特許第5854510号(P5854510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854510
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】積層型固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20160120BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20160120BHJP
【FI】
   H01G9/24 B
   H01G13/00 307F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-187633(P2012-187633)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-45129(P2014-45129A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福士 和彦
(72)【発明者】
【氏名】武士沢 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
(72)【発明者】
【氏名】石塚 英俊
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−087893(JP,A)
【文献】 特開2011−077260(JP,A)
【文献】 特開2011−223042(JP,A)
【文献】 特開2012−114438(JP,A)
【文献】 特開2006−093371(JP,A)
【文献】 特開2009−130338(JP,A)
【文献】 特開2011−077259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型固体電解コンデンサを製造するための方法であって、当該方法が、下記工程A〜C:
工程A:複数の電極箔が積層されてなる積層素子の陽極側部分に電気接続用金属箔を配置する工程、
工程B:前記電気接続用金属箔が配置された側から対向側へ向かってグサリ針を突き刺して貫通させ、当該金属箔の一部を突き刺し側から対向側に露出させる工程、および、
工程C:前記工程Bにおいて形成した貫通孔の位置にリードフレームを配置させて抵抗溶接を行い、前記電気接続用金属箔を溶融させることによって、各電極箔を前記リードフレームと接続する工程
を含むことを特徴とする積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて積層素子の陰極側部分にも電気接続用金属箔を配置することを特徴とする請求項1記載の積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記工程Cにおいて、前記電気接続用金属箔が露出した側に前記リードフレームを配置させて抵抗溶接を行うことを特徴とする請求項1または2記載の積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記工程Aにおける積層素子が、弁作用を有する金属からなる金属箔の表面に誘電体酸化皮膜層、固体電解質層、カーボン層が順次形成された陽極箔と、表面にカーボン層またはチタン層もしくはチタン化合物層が設けられた陰極箔とを順に積層することにより形成されたものであり、前記積層素子の一端側に前記陽極箔の引き出し部が束ねられた積層陽極部を形成し、他端側に前記陰極箔の引き出し部が束ねられた積層陰極部を形成した後、前記積層陽極部および積層陰極部のそれぞれの表面または裏面に電気接続用金属箔を配置すること、および、前記工程Cにおいて、前記電気接続用金属箔の対向側露出部分と接するようにして前記積層陽極部側に陽極リードフレームを配置し、前記積層陰極部側に陰極リードフレームを配置させた後、抵抗溶接を行い、前記電気接続用金属箔を溶融させることによって、前記積層陽極部における各陽極箔を前記陽極リードフレームと接続し、前記積層陰極部における各陰極箔を前記陰極リードフレームと接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記電気接続用金属箔の融点が、前記電極箔に用いられている金属の融点と同じであるか、あるいは、より高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記電気接続用金属箔の材質が、アルミニウム、銅、鉄およびステンレス鋼からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層型固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に接続強度が充分で、かつ接続抵抗の低い安定な接続がなされた積層型固体電解コンデンサを製造するための方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型固体電解コンデンサでは、各コンデンサ素子の陽極部分を抵抗溶接により一体化する際に、各陽極部の表面にある抵抗値の高い誘電体酸化皮膜が悪影響を及ぼして溶接性を低下させるという課題を有している。
