特許第5854535号(P5854535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5854535抗体G1グリコフォーム産生のための方法
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  • 特許5854535-抗体G1グリコフォーム産生のための方法 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854535
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】抗体G1グリコフォーム産生のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/00 20060101AFI20160120BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20160120BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20160120BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20160120BHJP
   C12N 9/38 20060101ALN20160120BHJP
【FI】
   C12P21/00 Z
   !C07K16/00
   !C07K19/00
   !C12N9/10
   !C12N9/38
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-533848(P2014-533848)
(86)(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公表番号】特表2014-531215(P2014-531215A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012069394
(87)【国際公開番号】WO2013050335
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】11184011.2
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヒューラー マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ロイシュ ディトマール
【審査官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/030087(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/024743(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/001297(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/045894(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/00
C07K 1/00−19/00
C12N 1/00−9/99
C12N 15/00−90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメント、または融合ポリペプチドを産生するための方法であって、以下の工程を含む方法:
−免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメント、または融合ポリペプチドを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液をガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
−ガラクトシルトランスフェラーゼ反応産物をシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
−シアリルトランスフェラーゼ反応産物をβ-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程、
−β-1,4-ガラクトシダーゼを除去または不活性化する工程、および
−β-1,4-ガラクトシダーゼが除去または不活性化されたβ-1,4-ガラクトシダーゼ反応産物をシアリダーゼと共にインキュベートして、かつそれによって、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドを産生する工程。
【請求項2】
インキュベートする工程の間にガラクトシルトランスフェラーゼが2またはそれよりも多いアリコートで添加されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
インキュベートする工程の間にガラクトシルトランスフェラーゼが3〜6のアリコートで添加されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ガラクトシルトランスフェラーゼの最初のアリコートが0〜2時間のインキュベート時間後に添加されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートが、各々、6〜12時間のインキュベート時間後に添加されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え技術によって産生される免疫グロブリンの酵素による下流処理のための方法に向けられる。より詳細には、本発明は、酵素処理によって、アフィニティークロマトグラフィーの工程後に実質的に純粋な形で、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンを産生するための方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
真核細胞から得られるポリペプチドはグリコシル化ポリペプチドとして産生される。翻訳後の酵素的修飾として、糖鎖構造がアミノ酸骨格に接続される。
【0003】
グリコシルトランスフェラーゼは、糖タンパク質、プロテオグリカンおよび糖脂質を含むポリペプチドの糖鎖構造の協調的生合成に関与する推定250〜300の異なる細胞内膜結合型酵素の機能ファミリーとして認識されている。グリコシルトランスフェラーゼはそれらのヌクレオチド単糖類供与体特異性に基づいてグループ分けされる。例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼは活性化された単糖類供与体としてUDP-ガラクトースを用いるグリコシルトランスフェラーゼのサブセットであるのに対して、シアリルトランスフェラーゼはCMP-シアル酸を用いるものであり、フコシルトランスフェラーゼはGDP-フコースを用いるものである(Shaper, N.L., et al., J. Mamm. Gland Biol. Neopl. 3 (1998) 315-324(非特許文献1))。
【0004】
免疫グロブリンG連結オリゴ糖の構造に基づく臨床試験の方法は欧州特許第0 698 793号(特許文献1)に報告されている。欧州特許第1 878 747号(特許文献2)には、糖鎖工学による抗体が報告されている。免疫グロブリングリカンの選択的マーキングは国際公開公報第2007/071347号(特許文献3)に報告されている。国際公開公報第1997/016064号(特許文献4)では、異物移植の拒絶反応を軽減するための方法および組成物が報告されている。酵素処理、一定条件下での発現、特定の宿主細胞の使用、および血清との接触によって調製されるG0およびG2などの実質的に均質で非シアリレート化糖鎖構造を持つ抗体調製物が国際公開公報第2007/024743号(特許文献5)に報告されている。
【0005】
