特許第5854489号(P5854489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5854489微生物叢活性化剤、その微生物叢活性化剤を有効成分とする抗糸状菌剤、及びその微生物叢活性化剤を用いた油脂等含有排水の処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854489
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】微生物叢活性化剤、その微生物叢活性化剤を有効成分とする抗糸状菌剤、及びその微生物叢活性化剤を用いた油脂等含有排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20160120BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20160120BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160120BHJP
   C12N 1/38 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C02F3/00 D
   C02F3/12 D
   C02F3/12 H
   C02F3/12 T
   C02F3/12 S
   C02F1/44 F
   C12N1/38
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-528206(P2014-528206)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2013070799
(87)【国際公開番号】WO2014021397
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-170650(P2012-170650)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508121773
【氏名又は名称】株式会社オリエントナノ
(73)【特許権者】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100134153
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 富士子
(72)【発明者】
【氏名】樅山 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】紺野 幸人
(72)【発明者】
【氏名】局 俊明
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−162294(JP,A)
【文献】 特開2003−103286(JP,A)
【文献】 特表2004−528852(JP,A)
【文献】 特開平09−075976(JP,A)
【文献】 特開平09−215983(JP,A)
【文献】 特開2006−247566(JP,A)
【文献】 特開平09−038630(JP,A)
【文献】 特開2003−094062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
C02F 1/44
C12N 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.0005〜8重量%の炭素数13〜22の分岐鎖を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルであって、酸化エチレン付加モル数が8〜10又は16〜20であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、0.0005〜2重量%の脂肪酸ジアルカノールアミドとを主成分とし、残部として水を含む微生物叢活性化剤。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシアルキレンペンタデシルエーテル、ポリオキシアルキレンイソセチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘプチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンウンデシルデシルエーテル、及びポリオキシアルキレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の微生物叢活性化剤。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシプロピレンエーテルからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の微生物叢活性化剤。
【請求項6】
前記脂肪酸ジアルカノールアミドは、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びヤシ油脂肪酸ジプロパノールアミドからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の微生物叢活性化剤。
【請求項7】
請求項1、4〜6のいずれかに記載の微生物叢活性化剤を有効成分とすることを特徴とする、抗糸状菌剤。
【請求項8】
請求項1、4〜6のいずれかに記載の微生物叢活性化剤を有効成分とすることを特徴とする、配管洗浄剤。
【請求項9】
(a)請求項1、4〜6のいずれかに記載の微生物叢活性化剤を、原水中に投入する薬剤投入工程と、
(b)前記微生物叢活性化剤によって分散された原水中の油脂を他の有機性汚濁物質とともに除去する微生物処理工程と、
(c)曝気槽中の活性汚泥自体の沈降性を上げて、凝集沈殿剤を加えずに安定的に比重分離する活性汚泥沈降工程、又は膜分離工程のいずれかと、
を備える油脂等含有排水の処理方法。
【請求項10】
前記薬剤投入工程では、前記微生物叢活性化剤を、原水槽又は原水調整槽に貯留されている原水に対して投入し、撹拌することを特徴とする、請求項9に記載の油脂等含有排水の処理方法。
【請求項11】
前記薬剤投入工程における前記微生物叢活性化剤の投入量は、前記原水槽又は原水調整槽中の油脂等含有排水の容積に対して0.0003〜0.02%(v/v)であることを特徴とする、請求項9に記載の油脂等含有排水の処理方法。
【請求項12】
前記曝気槽中の汚水の溶存酸素濃度が0.1mg/L以上5mg/L以下であり、かつ、浮遊物質(MLSS)が4,000〜10,000mg/Lであることを特徴とする、請求項9に記載の油脂等含有排水の処理方法。
【請求項13】
前記膜分離工程では、活性汚泥分離用の膜ユニットを用いることを特徴とする、請求項9に記載の油脂等含有排水の処理方法。
【請求項14】
前記膜ユニットは、中空糸で構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の油脂等含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物叢活性化剤、その微生物叢活性化剤を有効成分とする抗糸状菌剤、及び油脂等を含有する排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂や糖分等を含有する排水、特に、レストラン、ホテルの厨房、食品工場等から排出される汚水(以下、「油脂等含有汚水」という。)は、通常の場合、活性汚泥を用いて以下のようなプロセスで処理される。
この処理では、まず、食品を加工する際に発生する加工廃液、洗浄廃液等を含む汚水をスクリーンを通過させ、粗大なごみなどを除去した後、原水槽に受け、次いで、汚水を調整槽に入れて空気で曝気しながら貯留する。ここで、前記洗浄廃液には、既存の中性洗剤又はアルカリ性洗剤等の油脂の剥離・分散剤などが混じったものも含まれる。
その後、貯留された汚水を、流量調整しつつ微生物処理槽に移してさらに曝気し、微生物による分解処理を行う。そして、油脂、水溶性有機汚濁成分等の含有量が、規制値以下となった処理水を沈殿槽または膜分離槽へ移す。次いで、比重差または膜を用いた濾過によって不溶性の微細な浮遊物(懸濁物質)を除去した後に、処理水を外部に排出する。
【0003】
こうした処理方法を採用する技術としては、特開平10-235384号公報(以下、「従来技術1」という。)や、特開2001-259673号公報(以下、「従来技術2」という。)等が提案されている。
好気性微生物を利用して有機物を分解する最も代表的な排水処理法は、活性汚泥法である。汚水に長時間空気を吹き込んで、その曝気を停止させ、静置すると、凝集した褐色の泥状物が沈降する。この褐色の泥状物は、汚水中の有機物や窒素・燐などを栄養源として発生した好気性の細菌類・原生動物などで、ちょうど水に泥を溶かしたように見えることから、活性汚泥と呼ばれる。この汚泥を人為的に汚水に加え、曝気、沈殿を連続化した処理法が、活性汚泥法である。長い歴史をもち、改良が進んでいることおよび汚水中の有機物の除去率が高いことなどにより都市下水や生活排水、有機系工場排水の処理に広く利用されている。
近年、膜を用いて固液の分離を行う排水処理方法(以下、「従来技術3」という。)も使用されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-235384号公報
【特許文献2】特開2001-259673号公報
【特許文献3】特許第3200314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術1は、ポリプロピレンの熱融着繊維が無作為に絡まって形成され、前記熱融着繊維に微生物を担持する微生物固定化担体であって、前記熱融着繊維が50〜3,000デニールの太さを有し、750〜2,000g/m3の繊維密度を有することを特徴とする微生物固定化担体を使用して、十分な水流性を維持しつつ、十分な量の微生物を保持すという点では優れた技術である。
しかし、上記の油脂等含有汚水を処理する場合には、そうした排水中で大きな粒子を形成している油脂等が担体に再付着して閉塞を起こしやすいため、油脂等をある程度分散させて、径を一定の大きさにし、再結合を起こさない状態にした後でないと、微生物固定化担体に固定した微生物による分解効率が上がらないという問題がある。
