特許第5854370号(P5854370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5854370蛍光体含有ガラス部材の検査装置及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854370
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】蛍光体含有ガラス部材の検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20160120BHJP
   G01N 21/958 20060101ALI20160120BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   G01N21/88 K
   G01N21/958
   G01N21/64 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-28218(P2012-28218)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-164371(P2013-164371A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀江 一央
(72)【発明者】
【氏名】常岡 貴士
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−215688(JP,A)
【文献】 特開昭61−057838(JP,A)
【文献】 特開2007−198953(JP,A)
【文献】 特開2007−299584(JP,A)
【文献】 特開2007−093411(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0115463(US,A1)
【文献】 原 靖彦,「4.検査における映像情報メディア技術」,映像情報メディア学会誌,1998年 5月20日,Vol. 52, No. 5,pp. 647-652
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/88
G01N 21/958
G01N 21/64
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnO−B23−SiO2系ガラス粉末、SiO2−B23−RO系ガラス粉末(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、SiO2−TiO2−Nb25−R'2O系ガラス粉末(R'は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも一種)およびSnO−P25系ガラス粉末からなる群から選択される一種のガラス粉末と、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物およびアルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機蛍光体粉末とを含む混合粉末の焼成体からなる蛍光体含有ガラス部材の欠陥を検査する装置であって、
前記蛍光体含有ガラス部材中の蛍光体を発光させる検査光を、複数のセグメントに区画された前記蛍光体含有ガラス部材の所定のセグメントに照射する照明部と、
前記検査光を照射された前記蛍光体含有ガラス部材の前記所定のセグメントを撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記蛍光体含有ガラス部材の撮像画像を画像処理する画像処理部とを備えたことを特徴とする蛍光体含有ガラス部材の検査装置。
【請求項2】
前記検査光の波長が300〜495nmであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体含有ガラス部材の検査装置。
【請求項3】
前記照明部は、前記蛍光体含有ガラス部材に対して前記撮像部の光軸と同軸方向から前記検査光を照射する同軸落射照明部と、前記蛍光体含有ガラス部材に対して前記撮像部の光軸と交差する方向から前記検査光を照射する斜光照明部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体含有ガラス部材の検査装置。