国際公開公報第2008/057634号(特許文献6)では、増強された抗炎症特性および減弱された細胞毒性の特性を持つポリペプチドならびに関連する方法が報告されている。タンパク分解抵抗性抗体調製物は国際公開公報第2007/024743号(特許文献5)に報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0 698 793号
【特許文献2】欧州特許第1 878 747号
【特許文献3】国際公開公報第2007/071347号
【特許文献4】国際公開公報第1997/016064号
【特許文献5】国際公開公報第2007/024743号
【特許文献6】国際公開公報第2008/057634号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shaper, N.L., et al., J. Mamm. Gland Biol. Neopl. 3 (1998) 315-324
【発明の概要】
【0008】
本明細書に報告される通りの一連の酵素的な工程により、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンは、実質的に純粋な形、即ち、90%もしくはそれよりも高い純度で、95%もしくはそれよりも高い純度で、または98%もしくはそれよりも高い純度で取得され得ることが見出されている。
【0009】
従って、本明細書では、G0、G1およびG2糖鎖構造の混合物であるグリコシル化された免疫グロブリンもしくはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメント、またはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドから出発する、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生するための方法を報告する。
【0010】
さらに、本明細書では、G0糖鎖構造を有するグリコシル化された免疫グロブリンもしくはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメント、またはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドから出発する、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生するための方法を報告する。
【0011】
さらに、本明細書では、G2糖鎖構造を有するグリコシル化された免疫グロブリンもしくはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメント、またはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドから出発する、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたはグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生するための方法を報告する。
【0012】
従って、本明細書では、実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンフラグメント、または実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを産生するための方法であって、以下の工程を以下の順序で含む方法を報告する:
− G0、G1およびG2糖鎖構造の混合物である免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液を提供する工程、
− 前記免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントをガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをβ-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼを除去または不活性化する工程、および
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリダーゼと共にインキュベートして、それによって、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくはG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンフラグメント、またはG1糖鎖構造を持つグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生する工程。
【0013】
従って、本明細書では、実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンフラグメント、または実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを産生するための方法であって、以下の工程を以下の順序で含む方法を報告する:
− G0糖鎖構造を有する免疫グロブリン、もしくはG0糖鎖構造を有する免疫グロブリンフラグメント、またはG0糖鎖構造を有する融合ポリペプチドを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液を提供する工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをβ-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼを除去または不活性化する工程、および
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリダーゼと共にインキュベートして、それによって、G1糖鎖構造を伴う免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生する工程。
【0014】
従って、本明細書では、実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンフラグメント、または実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つグリコシル化された免疫グロブリンフラグメントを含む融合ポリペプチドを産生するための方法であって、以下の工程を以下の順序で含む方法を報告する:
− G2糖鎖構造を有する免疫グロブリン、もしくはG2糖鎖構造を有する免疫グロブリンフラグメント、またはG2糖鎖構造を有する融合ポリペプチドを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液を提供する工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをβ-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼまたはラクターゼを除去または不活性化する工程、および
− 前記免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドをシアリダーゼと共にインキュベートして、それによって、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドを実質的に純粋な形で産生する工程。
【0015】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは1〜10のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは2〜7のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは3〜6のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは4〜6のアリコートで添加される。
【0016】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程は約30時間〜約60時間である。
【0017】
