(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物は、樹脂成分として、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートを構成成分として有するポリウレタンエラストマーを含有し、動的粘弾性装置を用いて、引張モードで測定したときに、貯蔵弾性率E’(Pa)と損失弾性率E”(Pa)とが、下記式を満足することを特徴とする。
log(E’/E”
2)≧−6.08
前記log(E’/E”
2)は、−6.01以上がより好ましい。また、前記log(E’/E”
2)は、特に限定されないが、−3.00以下が好ましく、−3.20以下がより好ましい。前記log(E’/E”
2)が−3.00になると、反発係数が最大値である1に近づくからである。前記log(E’/E”
2)は、後述するポリウレタンエラストマーのポリイソシアネート成分、ポリオール成分、または、鎖延長剤成分の種類、含有量などを適宜選択することにより制御することができる。なお、上記式においてlogは常用対数である。
【0016】
前記貯蔵弾性率E’(Pa)は、1×10
5Pa以上が好ましく、2×10
5Pa以上がより好ましく、50×10
7Pa以下が好ましく、49×10
7Pa以下がより好ましい。前記貯蔵弾性率E’(Pa)が1×10
5Pa以上であれば、ゴルフボール形状を保つことができる。前記貯蔵弾性率E’(Pa)が50×10
7Pa以下であれば、打球感が良好となる。前記損失弾性率E”(Pa)は、1×10
3Pa以上が好ましく、2×10
3Pa以上がより好ましく、2.45×10
7Pa以下が好ましく、2.40×10
7Pa以下がより好ましい。前記損失弾性率E”(Pa)が1×10
3Pa以上であれば、耐久性が良好となる。前記損失弾性率E”(Pa)が2.45×10
7Pa以下であれば、反発性が良好となる。
【0017】
動的粘弾性の測定条件として、加振周波数:10Hz、温度:0℃、測定ひずみ0.05%の条件を採用する。40m/sでの反発係数測定におけるゴルフボールと衝突棒(金属製円筒物)との接触時間は、500μ秒であり、これを一周期の変形と考えると、数1000Hzの周波数の変形に対応する。一般的なポリウレタンの周波数・温度換算則から、温度:室温、加振周波数:数1000Hzの測定条件で測定する動的粘弾性は、温度:0℃、加振周波数:10Hzの測定条件で測定する動的粘弾性に相当する。また、ひずみが0.05%である理由は、反発係数測定時のひずみが、線形範囲内であることから、線形ひずみである0.05%で表現できると考える。
【0018】
本発明のポリウレタン組成物は、樹脂成分として、ポリウレタンエラストマーを含有する。前記ポリウレタンエラストマーは、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させてなる生成物であり、分子鎖に複数のウレタン結合を有する弾性体(エラストマー)である。必要に応じて、ポリアミン成分を反応させても良い。
【0019】
前記ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート成分として、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートを用いたものであることが好ましい。炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造とは、炭素数が3〜30の脂環式炭化水素構造が好ましく、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などを挙げることができる。また、脂環式炭化水素構造の少なくとも1つの水素が、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルキル基などで置換されていてもよい。また、ポリイソシアネートが、一分子中に有する炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造の数は、2つ以上であればよく、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。ポリイソシアネートが、一分子中に有する炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造の数は、2つが特に好ましい。
【0020】
炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「H
12MDI」と称する場合がある)を挙げることができる。また、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートとして、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)など脂環式炭化水素構造を1つ有する脂環式ポリイソシアネートの二量体(ウレトジオン体)若しくは三量体(イソシアヌレート体)を用いてもよい。
【0021】
炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートは、一分子中に2つの脂環式炭化水素構造を有しており、これらの環平面に対する結合位置の違いによって立体異性体が存在する。この炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートを構成成分とするポリウレタンエラストマーは、分子鎖中の脂環式炭化水素構造の50モル%以上が、トランス体であることが好ましい。ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がよくなり、反発性がよくなるからである。
【0022】
本発明で好適に使用するH
12MDIは、一分子中に2つのシクロヘキサン環を有しており、これらのシクロヘキサン環に結合するメチレン基とイソシアネート基の環平面に対する結合位置の違いによって3種の立体異性体が存在することとなる。すなわち、各シクロヘキサン環におけるメチレン基とイソシアネート基の環平面に対する結合位置が、両方において同じ側に位置しているシス,シス体(下記式(1));いずれか一方では同じ側に位置し、他方では反対側に位置しているシス,トランス体(下記式(2));両方において反対側に位置しているトランス,トランス体(下記式(3))の3種の立体異性体が存在する。なお、シクロヘキサン環には、いす形配座と舟形配座のような立体配座異性体が存在するが、これらは環の反転によって平均化されているものとみなす。本発明で好適に使用するH
12MDIは、トランス,トランス体の含有率が、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、90モル%超がさらに一層好ましい。トランス,トランス体の含有率が高いH
12MDIを使用することにより、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がよくなり反発性がよくなるからである。
【0024】
炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートのトランス体の比率は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどによって測定することができる。
【0025】
本発明で使用するポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート成分として、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートのみを使用することが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリイソシアネート成分を併用してもよい。他のポリイソシアネート成分を併用する場合、ポリイソシアネート成分中の炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートの含有率は、イソシアネート基の総モル数に対して、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートのイソシアネート基を50モル%以上とすることが好ましく、70モル%以上とすることがより好ましく、80モル%以上とすることがさらに好ましい。
