(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一つの可変抵抗器は、被加工材とトーチとの相対的な移動方向を設定するため第1の指標設定点に加えてトーチの点火動作態様を設定するための第2の指標設定点を有し、
前記制御装置は、加工装置が停止しているときに前記可変抵抗の第1の指標設定点から電流値からなる信号を受けたとき被加工材とトーチとの相対的な移動方向を切り替えると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、且つ第2の指標設定点から電流値からなる信号を受けたときにトーチの点火動作態様を設定すると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、更に、被加工材とトーチとが相対的に移動しているとき前記可変抵抗器からの電流値からなる信号に応じて前記相対的な移動速度を変更するように制御し、
加工装置が停止しているときに前記可変抵抗器を操作して第1の指標設定点からの電流値からなる信号及び第2の指標設定点からの電流値からなる信号を前記制御装置に伝えて被加工材とトーチとの相対的な移動方向及びトーチの点火動作態様を設定すると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、且つ、前記押ボタンスイッチを操作してトーチを設定された点火動作態様で作動させると共に被加工材とトーチとを相対的に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載した加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来より利用されている小型の加工装置では、スナップスイッチやボリューム、押ボタンスイッチ、或いはタイマーを含む多くのスイッチ類が用いられるため、操作パネルでの配置が煩雑となり、またコストを削減する上での障害となる。
【0007】
本発明の目的は、被加工材を溶接或いは切断するための小型の加工装置であって、個々のスイッチ類に幾つかの複合した機能を持たせることによって、部品を削減することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る加工装置は、被加工材と該被加工材を溶接又は切断するトーチを相対的に
且つ直線的に移動させるための加工装置であって、目的の動作に対応させて予め設定された複数の指標設定点を有する一つの可変抵抗器と、前記可変抵抗器に設定された複数の指標設定点の何れかが選択されたとき押圧されて目的の動作を設定する一つの押ボタンスイッチと、目的の動作に対応して点滅する少なくとも二つの表示灯と、前記押ボタンスイッチの作動と前記可変抵抗器からの電流値に対応させて設定された目的の動作と、前記動作に対応させて設定された前記少なくとも二つの表示灯の点滅状態と、を記憶し、
加工装置が停止しているときに前記可変抵抗器に設定された第1の指標設定点から電流値からなる信号を受けたとき被加工材とトーチとの相対的な移動方向を切り替えると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、且つ被加工材とトーチが相対的に移動しているとき前記可変抵抗器からの電流値からなる信号に応じて前記被加工材とトーチとの相対的な移動速度を変更するように制御する制御装置と、を有し
て構成されている。、
【0009】
そして、電源を投入して前記可変抵抗器に設定された複数の指標設定点から目的の動作に対応させた指標設定点を選択して電流値を設定すると共に前記押ボタンスイッチを作動させることによって、目的の動作を選択すると共に、前記少なくとも二つの表示灯を前記選択された動作に対応させた点滅状態で表示させ
るように構成されている。
【0010】
上記加工装置に於いて、前記一つの可変抵抗器は、被加工材とトーチとの相対的な移動方向を設定するため第1の指標設定点に加えてトーチの点火動作態様を設定するための第2の指標設定点を有し、前記制御装置は、加工装置が停止しているときに前記可変抵抗の第1の指標設定点から電流値からなる信号を受けたとき被加工材とトーチとの相対的な移動方向を切り替えると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、且つ第2の指標設定点から電流値からなる信号を受けたときにトーチの点火動作態様を設定すると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、更に、被加工材とトーチとが相対的に移動しているとき前記可変抵抗器からの電流値からなる信号に応じて前記相対的な移動速度を変更するように制御し、加工装置が停止しているときに前記可変抵抗器を操作して第1の指標設定点からの電流値からなる信号及び第2の指標設定点からの電流値からなる信号を前記制御装置に伝えて被加工材とトーチとの相対的な移動方向及びトーチの点火動作態様を設定すると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させ、且つ、前記押ボタンスイッチを操作してトーチを設定された点火動作態様で作動させると共に被加工材とトーチとを相対的に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、
