらのような絶縁性基材10を備えることで配線板は高い耐熱性が得られる。
【0086】
電磁波シールドシートと、配線板7との加熱圧着は、温度150〜190℃程度、圧力1〜3MPa程度、時間1〜60分程度の条件で行うことが一般的である。加熱圧着により導電性接着剤層2と絶縁層(カバーコート層)8aおよび8bが密着するとともに、導電性接着剤層2が流動してビア14を埋めることでグランド配線11との間で導通が取れる。さらに加熱圧着により熱硬化性樹脂と硬化剤が反応する。なお、硬化を促進させるため、加熱圧着後に150〜190℃で30〜90分間ポストキュアを行う場合もある。なお、電磁波シールドシートは、加熱圧着後に電磁波シールド層ということがある。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、部は重量部、%は重量%を意味する。また、Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量をあらわす。
【0088】
樹脂の酸価、樹脂のガラス転移温度(Tg)、樹脂の重量平均分子量、導電性複合微粒子の表面銅濃度、および導電性複合微粒子の平均粒子径は以下の方法で測定した。
【0089】
<樹脂の酸価測定>
酸価はJIS K0070に準じて測定した。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた固形分酸価である(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価」
【0090】
<樹脂のガラス転移温度(Tg)>
Tgの測定は、示差走査熱量測定(メトラー・トレド社製「DSC−1」)によって測定した。
【0091】
<樹脂の重量平均分子量(Mw)>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0092】
<導電性複合微粒子の表面銅濃度>
導電性複合微粒子の表面銅濃度は、X線光電子分光分析(ESCA)で測定した。専用台座に両面粘着テープを貼り、導電性複合微粒子を均一に付着させ、余分をエアーで除去したものを測定試料とした。測定試料を下記条件で、3箇所場所を変えて測定した。
装置:AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)
試料チャンバー内真空度:1×10
−8Torr以下
X線源:Dual(Mg)15kV,5mA Pass energy 80eV
Step:0.1 eV/Step
Speed:120秒/元素
Dell:300、積算回数:5
光電子取り出し角:試料表面に対して90度
結合エネルギー:C1s主ピークを284.6eVとしてシフト補正
Cu(2p)ピーク領域:926〜936eV
Ag(3d)ピーク領域:376〜362eV
【0093】
上記ピーク領域に出現したピークをスムージング処理し、直線法にてベースラインを引き、銀と銅の原子濃度「Atomic Conc」を求めた。
得られた銅原子濃度および銀原子濃度の合計100%中の銅原子濃度について、3箇所の値の平均値を求め、導電性複合微粒子の表面銅濃度[Cu]とした。
【0094】
<導電性複合微粒子の平均粒子径>
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性複合微粒子を測定して得たD50平均粒子径の数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。屈折率の設定は1.6とした。
【0095】
以下、実施例で使用した材料を示す。
【0096】
<熱硬化性樹脂の合成>
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンカーボネートジオールとから得られるMn=981であるジオール432部、イソホロンジイソシアネート137部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン25部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液818部を添加し、70℃で3時間反応させポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂1)溶液を得た。重量平均分子量は48,000、Tgは−20℃、酸価は0mgKOH/gであった。
【0097】
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸とテレフタル酸及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量(以下、「Mn」という)=1006であるジオール414部、ジメチロールブタン酸8部、イソホロンジイソシアネート145部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を
有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン27部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液816部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂2)溶液を得た。重量平均分子量は54,000、Tgは−7℃、酸価は2mgKOH/gであった。
【0098】