【0026】
前記炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートと併用し得るポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0027】
本発明で使用するポリウレタンエラストマーを構成し得る高分子量ポリオール成分としては、数平均分子量が1000以上、3000以下のポリオールを使用することが好ましい。数平均分子量が1000以上、3000以下のポリオールは、ソフトセグメントを形成し、ポリウレタンに柔軟性を付与する。前記高分子量ポリオール成分の数平均分子量が1000未満であると、得られるポリウレタンが硬くなり過ぎる場合があるからである。また、高分子量ポリオール成分の数平均分子量が、3000以下であれば、ドライバーショットに対して低スピンのゴルフボールが得られるからである。
【0028】
高分子量ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSK−GEL SUPERH2500(東ソー株式会社製)2本を用いて測定すればよい。
【0029】
数平均分子量が1000以上、3000以下の高分子量ポリオール成分は、重合体ポリオールであることが好ましい。重合体ポリオールとは、低分子化合物を重合して得られる重合体であって、水酸基を複数有するものである。これらの中でも、水酸基を二つ有する重合体ジオールが好ましい。重合体ジオールを使用することにより、直鎖状の熱可塑性ポリウレタンが得られ、ゴルフボールを構成する部材への成形が容易になるからである。
【0030】
数平均分子量が1000以上、3000以下の重合体ポリオール成分としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;およびアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。これらの中でも、重合体ポリオール成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。ポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することにより、ドライバーショットとアプローチショットに対するスピン量を高いレベルで制御することができる。
【0031】
前記ポリウレタンエラストマーを構成する重合体ポリオール成分の水酸基価は、561mgKOH/g以下が好ましく、173mgKOH/g以下がより好ましく、94mgKOH/g以上が好ましく、112mgKOH/g以上がより好ましく、132mgKOH/g以上がさらに好ましい。なお、ポリオール成分の水酸基価は、JIS K 1557−1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
【0032】
前記ポリウレタンエラストマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、鎖延長剤を構成成分として有してもよい。前記鎖延長剤成分としては、低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンなどを使用することができる。低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(例:1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールなど)、ジプロピレングリコール、ブタンジオール(例:1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなど)、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、1,4−シクロへキサンジメチロールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオール;ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのテトラオールまたはヘキサオールなどが挙げられる。
【0033】
また、鎖延長剤成分として使用できる低分子量のポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式ポリアミン;芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0034】
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
【0035】
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
【0036】
前記鎖延長剤の分子量は、400以下が好ましく、350以下がより好ましく、200未満がさらに好ましく、30以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上がさらに好ましい。分子量が大きくなりすぎると、ポリウレタンのソフトセグメントを構成する高分子量ポリオール(重合体ポリオール)との区別が困難になるからである。なお、鎖延長剤として使用する「低分子量ポリオール」および「低分子量ポリアミン」は、分子量分布を有さない低分子化合物である点で、低分子化合物を重合して得られる数平均分子量が1000以上3000以下の高分子量ポリオール(重合体ポリオール)とは区別される。
【0037】
本発明で使用するポリウレタンエラストマーの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と数平均分子量が1000以上3000以下の高分子量ポリオール成分とによって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と数平均分子量が1000以上3000以下の高分子量ポリオール成分と鎖延長剤成分によって構成されている態様などを挙げることができる。
【0038】
本発明で使用するポリウレタンエラストマーは、いわゆる熱可塑性ポリウレタンエラストマーや熱硬化性ポリウレタンエラストマー(二液硬化型ポリウレタンエラストマー)のいずれの態様であってもよい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーとは、一般に、ある程度高分子量化された直鎖構造を有するポリウレタンエラストマーを意味し、加熱により可塑性を示すポリウレタンエラストマーである。加熱により熱可塑性ポリウレタンエラストマーを溶融または軟化させて成形する。一方、熱硬化性ポリウレタンエラストマー(二液硬化型ポリウレタンエラストマー)は、比較的低分子量のプレポリマーと硬化剤とからなる。成形時にこれらを混合して硬化させる。熱硬化性ポリウレタンエラストマーには、使用するプレポリマーや硬化剤の官能基の数を制御することによって、直鎖構造のポリウレタンエラストマーや3次元架橋構造を有するポリウレタンエラストマーが含まれる。なお、本発明で使用するポリウレタンエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0039】
ポリウレタンエラストマーの合成方法としては、ワンショット法、あるいは、プレポリマー法を挙げることができる。ワンショット法とは、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分などを一括で反応させる方法である。プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネート成分、ポリオール成分などを反応させる方法であり、例えば、比較的低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、続けてさらに高分子量化する方法である。なお、本発明に用いられるポリウレタンは、プレポリマー法によって作製することが好ましい。
