(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0011】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド610樹脂:100質量部と、
(B)ガラス繊維:1〜200質量部と、
(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチ:0.01〜5質量部と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物である。
以下、本実施形態のポリアミド組成物の構成成分について説明する。
【0012】
((A)ポリアミド610樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記のように(A)ポリアミド610樹脂を含有し、当該(A)ポリアミド610樹脂は、ジアミンとしてヘキサメチレンジアミン、ジカルボン酸としてセバシン酸を重合単量体とし、前記ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸とからなる単位を有するポリアミド樹脂である。
【0013】
<セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン以外の共重合成分>
(A)ポリアミド610樹脂には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、前記セバシン酸以外のジカルボン酸を重合単量体として含んでいてもよい。
このようなジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸やイソフタル酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、(A)ポリアミド樹脂610樹脂には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、前記ヘキサメチレンジアミン以外のジアミンを重合単量体として含んでいてもよい。このようなジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、重縮合可能なアミノ酸、ラクタム等を用いることができる。
なお、本実施形態において用いる(A)ポリアミド610樹脂は、セバシン酸及びヘキサメチレンジアミンからなる重合単量体を、後述する量で主として含み、上記のように、セバシン酸以外のジカルボン酸及びヘキサメチレンジアミン以外のジアミンを含んでいる場合においても、全体としてポリアミド610樹脂と捉える。
【0014】
前記アジピン酸やイソフタル酸以外の前記脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
前記脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは炭素数が5〜10である、脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0016】
前記芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の、無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
前記種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩等のその塩である基等が挙げられる。
【0017】
前記ヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0018】
前記脂肪族ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0019】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0020】
前記重縮合可能なアミノ酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0021】
前記ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム等が挙げられる。
【0022】
上述したジカルボン酸成分、ジアミン成分、アミノ酸成分、及びラクタム成分は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
前記(A)ポリアミド610樹脂において、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミンからなる単位の割合は、(A)成分100モル%中、70〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。
【0024】
<末端封止剤>
前記ポリアミド610樹脂の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を更に添加することができる。
例えば、本実施形態のポリアミド610樹脂を重合する際に、公知の末端封止剤を更に添加することにより、重合量を制御することができる。
【0025】
前記末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられる。
それらの中でも、生産性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
これらの末端封止剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
これらのモノカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
これらのモノアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
((A)ポリアミド610樹脂の製造方法)
(A)ポリアミド610樹脂の製造方法としては、例えば、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じて後述する触媒や、アパタイト等のその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
重合形態としては、特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
また、重合装置も特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。
【0029】
(A)ポリアミド610樹脂(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることができる。
触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルト亜リン酸、ピロ亜リン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、2−(2’−ピリジル)エチルホスホン酸、及びそれらの金属塩等が挙げられる。
