特許第5854639号(P5854639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854639
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】スロットル制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20160120BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   F02D11/10 A
   F02D9/02 351P
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-115312(P2011-115312)
(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公開番号】特開2012-7608(P2012-7608A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2014年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-119932(P2010-119932)
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】石川 道彦
(72)【発明者】
【氏名】村坂 力
(72)【発明者】
【氏名】篠原 広廉
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−256895(JP,A)
【文献】 特開2004−132289(JP,A)
【文献】 特開平03−202626(JP,A)
【文献】 実開昭54−091513(JP,U)
【文献】 特開2006−207454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/10
F02D 9/00 〜 9/02
F02M 3/00
F02M 19/00
F02M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへ供給する空気量を制御するスロットル制御装置において、
それぞれスロットル弁により開閉される少なくとも3つの吸気通路が並んで配置されたスロットルボデーと、
並んで配置される前記スロットル弁のうち、両端に配置されたスロットル弁を共通に駆動する第1モータと、前記両端のスロットル弁の内側に配置されたスロットル弁を駆動する第2モータとを含む複数のモータと、
前記両端のスロットル弁のうち、一方のスロットル弁に固定された第1スロットルシャフトと他方のスロットル弁に固定された第2スロットルシャフトとを同期して回転させるように、前記第1モータの駆動力を前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトに伝達する伝達部と、を備え、
前記第1スロットルシャフトには、前記第1モータの駆動力が伝達される第1スロットルギアが固定され、
前記第2スロットルシャフトには、前記第1モータの駆動力が伝達される第2スロットルギアが固定され、
前記伝達部は、前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトと平行に配置される連結シャフトと、前記連結シャフトに固定され前記第1スロットルギアに連結される第1連結ギアと、前記連結シャフトに固定され前記第2スロットルギアに連結される第2連結ギアと、前記連結シャフトの中間に固定され前記第1モータの出力軸に連結される中間ギアとを備える、
ことを特徴とするスロットル制御装置。
【請求項2】
エンジンへ供給する空気量を制御するスロットル制御装置において、
それぞれスロットル弁により開閉される少なくとも3つの吸気通路が並んで配置されたスロットルボデーと、
並んで配置される前記スロットル弁のうち、両端に配置されたスロットル弁を共通に駆動する第1モータと、前記両端のスロットル弁の内側に配置されたスロットル弁を駆動する第2モータとを含む複数のモータと、
前記両端のスロットル弁のうち、一方のスロットル弁に固定された第1スロットルシャフトと他方のスロットル弁に固定された第2スロットルシャフトとを同期して回転させるように、前記第1モータの駆動力を前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトに伝達する伝達部と、を備え、
前記伝達部は、前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトと一体的に形成された軸状部材であり、前記内側に配置されたスロットル弁に固定された第3スロットルシャフトの吸気上流側または吸気下流側に配置されている、
ことを特徴とするスロットル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によるスロットルグリップ等の操作量に基づいてモータが駆動され、モータによりスロットル弁の開度が制御されることでエンジンへの吸気量を制御するスロットル制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スロットルグリップ等による操作量をアクセルセンサにより検出し、この操作量に基づいてモータが駆動されることで、スロットル弁の開度が制御されるスロットル制御装置が知られている(例えば、特許文献1)。ここでは、4つのスロットル弁が2つのモータで駆動される場合であっても、外側に配置されたスロットル弁はその隣りのスロットル弁と共通のモータで駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−256895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図3に示すように上記従来技術におけるスロットル制御装置が二輪車のエンジンに取付けられると、両端のスロットル弁102、103が内部に設けられるスロットルボデーが外気により冷やされるのに対して、内側のスロットル弁104,105が内部に設けられるスロットルボデーの周囲は相対的に高温となる。