一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは0〜2時間インキュベートすることの後に添加される。一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートはインキュベートする工程の開始時に添加される。
【0018】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の5〜20時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の6〜12時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の8〜10時間後に添加される。
【0019】
一つの態様において、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドはシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程の前には精製されない。一つの態様において、シアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程はガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程の粗な反応混合物のものである。
【0020】
一つの態様において、除去する工程はカラムクロマトグラフィーによる。一つの態様において、カラムクロマトグラフィーはプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィーである。
【0021】
一つの態様において、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドはβ-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程の前に精製される。
【0022】
一つの態様において、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは融合ポリペプチドはシアリダーゼと共にインキュベートする工程の前に精製される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本明細書では、以下の一連の酵素による工程を用いて、
i)ガラクトシル化
ii)シアリデーション(sialidation)、
iii)脱ガラクトシル化、および
iv)脱シアリデーション(desialidation)
G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンを実質的に純粋な形で、即ち、90%もしくはそれよりも高い純度で、95%もしくはそれよりも高い純度で、または98%もしくはそれよりも高い純度で取得できることを報告する。
【0024】
特に、ガラクトシル化は最長60時間という長い時間をかけて実施されるべきであり、これによって酵素のガラクトシルトランスフェラーゼはこの期間中に複数回添加される。
【0025】
(表1)抗HER2抗体を処理するために用いられる異なるアリコート数の比較
【0026】
(表2)抗IL-1R抗体を処理するために用いられる異なるアリコート数の比較
【0027】
このように、一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは1〜10のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは2〜7のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは3、または4、または5、または6のアリコートで添加される。
【0028】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程は約30時間〜約60時間である。
【0029】
一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは0〜2時間インキュベートすることの後に添加される。一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートはインキュベートする工程の開始時に添加される。
【0030】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の5〜20時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の6〜12時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の8〜10時間後に添加される。
【0031】
本明細書において、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを実質的に純粋な形で産生するための方法であって、以下の工程を含む方法を報告する:
− 免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液を提供する工程、
− 前記アフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液をガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− ガラクトシルトランスフェラーゼ反応産物をシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− シアリルトランスフェラーゼ反応産物をβ-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼを除去または不活性化する工程、および
− β-1,4-ガラクトシダーゼが除去または不活性化されているβ-1,4-ガラクトシダーゼ反応産物をシアリダーゼと共にインキュベートする工程。
【0032】
β-1,4-ガラクトシダーゼまたはその活性は、それぞれ、G1糖鎖構造を得るためにシアリダーゼの添加前に除去/不活性化されなければならない。触媒である活性なβ-1,4-ガラクトシダーゼが存在すると、中間反応産物がG0糖鎖構造に変換される。
【0033】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼはβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼはウシ乳汁由来のβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。
【0034】
ヒト免疫グロブリンは、主として、重鎖CH2ドメインの約297位のアスパラギン残基(Asn297)またはある程度フコシル化された二分岐型複合オリゴ糖のFAB領域においてグリコシル化される(Kabatに基づく免疫グロブリンアミノ酸残基ナンバリング、下記 参照)。二分岐型糖鎖構造は各腕の最大2個の連続したガラクトース(Gal)残基で終わることがある。この腕は、中心のマンノース残基へのグリコシド結合に応じて、(1,6)および(1,3)と表される。G0と表される糖鎖構造はガラクトース残基を含まない。G1と表される糖鎖構造は1本の腕に一つまたは複数のガラクトース残基を含有する。G2と表される糖鎖構造は各腕に一つまたは複数のガラクトース残基を含有する(Raju, T.S., Bioprocess Int. 1 (2003) 44-53)。ヒト重鎖定常領域は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)、およびBrueggemann, M., et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361;Love, T.W., et al., Methods Enzymol. 178 (1989) 515-527に詳細に報告されている。免疫グロブリンFc部分のCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F.H., Glycoconjugate J. 14 (1997)201-207に記載されている。
