(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記TLR−3アゴニストが、スクロース、トレハロース、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸ジメチルバッファー(DMS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、マンニトール、又はデキストランである、凍結保護物質と共に添加される、請求項2又は3に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]
図1は、実施例1の3−ステップ溶融法、及び実施例2の逆転式2−ステップ溶融法を用いて調製された2つの小胞製剤に関する平均粒子サイズを比較する図である。製剤は凍結乾燥され、次に不活性化されたA型肝炎抗原2μgを含有するバッファーの存在下で再水和された。小胞サイズは安定性を示す優れた指標であるが、これはマスターサイザーを用いて水和直後、及び2、4、及び6時間後に測定された。
【
図2】[0011]
図2は、A型肝炎抗原含有小胞により引き起こされた免疫反応を示す図である。空の小胞は、実施例1の3−ステップ溶融法、及び実施例2の逆転式2−ステップ溶融法を用いて調製された。製剤は凍結乾燥され、次に不活性化されたA型肝炎抗原2μgを含有するバッファーの存在下で再水和された。マウスは、第0、14、及び28日目に経口により3回免疫感作を受け、血清は、最後のワクチン接種後14日経過して反応性について試験された。各記号は、個々の動物から得られた血清のエンドポイント力価を表す。
【
図3】[0012]
図3は、フローサイトメトリー法により証明された通り、小胞内の胆汁塩内容物が未成熟樹状細胞の成熟に影響を及ぼすことを示す図である。未成熟樹状細胞の成熟は、抗−MHCII及び抗−CD86抗体を用いて、フローサイトメトリー法により測定された。成熟したDCは、両抗体に対する二重の陽性として規定された。未成熟の樹状細胞は、実施例2のステップ1及び2で調製された非イオン性界面活性剤脂質小胞(NISV)(抗原をその後に添加しない)、及び総脂質に対する2種類の異なるモル比(0.1及び0.5)の胆汁酸を用いて又は用いないで処理された。陽性対照として、未成熟の樹状細胞がTNF−α単独で処理された。
【
図4】[0013]
図4は、実施例1及び実施例2の方法により抗原を全く添加しないで調製された、典型的な小胞の
31P NMRスペクトルを比較する図である。全てのスペクトルは25℃で収集された。
【0011】
[定義]
[0014]本開示全体を通じて、以下のパラグラフで規定されるいくつかの用語が用いらる。
【0012】
[0015]本明細書で用いる場合、用語「抗原」とは、抗体により認識され得る1つ又は複数のエピトープ(直線状、高次構造状、又は両方)を含有する物質を意味する。特定の実施形態では、抗原はウイルス、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類等であり得る。用語「抗原」とは、サブユニット抗原(すなわち、抗原が天然の状態で関連する生物全体から分離及び独立した抗原)、並びに死滅した、弱毒化された、又は不活性化された細菌、ウイルス、菌類、寄生虫、又はその他の微生物の両方を表す。特定の実施形態では、抗原は「免疫原」であり得る。
【0013】
[0016]本明細書で用いる場合、用語「取り込むこと(entrapping)」とは、物質及び小胞間の任意の種類の物理的関連付け、例えばカプセル化、接着(小胞の内壁若しくは外壁)、又は物質の押し出しを含む又は含まない壁内への埋め込みを意味する。この用語は、用語「負荷すること(loading)」及び「含有すること(containing)」と交換可能に用いられる。
【0014】
[0017]本明細書で用いる場合、用語「免疫反応」とは、動物で誘発された反応を意味する。免疫反応は、細胞性免疫、体液性免疫を意味する場合があり、又はその両方を含む場合もある。また、免疫反応は、免疫系の一部分に限定される場合もある。例えば、特定の実施形態では、免疫原性製剤は、増強したIFNγ反応を誘発し得る。特定の実施形態では、免疫原性製剤は粘膜性IgA反応(例えば、鼻腔及び/又は直腸洗浄法で測定される)を誘発し得る。特定の実施形態では、免疫原性製剤は、全身的IgG反応(例えば、血清で測定される)を誘発し得る。
【0015】
[0018]本明細書で用いる場合、用語「免疫原性」とは、宿主動物において非宿主本体(例えば、A型肝炎ウイルス又はB型肝炎ウイルス)を標的とする免疫反応を引き起こす能力を意味する。特定の実施形態では、この免疫反応は、特定の感染性生物(例えば、A型肝炎ウイルス又はB型肝炎ウイルス)を標的とするワクチンにより誘発される防御免疫性の基礎を形成する。「免疫原」とは免疫原性物質(例えば、分子)である。
【0016】
[0019]本明細書で用いる場合、用語「治療有効量」とは、治療対象患者において重要な利益を示すのに十分な量を意味する。免疫原性製剤の治療有効量は、所望の生物学的エンドポイント、製剤の性質、投与経路、治療対象患者の健康状態、大きさ、及び/又は年齢等の要因に依存して変化し得る。
【0017】
[0020]本明細書で用いる場合、用語「ポリペプチド」とは、タンパク質(すなわち、ペプチド結合により相互に連結した少なくとも2つのアミノ酸からなる糸)を意味する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはアミノ酸以外の部分を含み得る(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン、リポタンパク質等であり得る)、及び/又はそうでなければ処理可能若しくは改変可能である。当業者であれば、「タンパク質」が細胞により産生されるような完全なポリペプチド鎖(シグナル配列を有する、又は有さない)であり得る、又はその一部分であり得ることを認識するであろう。当業者であれば、タンパク質は、時には、例えば1つ又は複数のジスルフィド結合により連結した、又はその他の手段により会合した複数のポリペプチド鎖を含み得ることを認識するであろう。ポリペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、又は両方を含有し得るが、また当技術分野において公知の任意の様々なアミノ酸修飾体又は類似体も含有し得る。有用な修飾として、例えば末端のアセチル化、アミド化等が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、合成アミノ酸、及びこれらを組み合わせたものを含み得る。
【0018】
[0021]本明細書で用いる場合、用語「多糖類」とは、糖のポリマーを意味する。このポリマーとして、天然の糖(例えば、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、マンノヘプツロース、セドヘプツロース、オクトロース、及びシアロース)、及び/又は改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボース、及びヘキソース)を挙げることができる。典型的な多糖類としては、デンプン、グリコーゲン、デキストラン、セルロース等が挙げられる。
【0019】
[0022]本明細書で用いる場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのポリマーを意味する。このポリマーとして、天然のヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、ジヒドロウリジン、メチルプソイドウリジン、1−メチルアデノシン、1−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、及び2−チオシチジン)、化学的に改変された塩基、生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、挿入塩基、改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’−O−メチルシチジン、アラビノース、及びヘキソース)、又は改変されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート及び5’−N−ホスホラミダイト結合)を挙げることができる。
【0020】
[0023]本明細書で用いる場合、用語「小分子治療物質」とは、いくつかの炭素−炭素結合を含有し得る、及び約1500Da未満(例えば、約1000Da未満、約500Da未満、又は約200Da未満)の分子量を有し得る、非ポリマー性の治療分子を意味する。小分子治療物質は、研究室で合成可能であり(例えば、工学的に作製した微生物等を用いたコンビナトリアル合成による)、又は天然の状態で発見され得る(例えば、天然物)。一般的に、小分子治療物質は、生物学的事象を変化させ、阻害し、活性化し、又は影響を及ぼし得る。例えば、小分子治療物質として抗AIDS物質、抗癌物質、抗生物質、抗糖尿病物質、免疫抑制物質、抗ウイルス物質、酵素阻害物質、神経毒素、オピオイド、催眠物質、抗ヒスタミン物質、潤滑物質、精神安定剤、抗痙攣薬、筋弛緩薬及び抗パーキンソン物質、チャンネル遮断薬を含む鎮痙薬及び筋収縮薬、縮瞳薬及び抗コリン作動薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫及び/又は抗原生動物化合物、細胞増殖阻害薬及び抗接着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用のモジュレーター、血管拡張薬、DNA、RNA又はタンパク質合成阻害物質、抗高血圧薬、鎮痛薬、解熱剤、ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症薬、抗血管新生因子、分泌抑制因子、抗凝固物質及び/又は抗血栓薬、局所麻酔薬、眼薬、プロスタグランジン、抗うつ薬、抗精神病物質、鎮吐薬、及び造影剤を挙げることができるが、但し、これらに限定されない。本開示の方法で使用するのに適する典型的な小分子のより完全なリストは、Pharmaceutical Substances:Syntheses,Patents,Applications、Axel Kleemann及びJurgen Engel編集、Thieme Medical Publishing、1999年;Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals、Susan Budavariら編集、CRC Press、1996年、及びUnited States Pharmacopeia−25/National formulary−20、United States Pharmacopeial Convention,Inc.出版、2001年に見出すことができる。好ましくは、但し必ずしも必要ではないが、小分子は、しかるべき政府機関又は当局によりすでに使用上安全かつ有効であるとみなされたものである。例えば、米国特許法施行規則§§330.5、331〜361、及び440〜460に基づき、FDAによりリスト化されたヒト用途の薬物、並びに米国特許法施行規則§§500〜589に基づき、FDAによりリスト化された獣医学用途の薬物は、すべて本開示の方法に基づく用途で許容可能と考えられる。
【0021】
[0024]本明細書で用いる場合、用語「治療する(treat)」(又は「治療すること(treating)」、「治療される(treated)」、「治療(treatment)」)とは、疾患、疾患の1つ又は複数の症状、又は疾患素因を緩和、軽減、変更、回復、改善し、又はこれに影響を及ぼすことを目的として、疾患、疾患の症状、又は疾患素因を有する患者に製剤を投与することを意味する。特定の実施形態では、用語「治療すること(treating)」とは、患者にワクチン接種することを意味する。
【0022】
[いくつかの実施形態の詳細な説明]
1.小胞を調製する方法
[0025]本開示は小胞を調製する方法を提供する。小胞は、任意選択的にその他の分子と共に脂質を含有する1つ又は複数の二重層に封入された水性区画を一般的に有する。例えば、下記でより詳細に議論されるように、いくつかの実施形態では、本開示の小胞は、粘膜を横断する脂質輸送を促進する輸送促進分子(例えば、胆汁塩)を含む。
【0023】
[0026]1つの態様では、本開示は小胞形成脂質の溶融混合物を用意するステップと、次に抗原含有小胞が形成されるように抗原を含む水溶液に当該溶融混合物を添加するステップとが含まれる小胞を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗原を含む水溶液は温度制御を受ける。いくつかの実施形態では、抗原を含む水溶液は、添加するステップの間、約50℃未満の温度(例えば、約40℃未満、約30℃未満等)に保たれる。いくつかの実施形態では、抗原を含む水溶液は、約25℃〜約50℃の間の温度範囲に保たれる。いくつかの実施形態では、抗原を含む水溶液は、室温に保たれる。
【0024】
[0027]小胞形成脂質の溶融混合物は、任意の方式で入手可能であり、例えば脂質が溶融混合物を形成するように溶融されると理解される。いくつかの実施形態では、脂質は120℃〜150℃の間の温度範囲(例えば、120℃〜125℃の間、120℃〜130℃の間、120℃〜140℃の間、130℃〜140℃の間、135℃〜145℃の間、又は140℃〜145℃の間)で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約120℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約125℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約130℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約135℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約140℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約145℃で溶融される。いくつかの実施形態では、脂質は約150℃で溶融される。