また、各気筒における4つの排気管106,107,108,109は1本に集合される場合は、二輪車内部のスペースに限りがあるため、外側の2本の排気管106、109に対して内側の2本の排気管107,108の長さが短くなる。そのため、内側の気筒と両端の気筒とにおける吸気慣性効果が異なる場合がある。ここで両端の気筒に対応するスロットル弁102,103と内側の気筒に対応するスロットル弁104,105とを同じモータ110で同様に制御すると、気筒ごとの空燃比にバラツキが生じる恐れが生じる。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二輪車等におけるレイアウトなどにより、内側の気筒と両端の気筒との間の動作環境が異なる場合であっても気筒ごとの空燃比を安定して制御できるようなスロットル制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスロットル制御装置はそれぞれスロットル弁により開閉される少なくとも3つの吸気通路が並んで配置されたスロットルボデーと、並んで配置される前記スロットル弁のうち両端に配置されたスロットル弁を共通に駆動する第1モータと前記両端のスロットル弁の内側に配置されたスロットル弁を駆動する第2モータとを含む複数のモータと、前記両端のスロットル弁のうち一方のスロットル弁に固定された第1スロットルシャフトと他方のスロットル弁に固定された第2スロットルシャフトとを同期して回転させるように、前記第1モータの駆動力を前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトに伝達する伝達部を備え、前記第1スロットルシャフトには、前記第1モータの駆動力が伝達される第1スロットルギアが固定され、前記第2スロットルシャフトには、前記第1モータの駆動力が伝達される第2スロットルギアが固定され、前記伝達部は、前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトと平行に配置される連結シャフトと、前記連結シャフトに固定され前記第1スロットルギアに連結される第1連結ギアと、前記連結シャフトに固定され前記第2スロットルギアに連結される第2連結ギアと、前記連結シャフトの中間に固定され前記第1モータの出力軸に連結される中間ギアとを備える、構成となっている。
【0008】
また、本発明のスロットル制御装置は、それぞれスロットル弁により開閉される少なくとも3つの吸気通路が並んで配置されたスロットルボデーと、並んで配置される前記スロットル弁のうち、両端に配置されたスロットル弁を共通に駆動する第1モータと、前記両端のスロットル弁の内側に配置されたスロットル弁を駆動する第2モータとを含む複数のモータと、前記両端のスロットル弁のうち一方のスロットル弁に固定された第1スロットルシャフトと他方のスロットル弁に固定された第2スロットルシャフトとを同期して回転させるように、前記第1モータの駆動力を前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトに伝達する伝達部を備え、前記伝達部は、前記第1スロットルシャフトおよび前記第2スロットルシャフトと一体的に形成された軸状部材であり、前記内側に配置されたスロットル弁に固定された第3スロットルシャフトの吸気上流側または吸気下流側に配置されている、構成となっている。

【発明の効果】
【0009】
本発明のスロットル制御装置によれば、両端の吸気通路と内側の吸気通路との空気量が独立して制御できる構成とすることで、両端の気筒と内側の気筒の温度差の影響などによる空燃比制御のバラツキを抑え、気筒ごとの空燃比を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態によるスロットル制御装置の構成図。
図2】本発明の別の実施の形態によるスロットル制御装置の構成図。
図3】従来のスロットル制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1に基づいて本発明の実施形態によるスロットル制御装置の構成について説明する。図1は、スロットル制御装置の斜視図を示している。
【0012】
本実施の形態に係るスロットル制御装置においては、スロットルボデー5、6、7がたとえば直列の4気筒エンジンに通じる4つの吸気通路1、2、3、4を内部に通すように形成されている。外側(両端側)に配置されたスロットルボデー5,6とその内側に配置されたスロットルボデー7が車両の横方向に並ぶように配置されている。一方の外側のスロットルボデー5は、内部に回転自在に取付けられる第1スロットルシャフト10と、第1スロットルシャフト10に固定され吸気通路1を開閉する第1スロットル弁14とを備える。他方の外側のスロットルボデー6は、内部に回転自在に取付けられる第2スロットルシャフト11と、第2スロットルシャフト11に固定され吸気通路4を開閉する第4スロットル弁17とを備える。内側のスロットルボデー7は、内部に回転自在に取付けられる第3スロットルシャフト12と、第3スロットルシャフト12に固定され吸気通路2および吸気通路3とをそれぞれ開閉する第2スロットル弁15と第3スロットル弁16とを備える。
【0013】
第1スロットル弁14および第4スロットル弁17の開度は、他方の外側のスロットルボデー6における第2スロットルシャフト11の端部に取付けられる第1スロットル開度センサ18によって検出される。第2スロットル弁15および第3スロットル弁16の開度は、内側のスロットルボデー7における第3スロットルシャフト12の端部に取付けられる第2スロットル開度センサ19によって検出される。なお、第2スロットル開度センサ19のコネクタの向きは、後述する連動シャフト13から遠ざかる方向に向いており、コネクタに連結される配線の取り回しが容易となる。第1スロットル開度センサ18のコネクタの向きは連動シャフト13側に向いているが、反対方向に向いていてもよい。その場合、第1スロットル開度センサ18と第2スロットル開度センサ19のコネクタの向きが同方向となるので、各コネクタに連結される配線の取り回しが簡易化される。
【0014】