【請求項4】
前記照明部は、前記蛍光体含有ガラス部材に対して前記撮像部と反対側の背面側から前記検査光を照射する背面照射部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体含有ガラス部材の検査装置。
【請求項5】
前記蛍光体含有ガラス部材の背面側に移動可能な背景板が配置されており、該背景板は、前記背面照射部により前記検査光を照射する際に、前記検査光を遮らない位置に移動されることを特徴とする請求項4に記載の蛍光体含有ガラス部材の検査装置。
【請求項6】
ZnO−B23−SiO2系ガラス粉末、SiO2−B23−RO系ガラス粉末(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、SiO2−TiO2−Nb25−R'2O系ガラス粉末(R'は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも一種)およびSnO−P25系ガラス粉末からなる群から選択される一種のガラス粉末と、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物およびアルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機蛍光体粉末とを含む混合粉末の焼成体からなる蛍光体含有ガラス部材の検査方法であって、
前記蛍光体含有ガラス部材を複数のセグメントに区画し、
蛍光体含有ガラス部材中の蛍光体を発光させる検査光を照射部により該蛍光体含有ガラス部材の所定のセグメントに照射し、
前記検査光を照射された前記蛍光体含有ガラス部材の前記所定のセグメントを撮像部で撮像し、
前記撮像部で撮像した前記蛍光体含有ガラス部材の撮像画像を画像処理部で画像処理し、
前記画像処理部で画像処理した処理画像に基づいて、前記蛍光体含有ガラス部材の欠陥を検出することを特徴とする蛍光体含有ガラス部材の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体含有ガラス部材における蛍光体のヌケや凝集、泡等の欠陥を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体含有ガラス部材として、ガラス粉末と無機蛍光体粉末との混合物を加圧成型し、焼成して得られたものが知られており、例えば、青色発光ダイオード(青色LED)素子等の青色光源から発せられる青色光を白色光に変換するための発光色変換部材として用いられている(例えば、特許文献1〜4)。この発光色変換部材としての蛍光体含有ガラス部材は、青色光源から発せられる青色光の一部をこの青色光と補色の関係にある黄色光に変換する機能を有し、青色光源から発せられる残りの青色光と蛍光体含有ガラス部材によって変換された黄色光とが合成されて白色光が得られる。このような蛍光体含有ガラス部材は、蛍光体のヌケ、凝集、泡といった欠陥があると、発光効率が低下したり、発光色にバラツキが発生したりする。
【0003】
また、ディスプレイ用ガラス基板等の透明なガラス部材の欠陥を光学的手段によって検査する検査装置が知られている(例えば、特許文献5〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−115223号公報
【特許文献2】特開2010−84069号公報
【特許文献3】特開2010−83704号公報
【特許文献4】特開2010−174246号公報
【特許文献5】特開2008−170429号公報
【特許文献6】特開2005−156254号公報
【特許文献7】特開2012−7993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガラス部材の検査装置は透明なガラス部材を検査対象としたものであり、ガラス部材に照射した検査光(検査装置の照明部から照射される光)が欠陥部分で散乱、遮光又は屈折する現象を利用して欠陥を検出するものである。例えば、特許文献5の検査装置では、板ガラスの一面側から斜め方向に検査光を照射し、板ガラスの他面を透過して受光部で受光される検査光の受光量の減少により、板ガラスの表面や内部の欠陥を検出している。また、特許文献6の検査装置では、ガラス板のエッジ(研削面)に生じるカケを検出するために、ガラス板の一面側に配置するカメラの視線を、ガラス板のエッジ側又は一面側に傾け、エッジのカケによって屈折したカメラの視線が、ガラス板の他面側に配置した光源を見るようにし、カケを通った光源の明るい光をカメラで捕らえることにより、エッジのカケを検出している。さらに、特許文献7の検査装置では、ガラス基板の側面(端面)から検査光をガラス基板の内部に入射させ、ガラス基板の内部又は表面の欠陥で散乱した散乱光を検知することにより、ガラス基板の表面や内部の欠陥を検出している。