【0025】
[0028]別の態様では、本開示は、凍結乾燥された脂質生成物を用意するステップと、抗原含有小胞が形成されるように、当該凍結乾燥された脂質生成物を抗原を含む水溶液で再水和するステップとが含まれる、小胞を調製する方法を提供する。凍結乾燥された脂質生成物は、溶融脂質混合物が生成するように小胞形成脂質を溶融し、次に当該溶融脂質混合物を凍結乾燥することにより調製される。
【0026】
[0029]いかなる理論にも拘束されることを欲することなく、抗原の水溶液を凍結乾燥された脂質生成物に添加することにより、抗原の存在下で小胞が形成されると考えられる。これは、観察された高い取り込み効率を説明し得る。更に、本開示の方法では、有機溶媒及び高温に対する抗原の暴露が回避される。いかなる理論にも限定されることを欲することなく、これは、取り込まれた抗原が、得られた製剤中で高い活性(すなわち、抗原性及び/又は免疫原性)を有することを説明し得る。
【0027】
小胞形成脂質
[0030]脂質は、一般的に水に不溶性であるが、非極性有機溶媒(例えば、エーテル、クロロホルム、アセトン、ベンゼン等)に可溶性の有機分子である。脂肪酸は、飽和又は不飽和炭化水素鎖に連結した酸部分が含まれる、脂質の1つのクラスである。具体例として、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。脂肪酸のアルカリ金属塩は、脂肪酸そのものよりも一般的に水に可溶性である。8個以上の炭素を有する炭化水素鎖が含まれる脂肪酸及びその塩は、同一分子内に親水的(頭部)及び疎水的(尾部)な領域の両方が存在することから、多くの場合両親媒性特性を示す。極性の頭部基を備える非イオン性脂質も両親媒性(すなわち、界面活性)特性を示し得る。脂肪酸とグリセリン(1,2,3−トリヒドロキシプロパン)とのトリエステルは、動物脂肪及び植物油に一般的に認められるトリグリセリドとして公知である脂質の別のクラスを構成する。脂肪酸と長鎖の一価アルコールとのエステルは、ワックス中に認められるような脂質の別のクラスを形成する。リン脂質も脂質の別のクラスである。これらは、グリセリン若しくはスフィンゴシンと脂肪酸及びリン酸とのエステル又はアミド誘導体であるという点においてトリグリセリドと類似する。得られたホスファチジン酸のリン酸部分は、リン脂質それ自身においてエタノールアミン、コリン、又はセリンと更にエステル化可能である。この方法は、先行技術(例えば、Liposome Technology、第3版、Gregory Gregoriadis編集、Informa HealthCare、2006年、及びLiposomes:A Practical Approach(The Practical Approach Series,264)、第2版、Vladimir Torchilin及びVolkmar Weissig編集、Oxford University Press、米国、2003年)が記載する任意の脂質が含まれる小胞を形成する能力を有する、任意の脂質と共に利用可能であると理解される。
【0028】
[0031]いくつかの実施形態では、小胞形成脂質はリン脂質である。あらゆる天然又は合成リン脂質が利用可能である。非限定的に、具体的なリン脂質の例として、L−α−(ジステアロイル)レシチン、L−α−(ジアパルミトイル)レシチン、L−α−ホスファチド酸、L−α−(ジラウロイル)−ホスファチジン酸、L−α(ジミリストイル)ホスファチジン酸、L−α(ジオレオイル)ホスファチジン酸、DL−α(ジパルミトイル)ホスファチジン酸、L−α(ジステアロイル)ホスファチジン酸、及び脳、肝臓、卵黄、心臓、大豆等から、又は合成により調製される様々なタイプのL−α−ホスファチジルコリン、及びこれらの塩が挙げられる。
【0029】
[0032]いくつかの実施形態では、小胞形成脂質は非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の小胞は本明細書において「NISV」と呼ぶ。非限定的に、非イオン性界面活性剤の適する例として、グリセリンをベースにエステル結合した界面活性剤が挙げられる。かかるグリセリンエステルは、2つのより高級の脂肪族アシル基のうちの1つ、例えば各アシル部分内に少なくとも10個の炭素原子を含有する脂肪族アシル基のうちの1つを含み得る。かかるグリセリンエステルをベースとする界面活性剤は、複数のグリセリンユニット、例えば最大5個のグリセリンユニットを含み得る。グリセリンモノエステル、例えばC
12〜C
20のアルカノイル又はアルケノイル部分を含有するもの、例えば、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、オレイル、又はステアロイルが利用可能である。典型的な非イオン性界面活性剤は1−モノパルミトイルグリセリンである。
【0030】
[0033]いくつかの実施形態では、エーテル結合型界面活性剤は、非イオン性界面活性剤としても利用可能である。例えば、最大4個の炭素原子からなる低級脂肪性グリコール、例えばエチレングリコール、を有するグリセリン又はグリコールをベースとしたエーテル結合型界面活性剤が適する。かかるグリコールをベースとする界面活性剤は、複数のグリコールユニット、例えば最大5個のグリコールユニットを含み得る(例えば、ジグリコールセチルエーテル及び/又はポリオキシエチレン−3−ラウリルエーテル)。C
12〜C
2Oアルカニル又はアルケニル部分を含有するもの、例えばカプリル、ラウリル、ミリスチル、セチル、オレイル、又はステアリルを含め、グリコール又はグリセリンモノエーテルが利用可能である。利用可能なエチレンオキサイド縮合生成物には、PCT国際公開第88/06882号パンフレットで開示されているもの(例えば、ポリオキシエチレン高級脂肪性エーテル及びアミン界面活性剤)が含まれる。典型的なエーテル結合型界面活性剤には、1−モノセチルグリセリンエーテル及びジグリコールセチルエーテルが含まれる。
【0031】
その他の成分
[0034]いくつかの実施形態では、小胞は、小胞形成を阻害しない限り、その他の脂質及び非脂質成分を含有し得る。これらの成分は、小胞形成脂質と同時混合可能、及び/又は抗原(複数可)と同時混合可能であると理解される。いくつかの実施形態では、我々は、これらの成分を小胞形成脂質と同時混合するのが有利であり得ることを見出した。
【0032】
[0035]いくつかの実施形態では、小胞には、粘膜を横断する脂質の輸送を促進する輸送促進分子が含まれ得る。米国特許第5,876,721号に記載するように、輸送促進物質として様々な分子が利用可能である。例えば、側鎖のC
23炭素原子がカルボン酸及び/又はその誘導体を担持するコレステロール誘導体が、輸送促進物質として利用可能である。かかる誘導体には、「胆汁酸」であるコール酸及びケノデオキシコール酸、そのグリシン又はタウリンとの結合体生成物、例えばグリココール酸及びタウロコール酸等、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸を含む誘導体、及びこれらの酸のそれぞれの塩が含まれるが、但し、これらに限定されない。胆汁酸又は塩が更に含まれるNISVは、本明細書では「バイロソーム(bilosome)」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、輸送促進物質には、アシルオキシ化アミノ酸、例えばアシルカルニチンとその塩が含まれる。例えば、パルミトイルカルニチン等のC
6〜20アルカノイル又はアルケノイル部分を含有するアシルカルニチンが輸送促進物質として利用可能である。本明細書で用いる場合、用語アシルオキシ化アミノ酸には、第一、第二、及び第三アミノ酸、並びにα、β、及びγアミノ酸が含まれるように意図されている。アシルカルニチンは、アシルオキシ化γアミノ酸の例である。小胞は、複数のタイプの輸送促進物質、例えば1つ又は複数の異なる胆汁塩、及び1つ又は複数のアシルカルニチンを含み得ると理解される。輸送促進物質(複数可)は、存在する場合、小胞形成脂質の40〜400重量%を一般的に構成する(例えば、60〜100重量%、又は70〜90重量)。いくつかの実施形態では、輸送促進物質(複数可)は、存在する場合、小胞形成脂質の1〜40重量%を構成する(例えば、1〜20重量%、1〜25重量%、1〜30重量%、1〜35重量%、2〜25重量%、2〜30重量%、又は2〜35重量%)。
【0033】
[0036]特定の実施形態では、小胞は輸送促進分子を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、コール酸及びケノデオキシコール酸等の「胆汁酸」、そのグリシン又はタウリンとの結合体生成物、例えばグリココール酸及びタウロコール酸等、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸を含む誘導体、及びこれらの酸のそれぞれの塩を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、アシルオキシ化アミノ酸、例えばアシルカルニチンとその塩、及びパルミトイルカルニチン等を欠く場合がある。
【0034】
[0037]いくつかの実施形態では、小胞には、例えば小胞がマイナス電荷を帯びるようにするためにイオン性界面活性剤が含まれ得る。例えば、これは小胞を安定化し、効果的な分散を実現するのに役立つ可能性がある。非限定的に、高級アルカノン酸及びアルケン酸(例えば、パルミチン酸、オレイン酸)等の酸性物質、又はジアルキルホスフェート等のホスフェートを含む酸性基を含有するその他の化合物(例えば、ジセチルホスフェート、又はホスファチジン酸、又はホスファチジルセリン)、及び高級アルキルサルフェート(例えば、セチルサルフェート)等の硫酸モノエステルが、いずれもこの目的で利用可能である。イオン性界面活性剤(複数可)は、存在する場合には、小胞形成脂質の1〜30重量%を一般的に構成する。例えば、2〜20重量%、又は5〜15重量%を構成する。いくつかの実施形態では、イオン性界面活性剤(複数可)は、存在する場合には、小胞形成脂質の1〜50重量%を構成する(例えば、1〜35重量%、5〜40重量%、10〜40重量%、15〜40重量%、20〜40重量%、又は20〜35重量%)。
【0035】
[0038]いくつかの実施形態では、小胞には、二重層の形成を促進する高分子量のしかるべき疎水性物質(ステロイド等、例えばコレステロール等のステロール)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、ステロイドが存在すれば、小胞の物理特性を支配する二重層を形成する際に役立ち得る。ステロイドは、存在する場合には、小胞形成脂質の20〜120重量%を一般的に構成する。例えば、25〜90重量%、又は35〜75重量%である。いくつかの実施形態では、ステロイドは、存在する場合には、小胞形成脂質の25〜95重量%、25〜105重量%、35〜95重量%、又は35〜105重量%を構成する。
【0036】
[0039]いくつかの実施形態では、凍結乾燥する前の任意の溶液又は混合物中には、凍結保護物質が含まれ得る。典型的な凍結保護物質とて、スクロース、トレハロース、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸ジメチルバッファー(DMS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、マンニトール、及びデキストランが挙げられる。
【0037】
[0040]いくつかの実施形態では、本開示の小胞は、イオン性界面活性剤又はステロイドを更に含むバイロソーム(bilosome)である。いくつかの実施形態では、バイロソームには、イオン性界面活性剤及びステロイドの両方が含まれ得る。
【0038】
[0041]いくつかの実施形態では、本開示の小胞は、輸送促進分子が欠如し、イオン性界面活性剤又はステロイドを更に含む、非イオン性界面活性剤小胞(NISV)である。いくつかの実施形態では、小胞は、コール酸及びケノデオキシコール酸等の「胆汁酸」、そのグリシン又はタウリンとの結合体生成物、例えばグリココール酸及びタウロコール酸等、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸を含む誘導体、及びこれらの酸のそれぞれの塩を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、アシルオキシ化アミノ酸、例えばアシルカルニチンとその塩、及びパルミトイルカルニチン等を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、NISVは、輸送促進分子(例えば、上記の分子のいずれか)が欠如し、並びにイオン性界面活性剤及びステロイドの両方を含む場合がある。
【0039】
凍結乾燥
[0042]上記及び下記で議論されるように、いくつかの実施形態では、本開示の方法には、凍結乾燥するステップが含まれる(溶融脂質混合物のステップであるか、又は抗原含有小胞の製剤のステップであるかを問わない)。凍結乾燥は、生成物の長期安定性を高めるのに用いられる確立された方法である。物理的及び化学的安定性の強化は分解及び加水分解を防止することにより実現されると考えられている。凍結乾燥には対象調製物を凍結し、次に周囲圧力を減圧して(及び任意選択的に調製物を加熱して)凍結された溶媒(複数可)を固相から気体に直接昇華させるステップ(すなわち、乾燥段階)が含まれる。特定の実施形態では、乾燥段階は一次及び二次乾燥段階に分割される。
【0040】