特に、複数の陽極箔が積層された構造のコンデンサにおいては、陽極箔の積層枚数が増えるとともに電気を極めて通し難い誘電体酸化皮膜が陽極箔の上下に配置された構造をとるため、通常の抵抗溶接では無通電となり易く、このために、電圧や電流をより高く設定しなければならない。そして、これに伴い陽極箔が飛散したり、火花が発生し易く外観上の問題や箔切れによる容量減少や漏れ電流の増加などの新たな問題が発生し有効な手段とは言い難いものである。
また、陽極部ほど大きな問題とはならないものの、陰極部についても、積層される陰極箔として、アルミニウム箔を化成処理したものや、エッチング処理されたものが主流であるために、抵抗溶接のみでは溶接性が良くないという問題点がある。また、陰極の取り出し抵抗を小さくすることを目的として、アルミニウム箔の表面に薄いカーボン層を設けたカーボン箔を使用することがあるが、これも抵抗溶接では接続しにくいという問題がある。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、複数枚積層する陽極箔(素子)の一枚一枚に予め貫通孔を設け、この貫通孔を介して複数の陽極部を陽極コム端子に抵抗溶接により接続をしたり、貫通孔内にリベットを挿通し、加締めることによりまたは導電性接着剤を充填することにより各陽極部と陽極コム端子の接合を行うことが開示されている。しかし、この特許文献1記載の方法では、それぞれに設けられた貫通孔同士が一直線上に整列できなかったり貫通孔の大きさに違いが発生した場合、各貫通孔同士の電気接続抵抗が高くなり抵抗溶接の安定性が損なわれたり、リベットや導電性接着剤を用いた場合は貫通孔と各材料の界面に接触抵抗が発生しコンデンサのESR(等価直列抵抗)特性に悪影響を及ぼす可能性が極めて高いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−243257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来における課題を解決するもので、各電極箔の溶接部分とリードフレームとの接合を確実に、かつ簡易に行うことが可能な積層型固体電解コンデンサの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、下記工程A〜C:
工程A:複数の電極箔が積層されてなる積層素子の陽極側部分に電気接続用金属箔を配置する工程、
工程B:前記電気接続用金属箔が配置された側から対向側へ向かってグサリ針を突き刺して貫通させ、当該金属箔の一部を突き刺し側から対向側に露出させる工程、および、
工程C:前記工程Bにおいて形成した貫通孔の位置にリードフレームを配置させて抵抗溶接を行い、前記電気接続用金属箔を溶融させることによって、各電極箔を前記リードフレームと接続する工程
を含むことを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法では、積層された電極箔(陽極箔)上に載置された電気接続用金属箔が、電極箔の絶縁皮膜(誘電体酸化皮膜層)およびエッチング層等の高抵抗層を貫通して対向側に露出することにより抵抗溶接が安定的になるとともに、抵抗溶接時の発熱により電気接続用金属箔とリードフレームが溶着するのと同時に、積層された各電極箔の地金金属と溶解し、接続強度が十分でかつ接続抵抗の低い安定な接続が可能となるという利点がある。即ち、本発明の製法の場合には、抵抗溶接が困難な電極箔をリードフレームと直接、抵抗溶接させる必要がなく、積層された電極箔を貫通した電気接続用金属箔を介して各電極箔の地金金属とリードフレームの電気的接続がなされるために、陽極箔の絶縁体層およびエッチング層が抵抗溶接を行う際の妨げにならない。
また、本発明の製法では、各電極箔の溶接部分(電極引き出し部)を束ねた状態の積層部分にグサリ針を刺すため、技術的に単純でかつ確実に各電極箔の溶接部分とリードフレームとを溶接することが可能であり、従来法のような穴の位置ズレが生じたり、穴の大きさに違いが生じたりすることはない。
【0008】
また、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、前記工程Aにおいて積層素子の陰極側部分にも電気接続用金属箔を配置することを特徴とするものでもある。
