特許第5854710号(P5854710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854710
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】擬似ヘテロダイン信号用の復調方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20060101AFI20160120BHJP
   G01F 1/32 20060101ALN20160120BHJP
【FI】
   G01B9/02
   !G01F1/32 N
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-190956(P2011-190956)
(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2012-53046(P2012-53046A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2014年5月30日
(31)【優先権主張番号】10 2010 044 245.3
(32)【優先日】2010年9月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009494
【氏名又は名称】クローネ メステヒニーク ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Krohne Messtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】カイ ゴスナー
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−516434(JP,A)
【文献】 特開平09−229626(JP,A)
【文献】 特開2001−330669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0063679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ヘテロダイン信号用の復調方法であって、
前記擬似ヘテロダイン信号は、位相変調された搬送波信号を有しており、
前記搬送波信号は、周期的に繰り返される正弦波状のセグメントから合成され、記擬似ヘテロダイン信号はデジタルサンプリングされ
記デジタルサンプリングされた擬似ヘテロダイン信号に離散フーリエ変換を行い、
振幅および位相を有する少なくとも1つの出力フーリエ係数を求め、前記離散フーリエ変換のただ1つの出力フーリエ係数にatan2関数(11)を適用し、
前記atan2関数(11)により、前記1つの出力フーリエ係数の位相を得る形式の、擬似ヘテロダイン信号の復調方法において、
前記擬似ヘテロダイン信号を前記搬送波信号の(m+p/n)振動にわたって形成し、
前記擬似ヘテロダイン信号を前記搬送波信号のm×n+p倍の周波数によってサンプリングし、
前記離散フーリエ変換をm×n個のサンプリングステップにわたって実行して最初のp個のサンプリングステップを廃棄する、
ただし
mは、0よりも大きな自然数であり、
nは、1よりも大きな自然数であり、
pは、0よりも大きな自然数である、
ことを特徴とする、
擬似ヘテロダイン信号用の復調方法。
【請求項2】
記1つの出力フーリエ係数は、前記離散フーリエ変換の第2フーリエ係数である、
請求項1に記載の復調方法。
【請求項3】
高速フーリエ変換のアルゴリムを使用して前記離散フーリエ変換を形成する、
請求項1または2に記載の復調方法。
【請求項4】
記数nを4に等しく選択する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項5】
記数mを1に等しく選択する、
請求項からまでのいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項6】
記数pを1に等しく選択する、
請求項からまでのいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項7】
記デジタルサンプリングの前に前記擬似ヘテロダイン信号を増幅器によって増幅する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項8】
記デジタルサンプリングの前に前記擬似ヘテロダイン信号をローパスフィルタによってフィルタリングする、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の復調方法。
