【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシャワー装置では、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを切り替える場合、シャワーノズルをフックから着脱する操作及びシャワーの吐水先を切り替える操作を行わなくてはならない。また、オーバーヘッドシャワー浴時にシャワーの吐水角度を調整できないため、使用者の立つ位置によっては良好なオーバーヘッドシャワー浴ができない場合もあった。
【0008】
この点、特許文献2に記載のスライド式シャワーハンガーを利用した場合、ガイドレールに沿ってフックを移動させ、フックの傾斜角度を調節することによりシャワーの吐水位置を調節できるようになる。しかしながら、ガイドレールは棒状であるため、オーバーヘッドシャワー浴時にフックの傾斜角度を調節したとしてもシャワーの吐水方向は使用者に対して斜め方向のままである。このため吐水方向を調節するための手間もかかるうえ、頭上からシャワーを浴びる場合と比較して身体全体を暖めるのが難しかった。
【0009】
また、特許文献3に記載のシャワーヘッド取付装置では、ガイドロッドに沿ってシャワーヘッドを移動するだけでボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことができる。このため、使用者の操作は非常に簡単である。しかしながら、ガイドロッドは上方に凸状の曲線状となるように形成されているため、オーバーヘッドシャワー浴時に使用者が頭上からシャワーを浴びることができる場所は限られてしまう。
【0010】
以上のように、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で行えるようにすると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴を可能にすることはできなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で切り替えることができると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴を可能にすることができるシャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシャワー装置は、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置であって、シャワーホースの先端に連結され、ボディシャワー浴又はオーバーヘッドシャワー浴を行うためのシャワー吐水を行うシャワーヘッドと、前記シャワーヘッドを保持するシャワーフックと、前記シャワーフックが保持されながらスライドすることが可能なように取り付けられてなるスライドバーと、を備えている。前記スライドバーは、使用者の好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能なように、ボディシャワー浴に適した第1吐水角度で斜め下方に向けた第1吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら上下にスライド移動させる第1スライド部と、使用者の好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能なように、オーバーヘッドシャワー浴に適した第2吐水角度で鉛直下方に向けた第2吐水を行いつつ、前記シャワーフックを保持しながら、使用者が前記第1スライド部に正対した場合の前後にスライドさせる第2スライド部と、前記第1スライド部と前記第2スライド部との間に設けられ、前記シャワーフックを保持しながらスライドさせることで、前記シャワーヘッドからの吐水の角度が前記第1吐水角度と前記第2吐水角度とのそれぞれになるように切り替える第3スライド部と、を有し、前記第2スライド部は、前記第3スライド部から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置される直線状の部分であって、前記第2吐水角度を維持したまま前記シャワーフックをスライド移動させることが可能なように構成されている。
【0013】
本発明によれば、一つのシャワーヘッドで、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを提供することができる。本発明のスライドバーは、好みの高さでボディシャワー浴を行うことが可能な第1吐水を行いつつ、シャワーフックを上下にスライド移動させる第1スライド部と、好みの立ち位置でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが可能な第2吐水を行いつつ、シャワーフックを前後にスライドさせる第2スライド部とを有するので、シャワーヘッドを保持したシャワーフックを第1スライド部や第2スライド部をスライド移動させるのみで、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを選択的に享受することができる。
【0014】