【0006】
また、従来技術2は、乳化油の少なくとも80容量%を1〜100μmの粒子径の範囲に調節し、油分濃度200mg/l以上の比較的高油分濃度の排水でも、排水処理装置における処理水中の油分濃度が低くなり、油分処理能が大幅に改善されるという点では優れた技術である。
しかし、高濃度油脂含有汚水を処理する場合、原水槽中に上述したような油脂の分散剤を添加すると、汚水中の油脂は、一旦は分散される。しかし、分散された油脂の粒子同士は以下のようなプロセスで、大きな粒径の塊を形成したり、排水の流路の内壁に付着して堆積される。すなわち、一旦分散された油脂粒子が再結合し、次第に大きな粒子となって水相と油相とに分離する。
そして、この再結合の過程において、水中に懸濁している有機性、無機性の物質であり、濾過又は遠心分離によって分離することができる水中に浮遊している懸濁物質(suspended solid, 以下、「SS」という。)等の汚濁成分を取りこんで塊を形成し、こうした塊は微生物が分解するときに長い時間を要するばかりでなく、排水の流路の内壁に付着して堆積することになる。
【0007】
このため、原水槽中で油脂の分散剤を添加した結果として形成された塊が、原水槽の内壁や曝気槽へ原水を送る配管の内壁に付着し、配管が詰まる原因となっていた。特に、アルカリ性の洗剤を用いると、汚水中の油脂が固化し、固形物と集合してスカムを形成する。そして、排水処理プロセス中にある油水分離槽、加圧浮上装置等の中でスカムが増大すると、水中の金属イオンの存在で金属セッケンと化し、施設内に岩のような、固い付着物が生成されることになる。こうした付着物を清掃によって落とすことは困難である。
【0008】
また、従来技術3は、活性汚泥がバルキングを起こして自然に沈降せず、処理水側に流出(キャリーオーバー)することがなく、また、反応タンクに保持できる活性汚泥の濃度が、自然の沈降性と最終沈殿池の大きさに依存しないという点では優れた技術である。ここで「バルキング」とは、活性汚泥の膨化によってSVI(汚泥容量指標)が300程度まで上昇し、自然沈降分離が困難となることをいう。すなわち、活性汚泥の膨化に起因する活性汚泥の沈降性の低下によって、自然沈降分離ができなくなる減少を指す。また、SVIは、汚泥の圧密性を表す指標となる。
そして、バルキングが起こると、沈殿槽で活性汚泥が分離できなくなり、活性汚泥があふれ出る現象を「キャリーオーバー」という。
しかし、排水に油分が多く含まれると、膜を頻繁に交換する必要があり、また、逆洗浄を行わないと目詰まりを起こすため、膜のメンテナンスに手間がかかるという問題があった。
【0009】
近年、油脂を微細化できると銘打った洗剤も販売されるようになったが、多くの場合微細化された油脂の粒子が短時間で再結合するなど、排水処理施設における微生物処理に対する効果までは考慮されていない。また、これらによって微細化した油脂が微生物処理設備中に流入することによって生じる変化に対応できる管理手法は確立されていない。
このため、排水処理の経路中に油とともに堆積していたスラッジ(下水処理や工場廃水処理などの過程で生じる、腐敗しやすい有機物を含む臭気の強い沈殿物)が剥離して、大量に微生物処理槽に流入することに対処できないという問題があった。
【0010】
また、生物相の活性が変化したことによる溶存酸素量(dissolved oxygen, 以下「DO」という。)や、活性汚泥浮遊物質(mixed liquor suspended solids, 以下「MLSS」という。)の変動に対処できず、十分な処理が行えないという問題もあった。活性汚泥は浄化微生物が混じった汚泥であるため、MLSSを浄化微生物量と仮定して、浄化能力を表わす指標として用いる。MLSSを適切な範囲で安定させることが、水質管理の基本となる。
このため、スラッジの付着防止と、付着したスラッジの剥離による急激な負荷増大への対処、溶存酸素量の変動に対処し、十分な処理を行うことができる油脂等含有排水の処理方法に対する強い社会的な要請がある。
【0011】
ここで、DOは、水中に溶けている酸素(溶存酸素)を示し、1気圧、20℃での純水の溶存酸素量は約9mg/Lである。溶存酸素量は、汚染度の高い水中では、消費される酸素の量が多いため減少し、きれいな水ほど多くなる。溶存酸素濃度は、水温の上昇、気圧の低下、及び塩分濃度の上昇につれて低下する。藻類が著しく繁殖すると、炭酸同化作用が活発になるため過飽和となる。溶存酸素が不足すると魚介類の生存が脅かされ、水が嫌気性となるために硫化水素やメタン等が発生し、悪臭の原因ともなる。
【0012】
また、排水処理の状況を改善するために、微生物製剤の投入や酸素による曝気も行われているが、上記のような油脂を含む塊が排水に含まれている場合には、こうした塊の分解は進まず、油脂の分解菌でさえも、実際の処理槽内では、通常の処理時間(1日程度)では分散された油脂等の再結合によって、十分にこれらを分解することができないという問題があった。
こうした状況の下では、標準的な活性汚泥処理システムの場合、固液分離の不調、糸状菌の発生等による汚泥沈降の悪化が生じ、その結果、脱水量の増加を余儀なくされる。また、凝集沈降剤の多用、加圧浮上装置でのスカムの増加等が起こり、排水処理で発生する産業廃棄物の増加を招き、施設の維持管理も難しくなると言った問題が生じている。
【0013】
さらに、活性汚泥と膜とを使用するシステムにおいても、固液分離の悪化、糸状菌の発生、含油汚泥や糸状菌の膜表面への付着による膜の目詰まり等が生じ、これによって膜圧が上昇する。さらに、活性汚泥の引き抜き量が増加し、メンテナンスに要する手間が多くなるといった問題が生じている。
担体を使用する処理システムでは、未処理の油脂分による担体の閉塞が起こり、担体が機能しないばかりでなく、閉塞した担体のために、実質的な処理槽容量が減少するという事態となっている。
以上より、分解された油脂等の再結合を防止するとともに、活性汚泥処理システムにおける微生物を賦活化する微生物叢活性化剤に対する、強い社会的要請があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者らは、以上のような状況の下で鋭意研究を重ね、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の第一の態様は、0.0005〜8重量%の炭素数13〜22のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、0.0005〜2重量%の脂肪酸ジアルカノールアミドとを主成分とし、残部として水を含む微生物叢活性化剤である。ここで、微生物叢とは、上述した活性汚泥法で使用される活性汚泥中に含まれる微生物の集合体をいう。
そして、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、分岐鎖を有し、かつ酸化エチレン付加モル数が8〜10又は16〜20であることが好ましい。
【0015】
また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、分岐鎖を有するものであることが好ましい。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシアルキレンペンタデシルエーテル、ポリオキシアルキレンイソセチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘプチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンウンデシルデシルエーテル、及びポリオキシアルキレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることが好ましい。
【0016】
さらに、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシプロピレンエーテルからなる群から選ばれるいずれかであることが好ましい。また、前記脂肪酸ジアルカノールアミドは、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びヤシ油脂肪酸ジプロパノールアミドからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることが好ましい。
本発明の第2の態様は、上述した微生物叢活性化剤を有効成分とすることを特徴とする、抗糸状菌剤である。
本発明の第3の態様は、上述した微生物叢活性化剤を有効成分とすることを特徴とする、配管洗浄剤である。
【0017】
本発明の第4の態様は、(a)上述した微生物叢活性化剤を、原水に投入する薬剤投入工程と、(b)前記微生物叢活性化剤によって分散された原水中の油脂を他の有機性汚濁物質とともに除去する微生物処理工程と、(c)曝気槽中の活性汚泥自体の沈降性を上げて、凝集沈降剤を加えずに安定的に比重分離する活性汚泥沈降工程、又は膜分離工程のいずれかと、を備える油脂等含有排水の処理方法である。
【0018】
ここで、前記微生物処理工程では、前記微生物叢活性化剤と原水中の油脂を撹拌し、油脂を分散・微細化させ、曝気により、分散・微細化された油脂及びその他の有機性汚濁成分を効率良く微生物分解させる。そして、微生物叢の活性化により汚泥の沈降性が上がり、原生動物類や多細胞微生物類などが多数発生し、汚泥の自己消化が促され、微生物による分解処理が進む。
次いで、前記活性汚泥沈降工程では、沈降性の上昇した活性汚泥を、凝集沈降剤を加えずに沈降分離する。また、膜分離工程では、膜を使用して活性汚泥と排水とを分離させる。そして、脱水工程では、余剰汚泥を引抜き脱水する。
前記薬剤投入工程では、前記微生物叢活性化剤を、原水槽又は原水調整槽に貯留されている原水に対して投入することが好ましい。
【0019】
また、前記薬剤投入工程における前記微生物叢活性化剤の投入量は、前記原水槽又は原水調整槽に流入する排水原水中の排水の容積に対して0.0003〜0.02%(v/v)であることが好ましい。また、0.0005〜0.01%(v/v)であることが、さらに好ましい。ここで、前記油脂等含有排水の処理工程において、微生物処理工程と活性汚泥沈降工程との間に加圧浮上処理工程を設けることもできる。
【0020】
しかし、本発明においては、油脂が微細化されているために微生物処理工程における処理がスムーズに進むことから、油分の大部分を加圧浮上工程で除去することなく、次の処理工程に送ることができる。これによって、加圧浮上装置では主にSS成分が除去されることになる。
