(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)アルカリ金属塩基等
上記アルカリ金属塩基として具体的には、例えば、Li又はNaの水酸化物及び水素化物並びにLi、Na又はKのアルコキシド(例えば、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシド)が挙げられる
が、本発明におけるアルカリ金属塩基とし
ては、Naの水酸化物、水素化物及びアルコキシドである。アルコール(1)とアルコール(2)との反応(以下、「アルコール二量化反応」という。)では、上記アルカリ金属塩基として、Naの水酸化物、水素化物又はアルコキシドが好ましい。
【0016】
上記アルカリ金属塩基等の量(合計量)は、アルコール(1)に対して0.5〜100mol%、好ましくは0.8〜80mol%、更に好ましくは1.0〜60mol%、より好ましくは5〜50mol%である。特に、アルコール二量化反応では、上記アルカリ金属塩基等の量は、アルコール(1)に対して0.5〜30mol%、好ましくは0.5〜20mol%である。上記のように、従来の方法では、基質に対して過剰量の塩基を用いる必要があった。しかし、本発明では、上記アルカリ金属塩基等の量が上記範囲でも二量体を得ることができる。また、上記アルカリ金属塩基等の量が上記範囲であると、塩基の中和工程を容易にすると共に、中和後のアルカリ金属塩の廃棄量を低減することができるので好ましい。
【0017】
(B)アルコール(1)
アルコール(1)は脂肪族、脂環式、芳香族及び複素環式のいずれでもよい。アルコール(1)は、第1級アルコール及び第2級アルコールのいずれでもよいが、本発明では、上記式(11)又は式(111
)で表されるアルコールを用いる。よって、本発明は、従来の方法と比べて基質の汎用性が高い。
【0018】
以下、アルコール(1)、並びに、式(1)に表されるR
1及びR
2について説明するが、本発明では、アルコール(1)としては、上記式(11)又は式(111
)で表されるアルコールを用いる。
R
1及びR
2は水素原子又は一価の炭化水素基である。R
1及びR
2は共に水素原子又は一価の炭化水素基でもよく、いずれか一方が水素原子で他方が一価の炭化水素基でもよい。R
1及びR
2が共に一価の炭化水素基の場合、各基は同じ基でもよく、異なる基でもよい。R
1及びR
2は互いに結合して環を形成してもよい(但し、芳香環は除く。)。該環の構造には特に限定はない。例えば、環員数には特に限定はない。該環の環員数は、4〜10員環、好ましくは5〜8員環とすることができる。上記環は、その構造中にヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等)を含んでいてもよい。上記環は、他の置換基を有していてもよい。上記環は、その構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0019】
上記一価の炭化水素基の構造に限定はない。上記一価の炭化水素基は鎖状構造でもよく、環状構造でもよい。上記一価の炭化水素基は、直鎖状でもよく、側鎖を有していてもよい。上記一価の炭化水素基は、飽和結合のみで構成されていてもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。上記一価の炭化水素基は、構造中に他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記一価の炭化水素基は、構造中に炭素原子及び水素原子以外の原子を含む置換基を有していてもよい。上記一価の炭化水素基は、構造中に炭素原子及び水素原子以外の原子を1個又は2個以上含んでいてもよい。上記炭素原子及び水素原子以外の原子としては、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI等)、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子の1種又は2種以上が挙げられる。
【0020】
上記一価の炭化水素基として具体的には、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びアリールアルキニル基が挙げられる。
【0021】
上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の炭素数には特に限定はない。上記アルキル基の炭素数は、通常1〜15、好ましくは2〜15、更に好ましくは3〜15、より好ましくは3〜12である。また、上記アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、通常2〜15、好ましくは3〜15、更に好ましくは3〜12である。上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が環状構造の場合(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基)、その炭素数は、通常4〜10、更に好ましくは5〜8、より好ましくは6〜8である。
