特許第5854404号(P5854404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854404
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】光硬化性透明粘着シート用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20160120BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20160120BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20160120BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J7/00
   C09J123/26
   C09J109/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-533934(P2012-533934)
(86)(22)【出願日】2011年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2011069288
(87)【国際公開番号】WO2012035958
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-256259(P2010-256259)
(32)【優先日】2010年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-209966(P2010-209966)
(32)【優先日】2010年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 健一
(72)【発明者】
【氏名】海野 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雄太
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/027041(WO,A1)
【文献】 特開平07−138332(JP,A)
【文献】 特開2000−038547(JP,A)
【文献】 特開2008−101151(JP,A)
【文献】 特開2010−144002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00〜201/00
B32B 27/00、 27/30
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物、(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体、及び(D)光重合開始剤を含有してなる光硬化性透明粘着シート用組成物であって、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体に含まれるカルボキシル基含有単量体が(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体の全量に対して、0.1質量%以下であり、(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物が、ポリオレフィンポリオール化合物、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、及び1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を反応させて得られる(メタ)アクリル基を有する化合物であることを特徴とする光硬化性透明粘着シート用組成物。
【請求項2】
光硬化性透明粘着シート用組成物の全量に対して、(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物10〜50質量%、(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル1〜30質量%、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体20〜88質量%、及び(D)光重合開始剤0.2〜5質量%を含有してなることを特徴とする請求項1記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【請求項3】
(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体がカルボキシル基含有単量体を含まないことを特徴とする請求項1又は2記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【請求項4】
(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体を重合して得られるポリマーの理論ガラス転移温度が0℃〜50℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【請求項5】
(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体が単官能アルキル(メタ)アクリレート、及び/又は環状アルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物
【請求項6】
酸価が0.5mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか記載の光硬化性透明粘着シート用組成物を硬化させて得られる光硬化性透明粘着シートが透明導電膜の貼り合せに使用されることを特徴とする透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物。
【請求項8】
請求項記載の透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物を硬化させて得られることを特徴とする透明導電膜固定用透明粘着シート。
【請求項9】
ゲル分率が80〜100%であることを特徴とする請求項記載の透明導電膜固定用透明粘着シート。
【請求項10】
請求項又は記載の透明導電膜固定用透明粘着シートが、透明導電膜の導電層面に接着されていることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性透明粘着シート用組成物、光硬化性透明粘着シート用組成物を硬化させて得られる光硬化性透明粘着シートが透明導電膜の貼り合せに使用されることを特徴とする透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物、透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物を硬化して得られる透明導電膜固定用透明粘着シート及び、透明導電膜固定用透明粘着シートが透明導電膜の導電層面に接着されていることを特徴とする積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ゲーム機器などの分野にタッチパネルが搭載され始めている。タッチパネルは、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜を表層に有する透明基材やガラスとそれを保護する透明保護シート、さらには液晶ディスプレイなどの表示装置といった光学部材を、光学用の透明粘着シートを用いて貼り合せた積層体である。
【0003】
タッチパネルには、主に入力時の圧力で検知する抵抗膜方式のタッチパネルと、入力時の人体からの静電気で入力箇所を検知する静電容量方式のタッチパネルがある。静電容量方式のタッチパネルにおいては、透明導電膜の導電層面が、粘着シートの粘着剤層表面と接するように固定される。そのため、透明導電膜の導電層面に粘着剤層が接することで、粘着剤に含まれる酸成分によって金属の酸化反応が起こり、導電機能の低下が起こる問題がある。このため、透明導電膜固定用の粘着シートには高い金属腐食防止性が要求されている。