さらに、前記曝気槽中の汚水の溶存酸素濃度が0.1mg/L以上5mg/L以下であり、かつ、浮遊物質(MLSS)が4,000〜10,000mg/Lであることが好ましい。溶存酸素濃度が0.5mg/L以上3mg/L以下であり、かつ、浮遊物質(MLSS)が5,000〜9,000mg/Lであることが、さらに好ましい。
また、本発明においては、活性汚泥分離用の膜分離ユニットをさらに備える構成とすることが好ましく、前記膜ユニットは、中空糸で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、油脂等含有排水中の油脂等の含有量が高い場合であっても、油脂等によって形成された粒子径を一定の範囲の直径を有するように分散させた状態を維持し、微生物叢を活性化させることができる微生物叢活性化剤が提供される。
また、上記微生物叢活性化剤を使用する本発明の排水処理方法を使用することにより、処理槽内壁や担体や配管内への堆積物付着を抑制しつつ、短期間のうちに効率良く排水を処理することができる。これによって、スカムや加圧浮上フロスや余剰汚泥の発生量を抑制することができる。
また、本発明の微生物叢活性化剤を希釈して、洗剤や配管洗浄剤として使用することにより、排水管や側溝の詰まり、油脂等による排水設備機器の故障等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、油脂等含有排水処理のプロセスの一例を示す図である。
図2図2は、本発明の微生物叢活性化剤を添加して撹拌したときの油脂等の分散の経時変化を示した図である。(A)は撹拌開始直後(0分)、(B)〜(D)は、それぞれ、撹拌開始後30分、60分、120分の状態を示す。(E)は、撹拌停止後60分の時点での油脂等の分散状態を示す。
図3図3は、XL-70を添加したときの油脂等の分散の経時変化を示した図である。(A)は撹拌開始直後(0分)、(B)及び(C)は、それぞれ、撹拌開始後30分及び60分の状態を示す。(D)は、撹拌停止後60分の時点での油脂等の分散状態を示す。
【0023】
図4図4は、DAPE-0220を添加したときの油脂等の分散の経時変化を示した図である。(A)は撹拌開始直後(0分)、(B)及び(C)は、それぞれ、撹拌開始後30分及び60分の状態を示す。(D)は、撹拌停止後60分の時点での油脂等の分散状態を示す。
図5図5は、OD-10を添加したときの油脂等の分散の経時変化を示した図である。(A)は撹拌開始直後(0分)、(B)及び(C)は、それぞれ、撹拌開始後30分及び60分の状態を示す。(D)は、撹拌停止後60分の時点での油脂等の分散状態を示す。
図6図6は、TDS-80 を添加したときの油脂等の分散の経時変化を示した図である。(A)は撹拌開始直後(0分)、(B)及び(C)は、それぞれ、撹拌開始後30分及び60分の状態を示す。(D)は、撹拌停止後60分の時点での油脂等の分散状態を示す。
【0024】
図7図7は、原水調整槽における細菌の増殖状況の変化を示す顕微鏡写真(いずれも1,000倍)である。(A)は試験開始前、(B)〜(D)は、試験開始後12日目の微生物叢の状態を示す。
図8図8は、本発明の微生物叢活性化剤を使用した前後の油水分離槽の状態の変化を示す写真である。(A)は試験開始前(7月20日)、(B)は試験開始後(8月10日〜9月12日)、(C)は試験開始後(10月11日)の時点における状態を示す。
図9図9は、本発明の微生物叢活性化剤を使用した前後の原水調整槽の状態の変化を示す写真である、(A)は試験開始前(7月20日)、(B)は試験開始後(8月10日〜9月12日)、(C)は試験開始後(10月11日)の時点における状態を示す。
【0025】
図10図10は、本発明の微生物叢活性化剤を使用した前後の第一担体曝気槽の状態の変化を示す写真である。(A)は試験開始前(7月20日)、(B)は試験開始後(8月10日〜9月12日)、(C)は試験開始後(10月11日)の時点における状態を示す。(D)は試験開始後(8月10日〜9月12日)の担体の状態を、また、(E)は試験開始後(10月11日)の担体の状態を、それぞれ示す写真である。(F)は本発明の微生物叢活性化剤使用前の微生物叢の状態を、また、(G)は使用開始91日(約3ケ月)後の微生物叢の状態を示す顕微鏡写真である。
【0026】
図11図11は、本発明の微生物叢活性化剤を使用した前後の第二担体曝気槽の状態の変化を示す写真である。(A)は試験開始前(7月20日)、(B)は試験開始後(8月10日〜9月12日)、(C)は試験開始後(10月11日)の時点における状態を示す。(D)は試験開始後(8月10日〜9月12日)の排水の状態を示す写真である。(E)は試験開始後(10月11日)の担体の状態を示す写真である。(F)は本発明の微生物叢活性化剤使用前の微生物叢の状態を、また、(G)は使用開始180日(約6ケ月)後の微生物叢の状態を示す顕微鏡写真である。
【0027】
図12図12は、本発明の微生物叢活性化剤の投入前後の排水管に付着した油分の状態を示すCCDカメラの画像である。(A)は投入前の排水管入口付近に付着した油分の状態を、また、(B)及び(C)は、それぞれ投入前の排水管内に付着した油分の状態を示す。(D)〜(F)は、それぞれ上記と同じ場所の使用開始1カ月の時点における付着した油分の状態を示す画像である。
図13図13は、工場4の排水処理施設の原水槽に、本発明の微生物叢活性化剤を投入する前後のBOD、SS及びn-Hexの値の変動を示すグラフである。
図14図14は、食品工場5の排水処理施設の汚泥脱水量、及びNo. 5Cの濾紙を用いた時の膜曝気槽の活性汚泥の濾過速度の変化を示す図である。
【0028】
図15図15は、食品工場5の排水処理施設の膜曝気槽の活性汚泥の全蒸発残留物(TS)、及び、加圧浮上フロス脱水量の変化を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ、TS及び加圧浮上フロス脱水量の変化を示すグラフであり、(C)及び(D)は、それぞれ、使用開始前後の微生物叢の状態を示す顕微鏡写真である。
図16図16は、本実施例で使用した、活性汚泥を使用する半回分式装置の概要図である。
図17図17は、食品工場排水を用いて、上記装置による処理水のSVIがどのように変動するかについて検討した結果を示すグラフである。
図18図18は、試験開始後の原水(工場排水)のT-BODの変化をJIS K0102 21を用いて測定した結果を示すグラフである。
【0029】
図19図19は、GT流入水を含む人工排水(油脂分=1007mg/L)を用いたときのS-BOD、n-Hex、汚泥中油脂含量、汚泥発生量、及びDOの各系における対比を示すグラフである。
図20図20は、各系の汚泥の状態を示す写真である。
【0030】
図21図21は、膜分離活性汚泥装置に対する本発明の微生物叢活性化剤の効果を検討するために使用した装置の模式図である。
図22図22は、運転開始後の経過日数と透過流速/膜間差圧との変化を示すグラフである。
図23図23は、試験終了後の、対照として使用した膜ユニットと本発明例で使用した膜ユニットとの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の微生物叢活性化剤は、0.1〜8重量%の炭素数13〜22のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、0.0005〜8重量%のヤシ油脂肪酸ジアルカノールアミドとを主成分とし、残部として水を含んでいる。ここで、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、分岐鎖をし、かつ酸化エチレン付加モル数が8〜10または16〜20であることが、後述する油脂等含有排水中の油脂粒子を所定の大きさの粒子に分散させ、かつ、所定の時間その状態を維持することができる点で好ましい。
ここで、所定の大きさの粒子とは、その粒径が0.001〜100μmの範囲にあるものをいい、所定の時間とは、12時間〜24時間をいう。
【0032】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、分岐鎖を有するものであることが好ましい。また、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシアルキレンペンタデシルエーテル、ポリオキシアルキレンイソセチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンヘプチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルデシルエーテル、ポリオキシアルキレンウンデシルデシルエーテル、及びポリオキシアルキレンベヘニルエーテルからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることが、油脂等含有排水中の油脂粒子を所定の大きさの粒子に分散させてその状態を長時間維持し、かつ、油脂粒子等の分解効率を上げることができることから好ましい。
【0033】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンエーテル及びポリオキシプロピレンエーテルからなる群から選ばれるいずれかであることが、微生物叢をさらに活性化させ、油脂等の分解効率をより上昇させることができることから、さらに好ましい。ここで、所定の大きさ及び所定の時間は、上述した通りである。
また、前記ヤシ油脂肪酸ジアルカノールアミドは、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びヤシ油脂肪酸ジプロパノールアミドからなる群から選ばれるいずれかの化合物であることが、微生物叢の活性化の面で、さらに好ましい。
【0034】
本発明の微生物叢活性化剤は、水と、0.0005〜8重量%(v/v)の炭素数13〜22のポリオキシアルキレンエーテルと、0.0005〜2重量%(v/v)の脂肪酸ジアルカノールアミドとを混合することによって調製することができる。