【請求項9】
記1つの出力フーリエ係数の位相における位相跳躍を位相アンラッピングによって除去する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似ヘテロダイン信号用の復調方法に関しており、ここでこの擬似ヘテロダイン信号は、位相変調された搬送波信号を有しており、またこの擬似ヘテロダイン信号はデジタルサンプリングされる。
【背景技術】
【0002】
擬似ヘテロダイン信号とは、擬似ヘテロダイン方法ベースの干渉計から出力される信号のことをいう。周知であるのは、干渉計により、時間的に十分にコヒーレントな2つのビーム、すなわち可干渉な2つのビームが干渉することである。基本的にコヒーレントなビーム源のビームは、ビームスプリッタによって第1部分ビームと第2部分ビームとに分けられる。第1部分ビームおよび第2部分ビームが走行する路は、干渉計のアームと称される。干渉計の出力側では上記の部分ビームがまとめられて干渉させられる(ないしは(干渉計の構成に応じて)部分ビームから導出されたビームが干渉させられる)。干渉計の出力側におけるビーム強度は、干渉する2つの部分ビームの位相差の余弦に比例する。したがって例えば干渉計アームの長さの極めて小さな変化によって発生する位相差の変化は、干渉計の出力側における強度変化に結び付くのである。
【0003】
冒頭に述べた擬似ヘテロダイン法では、干渉計において干渉する2つの部分ビーム間の位相差が、周期的なノコギリ歯信号によって変調される。基本的には別の信号タイプも可能であるが、ノコギリ歯信号の使用は、最も知られておりかつ最も広まっている手法であるため、この明細書では以下、ノコギリ歯信号の使用を対象とすることにするが、本発明はこれに限定されるものではない。ノコギリ歯信号は、つぎのフーリエ級数によって表すことができる信号z(t)のことである。すなわち、
【数1】
である。
【0004】
ここでaはゼロとは異なるスケーリングファクタを、f0は周期的なノコギリ歯信号の周波数を、またtは時間を表す。上記のノコギリ歯信号z(t)のフーリエ級数からわかるように、周波数f0の整数倍に等しい周波数も発生する。一定と見なされる位相差を既知のノコギリ歯信号z(t)によって変調することによって得られる位相差信号に関心対象の実際の有効信号s(t)が重畳される。この有効信号は基本的に干渉計の一方のアームにおける部分ビームの(いずれにせよ引き起こされる)位相変化に現れる。干渉計の出力側における強度信号は、上記の擬似ヘテロダイン信号である。有効信号が消えている場合、上記の擬似ヘテロダイン信号は、変調されない搬送波信号になり、この信号は実質的に周期的に繰り返される正弦波状のセグメントから合成される。ここで搬送波信号の周波数は、上記の繰り返される正弦波状のセグメントの周期的な繰り返しの周波数のことをいう。この周波数は、上記の周期的なノコギリ歯信号z(t)の周波数f0に等しい。有効信号が存在する場合、上記の搬送波信号は有効信号によって位相変調される。
【0005】
干渉計としてはマッハ・ツェンダー干渉計が使用されることが多い。基本的には例えばマイケルソン干渉計などの別の干渉計タイプも考えられる。干渉計に使用されるビームを形成するために適しているのは、殊に、例えばVCSEL (Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)などの半導体レーザである。半導体レーザの利点は、干渉計において干渉する2つ部分ビーム間の位相差の変調が殊に簡単に実現できることである。このために、半導体レーザから放射されるレーザビームの波長はポンプ電流に依存するという半導体レーザの特性を利用する。したがって相応する信号によって上記のポンプ電流を振幅変調することにより、レーザビームの波長で所望のノコギリ歯信号z(t)を変調することができる。干渉計において干渉する2つの部分ビーム間の位相差dφの変化と、レーザビームの周波数の変化dvとには、2つの部分ビームの路長差がlである場合につぎのような線形な関係がある。すなわち、
【数2】
である。
【0006】
ここでnは路長差lの区間に沿った平均屈折率であり、cは真空中の光速である。したがって干渉計において干渉する2つの部分ビームの間の位相差は、半導体レーザのポンピング電流を相応に変調することにより、所望のノコギリ歯信号z(t)を変調できることになる。この変調方式は、2つの部分ビームの路長差lが消えない場合にのみ機能する。この変調方式の利点は、干渉計において干渉する2つの部分ビーム間の位相差を変調するために可動かつ障害を受けやすい構成部分が必要でなく、もっぱら電子的なコンポーネントだけが使用されることである。
【0007】