[合成例3]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンカーボネートジオールとから得られるMn=981であるジオール390部、ジメチロールブタン酸16部、イソホロンジイソシアネート158部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン29部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液814部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂3)溶液を得た。重量平均分子量は43,000、Tgは−5℃、酸価は5mgKOH/gであった。
【0099】
[合成例4]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるMn=1002であるジオール352部、ジメチロールブタン酸32部、イソホロンジイソシアネート176部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン32部、ジ−n−ブチルアミン4部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液810部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂4)溶液を得た。重量平均分子量は35,000、Tgは−1℃、酸価は21mgKOH/gであった。
【0100】
[合成例5]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、水酸基価110mgKOH/gのポリテトラメチレングリコール101.1部、ジメチロールブタン酸21.9部、溶剤としてメチルエチルケトン60部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで加熱し、均一になるまで溶解した。続いてこの反応容器に、イソホロンジイソシアネート52.1部を投入し、80℃で8時間反応を行った。室温に冷却後、メチルエチルケトンで希釈することで固形分50%のカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂5)溶液を得た。重量平均分子量は28,000、Tgは−10℃、酸価は47mgKOH/gであった。
【0101】
[合成例6]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にメチルエチルケトン50部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸3部、nーブチルメタクリレート32部、ラウリルメタクリレート65部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1部をメチルエチルケトン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を継続した後、室温まで冷却した。次いでメチルエチルケトンで希釈することで固形分30%のカルボキシル基を含有するアクリル樹脂(熱硬化性樹脂6)溶液を得た。重量平均分子量は27,000、Tgは−11℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0102】
[合成例7]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にメチルエチルケトン50部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸3部、nーブチルメタクリレート72部、ラウリルメタクリレート25部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1部をメチルエチルケトン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を継続した後、室温まで冷却した。次いでメチルエチルケトンで希釈することで固形分30%のカルボキシル基を含有するアクリル樹脂(熱硬化性樹脂7)を得た。重量平均分子量は24,000、Tgは−40℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0103】
[合成例8]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2020)193.8部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)29.2部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃ まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)34.2部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸15.21部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂溶液(熱硬化性樹脂8)を得た。重量平均分子量は50,000、Tgは22℃、酸価は19mgKOH/gであった。
【0104】
[合成例9]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2041)191.3部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドHNA−100:新日本理化株式会社製)34.6部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)31.9部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸16.78部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂9)溶液を得た。重量平均分子量は132,000、Tgは−15℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0105】