[0043]凍結段階は、調製物を容器(例えば、フラスコ、エッペンドルフチューブ等)内に配置し、任意選択的に容器を機械的冷却法(例えば、ドライアイスとメタノール、液体窒素等を用いて)により冷却された浴漕内で回転することにより実施可能である。いくつかの実施形態では、凍結ステップには、調製物をその共晶点よりも低い温度に冷却することが含まれる。共晶点は調製物の固相及び液相が共存し得る最低温度で生じるので、この点よりも低い温度で物質を維持することにより、次のステップで蒸発よりも昇華が生じることが保証される。
【0041】
[0044]乾燥段階(又は2つの乾燥段階が用いられる場合には一次乾燥段階)には、圧力を減圧するステップと、任意選択的に溶媒(複数可)が昇華し得る点まで調製物を加熱するステップとが含まれる。この乾燥段階では、溶媒(複数可)の大部分が調製物から一般的に取り除かれる。凍結段階及び乾燥段階は必ずしも異なる段階ではなく、任意の方式で組み合わせることができると認識される。例えば、特定の実施形態では、凍結段階及び乾燥段階は重複し得る。
【0042】
[0045]二次乾燥段階が、任意選択的に凍結段階において吸着された残留溶媒(複数可)を取り除くのに利用可能である。いかなる理論にも拘束されることを欲することなく、この段階には、溶媒分子と凍結された調製物との間で形成されたあらゆる物理化学的相互作用を破壊するように温度を上げるステップを含む。乾燥段階が完了したら、凍結乾燥された生成物が任意選択的に密封される前に、不活性気体(例えば、窒素又はヘリウム)を用いて真空は破壊され得る。
【0043】
再水和
[0046]上記で議論されたように、いくつかの実施形態では、本開示の方法には、抗原含有小胞が形成されるように、凍結乾燥された脂質生成物を再水和するステップが含まれる。これは、凍結乾燥された脂質生成物を、抗原を含む水溶液と共に混合することにより実現される。いくつかの実施形態では、これには、凍結乾燥された脂質生成物に水溶液を添加するステップが含まれる。
【0044】
[0047]いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約10%を含有する。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約20%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約30%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約40%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約50%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約60%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約70%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約80%を含む。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞は、再水和ステップで添加された抗原の少なくとも約90%を含む。
【0045】
[0048]いくつかの実施形態では、水溶液にはバッファーが含まれる。用いられるバッファーは、水溶液中の1つの抗原又は複数の抗原の性質に一般的に依存する。例えば、非限定的に、PCBバッファー、Na
2HPO
4/NaH
2PO
4バッファー、PBSバッファー、ビシンバッファー、トリスバッファー、HEPESバッファー、MOPSバッファー等が利用可能である。PCBバッファーは、プロピオン酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、及びビス−トリスプロパンを2:1:2のモル比で混合することにより製造される。添加するHClの量を変化させることにより、4〜9のpH範囲で緩衝効果を得ることができる。いくつかの実施形態では、炭酸バッファーが利用可能である。
【0046】
[0049]いくつかの実施形態では、上記のいずれかの方法により調製された抗原含有小胞の製剤は、将来利用するために凍結乾燥可能であり、その後使用前に再水和可能である(例えば、滅菌水又は水性バッファーを用いて)。いくつかの実施形態では、アジュバントがこの再水和ステップ期間中に添加可能である(例えば、滅菌水又は水性バッファーに含めることにより)。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞の製剤は、凍結乾燥する前に−80℃で貯蔵可能である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された製剤は、−20℃〜10℃の温度範囲で貯蔵可能である(例えば、−5℃〜10℃、0℃〜5℃、又は2℃〜8℃)。
小胞サイズ及び処理
【0047】
[0050]小胞製剤には、ある範囲のサイズを有する小胞の混合物が一般的に含まれると認識される。下記に掲載する直径数値は、混合物内の最高出現頻度の直径に対応するものと理解される。いくつかの実施形態では、製剤中の小胞の>90%は、最高出現頻度の数値の50%の範囲以内に分布する直径(例えば、1000±500nm)を有する。いくつかの実施形態では、分布はより狭くなる可能性があり、例えば、製剤中の小胞の>90%が、最高出現頻度の数値の40、30、20、10、又は5%の範囲内に分布する直径を有し得る。いくつかの実施形態では、小胞形成を促進する及び/又は小胞粒子サイズを変更するために、音波処理又は超音波処理が利用可能である。いくつかの実施形態では、小胞サイズ分布を調節するのに濾過、透析、及び/又は遠心分離が利用可能である。
【0048】
[0051]一般的に、本開示の方法に基づき製造される小胞は、任意のサイズであり得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約150nm〜約15μmの範囲内、例えば約800nm〜約1.5μmの直径を有する小胞を含み得る。特定の実施形態では、小胞は10μmを上回る直径、例えば約15μm〜約25μmを有し得る。特定の実施形態では、小胞は約2μm〜約10μmの範囲、例えば、約1μm〜約4μmの直径を有し得る。特定の実施形態では、小胞は150nm未満、例えば約50nm〜約100nmの直径を有し得る。
【0049】
抗原
[0052]一般的に、任意の1種類又は複数種類の抗原が、本開示の方法を用いて取り込まれ得ると理解される。これまでに議論したように、1種類又は複数種類の抗原が、任意の方式で小胞と会合し得る。いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類の抗原が、小胞の水性コア内に存在し得る。しかし、その疎水性度に応じて、抗原も部分的に又は完全に二重層と会合し得る。一般的に、いくつかの実施形態では、小胞製剤には、小胞と会合しない量の1種類又は複数種類の抗原が含まれ得ると理解される。
【0050】
[0053]いくつかの実施形態では、本開示の方法はワクチンに含まれる1種類又は複数種類の抗原を取り込むのに利用可能である。表1は適するワクチンの非限定的なリストである。
【0051】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0052】
[0054]下記セクションでは、発明者らは利用可能でありうるいくつかの典型的な抗原について議論する。
【0053】
A型肝炎
[0055]A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる重篤な肝臓疾患である。ウイルスは、A型肝炎に罹患した患者の便に見出される。表1に示すように、いくつかの不活性化されたA型肝炎ワクチンが現在認可されている。例えば、ハブリックス(Havrix)(登録商標)はGlaxoSmithKline Biologicalsにより製造されている。米国特許第6,180,110号は、HAVのHM175系統(米国特許第4,894,228号)に起源を有する、ハブリックス(登録商標)で用いられている弱毒化されたHAV系統(HAV4380)について記載する。ハブリックス(登録商標)は、ホルマリンで不活性化されたHAVの滅菌懸濁液を含有する。ウイルス抗原活性がELISAを用いた基準とされ、ELISA単位(U)として表される。成人投与用のワクチン各1mlはウイルス抗原1440Uから構成され、水酸化アルミニウム(ミョウバン)としてアルミニウム0.5mgに吸着されている。ハブリックス(登録商標)(全てのその他の認可されているA型肝炎ワクチンと同様に)が筋肉内(IM)投与用の滅菌懸濁液として供給されている。ハブリックス(登録商標)を1回投与すれば、少なくとも短期的な保護がもたらされるが、6〜12ヶ月後に行われる第2回目のブースター投与が、長期的な保護を保証するために現在推奨されている。
【0054】
[0056]不活性化されたA型肝炎ワクチンの別の例である、エイムゲン(AIMMUGEN)(登録商標)が日本で認可され、化血研により1994年以降市販されている。エイムゲン(登録商標)は、ホルムアルデヒドで不活性化されたHAVの滅菌懸濁液を含有する。推奨される成人用量は、0、1、及び6ヶ月目に実施される0.5μgIMである。
【0055】
[0057]本明細書で用いる場合、表現「HAV抗原」は、ヒトのHAVを標的とする中和抗体を刺激する能力を有する任意の抗原を意味する。HAV抗原は、弱毒化した生ウイルス粒子、若しくは不活性化された弱毒化ウイルス粒子を含み得るが、又は組換えDNA技術により好都合に入手可能な、例えばHAVカプシド若しくはHAVウイルスタンパク質であり得る。
【0056】
[0058]1つの態様では、本開示は、不活性化された又は弱毒化されたA型肝炎ウイルス(本明細書では「A型肝炎ウイルス抗原」又は「ウイルス抗原」とも呼ばれる)が含まれる免疫原製剤を調製する方法を提供する。当該方法は、不活性化されたA型肝炎ウイルスを調製するのに利用可能であると認識される。一般的に、これらの方法には、A型肝炎ウイルスを宿主細胞中で繁殖させ、宿主細胞を溶解してウイルスを放出させ、単離し、次にウイルス抗原を不活性化するステップが含まれる。細胞培養培地を除去した後、細胞は溶解されて懸濁液を形成する。この懸濁液は限外濾過及びゲル浸透クロマトグラフィー法により精製される。次に、精製されたライセートは、ウイルスの不活性化を保証するために、ホルマリンで処理される(例えば、Andreら、Prog.Med.Virol.、第37巻:72〜95頁、1990年を参照されたい)。
【0057】
[0059]エイムゲン(登録商標)を調製する際には、A型肝炎ウイルス系統KRM0003(A型肝炎患者の糞便から単離された野生型HAVより確立された)を、GL37細胞(アフリカミドリザル腎臓の親細胞系統からワクチン生産用に確立された細胞系統)内で繁殖させる。GL37細胞はHAV系統KRM0003を用いて接種され、ウイルス抗原が捕集され、大規模に精製され、ホルムアルデヒドで不活性化される。
【0058】
[0060]市販されているが認可されていないワクチンである、不活性化されたA型肝炎ウイルスの別の例として、Meridian Life SciencesのA型肝炎抗原(HAV−ag)が挙げられる。ハブリックス(登録商標)と同様に、Meridian HAV−agも、A型肝炎ウイルス系統HM175に由来するが、FRhK−4(アカゲザル胎児の腎臓)細胞内で繁殖された。細胞培養培地を除去した後、細胞は溶解されて懸濁液を形成し、当該懸濁液は勾配遠心分離法により部分的に精製され、ホルマリン処理により不活性化される。
【0059】
[0061]任意のA型肝炎ウイルス系統、例えば非限定的に当技術分野において記載されている下記系統のいずれか(及びその他の非ヒト変異体)が利用可能であると理解される。
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Arizona/HAS−15/1979
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Australia/HM175/1976
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/China/H2/H1982
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Costa Rica/CR326/1960
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/France/CF−53/1979
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Georgia/GA76/1976
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Germany/GBM/1976
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Japan/HAJ85−1/1985
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Los Angelos/LA/1975
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Northern Africa/MBB/1978
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Norway/NOR−21/1998
ヒトA型肝炎ウイルス Hu/Sierra Leone/SLF88/1988
ヒトA型肝炎ウイルス MSM1
ヒトA型肝炎ウイルス Shanghai/LCDC−1/1984
【0060】
[0062]更に、ホルマリン及びホルムアルデヒドが、認可済みのA型肝炎ワクチンを不活性化するのに一般的に利用されているが、その他の技法、例えば塩素処理、高温への暴露(ウイルス抗原は85℃/185°Fよりも高温で不活性化される)等も利用可能であると理解される。