【0022】
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、及びドデカニル基が挙げられる。上記シクロアルキル基として具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びイソプロペニル基が挙げられる。上記シクロアルケニル基として具体的には、例えば、シクロヘキセニル基が挙げられる。
【0023】
上記アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びアリールアルキニル基(以下、「アリール基等」と総称する。)の炭素数には特に限定はない。この炭素数は通常6〜15、好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜10である。
【0024】
上記アリール基等は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記アリール基等に含まれる芳香環は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記アリール基は、無置換のアリール基だけでなく、置換アリール基でもよい。芳香環に位置する置換基の位置は、o−、m−、及びp−のいずれでもよい。上記置換基として具体的には、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI等)、アルキル基、アルコキシ基及びチオアルキル基の1種又は2種以上が挙げられる。該アルキル基、アルコキシ基及びチオアルキル基の炭素数は通常1〜6、好ましくは1〜4である。
【0025】
上記アリール基等に含まれる芳香環は、ヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子)の1種又は2種以上を有していてもよい。上記アリール基等に含まれる芳香環は、芳香族複素環(フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、インドール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イソキサゾール、オキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、及びピリミジン等)でもよい。
【0026】
上記アリール基として具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、ハロゲン化フェニル基(o−、m−、及びp−)、メトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、チオメトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フラン、並びにチオフェンが挙げられる。上記アリールアルキル基として具体的には、ベンジル基及びメトキシベンジル基(o−、m−、及びp−)が挙げられる。
【0027】
アルコール(1)として第1級アルコールを用いると、高収率・高選択的に二量体を得ることができるので好ましい。特に、アルコール二量化反応では、高収率・高選択的に二量化アルコールを得ることができるので好ましい。
【0028】
アルコール(1)として芳香族アルコールを用いると、高収率・高選択的に二量体を得ることができるので好ましい。特に、アルコール二量化反応では、高収率・高選択的に二量化アルコールを得ることができるので好ましい。
【0029】
アルコール(1)として、ハロゲン置換アリール基を有するアルコールを用いることができる。ハロゲン置換アリール基は、遷移金属触媒に不安定な性質を有する。そのため、従来の遷移金属触媒を用いた二量化反応は良好に進行しないと考えられる。一方、本発明では、上記アルコールを用いても二量化反応を行うことができるので好ましい。上記ハロゲン置換アリール基に含まれるハロゲン原子としては、F、Cl、Br及びI等が挙げられる。上記ハロゲン原子の数及び芳香環上の位置には特に限定はない。芳香環上の位置はo−、m−、及びp−のいずれでもよい。上記ハロゲン置換アリール基を有するアルコールとして具体的には、例えば、ハロゲン置換ベンジルアルコール(o−、m−、又はp−モノハロゲン化ベンジルアルコール)が挙げられる。
【0030】
アルコール(1)としてより具体的には、例えば、式(1−1)〜(1−4)で表されるアルコールが挙げられる。
【0032】
式中、Y
1〜Y