まず強度信号として干渉計の出力側に得られる上記の擬似ヘテロダイン信号はふつう、フォトダイオード、殊にPINフォトダイオードによって電気信号に変換される。これに続いてこの電気信号は、場合によっては増幅された後、デジタルサンプリングされる。このデジタルサンプリングは、殊にアナログ−デジタル変換器によって行われる。場合によって行われる増幅は、上記のPINフォトダイオードによって直接行うことも可能である。
【0008】
上で説明した擬似ヘテロダイン信号を形成するための干渉法は、例えばわずかな動きを検出しようとする応用に適しており、ここでは上記の干渉計を使用して、検出しようとする動きにより、干渉計アームの路長変化が生じるようにするのである。これにより、使用される光源の波長領域(以下)の動きを簡単に検出することができる。この限りにおいて本発明の方法は、例えば振動測定の領域、殊に振動測定装置ないしは機械的な振動を検出する測定装置において応用され、ここでは検出される振動のタイプないしは変化により、別の関心対象の量を推定することができる。上記のような応用として、例えば渦周波数流量測定が考えられる。以下ではこのような応用を例示的に説明する。しかしながらこの応用は当然のことながら本発明による方法を限定するものではなく、むしろ別の多数の応用例、例えば音響センサにおける応用も考えられる。
【0009】
渦周波数流量測定装置によれば、管路におけるガス、蒸気および流体の体積流量を測定することができる。測定原理は、カルマン渦列の原理に基づいている。測定管内には障害物があり、この周囲を媒体が流れ、この障害物の後ろでうずが剥離する。渦が剥離する周波数fは、媒体の流速vに比例する。無次元のストルーハル数Sにより、渦周波数fと、渦体の幅bと、媒体の平均流速vとの間の関係が表される。すなわち、
【数3】
である。
【0010】
流れの方向において障害物の後ろに拡がる渦は、流れの方向において障害物の後ろに設けられているセンサ、例えば膜またはロッド状センサなどに作用を及ぼす。このセンサは上記の渦により、有効信号である周波数fで周期的に動かされる。この動きは、例えば測定管の外部にある干渉計のアームのミラーに機械的に伝達することができる。しかしながらこの動きは光ファイバによって直接検出することも可能である。ここでこの光ファイバは、可動の膜に固定されており、上記の動きに相応して長さが変化するのである。したがってこのようにして検出した動きは、干渉計において干渉する2つの部分ビーム間の位相差の周期的変化を表すのである。この位相差の周期的な変化は、関心対象の上記の有効信号に相応するのである。
【0011】
このような渦周波数流量測定装置は、WO 92/01208から公知である。ここで擬似ヘテロダイン信号の復調は、PLL(フェーズロックループ)によって行われる。この復調方法が不利であることが判明したのは、PLLが擬似ヘテロダイン信号の高調波にセットされてしまい、その結果、異なる高調波間で行ったり来たり跳躍することである。これによって信号の品質が大きく損なわれてしまうのである。確かに上記の高調波を擬似ヘテロダイン信号から除去することは可能ではあるが、これは回路技術的なコストの増大をまねいてしまうのである。
【0012】
上記のノコギリ歯信号z(t)のノコギリ歯のピークの領域においてポンピング電流の振幅は、最大振幅に達した後、ステップ状に降下するため、これによってふつう擬似ヘテロダイン信号のステップ状の変化が発生する。上記の擬似ヘテロダイン信号が増幅されることがある場合、広い帯域幅を有する増幅器を使えば、比較的少ないノイズで擬似ヘテロダイン信号のステップ状の変化を検出することができる。すなわち、この増幅器のステップ応答は、相対的にノイズが小さいのである。しかしながら帯域幅の広い増幅器はふつう不都合にもエネルギ消費が大きいため、例えば電流インタフェース(4mA〜20mA)の2線式装置などの規格によって極めてわずかな電力入力能力しか有しない(わずかな電力入力能力しか許容されない)装置においては現実的には上記の技術を適用することはできないである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 92/01208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、従来技術から公知の欠点を少なくとも部分的に回避しかつ少なくとも従来技術から公知の方法に代わる復調方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、本発明の請求項1により、擬似ヘテロダイン信号用の復調方法であって、この擬似ヘテロダイン信号は、位相変調された搬送波信号を有しており、上記の擬似ヘテロダイン信号はデジタルにサンプリングされる形式の、擬似ヘテロダイン信号の復調方法において、上記のデジタルサンプリングされた擬似ヘテロダイン信号に離散フーリエ変換を行い、振幅および位相を有する少なくとも1つの出力フーリエ係数を求め、上記の離散フーリエ変換のただ1つの出力フーリエ係数にatan2関数を適用し、このatan2関数により、前記の1つの出力フーリエ係数の位相を得ることよって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】擬似ヘテロダイン方式に基づく干渉計の概略図である。