【0061】
[0063]特定の実施形態では、不活性化されたA型肝炎ウイルスを調製する従来方法に対して追加のステップを付加するのが有利となると判明し得る。例えば、米国特許第6,991,929号では、ウイルスを繁殖させた後にプロテアーゼ処理ステップ(例えば、トリプシン)を含めることが記載されている。このステップは、宿主細胞物質除去を改善し、より純粋なウイルス調製物を生成することが判明した。
【0062】
[0064]現在認可済みの全A型肝炎ワクチンには、不活性化されたウイルス抗原が含まれているが、弱毒化されたウイルス抗原が含まれている代替ワクチンも文献に記載されている。特定の実施形態では、免疫原性製剤はかかる弱毒化ウイルス抗原を含み得る。当技術分野において周知の通り、弱毒化ワクチンの長所は、完全感染を引き起こすさずに、in vivoで複製する能力に起因するより高い免疫原性に関する潜在能力にある。
【0063】
[0065]当技術分野において、弱毒化A型肝炎ウイルスを調製するのに用いられる1つの方法は、ウイルス系統に複数回の細胞培養処理を連続的に適用するステップと関係するウイルス適応である。時間経過と共に、系統は突然変異し、次いで弱毒化した系統が同定され得る。特定の実施形態では、ウイルスに異なる細胞培養処理を適用することができる。例えば、研究者らはヒト二倍体肺(MRCS)細胞培養物に系統CR326を16回通過させることにより、弱毒化A型肝炎ウイルスを生み出した(Provostら、J.Med.Virol.、第20巻:165〜175頁、2005年を参照されたい)。同一系統をアカゲザル胎児の腎臓(FRhK6)細胞培養物に15回、及びMRCS細胞培養物に8回通過させることにより若干高毒性の系統が得られた。このような方法でH2系統から調製された別の弱毒化A型肝炎ワクチンも記載されている(欧州特許第0413637号及びMaoら、Vaccine、第15巻:944〜947頁、1997年を参照されたい)。
【0064】
[0066]特定の実施形態では、低温で1回又は複数回の細胞培養ステップを実施するのが有利であると判明する場合がある。例えば、欧州特許第0413637号は、温度を下げた(例えば、35〜36℃の代わりに32〜34℃まで)1つ又は複数の接種ステップを含めることを記載する。
【0065】
[0067]米国特許第6,180,110号は、MRC−5細胞内で増殖する弱毒化A型肝炎ウイルス(HAV4380)について記載する。研究者らは、より高毒性の系統のゲノムをHAV4380ゲノムと比較することにより、HAV4380中に、弱毒化に関連すると考えられる突然変異を認めた。これにより、研究者らは、弱毒化A型肝炎ワクチンの候補として最適な特徴を有する突然変異HAV系統を設計できるようになった。このアプローチは、任意の公知の弱毒化A型肝炎ウイルスに適用可能であり、ウイルス適応を必要とせずに変異体を遺伝子工学的に作り出すのに利用可能であると認識される。
【0066】
B型肝炎
[0068]B型肝炎ウイルス(HBV)は、急性及び慢性感染症の両方を引き起こす。HBV感染症の臨床スペクトルは広く、無症候性から急性症候性の肝炎、すなわち不活性なB型肝炎表面抗原(HBsAg)キャリア状態から肝硬変及びその慢性期の合併症に及ぶ(Fattovich、J.Hepatol.、第39巻:s50〜58頁、2003年)。HBVは、一般的にHBVに感染したヒトに由来するHBsAg陽性体液に対して非経口的に又は粘膜経由で暴露すると感染する(Hilleman、Vaccine、第21巻:4626〜4649頁、2003年)。
【0067】
[0069]現在のところ、2つの市販ワクチンがHBV感染防止に用いられており、両方共に組換え技術を用いて製造されている。例えば、Engerix(エンジェリックス)−B(商標)は、GlaxoSmithKline Biologicalsにより開発された、非感染性組換えDNA B型肝炎ワクチンである。このワクチンはHBVの精製された表面抗原を含有するが、同HBVは、HBVの表面抗原遺伝子を担持する、遺伝子工学的に生み出されたサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cervisiae)細胞を培養することにより得られる。
【0068】
[0070]本明細書で用いる場合、表現「B型肝炎表面抗原」又は「HBsAG」は、ヒトでHBV表面抗原の抗原性を提示する任意のHBsAG抗原又はその断片を意味する。
【0069】
[0071]エンジェリックス−B(商標)及びその他の認可済みのB型肝炎ワクチンは、非経口的(parentally)に投与され、HBVに対する全身性免疫反応を誘発するのに成功した。しかし、全身性免疫反応の一環として生成した抗体は、HBVを含めほとんどの感染性物質の主要な侵入部位である粘膜のレベルで防御を提供することができない。したがって、当技術分野においてB型肝炎ワクチンを経口により送達する必要性が依然存在する。
【0070】
[0072]1つの態様では、本開示は、HBsAGの抗原性を提示するB型肝炎ウイルス表面抗原又はその断片が含まれる免疫原性製剤を調製する方法を提供する。全ての公知のB型肝炎ワクチンには、組換えHBsAGが含まれている。上記の認可済みB型肝炎ワクチンの任意の1つが、免疫原性製剤を生成させるために抗原源として本開示の方法で利用可能であると理解される。
【0071】
[0073]一般的に、任意の方法がB型肝炎表面抗原を調製するのに利用可能である。HBsAGの調製物について十分に文書化されている(例えば、特にHarfordら、Develop.Biol.Standard、第54巻:125頁、1983年、及びGreggら、Biotechnology、第5巻:479頁、1987年を参照されたい)。一般的に、組換えDNA技術法が利用可能であり、同法には、HBVの表面抗原遺伝子を担持する遺伝子工学的に生み出された細胞を培養するステップが含まれる。次に、発現した表面抗原は精製され、そして通常、水酸化アルミニウム上に吸着された表面抗原の懸濁液として処方化される(例えば、Valenzuelaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、第80巻:1〜5頁、1983年、及びMcAleerら、Nature、第307巻:178〜180頁、1984年を参照されたい)。
【0072】
インフルエンザ
[0074]インフルエンザは、オルトミクソウイルス(Orthomyxoviridae)科のウイルスに関連した呼吸器系の一般的感染性疾患である。インフルエンザA及びBは、流行性のヒト疾患を引き起こす2つタイプのインフルエンザウイルスである。インフルエンザAウイルスは、2つ表面抗原、赤血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(N)に基づき、更にサブタイプに分類される。インフルエンザBウイルスは、サブタイプに分類されない。ワクチン接種は、インフルエンザ感染及び関連する合併症に起因する重篤な疾患に対してハイリスク状態にある者のために、インフルエンザを予防し、又は弱毒化する単独の最も効果的な方法として認識されている。不活性化されたインフルエンザウイルスから調製された抗原を接種することにより、特異的抗体産生が刺激される。防御は、ワクチンの調製源となるウイルス系統、又はこれと緊密に関連した系統に対してのみ一般的に有効である。
【0073】
[0075]インフルエンザワクチンは、すべての種類において、通常三価ワクチンである。これらは一般的に2種類のインフルエンザAウイルス系統、及び1種類のインフルエンザB系統に由来する抗原を含有する。季節毎にインフルエンザワクチンに組み込まれるインフルエンザウイルス系統は、国家保健機関及びワクチン製造業者と協力しながら、世界保健機構(WHO)により決定される。本開示に基づき任意のインフルエンザウイルス系統が利用可能であるが、またインフルエンザウイルス系統はWHOの勧告に基づき年毎に異なると認識される。
【0074】
[0076]単価ワクチンは、例えば流行型の場合に有用であり得るが、これも含まれる。単価の、流行型インフルエンザワクチンは、単一のA系統に由来するインフルエンザ抗原を含有する可能性が最も高い。いくつかの実施形態では、インフルエンザ抗原は流行型インフルエンザ系統に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、インフルエンザ抗原は、インフルエンザA(ブタ起源のH1N1)ウイルス抗原である。
【0075】
[0077]主として3つのタイプの不活性化されたワクチンが、インフルエンザに対する防御を提供するために全世界で用いられている。全粒子ウイルスワクチン、ウイルスの外部及び内部の成分を含有するスプリットウイルスワクチン、及びウイルスのすぐ外側の成分(赤血球凝集素及びノイラミニダーゼ)から構成されるサブユニットワクチン。いかなる理論にも制限されることを欲することなく、サブユニットワクチンの純度がより高いほど、同ワクチンの反応原生(reactogenic)は低下し、耐容性は高められるはずであると考えられる。反対に全粒子ウイルスワクチン、及びスプリットウイルスワクチンは、より多くのエピトープを含有し、したがって免疫原性が高まると考えられる。
【0076】
[0078]いくつかの実施形態では、インフルエンザ抗原はサブユニットワクチンに基づく。一般的に、サブユニットワクチンは、効果的なワクチン接種に必要とされるインフルエンザウイルスのかかる部分のみを含有する(例えば、防御免疫反応を誘発する部分)。いくつかの実施形態では、サブユニットインフルエンザ抗原は、ウイルス粒子から調製される(例えば、ウイルスの特別な成分を精製する)。いくつかの実施形態では、サブユニットインフルエンザ抗原は、組換え法により調製される(例えば、細胞培養物中での発現)。例えば、米国特許第5,858,368号は、組換えDNA技術を用いて、組換えインフルエンザワクチンを調製する方法を記載する。得られた三価インフルエンザワクチンは、伝染能力を有するインフルエンザウイルスからクローン化された、組換え赤血球凝集素抗原の混合物に基づく。組換え赤血球凝集素抗原は、培養された昆虫細胞中のバキュロウイルス発現ベクターから生み出され、非変性条件下で精製された完全長、非開裂、糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、サブユニットインフルエンザ抗原は、合成法により生み出される(例えば、ペプチド合成)。サブユニットワクチンは、WHOが決定した選択系統から調製された、精製済みの表面抗原、赤血球凝集素抗原、及びノイラミニダーゼ抗原を含有し得る。いかなる理論にも拘束されることを欲することなく、表面抗原、赤血球凝集素抗原、及びノイラミニダーゼ(neuramidase)抗原は、ワクチン接種時のウイルス中和抗体産生の誘発において重要な役割を演ずると考えられる。
【0077】
[0079]いくつかの実施形態では、インフルエンザ抗原は、スプリットウイルス抗原である。スプリットウイルス抗原を用いて調製されたワクチンは、ウイルスの最も免疫原性の部分(例えば、赤血球凝集素及びノイラミニダーゼ(neuramidase))をより高濃度で一般的に含有するが、一方、免疫原性がより低いウイルスタンパク質、並びに卵に由来する非ウイルスタンパク質(ウイルスの産生に用いられる)、又は外来物質(例えば、ニワトリ白血病ウイルス、その他の微生物、及び細胞残屑)の濃度を低減する。一般的に、スプリットウイルス抗原は物理的プロセスにより調製されるが、同プロセスには一般的に有機溶媒又は界面活性剤(例えば、トリトンX−100)によりウイルス粒子を破壊するステップと、例えばスクロース勾配上で遠心分離を行う、又はクロマトグラフ用カラム上で尿膜腔液を通過させる等により、程度に相違こそあれウイルスタンパク質を分離又は精製するステップとが含まれる。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子の破壊及び分離の後に透析又は限外濾過が続く。スプリットウイルス抗原は、全ウイルス内で生じている割合と必ずしも同一ではないものの、大部分の又は全てのウイルス構造タンパク質を通常含有する。ウイルスのスプリッティング方法、並びに適するスプリッティング剤は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許公開第20090155309号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、スプリットウイルス抗原の最終抗原濃度(例えば、赤血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ(neuramidase)抗原の濃度)は、当技術分野において公知の方法(例えば、ELISA)を用いて標準化される。
【0078】
[0080]いくつかの実施形態では、インフルエンザ抗原は、全粒子ウイルス抗原である。抗原刺激を受けていない個人では、全粒子ウイルス抗原で調製されたワクチンは、免疫原性がより高くなり得、その他の製剤(例えば、サブユニット又はスプリットウイルス抗原)よりも低い抗原用量で、高い防御的抗体反応を誘発し得ると考えられる。しかし、全粒子ウイルス抗原を含むインフルエンザワクチンは、その他の製剤よりも多くの副作用を引き起し得ると考えられる。
【0079】
[0081]本明細書に記載する免疫原性製剤中に存在するインフルエンザウイルス抗原は、感染性であり得、不活性化又は弱毒化され得る。
【0080】