【0006】
しかしながら、蛍光体含有ガラス部材は一般に半透明な部材であり、上述した従来の検査装置では、検査光を蛍光体含有ガラス部材に照射しても、蛍光体含有ガラス部材の内部を透過する検査光の光量が十分でないために、蛍光体含有ガラス部材の欠陥、特に蛍光体のヌケ、凝集、泡といった内部欠陥を精度良く検出することはできない。
【0007】
本発明の課題は、蛍光体含有ガラス部材の欠陥を精度良く検出することができる検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、蛍光体含有ガラス部材の欠陥を検査する装置であって、蛍光体含有ガラス部材中の蛍光体を発光させる検査光を蛍光体含有ガラス部材に照射する照明部と、検査光を照射された蛍光体含有ガラス部材を撮像する撮像部と、撮像部で撮像された蛍光体含有ガラス部材の撮像画像を画像処理する画像処理部とを備えた検査装置を提供する。
【0009】
本発明の検査装置において、照明部から照射する検査光は波長300〜495nmの光であることが好ましい。
【0010】
本発明の検査装置において、照明部は、蛍光体含有ガラス部材に対して撮像部の光軸と同軸方向から前記検査光を照射する同軸落射照明部と、蛍光体含有ガラス部材に対して撮像部の光軸と交差する方向から検査光を照射する斜光照明部とを備えていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の検査装置において、照明部は、蛍光体含有ガラス部材に対して撮像部と反対側の背面側から検査光を照射する背面照射部をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
上記の背面照射部を用いて検査を行う場合、同軸落射照明部や斜光照明部による検査の際に用いる背景板があると、背面照射部から照射される検査光が背景板によって遮られて、蛍光体含有ガラス部材に入射されなくなるが、背景板を移動可能に構成し、背面照射部により検査光を照射する際に、背景板を検査光を遮らない位置に移動させることにより、このような不都合を回避することができる。
【0013】
本発明の検査装置が検査対象とする蛍光体含有ガラス部材は、例えば、ZnO−B23−SiO2系ガラス粉末、SiO2−B23−RO系ガラス粉末(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、SiO2−TiO2−Nb25−R’2O系ガラス粉末(R’は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも一種)およびSnO−P25系ガラス粉末からなる群から選択される一種のガラス粉末と、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物およびアルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機蛍光体粉末とを含み、入射光の波長の一部を別の波長に変換するものである。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決するため、蛍光体含有ガラス部材中の蛍光体を発光させる検査光を照射部により蛍光体含有ガラス部材に照射し、検査光を照射された蛍光体含有ガラス部材を撮像部で撮像し、撮像部で撮像した蛍光体含有ガラス部材の撮像画像を画像処理部で画像処理し、画像処理部で画像処理した処理画像に基づいて、蛍光体含有ガラス部材の欠陥を検出する検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、照明部から照射される検査光によって蛍光体含有ガラス部材中の蛍光体が励起されて発光するので、検査光の照射により蛍光体が発光した状態の蛍光体含有ガラス部材を撮影部で撮像し、その撮像画像を画像処理部で画像処理して処理画像を得ることにより、蛍光体のヌケ、凝集、泡といった蛍光体含有ガラス部材の各種欠陥を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る検査装置の全体構成を概念的に示す図である。