図2】好適な実施例に基づいて本発明による復調方法を概略的に示す図である。
図3】別の有利な1実施例に基づいて本発明による復調方法を概略的に示す図である。
図4】別の有利な1実施例にしたがい、例示的な擬似ヘテロダイン信号に基づく本発明による復調方法の適用例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
フーリエ変換の各フーリエ係数には位相情報が含まれているため、1つのフーリエ係数だけを計算するので十分である。ここでatan2関数は、例えば離散フーリエ変換の1つのフーリエ係数などの複素数に適用される関数のことであり、atan2関数によってこの複素数の位相が得られる。上記の擬似ヘテロダイン信号は有効信号を伴って位相変調されているため、上記のatan2関数によって得られる1つの出力フーリエ係数の位相情報から、公知の方法で上記の有効信号を得ることができるのである。
【0018】
一般的にはatan2関数を任意の1つの出力フーリエ係数に適用することが可能である。それはすべての出力フーリエ係数に位相情報が含まれているからである。しかしながら本発明の有利な1発展形態では、上記の1つの出力フーリエ係数とは、上記の離散フーリエ変換の第2フーリエ係数のことである。
【0019】
本発明の有利な1実施形態の特徴は、上記の離散フーリエ変換を形成するために高速フーリエ変換のアルゴリムを使用することである。ふつうFFT(Fast Fourier Transform)と略記される高速フーリエ変換のためのアルゴリズムとは、「分割統治法」にしたがって上記の離散フーリエ変換を極めて高速に計算することのできるアルゴリズムのことである。殊に有利であるのは、計算しようとする離散フーリエ変換の特定の形態に、使用するアルゴリズムを適合させてさらに速度を上げることである。
【0020】
本発明の殊に有利な1発展形態によれば、上記の擬似ヘテロダイン信号を搬送波信号のm個の振動にわたって形成し、擬似ヘテロダイン信号を搬送波信号のm×n倍の周波数でサンプリングする。ただしmはゼロよりも大きな自然数であり、またnは1よりも大きな自然数であり、上記の離散フーリエ変換をm×n個のサンプリングステップにわたって実行する。ここで上記の擬似ヘテロダイン信号を搬送波信号のm個の振動にわたって形成するというのは、干渉計で干渉する2つの部分ビーム間の位相差の変調をつぎのようなノコギリ歯信号によって行うことである。すなわち、搬送波信号の周期的に繰り返される正弦波状のセグメントがそれぞれ正弦波振動のm個の振動に相当するようなノコギリ歯によって行うのである。これは、ノコギリ歯信号z(t)のノコギリ歯の傾斜を適当に選択することによって行うことができる。ノコギリ歯信号z(t)のノコギリ歯の傾斜は、スケーリングファクタa(式1)を介して調整することができる。
【0021】
本発明の殊に有利な1発展形態によれば、上記の擬似ヘテロダイン信号を搬送波信号の(m+p/n)個の振動にわたって形成し、擬似ヘテロダイン信号を搬送波信号のm×n+p倍の周波数でサンプリングする。ただしmはゼロよりも大きな自然数であり、nは1よりも大きな自然数であり、またpはゼロよりも大きな自然数であり、上記の離散フーリエ変換をm×n個のサンプリングステップにわたって実行し、はじめのp個のサンプリングステップを廃棄する。
【0022】
m×n+p個のサンプリングステップの一部を廃棄することにより、周期的に繰り返される正弦波状のセグメントの一部をかくすことができる。増幅器のステップ応答によるノイズは、擬似ヘテロダイン信号のステップ状の変化の直後に発生するため、本発明では周期的に繰り返される正弦波状のセグメントのまさにこの部分を選択する。このセグメントには、増幅器のステップ状の応答によって発生するノイズが含まれているのである。この部分はふつうm×n+p個のサンプリングステップのはじめのp個のサンプリングステップに相当する。後続の離散フーリエ変換ではこれらのはじめのp個のサンプリングステップは考慮されない。すなわち廃棄されるのである。残りのm×n個のサンプリングステップが、離散フーリエ変換に使用される。ここで周期的に繰り返される正弦波状のセグメントの残りの部分は、ちょうど正弦波振動のm個の周期を表す。この残りの極めてノイズの少ない部分は、本発明により、atan2関数によって評価される。その結果、帯域幅が狭くひいては電力消費の少ない増幅器であっても使用できることになる。それは、増幅器のステップ応答によって発生するノイズがほぼ完全に抑圧されるからである。