[0082]特定の実施形態では、免疫原性製剤は、不活性化されたウイルス抗原を含み得る。不活性化されたインフルエンザウイルス抗原を調製するのに、任意の方法が利用可能であると認識される。国際公開第09/029695号パンフレットは、不活性化全粒子ウイルスワクチンを生成する典型的な方法を記載する。一般的に、これらの方法には、宿主細胞中でインフルエンザウイルスを繁殖させるステップと、任意選択的に宿主細胞を溶解してウイルスを放出させるステップと、ウイルス抗原を単離し、次にこれを不活性化するステップとが含まれる。ウイルスの化学的処理(例えば、特にホルマリン、ホルムアルデヒド)が、ワクチン製剤の用途でウイルスを不活性化するのに一般的に用いられる。しかし、例えば塩素による処理、高温への暴露等のその他の技法も利用可能と理解される。これらの処理では、外部ビリオンコートは一般的にそのままの状態に保たれるが、一方、複製機能は損なわれる。非複製ウイルスワクチンは、宿主中で複製可能な生ワクチンよりも多くの抗原を含有するのが好ましい。
【0081】
[0083]特定の実施形態では、免疫原性製剤は、弱毒化ウイルス抗原を含み得る。当技術分野において周知の通り、弱毒化ウイルス抗原により調製されたのワクチンの1つの長所は、完全な感染を引き起こすさずに、in vivoで複製する能力に起因するより高い免疫原性に関する潜在能力にある。弱毒化された系統から調製された生ウイルスワクチンは、好ましくは病原性を欠くが、なおも宿主中で複製することができる。弱毒化インフルエンザウイルス抗原を調製するのに当技術分野において用いられている1つの方法は、ウイルス系統に複数回の細胞培養処理を連続的に適用するステップと関係するウイルス適応である。時間経過と共に、系統は突然変異し、次いで弱毒化した系統が同定され得る。特定の実施形態では、ウイルスに異なる細胞培養処理を適用することができる。特定の実施形態では、低温で1回又は複数回の細胞培養ステップを実施するのが有利であると判明する場合がある。
【0082】
[0084]いくつかのインフルエンザワクチンが、現在認可されている(表1を参照されたい)。例えば、フルゾン(Fluzone)(登録商標)はスプリット細胞不活性化インフルエンザワクチンであり、これはSanofi Pasteur,Inc.により開発及び製造されており、本開示に基づき利用可能である。フルゾン(登録商標)は、発育鶏卵中で繁殖したインフルエンザウイルスから調製された滅菌懸濁液を含有する。ウイルス含有液は、捕集され、ホルムアルデヒドで不活性化される。インフルエンザウイルスは、連続フロー遠心分離機を用いて、線形スクロース密度勾配溶液内で濃縮及び精製される。次に、ウイルスは非イオン性界面活性剤、オクトキシノール−9、(トリトン(Triton)(登録商標)X−100)を用いて化学的に破壊され、スプリットウイルス抗原を生成する。次に、スプリットウイルスは、化学的手段により更に精製され、リン酸ナトリウムで緩衝化された等張性塩化ナトリウム溶液中に懸濁される。フルゾン(登録商標)ワクチンは、次にインフルエンザシーズンに応じた要件に基づき標準化され、3種類のプロトタイプ系統(例えば、A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)、A/Wisconsin/67/2005(H3N2)、及びB/Malaysia/2506/2004系統を用いて調製された2007−2008ワクチン)の代表的な推奨比である各15μgの赤血球凝集素(HA)で、0.5mL用量当たり45μgのHAを含むように処方化される。フルゾン(登録商標)ワクチンは筋肉内注射用として処方化されている。
【0083】
[0085]本開示に基づき利用可能である認可済みインフルエンザワクチンの別の例はバクシグリップ(Vaxigrip)(登録商標)であり、これもSanofi Pasteur,Inc.により開発及び製造されたスプリット細胞不活性化インフルエンザワクチンである。バクシグリップ(登録商標)は、フルゾン(登録商標)について上記で概説したプロセスに類似した方法で調製され、筋肉内注射用として同様に処方化されている。
【0084】
[0086]本開示に基づき利用可能である認可済みインフルエンザワクチンのなおも別の例は、フルミスト(Flumist)(登録商標)である。フルミスト(登録商標)は、鼻腔内スプレーにより投与するための生の弱毒化された三価ワクチンである。フルミスト(登録商標)に含まれるインフルエンザウイルス系統は、温度制約を受ける増殖、及び弱毒化された表現型を引き起こす3種類の遺伝子突然変異を有する。抗原特性及び遺伝学的に改変されたインフルエンザウイルスの累積的な効果として、同ウイルスが鼻咽頭内で複製可能、及び防御免疫を誘発可能であることが挙げられる。フルミスト(登録商標)を製造するために、特別な病原体を含まない(SPF)卵が、しかるべきウイルス系統それぞれを用いて接種され、ワクチンウイルスの複製が可能となるようにインキュベーションされる。上記卵の尿膜腔液は捕集され、プールされ、次に濾過により清透化される。ウイルスは、超遠心分離法により濃縮され、安定化バッファーを用いて希釈されて、最終的なスクロース及びリン酸カリウム濃縮物が得られる。次に、ウイルス捕集物は滅菌濾過されて、単価バルクが生成する。3つの系統に由来する単価バルクは混合され、その後必要に応じて所望の効力に達するように安定化バッファーを用いて希釈されて、三価のバルクワクチンが生成する。次に、バルクワクチンは個々の鼻腔投与用噴霧器に直接充填される。事前充填され、冷蔵保存された各フルミスト(登録商標)噴霧器は、単回用量0.2mLを含有する。各0.2mL用量は、該当する3種類のウイルス系統それぞれからなる生きた弱毒化インフルエンザウイルス再集合体10
6.5〜7.5FFUを含有する。
【0085】
[0087]上記したように、いくつかのインフルエンザワクチンが現在認可されている。これらの認可済みのインフルエンザワクチンの任意の1つ又は組み合わせたものが、免疫原性処方を製造するために本明細書に記載する小胞と併用可能であると理解される。例えば、市販のフルゾン(登録商標)及び/又はバクシグリップ(登録商標)が、活性な免疫原性製剤を製造するのにこのような方式で併用可能である。いくつかの実施形態では、認可済みのインフルエンザワクチンは最初に精製される(例えば、ワクチンに含まれるミョウバンアジュバント又はその他の試薬を除去すために)。いくつかの実施形態では、認可済みのインフルエンザワクチンは、本明細書に記載する小胞と共に処方化される前に精製されない。
【0086】
国際出願PCT/US09/47911号は、本開示の方法及び製剤で利用可能ないくつかのその他の典型的なインフルエンザ抗原を記載する。典型的なインフルエンザ抗原は、米国特許第7,527,800号;同第7,537,768号;同第7,514,086号;同第7,510,719号;同第7,494,659号;同第7,468,259号;同第7,399,840号;同第7,361,352号;同第7,316,813号;同第7,262,045号;同第7,244,435号;同第7,192,595号;同第7,052,701号;同第6,861,244号;同第6,743,900号;同第6,740,325号;同第6,635,246号;同第6,605,457号;同第6,534,065号;同第6,372,223号;同第6,344,354号;同第6,287,570号;同第6,136,606号;同第5,962,298号;同第5,948,410号;及び同第5,919,480号にも記載されている。
【0087】
その他のウイルス
[0088]C型肝炎ウイルス(HCV)が、今日、輸血に関連した非A、非B(NANB)肝炎の主原因として認識されている。HCVは、フラビウイルス及びペスチウイルスと類似性を有する一本鎖、プラスのセンス鎖(positive−sense)のRNAウイルスである(Millerら、Proc.Natl.Acad.Sci.、第87巻:2057頁、1991年、及びWeinerら、Virology、第180巻:842頁、1990年)。米国特許第7,348,011号;同第6,831,169号;同第6,538,123号及び同第6、235、888号の全ては、ワクチンで利用可能な典型的なHCV抗原について記載する。
【0088】
[0089]ヒト免疫不全レトロウイルス(HIV)は、身体の免疫系を破壊し、身体を日和見感染に対して感染し易くする疾患であるAIDS(後天性免疫不全症候群)に関係する。米国特許第7、067、134号;同第7、063、849号;同第6、787、351号;同第6、706、859号;同第6、692、955号;同第6、653、130号;同第6、649、410号;同第6、541、003号;同第6、503、753号;同第6、500、623号;同第6、383、806号;同第6、090、392号;同第5、861、243号;同第5、817、318号;及び同第4、983、387号の全ては、ワクチンで利用可能な典型的なHIV抗原について記載する。様々なHIV抗原も、米国特許出願公開第20090117141号及び同第20090081254号に開示されている。
【0089】
[0090]特定の実施形態では、本開示の方法に基づき調製される免疫原性製剤は、熱不安定性の抗原を含み得る。本明細書で用いる場合、用語「熱不安定性の抗原」とは、ある上昇した温度に暴露されると、抗原完全性を喪失するような抗原を意味する。いくつかの実施形態では、熱不安定性の抗原を上昇した温度に暴露すると、抗原の完全性分析(例えば、ELISA)で測定される通り、操作を受けない抗原と比較して抗原の抗原完全性の20%超(例えば、30%超、40%超、50%超、又はこれらより多く)が破壊される。特定の実施形態では、熱不安定性の抗原は、30℃より高い温度で抗原完全性を喪失する(例えば、35℃超、40℃超、45℃超、又は50℃超)。いくつかの実施形態では、熱不安定性の抗原をこれらの上昇した温度のうちの1つで3分より長く(例えば、5分、10分、15分、又はこれらより長く)保管すると、抗原の完全性分析(例えば、ELISA)で測定される通り、操作を受けない抗原と比較して抗原の抗原完全性の20%超(例えば、30%超、40%超、50%超、又はこれらより多く)が破壊される。上記で議論したように、本開示の方法ではより低い温度の抗原溶液が利用可能であり、抗原の完全性がより良好に保存可能となるので、このような方法は、熱不安定性の抗原にとって特に有益である。
【0090】
[0091]本開示は抗原に限定されず、一般的に、本方法は物質が抗原的か又は非抗原的かによらず任意の物質を取り込むのに利用可能であると理解される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗原であっても、またなくてもよい1つ又は複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は多糖類を取り込むのに利用可能である。特定のクラスの物質として、アジュバント、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、細胞反応修飾因子、例えば増殖因子及び化学走化性因子等、抗体、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス薬、プラスミド、DNA、及びRNAが挙げられるが、但し、これらに限定されない。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、抗体又は抗体断片、例えば、ヒト化抗体であり得る。いくつかの実施形態では、これらの物質は、抗原に関する文脈において上記で引用した条件下において、分解生成物(degradant)に変換するという点において熱不安定性である。
【0091】
アジュバント
[0092]特定の実施形態では、本開示の方法は、小胞製剤に1つ又は複数のアジュバントを添加するステップを更に含み得る。当技術分野において周知の通り、アジュバントは免疫反応を増強する物質である。アジュバントは、当技術分野において周知されている(例えば、「Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach」、Pharmaceutical Biotechnology、第6巻、Powell及びNewman編集、Plenum Press、New York及びLondon、1995年を参照されたい)。いくつかの実施形態では、アジュバントは、小胞製剤が(取り込まれる抗原と共に)調製され次第添加可能である。いくつかの実施形態では、アジュバントは、小胞処方を調製するプロセス期間中に添加可能である(例えば、小胞形成脂質又はその他の小胞成分と共に、抗原と共に、又は専用のステップで)。
【0092】
[0093]特定の実施形態では、抗原が添加される前にアジュバントは添加される。いくつかの実施形態では、アジュバントは小胞形成脂質と共に同時溶融される。いくつかの実施形態では、TLR−4アジュバント(下記に記載する)は小胞形成脂質と共に同時溶融される。特定の実施形態では、アジュバントは、抗原が添加された後に添加される。いくつかの実施形態では、アジュバントは、抗原が添加された後に凍結保護物質と共に添加される。いくつかの実施形態では、TLR−3アジュバント(下記に記載する)は、抗原が添加された後に凍結保護物質と共に添加される。いくつかの実施形態では、凍結保護物質はスクロースである。
【0093】
[0094]典型的なアジュバントとして、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、スクアレン、スクアラン、及びミョウバン(水酸化アルミニウム)が挙げられ、これらは当技術分野において周知の物質であり、いくつかの供給元から市販されている。特定の実施形態では、アルミニウム又はカルシウム塩(例えば、水酸化物又はリン酸塩)が、アジュバントとして利用可能である。ミョウバン(水酸化アルミニウム)が、多くの既存のワクチンで用いられてきた。IM投与の場合、一般的に、1用量当たり約40〜約700μgのアルミニウムが含まれる。例えば、ハブリックス(登録商標)には、1用量当たり500μgのアルミニウムが含まれる。
【0094】
[0095]様々な実施形態では、水中油型エマルジョン、又は油中水エマルジョンもアジュバントとして利用可能である。例えば、油相はスクアレン又はスクアラン、及び界面活性剤を含み得る。様々な実施形態では、非イオン性界面活性剤、例えばソルビタン及びマンニドのモノ−及びジ−C