前記金属塩の金属としては、以下に限定されないが、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
また、前記触媒としては、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等のリン酸エステル類も用いることができる。
【0030】
((A)ポリアミド610樹脂の物性)
(A)ポリアミド610樹脂は、98%硫酸溶液粘度(JIS K 6920)が、好ましくは2.0〜3.0であり、より好ましくは2.0〜2.9であり、さらに好ましくは2.2〜2.6である。
硫酸溶液粘度が1.8以上であると、実用上十分な機械的特性を有する成形体が得られ、硫酸溶液粘度が3.0以下であると、成形時の流動性が良好なものとなり、表面外観性に優れた成形体が得られる。
【0031】
((B)ガラス繊維)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対し、(B)ガラス繊維:1〜200質量部を含有する。
前記(B)ガラス繊維を含有することにより、優れた剛性が得られる。
前記(B)ガラス繊維は、優れた機械的強度、耐振動疲労特性を発現できる観点から、数平均繊維径は3〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜25μmであり、さらに好ましくは5〜20μmであり、重量平均繊維長は100〜750μmが好ましく、より好ましくは100〜700μmであり、さらに好ましくは200〜600μmである。
(B)ガラス繊維の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)は、優れた機械的強度、耐振動疲労特性を発現できる観点から10〜100が好ましく、より好ましくは10〜90であり、さらに好ましくは20〜90である。
(B)ガラス繊維は、1種類のみを単独で用いてもよいし、数平均繊維径、重量平均繊維長の異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した(B)ガラス繊維の数平均繊維径(D)及び重量平均繊維長(L)は、顕微鏡法により測定することができる。
例えば、ペレット状のガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を、該ポリアミド樹脂組成物の分解温度以上で加熱し、残った(B)ガラス繊維を、顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維の径及び長さを計測する方法により測定することができる。
顕微鏡法によって得られた測定値から、数平均繊維径(D)及び重量平均繊維長(L)を計算する方法としては、下記式(I)、式(II)が挙げられる。
数平均繊維径(D)=ガラス繊維の径の合計/測定したガラス繊維の数 ・・・(I)
重量平均繊維長(L)=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(II)
【0032】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における(B)ガラス繊維の含有量は、上述したように、(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対して、1〜200質量部であり、好ましくは2〜200質量部であり、より好ましくは2〜180質量部であり、さらに好ましくは5〜100質量部である。
(B)ガラス繊維の含有量を(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対して1質量部以上とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の機械的強度等が向上し、また、含有量を200質量部以下とすることにより、成形性に優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
なお、(B)ガラス繊維の含有量は、ポリアミド樹脂組成物を燃焼させて、残留した(B)成分を取り出し、測定することにより算出することができる。
【0033】
前記(B)ガラス繊維の具体的な組成としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス組成等が挙げられる。
これらの中でも、Eガラスが、入手が容易である観点から好ましい。
また、(B)ガラス繊維の引張強度は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、290kg/mm
2以上であることが好ましい。
【0034】
前記(B)ガラス繊維は、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましく、その付着量はガラス繊維重量(ガラス繊維と表面処理剤との合計量)に対し、0.01質量%以上であることが好ましい。
さらに、必要に応じ、前記(B)ガラス繊維は、集束剤により処理を施すこともできる。集束剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを重合単位として具備する共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを重合単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを重合単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
【0035】
((C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチ)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチ(以下、単に(C)ポリアミドマスターバッチと記載する場合がある。)を含有する。
当該(C)ポリアミドマスターバッチに用いられるポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、及びポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))等が挙げられる。
また、前記(C)ポリアミドマスターバッチで用いられるポリアミド樹脂としては、これらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、並びにこれらのポリアミド及び/又はポリアミド共重合体の混合物等が挙げられる。