他の加工装置は、被加工材を回転させる回転テーブルを有
し、該被加工材と溶接するトーチを相対的に移動させて溶接するための加工装置であって、目的の動作に対応させて予め設定された複数の指標設定点を有する一つの可変抵抗器と、前記可変抵抗器に設定された複数の指標設定点の何れかが選択されたとき押圧されて目的の動作を設定する一つの押ボタンスイッチと、目的の動作に対応して点滅する少なくとも二つの表示灯と、前記押ボタンスイッチの作動と前記可変抵抗器からの電流値に対応させて設定された目的の動作と、前記動作に対応させて設定された前記少なくとも二つの表示灯の点滅状態と、を記憶した制御装置と、を有し、 電源を投入して前記可変抵抗器に設定された複数の指標設定点から目的の動作に対応させた指標設定点を選択して電流値を設定すると共に前記押ボタンスイッチを所定時間以上作動させることによって選択する目的の動作が、回転テーブルが1回転した後の回転時間であるオーバーラップ時間、又は回転テーブルが停止した後のトーチの稼動時間であるクレーター時間、又は溶接開始時に於けるアーク安定時間の何れかであり、選択された前記動作に応じて前記少なくとも二つの表示灯を前記選択された動作に対応させた点灯又は点滅状態で表示させる
ように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加工装置は、動作を設定するための一つの押ボタンスイッチと、一つの可変抵抗器と、少なくとも二つの表示灯と、押ボタンスイッチの作動時間の長さと前記可変抵抗器からの電流値に対応させて設定された動作、及び動作に対応させて設定された二つの表示灯の点滅状態を記憶した制御装置と、を有している。このため、電源を投入して可変抵抗器の指標を選択すると共に、押ボタンスイッチを作動させることによって、目的の動作を選択することができ、且つ二つの表示灯を選択された動作に対応させた点滅状態とすることができる。
【0013】
このように、加工装置の動作を押ボタンスイッチ、可変抵抗器、二つの表示灯、制御装置によって制御することが可能となり、操作パネルに配置されるスイッチ類の数を減らすことが可能となり、見やすい操作パネルを実現することができる。また、スイッチ類を減らすことによってコストの削減をはかることもできる。
【0014】
本発明に係る加工装置を被加工材を直線的に切断又は溶接する装置としたとき、制御装置によって、加工装置が停止しているときに前記可変抵抗器の第1の指標設定点から電流値からなる信号(以下「電流値信号」という)を受けたとき、被加工材とトーチとの相対的な移動方向を切り替えると共に移動方向に対応させた前記少なくとも二つの表示灯を点灯又は点滅させる。このため、一つの可変抵抗器に設定された第1の指標設定点からの電流信号を認識することで、移動方向を設定し、且つ設定された移動方向を二つの表示灯の点灯或いは点滅によって表示することができる。
【0015】
また、被加工材とトーチが相対的に移動しているとき可変抵抗器からの電流値信号に応じて被加工材とトーチとの相対的な移動速度を変更することができる。従って、被加工材とトーチとの相対的な移動の有無に対応させて、移動方向の設定或いは移動速度の設定を行うことができる。
【0016】
更に、一つの可変抵抗器が第1の指標設定点に加えてトーチの点火動作態様を設定するための第2の指標設定点を有し、制御装置は、加工装置が停止しているときに第2の指標設定点から電流値信号を受けたとき、トーチの点火動作態様を設定するように制御し得るように構成されている。そして、加工装置が停止しているときに可変抵抗器を操作して第1及び第2の指標設定点からの電流値信号を制御装置に伝えて、被加工材とトーチとの相対的な移動方向及びトーチの点火動作態様を設定すると共に移動方向に対応させた二つの表示灯を点灯又は点滅させ、押ボタンスイッチを操作してトーチを設定された点火動作態様で作動させると共に被加工材とトーチとを相対的に移動させることで、予め設定された点火動作態様に従ってトーチを作動させると共に、被加工材に対する切断又は溶接を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る加工装置を被加工材を回転させる回転テーブルを有する溶接装置としたとき、電源を投入して可変抵抗器の指標を選択して電流値を設定すると共に押ボタンスイッチ