【0004】
金属腐食防止性を有する粘着シートとしては、金属腐食防止剤を含有する粘着シート(例えば、特許文献1)が提案されている。また、粘着剤層の酸成分に対して、特定量の窒素原子含有成分を含有させることで、透明導電膜に対する腐食性を低下させた粘着シート(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、金属腐食防止剤を含有する粘着シートは、金属腐食防止剤が耐久性試験で変色し、光学特性を低下させる等の問題があった。また、特定量の窒素原子含有成分を含有させた粘着シートは、粘着剤層に含まれる酸成分が原因で、ITOの電気抵抗値の上昇を十分に抑えられない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−45315号公報
【特許文献2】特開2010−144002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、硬化させて得られる透明粘着シートが、透明導電膜の導電層面に対して直接貼り合わせても導電層を腐食させず、粘着剤層の凝集力、透明性、及び打ち抜き加工性に優れる光硬化性透明粘着シート用組成物を提供することにある。さらには、該透明粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、タッチパネル用光硬化性透明粘着シートが抱える前記の問題点を背景にして、鋭意検討を重ねた結果、高分子量の(メタ)アクリル基(化学式:−COCH=CH 、−COC(CH)=CH)含有ポリオレフィン化合物、ヒドロキシル基(化学式:−OH)を有する(メタ)アクリル酸エステル、光重合性単量体、及び光重合開始剤を配合した光硬化性透明粘着シート用組成物であって、光重合性単量体に含まれるカルボキシル基単量体が所定量以下である光硬化性透明粘着シート用組成物が、該光硬化性透明粘着シート用組成物を硬化させて得られる光硬化性透明粘着シートの透明性、粘着性、及び透明導電膜の金属腐食防止性が良好であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下(1)〜(11)で示される。
【0010】
(1)(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物、(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体、及び(D)光重合開始剤を含有してなる光硬化性透明粘着シート用組成物であって、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体に含まれるカルボキシル基含有単量体が(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体の全量に対して、0.1質量%以下であり、(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物が、ポリオレフィンポリオール化合物、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、及び1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を反応させて得られる(メタ)アクリル基を有する化合物であることを特徴とする光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0011】
(2)光硬化性透明粘着シート用組成物の全量に対して、(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物10〜50質量%、(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル1〜30質量%、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体20〜88質量%、及び(D)光重合開始剤0.2〜5質量%を含有してなることを特徴とする(1)記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0012】
(3)(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体がカルボキシル基含有単量体を含まないことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0013】
(4)(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体を重合して得られるポリマーの理論ガラス転移温度が0℃〜50℃であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0014】
(5)(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体が単官能アルキル(メタ)アクリレート、及び/又は環状アルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0016】
)酸価が0.5mgKOH/g以下であることを特徴とする上記(1)から()のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物。
【0017】
)上記(1)から()のいずれかに記載の光硬化性透明粘着シート用組成物を硬化させて得られる光硬化性透明粘着シートが透明導電膜の貼り合せに使用されることを特徴とする透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物。
【0018】
)上記()に記載の透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物を硬化させて得られることを特徴とする透明導電膜固定用透明粘着シート。
【0019】
)ゲル分率が80〜100%であることを特徴とする上記()に記載の透明導電膜固定用透明粘着シート。
【0020】
10)上記()又は()に記載の透明導電膜固定用透明粘着シートが、透明導電膜の導電層面に接着されていることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、組成物中に高分子量の(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物が含まれるため、硬化させて得られる粘着シートの柔軟性、耐透湿性に優れており、さらに組成物中にカルボキシル基が微量しか含まれないため、得られる透明粘着シートの酸成分による透明導電膜の導電層面の腐食を抑制でき、組成物中にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが含まれるため、得られる粘着シートの凝集力と基材への密着性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
[光硬化性透明粘着シート用組成物]
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、(A)重量平均分子量が1万〜30万である(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物、(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体、及び(D)光重合開始剤を含有してなる。
【0024】
((A)(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物)
