特許第5854312号(P5854312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854312
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】シャワー装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20160120BHJP
   E03C 1/06 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   A47K3/22
   E03C1/06
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-162514(P2011-162514)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-22384(P2013-22384A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(72)【発明者】
【氏名】松下 大剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19510940(DE,A1)
【文献】 特開平09−041442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02−4/00
E03C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置であって、
シャワーホースの先端に連結され、ボディシャワー浴又はオーバーヘッドシャワー浴を行うためのシャワー吐水を行うシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドを保持するシャワーフックと、
前記シャワーフックが保持されながらスライドすることが可能なように取り付けられてなるスライドバーと、
前記シャワーフックに設けられ、使用者の操作によって前記シャワーヘッドの吐水角度を調整する吐水角度調整機構と、を備え、
前記スライドバーは、
使用者の好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能なように、ボディシャワー浴に適した第1吐水角度で斜め下方に向けた第1吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら上下にスライド移動させる第1スライド部と、
前記第1スライド部よりも上方に設けられ、使用者の好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能なように、オーバーヘッドシャワー浴に適した第2吐水角度で鉛直下方に向けた第2吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら、使用者が前記第1スライド部に正対した場合の前後にスライドさせる第2スライド部と、
前記第1スライド部と前記第2スライド部との間に設けられ、前記第1スライド部の上端及び前記第2スライド部の下端と連接し、前記シャワーフックを保持しながらスライドさせる第3スライド部と、を有し、
前記第1スライド部は、直線状の部分であって、前記第1吐水角度を維持したまま前記シャワーヘッドをスライド移動させることが可能なように構成されており、
前記第2スライド部は、前記第3スライド部から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置される直線状の部分であって、前記第2吐水角度を維持したまま前記シャワーフックをスライド移動させることが可能なように構成されており、
前記第3スライド部は、湾曲形成された部分であって、その長さが前記第2スライド部の長さよりも短く構成されていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記前後方向に沿った長さにおいて、前記第2スライド部の長さは前記第3スライド部の長さより長いことを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記第2スライド部は、前記シャワーフックを保持しながらスライド移動させる際に、前記前後方向の変化量よりも前記鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記第3スライド部の両端が少なくとも湾曲するように形成されており、前記第1スライド部及び前記第2スライド部がその湾曲の接線に沿うように連設されていることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記第3スライド部の全体は、前記前後方向において、前記第1スライド部に前記シャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持された前記シャワーヘッドの前端位置より前記第1スライド部側に配置されることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項6】
記第2スライド部と前記第3スライド部との連設位置近傍に前記シャワーフックが位置した場合、前記シャワーフックは、前記前後方向において、前記第1スライド部に前記シャワーフックが位置した場合における当該シャワーフックに保持される前記シャワーヘッドの前端位置より、前記第1スライド部側に配置されることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボディシャワー浴と、オーバーヘッドシャワー浴と2つのシャワー浴ができるシャワー装置が知られている。ここで、ボディシャワー浴は、身体の一部をシャワーで流すシャワー浴であり、オーバーヘッドシャワー浴は身体全体を暖めるために頭上からシャワーを浴びるシャワー浴である。
【0003】