を作動させることによって、回転テーブルが1回転した後の回転時間であるオーバーラップ時間、又は回転テーブルが停止した後のトーチの稼動時間であるクレーター時間、又は溶接開始時に於けるアーク安定時間の何れかを選択すると共に、選択された動作に応じて二つの表示灯を点灯又は点滅させることができる。このため、各動作毎に設けたスイッチ類を減らすことができ、見やすく且つ操作が容易な操作パネルを実現できる。
【0018】
特に、目的の動作の選択、選択した動作に対応した時間の設定、をプログラムを介して行うことによって、各動作毎の最前の設定時間を記憶して保持することができる。従って、同じ作業を繰り返すような場合には、一度時間を設定しておくことで同一仕様での作業を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る加工装置について説明する。本発明に係る加工装置は、鋼板やステンレス鋼板等の鋼板に代表される被加工材と、溶接トーチ又は切断トーチ等のトーチを相対的に移動させる過程で、溶接又は切断等の加工を行う加工装置である。特に、本発明に係る加工装置は、被加工材とトーチを相対的に移動させる操作、及び溶接時に必要な動作毎の時間の設定を作業員が行うように構成されており、一般に自動加工装置或いは半自動加工装置と呼ばれるものである。
【0021】
被加工材とトーチとを相対的に移動させる構造は特に限定するものではない。例えば、被加工材が船殻材や橋梁材のように大型であるような場合、被加工材は移動不能に設置されてトーチが走行台車に搭載されて移動する。加工装置が走行台車として構成されている場合、走行台車は直線上に往復走行可能に構成されており、この走行過程で搭載したトーチを作動させて溶接或いは切断することが可能である。
【0022】
また、被加工材が比較的小型で円周に沿って加工されるような場合、トーチは移動不能に設置され、被加工材がターンテーブルに固定されて移動する。加工装置がターンテーブルを有する構成の場合、該ターンテーブルは時計方向回転及び反時計方向回転可能に構成されており、ターンテーブルが回転する過程で、該ターンテーブルの近傍に設置したトーチを作動させて溶接或いは切断することが可能である。
【0023】
本発明では、走行台車又はターンテーブルを有する装置等の何れであっても加工装置として採用することが可能である。特に、ターンテーブルを有する装置としては、溶接治具の一種であるポジショナーと呼ばれる構造のものがあり、好ましく適用することが可能である。
【0024】
溶接するためのトーチとしては、炭酸ガスアーク溶接を行うためのトーチ、プラズマ溶接を行うためのトーチ等を含む各種の溶接トーチを選択的に採用することが可能である。また切断するためのトーチとしては、ガス切断を行うためのトーチ、プラズマ切断を行うためのトーチ等を選択的に採用することが可能である。
【0025】
トーチが溶接トーチである場合、トーチの点火動作態様としては、溶接のオートモードとして、トーチに対するガスの供給、通電、ワイヤの供給、溶接がスタートした後の走行台車又はターンテーブルの移動開始、を含む一連の動作がある。また、溶接のテストモードとして、トーチに通電することなく走行台車又はターンテーブルを移動させる動作、或いは走行台車又はターンテーブルを移動させることなく通電させる動作等の動作がある。
【0026】
トーチがプラズマ切断トーチである場合、トーチの点火動作態様としては、トーチに対するプラズマガスの供給、通電、切断が開始された後の走行台車又はターンテーブルの移動開始、を含む一連の動作がある。また、トーチがガス切断トーチである場合、トーチに対する予熱酸素及び燃料ガスの供給及び点火、一定時間経過後の切断酸素の供給、走行台車又はターンテーブルの移動開始、を含む一連の動作がある。
【0027】
また、溶接作業の場合、トーチと被加工材との間にアークを形成して溶接を開始する際にアークが安定するまでに多少の時間(アーク安定時間)が必要であり、この間、被加工材とトーチとを停止させておく必要がある。更に、溶接作業では、溶接開始時のビードと溶接終了時のビードの連続性を確保するオーバーラップ溶接や、溶接終了時のビードに生じるクレーターを処理するクレーター処理溶接が必要となる。
【0028】
そして、アーク安定時間を含む、オーバーラップ溶接のための時間、及びクレーター処理のための時間は、被加工材の板厚を含む溶接条件に応じて異り、溶接条件が変化する都度、作業の開始に先立って設定するのが一般的である。
【0029】
以下、第1実施例に係る加工装置について
図1〜