このように、陰極側部分にも電気接続用金属箔を配置し、上記工程B、Cを行う本発明の製造方法によれば、陰極部についても接続強度が充分で、かつ、接続抵抗の低い安定な接続を実現することができる。
【0009】
また、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、前記工程Cにおいて、前記電気接続用金属箔が露出した側に前記リードフレームを配置させて抵抗溶接を行うことを特徴とするものでもある。本発明では、リードフレームを、電気接続用金属箔と同じ側(グサリ針の突き刺し側)に配置して抵抗溶接を行うことも可能であるが、電気接続用金属箔が配置されるのと反対側(突き刺し加工により電気接続用金属箔が露出した側)に配置して抵抗溶接を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、前記工程Aにおける積層素子が、弁作用を有する金属からなる金属箔の表面に誘電体酸化皮膜層、固体電解質層、カーボン層が順次形成された陽極箔と、表面にカーボン層またはチタン層もしくはチタン化合物層が設けられた陰極箔とを順に積層することにより形成されたものであり、前記積層素子の一端側に前記陽極箔の引き出し部が束ねられた積層陽極部を形成し、他端側に前記陰極箔の引き出し部が束ねられた積層陰極部を形成した後、前記積層陽極部および積層陰極部のそれぞれの表面または裏面に電気接続用金属箔を配置すること、および、前記工程Cにおいて、前記電気接続用金属箔の対向側露出部分と接するようにして前記積層陽極部側に陽極リードフレームを配置し、前記積層陰極部側に陰極リードフレームを配置させた後、抵抗溶接を行い、前記電気接続用金属箔を溶融させることによって、前記積層陽極部における各陽極箔を前記陽極リードフレームと接続し、前記積層陰極部における各陰極箔を前記陰極リードフレームと接続することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、前記電気接続用金属箔の融点が、前記電極箔に用いられている金属の融点と同じであるか、あるいは、より高いことを特徴とするものでもある。
【0012】
さらに、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法は、前記電気接続用金属箔の材質が、アルミニウム、銅、鉄およびステンレス鋼からなる群より選ばれたものであることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、簡易な工程で、接続強度が充分で、かつ、接続抵抗の低い安定な接続がなされた積層型固体電解コンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)〜(f)は、突き刺し加工により電気接続用金属箔を露出させた側にリードフレームを配置して抵抗溶接を行う、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法の好ましい一例における手順(製造工程)を示す図である。
図2】(a)〜(f)は、電気接続用金属箔の突き刺し側にリードフレームを配置して抵抗溶接を行う、図1とは異なる本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法の一例における手順(製造工程)を示す図である。
図3】(a)および(b)は、図1および図2とは異なる横長方形状のグサリ針7を用いて電気接続用金属箔6を突き刺すことにより、積層された電極箔(陽極箔または陰極箔)を、リードフレーム9(陽極リードフレームまたは陰極リードフレーム)と電気的に接続する際の加工例を示す図であり、グサリ針7による突き刺し加工を行う前の状態と、突き刺し加工を行った後の、点線位置における電気接続用金属箔6の変形状態(縦断面概略図)が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の製造方法は、1枚の金属箔の片側が陽極で、他の側が陰極であるものを積層してなる積層素子の陽極部がリードフレームと電気的に接続された構造の積層型固体電解コンデンサの製造に適用できるだけでなく、陽極箔と陰極箔を順次積層してなる積層素子の陽極部及び陰極部がそれぞれ陽極リードフレームおよび陰極リードフレームに電気的に接続された構造の積層型固体電解コンデンサの製造にも適用可能であり、以下、陽極箔と陰極箔とが順次積層されてなる積層素子について、陽極部と陰極部それぞれに本発明の方法による抵抗溶接を行う場合の、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法における各工程を図面を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1の(a)〜(f)は、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法の好ましい一例における手順(製造工程)を示す図である。