【0035】
「免疫グロブリン」という用語は、ヒト免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、キメラ免疫グロブリン、またはT細胞抗原枯渇免疫グロブリンなど、免疫グロブリンの様々な型を表して、かつ包含する(例えば、国際公開公報第98/33523号、国際公開公報第98/52976号および国際公開公報第00/34317号を参照)。一つの態様において、本明細書に報告される方法における抗体はヒトまたはヒト化抗体である。免疫グロブリンの遺伝子工学的操作は、例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl . Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5,202,238号および米国特許第5,204,244号; Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327;Neuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270;Lonberg, N., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1117-1125に記載されている。
【0036】
免疫グロブリンは一般に、2本のいわゆる完全長軽鎖ポリペプチド(軽鎖)および2本のいわゆる完全長重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。完全長の重鎖および軽鎖ポリペプチドは、各々、抗原と相互作用する結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(一般的には、完全長ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含有する。完全長の重鎖および軽鎖ポリペプチドは、各々、定常領域(一般にカルボキシル末端部分)を含む。完全長重鎖の定常領域は、免疫グロブリンのi)食細胞などのFcガンマ受容体(FcγR)を持つ細胞、またはii)Brambell受容体としても公知である新生児Fc受容体(FcRn)を持つ細胞への結合を介在する。それは、成分(Clq)などの古典的補体系の因子を含むいくつかの因子への結合も介在する。次いで、完全長免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変ドメインは異なるセグメント、即ち、4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(CDR)を含む。「完全長免疫グロブリン重鎖」は、N末端からC末端方向に、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)、免疫グロブリン定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン定常ドメイン3(CH3)、および任意でサブクラスIgEの免疫グロブリンの場合は免疫グロブリン定常ドメイン4(CH4)からなるポリペプチドである。「完全長免疫グロブリン軽鎖」は、N末端からC末端方向に免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)および免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)からなるポリペプチドである。完全長免疫グロブリン鎖は、CLドメインおよびCH1ドメイン間、ならびに完全長免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域間でポリペプチド間ジスルフィド結合を介して一つに連結される。
【0037】
「免疫グロブリンフラグメント」という用語は、本出願においては、完全長の免疫グロブリン重鎖の少なくともCH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチドを示す。免疫グロブリンフラグメントは、免疫グロブリン以外に由来する追加のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0038】
近年、免疫グロブリンのグリコシル化パターン、即ち、接続した糖鎖構造の糖組成および数の多さが生物学的特性に対して強い影響を及ぼすことが報告されている(例えば、Jefferis, R., Biotechnol. Prog. 21 (2005) 11-16 参照)。哺乳動物細胞によって産生される免疫グロブリンは2〜3質量%のオリゴ糖を含有する(Taniguchi, T., et al., Biochem. 24 (1985) 5551-5557)。これは、例えば、クラスGの免疫グロブリン(IgG)においてマウス起源のIgGでは2.3個のオリゴ糖残基に相当して(Mizuochi, T., et al., Arch. Biochem. Biophys. 257 (1987) 387-394)、ヒト起源のIgGでは2.8個のオリゴ糖残基に相当して(Parekh, R.B., et al., Nature 316 (1985) 452-457)、この内の一般的には2個がAsn297においてFc領域に位置して、残りは可変領域に位置する(Saba, J.A., et al., Anal. Biochem. 305 (2002) 16-31)。
【0039】
本出願において用いられる「糖鎖構造」という用語は、特定のアミノ酸残基における単一の規定されたN-またはO-結合型オリゴ糖を示す。従って、「G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリン」という用語は、Kabatナンバリングスキームに従って約アミノ酸297位のアスパラギンアミノ酸残基において、またはFAB領域において、オリゴ糖の非還元末端に1個だけ末端ガラクトース残基を含む二分岐型オリゴ糖を含む免疫グロブリンを示す。本出願において用いられる通り、「オリゴ糖」という用語は、2つまたはそれよりも多い共有結合性に結合した単糖単位を含む高分子糖を示す。
【0040】
本発明において異なるN-またはO-結合型オリゴ糖を表示するために、オリゴ糖分子の非還元末端から還元末端まで個々の糖残基を列記する。もっとも長い糖鎖を表示における基本鎖として選択した。N-またはO-結合型オリゴ糖の還元末端は免疫グロブリンのアミノ酸骨格のアミノ酸に直接結合される単糖残基であり、基本鎖の還元末端であるもう一方の末端に位置するN-またはO-結合型オリゴ糖の末端は非還元末端と呼ばれる。
【0041】
本出願において用いられるように「アフィニティークロマトグラフィー」という用語は、「アフィニティークロマトグラフィー材料」を用いるクロマトグラフィーの方法を示す。アフィニティークロマトグラフィーでは、ポリペプチドは、その生物学的活性または化学構造に基づいて、クロマトグラフィー材料のクロマトグラフ官能基との静電的な相互作用、疎水結合、および/または水素結合に応じて分離される。特異的に結合したポリペプチドをアフィニティークロマトグラフィー材料から回収するためには、競合リガンドを加えることが可能であり、または緩衝液のpH値、極性もしくはイオン強度などのクロマトグラフィー条件を変えることも可能である。例示的な「アフィニティークロマトグラフィー材料」は、Ni(II)-NTAもしくはCu(II)-NTAなどのな金属キレートクロマトグラフィー材料、または本明細書で報告される方法の一つの態様においてプロテインAもしくはプロテインGが共有結合されて含まれるクロマトグラフィー材料のような免疫グロブリンアフィニティークロマトグラフィー材料、または、酵素基質類似体、酵素補因子、もしくは酵素阻害剤がクロマトグラフィー官能基として共有結合されて含まれるクロマトグラフィー材料のような酵素結合性アフィニティークロマトグラフィー材料、または多糖類、細胞表面受容体、糖タンパク質、もしくは無傷細胞がクロマトグラフィー官能基として共有結合されて含まれるクロマトグラフィー材料のようなレクチン結合クロマトグラフィー材料である。
【0042】