12〜C
24−脂肪酸エステルが利用可能である。油相は、免疫原性製剤の約0.2〜約15重量%を含むのが好ましい(例えば、約0.2〜1%)。PCT国際公開第95/17210号パンフレットは典型的なエマルジョンについて記載する。
【0095】
[0096]QS21と呼ばれるアジュバントは、南米の木であるキラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来するアジュバント活性を有する免疫学的に活性なサポニン分画であり、その製造方法は米国特許第5,057,540号に開示されている。キラジャ・サポナリア・モリナの半合成及び合成誘導体、例えば米国特許第5,977,081号及び同第6,080,725号に記載する誘導体等も有用である。
【0096】
[0097]TLRは、ショウジョウバエToll受容体と相同性を有するタンパク質ファミリーであり、病原体に関連する分子パターンを認識し、したがって身体が自己及び非自己分子を区別する際に役立つ。ウイルス病原体に一般的な物質は、病原体関連の分子パターンとしてTLRにより認識される。例えば、TLR−3は二本鎖RNA内のパターンを認識し、TLR−4は、リポ多糖内のパターンを認識する一方、TLR−7/8は、ウイルス及び細菌のRNA及びDNA内のアデノシン含有パターンを認識する。TLRがかかるパターン認識により誘発されると、炎症及び自然免疫反応及び適応性免疫反応の活性化を引き起こす一連のシグナル伝達現象が生ずる。様々なTLRにより認識される分子パターンを含有するいくつかの合成リガンドが、アジュバントとして開発途上にあり、本明細書に記載する免疫原性製剤に含まれ得る。
【0097】
[0098]例えば、ポリリボイノシン酸:ポリリボシチジル酸又はポリ(I:C)(San Diego、CA(カリフォルニア州)のInvivoGenより入手可能)は、二本鎖RNA(ウイルス感染に関連した分子パターン)の合成アナログであり、TLR−3に対するアゴニストである典型的なアジュバントである(例えば、Fieldら、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、第58巻:1004頁(1967年)、及びLevyら、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、第62巻:357頁(1969年)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ポリ(I:C)は、安定性を改善するためにその他の物質と併用可能である(例えば、リボヌクレアーゼによる分解を低減することにより)。例えば、米国特許第3,952,097;同第4,024,241号、及び同第4,349,538号は、ポリ−L−リジンとのポリ(I:C)複合体について記載する。ポリ(I:C)にポリ−アルギニンを添加しても、RNA分解酵素の活性による分解が低減することが明らかとなった。ポリ(IC:LC)は、ポリ−L−リジンカルボキシメチルセルロースにより安定化された合成、二本鎖ポリ(I:C)である。米国特許公開第20090041809号は、TLR−3アゴニストとして作用可能なロックド核酸(LNA)ヌクレオシドを1つ又は複数含む二本鎖核酸について記載する。当業者は、その他の適するTLR−3アゴニストアジュバントを識別することができるであろう。
【0098】
[0099]弱毒化された脂質A誘導体(ALD)、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、及び3−デアシルモノホスホリルリピドA(3D−MPL)は、TLR−4に対するアゴニストである典型的なアジュバントである。ALDは、分子が、脂質Aが示す副作用よりも少ない又はこれと異なる副作用を示すように変更又は構築された脂質A様分子である。そのような副作用として発熱性、局所的シュワルツマン反応、及びニワトリ胚50%致死量分析(CELD
50)で評価されるような毒性が挙げられる。MPL及び3D−MPLは、米国特許第4,436,727号及び同第4,912,094号にそれぞれ記載されている。MPLは、腸内細菌性のリポ多糖類(LPS)の成分であり、強力であるが極めて毒性の高い免疫系モジュレーターである脂質Aに起源を有した。3D−MPLは、第3位の還元末端グルコサミンにエステル結合したアシル残基が選択的に除去されている点においてMPLと異なる。MPL及び3D−MPLには、いくつかの脂肪酸置換パターン、すなわち異なる脂肪酸鎖長を有するヘプタアシル、ヘキサアシル、ペンタアシル等が混合したものが含まれ得ると認識される。したがって、MPL及び3D−MPLの様々な形態が、それらの混合したものを含め、本開示に含まれる。
【0099】
[0100]いくつかの実施形態では、これらのALDは、例えば2%スクアレン/ツイーン(Tween)(商標)80エマルジョン(例えば、英国特許第2122204号を参照されたい)内で、トレハロースジミコール酸(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)と併用可能である。MPLは、Alabaster、AL(アラバマ州)のAvanti Polar Lipids,Inc.からPHAD(リン酸化ヘキサアシル二糖類)として入手可能である。当業者は、その他の適するTLR−4アゴニストアジュバントを識別できるであろう。例えば、その他のリポ多糖類が、PCT国際公開第98/01139号パンフレット;米国特許第6,005,099号、及び欧州特許第729473号に記載されている。
【0100】
II.小胞処方
[0101]別の態様では、本開示は、これらの方法を用いて調製された抗原含有小胞製剤を提供する。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞製剤は、先行技術の方法を用いて実現可能なレベルよりも高い抗原取り込みレベルを示す。いくつかの実施形態では、抗原含有小胞製剤は、先行技術の方法を用いて実現可能なレベルよりも高い抗原活性(すなわち、抗原性及び/又は免疫原性)レベルを示す。
【0101】
[0102]免疫原性小胞製剤は、成人及び小児を含むヒトが罹患する多くの疾患を治療するのに有用である。但し、一般的に同製剤は任意の動物で利用可能である。特定の実施形態では、本明細書の方法は、獣医学用途、例えばイヌ及びネコの用途で利用可能である。所望であれば、本明細書の方法は、家畜、例えばヒツジ、トリ、ウシ、ブタ、及びウマの飼育でも利用可能である。
【0102】
[0103]本明細書に記載する免疫原性小胞製剤は、免疫反応を誘発するのに必要な又は十分なほどの量で、及び時間かけて一般的に投与される。投与計画は、単回投与、又は長期複数回投与から構成され得る。投与される正確な抗原量は、患者によって変化し得るが、またいくつかの要因に依存する場合がある。したがって、一般的に、用いられる正確な用量は、処方担当医師の決定に従い、並びに患者の体重及び投与経路に依存するばかりでなく、投与頻度、患者の年齢、及び症状の重症度、及び/又は感染リスクにも依存し得ると認識される。特定の実施形態では、免疫原性製剤中の抗原用量は、約5μg〜約5mg、例えば、約100μg〜約750μgの範囲であり得る。舌下又は口腔内投与法を用いる場合、又はアジュバントが存在する場合には低めの用量の抗原で十分であり得る。経口投与の場合、特にアジュバントが存在しない場合には、高めの用量がより有用であり得る。
【0103】
[0104]一般的に、製剤は任意の経路により患者に投与可能である。特に、実施例の結果は、本明細書に記載する免疫原性製剤を、経口により投与しても、防御反応を誘発可能であることを実証する。あらゆる形態の注射よりも経口送達の方が有利である(すなわち、順守、質量分布等)という点に照らして、経口経路が特に望ましいと認識される。また、ほとんどのワクチン(全ての公知のA型肝炎ワクチンを含む)が、これまで非経口的に投与されてきたという事実に照らして、結果が予測しえないとも認識される。
【0104】
[0105]したがって、特定の実施形態では、免疫原性製剤は経口により(口腔内、舌下による、及び胃洗浄又はその他の人工的な摂食手段による投与を含め)投与可能である。かかる経口送達は、例えば錠剤、カプセル、多重粒子、ゲル、フィルム、胚珠(ovule)、エリキシル剤、溶液、懸濁液等の形態の固体又は液体製剤を用いて実現可能である。特定の実施形態では、液体製剤を用いる場合には、胃のpHを中和するために、製剤は塩基性製剤(例えば、重炭酸溶液)と組み合わせて投与され得る。特定の実施形態では、塩基性製剤は、免疫原性製剤の前、及び/又は後に投与され得る。特定の実施形態では、塩基性製剤は、投与前に免疫原性製剤と併用可能であり、又は免疫原性製剤と同時に服用可能である。
【0105】
[0106]経口送達が特に興味深いけれども、特定の実施形態では、免疫原性製剤は、非経口的、例えば注射による送達用途でも処方化可能であると認識される。かかる実施形態では、投与法は、例えば静脈内、筋肉内、皮内、若しくは皮下であり得、又は輸液又は無針注射技法経由であり得る。かかる非経口投与法の場合、免疫原性製剤は、従来の凍結乾燥された製剤の状態で調製可能及び維持可能であり、投与前に0.9%生理食塩水溶液等の薬学的に許容される生理食塩水溶液で再溶解可能である。注射用製剤のpHは、当技術分野において公知なように、薬学的に許容される酸、例えばメタンスルホン酸等で調節可能である。利用可能なその他の許容可能なビヒクル及び溶媒として、リンゲル液及びU.S.P.が挙げられる。更に、滅菌状態の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として慣習的に利用されている。これを目的として、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油が利用可能である。更に、オレイン酸等の脂肪酸が注射剤の調製に用いられる。注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターを通過させる濾過により、又は滅菌水若しくはその他の滅菌注射媒体に溶解可能又は分散可能な、滅菌固体製剤の形態を取る滅菌剤を組み込むことにより、使用前に滅菌処理可能である。
【0106】
[0107]免疫原性製剤は鼻腔内経由で又は吸入によっても投与可能であり、同製剤は、乾燥粉末吸入剤又はエアゾールスプレー調製物の形態で、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又は噴霧機から、適する噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ハイドロフルオロアルカン、二酸化炭素、又はその他の適する気体を使用する又は使用しないで好都合に送達される。加圧エアゾールの場合には、用量単位は、計量された量を送達するバルブを設けることにより設定可能である。加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又は噴霧機は、抗体の溶液又は懸濁液を、例えば溶媒としてエタノール及び噴霧剤の混合物を用いて含み得るが、潤滑剤、例えばソルビタントリオレエート等を更に含み得る。吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチン製の)が、免疫原性製剤とラクトース又はデンプン等の適する粉末ベースとの粉末混合物を含むように処方可能である。
【0107】
[0108]直腸投与用の製剤は好ましくは坐剤であり、これは、免疫原性製剤を、周囲温度で固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸円蓋内で溶融し、抗体を放出する適する非刺激性の賦形剤又は担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、又は坐薬ワックスと共に混合することにより調製可能である。当技術分野において公知なように、貯留浣腸器及び直腸カテーテルも利用可能である。ヒドロキシプロピルセルロース等の増粘担体も、直腸内に製剤を保持しやすくするので、直腸投与で用いられる本開示のしかるべき担体に該当する。一般的に、製剤に添加される担体の容積は、製剤の保持が最大化するように選択される。特に、容積は、投与された製剤を直腸円蓋内で保持するのを阻害するほどに大きくなってはならない。
【0108】
典型的な処方
[0109]いくつかの実施形態では、本開示は免疫原性製剤を提供するが、これには抗原、TLR−3アゴニストアジュバント、及び小胞が含まれ、前記小胞は、非イオン性界面活性剤、及び粘膜を横断する脂質様分子の輸送を促進する輸送促進物質を含む。いくつかの実施形態では、これらの製剤は経口投与され得る。いくつかの実施形態では、TLR−3アゴニストアジュバントは、ポリ(I:C)を含む。いくつかの実施形態では、TLR−3アゴニストアジュバントは、ポリ(IC:LC)を含む。いくつかの実施形態では、輸送促進物質は、胆汁酸、その誘導体、又は任意のこれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)である。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、グリセリンエステル(例えば、1−モノパルミトイルグリセリン)である。いくつかの実施形態では、小胞は、イオン性両親媒性物質(例えば、ジセチルホスフェート)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、ステロイド(例、コレステロール)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、1−モノパルミトイルグリセリン、ジセチルホスフェート、コレステロール、及びデオキシコール酸ナトリウムを含む。
【0109】