図4を用いて説明する。本実施例に係る加工装置は、トーチBとして炭酸ガス溶接トーチを搭載して、直線的な溶接線に対応する走行台車Aを有する溶接装置として構成されている。
【0030】
走行台車Aは、
図1に示すように、ケーシング1の内部には、後述するモーター26a及びモーターの回転を車輪2に伝える図示しない伝動機器、後述する制御装置25が設けられている。また、ケーシング1の下部には複数の車輪2が配置されている。
【0031】
ケーシング1の上面には
図2に示す操作パネル3が設けられており、この操作パネル3には、図示しない電源コードが接続されるコネクタ4、押ボタンスイッチ5、可変抵抗器を構成するボリューム6、溶接装置としての作動状態を表示するLED7、8が配置されている。
【0032】
押ボタンスイッチ5は、走行台車Aの走行開始/停止を制御する機能を有するものである。即ち、走行台車Aが停止状態にあるとき、押ボタンスイッチ5を押操作することによって走行を開始させ、走行台車Aが走行状態にあるとき、押ボタンスイッチ5を押操作することによって停止させるように構成されている。
【0033】
ボリューム6は、速度調整器としての機能と、電流値からなる信号(電流値信号)を発生するためのスイッチとしての機能と、からなる複合した機能を有している。即ち、ボリューム6は、走行台車Aが走行状態にあるか、或いは停止状態にあるか、に対応して、速度調整機能、又は動作条件変更手段としての機能を発揮する。
【0034】
走行台車Aが走行状態にあるとき、ボリューム6は速度調整機能を発揮し、ダイヤルの指示部6aを指標6bの0〜10の範囲に於ける何れかに指定することで、走行速度を指定された値に調整することが可能である。
【0035】
また、走行台車Aが停止状態にあるとき、ボリューム6は、指標6bに於ける二つの位置に対応させて予め設定された指標設定点(第1指標設定点6A、第2指標設定点6B、
図3参照)を有する動作条件変更手段としての機能を発揮する。即ち、走行台車Aが停止しているとき、ボリューム6は速度調整機能を発揮することなく、ボリューム6の指示部6aを指標6bの予め第1指標設定点6A、第2指標設定点6Bとして設定されている位置に合わせることで、第1の信号、或いは第2の信号を発生し得るように構成されている。本実施例では、第1指標設定点6Aを指標6bの0の位置とし、第2指標設定点6Bを指標6bの10の位置として設定している。
【0036】
本実施例に於いて、速度調整器として可変抵抗器であるボリューム6を採用している。このため無段階で速度を調整することが可能であり、且つ予め設定された位置を指標設定点として利用することが可能である。しかし、この構成に限定するものではなく、複数の接点を有するスイッチを採用して段階的に速度を調整し得るように構成し、且つ個々の独立した接点を選択して第1指標設定点或いは第2指標設定点を設定しても良い。
【0037】
二つの表示灯の一つであるLED7は溶接モードを表示する機能を有しており、消灯しているときはテストモードを、点灯しているときはオートモードを、点滅しているときは溶接中を表示している。しかし、LED7の点灯状況と各溶接モードとの関係については前記状態に限定するものではなく、適宜設定し得ることは当然である。
【0038】
二つの表示灯の一つであるLED8は走行方向を表示する機能を有しており、消灯しているときは走行方向が矢印a方向であることを表示し、点灯しているときは走行方向が矢印b方向であることを表示し、点滅中は走行中であることを表示している。しかし、LED8の点灯状況と走行方向との関係については前記状態に限定するものではなく、適宜設定し得ることは当然である。
【0039】
ケーシング1の走行方向の両端面(矢印a、b方向の両端面)には夫々接触センサー9、10が突出した状態で配置されており、目的の溶接線の末端部分に対応させて図示しないドッグを設けておき、このドッグに衝突させることで走行台車Aを停止させるように構成されている。
【0040】
ケーシング1の上部にはスタンド15が設けられており、該スタンド15によって上下方向、及び矢印c、d方向への位置を調整可能に構成されたトーチホルダー16が保持されている。そして、トーチホルダー16に溶接トーチBが保持されている。従って、溶接トーチBは、スタンド15を操作することによって、ケーシング1の側面に於ける上下方向及び出入り方向(矢印c、d方向)の所望の位置に設定されるように構成されている。
【0041】
ケーシング1の溶接トーチBを配置した面には、該溶接トーチBを挟んで一対のガイドローラ18が配置されている。ガイドローラ18は、ケーシング1に対し出入り寸法が調整し得るように構成された支持アーム19に回転可能に支持されており、目的の溶接線に沿って設けた図示しないガイドに当接して走行台車Aの走行方向を案内し得るように構成されている。