本発明では更に、第1スライド部と第2スライド部との間に設けられ、シャワーフックを保持しながらスライドさせることで、シャワーヘッドからの吐水の角度が第1吐水角度と第2吐水角度とのそれぞれになるように切り替える第3スライド部を設けているので、第1スライド部から第3スライド部を経由して第2スライド部までシャワーフックをスライド移動させることで、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴までに適した吐水を簡単に切り替えることができる。
【0015】
ところで、シャワーヘッド及びシャワーフックをスライド移動させるためには、使用者がそれらを掴んでスライド移動させる必要があることから、使用者は少なくとも第1スライド部に手が届く位置に立つことになる。このことから本発明者らは、背が低く手が短い使用者は比較的第1スライド部に近づいて立つ傾向にあり、背が高く手が長い使用者は比較的第1スライド部から離れて立つ傾向にあることを発見した。従って、オーバーヘッドシャワー浴を行う際には、第1スライド部に近い側では背が低い使用者に対応するためシャワーヘッドを低い位置に保ち、第2スライド部から遠い側では背が高い使用者に対応するためにシャワーヘッドを高い位置に保つ必要がある。そこで本発明では、オーバーヘッドシャワー浴を行うための第2スライド部を、第3スライド部から離れるに従って上方に向かうように傾斜配置されるものとすることで、シャワーフックを第2スライド部においてスライド移動させるという簡単な操作のみで、使用者の体格に応じた適切なシャワーヘッドの位置を設定することができる。さらに、本発明の第2スライド部は、直線状の部分であるので、シャワーフックをスライド移動させても、鉛直下方に向けた第2吐水をどの場所でも実現することができる。
【0016】
また、本発明に係るシャワー装置は、前記前後方向に沿った長さにおいて、前記第2のスライド部の長さを前記第3のスライド部の長さより長くするようにしても良い。
【0017】
一般に、シャワー装置は浴室等に設置される場合が数多くある。このような場合、使用者に浴室内の空間を広く感じさせるという観点からはスライドバーの前記前後方向に沿った長さはできるだけ短い方が望ましい。一方で、オーバーヘッドシャワー浴ができる範囲を広くするという観点からは第2スライド部の前記前後方法に沿った長さは長い方が望ましい。この点、本発明に係るシャワー装置は、前記前後方向に沿った長さにおいて、第2スライド部の長さを第3のスライド部の長さより長くしているため、スライドバー全体として前記前後方向に沿った長さを長くすることなく、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴をできる範囲をできるだけ広くすることが実現できる。このため、本発明に係るシャワー装置が、例えば、浴室に設置された場合、浴室内の空間を使用者に広く感じさせつつ、第2吐水角度でオーバーヘッドシャワー浴ができる範囲を広くすることを実現できる。
【0018】
更に、本発明に係るシャワー装置の前記第2スライド部は、前記シャワーフックを保持しながらスライド移動させる際に、前記前後方向の変化量よりも前記鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させるようにしても良い。
【0019】
本発明者らは、上述のように、背が低く手が短い使用者は比較的第1スライド部に近づいて立つ傾向にあり、背が高く手が長い使用者は比較的第1スライド部から離れて立つ傾向にあることに加え、使用者間の手の長さの差よりも、その使用者間の背の高さの差の方が大きい傾向にあることを発見した。この知見に基づけば、第2スライド部を、シャワーフックを保持しながらスライド移動させる際に、前記前後方向の変化量よりも前記鉛直方向の変化量の方が大きくなるようにスライド移動させることにより、オーバーヘッドシャワー浴を行う場合、使用者の背が低くても高くてもその使用者の頭上とシャワーヘッドの吐水面との距離を略一定に保つことが可能になる。従って、使用者が体格差に応じて前記前後方向において異なる場所でオーバーヘッドシャワー浴を行う場合であっても、どの場所においても最適な吐水距離でオーバーヘッドシャワー浴を行うことが実現できる。
【0020】
更に、本発明に係るシャワー装置は、前記第3スライド部の両端が少なくとも湾曲するように形成されており、第1スライド部及び第2スライド部がその湾曲の接線に沿うように連設されるようにしても良い。
【0021】
ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置においては、ボディシャワー浴時のシャワーフックの位置とオーバーヘッドシャワー浴時のシャワーフックの位置とを簡単な操作で切り替え可能にすることが要求される。この点、本発明に係るシャワー装置は、第3スライド部の両端が少なくとも湾曲するように形成し、第1スライド部及び第2スライド部がその湾曲の接線に沿うように連設するため、使用者がボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴を行う場合、又は、オーバーヘッドシャワー浴からボディシャワー浴を行う場合、使用者はシャワーフックを滑らかに移動させることを実現できる。