まず最初の工程Aにおいては、弁作用を有する金属からなる金属箔の表面に誘電体酸化皮膜層、固体電解質層、カーボン層が順次形成された陽極箔1と、表面にカーボン層が設けられた陰極箔2とを順に積層することにより積層素子3を形成し、この積層素子3の一端側(図面の左側)に、複数の陽極箔の引き出し部を束ねて積層陽極部4を形成し、他端側(図面の右側)に、複数の陰極箔の引き出し部を束ねて積層陰極部5を形成した後、積層陽極部4および積層陰極部5のそれぞれの表面または裏面の一方に(図面では上面側)、電気接続用金属箔6を配置する(図1(a))。
【0017】
この際、陽極箔1としては、弁作用金属であるアルミニウム箔の全面に誘電体酸化皮膜層が形成されたものが使用され、この誘電体酸化皮膜層の上には、陽極箔から容量を取り出すために設ける導電性高分子に代表される固体電解質層および固体電解質層間の接触抵抗を小さくするためのカーボン層が設けられている(引き出し部を除く)。一方、陰極箔2としては、一般的なコンデンサ用陰極箔の表面にカーボン層またはチタン層もしくはチタン化合物層等が形成されたものが使用される。尚、各陽極箔1上の固体電解質層部分と溶接部分との境界部分(各陽極箔1の引き出し部側)には、漏れ電流の増大を防止する目的で、絶縁性樹脂層8が設けられており、これは、箔間のスペーサーとしても機能する。また、積層陽極部4および積層陰極部5にそれぞれ配置される電気接続用金属箔6の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼等が好ましい。
【0018】
そして、次の工程Bにおいては、電気接続用金属箔6が配置された任意の位置で、電気接続用金属箔6が配置された側から対向側へ向かってグサリ針7を突き刺して貫通させ(図1(b))、当該金属箔6の一部が積層陽極部4および積層陰極部5を貫通して対向側に露出するようにし、その後、グサリ針7を引き抜く(図1(c))。本発明では、図1(c)に示されるようにして、複数の陽極箔1が積層されてなる積層陽極部4と、複数の陰極箔2が積層されてなる積層陰極部5のそれぞれの位置において、電気接続用金属箔6がグサリ針7の突き刺し側から対向側へ貫通した状態となるように変形することによって、貫通した側に配置されるリードフレームと、各電極箔および電気接続用金属箔との電気的接続が確実なものとなる。
尚、積層陽極部4および積層陰極部5にそれぞれ載置される電気接続用金属箔6には、2箇所以上にグサリ針7を突き刺して、2つ以上のグサリ穴を設けても良い。
【0019】
最終工程の工程Cにおいては、電気接続用金属箔6の対向側露出部分と直接、接触するようにしてリードフレーム9(陽極リードフレームおよび陰極リードフレーム)を配置させた後(図1(d))、図1(e)に示されるようにして、積層陽極部4側では、電気接続用金属箔6と積層陽極部4とリードフレーム9(陽極リードフレーム)を上下方向から挟むようにして抵抗溶接機の電極10を配置して抵抗溶接を行い、一方、積層陰極部5側では、電気接続用金属箔6と積層陰極部5とリードフレーム9(陰極リードフレーム)を上下方向から挟むようにして抵抗溶接機の電極10を配置して抵抗溶接を行う。本発明では、電気接続用金属箔6の露出部分がリードフレームと接触して通電ポイント(リードフレームとの溶接点)となり、このような状態で抵抗溶接を行うために、電気接続用金属箔6の溶融により、図1(f)に示されるような接続状態が形成され、これによって、積層陽極部4では各陽極箔がリードフレーム9と確実に電気的に接続され、積層陰極部5では各陰極箔がリードフレーム9と確実に電気的に接続される。
【0020】
本発明においては、上記の抵抗溶接を行った際に、電気接続用金属箔6が溶融すると共に、積層された各電極箔(陽極箔および陰極箔)の地金金属も溶融し、電気接続用金属箔6とリードフレーム9の接合が達成されると同時に、電気接続用金属箔6と当該金属箔と接する各電極箔の地金金属との接合も達成される。このため、本発明では、電気接続用金属箔6を構成する金属の融点が、各電極箔の地金金属の融点と同じであるか、より高いことが好ましい。各電極箔の地金金属の融点が、電気接続用金属箔6を構成する金属の融点よりはるかに高い場合には、金属同士の接点での金属溶融が起こらず、機械的接触のみとなってしまい、コンデンサとしての性能が劣る可能性があるので好ましくない。
【0021】