図2】検査対象である蛍光体含有ガラス板を上方から見た図である。
図3】蛍光体含有ガラス板の検査結果を示す表である。
図4】蛍光体含有ガラス板のセグメントの処理画像である。
図5】蛍光体含有ガラス板のセグメントの処理画像である。
図6】蛍光体含有ガラス板のセグメントの処理画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る検査装置の全体構成を概念的に示している。この実施形態の検査装置は、蛍光体含有ガラス部材としての蛍光体含有ガラス板1の欠陥を検査するためのものであって、蛍光体含有ガラス板1中の蛍光体を発光させる検査光を蛍光体含有ガラス板1に対して照射する照明部(2A,2B,2C)と、検査光を照射された蛍光体含有ガラス板1を撮像する撮像部3と、撮像部3で撮像された蛍光体含有ガラス板1の撮像画像を画像処理する画像処理部4とを主要な構成要素として備えている。
【0019】
この実施形態において、蛍光体含有ガラス板1は、例えば、ZnO−B23−SiO2系ガラス粉末等のガラス粉末と、無機蛍光体粉末としてのYAG蛍光体粉末とを混合し、所定形状に加圧成型し、焼成して得られたものである。この蛍光体含有ガラス板1は、青色発光ダイオード(青色LED)素子等の青色光源から発せられる青色光の一部をこの青色光と補色の関係にある黄色光に変換する機能を有し、青色光源から発せられる青色光を白色光に転換するための発光色変換部材として用いられる。
【0020】
図2に示すように、この実施形態において、検査対象とする蛍光体含有ガラス板1は複数の矩形状のセグメント1aに分割されており、欠陥の検査はセグメント1aごとに行う。そのために、蛍光体含有ガラス板1を例えばXYZ軸方向に可動な可動テーブル5に搭載し、可動テーブル5のXYZ軸方向の移動によって各セグメント1aを適切な検査位置に移動させるようにしている。可動テーブル5の上面には検査台6が固定されており、蛍光体含有ガラス板1は検査台6の上部の載置部6aに載置される。載置部6aは、金属製の枠部材6a1と、枠部材6a1に張設された粘着性の透明フィルム、例えば透明UVフィルム6a2と、透明UVフィルム6a2の下方で枠部材6a1に固定された透明板、例えば透明アクリル板6a3とを備えている。
【0021】
この実施形態において、照明部は、蛍光体含有ガラス板1に対して撮像部3の光軸と同軸方向から検査光を照射する同軸落射照明部2Aと、蛍光体含有ガラス板1に対して撮像部3の光軸と交差する方向から検査光を照射する斜光照明部2Bと、蛍光体含有ガラス板1に対して検査光を背面側から照射する背面照射部2Cとを備えている。
【0022】
同軸落射照明部2Aは、撮像部3の光軸と直交方向から検査光を出射する光源2A1と、光学系2A2とを備えており、光学系2A2は、光源2A1から出射された検査光を撮像部3の光軸と同軸方向の光に変換して検査対象である蛍光体含有ガラス板1に鉛直上方から照射するためのハーフミラーと、検査光が照射された蛍光体含有ガラス板1の画像光を撮像部3に結像させるためのテレセントリックレンズを含んでいる。
【0023】
斜光照明部2Bは、リング状の保持部材2B1と、リング状の保持部材2B1の内周に円周方向に所定間隔で保持された複数の光源(図示省略)とを有するリング照明であり、斜光照明部2Bの各光源から出射された検査光は、蛍光体含有ガラス板1に対して斜め上向から照射される。
【0024】
同軸落射照明部2A又は斜光照明部2Bにより、検査光を蛍光体含有ガラス板1に対して上面側から照射して画像を撮像する場合、蛍光体含有ガラス板1の背面側に配置した背景板、例えば黒色板8を背景にして画像を撮像する。この実施形態において、黒色板8は、検査台6の内部に配置され、蛍光体含有ガラス板1の背面と背面照射部2Cとの間に介在する。なお、背景板の色は、検出する欠陥の種類に応じて、適宜選択(例えば白色)することができる。
【0025】
背面照射部2Cは、検査台6の内部に収容され、蛍光体含有ガラス板1に対して背面(下面)側から拡散板を介して検査光を照射するものである。背面照射部2Cからの検査光が黒色板8によって遮られてしまう事態を回避するため、この実施形態では、黒色板8を適宜の移動機構により移動可能に構成し、背面照射部2Cにより検査光を照射する際に背景板8を移動機構により自動的に移動するようにしている。