(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物としては、ポリオレフィン骨格を有し、さらに(メタ)アクリル基が導入されているもので有れば使用することが出来る。ポリオレフィン骨格としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ブタジエン、イソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、シクロオレフィン等の骨格が挙げられる。耐光性、透明性(非結晶性)、作業性(液状)の点で、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン骨格が好ましい。なお、(メタ)アクリル基とはCH=CH−CO− または CH=C(CH)−CO−を意味する。
【0025】
ポリオレフィンへの(メタ)アクリル基の導入方法は、特に限定されるものではないが、反応性の水酸基を分子末端等に有するポリオレフィンを(メタ)アクリル酸を用いてエステル化するか、または、まず、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物をポリオレフィンの水酸基に付加し、イソシアネート基とヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させることで(メタ)アクリル化する方法を例示できる。
【0026】
中でも、ポリオレフィンポリオール化合物に対して、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物を反応させ、次いでヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートをウレタン化反応させて得られる(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物は、得られる粘着シートの凝集力が高い点で好ましい。
【0027】
ポリオレフィンポリオール化合物は、1分子中に水酸基を2個以上有するものであるが、水酸基を2〜4個有することが好ましい。また、ポリオレフィンポリオール化合物の重量平均分子量は、5,000〜30,000が好ましく、10,000〜15,000がより好ましい。ポリオレフィンポリオール化合物の重量平均分子量が5,000より低くなると、得られる(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の分子量が高くならず、十分な粘着シートの強度が得られない傾向にある。また、ポリオレフィンポリオール化合物の重量平均分子量が30,000より高くなると、得られる(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の分子量が高くなりすぎて、取り扱いが困難となる傾向にある。
【0028】
1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらの水素添加物等のジイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、耐光性、反応性制御のしやすさの点から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。これらの1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物の使用量としては、ポリオレフィンポリオール100質量部に対し、8〜35質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましく、11〜25質量部であることがさらに好ましい。1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物の使用量が8質量部より少なくなると、得られる(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の分子量が高くなりすぎるために取り扱い困難となり、イソシアネート化合物の使用量が35質量部より多くなると、得られる(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の分子量が低くなりすぎるために、粘着シートの強度が十分に得られない傾向にある。
【0029】
イソシアネート基と反応させる、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜7であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート等が例示でき、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、反応性の点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては、ポリオレフィンポリオール100質量部に対し、3〜18質量部であることが好ましく、4〜15質量部であることがより好ましく、5〜13質量部であることがさらに好ましい。ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの使用量が3質量部より少なくなると、(メタ)アクリル基を持たないオレフィン化合物が存在する可能性があり粘着シートの強度が低くなり、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの使用量が18質量部より多くなると、オレフィンに導入された(メタ)アクリル基の量が多くなりすぎるため粘着シートが固くなる傾向にある。
【0030】
本発明の(A)(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の(メタ)アクリル基の導入数としては、1分子中に(メタ)アクリル基が1個以上あれば良く、好ましくは1分子中1〜2個である。
【0031】
(A)(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の分子量は、重量平均分子量が1万〜30万であることが好ましく、より好ましくは2万〜20万であり、さらに好ましくは3万〜10万である。重量平均分子量が1万未満では、得られる粘着シートの凝集力が低くなることから粘着シートの強度が十分でない可能性があり好ましくない。また、分子量が30万より大きい場合には、光硬化性透明粘着シート用組成物の粘度が高くなりすぎるために取り扱いが困難となり作業性が著しく悪くなり好ましくない。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工株式会社製Shodex GPC−101)を用いて、下記条件にて常温で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値である。
カラム:昭和電工製LF−804
カラム温度:40℃
試料:共重合体の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0032】
(A)(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の光硬化性透明粘着シート用組成物中の含有量としては、組成物中10〜50質量%であることが好ましく、15〜45質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。10質量%より少ない場合には、得られる粘着シートが脆くなり好ましくない。50質量%より多い場合には、得られる粘着シートの粘着力が低くなる可能性があり好ましくない。
【0033】
((B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)