4は水素原子又は任意の置換基である。式(1−3)中、ZはO又はSである。Y
1として具体的には、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br及びI等)、アルキル基、アルコキシ基及びチオアルキル基が挙げられる。該アルキル基、アルコキシ基及びチオアルキル基の炭素数は通常1〜6、好ましくは1〜4である。式(1−4)中、Y
2及びY
3は通常、いずれも一価の炭化水素基であるか、一方が水素原子であり、他方が一価の炭化水素基である。また、Y
4は通常、水素原子である。Y
2及びY
3は同一の基でもよく、異なる基でもよい。上記一価の炭化水素基の種類及び構造には特に限定はない。該一価の炭化水素基の内容は、R
1及びR
2の説明が妥当する。
【0033】
アルコール二量化反応において、アルコール(1)として、ヒドロキシル基のβ炭素に水素を有しないアルコール(例えば、上記式(1−1)〜(1−3)のアルコール)を用いることができる。このアルコールを用いることにより、アルコール(2)(ヒドロキシル基のβ炭素に水素を有するアルコール)同士のアルコール二量化反応を抑制し、二量体の収率を高めることができるので好ましい。上記ヒドロキシル基のβ炭素に水素を有しないアルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール(PhCH
2OH)等のアリールメタノールが挙げられる。該アリールメタノールのアリール基は、無置換のアリール基だけでなく、置換アリール基でもよい。該置換アリール基の内容は、R
1及びR
2の説明が妥当する。
【0034】
(C)アルコール(2)及びカルボニル化合物(3)
以下、アルコール(2)、及びカルボニル化合物(3)について説明するが、本発明では、アルコール(2)としては、上記式(21)又は式(211)で表されるアルコールを用いる
。
アルコール(2)及びカルボニル化合物(3)は脂肪族、脂環式、芳香族及び複素環式のいずれでもよい。アルコール(2)は第1級アルコールでもよく、第2級アルコールでもよい。カルボニル化合物(3)はアルデヒドでもよく、ケトンでもよい。
【0035】
R
3及びR
4は水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の内容は、R
1及びR
2の説明が妥当する。R
4がアリール基であると、高収率・高選択的に二量体を得ることができるので好ましい。特に、アルコール二量化反応では、高収率・高選択的に二量化アルコールを得ることができるので好ましい。
【0036】
R
3及びR
4は共に水素原子又は上記一価の炭化水素基でもよく、いずれか一方が水素原子で他方が上記一価の炭化水素基でもよい。R
3及びR
4が共に上記一価の炭化水素基の場合、各基は同じ基でもよく、異なる基でもよい。R
3及びR
4は互いに結合して環を形成してもよい(但し、芳香環は除く。)。該環の構造には特に限定はない。例えば、環員数には特に限定はない。該環の環員数は、4〜10員環、好ましくは5〜8員環とすることができる。上記環は、その構造中にヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等)を含んでいてもよい。上記環は、他の置換基を有していてもよい。上記環は、その構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0037】
本発明では、ハロゲン置換アリール基を有するアルコール(2)及びカルボニル化合物(3)を用いることができる。上記のように、ハロゲン置換アリール基は、遷移金属触媒に不安定な性質を有する。一方、本発明では、上記のアルコール及びカルボニル化合物を用いても、二量化反応を行うことができるので好ましい。上記ハロゲン置換アリール基に含まれるハロゲン原子としては、F、Cl、Br及びI等が挙げられる。上記ハロゲン原子の数及び芳香環上の位置には特に限定はない。芳香環上の位置はo−、m−、及びp−のいずれでもよい。ハロゲン置換アリール基を有するカルボニル化合物(3)としては、例えば、R
4がハロゲン置換(例えば、o−、m−、又はp−モノハロゲン置換)アリール基であるカルボニル化合物(3)が挙げられる。
【0038】
アルコール(2)としては、例えば、R
3が水素原子であり、R
4が上記一価の炭化水素基であるアルコールが挙げられる。より具体的には、アルコール(2)としては、例えば、R
3が水素原子であり、R
4がアリール基であるアルコールが挙げられる。該アリール基の内容は、R
1及びR
2の説明が妥当する。
【0039】
カルボニル化合物(3)としては、例えば、R
3及びR
4が上記一価の炭化水素基であるカルボニル化合物、特に、R
3及びR
4が異なる上記一価の炭化水素基であるカルボニル化合物が挙げられる。より具体的には、カルボニル化合物(3)としては、例えば、R
3がアルキル基又はフェニル基であり、R