具体的には、水と、0.0005〜8重量%のポリオキシエチレンエーテル又はポリオキシプロピレンエーテルの少なくとも一方、及び0.0005〜8重量%のヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド又はヤシ油脂肪酸ジプロパノールアミドの少なくとも一方を混合し、調製することができる。
これらの化合物として、市販品を使用することもでき、例えば、第一工業(株)製のTDX-80D、TDX-100D、花王(株)製のEG-2025G、日本エマルジョン(株)製の1615、1620、2420、OD16、OD20、BHA-20等を例示することができる。
【0035】
以上の組成とすることによって、本発明の微生物叢活性化剤MAAは、図1に示す原水槽24又は原水調整槽25中に流入した油脂等含有排水(以下、「原水」ということがある。)中に、0.0003〜0.02%(v/v)の濃度で添加したときに、原水中の油脂粒子の大きさを、微生物叢中の微生物が分解しやすい大きさとすることができる。これによって、微生物が原水中の油脂粒子等を効率よく分解することができるようになる。また、本発明の微生物叢活性化剤の添加量は、0.0005〜0.01%(v/v)であることが、さらに好ましい。ここで、前記油脂等含有排水の処理工程において、微生物処理工程と活性汚泥沈降工程との間に加圧浮上処理工程を設けることもできる。
【0036】
また、本発明の微生物叢活性化剤を中性洗剤と混合し、食品工場WKS等において、食品の加工に使用した容器の洗浄等に使用することもできる。そして、上記微生物叢活性化剤を含む中性洗剤によって洗い落とされた油脂等を含む排水が排水管21、23を通って原水槽24(以下、「原水ピット」ということがある。)又は原水調整槽25に流入した場合には、改めて上記微生物叢活性化剤を加えなくとも、微生物叢が活性化される。
【0037】
上記方法を使用する排水の処理プロセスの一例を図1に示す。このプロセスでは、(a)原水槽24又は原水調整槽25(以下、「調整槽25」ということがある。)と、(b)加圧浮上装置26と、(c)曝気槽31とを備えている。処理しなければならない排水の量が多い場合には、原水槽24と原水調整槽25とを別個に設けることが好ましい。これらは、撹拌装置を備えており、さらに、曝気装置を備えていることが好ましい。工場から排出された油脂等含有排水は、通常1日程度これらの槽内に貯留される。
【0038】
本発明の微生物叢活性化剤は、原水槽24又は原水調整槽25中に投入し、油脂等の分散処理を行う。多くの場合、この工程において微細化された油脂分は、(a)原水槽24又は原水調整槽25内に生息する微生物叢(バクテリア)によって分解され、調整槽25を通過した時点ですでに、汚濁物質を含む未処理の汚水中に含有されていた油脂分の50%から90%が、分解・除去されている。(b)加圧浮上装置26では、主に原水中に含まれる水に不溶性の微粒子が加圧された気泡に吸着されて浮き上がり、分離除去される。一方、微細化された油脂とその他の有機物は除去されずに加圧浮上装置26を通過する。(c)曝気槽31では、活性汚泥とともに圧搾空気が吹き込まれ、微細化された油脂を含む汚濁物質が好気的に分解される。そして、(d1)沈殿槽32では、上記曝気槽31で増殖した微生物(活性汚泥)を沈殿させる。この後に、沈殿槽32で得られた上澄み液は、処理済の排水として河川等に放流される。
【0039】
このプロセスではさらに、原水槽24の手前にバースクリーンSCR22が配置されており、また、(d2)汚泥貯留槽33と、(d3)脱水装置34とを備えている。
ここで、上記バースクリーンSCR22は、工場からの排水中の大きな浮遊物を除去し、これらに起因するパイプ詰まり等の防止や、浮遊物が生物処理工程において大きな負荷となることの防止を目的として設置される。また、(d2)汚泥貯留槽33では、沈殿槽32で沈降し濃縮された活性汚泥を引き抜き曝気しながら貯留する。汚泥貯留槽33では、通常、約12時間〜約24時間、曝気、貯留を行う。その後、(d3)脱水装置34により、上記活性汚泥の水分含量が、引き抜き時の98%程度から85%程度までに低下する。
含水量が低下した活性汚泥は、再利用が可能な場合には再利用し、不可能な場合には廃棄物として処分することになる。
通常、活性汚泥の1日当たりの引き抜き量は、原水槽24又は原水調整槽25中の液体、例えば、原水の容量を650mとすると、その15〜25%(v/v)程度である。
【0040】
工場等WKSからの油脂等含有排水は、上述したプロセスにおいては、以下のように処理されることになる。
まず、薬剤投入工程において、上述した微生物叢活性化剤を、原水槽24又は原水調整槽25に投入し、12〜48時間程度、これらの槽内の排水を曝気・撹拌し、一次処理排水とする。24時間〜40時間程度、曝気・撹拌することがさらに好ましい。原水槽24又は原水調整槽25が別個に設けられている場合には、少なくとも原水調整槽25で、12〜48時間程度、曝気・撹拌を続ける。撹拌時間を12時間未満とすると、排水中の油脂等の分散が不十分であり、48時間以上としても、それ以上効果が向上せずコストが嵩むからである。
撹拌時間を24時間以上とすると、油脂の微細化分散効果のみならず、槽内のバクテリアによる微生物分解が進む。これによって、次の工程における負荷低減効果が顕著となり、処理施設の運転を安定させ、廃棄物発生量を削減する上で著しく効果的である。
原水槽24又は原水調整槽25の内壁に、既に油脂及びスラッジ等が堆積している場合には、このような堆積した油脂やスラッジ等の剥離も起こり、それらの塊も同様に分散させることになる。このため、堆積物が消滅するまでの期間、次の工程における負荷が高くなるので、次工程の処理においてそれに見合った運転調整を行い、負荷を調整する。
【0041】
次いで、微生物処理にとって難分解性の成分を、一次処理排水から前もって除去し、二次処理排水とする。この除去は、加圧浮上装置26を使用する場合には、加圧浮上装置26によって行う。具体的には、凝集剤を添加して水に不溶な難分解性の微粒子をフロック化し、一定の圧力をかけられた微細気泡に、油脂を含む難分解性の成分を吸着させて浮上させ除去する。
従来の方法では、調整槽25を通過した時点で油脂が十分に微細化されていないため、こうした排水(原水)を二次処理排水に混入すると、排水の生物処理を著しく妨げることになる。これを防ぐために、凝集剤と反応させて、油脂、SS等の難分解性の成分をフロックに取り込んで除去する必要がある。
【0042】
それに対し、本発明においては、調整槽25において油脂が十分に微細化されており、そのまま二次処理排水側へ流入させることができることから、従来は難分解性の成分の1つであった油脂をフロックに取り込む必要がない。このため、凝集剤の使用量を減少させるか、または不使用とすることができ、それによって、フロスの発生量が激減する。
また、前述のように、原水調整槽25において油脂等が分散され、すでに排水負荷が低減されている。このため、油脂が加圧浮上装置26を通過したときに、一次処理排水中の油脂等の濃度が原水より大きく下がっており、なおかつ油脂等が微細化されている。このため、以降の工程で行われる微生物処理にとって過大な負荷となることがない。
【0043】
上記のように、本剤の使用を開始した時点で、その一部がすでに分解されているため施設内に油脂等の堆積物が付着している場合には、本剤の使用により一時的に調整槽を通過する時点における排水中の油脂等の含有量が著しく多くなり、MLSSが上昇する場合がある。この場合には、それらがある程度減少するまでの間、市販の凝集剤を曝気槽または沈殿槽に添加することによって、MLSSの上昇による沈殿槽の界面上昇を抑制することができる。排水中の油脂等の含有量が減少してきたところで、こうした凝集剤の投入量を減らし、最終的には使用しないようにすることが、排水処理施設運転上のリスクを回避しつつ、凝集剤、フロスの処理及び排水処理設備の運転に要する費用を削減する上で好ましい。
【0044】
一次処理排水を、活性汚泥を入れた曝気槽31に投入する。曝気槽31中では、活性汚泥中の微生物によって油脂等その他の汚濁物質が好気的に分解される。すなわち、曝気槽31は、この処理プロセス中で最も重要な役目を果たす。
効率的に、排水中の汚濁物質を分解処理するためには、曝気槽31の容量が重要であり、この容量は、通常、BOD容積負荷で計算される。ここで、BOD容積負荷は、曝気槽31の容積1m当たりの1日BOD量kg(1日BOD投入量/曝気槽容量)で表される。BODは、生物学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand)を意味し、溶存酸素の存在下で、水中の有機物質などが生物化学的に酸化・分解される際に消費される酸素量(一般的にmg/L)をいう。この数値が大きくなるほど、水が汚濁していることを示す。
【0045】
一般的な排水処理施設では、BOD容積負荷は、0.4kg/m/day程度で運転されることが多いとされている。BOD容積負荷が大きいほど処理能力が高いが、負荷の変動に対する安定性が弱くなるため、維持管理に注意が必要となる。それに対し、本発明の微生物叢活性化剤を使用すると、1kg/m3/日を越えるBOD容積負荷に対しても、安定的に処理を行うことができる。
ここで、SSは、一定量の水をろ紙で濾し、乾燥してその重量を測定するが、数値(mg/L)が大きい程、その水の濁りが多いことを示す。
【0046】
BODを下げるには、曝気槽31内の微生物がどの程度存在しているかが重要であり、この指標としてMLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)濃度(mg/L)が用いられる。すなわち、MLSSは、曝気槽内の排水中に浮遊している活性汚泥を意味し、正確には、無機性の浮遊物質など、微生物以外の成分をも含む。しかし、通常の排水処理においては、活性汚泥濃度の指標として用いられる。MLSS濃度は、通常、約3,000〜約6,000mg/Lで設定されるが、本発明の方法においては、約4,000〜10,000mg/Lとすることができる。MLSSが4,000mg/L未満又は10,000mg/L以上となると、後述するキャリーオーバーによって活性汚泥の沈降性が悪くなり、上澄水が得られないという問題が生じる。
なお、本発明の油脂等含有排水の処理方法では、曝気槽31中の好気的環境が維持され、キャリーオーバーの危険がない限り、最高で約10,000mg/LまでMLSS濃度を上げることができ、高めの値で維持することが、排水処理の効率の面から好ましい。しかし、その分必要な曝気量が増えることになるので、処理全体に要するコストとのバランスを調整する必要がある。