「所定の糖鎖構造」という用語は、本出願においては、糖鎖構造の非還元末端の単糖残基が特定の種類のものである糖鎖構造を示す。「所定の糖鎖構造」という用語は、本出願においては、糖鎖構造の非還元末端の単糖残基が所定のものであり、かつ、特定の種類のものである糖鎖構造を示す。
【0043】
本出願において用いられる「にアプライする」という用語およびその文法的に同等の用語は、関心対象の物質を含有する溶液を固定相と接触させる精製方法の部分工程を示す。精製すべき関心対象の物質を含有する溶液は固定相を通過して、固定相と溶液中の物質の相互作用をもたらす。溶液のpH、伝導度、塩濃度、温度、および/または流速などの条件に応じて、溶液の一部の物質は固定相に結合されて、それと共に溶液から除去される。その他の物質は溶液中に留まる。溶液中に残存する物質はフロースルー中に見出されることができる。「フロースルー」はクロマトグラフ装置の通過後に得られる溶液を示して、この溶液は関心対象の物質を含有するアプライされた溶液であってもよく、またはカラムをフラッシュするためまたは固定相に結合した一つまたは複数の物質の溶離を起こすために用いられる緩衝液であってよい。関心対象の物質は、実質的に均質な形の物質を得るために、例えば、沈殿、塩析、限外濾過、ダイアフィルトレーション、凍結乾燥、アフィニティークロマトグラフィー、または溶剤量の減少など、当業者によく知られた方法によって精製工程の後に溶液から回収することができる。
【0044】
本明細書に報告される方法で糖鎖構造を修飾することができる免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントは組換え手法によって産生することができる。
【0045】
組換え産生のための方法は当技術分野において広く知られていて、真核細胞内でのタンパク質の発現、その後の免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの単離、および薬学的に許容される純度までの精製が含まれる。免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの発現のために、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントをコードする一つまたは複数の核酸が導入されているハイブリドーマ細胞または真核細胞のいずれかが用いられる。一つの態様において、真核細胞はCHO細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6細胞、BHK細胞、ウサギ細胞またはヒツジ細胞から選択される。もう一つの態様において、真核細胞はCHO細胞、HEK細胞またはウサギ細胞から選択される。発現後、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントは細胞から(上清からまたは溶解後の細胞から)回収される。免疫グロブリンの組換え産生の一般的な方法は当技術分野において周知であり、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202;Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282;Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160;Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説に報告されている。
【0046】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの精製は、例えば、その他の細胞核酸またはタンパク質などの細胞成分またはその他の混入物質を排除するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野で周知のその他の方法を含む標準的な手法により実施することができる(例えば、Ausubel, F.M, et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (2005)を参照)。タンパク質の精製には、微生物のタンパク質を用いるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAまたはプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換(カルボキシメチル樹脂)、アニオン交換(アミノエチル樹脂)および混合モード交換)、チオフィリック(tiophilic)吸着(例えば、β-メルカプトエタノールおよびその他のSHリガンドを使用)、疎水性相互作用または芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース、アザ-アレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂、またはm-アミノフェニルボロン酸を使用)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)-およびCu(II)アフィニティー材料を使用)、サイズ排除クロマトグラフィー、および電気泳動法(ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法など)、ならびに微生物タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーなどのそれらの組み合わせなど、様々な方法が十分に確立されていて、かつ、広く用いられている(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochcm. Biotech. 75 (1998) 93-102を参照)。
【0047】
組換えにより産生される免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの糖鎖構造は用いられる株化細胞および用いられる培養条件によって決定される。従来の下流処理手法を用いて、特定の糖鎖構造を選択的に除去することは不可能である。
【0048】
本明細書において報告される方法を用いると、所定の糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを下流処理において得ることができる。G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンFABフラグメントを産生するためには、実質的に純粋な形のG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンFABフラグメントを取得するために、i)ガラクトシルトランスフェラーゼ、ii)シアリルトランスフェラーゼ、iii)β-1,4-ガラクトシダーゼ、およびiv)シアリダーゼを用いた連続インキュベートを実施しなければならないことが見出されている。
【0049】
本明細書に報告される方法はG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの産生を可能として、それによって:
− 所定の糖鎖構造を産生する細胞株を取得/選択/使用する必要性がなくなる、
− 追加のインキュベーション工程を伴わない方法に比べて、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの追加のインキュベーション工程によって生成物の品質が変化しない、
− 下流処理の間、即ち、インビトロでの発現の完了後に、所定の糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントが産生される、
− 望ましくない糖鎖構造を持つ免疫グロブリンは除去されないが、すべての免疫グロブリンが酵素によって所定の糖鎖構造に変換されるので、所定の糖鎖構造を持つ免疫グロブリンが高い収率で提供される。
【0050】
従って、本明細書に報告される一つの局面は、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを産生するための方法であって、以下の工程を含む方法である:
− β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− シアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼを不活性化または除去する工程、および
− シアリダーゼと共にインキュベートする工程。
【0051】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは1〜10のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは2〜7のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは3、または4、または5、または6のアリコートで添加される。
【0052】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程は約30時間〜約60時間である。
【0053】
一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは0〜2時間インキュベートすることの後に添加される。一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートはインキュベートする工程の開始時に添加される。
【0054】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の5〜20時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の6〜12時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の8〜10時間後に添加される。
【0055】
従って、本明細書に報告される一つの局面は、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを産生するための方法であって、以下の工程を含む方法である:
− 免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを含有するアフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液を提供する工程、
− 前記アフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液をガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− ガラクトシルトランスフェラーゼ反応産物をシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
− シアリルトランスフェラーゼ反応産物をβ-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程、
− β-1,4-ガラクトシダーゼを除去または不活性化する工程、および
− β-1,4-ガラクトシダーゼ活性が除去または不活性化されているβ-1,4-ガラクトシダーゼ反応産物をシアリダーゼと共にインキュベートする工程。
【0056】
ガラクトシルトランスフェラーゼはインキュベート時間中に複数のアリコートで添加されなければならないことが見出されている。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは1〜10のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは2〜7のアリコートで添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼは3または4、または5または6のアリコートで添加される。
【0057】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程は約30時間〜約60時間である。
【0058】
一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは0〜2時間インキュベートすることの後に添加される。一つの態様において、最初のガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートはインキュベートする工程の開始時に添加される。
【0059】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の5〜20時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の6〜12時間後に添加される。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼのアリコートは前回のアリコート添加の8〜10時間後に添加される。
【0060】
本明細書に報告されるさらなる局面は、G1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を産生するための方法であって、以下の工程を含む方法である:
− 免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物をコードする核酸を含む細胞を培養する工程、
− 前記細胞または培養培地から免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を回収する工程、
− 回収された免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物をプロテインAクロマトグラフィー材料にアプライして、プロテインAクロマトグラフィー材料から免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を溶出することによってプロテインAクロマトグラフィー材料から免疫グロブリンを回収する工程、
− 以下の工程によって、アフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液に含有される免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を修飾する工程
a)アフィニティークロマトグラフィーカラム溶出液をガラクトシルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
b)ガラクトシルトランスフェラーゼ反応産物をシアリルトランスフェラーゼと共にインキュベートする工程、
c)シアリルトランスフェラーゼ反応産物をβ-1,4-ガラクトシダーゼと共にインキュベートする工程、
d)β-1,4-ガラクトシダーゼを除去または不活性化する工程、
e)β-1,4-ガラクトシダーゼ活性が除去または不活性化されているβ-1,4-ガラクトシダーゼ反応産物をシアリダーゼと共にインキュベートする工程、
− 酵素によって修飾されたアフィティークロマトグラフィーカラム溶出液をプロテインAクロマトグラフィー材料にアプライして、プロテインAクロマトグラフィー材料から免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を回収して、それによってG1糖鎖構造を持つ免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン融合物を産生する工程。
【0061】
例えば、細胞培養法によって産生された免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントの精製には、一般に、異なるクロマトグラフィーの工程の組み合わせを用いることができる。通常は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに続いて1段階または2段階の追加の分離工程を実施することができる。一つの態様において、追加のクロマトグラフィーの工程はカチオンおよびアニオン交換クロマトグラフィーの工程またはその逆である。最終の精製工程は、凝集した免疫グロブリン、残余HCP(宿主細胞タンパク質)、DNA(宿主細胞核酸)、ウイルス、またはエンドトキシンのような微量の不純物および混入物質の除去のための、いわゆる「ポリッシング工程」である。一つの態様において、最終の精製工程はフロースルーモードでのアニオン交換クロマトグラフィーである。