【0042】
次に、走行台車Aの制御系について
図3のブロック図を用いて説明する。
【0043】
図に於いて、25は制御装置であり、演算処理部25aと、判別部25bと、動作プログラムを記憶すると共に現在設定されている走行方向及びトーチの点火動作態様を一時的に記憶する記憶部25cと、を有して構成されている。また、26aはドライバ26bによって駆動されるモーターである。
【0044】
制御装置25の記憶部25cには、加工装置が有する目的の加工を行うための動作プログラムが記憶されている。即ち、加工装置の目的が溶接加工であるか切断加工であるか、に対応させると共に使用するトーチの条件に応じて最適な動作プログラムが設定されている。本実施例では、目的の加工が溶接であり、使用するトーチBが炭酸ガス溶接トーチであるため、炭酸ガス溶接を良好な状態で開始すると共に継続し得るような動作プログラムが設定されて予め記憶されている。
【0045】
記憶部25cには、走行台車Aが停止しているときに、ボリューム6の第1指標設定点6Aに対応する指標6bの0の位置からの第1信号を受けたとき、走行台車Aに現在設定されている走行方向とは反対方向に走行するように走行方向を切り替え、且つ第2指標設定点6Bに対応する指標6bの10の位置からの信号を受けたとき、トーチBの点火動作態様である、テストモード、或いはトーチBに対するガスの供給、通電、ワイヤの供給等の一連の動作からなるオートモード、を切り替え、更に、走行台車Aが現在走行しているときにはボリューム6からの信号に応じて走行速度を変更する動作プログラムが記憶されている。
【0046】
27はトーチBの駆動部であり、トーチBに対するガスの供給及び遮断を行う弁機構、トーチBに通電する電源装置、ワイヤの供給装置、トーチBに対する通電開始後の時間を計測し予め設定された時間が経過したときモータードライバ26bに信号を伝えてモーター26aを回転させるタイマー機構等を含んで構成されている。しかし、トーチの駆動部27の構成は前記構成に限定されるものではなく、例えば、トーチBが、炭酸ガス溶接トーチであるか、プラズマ切断トーチ或いはガス切断トーチであるか、等の条件に応じて適宜設定されるものである。
【0048】
次に、上記の如く構成された加工装置の操作手順について
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
先ず、走行台車Aの電源をONすると、ステップS1では、前回の作業の際に設定され既に制御部25の記憶部25cに記憶されている走行台車Aの走行方向及びトーチの点火動作態様が読み出され、読み出された走行方向及びトーチの点火動作態様に対応してLED7、8が作動する。
【0050】
ステップS2では、走行台車Aが走行中であるか否かを確認する。電源をONした状態では走行台車Aは停止中であるため、この状態で、LED8の点灯状態から現在の走行台車Aの走行方向を確認する。例えば、前回の走行方向が矢印a方向であった場合LED8は消灯しており、矢印b方向であった場合LED8は点灯している。従って、作業員は走行台車Aの走行方向を設定するのに先立って、現在設定されている走行台車Aの走行方向を認識することが可能である。
【0051】
上記の如くステップS2に於いて、走行台車Aが停止した状態にあるとき、ボリューム6は動作条件設定手段としての機能を発揮し、予め設定されている位置(本実施例では、指標6bの0、10の位置)に指示部6aを合わせることによって、第1指標設定点6Aに対応した第1信号、第2指標設定点6Bに対応した第2信号を発生することが可能である。尚、
図4では第1指標設定点6Aを第1接点、第2指標設定点6Bを第2接点として表示してある。
【0052】
目的の溶接を行う際に必要な走行台車Aの走行方向がステップS1で確認した前回の走行方向と同じである場合、ボリューム6の指示部6aを目的の走行速度と対応する指標6b(0と10を除く位置)に合わせる。この場合、指示部6aは、ステップS3に於ける第1指標設定点6A、ステップS4に於ける第2指標設定点6Bと合うことがないため、ステップS5に移行して押ボタンスイッチ5を押操作するまで、走行台車Aは停止した状態を保持する。
【0053】
そして、ステップS5で押ボタンスイッチ5を押操作すると、ステップS10に進行してドライバ25b、モーター26aを駆動し、走行台車Aは前回の走行方向と同一方向に、指示部6aによって指示された指標6bに対応する速度で、走行を開始する。このとき、LED8は点滅を繰り返す。この状態では、ボリューム6は速度調整機能を発揮しており、指示部6aを指標6bの所望の位置に合わせることで、目的の走行速度に調整することが可能である。
【0054】