【0047】
活性汚泥法を用いた場合、浄化槽で処理された処理水の水質を上げるためには、流入する原水中に含まれる有機物等を資化して増殖した微生物と処理水とを、沈殿槽において効果的に、固液分離することが重要となる。しかし、糸状菌等の糸状微生物が異常増殖すると、活性汚泥が膨化し、汚泥の圧密性を表す指標となるSVI(汚泥容量指標)が300程度まで上昇する。そして、活性汚泥の沈降性が悪化し、自然沈降分離が困難となる。このような現象をバルキングという。
そして、下水処理場において、バルキングが起こると沈殿槽で活性汚泥が分離できなくなり、活性汚泥があふれ出ることになる。この現象をキャリーオーバーという。バルキングの原因は、糸状菌の異常増殖と、それ以外の原因とに大別されている。
【0048】
糸状菌が異常に増殖し、沈殿槽でもこれらが絡み合った状態となって沈降しなくなるため、上澄水を得ることができなくなる状態が、典型的なバルキングである。なお、曝気量が多すぎるために、本来、凝集するはずの菌が分散状態になったり、粘性の高い分泌物が産生され、そのために微生物相互の凝集が妨げられる、または、油脂が十分に微生物分解されずに汚泥のフロックに吸着し、その浮力により沈降不良になるといった、糸状菌の異常増殖以外によっても、バルキングが起こることがある。
上記のようなバルキングが起こると、曝気槽31へ返送される汚泥量が不十分となり、曝気槽31中の活性汚泥の濃度が低下し、処理効率も低下する。そればかりでなく、必要以上に汚泥を脱水すると、余剰汚泥の処理や凝集沈降剤を多用することによってコストが嵩むことになる。
【0049】
ここで、活性汚泥を一定時間放置し、その汚泥の沈殿量をパーセント(百分率)で表したものを、SV (sludge volume)という。また、活性汚泥の沈降を表わす指標で、汚泥容量指標をSVI (sludge volume index)といい、活性汚泥を30分間静置した場合に、1gの汚泥が占める容積(mL)を表わす。
SVI=SV×10000/MLSS
SVI=100とは、活性汚泥1gが100mlの容積を占めることを表す。通常の曝気槽では、50から150が適切な値であり、200以上だとバルキングしている状態といわれる。
【0050】
本発明の水処理方法においては、DOを、0.1mg/L以上4mg/L以下の範囲に調節し、この値と活性汚泥の脱水量とを見ながら、MLSSが約4,000〜10,000mg/Lの範囲となるように調節する。
以上のようにして、本発明の油脂等含有排水処理方法を用いて、排水処理の運転調整を行うと、汚泥中に原生動物、多細胞微生物等が多数発生し、内生呼吸によって活性汚泥の増加速度が低下する。このため、余剰汚泥の脱水量を減らしつつ、必要な放水量を維持することができる。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
【実施例】
【0051】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1) 微生物叢活性化剤の組成の検討
微生物叢活性化剤として使用できる成分を検討した。0.056%のポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンを水と混合して、下記の表1及び表2に示す組成物を調製し、油脂の分散粒子径、分散速度、再結合性、親フロック性等を検討した。結果を、表1及び2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1及び表2中、*1〜*5は以下の通りである。
*1:ポリオキシプロピレンアルキレンエーテル
*2:POATED:ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、
OcDd:ポリオキシアルキレンオクチルドデシルエーテル、
IsSe:ポリオキシアルキレンイソセチルエーテル、
DeTd:ポリオキシアルキレンデシルテトラデシルエーテル、
TrDe: ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、
Ol:ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、
Bh:ポリオキシアルキレンベヘニルエーテル、
Ar:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、
OA:ポリオキシアルキレンオキシアルキレンエーテル
POAD:ポリオキシアルキレンデシルエーテル
POPDE:ポリオキシプロピレンデシルエーテル
【0055】
*3:PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)該当。事業者は、環境中に排出した量と、廃棄物や下水として事業所の外へ移動させた量とを自ら把握し、行政機関に年に1回届け出る。
*4:PO=プロピレンオキサイド
*5:時間経過で再結合の恐れ
【0056】
以上の結果、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合には、アルキル基の炭素数(Cn)が13〜24、酸化エチレンの付加モル数((EO)n)が8〜20、かつ、エチレンオキサイドの数/炭素数((EO)n/Cn)が0.6〜1.62である化合物が、分散性、親フロック性ともに良好であった(本発明例1〜10)。これらの中でも、Cnが13〜22かつ(EO)nが16〜20である組成物が、さらに良好な分散性、親フロック性を示した。
炭素数10以下のもの及び50以上のものは、分散速度が遅く、分散性が不良のものが多かった(比較例1〜4及び7〜9)。炭素数が20であっても、(EO)n/Cnが2以上となると、分散速度は速いが分散性が不良となった(比較例6)。また、(EO)nが8未満であるか、25以上になると分散性が不良となった(比較例1)。ポリオキシエチレンアルキルエーテルである比較例5は、分散速度は速いが分散性が不良となった。
以上より、以下の実施例においては、0.0005〜2重量%のヤシ油脂肪酸ジアルカノールアミドを含む本発明例7の組成物を使用した。
【0057】
(実施例2) 油脂の分散試験
(1)材料及び方法
水道水1Lにサラダ油(日清オイリオグループ(株)製)1g、及び本発明例7の組成物1mLをビーカーに加え、ビーカー中に撹拌子を入れて500rpmで撹拌してサラダ油を分散・乳化させ、試料1を調製した。本発明例7の組成物に代えて、XL−70(第一工業(株)製、比較例1)、DAPE−0220(日本エマルジョン(株)製、比較例3)、OD−10(日本エマルジョン(株)製、比較例6)又はTDS−80(日本エマルジョン(株)製、比較例11)を使用し、試料1と同様に撹拌して対照試料1〜4を調製した。
【0058】
(2)測定項目・測定方法
上記の試料1及び対照試料1〜4について、試験開始直後の時点を0分として、撹拌開始後30分及び60分後の分散状態を、顕微鏡(100倍)で肉眼観察した。試料1については、撹拌開始後120分の時点の状態も顕微鏡で観察した。また、撹拌終了後60分の状態を肉眼で観察した。結果を図2図6に示す。
図2(A)〜(E)に示すように、試料1では、撹拌開始後120分の時点でも、油が微細に分散された状態が維持された。また、撹拌停止後60分後でも、油の再結合は観察されなかった。油の微粒子が水中に分散しているため、水はわずかに白濁していたが、水面には油はほとんど浮上しなかった。
【0059】
図3(A)〜(E)に示すように、対照試料1(XL−70)では、一旦は微細に分散されるものの、撹拌時間60分では油が再結合し、粒径が大きな粒子が観察された(図3(C)参照)。また、撹拌停止後60分では、油が再結合し、水の表面に油膜が観察された。水中に分散している油の粒子は非常に少ないため、水の透明度は高かった(図3(D)参照)。
図4(A)〜(D)に示すように、対照試料2(DAPE−0220)では、油の粒径にはほとんど変化が見られず、DAPE−0220では油が微細化されないことが示された。撹拌停止後60分では油が再結合し、塊状となって水面に浮上した。水中に分散している油の粒子は非常に少ないため、水の透明度は高かった(図4(D)参照)。
図5(A)〜(D)に示すように、対照試料3(OD-10)では、油の分散は良好でかなり微細化されることが観察された。撹拌停止後60分では油の粒子が凝集した状態で水面に浮上した。水中に分散している油の粒子は非常に少ないため、水の透明度は高かった(図5(D)参照)。
【0060】
図6(A)〜(D)に示すように、対照試料4(TDS-80)では、撹拌開始後30分で、油がかなり微細な粒子に分散されていることが観察された。しかし、撹拌開始後60分では、一旦微細化された油が再結合し、粒径の大きな粒子が観察された。撹拌停止後60分では油の粒子が凝集した状態で水面に浮上した。水中に分散している油の粒子は非常に少ないため、水の透明度は高かった(図6(D)参照)。
【0061】
このことから、試料1では、撹拌開始後120分までは一旦分散された油の粒子の再結合が起こらず、分散状態が維持されること、及び撹拌を停止しても、60分まではその状態が維持されることが示された。
これに対し、対照試料1〜4では、撹拌中に油の粒子の再結合が生じたり、撹拌中は再結合を起こさなくとも、撹拌を停止すると油の粒子が再結合や凝集を起こすことが示された。
【0062】
(実施例3) 食品工場1における原水調整槽の水質の変化
(1)測定試料及び測定項目
食品工場の原水調整槽に、本発明の微生物叢活性化剤を添加前、及び添加開始後20日の時点で、柄杓を用いて曝気攪拌中の調整槽から4Lの液体を汲み、下記表3に示す項目について測定を行った。排水流入量に対する微生物叢活性化剤の原水調整槽への添加量は、0.001%とし、原水調整槽での汚水の滞留時間を18時間とした。加圧浮上装置は使用しなかった。
【0063】
【表3】
【0064】
表3中、( )内の数字は、添加前の値を100としたときのパーセンテージを示す。また、BOD-5は、20℃で5日間培養したときの酸素消費量を示し、BOD-20は20℃で20日間培養したときの酸素消費量を示す。BODは、JIS K0102 21に従って測定した。