このように2つのシャワー浴ができるシャワー装置の一例として、上下方向に伸び延設するパイプを有し、パイプの上部にヘッドシャワーノズルを設けると共に、パイプにシャワーホースを介して接続されるハンドシャワーノズルとを設け、シャワー切替えハンドルを操作することによって、いずれかのノズルからシャワーを吐出するように構成されたシャワー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の一例としてハンガー本体を棒状のガイドレールに沿って移動させることにより、シャワーヘッドを移動させるスライド式シャワーハンガーを用いたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。このハンガー本体は、シャワーヘッドをフックで係止するように構成されており、そのフックの傾斜角度を調節することにより、シャワーヘッドの吐水面を調整できるようになっている。
【0005】
さらに、他の一例として、上方に凸状の曲線状となるように形成されたガイドロッドに、シャワーフックをスライド移動させることにより、シャワーフックに着脱自在に保持されたシャワーヘッドの吐水角度を、浴室上方部に位置する場合と浴室下方部に位置する場合とで切り替えるシャワーヘッド取付装置が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3747893号公報
【特許文献2】特開平9−41442号公報
【特許文献3】特許3736326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシャワー装置では、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを切り替える場合、シャワーノズルをフックから着脱する操作及びシャワーの吐水先を切り替える操作を行わなくてはならない。また、オーバーヘッドシャワー浴時にシャワーの吐水角度を調整できないため、使用者の立つ位置によっては良好なオーバーヘッドシャワー浴ができない場合もあった。
【0008】
この点、特許文献2に記載のスライド式シャワーハンガーを利用した場合、ガイドレールに沿ってフックを移動させ、フックの傾斜角度を調節することによりシャワーの吐水位置を調節できるようになる。しかしながら、ガイドレールは棒状であるため、オーバーヘッドシャワー浴時にフックの傾斜角度を調節したとしてもシャワーの吐水方向は使用者に対して斜め方向のままである。このため吐水方向を調節するための手間もかかるうえ、頭上からシャワーを浴びる場合と比較して身体全体を暖めるのが難しかった。
【0009】
また、特許文献3に記載のシャワーヘッド取付装置では、ガイドロッドに沿ってシャワーヘッドを移動するだけでボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことができる。このため、使用者の操作は非常に簡単である。しかしながら、ガイドロッドは上方に凸状の曲線状となるように形成されているため、オーバーヘッドシャワー浴時に使用者が頭上からシャワーを浴びることができる場所は限られてしまう。
【0010】
以上のように、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で行えるようにすると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴を可能にすることはできなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で切り替えることができると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴を可能にすることができるシャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシャワー装置は、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置であって、シャワーホースの先端に連結され、ボディシャワー浴又はオーバーヘッドシャワー浴を行うためのシャワー吐水を行うシャワーヘッドと、前記シャワーヘッドを保持するシャワーフックと、前記シャワーフックが保持されながらスライドすることが可能なように取り付けられてなるスライドバーと、を備えている。前記スライドバーは、使用者の好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能なように、ボディシャワー浴に適した第1吐水角度で斜め下方に向けた第1吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら上下にスライド移動させる第1スライド部と、使用者の好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能なように、オーバーヘッドシャワー浴に適した第2吐水角度で鉛直下方に向けた第2吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら、使用者が前記第1スライド部に正対した場合の前後にスライドさせる第2スライド部と、前記第1スライド部と前記第2スライド部との間に設けられ、前記シャワーフックを保持しながらスライドさせることで、前記シャワーヘッドからの吐水の角度が前記第1吐水角度と前記第2吐水角度とのそれぞれになるように切り替える第3スライド部と、を有し、前記第2スライド部は、前記第3スライド部から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置される直線状の部分であって、前記第2吐水角度を維持したまま前記シャワーフックをスライド移動させることが可能なように構成されている。
【0013】