【0023】
全体として確認できたのは、本発明による方法により、上述したように電流インタフェース(4mA〜20mA)の2線式装置などの規格によって極めてわずかな最大電力入力しか有しない(極めてわずかな最大電力入力しか許容されない)装置であって干渉計の応用を実現できることである。
【0024】
数mと数nとが与えられた場合、数pの最適値をつぎのように求めることができる。数pの値は、数pの大きさがまさに増幅器の応答によって発生するノイズが抑圧されるのに十分な大きさである場合に最適であると称される。数pの最適値を求めるため、周期的に繰り返される正弦波状のセグメントの全体持続時間tdと、抑圧すべきノイズの持続時間tsrとを求める。これらの2つの持続時間と、与えられた数mと、与えられた数nとが分かれば、数pの最適値を式4にしたがって求めることができる。
【数4】
【0025】
ここでは上記の下に向かって開いた括弧は丸め関数をシンボリックに表しているため、式4により、pに対してつねに整数が得られる。
【0026】
本発明の別の有利な1実施形態によれば、数nを4に等しく選択する。さらに数mを1に等しく選択すると有利である。本発明の殊に有利な1実施形態によれば、数pを1に等しく選択する。
【0027】
本発明の別の有利な1発展形態によれば、上記の擬似ヘテロダイン信号は、デジタルサンプリングの前に増幅器によって増幅される。上記のデジタルサンプリングの前に擬似ヘテロダイン信号を増幅することは必要であり、殊にエラーのないデジタルサンプリングに対して信号強度が十分でない場合には特に必要である。
【0028】
本発明の別の有利な1発展形態によれば、上記の擬似ヘテロダイン信号は、デジタルサンプリングの前にローパスフィルタによってフィルタリングされる。上記の擬似ヘテロダイン信号をデジタルサンプリングする前にローパスフィルタを使用することにより、場合によっては発生し得る擬似ヘテロダイン信号の障害的な高調波をフィタリングによって除去することができる。これにより、殊にエイリアシング作用が効果的に抑圧される。
【0029】
本発明の別の有利な1実施形態によれば、上記の1つの出力フーリエ係数の位相における位相跳躍を位相アンラッピングによって除去する。位相アンラッピングアルゴリズムによれば、2π以上の位相変化を取り扱うことができる。このようなアルゴリズムは従来技術から十分に知られている。
【0030】
個別的には本発明による復調方法を構成しまた発展させるためには多数の選択肢がある。これについては請求項1に従属する請求項、ならびに図面に基づく本発明の有利な実施例についての以下の詳細な説明を参照されたい。
【実施例】
【0031】
図1には擬似ヘテロダイン法に基づく干渉計が概略的に示されており、この干渉計は、半導体レーザ1と、第1ビームスプリッタ2と、第2ビームスプリッタ3と、第1干渉計アーム4と、第2干渉計アーム5とを有する。半導体レーザ1により、周波数がノコギリ歯状に変調されたレーザ信号が形成されて、これが第1ビームスプリッタ2に供給される。第1ビームスプリッタ2により、上記のレーザビームは2つの部分ビームに分けられて、これらの部分ビームが、第1干渉計アーム4ないしは第2干渉計アーム5に供給される。
【0032】
第1干渉計アーム4とは異なる長さを有する第2干渉計アームは、相互干渉箇所6を介して作用を及ぼすことができる。相互干渉箇所6において第2干渉計アーム5は作用を及ぼされて、例えば振動測定装置から得られる有効信号と、第1干渉計アーム4および第2干渉計アーム5における2つのレーザ信号の位相差分信号とが重ね合わされる。相互干渉箇所6における作用は、例えばつぎのようにして行われる。すなわち、上記のレーザ信号が第2干渉アーム5において進むはずである路長が、上記の有効信号に依存して変化するように行われるのである。ここで干渉計の出力側における強度信号は、擬似ヘテロダイン信号であり、また実質的に周期的に繰り返されかつ上記の有効信号によって位相変調された正弦波状のセグメントから合成される。この擬似ヘテロダイン出力信号は、PINフォトダイオード7によって検出されて電気信号に変換される。
【0033】