n-Hex(ノルマルヘキサン抽出物)は、JIS K0102 24に従って測定した。pHは、pH測定用ガラス電極を用いて、JIS Z8805に従って測定した。SSは、JIS K0102 14.1に従って測定した。JIS B9944に定義されているMLSSは、SSと同様に測定した。
添加開始20日の時点では、水温が大きく下がっていたにもかかわらず、SS、BOD-5及びBOD-20はいずれもほぼ半減していた。さらに、n-Hexの量はほぼ90%減少しており、油脂等が十分に除去されていることが示された。
以上より、汚水が浄化され、原水調整槽の段階で水質が大きく改善され、後段の曝気槽への流入負荷が大幅に低減していることが示された。
【0065】
(実施例4) 食品工場2からの排水中のSS等の原水調整槽における変化
原水調整槽に本発明の微生物叢活性化剤を0.0015%添加して調整し、凝集剤を添加せずに加圧浮上装置を通過させた後の別の食品工場の排水3Lを、実施例3と同様に採取した。SS、BOD及びn-Hexを上記と同様に測定した。実施に際し、原水調整槽の水位を従来よりも高く設定し、原水調整槽における汚水の滞留時間を、12時間、DOを1.0〜2.0mg/Lとなるよう調整した。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
上記表4に示すように、SSは一旦上昇した後に低下したが、n-Hexは経時的に含有量が低下した。また、BODも経時的に低下した。
また、原水調整槽の微生物の増殖状態を図7に示す。試料1を投入する前の状態を示す図7(A)では未処理の油滴と、わずかな数の細菌とが観察された。試料1の添加12日後、同じ処理槽の異なる場所から3つの検体を採取したところ、いずれの場所で採取した検体でも細菌が増殖し、コロニーを形成していることが確認され、未処理の大きな油滴は観察されなかった(図7(B)〜(D))。
以上より、本発明の微生物叢活性化剤によって、油脂等が分散されて微生物が増殖したこと、及び汚水負荷が減少したことが示された。
【0068】
(実施例5)食品工場3からの排水中のSS等の変化
食品工場3の排水処理施設(加圧浮上型)にて、本発明の微生物叢活性化剤を0.0036%(v/v)使用し、使用前後の油水分離槽、原水調整槽、撹拌槽、第一担体曝気槽、第二担体曝気槽、及び処理放流槽の状態の変化を観察した。これらのうち、顕著な変化の見られた油水分離槽、原水調整槽、第一担体曝気槽、及び第二担体曝気槽の状態の変化を図8図11に示す。
【0069】
(1)油水分離槽における変化
図8(A)〜(C)は、油水分離槽中の排水の試験開始前後の状態を示す。試験開始前は、表面に油が浮上していた(図8(A))。試験開始後20日程で、油水分離槽中の排水表面に浮上していた油の量は減少し(図8(B))、約50日後に表面の油が消えた(図8(C))。試験開始80日後でも、油水分離槽中の排水の排水表面に油の浮上は見られなかった。
【0070】
(2)原水調整槽における変化
図9(A)〜(C)は、原水調整槽中の排水の試験開始前後の状態を示す。試験開始前は、原水表面に、茶色の泡状の油が浮上していた(図9(A))。試験開始時より、本発明例の組成物を、0.0036%(v/v)の濃度で原水調整槽に投入した。試験開始後20日程で、原水調整槽中の排水表面に浮上していた油の量は減少し(図9(B))、約50日後には排水表面に浮上していた油の量は減少したままで、排水の色がそれまでの濃い白濁色から薄い灰色に変化した(図9(C))。
(3)撹拌槽における変化
撹拌槽では、試験開始前は排水表面に油膜が張っており、試験開始20日後でも油膜の存在が観察された。試験開始約50日後には油膜が消失した。また、試験開始80日後では、油膜は観察されず、原水自体の色が濃い白濁色から薄い灰色に変化した。
【0071】
(4)第1担体曝気槽
図10(A)〜(C)は、第1担体曝気槽中の排水の試験開始前後の状態を示す。第1担体曝気槽には、微生物による有機性汚濁物質の分解を促進するために、ベージュ色の多孔質の担体が投入されていた。
試験開始前は、この担体に排水中の油と糸状菌とが付着し、曝気しても好気性の微生物が繁殖できる環境にはなかった(図10(A))。試験開始後20日を過ぎると、担体表面に付着していた油がなくなり、また、担体に絡まりついていた糸状菌はほぼなくなっていた(図10(B))。この期間中には、第1担体曝気槽中に、調整槽から剥がれた白い油の塊も見られた。このときの担体の状態を図10(D)に示す。
【0072】
試験開始後80日後には、曝気槽中の排水の状態が変化し(図10(C))、担体に微生物が付着していることも確認された(図10(E))。
本発明の微生物叢活性化剤の使用前後の活性汚泥中の微生物の状態を図10(F)及び(G)に示す。使用前の汚泥の状態は、糸状菌が蔓延して凝集性が悪く、余剰汚泥の発生量も多かった。
これに対し、使用開始後91日(約3カ月)では、糸状菌がほぼ見られなくなるとともに原生動物の量が増え、凝集性が改善されたために汚泥の沈降性が大きく改善された。また、余剰汚泥の発生量が大幅に減少した。
【0073】
(5)第2担体曝気槽
図11(A)〜(C)は、第2担体曝気槽中の排水の試験開始前後の状態を示す。第2担体曝気槽には、第1担体曝気槽と同様に、微生物による有機性汚濁物質の分解を促進するために、ベージュ色の多孔質の担体が投入されていた。
試験開始前は、この担体に排水中の油が付着し、また、水槽中の排水表面にも油が浮上していた(図11(A))。試験開始後50日を過ぎると、担体表面に付着していた油がなくなり(図11(B))、また、排水も透明感が見られるようになった(図11(D))。ただし、良好な状態の溶存酸素濃度(DO)が約2.0であるのに対し、5.0とまだ高い値を示した。
試験開始後80日後には、曝気槽中の排水の状態が明らかに変化し(図11(C))、担体もきれいに復活したことが観察された(図11(E))。
【0074】
本発明の微生物叢活性化剤の使用前後の活性汚泥中の微生物の状態を図11(F)及び(G)に示す。使用前の汚泥の状態は、フロックの凝集性が悪いために沈降性も悪く、余剰汚泥の発生量も多かった。
これに対し、使用開始後180日(約6カ月)では、フロックの凝集性が上がり、沈降性が大幅に改善された。また、余剰汚泥の発生量も大幅に減少した。
【0075】
(6)処理水放流槽
試験開始前の処理水放流槽では、処理水が白濁し、n-Hexの値を測定したところ、91mg/Lであった。試験開始後50日程が経過すると、白濁していた処理水が薄茶に変わり、n-Hexの値は27mg/Lまで低下していた。
試験開始後80日では、処理水は透明感のあるものとなり、n-Hexの値はさらに低下して12mg/Lであった。
第1担体曝気槽と同様に、微生物による有機性汚濁物質の分解を促進するために、ベージュ色の多孔質の担体が投入されていた。
【0076】
(7)配管
本発明の微生物叢活性化剤を1%含む配管洗浄剤を、排水管に投入した場合に、配管内に付着した油分がどのように変化するかを、CCDカメラを用いて撮影し、図12(A)〜(F)に示した。
図12(A)〜(C)は、使用開始前の排水管内入口付近及び配管内の様子を示す画像である。配管内には、びっしりと分厚く油分が堆積していることがわかる。
図12(D)〜(F)は、使用開始1ヶ月後の排水管内入口付近及び配管内の様子を示す画像である。排水管内にびっしりと堆積していた油分の大部分が剥がれ落ちていることが、図12(D)〜(F)に示されている。
以上より、本発明の微生物叢活性化剤を含む洗剤を、排水管内に投入することによって、排水管内に堆積された油分も除去されることが示された。
【0077】
(8)結果
試験開始前は、浮上油分を毎日回収しなければならなかったが、その作業が不要となった。また、油水分離槽の周囲がきれいになったため、清掃の回数が、1回/週から1回/6月へと減少した。試験開始前に原水計量槽中に存在していた油分もなくなった。
さらに、原水調整槽内にこびりついていた油分の層が徐々に剥がれて、排水と共に処理槽に送られた。このため、原水調整槽内の清掃が不要となった。また、配管内に溜まっていた油分の層も剥がれて減少しており、配管の詰まりもなくなった。
【0078】
週末に曝気槽を止めた後の週明けの稼働時には、曝気槽中の油分によってかなりの発泡が起こっていたが、試験開始後は発泡量が減少した。
以上より、本発明の微生物叢活性化剤を使用することによって、原水槽等を初めとする槽中及び配管内に堆積していた油分が減少し、排水が効率的に処理されたことが示された。これは、排水中の油分が分散され、好気性微生物の繁殖できる環境が整えられたものによると考えられた。
以上のような油分の処理の進行に伴って、処理槽中から油分を除去するために必要な費用を大きく低減させることができた。
【0079】
(実施例6) 食品工場4の排水処理施設におけるBOD等の変動について
食品工場4の排水処理施設において、原水槽に本発明の微生物叢活性化剤(原液)を2.5mL/分で24時間連続投入しながら(原水槽中の濃度は、0.0036%)、その前後にわたり、定期的に検水を行ってBOD、SS及びn-Hexの値を測定し、長期間の変動を検討した。
BODは、JIS K0102 21、SSはJIS K0102 14.1、また、n-Hexは環境庁告示第64号付表4に従って、それぞれ測定した。
n-Hexの測定方法は、下記の通りとした。所定量の試料を試料容器から抽出容器に移し、指示薬としてメチルオレンジ溶液数滴を加え、溶液が赤色に変わるまで塩酸(1+1)を加えてpHを4とした。試料容器を、25mlのヘキサンで2回洗い、洗液を抽出容器に合わせた。
【0080】
抽出容器中の溶液を、約10分間撹拌し、その後静置してヘキサン層を分離した。次に、抽出容器の底部にキャピラリーを挿入し、大部分の水相を分液ロートに移した。ここに25mLのヘキサンを加えて振蘯し、洗液を得た。この操作を2回繰り返した。残ったヘキサン相と少量の水とを分液ロート(容量250ml)に移し、上記のようにして得られた洗液を合わせた。
ヘキサン相に20mLの水を加えて1分間振蘯し、その後静置してヘキサン相と水相とを分離させた。水相を除去した後に、上記の操作を数回繰り返した。最後に得られたヘキサン相に、3gの無水硫酸ナトリウムを加えて振蘯し、水分を除去した。
【0081】
分液ロートの脚部を、予めヘキサンで洗って抽出物質を除去した濾紙でふき、同様に処理したろ紙を用いて、得られたヘキサン相を濾過し、ビーカーに入れた。用いたろ紙を5mLのヘキサンで2回ずつ洗い、洗液を合わせた。