[0110]いくつかの実施形態では、本開示は免疫原性製剤を提供するが、これには抗原、TLR−3アゴニストアジュバント、及び小胞が含まれ、前記小胞は、非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、これらの製剤は非経口(例えば、筋肉内注射により)投与され得る。いくつかの実施形態では、TLR−3アゴニストアジュバントは、ポリ(I:C)を含む。いくつかの実施形態では、TLR−3アゴニストアジュバントは、ポリ(IC:LC)を含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、グリセリンエステル(例えば、1−モノパルミトイルグリセリン)である。いくつかの実施形態では、小胞は、イオン性両親媒性物質(例えば、ジセチルホスフェート)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、ステロイド(例、コレステロール)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、1−モノパルミトイルグリセリン、ジセチルホスフェート、及びコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、小胞は輸送促進分子を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、コール酸及びケノデオキシコール酸等の「胆汁酸」、そのグリシン又はタウリンとの結合体生成物、例えばグリココール酸及びタウロコール酸等、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸を含む誘導体、及びこれらの酸のそれぞれの塩を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、アシルオキシ化アミノ酸、例えばアシルカルニチンとその塩、及びパルミトイルカルニチン等を欠く場合がある。
【0110】
[0111]いくつかの実施形態では、本開示は免疫原性製剤を提供するが、これには抗原、TLR−4アゴニストアジュバント、及び小胞が含まれ、前記小胞は、非イオン性界面活性剤、及び粘膜を横断する脂質様分子の輸送を促進する輸送促進物質を含む。いくつかの実施形態では、これらの製剤は経口投与され得る。いくつかの実施形態では、TLR−4アゴニストアジュバントは、モノホスホリルリピドA、又は3−デアシルモノホスホリルリピドAを含む。いくつかの実施形態では、輸送促進物質は、胆汁酸、その誘導体、又は任意のこれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)である。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、グリセリンエステル(例えば、1−モノパルミトイルグリセリン)である。いくつかの実施形態では、小胞は、イオン性両親媒性物質(例えば、ジセチルホスフェート)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、ステロイド(例、コレステロール)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、1−モノパルミトイルグリセリン、ジセチルホスフェート、コレステロール、及びデオキシコール酸ナトリウムを含む。
【0111】
[0112]いくつかの実施形態では、本開示は免疫原性製剤を提供するが、これには抗原、TLR−4アゴニストアジュバント、及び小胞が含まれ、前記小胞は、非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、これらの製剤は非経口(例えば、筋肉内注射により)投与され得る。いくつかの実施形態では、TLR−4アゴニストアジュバントは、モノホスホリルリピドA、又は3−デアシルモノホスホリルリピドAを含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、グリセリンエステル(例えば、1−モノパルミトイルグリセリン)である。いくつかの実施形態では、小胞は、イオン性両親媒性物質(例えば、ジセチルホスフェート)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、ステロイド(例、コレステロール)を更に含む。いくつかの実施形態では、小胞は、1−モノパルミトイルグリセリン、ジセチルホスフェート、及びコレステロールを含む。いくつかの実施形態では、小胞は輸送促進分子を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、コール酸及びケノデオキシコール酸等の「胆汁酸」、そのグリシン又はタウリンとの結合体生成物、例えばグリココール酸及びタウロコール酸等、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸を含む誘導体、及びこれらの酸のそれぞれの塩を欠く場合がある。いくつかの実施形態では、小胞は、アシルオキシ化アミノ酸、例えばアシルカルニチンとその塩、及びパルミトイルカルニチン等を欠く場合がある。
【0112】
[0113]特定の実施形態では、本開示の製剤は、ラメラ構造(例えば、二重層構造)を示す小胞を含む。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、非ラメラ構造(例えば、ミセル)を実質的に欠いている。
【0113】
[0114]本明細書に記載する製剤内に存在する小胞の物理的特徴(例えば、ラメラ構造)は、任意の公知の方法により測定可能であると認識される。例えば、いくつかの実施形態では、小胞の物理的特徴は、
31P NMRにより25℃で測定可能である。いくつかの実施形態では、化学シフト異方性が約15〜20ppmであり、−2.5ppm付近に高磁場の最大値を有する異方性ピークは、ラメラ構造の存在を示唆する。いくつかの実施形態では、
31P NMRスペクトルで認められる等方性ピークが2.5ppm付近に中心を有する場合、それは非ラメラ構造の存在を示唆する。いくつかの実施形態では、本開示の製剤の
31P NMRスペクトルは、2.5ppm付近にある等方性ピークを実質的に欠いている。いくつかの実施形態では、2.5ppm付近に等方性ピークが存在する場合には、同ピークは、化学シフト異方性が約15〜20ppmであり、−2.5ppm付近に高磁場の最大値を有する異方性ピークの強度(ピーク高さ)よりも小さい強度(ピーク高さ)を有する。いくつかの実施形態では、2.5ppm付近に等方性ピークが存在する場合には、同ピークは、化学シフト異方性が約15〜20ppmであり、−2.5ppm付近に高磁場の最大値を有する異方性ピークの強度(ピーク高さ)の50%よりも小さい強度(ピーク高さ)を有する(例えば、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満)。
【0114】
[0115]いくつかの実施形態では、本開示は凍結乾燥形態にある上記製剤の任意の1つを提供する。
【0115】
III.キット
[0116]なおも別の態様では、本開示は、第1の容器に凍結乾燥された脂質生成物を、及び第2の容器に抗原(及び任意選択的にアジュバント)を含む水溶液を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットには、抗原含有小胞製剤が生成するように、2つの容器の内容物を混合する際の説明書も含まれる。
【0116】
[0117]上記で議論したように、凍結乾燥された脂質生成物は、溶融脂質混合物が生成するように小胞形成脂質を溶融し、次に凍結乾燥された脂質生成物が生成するように当該溶融脂質混合物を凍結乾燥することにより、これまでに調製されたものである。
【0117】
[0118]なおも別の態様では、本開示は、第1の容器に本開示の任意の凍結乾燥された抗原含有小胞製剤を、及び第2の容器に水溶液(任意選択的にアジュバントを含有する)を含む水溶液を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットには、抗原含有小胞製剤が再水和するように、2つの容器の内容物を混合する際の説明書も含まれる。
【0118】
[0119]いくつかの実施形態では、キットは患者に抗原含有小胞製剤を注射するシリンジ等の追加成分を含み得る。
【実施例】
【0119】
[0120]下記の実施例では、本明細書に記載される特定の製剤を作製し、実用に供するいくつかの典型的なモードを記載する。これらの実施例は説明目的に限られ、本明細書に記載する製剤及び方法の範囲を制限するようには意図されていないと理解されるべきである。
【0120】
実施例1−小胞を調製するための3−ステップ溶融法
[0121]本実施例では、後の実施例で記載されるいくつかの小胞を調製するのに用いられた3−ステップ溶融法について記載する。
【0121】
[0122]ステップ1では、5:4:1のモル比の下記の脂質、1−モノパルミトイルグリセリン(MPG、270mg)、コレステロール(CHO、255mg)、及びリン酸ジセチル(DCP、90mg)が、平底の50mlガラスビーカーに、当該ガラスビーカーの側面に粉末が付着しないことを徹底しながら導入された。次に、脂質混合物は、アルミニウムフォイルで覆われたガラスビーカー内で時々回旋操作を受けながら、120℃に加熱されたオイルバス中で10分間溶融された。
【0122】
[0123]溶融脂質混合物の温度を120℃に維持しながら、25mM重炭酸バッファー、pH7.6(50℃に事前加熱済み)、10.9mlを添加することにより、ステップ2でエマルジョンは作製された。このエマルジョンは、50℃で2分間速やかにホモジナイズされた(50℃の水浴中、8000rpmでのホモジナイゼーション)。なおもホモジナイズしながら、25mM重炭酸バッファー、pH9.7(50℃に事前加熱済み)に溶解した100mMデオキシコール酸ナトリウム(「胆汁塩」)溶液、1.1mlが添加され、ホモジナイゼーションは50℃で8分間継続された。
【0123】
[0124]ステップ3では、約pH7.2のPBS溶液中の抗原(例えば、HAV抗原又はHBV表面抗原)が、胆汁塩を含有する加熱された溶融脂質混合物に添加された。
【0124】
[0125]この3−ステップ法の変法では、ステップ2で胆汁酸塩と共に調製された溶融脂質混合物は、30℃まで冷却され、インキュベータ/振とう機(220rpm)内で2時間インキュベーションされ、−80℃で凍結され、凍結乾燥され、次に使用前に100mMリン酸バッファーpH8.5に溶解された抗原溶液で再溶解された。
【0125】
実施例2−小胞を調製するための逆転式2−ステップ溶融法
[0126]本実施例では、後の実施例で記載されるいくつかの小胞を調製するのに用いられた逆転式2−ステップ溶融法について記載する。
【0126】
[0127]ステップ1では、同じ5:4:1のモル比の脂質(MPG:CHO:DCP)が用いられた。但し、この方法では、0.1〜0.5のモル比のデオキシコール酸(「胆汁酸」)も含まれ、135℃で10分間、加熱されたオイルバス内で脂質と共に同時溶融された。実施例1の方法では、水性の胆汁酸塩溶液が、ステップ2で溶融脂質をエマルジョンに変換した後に添加されたに過ぎない。
【0127】
[0128]この段階で、抗原のストック溶液(例えば、6mlのPBSバッファー(pH7.11)で希釈された25μg/mlのHAV抗原溶液4ml、又は8.75mlのPBSバッファー(pH7.2)で希釈された1.0mg/mlのHBV表面抗原溶液1.25ml)が、加熱された水浴(25℃〜50℃)中で5分間プレ−インキュベーションされた。ステップ2では、得られた抗原ストック溶液は、ホモジナイズされ(8,000rpmで)、溶融脂質混合物が添加され、ホモジナイゼーションが更に10分間継続された。得られたホモジネートは220rpm、30℃で2時間振とうされた。PBSバッファーに溶解した400mMスクロース溶液、10mlが、振とう済みのホモジネートに添加され、このホモジネートは更に30秒間ボルッテックス処理を受けた。この混合物は−80℃で凍結され、凍結乾燥され、次に使用前に100mMリン酸バッファーpH8.5中で再溶解された。
【0128】
[0129]本2−ステップ法の変法では、ステップ1で調製された同時溶融脂質/胆汁酸溶液は、30℃まで冷却され、インキュベータ/振とう機(220rpm)内で2時間インキュベーションされ、−80℃で凍結され、凍結乾燥され、次に使用前に100mMリン酸バッファーpH8.5に溶解された抗原溶液で再溶解された。
【0129】
実施例3−B型肝炎抗原の完全性分析
[0130]HBV表面抗原溶液は、4℃、25℃及び50℃の温度、8,000rpmでホモジナイズされた。下記の表2では、ELISAにより測定された得られた抗原の割合(%)を、ELISAにより直接測定された操作を受けない抗原と比較している。示す通り、実施例1の3−ステップ溶融法ではHBsAgを50℃に暴露するが、そうした暴露により、抗原の抗原完全性が50%を超えて破壊された。本開示の逆転式2−ステップ溶融法を用いれば、抗原を含有するバッファーの温度を顕著に低減させることができる(例えば、25
0Cまで)。この逆転式2−ステップ溶融法は、より低い温度の抗原溶液を利用することができるので、サブユニットタンパク質の抗原性をより良好に保存できるようにする。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例4−B型肝炎抗原の取り込みに関する分析
[0131]本実施例では、B型肝炎表面抗原の取り込みレベルを測定するために実施された実験について記載する。取り込みレベルはニンヒドリン分析法を用いて測定された。当該ニンヒドリン分析法は、試料中のポリペプチドの濃度を求める比色法である。アミノ基を含有する物質は、ニンヒドリン試薬と反応して青紫色の錯体を生成する。
【0132】