ここで言うヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、カルボキシル基を有しないものが好ましく、例えば、アルキル基の炭素数が2〜7であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート等が例示でき、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、得られる粘着シートの粘着力の点で、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、光硬化性透明粘着シート用組成物中に1〜30質量%含むことが好ましく、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。1質量%未満では、得られる粘着シートの基材への密着性が不十分となり好ましくない。また、30質量%より多い場合には、粘着シートの耐水性が悪くなり好ましくない。
【0034】
((C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体)
(C)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の光重合性単量体(以下、「(C)の光重合性単量体」ということがある。)は、光重合性単量体であって、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外のものを指し、カルボキシル基(化学式:−COOH)を含有しない単量体が好ましい。当該単量体としては、特に限定はなくビニル基、(メタ)アクリル基等を有する、単官能性又は多官能性光重合性単量体を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。本発明の(C)の光重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω−ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ジペンタエリスリトールトリヒドロキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等のアクリルアミド誘導体、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等があげられる。本発明の(C)の光重合性単量体としては、(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物との混和性、粘着シートの粘着性、強度、耐光性、耐熱性の観点から、単官能アルキル(メタ)アクリレート、又は環状アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ここで言う単官能もしくは多官能の官能基とは、(メタ)アクリル基を指す。(C)の光重合性単量体の含有量は、光硬化性透明粘着シート用組成物中20〜88質量%含むことが好ましく、より好ましくは20〜70質量%である。さらに好ましくは、40〜69質量%である。20質量%未満では、得られる粘着シートの基材への密着性が不十分となり好ましくない。また、88質量%より多い場合には、粘着シートの凝集力が低くなることから粘着力が低くなり好ましくない。
【0035】
本発明では、(C)の光重合性単量体に含まれるアクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体は、(C)の光重合性単量体の全量に対して0.1質量%以下であり、0.05質量%以下であることがより好ましい。(C)の光重合性単量体は、カルボキシル基含有単量体を含まないことがさらに好ましい。カルボキシル基含有単量体が(C)の光重合性単量体の全量に対して0.1質量%を超えると、透明導電膜の導電層面の腐食の抑制が困難となる。
【0036】
本発明の(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(C)の光重合性単量体からなるポリマーの理論ガラス転移温度は、粘着シートの強度、接着力の観点から0〜50℃であることが好ましく、5〜45℃であることがより好ましく、10〜40℃であることがさらに好ましい。0℃より低い場合には、得られる粘着シートが(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物の影響により柔らかくなりすぎるために粘着シートの接着力が低くなり好ましくない。また、50℃より高い場合には、得られる粘着シートが硬くなりすぎ、十分な粘着性が得られないので好ましくない。ここで、理論ガラス転移温度(Tg)は、モノマー原料を構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率(共重合割合)に基づいて下記のフォックス(FOX)の式(1)から算出することができる。
【数1】
【0037】
式(1)中のW、W・・・Wは各モノマーの質量分率(=(各モノマーの配合量/モノマー全質量))であり、T、T・・・Tは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。ホモポリマーのTgとしては、公知資料である株式会社日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」またはWiley−Interscienceの「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に記載の値を採用するものとする。上記公知資料に記載のないモノマーのホモポリマーのTgについては、以下の方法で求められた値を採用するものとする。すなわち、対象となるモノマーを溶液重合して得られたホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延乾燥させて試験サンプルを作製する。この試験サンプルにつき、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で−80℃から280℃まで温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、ガラス転移による吸熱開始温度を当該ホモポリマーのTgとして採用するものとする。
【0038】
((D)光重合開始剤)
本発明における(D)光重合開始剤としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、アゾ系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、過酸化物系光重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
カルボニル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ジクロロベンゾフェノン、p,p′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N′−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0040】
スルフィド系光重合開始剤としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルアンモニウムモノスルフィド等が挙げられる。キノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等が挙げられる。アゾ系光重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスプロパン、ヒドラジン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等が挙げられる。過酸化物系光重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中では、得られる光硬化性透明粘着シート用組成物における溶解性の点から、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0041】
(D)光重合開始剤の含有量は、光硬化性及び得られる粘着シートの強度、粘着性のバランスの点から、光硬化性透明粘着シート用組成物中に0.2〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.8〜2質量%であることがさらに好ましい。(D)光重合開始剤の含有量が0.2質量%未満であると、光硬化が不十分となる傾向にあり、5質量%を超えると得られる粘着シートの粘着性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0042】