[合成例10]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2090)195.1部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)29.2部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃ まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)26部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸11.56部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂溶液(熱硬化性樹脂10)を得た。重量平均分子量は15,000、Tgは−25℃、酸価は25mgKOH/gであった。
【0106】
[合成例11]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、プリポール1009を173.5部、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン「ビスアニリンM」(三井化学ファイン株式会社製)95.7部、イオン交換水を100部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2KPaの真空下で、1時間保持した。その後、温度を低下し、シクロヘキサノン219部で希釈して、ポリアミド樹脂(熱硬化性樹脂11)溶液を得た。重量平均分子量は28,000、Tgは40℃、酸価は8mgKOH/gであった。
【0107】
[合成例12]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、セバシン酸54.5部、5−ヒドロキシイソフタル酸5.5部、ダイマージアミン「プリアミン1074」(クローダジャパン株式会社製、アミン価210.0mgKOH/g)148.4部、イオン交換水を100部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2KPaの真空下で、1時間保持した。その後、温度を低下し、トルエン146部、2−プロパノール146部で希釈して、ポリアミド樹脂(熱硬化性樹脂12)溶液を得た。重量平均分子量は36000、Tgは5℃、酸価は12mgKOH/gであった。
【0108】
[合成例13]
攪拌機及び還流脱水装置を備えたフラスコに、ジカルボン酸成分としてダイマー酸(クローダージャパン社製、Pripol1009)100重量部、及びジアミン成分としてピペラジン14.89重量部を仕込んだ。115℃/時間の割合で230℃にまで昇温し、6時間反応を継続してポリアミド樹脂(熱硬化性樹脂13)を得た。重量平均分子量は29,000、Tgは15℃、酸価は7mgKOH/gであった。
【0109】
合成例1〜13で得られた熱硬化性樹脂を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
<導電性複合微粒子>
導電性微粒子は置換メッキ被覆法によって、銅の核体に銀の被覆層を形成した複合微粒子を用いた。実施例で使用した導電性複合微粒子を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
<硬化剤>
エポキシ化合物:ビスフェノールAタイプエポキシ
(「アデカレジンEP−4100」、エポキシ当量=190g/eq、ADEKA社製)
アジリジン化合物:「ケミタイトPZ−33」日本触媒社製
<その他>
銅害防止剤:デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド
【0114】
<実施例1>
[導電性接着剤の作製]
熱硬化性樹脂2を100部、導電性複合微粒子5を400部、硬化剤としてエポキシ化合物30部およびアジリジン化合物2.0部、銅害防止剤1.0部を容器に仕込み、不揮発分濃度が45重量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(重量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性接着剤を得た。
【0115】
[導電性接着シートの作製]
導電性接着剤を剥離性シート上に、乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで等方導電性を有する導電性接着シートを得た。
【0116】
[電磁波シールドシートの作製]
導電性接着剤を剥離性シート上に、乾燥厚みが10μmになるようにドクターブレードを使用して塗工し、さらに100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで等方導電性を有する導電性接着剤層を得た。
別途、熱硬化性樹脂3を100部、エポキシ化合物10部およびアジリジン化合物10部を加えディスパーで10分攪拌して絶縁性樹脂組成物を得た。得られた絶縁性樹脂組成物をバーコーターを使用して乾燥厚みが10μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで絶縁層を得た。さらに導電接着剤層に絶縁層を貼り合わせることで電磁波シールドシートを得た。
ただし、実施例1は参考例である。
【0117】
<実施例2〜19、比較例1〜2>