一方の外側の第1スロットルシャフト10の端部には第1スロットルギア21が取付けられ、他方の外側の第2スロットルシャフト11の第1スロットル開度センサ18の反対側の端部には第2スロットルギア22が取付けられる。第1スロットルギア21と第2スロットルギア22はともに内側のスロットルボデー7に面して取り付けられる。第1スロットルギア21と第2スロットルギア22とは、第1連結ギア23と第2連結ギア24とが両側に取付けられた連動シャフト13により、連動して回動する。連動シャフト13は、第1スロットルシャフト10および第2スロットルシャフト11と平行に配置される。連動シャフト13の中間には中間ギア25が取り付けられており、この中間ギア25を第1モータ8により回動させることで、連動シャフト13が回動する。したがって、図示しないアクセル開度センサの検出値に基づいて駆動される第1モータ8が連動シャフト13を回動させると、第1連結ギア23と第1スロットルギア21とを介して第1スロットル弁14が回動し、第2連結ギア24と第2スロットルギア22とを介して第4スロットル弁17が回動する。一つの第1モータ8が駆動されることで、両端のスロットル弁である第1スロットル弁14と第4スロットル弁17とが連動シャフト13に連動して回動することになる。また、中間ギア25が、連動シャフト13の中間であって、第1連結ギア23と第2連結ギア24との間の中央の位置に取り付けられていることにより、連動シャフト13の両端におけるねじれ具合が同等となり、両端のスロットルシャフトである第1スロットルシャフト10と第2スロットルシャフト11とが確実に同期されるので、両端のスロットル弁である第1スロットル弁14と第4スロットル弁17とが確実に同期して開閉することができる。このように、連結シャフト13、第1連結ギア23、第2連結ギア24および中間ギア25により、第1モータ8の駆動力を第1スロットルシャフト10と第2スロットルシャフト11に伝達する伝達部が構成される。
【0015】
内側のスロットルボデー7において、第3スロットルシャフト12の一端には第3スロットルギア27が取付けられ、他端には第2スロットル開度センサ19が取付けられる。第3スロットルギア27は中間シャフト26を回転軸とする第3連結ギア20を介して第2モータ9の出力軸と連結されている。上記のとおり、第2スロットル弁15と第3スロットル弁16とは、第3スロットルシャフト12に対して固定されている。したがって、図示しないアクセル開度センサの検出値に基づいて第2モータ9が駆動されることにより、第2スロットル弁15と第3スロットル弁16とが確実に同期して開閉することができる。第1モータ8は、第3スロットルシャフト12を挟んで、第2モータ9と反対側に配置されている。上記のとおり、内側のスロットルボデー7は第2スロットル弁15と第3スロットル弁16とを備える2つの吸気通路を有しているが、一つのスロットル弁を備えた一つの吸気通路を有する場合もあり得る。また、第1モータ8は、第3スロットルシャフトに対して、第2モータ9と同じ側に配置されていてもよい。その場合、連結シャフト13と中間シャフト26とは、吸気通路1,2,3,4における吸気方向に並んで配置され、互いに接触しない位置に配置される。第1モータ8と第2モータ9とは、吸気通路1,2,3,4、に対して同じ側に配置されるので、その反対側の占有スペースを抑制できるとともに、図示しないモータケースを一体化でき、図示しないモータコネクタに連結される配線の取り回しを簡素化できる。また、第3連結ギア20は第3スロットルシャフト12における端部以外の中間位置に連結されていてもよい。また、吸気通路1,2,3,4における第1スロットル弁14、第2スロットル弁15、第3スロットル弁16、第4スロットル弁17の下流に燃料を噴射するため、図示しないインジェクタをスロットルボデー5,6,7に取り付けることもできる。なお、上記実施形態のスロットルボデー5,6,7は、別体として形成されるが、一体的に形成されてもよい。
【0016】
両端のスロットル弁である第1スロットル弁14と第4スロットル弁17とが、一つのモータ8により開閉され、内側のスロットル弁である第2スロットル弁15と第3スロットル弁16とが、他の一つのモータ9により開閉される。したがって、両端の吸気通路1、4と内側の吸気通路2、3との吸気量が独立したモータにより制御されるので、両端の気筒と内側の気筒の温度差の影響などによる空燃比制御のバラツキを抑えることにつながり、気筒ごとの空燃比を安定して制御することができるようになる。
【0017】
次に、図2に基づいて本発明の別の実施形態によるスロットル制御装置の構成について説明する。図2は、別の実施形態におけるスロットル制御装置の構成図を示している。上記の実施の形態の説明と重複する内容は省略する。
【0018】
両端のスロットル弁である第1スロットル弁51と第4スロットル弁54とは、上流側スロットルシャフト56に固定されている。すなわち、第1スロットルシャフトと第2スロットルシャフトは、軸状部材としての上流側スロットルシャフト56に一体化されている。さらに、第1モータ58の駆動力を第1スロットルシャフトと第2スロットルシャフトに伝達する伝達部も、軸状部材としての上流側スロットルシャフト56に一体化されている。内側のスロットル弁である第2スロットル弁52と第3スロットル弁53は下流側スロットルシャフト55に固定されている。上流側スロットルシャフト56が、第1モータ58により回動され、下流側スロットルシャフト55が第2モータ57により回動される。上流側スロットルシャフト56は、吸気方向でみて下流側スロットルシャフト55の上流側に設置されている。
【0019】
したがって、両端の吸気通路と内側の吸気通路との吸気量が独立したモータにより制御されるので、両端の気筒と内側の気筒の温度差の影響などによる空燃比制御のバラツキを抑えることにつながり、気筒ごとの空燃比を安定して制御することができるようになる。
【0020】
なお、両端のスロットル弁を下流側スロットルシャフトに固定し、内側のスロットル弁を上流側スロットルシャフトに固定しても、同様の効果が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
二輪車などの3気筒以上のエンジンに供給される空気量を制御するスロットル制御装置において有効に機能する。
【符号の説明】
【0022】
1,2,3,4 吸気通路
5、6 両端のスロットルボデー
7 内側のスロットルボデー
8 第1モータ
9 第2モータ
10 第1スロットルシャフト
11 第2スロットルシャフト
12 第3スロットルシャフト
13 連動シャフト
図1
図2
図3