上述したポリアミド樹脂のうち、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品において、長時間における不凍液との接触による機械物性の低下、及び高温乾燥下における機械物性の低下抑制の観点から、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)等が好ましく、特にポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)が好ましい。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる、前記(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチは、マスターバッチを構成するポリアミド樹脂の主成分がポリアミド610樹脂であることが好ましい。ここで「主成分」とは、当該マスターバッチを構成するポリアミド中のポリアミド610樹脂の含有量が、80質量%以上であることを言い、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0036】
前記(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチで用いられる銅化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅等や、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤に配位した銅錯塩等が挙げられる。
これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
この中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、酢酸銅が、熱安定性の観点から好ましい。
【0037】
前記(C)ポリアミドマスターバッチにおける前記銅化合物の含有量は、(C)ポリアミドマスターバッチを構成するポリアミド樹脂100質量部に対して銅化合物0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.25〜5質量部、さらに好ましくは0.40〜4質量部である。この範囲にすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品において十分な耐熱エージング性の向上を図ることができ、銅析出、腐食を抑制できる。
【0038】
前記(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチで用いられるハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
これらハロゲン化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0039】
前記(C)ポリアミドマスターバッチにおけるハロゲン化合物の含有量は、(C)ポリアミドマスターバッチを構成するポリアミド樹脂100質量部に対してハロゲン化合物1〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜45質量部、さらに好ましくは10〜40質量部である。この範囲にすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品において十分な耐熱エージング性の向上を図ることができ、銅析出、腐食を抑制できる。
【0040】
前記(C)ポリアミドマスターバッチに含まれる前記銅化合物及びハロゲン化合物は、粒子状であることが好ましい。
また、前記銅化合物及びハロゲン化合物の最大粒子径、すなわちマスターバッチ中に含まれる銅化合物、ハロゲン化合物の粒子のうちの最大粒子の粒子径は、共に、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下ある。
(C)ポリアミドマスターバッチにおいて、粒子径とは、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。前記銅化合物、ハロゲン化合物の最大粒子径の測定は、少なくとも50個の粒子に関して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより求めることができる。
銅化合物、ハロゲン化合物の最大粒子径を50μm以下にすることにより、(C)ポリアミドマスターバッチにおいて、銅化合物及びハロゲン化合物を微細にポリアミド樹脂中に分散させることができ、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品において、金属析出、腐食の問題点がより改善され、靭性、耐熱性エージング性、外観、色調がより改良される。
【0041】
前記銅化合物とハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、耐熱エージング性の向上を図るために両方とも含有させる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、前記(C)ポリアミドマスターバッチ中のハロゲン元素の含有量C3と銅元素の含有量C4とのモル比(ハロゲン元素の含有量C3/銅元素の含有量C4)は、2/1〜50/1であることが好ましく、3/1〜30/1であることがより好ましく、さらに好ましくは4/1〜25/1、さらにより好ましくは5/1〜23/1である。
前記モル比C3/C4が2以上の場合は、銅析出及び金属腐食を抑制できるため好ましい。また、前記モル比C3/C4が50以下の場合は、靭性等の機械物性を損なうことなく、成形機のスクリュー等を腐食するという問題を抑制することができる。
【0042】
<少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物>
前記(C)ポリアミドマスターバッチにおいては、当該(C)ポリアミドマスターバッチの溶融混錬中に、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を混合してもよい。
前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物とは、分子鎖に少なくとも1つのアミド基を有する化合物である。当該少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアマイド類、置換アマイド類、メチロールアマイド類、ビスアマイド類が挙げられる。
前記モノアマイド類は、一般式R−CONH
2で表される(ここで、 Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OH に置換されたものである。)。当該モノアマイド類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウリル酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等、リノシール酸アマイド等が挙げられる。
前記置換アマイド類は、一般式R
1−CONH−R