図2には、好適な実施例に基づき、本発明による復調方法が流れ図にしたがって概略的に示されている。アナログ−デジタル変換器8により、PINフォトダイオード7によって電気信号に変換された擬似ヘテロダイン信号をデジタル化した後、この擬似ヘテロダイン信号は、遅延ユニット9から構成される遅延チェーンに供給される。ここでアナログ−デジタル変換器8のサンプリングレートは、上記の搬送波信号、すなわち上記のノコギリ歯信号の周波数の倍数である。これに相応して上記の遅延チェーンには4つの遅延ユニット9も設けられている。
【0034】
アナログ−デジタル変換器8の各サンプリングステップにおいて、アナログ−デジタル変換器8はサンプリング値をそれに接続された遅延ユニット9に渡す。このサンプリング値は、アナログ−デジタル変換器8に接続された遅延ユニット9に記憶される。同時に各遅延ユニット9は、遅延チェーンにおけるつぎの遅延ユニット9に、記憶されたサンプリング値を渡し、遅延チェーンの各遅延ユニット9は、受け取ったサンプリング値を記憶する。4サンプリングステップが経過した後毎に遅延チェーンのすべての遅延ユニット9は、その各々のサンプリング値を高速フーリエ変換装置10に渡す。高速フーリエ変換装置10は、離散フーリエ変換の第2フーリエ係数だけを計算して、これをatan2関数11に渡す。
【0035】
atan2関数11により、上記の離散フーリエ変換の第2フーリエ係数の位相が計算される。フーリエ変換の各フーリエ係数には位相情報が含まれているため、1つのフーリエ係数だけを計算するので十分である。上記の離散フーリエ変換の第2フーリエ係数の位相情報は、本発明による復調方法の出力信号である。ここではわかりやすくするため、一部具体的な特徴と共にこれを説明する。従来技術から公知の手段により、上記の離散フーリエ変換の第2フーリエ係数の位相から上記の有効信号を得ることができる。この有効信号は、例えば機械的な振動を検出することによって得られる測定信号の周波数fである。
【0036】
必要であれば、アナログ−デジタル変換器8によるデジタルサンプリングの前に上記の擬似ヘテロダイン信号を増幅器12によって増幅することができる。増幅に付加的にまたはこれとは択一的に上記のアナログ−デジタル変換器8によるデジタルサンプリングの前に、ここでは図示していないローパスフィルタによって上記の擬似ヘテロダイン信号をフィルタリングすることができる。
【0037】
図3には本発明による復調方法の別の有利な1実施例が略示されている。図3の流れ図は、構造的に見れば実質的に図2の流れ図に相応している。ここではさらなる遅延ユニット13が上記の遅延チェーンに割り当てられているだけである。図2に示した復調方法とは異なり、図3に示した復調方法のアナログ−デジタル変換器8は、搬送波信号の4+1倍のサンプリングレートで動作する。これにより、搬送波信号の周波数が同じであると仮定した場合、アナログ−デジタル変換器8によって、図2のような4つのサンプリング値だけではなく5つのサンプリング値が求められる。5サンプリングステップが経過する毎に遅延チェーンの遅延ユニット9は、そこに記憶されたサンプリング値を高速フーリエ変換装置10に渡す。ここで上記の別の遅延ユニット13に記憶されているサンプリング値は、廃棄される。しかしながら本発明では、まさにこのサンプリング値が、発生するノイズの重要な部分なのである。
【0038】
図4には擬似ヘテロダイン信号の信号セグメント14が示されており、ここでこの信号は、例えばPINフォトダイオードの出力側における電気信号として出力されたものであり、このPINフォトダイオードにより、擬似ヘテロダイン干渉計の強度信号が受信される。上記の擬似ヘテロダイン信号の信号セグメント14は、ノイズ領域15を有しており、これは、上記の増幅器のステップ応答によって生じたノイズを含んでいる。本発明による復調方法の別の有利な実施例によれば、上記の離散フーリエ変換の際にまさに上記のノイズ領域15に相応するサンプリングステップは、考慮されない、すなわち廃棄されるのである。このことは図4においてつぎのことによって説明される。すなわち2段目において、擬似ヘテロダイン信号の信号セグメント14からノイズ領域15が除去され、残りの実質的に正弦波状でありかつノイズのない信号セグメント16が、図4の3段目で合成されるのである。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体レーザ、 2 第1ビームスプリッタ、 3 第2ビームスプリッタ、 4 第1干渉計アーム、 5 第2干渉計アーム、 6 相互干渉箇所、 7 PINフォトダイオード、 8 アナログ−デジタル変換器、 9 遅延ユニット、 10 高速フーリエ変換装置、 11 atan2関数、 12 増幅器、 13 別の遅延ユニット、 14 信号セグメント、 15 ノイズ領域、 16 ノイズのない信号セグメント、 17 評価信号
図1
図2
図3
図4