4がフェニル基、ハロゲン(F、Cl、Br又はI)化フェニル基(o−、m−、及びp−)、又はアルコキシ(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基等の炭素数1〜10、好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜4のアルコキシ)フェニル基(o−、m−、及びp−)であるカルボニル化合物が挙げられる。
【0040】
(D)二量体
上記「二量体」は、アルコール(1)のα炭素(C
α)とアルコール(2)又はカルボニル化合物(3)のβ炭素(C
β)との間に炭素−炭素結合が形成されて得られる化合物を意味する(下記式参照)。
【0042】
上記「二量体」は、以下の化合物を含む(但し、後述のアミノアルコール(1−5)及びカルボニル化合物(3−1)の反応により得られるピロール(6)は除く。)。
(a)上記炭素−炭素結合が形成された化合物が更に反応(例えば、環化反応又は還元反応)して得られる化合物。
(b)上記炭素−炭素結合を形成する前に基質同士が反応して二量体を形成し、その後、上記炭素−炭素結合を形成することにより得られる化合物。
(c)上記炭素−炭素結合を形成する前に基質が反応(例えば、酸化)し、生成した反応物同士又は生成した反応物と基質との間で上記炭素−炭素結合が形成された化合物。
(d)上記(b)又は(c)の化合物が更に反応(例えば、環化反応又は還元反応)して得られる化合物。
【0043】
アルコール二量化反応では、上記二量体として、例えば、式(4)のアルコールが挙げられる。また、アルコール(1)とカルボニル化合物(3)との二量化反応では、上記二量体として、例えば、式(5)のカルボニル基含有二量体が挙げられる。
【0045】
また、アミノアルコール(1−5)とカルボニル化合物(3−1)との反応では、アミノアルコール(1−5)のα炭素とカルボニル化合物(3−1)のβ炭素との間の炭素−炭素結合の形成と、アミノアルコール(1−5)の窒素原子とカルボニル化合物(3−1)のカルボニル炭素との間の炭素−窒素結合の形成により、最終的にピロール(6)を得ることができる。式中、R
a〜R
eは水素原子又は任意の置換基(通常は一価の炭化水素基)である。該一価の炭化水素基の内容は、R
1〜R
5の説明が妥当する。この反応では、アミノアルコール(1−5)のα炭素とカルボニル化合物(3−1)のβ炭素との間で炭素−炭素結合が形成されることにより、下記のカルボニル基含有二量体(5−1)が得られ、次いで、該カルボニル基含有二量体(5−1)中の窒素原子がカルボニル炭素を攻撃して、最終的にピロール(6)が得られると推定される。
【0047】
(D)方法
本発明では、遷移金属の非存在下で反応を行う。該遷移金属としては通常、周期表第8〜第10族元素、好ましくは周期表第6〜第10族元素又は第8〜第11族元素、更に好ましくは周期表第6〜第11族元素、より好ましくは周期表第3〜第11族元素が挙げられる。上記遷移金属は遷移金属単体及び遷移金属化合物を含む。該化合物は無機化合物及び有機化合物を含む。
【0048】
上記のように、本発明では、上記遷移金属の非存在下で反応を行う。しかし、基質、上記アルカリ金属塩基等及び溶媒中に不純物として上記遷移金属が存在する可能性はある。本発明では、不純物として不可避な程度の量の上記遷移金属が存在する場合も、上記二量体を得ることができる限り、「遷移金属の非存在下」に含まれる。具体的には、例えば、上記遷移金属が、アルコール(1)に対して0を超えて0.005mol%以下(より好ましくは0を超えて0.001mol%以下)存在する場合も、「遷移金属の非存在下」に含まれる。
【0052】
アルコール(1)及びアルコール(2)として、異なるアルコールを用いるアルコール二量化反応の場合、該アルコールの割合には特に限定はない。アルコール(1)及びアルコール(2)は同量でもよく、いずれか一方が過剰量でもよい。アルコール(1)及びアルコール(2)の量の比(モル比)として好ましくは、1:(0.5〜2以上)、好ましくは1:(0.5〜2)、更に好ましくは1:(0.7〜1.5)である。
【0053】
アルコール(1)及びカルボニル化合物(3)の反応において、アルコール(1)及びカルボニル化合物(3)の量には特に限定はない。アルコール(1)及びカルボニル化合物(3)は同量でもよく、いずれか一方が過剰量でもよい。この反応では、アルコール(1)よりもカルボニル化合物(3)の量が多い方が好ましい。より具体的には、アルコール(1)及びカルボニル化合物(3)の量の比(モル比)として好ましくは1:(1.5以上)、更に好ましくは1:(2以上)、より好ましくは1:(2〜3)である。
【0054】