2で表される(ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである)。当該置換アマイド類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−ラウリルラウリル酸アマアド、N−パルチミルパルチミン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド、N−ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド、N−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
前記メチロールアマイド類は、一般式R−CONHCH
2OHで表される(ここで、 Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである)。当該メチロールアマイド類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド等が挙げられる。
前記ビスアマイド類は、一般式(R−CONH)
2(CH
2)
n 表される(ここで、 Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである。また、nは1〜8である)。当該ビスアマイド類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイド等が挙げられる。
上述した少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。上述した少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の中でも好ましいものとしては、銅化合物、ハロゲン化合物の分散性がより向上する観点から、ビスアマイド類を挙げることができる。
【0043】
前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の含有量は、(C)ポリアミドマスターバッチを構成するポリアミド樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量部であり、さらに好ましくは1.0〜4.0質量部である。
この範囲にすることにより、(C)ポリアミドマスターバッチを構成する銅化合物、ハロゲン化合物の、(C)ポリアミドマスターバッチを構成するポリアミド樹脂中での分散性がより向上し、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品において、十分な耐熱エージング性の向上が図られ、かつ銅析出及び腐食の抑制を達成することができる。
【0044】
((C)ポリアミドマスターバッチの製造方法)
ポリアミドマスターバッチの製造方法について説明する。
ポリアミドマスターバッチは、上述した銅化合物、ハロゲン化合物、及び必要に応じて前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を、ポリアミド樹脂と混合することにより得られる。
銅化合物、ハロゲン化合物、及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、それぞれ単独でポリアミド樹脂に配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合してからポリアミド樹脂に配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕してからポリアミド樹脂に配合してもよいし、また3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕しタブレット状にしてからポリアミド樹脂に配合してもよい。
【0045】
前記銅化合物、ハロゲン化合物、及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を混合する方法は、公知の方法を適用できる。例えば、タンブラー、ヘンシェル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、フロージェットミキサー等のいずれでもよい。
前記粉砕する方法は、公知の方法を適用できる。例えば、ハンマーミル、ナイフミル、ボールミル、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ローラミル、ジェットミル、碾臼等のいずれでもよい。
前記タブレット状にする方法は、公知の方法を適用できる。例えば、圧縮造粒法、打錠成形法、乾式押出造粒法、溶融押出造粒法等のいずれでもよい。
【0046】
上記のようにして各化合物をポリアミド樹脂に配合し、溶融混練を行うことにより、(C)ポリアミドマスターバッチが製造できる。
溶融混練を行う装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサー及びミキシングロール等の溶融混練機が好ましく用いられる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。
また溶融混練機には、脱気機構(ベント)装置ならびにサイドフィーダー設備を装備してもよい。
溶融混練の温度は、ポリアミドのJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求められる融点あるいは軟化点より1〜100℃ 程度高い温度が好ましい。
混練機での剪断速度は100(SEC-1)以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は1〜15分程度が好ましい。
前記(C)ポリアミドマスターバッチの水分率は0.06〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.75質量% 、さらに好ましくは0.15〜0.75質量%である。(C)ポリアミドマスターバッチ中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態の水分として存在してもよいし、(C)ポリアミドマスターバッチ表面、例えばマスターバッチペレットやマスターバッチパウダー表面に付着した水分であってもよい。
前記(C)ポリアミドマスターバッチの水分率を前記範囲にすることにより、銅化合物やハロゲン化合物の凝集を抑制することができる。これにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物及びその成形品の靭性等の機械特性、耐熱エージング性の改良効果が高く得られ、かつ銅析出、金属腐食性の抑制がより可能となる。
前記(C)ポリアミドマスターバッチの水分率は、押出機の減圧度、冷却時のストランドバス中の浸漬時間、浸漬長さの制御、あるいは水噴霧量の制御により調整できる。
【0047】
((D)ガラス繊維以外の無機充填材)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(D)ガラス繊維以外の無機充填材を、さらに含んでいてもよい。