【0062】
一般的なクロマトグラフの方法およびその使用は当業者に公知である。例えば、Heftmann, E. (ed.), Chromatography, 5th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Elsevier Science Publishing Company, New York (1992);Deyl, Z. (ed.), Advanced Chromatographic and Electromigration Methods in Biosciences, Elsevier Science BV, Amsterdam, The Netherlands (1998);Poole, C. F., and Poole, S. K., Chromatography Today, Elsevier Science Publishing Company, New York (1991);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);Sambrook, J., et al. (eds.). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989);またはAusubel, F.M., et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (2005)を参照されたい。
【0063】
一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼはβ-1,4-ガラクトシラトランスフェラーゼである。一つの態様において、ガラクトシルトランスフェラーゼはウシ乳汁由来のβ-1,4-ガラクトシラトランスフェラーゼである。
【0064】
一つの態様において、シアリルトランスフェラーゼはα-2,6-シアリルトランスフェラーゼである。一つの態様において、シアリルトランスフェラーゼはヒトα-2,6-シアリルトランスフェラーゼである。
【0065】
一つの態様において、ガラクトシダーゼはβ-1,4-ガラクトシダーゼである。一つの態様において、ガラクトシダーゼはβ-1-3,4-ガラクトシダーゼである。一つの態様において、ガラクトシダーゼはウシ精巣由来のβ-1,4-ガラクトシダーゼである。
【0066】
一つの態様において、シアリダーゼはノイラミニダーゼである。一つの態様において、ノイラミニダーゼは細菌のノイラミニダーゼである。一つの態様において、ノイラミニダーゼはα-2-3,6,8,9-ノイラミニダーゼである。一つの態様において、ノイラミニダーゼはアルスロバクターウレアフェシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来である。
【0067】
以下の実施例、図面および配列は本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神から逸脱することなく、記載される手順に修正を加えることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本明細書に報告される産生方法のスキーム。
【実施例】
【0069】
分析は、合成の異なる工程の間または全合成の後に実施することができる。一つまたは複数の中間体が産生される場合は、合成は各工程の後に終了することができる。
【0070】
本明細書に報告される方法は、以下に例証され、異なる抗体を用いる:国際公開公報第2011/147834号に報告される抗CD19抗体、国際公開公報第2006/103100号に報告される抗CCR5抗体、国際公開公報第99/57134号に報告される抗HER2抗体、国際公開公報第2005/023872号に報告される抗IL1R抗体。
【0071】
材料および方法
例えば、Vivaspin 500 VS0102 SartoriusまたはVivaspin 6 VS0601 Sartorius(より多量な抗体の場合)の、遠心管メンブラン10,000 MWCO。
【0072】
ESMS分析:
材料:
− 塩酸グアニジン(例えば、Pierce、カタログ番号 24110)
− TCEP(トリス-2-カルボキシエチル-ホスフィン-ヒドロクロリド)(例えば、Pierce、カタログ番号 20490)
− NAP5-ゲル濾過カラムSephadex G-25(例えば、GE Healthcare、カタログ番号 17-0853-02)
− ギ酸 最低98%(例えば、Roth カタログ番号 4724.1)
− アセトニトリル(例えば、Baker、カタログ番号 9017)
− 超純水(例えば、Baker)
【0073】
ESI-MS法:
抗体を変性させて、TCEPで還元し、緩衝液をエレクトロスプレー媒体に交換した。その後、エレクトロスプレー−質量分光光度計を用いて抗体を測定した。軽鎖および異なるグリコシル化された重鎖のm/z値を決定した。
【0074】
試料の調製(例示的方法):
グリセリンは水での洗浄によって除去した。試料を、用意したVivaspin遠心管に移して、約100μlの液量まで超純水を満たした。試料を約10rpmにて遠心分離して、濾液を捨てた。その後、試料を少なくとも2回、それぞれ超純水約100μlを用いて浄化した。残った液体を反応管に移して、約200μl/1000μg抗体の液量まで超純水を満たした。
【0075】
より多量の抗体(約3000μgよりも多い抗体)には、手順をVivaspin遠心管Vivaspin 6 VS0601に適合させることができる。
【0076】
還元:
抗体150μgに変性緩衝液(6M 塩酸グアニジン)を加えて200μlの最終液量とした。TCEP溶液(変性緩衝液1mL中TCEP 28.6mg)約30μlを加えた。この試料を約37℃で約1時間、インキュベートした。
【0077】
緩衝液の交換:
NAP5-ゲル濾過カラムをエレクトロスプレー媒体(20%アセトニトリル中1%ギ酸)10mlで平衡化させた。その後、試料約200μlをカラムに移した。完全に排出後、エレクトロスプレー媒体約650μlをカラムにアプライした。抗体をエレクトロスプレー媒体約250μlで溶出した。
【0078】
ESMS分析:
還元した試料を約700m/z〜約2200m/zの間で少なくとも1分間、分析した。
【0079】
MALDI-MS-分析:
材料:
− N-グリコシダーゼF(例えば、Roche Diagnostics GmbH、カタログ番号 1 365 193)
− カチオン交換体 AG 50W-X8 Resin (例えば、BioRad、カタログ番号 142-1441)
− スピンクロマトグラフィー用カラム
− DHB MALDIマトリックス(例えば、Mass Prep)
【0080】
方法:
N-グリコシドオリゴ糖はN-グリコシダーゼF消化によって抗体から切断された。得られたオリゴ糖を、タンパク質の単離後、MALDI-TOF質量分析法により分析した。
【0081】
酵素消化:
精製した試料の250μgをN-グリコシダーゼF溶液の5μlで約37℃にて約18時間、消化した。
【0082】
精製:
消化した試料をVivaspin遠心管で遠心分離した。オリゴ糖をタンパク質から分離した。このオリゴ糖をカチオン交換体で精製した。
【0083】
分析:
マトリックス1μlを試料1μlと混合して、標的に移した。800m/z〜2500m/zの間で試料を測定した。
【0084】
HPAEC分析:
材料:
− リン酸二水素ナトリウム・一水和物(例えば、Merck、カタログ番号 6346)
− NAP5-ゲル濾過カラムSephadex G-25(例えば、GE Healthcare、カタログ番号 17-0853-02)
− 50%水酸化ナトリウム(例えば、Baker、カタログ番号 7067)
− 無水酢酸ナトリウム(例えば、Merck、カタログ番号 6264)
− N-グリコシダーゼF(例えば、Roche Diagnostics GmbH、カタログ番号 1 365 193)