アルコール二量化反応において、更にカルボニル化合物を反応系中に存在させてもよい。該カルボニル化合物の存在下で反応させると、収率よく二量体を得ることができるので好ましい。上記カルボニル化合物として具体的には、例えば、ベンゾフェノン及びその誘導体が挙げられる。上記カルボニル化合物の量は、通常、アルコール(1)に対して1当量以上、好ましくは2当量以上、更に好ましくは2.5〜5当量である。
【0055】
本発明は、通常、溶媒中で行う。該溶媒の種類は、二量体が得られる限り特に限定はない。上記溶媒として好ましくは非極性溶媒である。該非極性溶媒として具体的には、例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン及びキシレン等)並びに脂肪族炭化水素類(n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン及びn−ドデカン等の直鎖脂肪族炭化水素類等)が挙げられる。上記溶媒は1種単独でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。一方、アセトニトリル等のニトリル類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、DMF、及び低沸点溶媒(例えば、THF等の沸点が80℃以下の溶媒)は、上記溶媒として好ましくない。よって、本発明では、これらの溶媒以外の溶媒を用いることが好ましい。
【0056】
また、本発明は非水系溶媒中で行うことが好ましい。本発明を非水系溶媒中で行うと、二量体の収率を高めることができるので好ましい。上記非水系溶媒としては、例えば、上記芳香族炭化水素類及び上記脂肪族炭化水素類が挙げられる。非水系溶媒中に、不純物として不可避な程度の量の水が存在する場合(例えば、上記非水系溶媒に対して2%以下、あるいは1%以下、あるいは0.5%以下)も、上記二量体を得ることができる限り、「非水系溶媒中」に含まれる。
【0057】
反応条件には特に限定はない。本発明は、従来の方法と比べて穏和な条件で反応を進めることができる。例えば、反応時間は1〜72時間、好ましくは8〜48時間とすることができる。反応温度は150℃以下、好ましくは100〜150℃とすることができる。また、本発明は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応圧力は0.5気圧以上(例えば、1気圧以上、より詳細には1〜3気圧)とすることができる。
【0058】
反応雰囲気には特に限定はない。反応雰囲気は空気等の酸素含有雰囲気下でもよく、酸素非含有雰囲気下でもよい。該反応雰囲気として具体的には、例えば、水素ガス雰囲気及び不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)が挙げられる。アルコール二量化反応では、水素ガス含有雰囲気下で反応を行うと、二量化アルコールの収率及び選択性を向上させることができるので好ましい。これは、副生するケトンが水素ガスにより還元されるためと考えられる(本説明は、発明者の推測である。従って、本説明は、本発明を何ら限定する趣旨の説明ではなく、また、本発明を定義する趣旨の説明でもない。)。一方、アルコール(1)及びカルボニル化合物(3)との反応では、反応雰囲気として好ましくは不活性ガス雰囲気である。
【0059】
上記反応雰囲気は、2種以上のガスを含む混合ガス雰囲気でもよい。該混合ガス雰囲気として具体的には、例えば、酸素含有雰囲気下(空気等)及び水素ガス含有雰囲気が挙げられる。該混合ガス雰囲気としてより具体的には、例えば、不活性ガス(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)及び水素ガスを含有する水素ガス含有雰囲気が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限られない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0061】
(1)実験例1−1
以下の方法により、種々の基質アルコールを用いて、二量化アルコールを製造した。反応スキームを表2に併記する。反応スキーム中の「mol%」は、アルコール(1)及び(2)に対する割合である。
【0062】
ヒートガンで加熱乾燥したシュレンク内の気体をアルゴンガスで置換した。次いで、室温でNaOH(0.4mmol,16mg)を加えた。更にアルコール(1)及び(2)(いずれも10mmol)並びにp−キシレン(10ml)を加え、懸濁溶液を調製した。シュレンクを液体窒素で冷却して凍結脱気し、次いで水素ガスで満たした1リットルの集気袋を取り付け、シュレンク内を水素ガスで満たした。
【0063】