【0040】
以下、ポリウレタンエラストマーをプレポリマー法にて作製する態様の一例として、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを合成した後、鎖延長剤により高分子量化する態様について詳細に説明する。
【0041】
まず、ポリイソシアネート成分と、重合体ポリオール成分とを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを合成する。この際、ポリイソシアネート成分と重合体ポリオール成分との仕込み比は、重合体ポリオール成分の有する水酸基(OH)に対するポリイソシアネート成分の有するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH)を1以上とすることが好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、10以下が好ましく、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。
【0042】
また、プレポリマー化反応を行う際の温度は、10℃以上が好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、200℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。また、反応時間は10分間以上が好ましく、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上であり、32時間以下が好ましく、より好ましくは16時間以下、さらに好ましくは8時間以下である。
【0043】
次に、得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、鎖延長剤成分により鎖長延長反応させて高分子量ポリウレタンエラストマーを得る。この際、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと鎖延長剤成分との仕込み比は、鎖延長剤成分の有する水酸基(OH)またはアミノ基(NH
2)に対するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OHまたはNH
2)を0.9以上とすることが好ましく、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.95以上であり、1.1以下が好ましく、より好ましくは1.08以下、さらに好ましくは1.05以下である。
【0044】
鎖延長反応を行う際の温度は、10℃以上が好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、220℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。また、反応時間は10分間以上が好ましく、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上であり、20日間以下が好ましく、より好ましくは10日間以下、さらに好ましくは5日間以下である。
【0045】
プレポリマー化反応および鎖延長反応は、いずれも乾燥窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0046】
ポリウレタンエラストマーの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミンなどの環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒が好ましく、特に、ジブチルチンジラウリレートが好適に使用される。
【0047】
本発明で使用するポリウレタン組成物は、樹脂成分として、上述したポリウレタンエラストマーのみを含有することが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、アイオノマー樹脂や他の熱可塑性エラストマーを含有しても良い。この場合、樹脂成分中のポリウレタンエラストマーの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0048】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。前記中和金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等から好ましく用いられる。
【0049】
前記アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されているハイミラン、さらにデュポン(株)から市販されているサーリン、エクソンモービル化学(株)から市販されているアイオテックなどを挙げることができる。
【0050】
前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランNY85A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。前記アイオノマー樹脂および熱可塑性エラストマーは、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
本発明で使用するゴルフボール用ポリウレタン組成物は、樹脂成分として、上述したポリウレタンエラストマーを含有するものであれば、特に限定されない。前記ポリウレタン組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを含有してもよい。なお、ゴルフボール用ポリウレタン組成物に添加剤を配合する場合は、添加剤を配合したゴルフボール用ポリウレタン組成物が、log(E’/E”
2)、反発弾性、およびスラブ硬度などの物性を満足すればよい。
【0052】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、ポリウレタン組成物に隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるゴルフボール構成部材の耐久性が低下する場合があるからである。
【0053】
本発明で使用するゴルフボール用ポリウレタン組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、18以上が好ましく、19以上がより好ましく、20以上がさらに好ましく、60以下が好ましく、56以下がより好ましく、53以下がさらに好ましい。前記ポリウレタン組成物の硬度が低くすぎると、反発性が低くなる場合がある。また、ポリウレタン組成物の硬度が高すぎると、打球感が不良となる場合がある。
【0054】
本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物の反発弾性は、58%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、64%以上がさらに好ましい。反発弾性が、58%以上のゴルフボール用ポリウレタン組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。前記反発弾性は、ゴルフボール用ポリウレタン組成物をシート状に成形して測定した反発弾性であり、後述する測定方法により測定する。
【0055】
本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物のフローテスターによる溶融粘度(190℃)は、1Pa・s以上が好ましく、10Pa・s以上がより好ましく、1×10
5Pa・s以下が好ましく、5×10
4Pa・s以下がより好ましい。溶融粘度が上記範囲内であれば、構成部材への射出成型が容易になるからである。
【0056】