目的の溶接を行う際に必要な走行台車Aの走行方向がステップS1で確認した前回の走行方向と異なる場合、ステップS2に於ける走行台車Aの停止状態を保持してステップS3に移行し、ボリューム6の指示部6aを第1指標設定点6Aを構成する指標6bの0の位置に合わせる。これにより、ステップS8に移行し、ボリューム6からは第1信号が発生して制御部25に伝達され、記憶部25cに記憶された動作プログラムに従って走行台車Aの走行方向が切り替わる。
【0055】
例えば、前回の作業で設定されていた走行方向が矢印a方向である場合、第1信号が生じたことによって走行方向は矢印b方向に切り替わる。走行台車Aの走行方向が切り替わるのに伴ってLED8の点灯状態も変化する。即ち、LED8は、走行台車Aに設定されている走行方向が矢印a方向である場合消灯しているが、矢印b方向に切り替わるのに伴って点灯する。
【0056】
ステップS8で走行台車Aの走行方向を切り替えた後、ステップS5に移行して押ボタンスイッチ5を押操作することでステップS10に移行し、走行台車Aを切り替えた方向に走行させる。走行台車Aが走行を開始するのに伴ってLED8は、点灯状態から点滅状態に移行する。
【0057】
ステップS4では溶接モードの切り替えを行う。即ち、走行台車Aが停止している状態でステップS4に移行し、ボリューム6の指示部6aを第2指標設定点6Bを構成する指標6bの10の位置に合わせる。これにより、ステップS9に移行し、ボリューム6からは第2信号が発生して制御部25に伝達され、記憶部25cに記憶された動作プログラムに従ってトーチBの点火動作態様が交互に切り替わる。
【0058】
即ち、指示部6aを指標6bの10の位置に合わせたときに発生する第2信号に応じて、トーチBの点火動作態様が、テストモード又はオートモードに切り替わる。そして、テストモードが設定されたとき、トーチBに対する炭酸ガスの供給や通電を行うことなく、手動で走行台車Aを操作することが可能である。このとき、LED7は消灯状態となる。
【0059】
また、オートモードが設定されたとき、LED7は点灯状態となる。そして、ステップS5からステップS10に移行して押ボタンスイッチ5を押操作すると、トーチの駆動部27が作動して、弁機構によるトーチBに対する炭酸ガスの供給、電源装置による通電の開始、ワイヤの供給装置によるワイヤの供給、タイマー機構によるトーチBに対する通電開始後モーター26aを回転させるまでの計時が順に行われ、溶接作業が安定した後、走行台車Aが設定された走行方向に走行し、この走行過程で溶接が行われる。
【0060】
加工装置による目的の加工を終了させる場合、ステップS2に於いて、走行台車Aの走行が継続していることを確認してステップS6に移行し、押ボタンスイッチ5を押操作すると、ステップS7に進行してドライバ26b、モーター26aを停止させて走行台車Aを停止させる。
【0061】
上記の如くして走行台車Aの走行方向を所望の方向に切り替えることが可能であり、また、トーチBの点火動作態様を所望のモードに切り替えることが可能である。
【0062】
このため、従来の走行台車に設けられていた走行方向を設定するためのスイッチ、トーチの点火動作態様を設定するためのスイッチをなくすことが可能となり、部品点数を削減すると共に操作パネル3を有効に活用することが可能となる。
【0063】
次に、第2実施例に係る加工装置の構成について図を用いて説明する。本実施例に係る加工装置は、被加工材を取り付けるターンテーブルと、このターンテーブルを回転させる駆動部とからなるポジショナーを有する溶接装置として構成されている。また、ポジショナーを駆動する駆動系及び制御系の構成は、原理的に前述した第1実施例と略同じ構成である。
【0064】
即ち、第1実施例の加工装置が走行台車Aに搭載したトーチBによって被加工材に対し略直線的な切断加工或いは溶接加工を行うのに対し、本実施例ではポジショナーによって被加工材に対し円周に沿った溶接加工を行う点で異なる。従って、これらの違いにより、細部で多少の相違が生じるものの原理的には同一であるため、操作パネルを説明する
図2及び制御系を説明する
図3、及び
図5〜
図7を用いて説明する。
【0065】
先ず、
図5により本実施例に係る加工装置を構成するポジショナーCについて簡単に説明する。ポジショナーCは、図示しない被加工材を取り付けるターンテーブル31と、ターンテーブル31を駆動するモーター26aを内蔵したケーシング32と、ケーシング32を回動可能に支持するフレーム33と、溶接作業を開始させるスイッチであるフットスイッチ34と、を有して構成されている。また、ケーシング32の前面に
図2に示す操作パネル3が設けられている。
【0066】