本発明によれば、一つのシャワーヘッドで、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを提供することができる。本発明のスライドバーは、好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能な第1吐水を行いつつ、シャワーフックを上下にスライド移動させる第1スライド部と、好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能な第2吐水を行いつつ、シャワーフックを前後にスライドさせる第2スライド部とを有するので、シャワーヘッドを保持したシャワーフックを第1スライド部や第2スライド部をスライド移動させるのみで、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを選択的に享受することができる。
【0014】
本発明では更に、第1スライド部と第2スライド部との間に設けられ、シャワーフックを保持しながらスライドさせることで、シャワーヘッドからの吐水の角度が第1吐水角度と第2吐水角度とのそれぞれになるように切り替える第3スライド部を設けているので、第1スライド部から第3スライド部を経由して第2スライド部までシャワーフックをスライド移動させることで、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴までに適した吐水を簡単に切り替えることができる。
【0015】
ところで、シャワーヘッド及びシャワーフックをスライド移動させるためには、使用者がそれらを掴んでスライド移動させる必要があることから、使用者は少なくとも第1スライド部に手が届く位置に立つことになる。このことから本発明者らは、背が低く手が短い使用者は比較的第1スライド部に近づいて立つ傾向にあり、背が高く手が長い使用者は比較的第1スライド部から離れて立つ傾向にあることを発見した。従って、オーバーヘッドシャワー浴を行う際には、第1スライド部に近い側では背が低い使用者に対応するためシャワーヘッドを低い位置に保ち、第2スライド部から遠い側では背が高い使用者に対応するためにシャワーヘッドを高い位置に保つ必要がある。そこで本発明では、オーバーヘッドシャワー浴を行うための第2スライド部を、第3スライド部から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置されるものとすることで、シャワーフックを第2スライド部においてスライド移動させるという簡単な操作のみで、使用者の体格に応じた適切なシャワーヘッドの位置を設定することができる。さらに、本発明の第2スライド部は、直線状の部分であるので、シャワーフックをスライド移動させても、鉛直下方に向けた第2吐水をどの場所でも実現することができる。
【0016】
また、本発明に係るシャワー装置は、前記前後方向に沿った長さにおいて、前記第2のスライド部の長さを前記第3のスライド部の長さより長くするようにしても良い。
【0017】
一般に、シャワー装置は浴室等に設置される場合が数多くある。このような場合、使用者に浴室内の空間を広く感じさせるという観点からはスライドバーの前記前後方向に沿った長さはできるだけ短い方が望ましい。一方で、オーバーヘッドシャワー浴ができる範囲を広くするという観点からは第2スライド部の前記前後方法に沿った長さは長い方が望ましい。この点、本発明に係るシャワー装置は、前記前後方向に沿った長さにおいて、第2スライド部の長さを第3のスライド部の長さより長くしているため、スライドバー全体として前記前後方向に沿った長さを長くすることなく、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴をできる範囲をできるだけ広くすることが実現できる。このため、本発明に係るシャワー装置が、例えば、浴室に設置された場合、浴室内の空間を使用者に広く感じさせつつ、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴ができる範囲を広くすることを実現できる。
【0018】
更に、本発明に係るシャワー装置の前記第2スライド部は、前記シャワーフックを保持しながらスライド移動させる際に、前記前後方向の変化量よりも前記鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させるようにしても良い。
【0019】
本発明者らは、上述のように、背が低く手が短い使用者は比較的第1スライド部に近づいて立つ傾向にあり、背が高く手が長い使用者は比較的第1スライド部から離れて立つ傾向にあることに加え、使用者間の手の長さの差よりも、その使用者間の背の高さの差の方が大きい傾向にあることを発見した。この知見に基づけば、第2スライド部を、シャワーフックを保持しながらスライド移動させる際に、前記前後方向の変化量よりも前記鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させることにより、オーバーヘッドシャワー浴を行う場合、使用者の背が低くても高くてもその使用者の頭上とシャワーヘッドの吐水面との距離を略一定に保つことが可能になる。従って、使用者が体格差に応じて前記前後方向において異なる場所でオーバーヘッドシャワー浴を行う場合であっても、どの場所においても最適な吐水距離でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが実現できる。
【0020】
更に、本発明に係るシャワー装置は、前記第3スライド部の両端が少なくとも湾曲するように形成されており、第1スライド部及び第2スライド部がその湾曲の接線に沿うように連設されるようにしても良い。
【0021】
ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置においては、ボディシャワー浴時のシャワーフックの位置とオーバーヘッドシャワー浴時のシャワーフックの位置とを簡単な操作で切り替え可能にすることが要求される。この点、本発明に係るシャワー装置は、第3スライド部の両端が少なくとも湾曲するように形成し、第1スライド部及び第2スライド部がその湾曲の接線に沿うように連設するため、使用者がボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴を行う場合、又は、オーバーヘッドシャワー浴からボディシャワー浴を行う場合、使用者はシャワーフックを滑らかに移動させることを実現できる。