実施例1の導電性接着剤の組成、および配合量(固形分重量)を表3、4記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤、導電性接着シートおよび電磁波シールドシートを得た。
【0118】
<実施例20>
[導電性接着剤の作製]
熱硬化性樹脂3を100部、導電性複合微粒子5を60部、硬化剤としてエポキシ化合物30部およびアジリジン化合物2.0部、銅害防止剤1.0部を容器に仕込み、不揮発分濃度が45重量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(重量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性接着剤を得た。
【0119】
[電磁波シールドシートの作製]
得られた導電性接着剤をバーコーターを使用して乾燥厚みが10μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで異方導電性を有する導電性接着剤層を得た。
別途、熱硬化性樹脂3を100部、エポキシ化合物10部およびアジリジン硬化剤10部を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性樹脂組成物を得た。次いで得られた絶縁性樹脂組成物をバーコーターを使用して乾燥厚みが5μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで絶縁層を得た。次いで、厚さ3μmの電解銅箔の一方の面に前述した導電性接着層を貼り合わせた後、電解銅箔の他方の面に絶縁層を貼り合わせることで剥離性シート/絶縁層/電解銅箔/導電性接着層/剥離性シートの構成の電磁波シールドシートを得た。
【0120】
<実施例21〜22、比較例3〜4>
実施例20の導電性接着剤の組成、および配合量(固形分重量)を、表4のように変更した以外は実施例20と同様にして、導電性接着剤、および電磁波シールドシートを得た。
【0121】
<評価方法>
実施例および比較例で得られた導電性接着剤、導電性シート、および電磁波シールドシートの評価を下記の方法で行なった。表3、4に評価結果を示す。
【0122】
[導電性接着剤]
《分散安定性の評価》
導電性接着シート及び電磁波シールドシートは、導電性接着剤を塗工して形成するが、導電性接着剤の分散安定性が不十分である場合、導電性微粒子が凝集し塗工スジや欠点が発生し導電性接着シートや電磁波シールドシートの生産収率を下げてしまう。
作製直後と室温40度のオーブンにて24時間静置した導電性接着剤を粒ゲージを用いて粒度を測定した。測定前処理としてミックスローターで30分攪拌した。また、測定基準はJIS規格K5600−2−5に準拠した。下記式にて粒度の変化率を算出した。
粒度の変化率(%)=40度24時間後の粒度/初期粒度×100
評価基準は以下の通りである。
◎:粒度の変化率が110%未満。良好な結果である。
○:粒度の変化率が110%以上、150%未満。実用上問題ない。
×:粒度の変化率が150%以上。実用不可。
【0123】
《沈降性の評価》
導電性接着シート及び電磁波シールドシートは、導電性接着剤を塗工して形成するが、導電性接着剤の導電性微粒子の分散状態が不安定であると、導電性微粒子の沈降が早く塗工液が不均一となり塗工ムラが発生してしまい、生産の収率が悪化する。
作製直後の導電性接着剤を140mlマヨビンに仕込み、室温25度の恒温環境にて24時間静置し、導電性微粒子の沈降状態を評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎:外観の変化なく、導電性接着剤にヘラを刺しても立たない。良好な結果である。
○:沈降層と上澄みの2層に分離しているが導電性接着剤にヘラを指しても立たず、攪拌すると1層へ均一に戻る。実用上問題ない。
×:沈降層と上澄みの2層に分離しており、導電性接着剤にヘラを突き刺すとヘラが立つ程のハードケーキ状態。攪拌しても1層へ均一に戻らない。実用不可。
【0124】
[導電性接着シート]
《初期接続信頼性》
金属補強板が電磁波シールド性を発現するためには金属補強板が導電性接着シートを介してグランド回路に接続し導通パスが確保されていることが重要である。グランド回路上に設置されたカバーレイ層のスルーホールから導電性接着剤が充填され接着することで導通が確保されるが、スルーホールへの埋め込み性と接着性が十分でないと、電磁波シールド性、つまり初期の接続信頼性が悪化してしまう。
幅15mm・長さ20mmの導電性接着シートと、幅20mm・長さ20mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)を重ねて、ロールラミネーターで90℃、3Kgf/cm
2、1M/minの条件で貼り付けて試料を得た。
図4(1)〜(6)の平面図を示して説明すると試料から剥離性フィルムを剥がし、露出した面を別に作製したフレキシブルプリント配線板(厚み25μmのポリイミドフィルム21上に、互いに電気的に接続されていない厚み18μmの銅箔回路22A、および銅箔回路22Bが形成されており、銅箔回路22A上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径1.2mmのスルーホール24を有するカバーフィルム23が積層された配線板)にロールラミネーターで90℃、3Kgf/cm
2、1M/minの条件で貼り付けた。
そして、これらを170℃、2MPa、5分の条件で圧着をした後、160℃の電気オーブンで60分間加熱を行なうことで測定試料を得た。
次いで、
図4(4)の平面図に示す22A−22B間の初期接続信頼性を、抵抗値測定器とBSPプローブを用いて接続抵抗値を測定することにより評価した。なお、
図4(2)は、
図4(1)のD−D’断面図、
図4(3)は