フレーム33には、ターンテーブル31の原点を検出するための接触式又は非接触式のセンサー9が配置されている。そして、このセンサー9から発生する信号によって、ターンテーブル31が原点にあるか否か、溶接を開始した後、1回転したか否かを検出することが可能である。また、センサー9から発生する信号によってターンテーブル31が1回転したことを検出したときは、この信号を起点としてオーバーラップ溶接を開始させることが可能である。
【0067】
ポジショナーCの近傍に図示しない溶接トーチが配置されると共に、被加工材に於ける溶接すべき部位に対向している。そして、溶接トーチから溶接ワイヤを供給して被加工材との間にアークを形成し、このアークを保持しつつターンテーブル31を回転させることで目的の溶接加工を行うことが可能である。
【0068】
図6はポジショナーCのターンテーブル31に被加工材を取り付けて溶接を行う際の1サイクルのタイムチャートである。被加工材に対する溶接は、フットスイッチ34からの信号によってスタートする。スタート信号と同時に又は僅かな時間をおいて、連続する溶接信号と、パルス状の溶接信号が生じ、これらの信号と同時に溶接アークが形成される。パルス状の溶接信号は溶接開始時のアークを安定させる機能を有するものであり、アーク安定時間T1だけ発生する。
【0069】
アーク安定時間T1が経過した後、ターンテーブル31が回転を開始し、被加工材に対する溶接が進行する。ターンテーブル31が1回転したことをセンサー9が検出して信号が発生すると、この信号を起点としてオーバーラップ時間T2だけ溶接が継続し、溶接開始時のビードに対しオーバーラップ溶接が行われる。
【0070】
オーバーラップ溶接が終了した後、ビードに生じたクレーターを肉盛する溶接を行う。この溶接は、被加工材を停止させた状態でトーチを稼働させることで、クレーターに集中的な肉盛を行うものである。このため、オーバーラップ時間T2が経過した後、ターンテーブル31が停止すると共に、連続した溶接信号が停止し同時にパルス状の溶接信号が発生してクレーター時間T3だけ溶接が継続し、クレーターに対する溶接が行われる。
【0071】
クレーター時間T3が経過したとき、パルス状の溶接信号が停止してアークが停止すると共に、ターンテーブル31が溶接時の回転方向とは逆方向に回転し、センサー9によって原点を検出したときにターンテーブル31の回転が停止して初期位置に戻る。ターンテーブル31が初期位置に戻ったところで1サイクルの溶接作業が終了する。そして、被溶接材を交換するか、被溶接材の別の部位に対する溶接を行う場合にはトーチの位置を変更して新たなサイクルを実行する。
【0072】
上記の如き1サイクルの溶接作業に於いて、アーク安定時間T1、オーバーラップ時間T2、クレーター時間T3は、被溶接材に対する溶接条件に応じて設定される。このため、前記各時間T1〜T3は適宜設定し得るように構成され、且つ現在設定されている各時間T1〜T3を適宜変更し得るように構成されている。
【0073】
本実施例では、ボリューム6の可変領域となる指標6bの範囲0〜10を、アーク安定モード、オーバーラップモード、クレーターモードに対応させて定義付けている。そして、これらの定義付けされた指標に対応した電流値信号と、押ボタンスイッチ5からの信号の継続時間が設定時間以上であることを認識することで、動作モードを選択し得るように構成されている。更に、引き続く指示部6aによる指標6bの選択によって、選択された動作モードに於けるアーク安定時間T1、オーバーラップ時間T2、クレーター時間T3の何れかを変更し得るように構成されている。
【0074】
また、押ボタンスイッチ5と、ボリューム6の指標6bの位置とによって動作モードを選択したとき、選択された動作モードに対応して二つのLED7、8が互いに独立して点灯、消灯又は点滅し得るように構成されている。特に、二つのLED7、8が同色であると判別が困難になる虞があるため、本実施例では、LED7は黄色、LED8は緑色に発光するものを用いている。
【0075】
ボリューム6の指標6bの0〜10の範囲をどのようにして動作モードに分配するかは限定するものではなく、設定及び変更することが必要な動作モードの数に対応させて分割し、且つ設定及び変更する頻度の高さに対応させて広さや位置を調整することが好ましい。
【0076】
本実施例では、比較的頻繁に設定又は変更するオーバーラップモードをボリューム6の指標6bの0〜5の範囲に設定してあり、オーバーラップ時間T2の設定時間を0〜10秒とし、一つの指標毎に1秒を割り当てている。また、クレーターモードをボリューム6の指標6bの6〜7の範囲に設定してあり、クレーター時間T3の設定時間を0〜10秒とし、一つの指標毎に1秒を割り当てている。更に、アーク安定モードをボリューム6の指標6bの8の位置に設定してあり、アーク安定時間T1を0〜1秒とし、一つの指標毎に0.1秒を割り当てている。