【0026】
同軸落射照明部2A、斜光照明部2B、背面照射部2Cの光源は、蛍光体含有ガラス板中に含まれる蛍光体を励起して発光させることができる波長を有するものであれば良く、蛍光体の種類に応じて適切な光源を選択すればよいが、例えば波長が300〜495nmの光源を用いることが好ましい。この実施形態において、蛍光体含有ガラス板1は蛍光体としてYAG蛍光体を含有しているので、YAG蛍光体を効果的に発光させることができる波長435〜495mmの光源、特に波長450〜495nmの青色光源が好ましい。この点から、本実施形態では、同軸落射照明部2A、斜光照明部2B、背面照射部2Cの光源として青色LED(波長460nm)を用いている。ただし、同軸落射照明部2Aと背面照射部2Cの光源は、蛍光体含有ガラス板中に含まれる蛍光体を励起させる効果が少ない又は無い波長を有するもの、例えば白色蛍光灯等を用いても良い。
【0027】
撮像部3は、例えばCCDカメラで構成されており、蛍光体含有ガラス板1を鉛直方向上方から撮像できる位置に配置されている。撮像部3で撮像された蛍光体含有ガラス板1の画像データは画像処理部4に入力され、画像処理部4で2値化等の適宜の画像処理を施される。画像処理部4で画像処理された蛍光体含有ガラス板1の処理画像は、図示されていない表示ディスプレイに表示され、表示された処理画像から蛍光体のヌケ、凝集、泡といった蛍光体含有ガラス板1の各種欠陥の有無、大きさ、種類を判別することができる。あるいは、処理画像から各種欠陥の情報(大きさ等)を抽出する演算機能と、各種欠陥の大きさ等の許容基準値を記憶する記憶機能と、演算によって抽出した各種欠陥の情報(大きさ等)と許容基準値とを比較して欠陥に関する良否を判定する良否判定機能とを画像処理部4に設け、蛍光体含有ガラス板1の欠陥に関する良否判定を画像処理部4で自動的に行う構成としても良い。
【0028】
次に、この実施形態の検査装置を用いた蛍光体含有ガラス板1の検査方法の一例について説明する。
【0029】
まず、載置部6aの透明UVフィルム6a2に検査対象である蛍光体含有ガラス板1を貼り付けて固定した後、可動テーブル5をXYZ軸方向に移動させて、蛍光体含有ガラス板1の所定のセグメント1aが適切な検査位置に位置するように調整する。その後、斜光照明部2Bを作動させ、斜光照明部2Bから所定のセグメント1aに検査光を照射し、検査光を照射された所定のセグメント1aを撮像部3で撮像する。撮像部3で撮像された所定のセグメント1aの撮像画像は画像処理部4に送られる。そして、所定のセグメント1aの撮像が完了すると、可動テーブル5をXY軸方向に移動させて、次のセグメント1aを検査位置に移動させる。その間に、上記所定のセグメント1aの撮像画像を画像処理部4で画像処理し、その処理画像に基づいて、上記所定のセグメント1aの蛍光体のヌケ、蛍光体の凝集、泡、さらには異物付着・異物混入に関する欠陥を検査する。以後、同じ操作を繰り返し、全てのセグメント1aについて、斜光照明部2Bによる斜光照明下で、上記の欠陥を検査する。
【0030】
斜光照明部2Bによる検査が完了すると、照明を斜光照明部2Bから同軸落射照明部2Aに切り換え、同軸落射照明部2Aによる同軸落射照明下で、上記と同様の操作により、全てのセグメント1aについて、チッピング、キズ、カケ、さらには異物付着・異物混入に関する欠陥を検査する。
【0031】
そして、同軸落射照明部2Aによる検査が完了すると、照明を同軸落射照明部2Aから背面照明部2Cに切り換えると共に、黒色板8を移動させ、背面照明部2Cによる背面照明下で、上記と同様の操作により、全てのセグメント1aについて、特に背面(下面)側の異物付着・異物混入に関する欠陥を検査する。セグメント1aの上面側の異物付着・異物混入は、同軸落射照明部2Aや斜光照明部2Bによる検査でも検出できるが、背面側については、同軸落射照明部2Aや斜光照明部2Bによる照明では(この場合、蛍光体含有ガラス板1全体を透明UVフィルム6a2と共に反転させ、セグメント1aの背面側が上に向くようにする。)、セグメント1aの背面が貼り付いている透明UVフィルム6a2で検査光の反射があり、この反射光の影響により背面側の異物付着・異物混入は検出することが困難である。よって、背面側の異物付着・異物混入に関する欠陥については、背面照射部2Cを用いて検査することが好ましい。
【0032】
