(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5854414
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】血管埋没防止具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20160120BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
A61B17/12
A61B17/00 320
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-120050(P2015-120050)
(22)【出願日】2015年6月15日
【審査請求日】2015年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514294957
【氏名又は名称】メドフォースジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】今井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】廣田 淳
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−125976(JP,A)
【文献】
特表2005−530563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術により切断された血管が組織内に没入するのを防止するための血管埋没防止具であって、該血管埋没防止具は、柱状の本体部と、血管に貫通状に穿刺するため本体部の先端に形成される尖鋭状の穿刺部と、該穿刺部基端から続く状態で本体部の周面よりも幅方向外方に突出していて前記貫通した血管が抜け出るのを防止するための返し部とを備えていて、血管に対し穿刺部で穿刺貫通したものを返し部を越えて本体部に至るよう串刺し状に貫通させることで血管の組織内への埋没を防止するように構成されていることを特徴とする血管埋没防止具。
【請求項2】
穿刺部と返し部とのあいだには、血管に対する貫通位置を穿刺部から返し部に誘導するため基端側ほど肉厚となった誘導部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の血管埋没防止具。
【請求項3】
返し部は、基端側ほど本体部の周面よりも幅方向外方に突出するよう湾曲した係り部と、該係り部を本体部から浮き上がらせるための溝部とにより構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の血管埋没防止具。
【請求項4】
穿刺部は、陵部を中心として両側に刃部が形成された両刃構造であり、該刃部の基端は、本体部の外径幅にまで至らない前位置までとなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の血管埋没防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の手術において、血管を切断する際に血管の切断部分が収縮して組織内に埋没してしまうのを防止するための血管埋没防止具の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば手術において血管の詰まった部分を切除するような場合に、血管が特に動脈のような弾力性(柔軟性)の高いものである場合、血管の切断部位が血管の弾性力によって収縮して組織内に埋没してしまうことがあり、そうすると該切断した埋没部位を閉塞することができず、大量出血の惧れがある。そこで、切断部位の近傍を予め血管クリップ(バネ式クリップ、一時的クリップ等)を用いて固定した後、電気メス等のメスを用いて血管を切断するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−510457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら血管には太いものから細いものまで多種多様あるため、血管の太さに対応した複数種類の血管クリップを用意しなければならず、太さが合わない血管クリップを用いたような場合に、血管クリップの適正な保持力を確保することができず、血管クリップが外れて血管が組織内に没入したり、逆に血管を損傷してしまうというような問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、手術により切断された血管が組織内に没入するのを防止するための血管埋没防止具であって、該血管埋没防止具は、柱状の本体部と、血管に貫通状に穿刺するため本体部の先端に形成される尖鋭状の穿刺部と、該穿刺部基端から続く状態で本体部の周面よりも幅方向外方に突出していて前記貫通した血管が抜け出るのを防止するための返し部とを備えていて、血管に対し穿刺部で穿刺貫通したものを返し部を越えて本体部に至るよう串刺し状に貫通させることで血管の組織内への埋没を防止するように構成されていることを特徴とする血管埋没防止具である。
請求項2の発明は、穿刺部と返し部とのあいだには、血管に対する貫通位置を穿刺部から返し部に誘導するため基端側ほど肉厚となった誘導部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の血管埋没防止具である。
請求項3の発明は、返し部は、基端側ほど本体部の周面よりも幅方向外方に突出するよう湾曲した係り部と、該係り部を本体部から浮き上がらせるための溝部とにより構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の血管埋没防止具である。
請求項4の発明は、穿刺部は、陵部を中心として両側に刃部が形成された両刃構造であり、該刃部の基端は、本体部の外径幅にまで至らない前位置までとなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の血管埋没防止具である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、血管埋没防止具を、穿刺部からは返し部を越えて本体部に至るよう血管に串刺し状に穿刺貫通させることで、血管の太さに関係なく切断した血管が組織内に埋没することを防止することができる。
請求項2の発明とすることにより、血管に対する穿刺部から返し部への貫通移動が次第に肉厚になる誘導部により容易にできることになる。
請求項3の発明とすることにより、返し部による血管の抜止めが、本体部から浮き上がった状態の係り部により確実にできることになる。