【0022】
更に、本発明のシャワー装置は、前記第3スライド部の全体を、前記前後方向において、前記第1スライド部に前記シャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持された前記シャワーヘッドの前端位置より前記第1スライド部側に配置するようにしても良い。
【0023】
上述のようにシャワーフックの滑らかな移動を行うためには、第3スライド部は前記前後方向においてある程度の長さを必要とする。一方、オーバーヘッドシャワー浴を行う範囲はできるだけ広い方が望ましい。この点、本発明に係るシャワー装置は、第3スライド部の全体を前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持されたシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側に配置するため、第3スライド部の前後方向の長さをある程度確保しつつ、第2スライド部の前後方向の長さを最大限確保することができる。このため、シャワーフックを更に滑らかに移動することができるうえ、オーバーヘッドシャワー浴ができる範囲をより広くすることができる。
【0024】
更にまた、本発明に係るシャワーフックは、前記シャワーヘッドからの吐水の角度が前記第2吐水角度からずれている場合に、そのずれを微調整することが可能な吐水角度調機構を備え、第2スライド部と第3スライド部との連設位置近傍にシャワーフックが位置した場合、シャワーフックは、前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合における当該シャワーフックに保持される前記シャワーヘッドの前端位置より、第1スライド部側に配置されるようにしてもよい。
【0025】
一般に、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置は、吐水角度を調整する吐水角度調整機構を備えることによりシャワーの吐水角度を調整できるため、特に、ボディシャワー浴時に、使用者が好みの吐水角度でボディシャワー浴をすることが可能になり、使用者の使い勝手を大きく向上することができる。
【0026】
しかし、吐水角度調整機構を設けることによって、ボディシャワー浴時に吐水角度が微調整される結果、オーバーヘッドシャワー浴時に鉛直下方に向かってシャワーが吐水されない場合が生じる。つまり、使用者がシャワーヘッドの吐水角度を微調整してボディシャワー浴を行い、その吐水角度を維持したままシャワーフックをオーバーヘッドシャワー浴用のスライド部に移動させてしまう場合である。この場合、オーバーヘッドシャワー浴時に鉛直下方に向かってシャワーが吐水されないため、使用者が再度シャワーヘッドの吐水角度をシャワーが鉛直下方に向かうように調整する必要が生じる。このとき、第2スライド部は使用者の頭上付近に位置するため、シャワーヘッドからシャワーが吐水される中、上方を見上げて吐水角度調整機構を操作することになるため、操作が大変であり、姿勢的にも負担が大きい。
【0027】
この点を解消するために本発明に係る吐水角度調整機構を備えたシャワー装置は、第3スライド部の全体を、前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持されたシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側に配置している。つまり、ボディシャワー浴時のシャワーヘッドの前端位置より後ろ側でシャワー浴を行う使用者が、オーバーヘッドシャワー浴を行うために第1スライド部から第2スライド部にシャワーフックをスライド移動する場合、第3のスライド部の全体をボディシャワー浴時のシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側、つまり、使用者の前側となるように配置している。このため、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、言い換えれば、第1スライド部から第2スライド部にシャワーフックを移動する場合、使用者は、第2スライド部と第3スライド部との連設位置付近に位置するシャワーフックを前側に見ながら、シャワーが鉛直下方に向かって吐水されるように吐水角度を微調整することが可能になる。そして、吐水角度を微調整した後、使用者はシャワーフックを自身の頭上に位置するように第2のスライド部をスライド移動させることができる。したがって、本発明に係るシャワー装置によると、ボディシャワー浴及びオーバーヘッドシャワー浴の両方とも最適な吐水角度でシャワー浴を行うことができると共に、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、シャワーの吐水方向及びシャワーフックに備えられる吐水角度調整機構を前側に視認しながら、且つ、楽な姿勢でシャワーの吐水角度を微調整することができる。
【0028】
本発明によると、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で切り替えることができると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴をすることができるシャワー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態に係るシャワー装置を示す図である。
図2】同実施の形態に係るスライドバーの構成を説明するための図である。
図3】同実施の形態に係る吐水角度切替用スライド部の位置関係を説明するための図である。
図4】同実施の形態に係るシャワーフックの外観を示す図である。
図5図4のシャワーフックが保持される状態を示す図である。