本発明のゴルフボールは、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成された構成部材を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ワンピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆するように配設された単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するスリーピースゴルフボール;または、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)を構成するいずれかの構成部材が本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されているゴルフボールを挙げることができる。これらの中でも、例えば、少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様、または、ワンピースゴルフボールのゴルフボール本体が本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様が好ましい。特に、ワンピースゴルフボール本体、センター、または、コアなどのゴルフボールの少なくとも一部を構成する球形体が、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様が好ましい。例えば、単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記単層コアが本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様、または、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボールであって、前記センターが、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様が好ましい。
【0057】
以下、本発明のゴルフボールを、コアと前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記コアが、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成されている態様に基づいて詳述するが、本発明は斯かる態様に限定されない。
【0058】
前記コアは、例えば、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物を射出成形することにより成形される。具体的には、1MPa〜100MPaの圧力で型締めした金型内に、160℃〜260℃に加熱溶融したゴルフボール用ポリウレタン組成物を1秒〜100秒で注入し、30秒〜300秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
【0059】
前記コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。
【0060】
前記コアの直径は、39.00mm以上が好ましく、39.25mm以上がより好ましく、39.50mm以上がさらに好ましく、42.37mm以下が好ましく、42.22mm以下がより好ましく、42.07mm以下がさらに好ましい。前記コアの直径が39.00mm以上であれば、カバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性が良好となる。一方、コアの直径が42.37mm以下であれば、カバー層が薄くなり過ぎず、カバーの保護機能が十分に発揮される。
【0061】
前記コアは、直径39.00mm〜42.37mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、0.94mm以上が好ましく、2.40mm以上がより好ましく、9.56mm以下が好ましく、9.00mm以下がより好ましく、8.09mm以下がさらに好ましい。前記圧縮変形量が、2.40mm以上であれば打球感が良好となり、9.56mm以下であれば、反発性が良好となる。
【0062】
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、70以下が好ましく、69以下がより好ましい。コアの表面硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、コアの表面硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0063】
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で20以上であることが好ましく、22以上がより好ましく、24以上がさらに好ましい。コアの中心硬度がショアD硬度で20未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で70以下であることが好ましく、65以下がより好ましく、60以下がさらに好ましい。中心硬度がショアD硬度で70を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0064】
前記コアが、充填剤を含有することも好ましい。充填剤は、主として最終製品として得られるゴルフボールの密度を1.0〜1.5の範囲に調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えると樹脂成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0065】
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは2液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどを挙げることができる。前記樹脂成分は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
ゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンエラストマーを含む)またはアイオノマー樹脂を含有することがより好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタン樹脂またはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0067】
カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0068】
白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0069】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する圧縮成形法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する射出成形法を挙げることができる。
【0070】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、あらかじめ押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができる。具体的には、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
【0071】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0072】
カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0073】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0074】