図2(a)〜(f)は、電気接続用金属箔の突き刺し側にリードフレームを配置して抵抗溶接を行う、本発明の積層型固体電解コンデンサの製造方法の他の一例を示す図であり、この場合にも、電気接続用金属箔6の露出部分が通電ポイントとなり、抵抗溶接を行った際、電気接続用金属箔6の溶融によって、図2(f)に示されるような接続状態が形成され、積層陽極部4および積層陰極部5において各電極箔がリードフレーム9と確実に電気的に接続される。
【0022】
尚、本発明の製法において使用されるグサリ針7の形状は、図1および図2に示したものに限定されるものではなく、例えば、図3(a)および(b)に示されるような横長方形状であっても良く、この場合には、グサリ加工により対向側へ貫通して伸びる電気接続用金属箔の長さが大きくなって、積層された電極箔(陽極箔、陰極箔)の厚みが大きい場合であっても容易に貫通し、対向側に金属箔を露出させることができ、対向側に配置されたリードフレーム9(陽極リードフレーム、陰極リードフレーム)と直接、接触して電気的に接続することが可能である。図3(a)の場合には、電気接続用金属箔6が、内側から外側方向に広がるようにして、積層された電極箔を貫通してリードフレーム9側に露出し、図3(b)の場合には、電気接続用金属箔6が、外側から内側方向に狭まるようにして、積層された電極箔を貫通してリードフレーム9側に露出する。
【0023】
本発明では、積層した電極箔をリードフレームと電気的に接続する際、電気接続用金属箔を用いた抵抗溶接以外の方法として、超音波溶接やレーザー溶接等によって接続しても良い。
以下、本発明の実施例を示して本発明を説明する。
【実施例】
【0024】
実施例:本発明の製造方法を用いた積層型固体電解コンデンサの製造例
アルミニウム箔の表面にエッチング層が設けられ、当該エッチング層の表面に酸化アルミニウムの誘電体酸化皮膜層、固体電解質層、カーボン層が順次設けられた陽極箔(幅3.3mm×長さ4.2mm×厚さ120μm、融点660℃、地金アルミニウム部)を準備し、陰極箔としては、アルミニウム箔の表面に薄いカーボン層が設けられたカーボン箔(幅3.3mm×長さ5.0mm×厚さ20μm、融点660℃、地金アルミニウム部)を準備して、図1に示す積層素子を準備した。なお、陽極箔同士の間には、絶縁性樹脂層として、図1に示される位置に、厚さ50μm×長さ0.3mm×幅3.3mmの四フッ化エチレン樹脂を設けた。また、電気接続用金属箔として、幅1.0〜1.5mm×長さ3.0mm×厚さ110μmのアルミニウム箔(融点660℃)を準備し、グサリ針としては外径が300μmのものを使用し、図1(a)〜(f)に示される手順に従って、積層陽極部と積層陰極部にそれぞれ2箇所貫通孔を設けた後、当該貫通孔の位置に銅と錫の合金からなるリードフレームを配置して抵抗溶接を行った後、リードフレームの下面部以外を樹脂モールドにて外装し、陽極箔4層/陰極箔5層の積層素子からなる積層型固体電解コンデンサを作製した。
【0025】
比較例:従来法による積層型固体電解コンデンサの製造例
一方、比較例として、上記実施例と同じ積層素子を構成する陽極箔および陰極箔の一枚一枚に予め内径300μmの貫通孔を設け、これらを位置合わせして、上記実施例と同様に積層した後、積層陽極部および積層陰極部において抵抗溶接を行い、積層型固体電解コンデンサを製造した。
【0026】
(溶接不良比較実験)
上記の実施例(本発明の製造方法)により得られた本発明品と、上記比較例(従来法)により得られた従来品について、溶接不良の有無を調べた。良品であるか不良品であるかの判断基準としては、容量が出現しないほどの接続不良である場合を「接続不良」とし、接続はしているものの、コンデンサとしての抵抗特性(ESR規格15mΩ以下)を満たさないものを「抵抗不良」とした。
その結果を以下の表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記表1の実験結果から、積層した陽極箔上および陰極箔上にそれぞれ電気接続用金属箔を載置し、グサリ針による突き刺し加工(グサリ加工)を行った後で抵抗溶接を行う本発明の製法を実施することによって、製造される積層型固体電解コンデンサの接続不良および抵抗不良を少なくすることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の製造方法を用いることで、各電極箔の溶接部分とリードフレームとの接合を確実に、かつ簡易に行うことができ、本発明の製造方法は、歩留まり良く積層型固体電解コンデンサを製造するのに非常に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 陽極箔
2 陰極箔
3 積層素子
4 積層陽極部
5 積層陰極部
6 電気接続用金属箔
7 グサリ針
8 絶縁性樹脂層
9 リードフレーム(陽極リードフレーム、陰極リードフレーム)
10 抵抗溶接機の電極
図1
図2
図3