図6図4のシャワーフックがスライド移動される状態を示す図である。
図7】同実施の形態に係るスライドバーとシャワーフックとの位置関係を説明するための図である。
図8】他のシャワーフックの一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1はボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置全体を示す図である。シャワー装置1は壁面に立設されており、スライドバー10、シャワーフック20、シャワーヘッド30、シャワーホース40及びシャワー吐水を操作する操作部50を備えている。
【0032】
シャワーヘッド30は、シャワーホース40の先端に連結され、ボディシャワー浴又はオーバーヘッドシャワー浴を行うためのシャワー吐水を行う。
【0033】
シャワーフック20は、シャワーヘッド30を保持する。
【0034】
スライドバー10は、シャワーフック20が保持されながらスライドすることが可能なように取り付けられるものであり、ボディシャワー浴用スライド部(第1スライド部)11、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部(第2スライド部)12及び吐水角度切替用スライド部(第3スライド部)13から構成される。
【0035】
ボディシャワー浴用スライド部11は、使用者の好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能なように、ボディシャワー浴に適した第1吐水角度で斜め下方に向けた第1吐水を行いつつ、シャワーフック20を保持しながら上下にスライド移動させるスライド部である。
【0036】
オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12は、使用者の好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能なように、オーバーヘッドシャワー浴に適した第2吐水角度で鉛直下方に向けた第2吐水を行いつつ、シャワーフック20を保持しながら、使用者がボディシャワー浴用スライド部11に正対した場合の前後にスライドさせるスライド部である。また、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12は、吐水角度切替用スライド部13から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置される直線状の部分であって、第2吐水角度を維持したままシャワーフック20をスライド移動させることが可能なように構成されている。
【0037】
吐水角度切替用スライド部13は、ボディシャワー浴用スライド部11と、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12との間に設けられ、シャワーフック20を保持しながらスライドさせることで、シャワーヘッド30からの吐水が第1吐水角度と第2吐水角度とのそれぞれに少なくとも近づくように切り替えるスライド部である。
【0038】
また、スライドバー10において、ボディシャワー浴用スライド部11と吐水角度切替用スライド部13との連設位置を連設位置10a、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12と吐水角度切替用スライド部13との連設位置を連設位置10bとする。なお、図1においては、説明の便宜上、連設位置10a,10bを円形状に図示している。
【0039】
更に、同図に示すように、使用者の立ち位置(図示を省略。)からシャワー装置1側を前側(前方向)、その反対側を後側(後方向)とする。
【0040】
次に、スライドバー10について図2を参照して詳細に説明する。
【0041】
図2に示すように、前後方向に沿った長さにおいて、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12の長さS2は吐水角度切替用スライド部13の長さS1より長くなっている(S2>S1)。また、吐水角度切替用スライド部13から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置される直線状の部分は、前後方向の変化量よりも鉛直方向の変化量の方が大きくなっている。言い換えれば、前後方向の距離L2より鉛直方向の距離L1の方が長くなっている(L1>L2)。
【0042】
また、吐水角度切替用スライド部13は、両端が少なくとも湾曲するように形成されており、ボディシャワー浴用スライド部11及びオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12がその湾曲の接線に沿うように連設されている。
【0043】
更に、図3に示すように、吐水角度切替用スライド部13の全体を、前後方向において、ボディシャワー浴用スライド部11に、シャワーフック20が位置した場合そのシャワーフック20に保持されたシャワーヘッド30の前端位置D1よりボディシャワー浴用スライド部11側に配置している。
【0044】
次に、シャワーフック20について図4乃至図6を参照して説明する。図4はシャワーフック20の外観を示す図である。また、図5はシャワーフック20がスライドバー10に保持される状態を示す図であり、図6はシャワーフック20がスライドバー10をスライド移動される状態を示す図である。
【0045】
スイッチ21は、シャワーフック20を、スライドバー10に保持される状態からスライド移動される状態に変更する際に用いられる。ボール22は、スイッチ21の動作に連動してスライドバー10と接離するようになっており、スイッチ21が図3に示す状態にあるときはスライドバー10と接し、図4に示す状態になるときはスライドバー10から離間するようになっている。したがって、使用者がスイッチ21を押し込むことにより、ボール22がスライドバー10から離間し、シャワーフック20は移動可能になり、また、使用者がスイッチ21の押し込みを中止するとボール22がスライドバー10に接し、シャワーフック20はスライドバー10に係止する。