[0132]B型肝炎表面抗原は、実施例1及び2の方法を用いて小胞内に取り込まれた。2つの異なる比の胆汁酸(0.10及び0.50)が、実施例2の方法を用いて試験された。取り込まれたB型肝炎表面抗原は、小胞より加水分解され、中和され、ニンヒドリン試薬と混合され、次に110℃でインキュベーションされた。次に、当該溶液は冷却放置され、その吸収が595nmで測定された。この波長の吸収と最初の試料中に存在したポリペプチドの量との間には線形関係が認められる。表3は、実施例2の逆転式2−ステップ法を用いて高レベルの抗原の取り込み(この場合はHBV表面抗原)が実現したことを示している。表3は、取り込み効率は、胆汁酸含有量により影響を受け得ることも示唆している。
【0133】
【表3】
【0134】
実施例5−再水和後の小胞安定性の物理化学的特徴付け
[0133]本実施例では、動的光散乱を用いて小胞安定性を測定するために実施された実験について記載する。発明者らは、三重読み取り及び2分平衡時間を採用するMalvern Instrument Zetasizer Nano ZS(ZEN3600)を用いて粒子サイズ及びサイズ分布を求めた。小胞試料20μlがpH7.6の重炭酸バッファー、980μlに添加され、ボルッテックス処理を受け、次にポリスチレンキュベット(Sarstedt67.754)に添加された。統計的解析が、Minitab v14を用いて2標本t−検定により95%信頼水準で実施された。ナノサイズ分析から得られた結果を
図1に示す。実施例1及び2に記載する通りに調製された小胞が、マスターサイザーを用いて、HAV抗原2μgを含有するバッファーの存在下で再水和した直後、及び再水和後2、4及び6時間経過して測定された。
図1に示す通り、実施例2の逆転式2−ステップ溶融法により調製された小胞は、実施例1の3−ステップ溶融法により調製された小胞よりも長期間安定(サイズ安定性により評価された通り)であった。水和後の小胞安定性は、患者に投与される小胞製剤にとって潜在的に重要な要因である。
【0135】
実施例6−マウスの免疫感作におけるA型肝炎抗原に対する抗体反応
[0134]本実施例では、マウスを対象とした特定の免疫原性製剤のin vivo試験について記載する。小胞は、実施例1及び2に記載する通りに調製され、次にHAV抗原2μgを含有するバッファーの存在下で再水和された。メスのBALB/cマウス(n=4)が、上記抗原含有小胞を用いて、強制経口投与により、第0、14、及び28日目に3回ワクチン接種を受けた(1用量当たりHAV抗原2μgに等しい)。
【0136】
[0135]次に、血清試料が、経口ワクチン接種により誘発されたA型肝炎−特異的IgGの力価を評価するために採取された。最終の免疫感作後14日目に採取された血清試料は、不活性化されたHAV抗原に対してELISAにより試験された。
図2に示す通り、実施例2の逆転式2−ステップ溶融法により調製された小胞を用いてマウスを経口ワクチン接種した方が、実施例1の3−ステップ溶融法により調製された小胞の場合よりも、A型肝炎抗原に対して顕著に高い全身性の(血清)IgG反応を誘発した。各記号は個別の動物のエンドポイント血清力価を表す。このデータは、逆転式2−ステップ溶融法を用いて調製された空の小胞を、HAV抗原で水和する方が、3−ステップ溶融法を用いて調製された小胞を水和する場合と比較して、より良好な免疫原性を実現することを実証する。
【0137】
[0136]複数の研究者は、現在認可されているA型肝炎ワクチン及びB型肝炎ワクチンを筋肉内(IM)注射すると、中和性のIgG抗体が誘発されることを実証した。我々は、経口により投与される免疫原性A型肝炎製剤は、全身レベルでIgG抗体(血清試料)を、及び粘膜レベルでIgA抗体(鼻腔洗浄試料)を誘発する能力を有することを見出した。A型肝炎及びB型肝炎の感染は、粘膜の表面を介して生ずるので、IgA反応(粘膜性免疫反応の証拠)の方が、全身性のIgG反応よりも効果的であり得る。我々は、免疫原性A型肝炎又はB型肝炎製剤が、標準的な非経口経路(例えば、IM注射)により投与される場合には、全身性のIgG反応を期待するしかあり得ない。
【0138】
実施例7−小胞の胆汁塩含有量は未成熟樹状細胞の成熟に影響を及ぼす
[0137]腸管内で抗原(例えば、HAV抗原)が耐容性又は防御的免疫反応を誘発するかどうか規定する役割を演じている樹状細胞(DC)が重要な抗原提示細胞であると今日一般的に認められている。(Alpanら、J.Immunol.、第166巻(8):4843〜4852頁、2001年)。DCの活性化は通常、炎症性の刺激によるが、そのような活性化はT細胞の増殖プライミングを可能にするように、共刺激分子の発現及び抗原提示を促進する。
【0139】
[0138]端的には、骨髄に由来するDC前駆体は、naive BALB/cマウスから単離され、並びにインターロイキン4(IL−4)及び未成熟DC表現型への分化を引き起こす果粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)存在下で培養された(5日間)。腫瘍壊死因子α(TNF−α)によるその後の処理は、未成熟のDCを成熟した樹状細胞に更に分化させる。未成熟DCは、実施例2のステップ1及び2の場合と同様に(その後に抗原を添加しないで)、総脂質に対する胆汁酸の2つの異なるモル比(0.1及び0.5)を用いて、又は用いないで調製された非イオン性界面活性剤脂質小胞(NISV)と共にインキュベーションされた。陽性対照として未成熟のDCがTNF−α単独で処理された。DCの成熟は、抗−MHCII及び抗−CD86抗体を用いて、フローサイトメトリー法により測定された。成熟DCは両抗体に対する二重の陽性として規定された。
図3に示す通り、胆汁酸を含まないNISVでは、未成熟DCの成熟は顕著には影響を受けなかったが、一方、胆汁酸を含むNISVではDCの成熟が増強された。この結果は、この成熟の増強が、胆汁酸含有量により影響を受け得ることも示唆する。
【0140】
実施例8−
31P NMRによる小胞の特徴付け
[0139]本実施例では、本開示の方法に基づき調製された特定の典型的な小胞の
31P NMRによる特徴付けについて記載する。
【0141】
[0140]小胞は、抗原を一切添加せずに実施例1及び2に記載する通りに調製された。凍結乾燥された小胞は重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)バッファー中で再溶解された。最終脂質濃度は50mg/mlであった。懸濁された小胞、4mlが10mmのNMRチューブに移され、数滴のD
2Oが添加された。
【0142】
[0141]逆転式2−ステップ溶融法を用いて調製された小胞の
31P NMRスペクトルを
図4Aに示す。低磁場のショルダーと高磁場のピーク、及び約20ppmの化学シフト異方性を有する非対象的なライン形状は、典型的ラメラ構造内で組織化されたDCPに対応する。
【0143】
[0142]3−ステップ溶融法を用いて調製された小胞の
31P NMRスペクトルを
図4Bに示す。ブロードなラインと重なり合った、及び2.5ppm付近に中心を有する等方性のピークが認められた。この等方性のピークは、非ラメラ構造、例えばミセル、六方相、又は非常に小さいサイズ(ナノサイズ)の小胞等の存在に帰属することができると考えられる。
【0144】
実施例9−小胞を調製するための逆転式2−ステップ溶融法
[0143]本実施例では、小胞を調製するのに利用可能な典型的な逆転式2−ステップ溶融法について記載する。5:4:1のモル比の脂質(MPG、5.575g;CHO、5.218g;及びDCP、1.845g)が平底の250mLガラスビーカーに、当該ガラスビーカーの側面に粉末が付着しないことを徹底しながら導入された。特定の実施形態では、バイロソームが作製される場合には、胆汁酸、例えば0.5のモル比のデオキシコール酸(デオキシコール酸、0.662g)がこのステップで添加される。
【0145】
[0144]脂質及び胆汁酸を含有するビーカーを保持するのにクランプを用いながら、当該ビーカーはアルミニウムフォイルで覆われ、脂質はビーカー内で時々回旋操作を受けながら140℃〜145℃に加熱されたオイルバス中で溶融される。
【0146】
[0145]この段階で、抗原ストック溶液が、抗原及び濃縮リン酸バッファー(WFI滅菌水15ml中にNa
2HPO
4、5.174g、及びNaH
2PO
4、1.179g)を混合することにより調製される。抗原ストック溶液は、滅菌処理された1LのSS容器内において、8000rpmでホモジナイズされる。当該溶液を継続してホモジナイズしながら、溶融脂質(胆汁酸を含む又は含まない)は、滅菌処理されたガラス製の漏斗を介して速やかにSS容器内に移される。この混合物は8000rpmで10分間ホモジナイズされる。得られた懸濁液は、1Lの滅菌ボトルに移され、30°〜35℃、220rpmで1〜2時間振とうされる。
【0147】
[0146]特定の実施形態では、得られた懸濁液は等容積(各225ml)の2分量に分割され、アジュバントであるポリ(IC:LC)が下記の通りに添加される。
【0148】
[0147]最初のグループでは、ポリ(IC:LC)懸濁液22.5ml(2mg/mlのときポリ(IC:LC)45mg)と100mMリン酸バッファーに溶解した400mMスクロース溶液202.5mlとを混合することにより、400mMスクロース溶液に溶解したポリ(IC:LC)が調製される。得られた懸濁液は、第1の225mlの容積の抗原/小胞懸濁液に添加され、30°〜35℃、220rpmで5分間振とうされる。
【0149】
[0148]第2のグループでは、ポリ(IC:LC)懸濁液7.5ml(2mg/mlのときポリ(IC:LC)が15mg)と100mMリン酸バッファーに溶解した400mMスクロース溶液、217.5mlとを混合することにより、400mMスクロース溶液に溶解したポリ(IC:LC)が調製される。得られた懸濁液は、第2の225mlの容積の抗原/小胞懸濁液に添加され、30°〜35℃、220rpmで5分間振とうされる。
【0150】
[0149]次に、試料は−80℃、オーバーナイトで凍結され得る。特定の実施形態では、試料はその後凍結乾燥され、4℃で貯蔵される。
【0151】
実施例10−小胞を調製するための逆転式2−ステップ溶融法
[0150]本実施例では、小胞を調製するのに利用可能である別の典型的な逆転式2−ステップ溶融法について記載する。5:4:1のモル比の脂質(1−モノパルミトイルグリセリン(MPG)496g;コレステロール(CHO)496g;及びリン酸ジセチル(DCP)164g)が、平底ガラスビーカー内に、当該ガラスビーカーの側面に粉末が付着しないことを徹底しながら導入される。TLR−4アゴニストが、脂質(例えば、12mgのPHAD(商標)(Avanti Polar Lipids製のリン酸化ヘキサアシル二糖類))と共に同時溶融される。ビーカーはクランプで固定され、アルミニウムフォイルで覆われ、脂質は、時々ビーカー内で回旋操作を受けながら120〜125℃に加熱されたオイルバス内で溶融される。
【0152】
[0151]この段階で、抗原ストック溶液が、抗原及び濃縮リン酸バッファー(滅菌水20ml中にNa
2HPO
4、5.980g、及びNaH
2PO
4、1.363g)を混合することにより調製される。抗原ストック溶液は、30〜35℃、8000rpmでホモジナイズされ、TLR−4アゴニストと共に溶融された脂質は、ホモジナイズしながら速やかにビーカー内に移される。この混合物は8000rpmでホモジナイズされ、30〜35℃で10分間継続される。得られた脂質−抗原懸濁液は30〜35℃、220±10rpmで1〜2時間振とうされる。
【0153】
[0152]いくつかの実施形態では、スクロース水溶液は、小胞/抗原溶液に添加可能、及び30〜35℃、220±10rpmで5分間振とう可能である。
【0154】
[0153]次に、試料は−80℃、オーバーナイトで凍結可能である。特定の実施形態では、試料はその後凍結乾燥され、4℃で貯蔵される。
【0155】
[参考資料の援用]
[0154]本明細書で引用されるあらゆる参考資料の内容は、本明細書によりその全体を参照により援用する。
【0156】
[その他の実施形態]
[0155]説明及び実施例は、事例としてのみ考慮されるように意図されている。本明細書で開示する方法、製剤、及びキットの説明又は実践内容を検討すれば、その他の実施形態も当業者にとって明白であろう。
【0157】
[0156]特に、上記議論では、抗原の取り込みに重点が置かれたが、一般的に、当該方法は、抗原性又は非抗原性を問わず、任意の物質を取り込むのに利用可能であると理解される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、抗原性であってもまたなくてもよい1つ又は複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は多糖類を取り込むのに利用可能である。具体的な分類の物質として、アジュバント、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、細胞反応修飾因子、例えば増殖因子及び化学走化性因子等、抗体、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス薬、プラスミド、DNA、及びRNAが挙げられるが、但し、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体又は抗体断片、例えばヒト化抗体であり得る。表4には、本開示の方法を用いて取り込まれ得る典型的な物質の非限定的なリストが記載されている。
【0158】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0159】
[0157]更に、本開示の方法は、化学的及び/又は物理的環境(例えば、微生物、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類等の生物学的物質)に敏感な熱不安定性の物質に特に適用可能と考えられるが、いくつかの実施形態では、本方法は従来型の小分子治療物質を含むより安定な物質を取り込むのにも利用可能であると理解される。