当該(D)ガラス繊維以外の無機充填材の含有量は、上述した(A)ポリアミド610樹脂100質量部に対して、0.18〜10質量部であることが好ましく、0.18〜8質量部であることがより好ましく、0.18〜5質量部であることがさらに好ましく、2.0〜5.0質量部であることがさらにより好ましい。
(D)ガラス繊維以外の無機充填材の含有量を0.18質量部以上とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の強度を向上させる効果が発現される。一方、上記の含有量を10質量部以下とすることにより、押出性及び成形性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0048】
前記(D)ガラス繊維以外の無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びクレー(シリケート層が積層してなる層状のクレーでありモンモリロナイト等)が挙げられる。
かかる(D)ガラス繊維以外の無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記(D)ガラス繊維以外の無機充填材としては、強度等を向上させる観点から、ウォラストナイト、カオリン、マイカ及びタルクからなる群より選択される一以上が好ましく、ウォラストナイト、カオリン及びタルクからなる群より選択される一以上がさらに好ましい。また、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品の表面外観を向上させる観点から、ウォラストナイト及びタルクがさらにより好ましい。
【0049】
前記(D)ガラス繊維以外の無機充填材の平均粒径は、0.01〜38μmであることが好ましい。より好ましくは0.03〜30μmであり、さらに好ましくは0.05〜25μmであり、さらにより好ましくは0.10〜20μmであり、よりさらに好ましくは0.15〜13μmである。
前記(D)ガラス繊維以外の無機充填材の平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性、及び成形品の表面外観に優れたポリアミド樹脂組成物とすることができる。
一方、平均粒径を0.01μm以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と機械的物性(強度、靭性等)とのバランスに優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
(D)ガラス繊維以外の無機充填材のうち、球形状でないものについては、平均粒径は、各粒子の長径を粒径とし平均粒径を測定する。
なお、(D)ガラス繊維以外の無機充填材のうち、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」ともいう。)を平均粒径とする。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を繊維径とみなし、これを用いた数平均繊維径を平均粒径とする。
平均粒径(数平均繊維径)は、100個(本)以上の前記(D)ガラス繊維以外の無機充填材を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの無機充填材の粒径(繊維径)を測定し、算術平均値を算出することにより求められる。
【0050】
前記無機充填材の中でも、前記ウォラストナイトのような針状の形状を持つものの重量平均繊維長(以下、単に「平均繊維長」ともいう。)については、上述の数平均繊維径の好ましい範囲、及び下記の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)の好ましい範囲から算出される数値範囲が好ましい。
前記針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、成形品の表面外観を向上させ、かつ射出成形機等の金属性パーツの磨耗を防止するという観点からは、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
さらにまた、(D)ガラス繊維以外の無機充填材のうち針状の形状を持つもののアスペクト比は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品において反りの発生を低減化するという観点からは、10〜20が好ましく、15〜20がより好ましい。
ここで、本明細書における数平均繊維径(D)は、上述したように、100個(本)以上の原材料となる無機充填材を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの無機充填材の繊維径を測定することにより求められる。加えて、本明細書における重量平均繊維長(L)は、繊維状の無機充填材を対象として、100本以上の無機充填材を任意に選択し、SEM写真を用いて繊維長を計測することにより求められる。
【0051】
(D)ガラス繊維以外の無機充填材は、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いて表面処理してもよい。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。
中でも、ポリアミド樹脂組成物の優れた機械的強度を発現できる観点から、アミノシラン類がより好ましい。
これらは、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
このような表面処理剤は、予め(D)ガラス繊維以外の無機充填材の表面に処理してもよいし、(A)ポリアミド610樹脂と(D)ガラス繊維以外の無機充填材とを混合する際に添加してもよい。
表面処理剤の添加量は、(D)ガラス繊維以外の無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%である。
【0052】
((E)滑剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(E)滑剤を、さらに含んでいてもよい。
当該(E)滑剤の含有量は、上述した(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.03〜1.0質量部であることがより好ましく、0.03〜0.5質量部であることがさらに好ましい。
(E)滑剤の含有量を上記範囲内とすることにより、離型性及び可塑化性に一層優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0053】
(E)滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
前記(E)滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記高級脂肪酸とは、炭素数8以上の脂肪族モノカルボン酸を示す。