80℃に温めたホットプレート上でヘキサンを揮散させた。ビーカーの外側を、まず、湿った布で拭き、次いで、乾いた布でよく拭いた後に、80℃に維持した乾燥器中に移し、30分間乾燥させた。ビーカーをデシケーター中に移し、30分間放冷した後に、質量を0.1mgの桁まで秤量した。
【0082】
ブランクを用いて同様の操作を行い、以下の式から試料中のノルマルヘキサン抽出物質濃度(Y)を求めた。
Y(mg/L)=(a−b)×(1,000/試料量(mL))
式中、a及びbは、以下の通りである。
a 試料を入れたビーカーの質量の試験前後の差(mg)
b ブランクのビーカーの質量の試験前後の差(mg)
結果を下記表5及び図13に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
試験開始前のBODの平均は、649.8±308.3(mg/mL)だったが、試験開始後は、498.7±206.6(mg/L)と約23%低下した。SSは低下傾向が見られた。n-Hexは、74.9±27.3(mg/L)から、29.6±25.6(mg/L)へと、約60%低下した。
本発明の微生物叢活性化剤の添加を開始した後に、SS及びBODの測定値が上昇し、1ヶ月ほど比較的高い値で推移し、その後低下した。この原因は、本発明の組成物を使用する前に、処理槽や配管内に堆積していた油分が次第に剥離して排水に混入したためと考えられた。
【0085】
また、混入した油分は、n-Hex濃度が本発明の微生物叢活性化剤の使用後に約80%低下していることから、活性化された微生物によって速やかに分解されたものと考えられた。
以上より、本発明の組成物を使用することによって、排水中の油分が順調に分解されて減少すること、また、排水中の油分は活性化された微生物叢によって、速やかに分解されることが示された。
【0086】
(実施例7) 活性汚泥膜分離装置を用いた食品工場5の排水処理施設における汚泥脱水量等の変化について
食品工場5の排水処理施設における汚泥脱水量(m3/日)、No. 5Cの濾紙を用いた時の活性汚泥の濾過速度(mL/5分)及び全蒸発残留物(%)を定期的に測定し、変動を観察した。結果を図14、15に示す。
【0087】
汚泥脱水量(m3/日)は、図14(A)に示すように、本発明の微生物叢活性化剤の使用開始から35日までは、平均して50m3/日という高めの値で推移したがその後低下し、60日目以降は30〜40m3/日と、20〜40%低下した。それにもかかわらず、汚泥の濃度は上昇することなく、ほぼ一定に保たれた(図15(A)参照)。
使用開始から35日までが高い値で推移したのは、本発明の微生物叢活性化剤によって、原水槽をはじめとする処理槽及び配管内に堆積していた油分が剥離したためと考えられた。
【0088】
No.5の濾紙による濾過速度(以下、「5C濾過」ということがある。)は、図14(B)に示すように、使用開始直後は20mL前後で数日間推移したがその後上昇し、ほぼ30mL/5分前後となった。これによって、膜に対する閉塞要因が減少していることが確認された。また、臭気も、使用開始後60日で大きく減少し、異臭を感じなくなった(図15(A)参照)。加圧浮上フロスの脱水量は、図15(B)に示すように、使用開始直後から劇的に減少し、その後もほぼゼロであった。
【0089】
また、使用開始前の活性汚泥中の微生物状態を図15(C)及び(D)に示す。使用前は、原性動物や多細胞性の微生物が少なく、活性汚泥のフロックの固液の界面が不明瞭で凝集性も悪かった。余剰汚泥の発生量も非常に多かった。
これに対し、使用開始後8カ月では、フロックの凝集性が良くなり、固液の界面が明瞭となった。活性汚泥の沈降性が改良されたことから、余剰汚泥の発生量も大幅に減少した。
【0090】
(実施例8)食品工場排水水中の油脂分に対する処理作用
(1)使用した処理剤等
食品工場排水(流入水の油脂分=215mg/L)に下記表6に示す処理剤を添加し、以下に示すように処理を行った。測定項目及び試験法は、下記表7に示す通りとした。
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
(2)実験装置
本実施例で使用した実験装置50は、活性汚泥を使用する半回分式装置である。概要図を図16に示した。
この装置は、原水槽RWTと、各系に原水を供給するためのヘッドタンクHDTと、曝気槽装置を備える反応槽RETi(i=1〜4)とを備えるようにした。そして、原水槽中の原水はポンプ41でヘッドタンクに送られ、さらに、ポンプ42i(i=1〜4)によって、各反応槽RETi(i=1〜4)に供給される構成とした。各系をRESj(j=1〜4)とした。
【0094】
1系を、薬剤を使用しない対照系(RES1)とした。2系〜4系は薬剤の効果を検討する系(RES2〜RES4)とし、それぞれ、薬剤供給槽ATA、ATB及びATCを備える構成とした。反応槽RET1には、ポンプ431によって空気が供給される。他の反応槽でも同様である。
2系では、薬剤供給槽ATAから、ポンプ451によって、薬剤A(本発明例7の組成物)を反応槽中へ供給し、3系では、薬剤B(TDS-80)、4系では薬剤C(DAPE-0220)を、それぞれ各反応槽に供給した。
【0095】
原水槽RWTは、固形分や油脂分の凝集を防ぐために、撹拌しながら35℃に保持した。また、ヘッドタンクHDTの高さを一定とし、原水槽RWTの水位によらず各系へ、常時均等量の排水を提供するようにした。
反応槽RET1〜RET4に上記の原水と各処理剤とを添加して、実験開始後12週間経過時点までは6時間曝気した後に汚泥を2時間沈降分離させ、沈降後の上澄みを、ポンプ44i(i=1〜4)で、3000mL引き抜いた。この期間の界面活性剤の投入量は、各系列とも原水で希釈された後の界面活性剤濃度として0.33mg/Lである。対照系である1系には界面活性剤は添加していない。
【0096】
実験開始後12週間経過後から19週間経過時点までは、6時間曝気した後に汚泥を2時間沈降分離させ、沈降後の上澄みを、ポンプ44i(i=1〜4)で2,000mL引き抜いた。この期間の界面活性剤の投入量は、各系列とも原水で希釈された後の界面活性剤濃度として0.33mg/Lであり、対照系である1系には界面活性剤は添加していない。
実験開始後19週経過後は、6時間曝気した後に汚泥を2時間沈降分離し、沈降後の上澄みを、ポンプ44i(i=1〜4)で、2000mL引き抜いた。この期間の界面活性剤の投入量は、各系列とも原水で希釈された後の界面活性剤濃度として1.0mg/Lであり、対照系である1系には界面活性剤は添加していない。上記の実験において反応タンクの有効容積は6Lであった。測定結果を、下記表8に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
上記表8に示されるように、3系では、n-Hex濃度が高く、汚泥中の油脂の含有量が低いという結果であった。このことは、排水中の油脂が分散されたものの、付着しているだけで汚泥中にうまく取り込まれておらず、分散された油脂が分解されていないことを意味する。また、4系では、n-Hexの排水中濃度が低いが、汚泥中の含有量が多く、油脂の大部分が汚泥に吸着されており、微生物によって分解されているのではないことが示された。このことは、4系の汚泥が、粒状汚泥であったことによっても裏付けられた。このため、4系の場合には、油脂の除去のために、汚泥を積極的に引き抜くことは、油脂以外の有機汚濁物質の分解能の低下と汚泥発生量の増大という問題が生じることが示された。
【0099】
これに対し、2系では、n-Hex濃度及び活性汚泥中の油脂含有量が低く、汚泥の発生量も少なくなっていた。このため、2系では、排水中の油脂分がよく分散され、そして、分散された油脂は、単に汚泥に吸着されているのではなく、微生物によって分解されていることが示された。それにもかかわらず、微生物自体の増加は見られなかった。
さらに、2系の汚泥の発生量(1日当たり)は、対照と比較して、約15%少なくなっていた。このことは、上述の微生物による分解が起こっていることの効果であり、汚泥の引抜量を減少させることができる。そして、処理効率を高く維持できるために、余剰汚泥の処理に要するコストを低減させることができる。
【0100】
(3)処理水のSVIの経日変化
界面活性剤の種類と添加量に応じて、上記処理期間中の反応タンク内の汚泥容量指標(SVI)がどのように変動するかについて検討した。結果を図17に示す。
汚泥容量指標(SVI)は、下記の式(I)で求めた。
SVI=SV×10,000/MLSS・・・(I)
ここで、SVは活性汚泥沈殿率をいい、MLSSは、混合液中の浮遊物質(SS)をいう。曝気槽の中の活性汚泥浮遊物(mg/L)の事を意味する。SVIは、1gの汚泥が占める容積をmLで示したものであるから、高いSVI値は、凝集性、沈降性の悪い活性汚泥であるということになる。
【0101】
試験期間全体にわたって原水の反応タンク内滞留時間は24時間程度であるが、試験開始〜19週目までは、図18に見られるように、原水である食品工場排水の濃度は全体に高めで、かつ、濃度変動が大きかった。この期間の最大のBOD容積負荷は、5.85kg/m3/日と、下水道設計指針に記載されている最大値の7倍強に達していた。
一方、19週目以降は、食品工場排水の濃度は全体に低めで、かつ、濃度変動が小さかった。この期間の最大のBOD容積負荷は、1.42kg/m3/日と、下水道設計指針に記載されている最大値の2倍弱であった。
【0102】
図17に示されるように、4系を除くすべての系列は7週目から13週目に高いSVI値を示したが、これは、上述のように、原水の濃度変動が大きく、生物相がそれに応じて常に遷移していたことが原因と考えられた。この期間において4系のみ、小さいSVI値を示したが、これは、4系の汚泥が直径0.5〜1mm程度の粒状となったことに起因するものである。表8に示されるように、4系の汚泥中の油脂含有量が大きいため、4系では生物処理は進んでいないものと考えられた。
【0103】
一方で、19週目以降では、2系のSVIは50〜150の間という低い値となり、汚泥の沈降性は維持された。これに対し、他の系ではSVIは高い値を示し、汚泥の沈降性が低下していることが示された。この原因は、流入水の濃度が比較的低く、濃度変動も小さかったことと、原水で希釈された段階での界面活性剤の投入濃度を1.0mg/Lまで増大させた効果が出ているものと考えられた。
以上より、適正なBOD負荷の範囲において、適正な濃度で本発明の界面活性剤を投入することによって、汚泥沈降性改善効果が得られることが示された。