− ヘリウム(純度 最低4.6)
− 超純水(例えば、Baker、カタログ番号 4218)
【0085】
HPAEC法:
N-グリコシドオリゴ糖鎖は、N-グリコシダーゼFを用いた開裂によって抗体から分離した。得られたオリゴ糖は、タンパク質の単離後に、アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって分離した。
【0086】
溶液:
− 10mMリン酸緩衝液、pH 7.2
− N-グリコシダーゼF、濃度 1 U/μl
− 溶離液A(0.05 mol/1 NaOH):この溶液は、調製および分析期間中、ヘリウムを用いて通気処理する。
− 溶離液B(0.05 mol/1 NaOH + 0.2 mol/1 酢酸ナトリウム);この溶液は、調製および分析期間中、ヘリウムを用いて通気処理する。
【0087】
緩衝液の交換:
NAP5-ゲル濾過カラムをリン酸緩衝液10mlで平衡化させた。その後、試料約400μgをカラムに移した。完全に排出後、リン酸緩衝液750μlをカラムにアプライした。抗体をリン酸緩衝液450μlで溶出した。試料を、用意したVivaspin遠心管で100μlよりも少ない液量まで濃縮した。
【0088】
酵素消化:
N-グリコシダーゼF溶液(2U)の2μlを濃縮した溶出液に加えた。この溶出液を約37℃で約16時間、インキュベートした。
【0089】
精製:
溶液を、用意したVivaspin遠心管に完全に移した。超純水約50μlを加えて、溶液を約5000 x gで遠心分離した。続いて、試料を超純水約50μlで洗浄した。遠心分離物をカップに移して、約140μlの最終液量まで超純水で満たした。
【0090】
分析:
試料の50μlをHPLCカラム(カラム温度:30℃)に注入した。
【0091】
グラジエント:
非シアリデート化試料のためのグラジエント:
流量:0.5ml/分
【0092】
シアリデート化試料のためのグラジエント:
流量:0.5ml/分
【0093】
実施例1
ガラクトシル化
材料:
− 塩化マンガン(II) >99%、MW 125.84 g/mol(Sigma-Aldrich、カタログ番号 244589-10G)
− MES緩衝液、MW 213.9 g/mol(Roche Diagnostics GmbH、カタログ番号 10073571001)
− UDP-ガラクトース、二ナトリウム塩、MW 610.27 g/mol(Roche Diagnostics GmbH)
− NaOH 50%(Sigma Aldrich、カタログ番号 41,541-3)
ガラクトシルトランスフェラーゼβ-1,4(Fluka, ウシ乳汁由来、カタログ番号 48279 WA 10530;1.13U/mg)
− 超純水(Baker)
【0094】
工程の順序:
− 反応緩衝液の添加
− ガラクトシルトランスフェラーゼの添加(3〜6回)
− インキュベーション
【0095】
溶液:
反応緩衝液(1lに対して):MnCl2(2.52g)、UDP-ガラクトース(6.10g)、MES-Puffer(21.33g)
【0096】
試薬を測り取って超純水950mLに溶解した。その後、溶液のpH値を50%NaOHでpH 6.5〜pH 8.5に調整した。
【0097】
この緩衝液は凝固するので、使用直前に撹拌しなければならない。
【0098】
ガラクトシルトランスフェラーゼ液:
ガラクトシルトランスフェラーゼ0.887mg(=1.0 U)を反応緩衝液101.2μlに溶解した。
【0099】
試料の調製:
抗体約1000μgに反応緩衝液約150μlを加えた。この試料を超純水で300μl液体/1000μg抗体に希釈した。
【0100】
酵素反応:
抗体1000μgにガラクトシルトランスフェラーゼ2.5μl(0.025U)を添加した。酵素の添加は30時間〜60時間の時間をかけて3〜6のアリコートで行った。温度は30℃〜34℃に維持した。
【0101】
結果:
酵素とのインキュベーション後、酵素により修飾された抗体を下表に示す収率で取得した。
【0102】

【0103】
実施例2
シアリデーション
材料:
− CMP-シアル酸 M=658.4g/mol(Sigma-Aldrich、カタログ番号 C8271-1MG)
− シアリルトランスフェラーゼα-2,6(Calbiochem、カタログ番号 566223)
【0104】
工程の順序:
− シアリルトランスフェラーゼの添加
− CMP-シアル酸の添加
− インキュベーション
【0105】
酵素反応:
抗体約1000μgにシアリルトランスフェラーゼ約9μl(12.9mU)およびCMP-シアル酸0.25mg(=0.38μmol)を添加した。この試料を30℃〜37℃で約2時間、インキュベートした。
【0106】
結果:
酵素とのインキュベーション後、酵素により修飾された抗体を下表に示す収率で取得した。
【0107】

【0108】
実施例3
脱ガラクトシル化
材料:
− β-1,4ガラクトシダーゼ(Glyco、カタログ番号 GKX-5014, 200 mU)
【0109】
工程の順序:
− 精製
− β-1,4ガラクトシダーゼの添加
− インキュベーション
【0110】
試料の調製:
試料を、用意したVivaspin遠心管に移して、約100μlの総液量まで超純水を満たした。試料を約10rpmにて遠心分離して、濾液を捨てた。続いて、試料を少なくとも2回、それぞれ、超純水約100μlを用いて洗浄した。残った液体を反応管に移して、約200μl/1000μg抗体の液量まで超純水を満たした。グリセリンは水での洗浄によって除去した。
【0111】
より多量の抗体(約3000μgよりも多い抗体)には、手順をVivaspin遠心管Vivaspin 6 VS0601に適合させることができる。
【0112】
酵素反応:
抗体約1000μgについて、β-ガラクトシダーゼ溶液約30μl(60mU)を添加した。この試料を約37℃で約18時間、インキュベートした。
【0113】
結果:
酵素とのインキュベーション後、酵素により修飾された抗体が下表に示す収率で得られた。
【0114】

【0115】
実施例4
脱シアリデーション
材料:
− MabSelectSuReカラム(Media Scout Mini Column, Atoll、カタログ番号 00101050408R)
− トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Merck、カタログ番号 1.08382)
− NaCl(Merck、カタログ番号 1.06404)
− トリス-クエン酸ナトリウム二水和物 (Merck、カタログ番号 1.06448)
− NaOH 50%(Sigma Aldrich、カタログ番号 41,541-3)
− ノイラミニダーゼ(Roche、カタログ番号 10 269 611 001、1 U)
【0116】
工程の順序:
− 精製(β-ガラクトシダーゼの除去/不活性化)
− シアリダーゼの添加
− インキュベーション
【0117】
試料の調製:
G0種の生成を防ぐために、先ず、β-ガラクトシダーゼを不活性化/除去した。
【0118】
β-ガラクトシダーゼは(手作業でまたはTecan Roboterを用いて自動的に)MabSelectSuReカラムを用いたクロマトグラフィーにより以下の工程で除去した:
【0119】

【0120】
β-ガラクトシダーゼの除去後、Tris-HCl pH 9.0を用いてpH値をpH 5.0 +/- 0.2に合わせた。精製後の濃度は光度計を用いて測定した。
【0121】
酵素反応:
抗体約1000μgについて、ノイラミニダーゼ約50μl(0.5U)を添加した。この試料を約37℃で約18時間、インキュベートした。
【0122】
結果:
酵素とのインキュベーション後、酵素により修飾された抗体が下表に示す収率で得られた。
【0123】

【0124】
G1糖鎖構造の取得可能な収率は酵素的な変換に加えて開始産物の糖鎖構造純度にも依存することが指摘されるべきである。従って、マンノース5、G0-GlcNac、G1-GlcNac、G0-Fuc、G1-Fuc、G2-Fucおよびその他などの糖鎖構造の存在は、これらの糖鎖構造が変換できないことから、取得可能な収率を低下させる。
図1