本発明のゴルフボールは、直径が40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、2.2mm以上がより好ましく、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下がより好ましい。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0075】
以上、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物をコアに用いる態様について説明したが、本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物は、センター、中間層、あるいは、カバーにも用いることもできる。センターが本発明のゴルフボール用ポリウレタン組成物から形成される場合、中間層を形成する材料としては、例えば、カバー材料として例示した樹脂成分を用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0077】
[評価方法]
(1)スラブ硬度(JIS−A硬度、ショアD硬度)
ゴルフボール用ポリウレタン組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、スプリング式硬度計JIS−A型またはASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0078】
(2)フローテスターによる溶融粘度
溶融粘度は、流動特性評価装置(島津製作所製、フローテスターCFT−500D)を用いて、ペレット状の試料について、下記条件で測定した。
測定条件
ダイ長さ:10mm
ダイ穴径:1mm
シリンダー圧力:3MPa
温度:190℃
【0079】
(3)反発弾性(%)
ゴルフボール用ポリウレタン組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
【0080】
(4)圧縮変形量
球形体に初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向に球形体が縮む量)を測定した。圧縮変形量は、ゴルフボールNo.20の圧縮変形量を1.00として指数化した値で示した。
【0081】
(5)反発係数
各球形体に198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物および球形体の速度を測定し、それぞれの速度および重量から各球形体の反発係数を算出した。測定は、各球形体について12個ずつ行って、その平均値を各球形体の反発係数とした。
【0082】
(6)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
優:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
良:普通。
不良:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
【0083】
(7)貯蔵弾性率E’(Pa)および損失弾性率E”(Pa)の測定
ゴルフボール用ポリウレタン組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)および損失弾性率E”(Pa)を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000
測定サンプル:ゴルフボール用ポリウレタン組成物から、熱プレス成形により厚み2mmのシートを作製し、このシートから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:0℃
加振周波数:10Hz
測定ひずみ:0.05%
【0084】
[H
12MDIの作製]
デスモジュール(登録商標)Wを、3〜4℃で91時間保存した後、室温にてヌッチェを用いて4時間かけてろ過を行った。ヌッチェ上の物を回収してフラスコに仕込み、90℃に昇温して完全に溶融させた後、10時間かけて45℃まで徐冷して、45℃で8時間保存し、さらに24時間かけて室温まで徐冷した。室温まで徐冷したものを、ヌッチェを用いて3時間かけてろ過を行った。ヌッチェ上の物を回収してフラスコに仕込み、70℃に昇温して1時間保持した後、液体成分を除去した。さらに、80℃に昇温して1時間保持した後、液体成分を除去することにより、トランス,トランス体の含有率が95モル%であるH
12MDIを得た。得られたトランス,トランス体の含有率が95モル%であるH
12MDIと、デスモジュール(登録商標)Wとを混合することにより、表1〜3に記載のトランス,トランス体の含有率のH
12MDIを調製した。なお、H
12MDI中のトランス,トランス体の含有率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、型番「GC−2010」)を用いて、下記条件で測定した。
(ガスクロマトグラフィー測定条件)
カラム:DB−1(島津製作所社製)、30m×0.25mm×0.25μm、
温度:150℃で2分保持、5℃/minで250℃まで昇温、10℃/minで300℃まで昇温、300℃で3分保持
インジェクション温度:280℃
ディテクタ温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム、流量:2ml/min
【0085】
[ポリウレタンエラストマーの合成]
表1〜表3に示した組成比を有するポリウレタンエラストマーを、以下のようにして合成した。80℃に加熱した4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)に、80℃に加熱したポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG2000)を投入し、さらに、原料(H
12MDI、PTMG2000およびBD)の総量の0.005質量%のジブチルチンジラウレート(アルドリッチ社製)を投入した後、窒素気流下にて、80℃で2時間撹拌を行った。続いて、窒素気流下にて、80℃に加熱した1,4−ブタンジオール(BD)を投入した後、80℃で1分間撹拌を行った。その後、反応液を冷却して、室温にて1分間減圧することにより系中の脱気を行った。脱気後の反応液を、容器に延展し、窒素雰囲気下、110℃にて6時間保存することにより、鎖延長反応を行いポリウレタンエラストマーを得た。
【0086】
[球形体(コア)の作製]
上記のようにして得られたポリウレタンエラストマーを、二軸混練型押出機により、ストランド状に冷水中に押し出した。押出されたストランドをペレタイザーにより切断してペレット状のゴルフボール用ポリウレタン組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたペレット状のゴルフボール用ポリウレタン組成物を220℃にて射出成形し、直径40mmの球形体(コア)を得た。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
表1〜表3で使用した原料は以下の通りである。
PTMG2000:BASFジャパン社製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000)
BD:東京化成工業社製1,4−ブタンジオール
【0091】
表1〜表3から明らかなように、樹脂成分として、炭素数が3以上の脂環式炭化水素構造を少なくとも2つ有するポリイソシアネートを構成成分として有するポリウレタンエラストマーを含有し、動的粘弾性装置を用いて、引張モードで測定したときに、貯蔵弾性率E’(Pa)と損失弾性率E”(Pa)とが、下記式を満足することを特徴とするゴルフボール用ポリウレタン組成物は、反発性が高い。また、特に問題なく、射出成形することができた。
log(E’/E”
2)≧−6.08
【0092】
また、log(E’/E”
2)が−6.08未満であるゴルフボールNo.7およびゴルフボールNo.12は、打球感に優れているものの反発性が低くなった。
【0093】
図1は、球形体No.1〜25の反発係数とlog(E’/E”
2)との関係を示すグラフである。log(E’/E”
2)が大きくなるに従って、反発係数も大きくなることが分かる。