高級脂肪酸の炭素数は8〜40であることが好ましい。前記高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。例えば、高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
【0055】
前記高級脂肪酸金属塩とは、上述した高級脂肪酸の金属塩である。
高級脂肪酸と塩を形成する金属元素としては、元素周期律表の第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素、亜鉛、アルミニウム、等が挙げられる。当該金属元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;が好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。高級脂肪酸金属塩としては、モンタン酸金属塩及びステアリン酸金属塩が好適に用いられる。
【0056】
前記高級脂肪酸エステルとは、上述した高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
前記高級脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステル化物が好ましい。
脂肪族アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられ、高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0057】
前記高級脂肪酸アミドとは、上述した高級脂肪酸のアミド化物である。
前記高級脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミド等が挙げられる。高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドがより好ましい。
【0058】
前記(E)滑剤としては、成形性が一層良好になる観点から、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドが好ましく、高級脂肪酸金属塩がより好ましい。
【0059】
((F)着色剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(F)着色剤を、さらに含んでいてもよい。
(F)着色剤の含有量は、(A)ポリアミド610樹脂100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.02〜4.0 質量部であることがより好ましく、0.03〜2.0質量部であることがさらに好ましい。
【0060】
(劣化抑制剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、及び耐候性の向上を目的に劣化抑制剤を添加してもよい。
劣化抑制剤としては、以下に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤;ホスファイト系安定剤;ヒンダードアミン系安定剤;トリアジン系安定剤;及びイオウ系安定剤等が挙げられる。
これらの劣化抑制剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0061】
(その他の樹脂)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を添加してもよい。
このような樹脂としては、以下に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
【0062】
前記熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、66、612等の他のポリアミド(本実施形態のポリアミド以外のポリアミド);ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン等の縮合系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0063】
前記ゴム成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0064】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド610樹脂に、上述した(B)ガラス繊維、(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)含むポリアミドマスターバッチ、必要に応じて(D)ガラス繊維以外の無機充填材、(E)滑剤、(F)着色剤、劣化抑制剤、その他の樹脂を配合することにより製造できる。
配合方法としては、公知の押出技術を用いることができる。
例えば、溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜350℃程度が好ましい。溶融混練時間は、1〜30分程度が好ましい。
また、強化ポリアミドを構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
具体的な混合方法は、(A)ポリアミド610樹脂と(B)ガラス繊維、(C)マスターバッチ、(D)ガラス繊維以外の無機充填材、その他の成分を、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し、混練する方法や、減圧装置を備えた単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド610樹脂に、サイドフィーダーから(B)ガラス繊維、(C)マスターバッチ、(D)ガラス繊維以外の無機充填材、その他の成分を配合する方法等が挙げられる。
【0065】
〔ポリアミド樹脂組成物の成形品〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を成形することにより、所定の成形品が得られる。
成形品を得る方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0066】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物及び成形品は、上述したように、(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)含むポリアミドマスターバッチを用いた点に特徴を有しており、これにより、優れた水中雰囲気下でのクリープ特性、高温雰囲気下でのクリープ特性、及び機械的強度が得られる。
一方において、前記銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を、ポリアミドマスターバッチとして配合せず、予め(A)ポリアミド610樹脂に添加した場合においては、水中雰囲気下でのクリープ特性、高温雰囲気下でのクリープ特性が劣ったものとなる。