図4(1)のC−C’断面図である。同様に
図4(5)は、
図4(4)のD−D’断面図、
図4(6)は
図4(4)のC−C’断面図である。
評価基準は以下の通りである。
◎:接続抵抗値が20mΩ/□未満。良好な結果である。
○:接続抵抗値が20mΩ/□以上、300mΩ/□未満。実用上問題ない。
×:接続抵抗値が300mΩ/□以上。実用不可。
【0125】
《湿熱経時後の接続信頼性》
FPCが組み込まれた電子部品は多様な環境下で使用される。耐湿熱経時後の接続信頼性が十分でないと、たとえば高温多湿な環境で長時間使用された際に、電磁波シールド性が悪化し、貼り付けた信号回路の周波数特性が悪化してしまう。
初期接続信頼性の試験で作成した測定試料を85℃85%のオーブンに500時間投入した。その後、
図4(4)の平面図に示す22A−22B間の接続信頼性(湿熱経時後の接続信頼性)を、抵抗値測定器とBSPプローブを用いて抵抗値を測定することにより湿熱経時後の接続信頼性を評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎:接続抵抗値が20mΩ/□未満。良好な結果である。
○:接続抵抗値が20mΩ/□以上、300mΩ/□未満。実用上問題ない。
×:接続抵抗値が300mΩ/□以上。実用不可
【0126】
[電磁波シールドシート]
《折り曲げ後の接続信頼性》
FPCに張り付けられた電磁波シールドシートは、通常折り曲げた状態で電子部品に組み込まれる。折り曲げ後の電磁波シールド性、つまり接続信頼性が十分でないと、信号回路から発生するノイズをシールドできないため周辺の電子機器の誤作動を招いてしまう。
電磁波シールドシートを幅20mm、長さ50mmの大きさに準備し試料とした。
図4(1)〜(3)および(7)〜(9)の平面図を示して説明すると試料から剥離性フィルムを剥がし、露出した導電性接着剤層26bを、別に作製したフレキシブルプリント配線板(厚み25μmのポリイミドフィルム21上に、互いに電気的に接続されていない厚み18μmの銅箔回路22A、および銅箔回路22Bが形成されており、銅箔回路22A上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径1.2mmのスルーホール24を有するカバーフィルム23が積層された配線板に150℃、2MPa、30minの条件で圧着し、導電性接着剤層26bおよび絶縁層26aを硬化させることで試料を得た。次いで、試料の絶縁層26a側の剥離性フィルムを除去し、
図4(7)の平面図に示す22A−22B間の「初期接続抵抗値」を、三菱化学製「ロレスターGP」のBSPプローブを用いて測定した。次に
図4(7)のG−G’のラインを中心に山折り−谷折りを1セットとし30セット繰り返した後、再度22A−22B間の「折り曲げ後の接続抵抗値」を測定した。 なお、
図4(8)は、
図4(7)のE−E’断面図、
図4(9)は
図4(7)のF−F’断面図である。
下記式にて接続抵抗値の上昇率を算出し、折り曲げ後の接続信頼性を評価した。
接続抵抗値の上昇率=「折り曲げ後の接続抵抗値」/「初期接続抵抗値」×100
評価基準は以下の通りである。
◎:接続抵抗値の上昇率が300%未満 良好な結果である。
○:接続抵抗値の上昇率が300%以上、1000%未満 実用上問題ない。
×:接続抵抗値の上昇率が1000%以上 実用不可。
【0127】
《接着強度》
電磁波シールドシートを幅25mm・長さ70mmに準備し試料とした。導電性接着剤層上に設けられた剥離性シートを剥がし、露出した接着剤層に厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着し、熱硬化させた。次いで接着力測定のために試料を補強する目的で絶縁層側の剥離性シートを剥がし、露出した絶縁層に、トーヨーケム社製の接着シートを用い、厚さ50μmのポリイミドフィルムを、150℃、1MPa、30分の条件で圧着することで「ポリイミドフィルム/接着シート/電磁波シールドシート/ポリイミドフィルム」の構成の積層体を得た。この積層体を、引張試験機(島津製作所社製)を使用して23℃、50%RHの雰囲気下、剥離速度50mm/分、剥離角度90°で、電磁波シールドシートの導電性接着剤層とポリイミドフィルムとの界面を剥離することで接着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:接着強度が6N/25mm以上。 良好な結果である。
○:接着強度が4N/25mm以上、6N/25mm未満 実用上問題ない。
×:接着強度が4N/25mm未満。 実用不可。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
表3、4の結果から、実施例1〜22の導電性接着剤は、分散安定性、沈降性が良好であるため導電性接着シート及び電磁波シールドシートの塗工において、スジや膜厚ムラの少ない塗膜が得られるため高い生産収率を維持することができていた。さらに湿熱経時後や折り曲げ後の接続信頼性が良好で、接着強度も高いため、高温多湿な環境下や折り曲げて使用した場合においても、良好な電磁波シールド性を保持したFPCを提供できる。
【課題】導電性微粒子が十分に分散安定化され塗工生産性が良好であり、例えば塗工によって形成した導電性接着シートおよび電磁波シールドシートが、湿熱経時処理や折り曲げた後でも高い接続信頼性を有する導電性接着剤の提供を目的とする。
【解決手段】熱硬化性樹脂、硬化剤、および導電性複合微粒子を含む導電性接着剤であって、熱硬化性樹脂がカルボキシル基を有しており、導電性複合微粒子が銅粒子および前記銅粒子の表面を覆う銀被覆層を備え、かつ該導電性複合微粒子表面の銅原子濃度が、銅原子濃度および銀原子濃度の合計100%中5〜30%であることを特徴とする導電性接着剤によって解決される。