【0077】
動作モードの設定又は変更は、ボリューム6からの電流値信号と、押ボタンスイッチ5から生じた信号の継続時間と、を認識することで行われる。押ボタンスイッチ5の作動継続時間は特に限定するものではない。しかし、押ボタンスイッチ5は単に動作モードの設定、変更にのみ利用されるものではなく、溶接加工を再び開始する際にも利用される。このため、他の作業のための信号とは明確に判別し得るような時間を持って設定されることが好ましい。本実施例では、動作モードを設定又は変更する際の押ボタンスイッチ5の作動継続時間を5秒以上としている。
【0078】
次に、
図7のフローチャートを用いて、各動作モード毎に現在設定されているアーク安定時間T1、オーバーラップ時間T2、クレーター時間T3を変更する手順(パラメータ変更手順)について説明する。説明の煩雑を防ぐために、各動作モードを代表してオーバーラップモードに於けるオーバーラップ時間T2を変更する手順について説明する。尚、ターンテーブル31の回転速度と回転方向は既に設定されているものとする。
【0079】
パラメータ変更を開始してステップS21では、変更すべき動作モード(本説明ではオーバーラップモード)に対応するボリューム6の指標6bを選択する。即ち、指示部6aをボリューム6の指標6bの0〜5の範囲に於ける何れかの指標に対応させる(アーク安定モードを選択する場合には指標6bの8の位置に、クレーターモードを選択する場合には指標6bの6〜7の範囲に対応させる)。
【0080】
ステップS22に進行して押ボタンスイッチ5を5秒以上継続させて作動させることで、ステップS21、S22を経ることによって、選択された動作モードがオーバーラップモードであることが認識され、次にボリューム6から伝えられる電流値信号がオーバーラップ時間に対応するものであることを認識する。
【0081】
次に、ステップS23に進行し、ボリューム6の指示部6aを操作して所望のオーバーラップ時間を設定する。例えば、オーバーラップ時間を5秒としたいときには、指示部6aを指標6bの5の位置に合わせることで、オーバーラップ時間T2を設定する。
【0082】
ステップS24では、オーバーラップ時間T2を設定する際の指示部6aの回動に応じて、前回の作業で設定されていたオーバーラップ時間T2との比較を行い、比較した結果に応じてLED7、8が点灯、消灯或いは点滅する。例えば、前回の作業時にオーバーラップ時間が6秒に設定されていた場合、ステップS23で指示部6aが指標6bの6の位置と一致したとき、ステップS25でLED7、8が同時に点灯する。また、指示部6aが指標6bの6の位置から僅かに離隔(指標一つ〜一つ半程度、指標6bの4.5〜7.5程度の範囲)したとき、ステップ26でLED7が高速で点滅し、LED8が消灯する。更に、指示部6aが指標6bの6の位置から充分に離隔(指標6bの0〜4.5の範囲又は指標6bの7.5〜10の範囲)したとき、ステップS27でLED7が低速で点滅し、LED8が消灯する。
【0083】
ステップS24に於けるLED7、8の点灯、消灯、点滅の状態を確認することで、前回の作業時に設定されたオーバーラップ時間T2と、今回設定するオーバーラップ時間T2との差を感覚的に認識することが可能である。
【0084】
ステップS23でオーバーラップ時間T2を設定した後、ステップ28で押ボタンスイッチ5を押操作して信号を発生させることで、ステップS29では、前回の作業時に設定されていたオーバーラップ時間T2(6秒)を今回のオーバーラップ時間T2(5秒)に変更する。
【0085】
次いで、ステップS30でボリューム6の指示部6aを回動させると、ステップS31では前回の作業時に設定されていた速度と、現在の指示部6aが指示している指標に設定されている速度とを比較し、両者が一致している場合には、ステップS32でLED7、8が同時に点灯する。
【0086】
また、指示部6aが指示している指標に設定されている速度が前回の作業時に設定されていた速度から僅かに異なるような場合、ステップ33でLED7が高速で点滅し、LED8が消灯する。この場合、ステップS30に戻り、指示部6aを何れかの方向にLED7、8が同時に点灯するまで回動させてステップS32に進行させる。
【0087】
更に、指示部6aが指示している指標に設定されている速度が前回の作業時に設定されていた速度から十分に離隔しているような場合、ステップS34でLED7が低速で点滅し、LED8が消灯する。この場合、ステップS30に戻り、指示部6aを何れかの方向にLED7、8が同時に点灯するまで回動させてステップS32に進行させる。
【0088】
前述の操作を設定又は変更すべき動作モード毎に行うことで、被加工材に対し最適な条件で溶接加工を行うことが可能となる。