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、好ましくは、光硬化性透明粘着シート用組成物の全量に対して、(A)成分10〜50質量%、(B)成分1〜30質量%、(C)成分20〜88質量%、及び(D)成分0.2〜5質量%を含有してなる。そして、より好ましくは、光硬化性透明粘着シート用組成物の全量に対して、(A)成分15〜45質量%、(B)成分5〜25質量%、(C)成分20〜70質量%、及び(D)成分0.2〜5質量%を含有してなる。そして、更に好ましくは、光硬化性透明粘着シート用組成物の全量に対して、(A)成分20〜40質量%、(B)成分10〜20質量%、(C)成分40〜69質量%、及び(D)成分0.5〜3質量%を含有してなる。
【0043】
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物には、必要に応じて、得られる粘着シートの接着力を向上させるため、透明性を低下させない範囲で粘着付与樹脂を添加しても良い。粘着付与樹脂の例としては、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9系)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。耐光性の点から不飽和二重結合が少ない水添ロジンや不均化ロジンのエステル化物や、脂肪族や芳香族系石油樹脂、高Tgアクリル樹脂等を粘着シートに添加することが好ましい。粘着付与樹脂の添加量としては、光硬化性透明粘着シート用組成物100質量部に対して((A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量部に対して)、1〜10質量部を添加することが好ましい。
【0044】
また、本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物には、必要に応じて、透明性を損なわない範囲で、公知の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤のような帯電防止剤などが挙げられる。
【0045】
また、本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、塗工時の粘度調整を目的として有機溶媒を用いて溶液としてもよい。用いられる有機溶媒としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合してもよい。
【0046】
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物の酸価は、好ましくは0〜0.5mgKOH/g、より好ましくは0〜0.1mgKOH/g、さらに好ましくは0〜0.05mgKOH/gである。酸価が0.5mgKOH/gより高いと、透明導電膜の導電層面の腐食の抑制が困難となる。なお、組成物の酸価はJIS K0070に準拠して測定した値である。例えば、以下のように測定する。
【0047】
精密天秤で100ml三角フラスコに試料約2g程度を精秤し、これにエタノール/ジエチルエーテル=1/1(重量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解する。更に、この容器に指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を1〜3滴添加し、試料が均一になるまで充分に攪拌する。これを、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式(2)を用いて得た値を、組成物の酸価とする。
【数2】
B:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液の使用量(ml)
f:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
S:試料の採取量(g)
【0048】
(透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物)
本発明の透明導電膜固定用粘着シート用組成物は、上記の光硬化性透明粘着シート用組成物からなる透明導電膜固定用粘着シート用組成物である。
【0049】
本発明の透明導電膜固定用粘着シート用組成物が使用される透明導電膜としては、少なくとも片面の表層に導電層を有するものであればよく、透明基材の表層に導電物質が蒸着やコーティングにより設けられた透明導電膜を挙げられる。透明導電膜の導電層において蒸着やコーティングされる導電物質は、特に限定されないが、具体的には、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ガリウム、酸化チタンなどが挙げられる。なかでも、透明性、導電性に優れる酸化インジウムスズが好適に用いられる。透明導電膜において、導電物質が蒸着またはコーティングされる基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0050】
(透明導電膜固定用透明粘着シート)
本発明の透明導電膜固定用透明粘着シートは、上記の透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物を硬化させてなる透明導電膜固定用透明粘着シートであって、透明導電膜の導電層面と好適に接着でき、かつ導電層の腐食が生じ難いものである。したがって、透明導電膜固定用透明粘着シートを透明導電膜の導電層面と接着させた積層体はタッチパネルとして好適に用いることができる。また、本発明の透明導電膜固定用透明粘着シートは、基材を有するものであっても、基材を有さず粘着剤層のみからなる両面粘着シートであってもよい。また、粘着剤層は単一層からなるものであっても複数層が積層されていてもよい。なかでも、透明性の確保や、形状追従性の観点からは、基材を有さず、粘着剤層のみからなる両面粘着シートであることが好ましい。
【0051】
本発明の透明導電膜固定用透明粘着シートは、離型PETフィルムに透明導電膜固定用透明粘着シート用組成物を塗布し、塗布した組成物に紫外線照射装置等を用いて紫外線を照射して光硬化させることで、得ることができる。透明導電膜固定用粘着シートの膜厚は、5〜500μmとすることが好ましく、10〜300μmとすることがより好ましい。透明導電膜固定用粘着シートの膜厚が5μmより薄くなると、粘着シートの貼り合わせが困難となり、500μmより厚くなると、膜厚の制御が困難となる傾向にある。
【0052】
本発明の透明導電膜固定用粘着シートは、トルエン中に室温下で24時間浸漬した際の下記の式(3)で求められるゲル分率が、80〜100%であることが好ましく、90〜100%であることがより好ましい。粘着シートのゲル分率が80%より低い場合には、打ち抜き加工時に加工端面からの糸引きなどが発生しやすくなる傾向にある。
【数3】
【実施例】
【0053】
以下に実施例、及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0054】
<(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−1)>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート101.2g及び水酸基末端水素添加ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、製品名:GI‐3000、重量平均分子量 14,000)を844.3g仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が1%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート53.9gを仕込み70℃まで昇温して2時間反応をさせ、IR測定によりイソシアネート基が消失したことを確認した後、反応を終了し、(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−1)(重量平均分子量50,000)を得た。