なお、上記では、各照明部ごとに検査を行う方法について説明したが、各セグメントごとに上記3種の照明部による検査を順次行っても構わない。
【0033】
図3は、同軸落射照明部2A、斜光照明部2B、背面照明部2Cの光源として、青色LED(波長460nm)と白色蛍光灯を用いた場合の検査結果の評価を示し、図4図6はセグメント1aの処理画像を示している。白色蛍光灯の波長範囲はブロードであるが、約400〜450nmの範囲に波長ピークがあり、青色LEDほどではないものの、セグメント1a中のYAG蛍光体を励起して発光させる効果は少しはある。
【0034】
図3の検査結果(評価)に示すように、セグメント1aのヌケ(蛍光体のヌケ)、凝集(蛍光体の凝集)、泡は、同軸落射照明部2Aによる検査では検出されず、斜光照明部2Bと背面照明部2Cによる検査で検出できた。その理由の詳細は調査中であるが、次のように考えることができる。すなわち、ヌケ、凝集、泡は内部欠陥であり、表面の形状欠陥ではないため、同軸落射照明部2Aによる検査では、検査光の殆どがセグメント1aの表面(上面)で正反射されてしまい、撮像部3の撮像画像はこの表面での正反射像となる。そのため、セグメント1aの処理画像は全体が白く現れ、ヌケ等の内部欠陥は現れないと考えられる。これに対して、斜光照明部2Bによる検査では、検査光がセグメント1aの全周囲からセグメント1aに向けて斜め方向に入射するので、検査光はセグメント1aの内部にまで入り、セグメント1a中のYAG蛍光体を発光させると考えられる。そのため、セグメント1aの処理画像はYAG蛍光体の発光像となり、ヌケは黒色像(図4)、凝集は白色像(図5)で現れると考えられる(尚、ここでいう黒色、白色は、処理画像のコントラストにおいて黒い側、白い側という意味であり、色彩としての黒色、白色という意味ではない。)。一方、泡中にはYAG蛍光体は存在しないので、泡は黒色像として現れるはずであるが、図6に示す処理画像では、白色リング像で現れている。これは、泡の界面での光の屈折率の変化や散乱が影響しているものと推察される。また、光源として青色LEDと白色蛍光灯を用いた場合の比較では、青色LEDを光源とする斜光照明部2Bによる検査の方が、ヌケ等の内部欠陥を高コントラストで明瞭に検出することができる。従って、内部欠陥であるヌケ、凝集、泡の検査は、青色LEDを光源とする斜光照明部2Bによる検査が好適である。
【0035】
一方、図3の検査結果(評価)に示すように、セグメント1aのくぼみ、チッピング、カケ、キズのような表面又は端部の形状欠陥は、斜光照明部2Bや背面照明部2Cによる検査では検出されず、同軸落射照明部2Aによる検査で検出できた。上述のように、同軸落射照明部2Aによる検査では、検査光の殆どがセグメント1aの表面で正反射されるが、表面や端部にくぼみやチッピング等の形状欠陥があると、検査光がその欠陥部分で散乱して、撮像部3に受光されなくなる。そのため、くぼみ等の形状欠陥は黒色像として現れる。また、光源として青色LEDと白色蛍光灯を用いた場合の比較では、青色LEDを光源とする斜光照明部2Bによる検査と白色蛍光灯を光源とする斜光照明部2Bによる検査のいずれにおいても、くぼみ等の形状欠陥を高コントラストで明瞭に検出することができ、光源の種類による有意的な差は認められない。従って、この実施形態の検査装置において、同軸落射照明部2Aの光源は、青色LEDに代えて、白色蛍光灯を用いても良い。
【0036】
図3の検査結果(評価)に示すように、セグメント1aの異物付着・異物混入は、同軸落射照明部2A、斜光照明部2B、背面照明部2Cの何れによる検査でも検出することができる。その中でも、青色LEDを光源とする同軸落射照明部2Aと斜光照明部2Bによる検査、白色蛍光灯を光源とする同軸落射照明部2Aによる検査が、異物付着・異物混入を最も明瞭に検出することができる。ただし、上述したように、同軸落射照明部2Aと斜光照明部2Bによる検査で検出できるのは、セグメント1aの表面(上面)側の異物付着・異物混入であり、背面照明部2Cによる検査で検出できるのは、セグメント1aの背面(下面)側の異物付着・異物混入である。
【符号の説明】
【0037】
1 蛍光体含有ガラス板
1a 蛍光体含有ガラス板のセグメント
2 照明部
2A 同軸落射照明部
2B 斜光照明部
2C 背面照明部
3 撮像部
4 画像処理部
8 黒色板(背景板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6