【0022】
更に、本発明のシャワー装置は、前記第3スライド部の全体を、前記前後方向において、前記第1スライド部に前記シャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持された前記シャワーヘッドの前端位置より前記第1スライド部側に配置するようにしても良い。
【0023】
上述のようにシャワーフックの滑らかな移動を行うためには、第3スライド部は前記前後方向においてある程度の長さを必要とする。一方、オーバーヘッドシャワー浴を行う範囲はできるだけ広い方が望ましい。この点、本発明に係るシャワー装置は、第3スライド部の全体を前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持されたシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側に配置するため、第3スライド部の前後方向の長さをある程度確保しつつ、第2スライド部の前後方向の長さを最大限確保することができる。このため、シャワーフックを更に滑らかに移動することができるうえ、オーバーヘッドシャワー浴ができる範囲をより広くすることができる。
【0024】
更にまた、本発明に係るシャワーフックは、前記シャワーヘッドからの吐水の角度が前記第2吐水角度からずれている場合に、そのずれを微調整することが可能な吐水角度調機構を備え、第2スライド部と第3スライド部との連設位置近傍にシャワーフックが位置した場合、シャワーフックは、前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合における当該シャワーフックに保持される前記シャワーヘッドの前端位置より、第1スライド部側に配置されるようにしてもよい。
【0025】
一般に、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを行うことが可能なシャワー装置は、吐水角度を調整する吐水角度調整機構を備えることによりシャワーの吐水角度を調整できるため、特に、ボディシャワー浴時に、使用者が好みの吐水角度でボディシャワー浴をすることが可能になり、使用者の使い勝手を大きく向上することができる。
【0026】
しかし、吐水角度調整機構を設けることによって、ボディシャワー浴時に吐水角度が微調整される結果、オーバーヘッドシャワー浴時に鉛直下方に向かってシャワーが吐水されない場合が生じる。つまり、使用者がシャワーヘッドの吐水角度を微調整してボディシャワー浴を行い、その吐水角度を維持したままシャワーフックをオーバーヘッドシャワー浴用のスライド部に移動させてしまう場合である。この場合、オーバーヘッドシャワー浴時に鉛直下方に向かってシャワーが吐水されないため、使用者が再度シャワーヘッドの吐水角度をシャワーが鉛直下方に向かうように調整する必要が生じる。このとき、第2スライド部は使用者の頭上付近に位置するため、シャワーヘッドからシャワーが吐水される中、上方を見上げて吐水角度調整機構を操作することになるため、操作が大変であり、姿勢的にも負担が大きい。
【0027】
この点を解消するために本発明に係る吐水角度調整機構を備えたシャワー装置は、第3スライド部の全体を、前記前後方向において、第1スライド部にシャワーフックが位置した場合、当該シャワーフックに保持されたシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側に配置している。つまり、ボディシャワー浴時のシャワーヘッドの前端位置より後ろ側でシャワー浴を行う使用者が、オーバーヘッドシャワー浴を行うために第1スライド部から第2スライド部にシャワーフックをスライド移動する場合、第3のスライド部の全体をボディシャワー浴時のシャワーヘッドの前端位置より第1スライド部側、つまり、使用者の前側となるように配置している。このため、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、言い換えれば、第1スライド部から第2スライド部にシャワーフックを移動する場合、使用者は、第2スライド部と第3スライド部との連設位置付近に位置するシャワーフックを前側に見ながら、シャワーが鉛直下方に向かって吐水されるように吐水角度を微調整することが可能になる。そして、吐水角度を微調整した後、使用者はシャワーフックを自身の頭上に位置するように第2のスライド部をスライド移動させることができる。したがって、本発明に係るシャワー装置によると、ボディシャワー浴及びオーバーヘッドシャワー浴の両方とも最適な吐水角度でシャワー浴を行うことができると共に、ボディシャワー浴からオーバーヘッドシャワー浴に切り替える場合、シャワーの吐水方向及びシャワーフックに備えられる吐水角度調整機構を前側に視認しながら、且つ、楽な姿勢でシャワーの吐水角度を微調整することができる。
【0028】
本発明によると、ボディシャワー浴とオーバーヘッドシャワー浴とを簡単な操作で切り替えることができると共に、シャワー装置近傍のいずれの場所にいても良好なオーバーヘッドシャワー浴をすることができるシャワー装置を提供できる。