混合物を135℃で48時間攪拌して反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、該反応混合物を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/100〜1/30)により精製し、目的生成物の二量化アルコール(a)及び副生成物のケトン(b)を得た。二量化アルコール及びケトンの収率(%)は、生成物を単離後、生成物に0.1mmolの1,1,2,2−テトラクロロエタン(標準物質)を加え、CDCl
3にこれらを溶解させ、
1H−NMRを測定し、そのスペクトルの積分値から換算して求めた単離収率である。その結果を表1に示す(エントリー1)。表2中、カッコ内の数値はケトンの収率を表す。
【0064】
NaOHの量及び反応温度を表2記載の内容とする他は、上記と同じ方法により、種々の基質アルコールを用いて、二量化アルコールを製造した(エントリー2〜10)。以上の結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2より、エントリー1〜10のいずれも、NaOHの量が従来の方法と比べて少量(4〜20mol%)であり、遷移金属非存在下であるにもかかわらず、収率よく二量化アルコールを得ることができることが分かる。また、エントリー1〜10のいずれも、副生成物であるケトンの収率は僅かであることから、選択性に優れていることが分かる。
【0067】
(2)実験例1−2
アルコール(1’)及び(2’)を用い、実験例1−1と同様の方法により、二量化アルコールを製造した。反応スキームを表3に併記する。反応スキーム中の「mol%」は、アルコール(1’)及び(2’)に対する割合である。尚、反応雰囲気は水素ガス雰囲気からアルゴンガス雰囲気に変更した。また、反応時間は24時間に変更した。更に、アルカリ塩基として、表3記載のアルカリ金属塩基を用いた。以上の結果を表3に示す。表3中、カッコ内の数値はケトンの収率を表す。
【0068】
【表3】
【0069】
(3)実験例2−1
ヒートガンで加熱乾燥したシュレンク内の気体をアルゴンガスで置換した。次いで、室温でNaOH(0.40mmol、40mol%)を加えた。更にバリノール及びプロピオフェノン(いずれも1mmol)並びにp−キシレン(1ml)を加え、懸濁溶液を調製した。シュレンクを液体窒素で冷却して凍結脱気し、次いでアルゴンガスで満たした1リットルの集気袋を取り付け、シュレンク内をアルゴンガスで満たした。
【0070】
混合物を165℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液で洗浄し、水層をCH
2Cl
2により3回抽出した。
【0071】
次いで、抽出物をシリカゲルカラム(ウルトラパックSI−40A)を備えた中圧型分取用HPLC(YFLC−Wprep;YAMAZEN,Ltd.製)を用いて精製し(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1:50)、目的生成物であるピロールを得た。ピロールの収率(%)は、生成物を単離後、生成物に0.1mmolの1,1,2,2−テトラクロロエタン(標準物質)を加え、CDCl
3にこれらを溶解させ、
1H−NMRを測定し、そのスペクトルの積分値から換算して求めた単離収率である。その結果を表4に示す(エントリー1)。
【0072】
NaOHに代えて、表4記載のアルカリ金属塩基等を用いる他は、上記と同じ方法により、ピロールを製造した(エントリー2〜6)。以上の結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
(4)実験例2−2
基質として、種々のβ−アミノアルコール及びカルボニル化合物を用い、実験例2−1(エントリー1)と同様の方法により、種々のピロールを得た。ピロールの収率(%)を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
(5)実験例2−3
基質として、下記のβ−アミノアルコール及びプロピオフェノンを用い、実験例2−1(エントリー1)と同様の方法により反応を行った。反応スキームを以下に示す。反応の結果、下記のカルボニル基含有二量体が得られ(収率;18%)、水酸基含有二量体は得られなかった。
【0077】
【化6】
【0078】
実験例2−1〜2−3より、アルコール(1)とカルボニル化合物(3)との反応により、二量体が得られることが分かる。特に、実験例2−3より、この反応では、アルコール(1)(β−アミノアルコール)のα炭素と、カルボニル化合物(3)(プロピオフェノン)のβ炭素(C
β)との間に炭素−炭素結合が形成されたカルボニル基含有二量体が得られることが分かる。また、実験例2−1〜2−3より、この反応でも、実験例1−1及び1−2と同様に、NaOHの量が従来の方法と比べて少量(4〜20mol%)であり、遷移金属非存在下であるにもかかわらず、二量体を得ることができることが分かる。更に、実験例2−3では、副生成物である水酸基含有二量体は得られなかったことから、選択性に優れていることが分かる。