【0046】
また、シャワーフック20は、シャワーヘッド30の吐水角度が既述の第2吐水角度となるように微調整する吐水角度調整機構を備えている。より詳細には、シャワーヘッド30を保持する機構の角度をスライドバー10に対して段階的に変更可能に構成することにより、シャワーヘッド30の吐水角度を微調整できるようになっている。具体的には、シャワーヘッド30を保持する機構の動作と連動してボール24が複数の溝形状の凸凹部23を移動するようになっており、吐水角度が微調整されるのと同時にいずれかの凹部にボール24が嵌め込まれ、その吐水角度が固定されるようになっている。
【0047】
更に、図7に示すように、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12と吐水角度切替用スライド部13との連設位置10b近傍にシャワーフック20が位置した場合、シャワーフック20は、前後方向において、ボディシャワー浴用スライド部11にシャワーフック20が位置した場合における当該シャワーフック20に保持されるシャワーヘッド30の前端位置D1より、ボディシャワー浴用スライド部11側(前側)に配置されるように構成されている。
【0048】
次に、以上のように構成されたシャワー装置1の作用について説明する。
【0049】
シャワー装置1は、一つのシャワーヘッド30で、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを提供することができる。また、スライドバー10は、好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能な第1吐水を行いつつ、シャワーフック20を上下にスライド移動させるボディシャワー浴用スライド部11と、好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能な第2吐水を行いつつ、シャワーフック20を前後にスライドさせるオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12とを有するので、シャワーヘッド30を保持したシャワーフック20をボディシャワー浴用スライド部11やオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12をスライド移動させるのみで、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを選択的に享受することができる。
【0050】
シャワー装置1は、更に、ボディシャワー浴用スライド部11とオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12との間に設けられ、シャワーフック20を保持しながらスライドさせることで、シャワーヘッド30からの吐水が第1吐水角度と第2吐水角度とのそれぞれに少なくとも近づくように切り替える吐水角度切替用スライド部13を設けているので、ボディシャワー浴用スライド部11から吐水角度切替用スライド部13を経由してオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12までシャワーフック20をスライド移動させることで、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴までに適した吐水を簡単に切り替えることができる。
【0051】
また、シャワー装置1は、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12を、吐水角度切替用スライド部13から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置されるものとすることで、シャワーフック20をオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12においてスライド移動させるという簡単な操作のみで、使用者の体格に応じた適切なシャワーヘッドの位置を設定することができる。さらに、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12は、直線状の部分であるので、シャワーフック20をスライド移動させても、鉛直下方に向けた第2吐水角度の吐水をどの場所でも実現することができる。
【0052】
例えば、体格差の異なる使用者A(背が低い)、使用者B(背が高い)がそれぞれオーバーヘッドシャワー浴を行う場合、手の長ささが身長に比例するため、使用者Aの立ち位置は使用者Bの立ち位置より前側になり、図7に示すように、立ち位置が異なる。このように使用者毎に立ち位置が異なる場合も、オーバーヘッドシャワー浴時に、既述の第2の吐水角度で吐水される範囲R1内の場所であれば鉛直下方に向けた第2吐水角度のシャワー浴を行うことができる。
【0053】
更に、シャワー装置1は、前記前後方向に沿った長さにおいて、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12の長さS2を吐水角度切替用スライド部13の長さS1より長くしているため(図2参照)、スライドバー10全体として前後方向に沿った長さを長くすることなく、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴をできる範囲をできるだけ広くすることができる。このため、シャワー装置1が、例えば、浴室に設置された場合、浴室内の空間を使用者に広く感じさせつつ、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴ができる範囲を広くとることができる。
【0054】