【0055】
<(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−2)>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート152.9g及び水酸基末端水素添加ポリイソプレン(出光興産株式会社製、製品名:エポール、重量平均分子量12,000)を764.5g仕込み、60℃で反応させる。残存イソシアネート基が1%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート81.7gを仕込み、70℃まで昇温して2時間反応をさせ、IR測定によりイソシアネート基が消失したことを確認した後、反応を終了し、(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−2)(重量平均分子量55,000)を得た。
【0056】
<(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−3)>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート246.1g及び水酸基末端水素添加ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、製品名:GI‐1000、重量平均分子量 3,000)を618.5g仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が1%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート135.0gを仕込み70℃まで昇温して2時間反応をさせ、IR測定によりイソシアネート基が消失したことを確認した後、反応を終了し、(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−3)(重量平均分子量5,000)を得た。
【0057】
<(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−4)>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート61.2g及び水酸基末端水素添加ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、製品名:GI‐3000、重量平均分子量 14,000)を917.1g仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が1%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルアクリレート21.3gを仕込み70℃まで昇温して反応を行なったが、高分子量化し反応途中でゲル化してしまった。
【0058】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に示す組成でそれぞれ配合し、室温下でディスパーを用いて混合することで均一な光硬化性透明粘着シート用組成物を調製した。調製した光硬化性透明粘着シート用組成物を、アプリケーターを用い、膜厚が200μmとなるように離型PETフィルム(100mm×100mm×100μm)に塗布し、上面を25μm厚の離型PETフィルムで覆った後、紫外線照射装置(日本電池株式会社製、UV照射装置4kw×1、出力:160W/cm、メタルハライドランプ)を用い、照射距離12cm、ランプ移動速度20m/min、照射量約500mJ/cmの条件で紫外線を照射して硬化させ、離型PETフィルムに挟まれた膜厚が約200μmの粘着シートを得た。なお、(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物(A−4)はゲル化してしまったため、重量平均分子量が30万を超える(メタ)アクリル基含有ポリオレフィン化合物を含有する光硬化性透明粘着シート用組成物の比較例は調製することができなかった。
【0059】
(理論ガラス転移温度の算定)
実施例及び比較例について、用いた(B)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び(C)の光重合性単量体からなるポリマーの理論ガラス転移温度を、上記式(1)から算出した。結果を表1に示す。
【0060】
(酸価)
実施例及び比較例の光硬化性透明粘着シート用組成物の酸価を、上記の方法を用いて、式(2)により算出した。結果を表1に示す。
【0061】
(酸化インジウムスズ膜の電気抵抗値測定)
上で得られた粘着シートを50mm×50mmの大きさに切り取り、25μm厚の離型PETフィルムを剥がし、100mm×100mmの酸化インジウムスズ蒸着PETフィルムの酸化インジウムスズ膜面に貼り合わせた。貼り合せた粘着シートの両端に電気抵抗値測定機 三菱化学株式会社製「ロレスターGP」を使用し、初期の電気抵抗値(R)を測定した。粘着シートを貼り合わせた酸化インジウムスズ蒸着PETフィルムを60℃、)90%RH条件下に500時間放置し、23℃、50%RH条件下に1時間放置した後、初期と同じ箇所での電気抵抗値(R)を測定した。酸化インジウムスズ膜の電気抵抗値上昇率は下記の式(4)で算出した。
【数4】
【0062】
電気抵抗値上昇率の評価は、下記の基準で行なった。結果を表1に示す。
○;電気抵抗値上昇率5%未満
△;電気抵抗値上昇率5〜10%未満
×;電気抵抗値上昇率10%以上
【0063】
(粘着シートの粘着力測定)
上で得られた粘着シートを25×100mmの大きさに切り取り、粘着シートの両面に存在する離型PETフィルムのうち100μm厚の離型PETフィルムを剥がした後、粘着面(測定面)を試験板に2kgのゴムローラー(幅:約50mm)を1往復させることにより貼付し、測定用サンプルを作製した。試験板としてガラス板を用いた。得られた測定用サンプルについて、23℃、湿度50%の環境下で24時間放置し、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、粘着シートのガラス板に対する粘着力(N/25mm)を測定した。得られた測定値を粘着力とした。結果を表1に示す。
【0064】
(全光線透過率測定)
上で得られた粘着シートを30mm×30mmの大きさに切り取り、粘着シートの両面に存在する離型PETフィルムのうち25μm厚の離型PETフィルムを剥がし、ガラス板に貼り合わせたものを測定用サンプルとした。測定用サンプルについて、株式会社村上色彩技術研究所製「HR−100型」を使用し、全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(ゲル分率)
粘着シートを20mm×40mmの大きさに切り取り、測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルをトルエン中に23℃で24時間浸漬した後、測定用サンプルをトルエンから取り出した。その後、測定用サンプルを130℃で1時間乾燥した。次に、乾燥後の測定用サンプルの重量を測定し、上述した式(3)によりゲル分率を算出した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、比較例と比べて電気抵抗値上昇率、全光線透過率、粘着力に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光硬化性透明粘着シート用組成物は、高い透明性、金属腐食防止性を有し、且つ粘着性に優れることから透明導電膜固定用の粘着シートとして有用であり、特に静電容量方式のタッチパネルに使用される透明導電膜の固定用に有用である。