【0104】
(実施例9) 含油排水処理の効率化の検討
試験開始後の原水(工場排水)のBODの変化をJIS K0102 21に従って測定して調べたところ、図18に示すような結果となり、変動幅が10倍以上と大きいことが明らかになった。こうしたBODの変動の影響を除くために、以下の実施例では、人工排水を調製し、これを用いて実験を行った。
(1)人工排水の調製及び使用した処理剤
人工排水の組成は、下記表9の通りとした(水1000mLに対して添加した量)。上記表8に示す通りの4つの系を作製し、排水処理の効率化を検討した。
【0105】
【表9】
【0106】
(2)GT(大学内食堂排水出口グリーストラップ)流入水を含む人工排水中の油脂分に対する処理作用
GT流入水(GT流入水の油脂分=7mg/L、実際の流入水油脂分濃度は表9のナタネ油を含むため1007mg/L)を含む人工排水を用いて、上記の条件に従って処理を行い、以下の項目についての測定を行った。測定結果を、下記表10及び図19に示す。
試験開始後10日目の各系の排水の性状を肉眼で観察し、どのような汚泥(スカム)が発生するかを検討した。結果を図20に示す。本発明の微生物叢活性化剤を添加した2系以外では、油分含率の高いスカムが発生していた。このことは、排水中の油分は分解されておらず、単に分離されて排水表面に浮いていることを示し、これによって、スカム(汚泥)の処理に費用がかかることが明らかになった。
【0107】
【表10】
【0108】
ここで、S-BODは溶解性BODの略であり、孔径1μmのフィルタでろ過後に測定したBOD、すなわち、固形物を除いたBODを意味する。
油含有量の高い人工排水中では、3系及び4系の汚泥中の油脂含有量が多かったが、S-BOD濃度は低く、溶存酸素濃度は高かった。このことは、油脂分が存在するために、微生物が十分に活動できていないことを意味する。このため、微生物叢は油脂を取り込んではいるものの分解していないことが示された。また、4系では汚泥の発生量が増加していた。
【0109】
これに対し、2系では、汚泥中の油脂含有率及び溶存酸素濃度が低かった。汚泥中の油脂含有率が低いことは、油分が良く分散され、汚泥中の微生物によって速やかに分解されていることを示す。また、溶存酸素濃度が低いことは、微生物が活性化されて活発に活動していることを示す。また、汚泥発生量は少なかった。
また、S-BODとn-Hexとが高くなっていたが、これは、油脂分がよく分散され、これを微生物が速やかに分解していることを意味するとともに、活性化された微生物が油脂以外の有機物も速やかに分解していることを示唆している。そして、油脂分を取り込んではいるものの、取り込みきれない分が残存しているために、S-BODが高くなっており、結果として、油の分散と微生物による分散された油の処理がバランスしていない状態となっていることに起因するものと考えられた。
以上より、本発明の微生物叢活性化剤を添加すると、活性汚泥中の油脂含有率が低くなり、汚泥発生量も減少し、また、溶存酸素濃度が低くなるというデータが得られた。このため、本発明の微生物叢活性化剤は、排水中の油分を微生物が利用しやすい大きさに分散させることが示された。
【0110】
(実施例10) 汚れサンプルの洗浄試験
(1)材料及び方法
スキンレス用開きに、カッターナイフで傷をつけ、汚れサンプルとした。
包丁傷がついた専用まな板に、汚れサンプルをよく擦り込み、ペーパータオルで汚れが見えなくなるまで拭き取った。3分間乾燥させ、洗浄前の試料とした。
次いで、市販の業務用塩素系アルカリ洗剤、試料1の組成物を0.01%含む洗剤、又は0.01%含む洗剤を等量使用して、汚れサンプルを擦り込んだまな板をブラシでよく洗い、流水で、洗剤又は本発明例7の組成物が残らなくなるまでよく流した。3分間放置し、洗浄後の試料とした。
すべての試料について、ルミテスター((株)キッコーマン製)で拭き取り試験を行った。
【0111】
(2)結果
結果を表11に示す。洗浄前を100としたときの洗浄後の汚れの減少率は、水の場合が82.5%であったのに対し、塩素系アルカリ洗剤では95.4%であった。
本発明の微生物叢活性化剤では、塩素系アルカリ洗剤よりも汚れがよく落ちており、減少率は、1%濃度で使用したときに98.0%、0.1%のときに97.5%と、殆ど差がなかった。
【0112】
【表11】
【0113】
以上より、本発明の組成物は、塩素系アルカリ洗剤よりも洗浄力が強いことが明らかになった。そして、汚れの残存量で比較すると、本発明の微生物叢活性化剤は、塩素系アルカリ洗剤の2〜3倍、洗浄力が強いことが示された。
以上より、本発明の組成物は、油汚れを分散させる能力が高いことが示された。
【0114】
(実施例11) 食品工場3における排水浄化
原水調整槽に本発明の微生物叢活性化剤を0.0006%添加して調整し、凝集剤を添加せずに加圧浮上装置を通過させた後の排水1Lを、実施例3と同様に採取した。下記表12に示す項目を、JIS-K0102に従って測定した。原水調整槽における汚水の滞留時間を24時間、曝気槽でのDOを1〜3mg/L、MLSSを5,500〜6,500mg/Lとした。
【0115】
【表12】
【0116】
上記表12に示すように、使用前に較べて、使用後では加圧浮装置に流入するCODが減少しており、調整槽においてすでに負荷が低減したことが示された。
また、加圧浮上装置通過後では、ほとんどCODが変わっておらず、加圧浮上装置での負荷除去率が下がっていることが示された。その理由は、微細化された油脂等が加圧浮上装置を通過することによるものであり、PAC、アニオン、カチオンの使用量が大幅に減っていることから裏付けられた。
【0117】
一方、放流水のCOD(mg/L)を見ると、4月平均で3.4、6、7月平均で3.1、BOD (mg/L)は、4月平均で3.1、6、7月平均で2.3、n-Hex (mg/L)は、4月平均で1.8、6、7月平均で1.4とほとんど水質に変化は見られなかった。さらに、曝気槽に原生動物が多数発生し、内性呼吸により汚泥の発生量が大きく減少した。したがって、排水処理のコストも大幅に削減されることが示された。
以上より、本発明例の微生物叢活性化剤が、高い微生物叢を活性化する作用を有することが示された。
【0118】
(実施例12)膜分離活性汚泥装置に対する本発明の微生物叢活性化剤の効果
膜分離装置を用いて排水処理に対する本発明の微生物叢活性化剤の効果を試験した。
(1)装置等
図21に示す構成の膜分離活性汚泥装置60(反応タンク容積=4.5L)を2系列準備した。ここで使用した膜ユニット65の膜は、PVDF製の中空糸形状のものである。また、圧力計67は、大気圧下での値が0を指すものを使用した。このため、ポンプ62、64の吸引圧分のマイナスの値が示されることから、圧力計67の読み取り値の絶対値を膜間差圧とした。
【0119】
反応タンク61内への酸素の供給と膜の表面洗浄とを目的として、膜直下からディフューザー66を介してポンプ63によりエアレーションを行った。吹き込み空気量は、いずれも5L/分とした。
対照には薬剤を投入せず、本発明例には、本発明の微生物叢活性化剤を3.3mg/Lで投入した。反応タンク内の水温は、20℃〜23℃とした。
【0120】
(2)活性汚泥等
食品工場排水処理設備から入手した活性汚泥を、下記表13に示す組成の人工排水を用いて約1ヶ月馴養し、これを種汚泥(原水に最初に投入する活性汚泥を、「種汚泥」という。)として用いた。原水1Lあたり0.5gのナタネ油を加えたもの人工排水として試験に使用した。
人工排水油脂分濃度は、添加油脂濃度500mg/Lと、人工排水の元々の油脂分濃度の7mg/Lとの合計である、507mg/Lであった。
【0121】
【表13】
*:学内食堂排水処理用のグリーストラップ流入水
【0122】
(3)試験方法
まず、この装置に純水を流し、圧力と透過流量の関係が等しく、2系列の装置性能が同等であることを確認した。
次に、反応タンク61に上記のように調整した種汚泥を4.5L入れ、原水投入−24時間エアレーション−30分間処理水の引き抜きを繰り返すサイクルで運転を行った。1回当たりの引き抜き量及び人工廃水投入量は、それぞれ1.5Lとした。
引き抜き開始10分後の処理水量(膜透過水量)と圧力とを測定した。圧力は図示した箇所の圧力計67の値を読み取り、膜間差圧を求めた。膜の外側にかかる圧力は 大気圧+水深圧であるが、膜水深が浅いため、ほぼ大気圧とみなせることから、圧力計の読み取り値をそのまま記録した。BODは、一般希釈法(下水試験法)で測定した。
【0123】
結果を図22に示す。図22の横軸は運転開始後の経過日数、縦軸は透過流速を膜間差圧で除した値である。
本発明例では、流速/圧力の値が、対照系の2倍から4倍となっており、本発明の微生物叢活性化剤の添加の効果が示された。また、試験終了後に、対照として使用した膜ユニットと本発明例で使用した膜ユニットとを、それぞれ反応タンクから引き上げ、どのような状態となっているかを観察した。その結果を図23に示す。
対照で使用した膜ユニット65に付着した油分含有汚泥の量と、本発明例の膜ユニット65に付着した油分含有汚泥の量には大きな差があり、本発明例の膜ユニットの方がはるかに少なかった。
【0124】
以上から、本発明の微生物叢活性化剤を使用すると、低い圧力で高い透過速度/流量が得られることが示された。このことは、実施例1〜11で証明されたように、排水中の油分の分解が速やかに行われるため、汚泥が油でベトベトしていないことに起因する。
このように、高い透過流速/膜間差圧が得られるため、膜分離活性汚泥の消費エネルギーの大部分を占める吸引ポンプを稼働させるエネルギーを減少させることができるばかりでなく、小型の装置を用いて同等の処理水量を得ることができる。すなわち、大型の施設を建設する必要がなく、施設の建設面でも利点が多い。
膜分離装置では、通常のエアレーションによる膜表面の洗浄に加えて、定期的な取り外し洗浄や、薬剤を用いた洗浄が必要となる。しかし、高い透過流速/膜間差圧が得られる場合には、これらの定期的洗浄のサイクルを長くする(洗浄頻度を下げる)ことができるため、洗浄コストを削減することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、排水処理等の分野で有用である。
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