請求項4の発明とすることにより、刃部の先端から基端による血管の穿刺幅を小さくして血管の損傷が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】血管埋没防止具を示すものであって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は右側面図、(E)は左側面図である。
【
図2】血管埋没防止具を示すものであって、(A)は要部拡大平面図、(B)は要部拡大正面図、(C)は要部拡大底面図、(D)は拡大右側面図、(E)は拡大左側面図である。
【
図4】(A)は血管切除部位の組織を切開した状態を示す説明図、(B)は血管を切除したときに血管埋没防止具が組織に当接して埋没を防止している状態を示す説明図である。
【
図5】第二の実施の形態を示す血管埋没防止具の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は血管埋没防止具であって、本実施の形態では、長さ25mm、直径0.3mmの円柱形状(柱状、長尺状)のもの先端部を後述するように加工した本体部2を備えて構成されている。尚、本発明は、本実施の形態の寸法や形状に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0009】
本体部2の先端部には穿刺部3が形成されるが、該穿刺部3は、下面側が本体2形状を維持し、上面側が長さ方向に長い陵部3aが幅方向(径方向)中央位置に形成され、該陵部3aを中心線とする状態で形成される幅方向両側面部3bが先端側ほど幅狭となる状態で傾斜して本体部2の周面に至る刃部3dとなり、先端3cが尖鋭端になったランセット構造(両刃構造)になっており、これによって血管BVに穿刺する際の抵抗が小さくなるように構成されている。因みに刃部3dは、基端3eが本体部2の外径幅に達する前位置までとなっており、これによって刃部3dの先端3cから基端3eによる血管BVの穿刺幅(穿刺長さ)を小さくし、基端3eから本体部2の外径幅にまで至る分は血管BVの拡張(広がり)によるものとして血管BVの穿刺部3による損傷が可及的に小さくなるように配慮されている。勿論、本発明は、刃部3dの基端3eが、
図5に示す第二の実施の形態のように本体部2の外径幅にまで至るように構成したものであってもよい。
【0010】
穿刺部3の基端側には誘導部4が続いて形成されるが、該誘導部4は、穿刺部3の基端から続くものであり、基端側ほど次第に肉厚となるよう傾斜した傾斜面になっており、この誘導部4の基端側にはさらに返し部5が続いて形成されているが、該返し部5は、本体部2の周面よりも幅方向外方に突出するよう湾曲形成された係り部5aと、該係り部5aを本体部2から浮き上がらせるための溝部5bとが形成される。この溝部5bは、本体2の他側面側を切削して肉薄にする切削部6に続く状態で形成されており、この切削部6よりも基端側は本体部2の円柱形状のままの非加工部7に続いている。
【0011】
そして血管埋没防止具1は、手術により切除する血管BV部位が露出した場合に、切除部位よりも両脇側の血管BVに穿刺部3を穿刺し、さらに血管BVに対して押し込んで導入部4、返し部5、切削部6を越えて非加工部7にまで至るよう貫通せしめた串刺し状態にすることになり、この状態で血管BVを切除すると、血管埋没防止具1が組織Tに当接することになって血管BVが組織T内に埋没することを防止するようになっている。そして血管BVを切除した場合に、残った血管BVの切断端同士を接続し、あるいは血管BVの切断端を電気メスで焼き付ける等の手段により閉塞する等の処置をすればよく、その後、切削部6をピンセット等の道具で挟んで血管BVに対し本体部2の基端から引き抜けばよい。
【0012】
叙述の如く構成された本実施の形態において、血管埋没防止具1は、本体部2の先端に形成された尖鋭状の穿刺部3を血管BVに穿刺貫通し、返し部5を越えて非加工部7位置まで貫通させて串刺し状にすることで、該血管埋没防止具1が鍔としての機能を呈することになり、この結果、切断した血管BVが組織T内に埋没しようとしたときに血管埋没防止具1が組織Tの切断部に当接することになって血管BVの組織T内への埋没が防止される。
【0013】
しかもこのものでは、返し部5の係り部5aが本体部2の周面よりも突出しているから、血管埋没防止具1の血管BVへの貫通当初、返し部5まで貫通させておけば、血管埋没防止具1が抜け戻って血管BVから外れてしまうこともない。そして血管埋没防止具1は、血管BVに対して串刺し状に刺さった状態で貫通していて鍔としての機能を呈しているから、血管BVに太さの違いがあっても、確実に組織T内への埋没防止をすることになる。
そして血管BVに対して必要な処置をした後、血管埋没防止具1を本体部2の基端を通してから抜き取ればよく、この場合に、血管BVの血管埋没防止具1の貫通部位は、血管BVの柔軟性で殆ど塞がれることになって出血があったとしても僅かで済むことになる。
【0014】
そのうえ血管埋没防止具1は、穿刺部3と返し部5とのあいだに、基端側ほど肉厚となる誘導部4が形成されているため、穿刺部3から返し部5への貫通移動が滑らかとなって無理のない貫通移動作業ができることになる。
【0015】
また返し部5は、係り部5aを本体部2から浮き上がらせるための溝部5bが形成されているため、係り部5aを越える状態まで血管BVに差し込めば、係り部5aが血管BVに抜け防止状に係止することになって血管埋没防止具1が抜け出てしまうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
血管を切断する際に血管の切断部分が収縮して組織内に埋没してしまうのを防止するための血管埋没防止具として利用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 血管埋没防止具
2 本体部
3 穿刺部
3a 陵部
3b 両側面部
3c 先端
3d 刃部
3e 刃部基端
4 誘導部
5 返し部
5a 係り部
5b 溝部
6 切削部
7 非加工部
【要約】
【課題】血管を切断する際に血管の切断部分が収縮して組織内に埋没してしまうのを、血管の太さに関係なく防止することができるようにする。
【解決手段】手術により切断された血管が組織内に没入するのを防止するための血管埋没防止具1であって、該血管埋没防止具1は、柱状の本体部2と、血管に貫通状に穿刺するため本体部2の先端に形成される尖鋭状の穿刺部3と、該穿刺部3基端から続く状態で本体部2の周面よりも幅方向外方に突出していて前記貫通した血管が抜け出るのを防止するための返し部5とを備えていて、血管に対し穿刺部3で穿刺貫通したものを返し部5を越えて本体部2に至るよう串刺し状に貫通させることで血管埋没防止具1が鍔としての機能を発揮し血管の組織内への埋没を防止するように構成する。
【選択図】
図2