更に、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12は、シャワーフック20を保持しながらスライド移動させる際に、前後方向の変化量よりも鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させているため(図2参照:L1>L2)、シャワー装置1は、オーバーヘッドシャワー浴を行う場合、使用者の背が低くても高くてもその使用者の頭上とシャワーヘッドの吐水面との距離を略一定に保つことができ、使用者が体格に応じて異なる場所でオーバーヘッドシャワー浴を行う場合に、どの場所においても最適な吐水距離でオーバーヘッドシャワー浴を行うことができる。
【0055】
更に、シャワー装置1は、吐水角度切替用スライド部13の両端を少なくとも湾曲するように形成し、ボディシャワー浴用スライド部11及びオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12がその湾曲の接線に沿うように連設させているため(図2参照)、使用者がボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴を行う場合、又は、オーバーヘッドシャワー浴からボディシャワー浴を行う場合、シャワーフック20を滑らかに移動させることができる。
【0056】
更に、シャワー装置1は、吐水角度切替用スライド部13の全体を、前後方向において、ボディシャワー浴用スライド部11にシャワーフック20が位置した場合、当該シャワーフック20に保持されたシャワーヘッド30の前端位置D1よりボディシャワー浴用スライド部11側に配置しているため(図3参照)、吐水角度切替用スライド部13の前後方向の長さS1をある程度確保しつつ、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12の前後方向の長さS2を最大限確保することができる。このため、ボディシャワー浴用スライド部11及びオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12間のシャワーフック20の移動を更に滑らかにすることができるうえ、オーバーヘッドシャワー浴ができる範囲R1をより広くすることができる。
【0057】
更にまた、シャワー装置1はシャワーフック20が備える吐水角度調整機構によりシャワーヘッドの吐水角度を微調整できるため、ボディシャワー浴時に、使用者が好みの吐水角度でボディシャワー浴をすることが可能になり、使用者の使い勝手を大きく向上させている。
【0058】
また、シャワー装置1は、ボディシャワー浴時のシャワーヘッド30の前端位置D1より後ろ側でシャワー浴を行う使用者が、オーバーヘッドシャワー浴を行うためにボディシャワー浴用スライド部11からオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12にシャワーフック20をスライド移動する場合、吐水角度切替用スライド部13の全体が使用者の前側となるように配置している(図3参照)。このため、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、使用者は、オーバーヘッドシャワー浴用スライド部12と吐水角度切替用スライド部13との連設位置10b付近に位置するシャワーフック20を前側に見ながら、シャワーが鉛直下方に向かって吐水されるように吐水角度を微調整することが可能になる。そして、吐水角度を調整した後、使用者はシャワーフック20を自身の頭上に位置するようにオーバーヘッドシャワー浴用スライド部12をスライド移動させることができる。
【0059】
したがって、ボディシャワー浴及びオーバーヘッドシャワー浴の両方とも最適な吐水角度でシャワー浴を行うことができると共に、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、シャワーの吐水方向及びシャワーフックに備えられる吐水角度調整機構を前側に視認しながら、且つ、楽な姿勢でシャワーの吐水角度を微調整することができる。
【0060】
なお、本発明の吐水角度調整機構は、上記実施の形態で説明したスライドバー10及びシャワーフック20からなるスライド機構に限定されるものではなく、他のスライド機構を用いるようにしても良い。例えば、図8に示すスライドバー60及びシャワーフック70からなるスライド機構を用いることができる。同図に示すように、当該スライド機構は、スライドバー60内に溝を設け、シャワーフック70が当該溝に沿ってスライドバー60の移動及び係止をするように構成されている。なお、溝を用いてスライド移動を実現する機構については、従来よりあるものと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0061】
また、上記実施の形態では、シャワー装置1がシャワーフック20に吐水角度調整機構を備える場合で説明したが、シャワー装置1が吐水角度調整機構を有しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、シャワーヘッドが保持されたシャワーフックをスライドバーに沿って移動させ、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴という2つのシャワー浴を行うことができるシャワー装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・シャワー装置
10・・・スライドバー
10a,10b・・・連設位置
11・・・ボディシャワー浴用スライド部(第1スライド部)
12・・・オーバーヘッドシャワー浴用スライド部(第2スライド部)
13・・・吐水角度切替用スライド部(第3スライド部)
20・・・シャワーフック
21・・・スイッチ
22,24・・・ボール
23・・・複数の凸凹部
30・・・シャワーヘッド
40・・・シャワーホース
50・・・操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8