これは、ハロゲン化銅を除くハロゲン化合物の分散性向上の理由によるものである。
【0067】
〔用途〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品は、過酷な成形条件下における成形体の表面外観の安定性、耐衝撃特性に優れ、様々な用途に用いることができる。
例えば、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野において、好適に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
先ず、ポリアミド樹脂の構成要素、物性の測定方法、及び特性の評価方法を下記に示す。
<硫酸溶液粘度>
ポリアミド610樹脂を98%硫酸に溶解し、JIS K6920に準じて測定した。
【0070】
<23℃水中引張クリープ特性の評価>
JIS3号試験片を用いて評価を行った。
シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、JIS3号試験片を得た。
試験片を130℃雰囲気中で、ロングライフクーラント(LLC)50%水溶液中で450時間浸漬後、水中23℃雰囲気下で引張クリープ試験を行い、試験開始から40時間で破断する応力の測定を行った。
【0071】
<130℃乾熱引張クリープ特性の評価>
上記JIS3号試験片を用いて評価を行った。
130℃乾熱引張クリープ試験を行い、試験開始から40時間で破断する応力の測定を行った。
【0072】
<シャルピー衝撃強度の測定>
射出成形機として、日精樹脂(株)製、「PS40E」を用い、評価用の試験片を製造した。
シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定し、射出+保圧時間25秒、冷却15秒の射出条件で、ISO試験片を得た。
ISO試験片を用いて、ISO 179に準じてシャルピー衝撃強度測定した。
測定値はn(測定サンプル数)=6の平均値とした。
【0073】
〔(A)ポリアミド610樹脂〕
(A1):98%硫酸粘度2.5のポリアミド610樹脂
セバシン酸及びヘキサメチレンジアミンからなる重合単位の割合:100モル%
(A2):98%硫酸粘度2.3のポリアミド610樹脂
セバシン酸及びヘキサメチレンジアミンからなる重合単位の割合:100モル%
(A3):98%硫酸粘度2.5のポリアミド610樹脂
セバシン酸及びヘキサメチレンジアミンからなる重合単位の割合:100モル%
ヨウ化銅:0.03質量%、ヨウ化カリウム:0.5質量%、
ヨウ素/銅比モル比=20 ヨウ化銅及びヨウ化カリウムは重合時添加。
(A4):98%硫酸粘度2.3のポリアミド610樹脂
セバシン酸及びヘキサメチレンジアミンからなる重合単位の割合:100モル%
ヨウ化銅:0.03質量%、ヨウ化カリウム:0.5質量%、
ヨウ素/銅比モル比=20 ヨウ化銅及びヨウ化カリウムは重合時添加。
(A5):98%硫酸粘度2.5のポリアミド66樹脂
ヨウ化銅:0.03質量%、ヨウ化カリウム:0.5質量%、
ヨウ素/銅比モル比=20 ヨウ化銅及びヨウ化カリウムは重合時添加。
【0074】
〔(B)ガラス繊維〕
(B1)無水マレイン酸共重合体を含む集束剤により処理されたガラス繊維
数平均繊維径:10μm
(B2)ウレタン樹脂を含む集束剤により処理されたガラス繊維
数平均繊維径:10μm
【0075】
〔(C)銅化合物及びハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く。)を含むポリアミドマスターバッチ〕
(C1)98%硫酸粘度2.3のポリアミド610樹脂 ヨウ化銅:3質量%、ヨウ化カリウム:15質量%、ヨウ素/銅比モル比=8 エチレンビスステアリルアミド:2質量%
(C2)98%硫酸粘度2.3のポリアミド610樹脂 ヨウ化銅:3質量%、ヨウ化カリウム:30質量%、ヨウ素/銅比モル比=20 エチレンビスステアリルアミド:2質量%
【0076】
〔(D)ガラス繊維以外の無機充填材〕
(D1)タルク
商品名:ミクロエース(登録商標)L−1(日本タルク社製)
【0077】
〔(E)滑剤〕
(E1)モンタン酸カルシウム
(E2)ベヘン酸カルシウム
【0078】
〔(F)着色剤〕
(F1)カーボンブラック
商品名:三菱(登録商標)カーボンブラック#2600(三菱化学社製)
【0079】
〔参考例1〜4、実施例5〜10〕
前記(A)ポリアミド610樹脂を、東芝機械社製、TEM35 2軸押出機(設定温
度:280℃、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、前記(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対
して、前記(B)ガラス繊維を、下記表1に示す割合で供給し、溶融混練を行った。
前記(C)ポリアミドマスターバッチを、前記(A)ポリアミド610樹脂:100質
量部に対して、下記表1に示す割合で、フィードホッパーから供給した。
その他添加剤を下記表1に示す割合で、フィードホッパーより前記(A)ポリアミド6
10樹脂と同時に供給した。
紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状の
ポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し
、23℃水中引張クリープ特性の評価、130℃乾熱引張クリープ特性の評価、及びシャ
ルピー衝撃強度の測定を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0080】
〔比較例1〜9〕
前記(A)ポリアミド610樹脂を、東芝機械社製、TEM35 2軸押出機(設定温度:280℃、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、前記(A)ポリアミド610樹脂:100質量部に対して、前記(B)ガラス繊維を、下記表2に示す割合で供給し、溶融混練を行った。
その他添加剤を下記表2に示す割合で、フィードホッパーより前記(A)ポリアミド610樹脂と同時に供給した。
紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
また、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、23℃水中引張クリープ特性の評価、130℃乾熱引張クリープ特性の評価、及びシャルピー衝撃強度の測定を行った。
評価結果を下記表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
前記表1に示すように、
参考例1〜4、実施例5〜10のポリアミド樹脂組成物の成形品は、いずれも極めて優れた23℃水中引張クリープ特性、130℃乾熱引張クリープ特性、及び機械的特性を有することが分かった。
一方、比較例1〜9のポリアミド樹脂組成物の成形品は、23℃水中引張クリープ特性
及び/又は130℃乾熱引張クリープ特性が大きく低下したことが確認された。