(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
OFDM信号の復調には、受信シンボルの同期、受信シンボルの集合であるフレーム同期が必要である。
【0003】
OFDM信号の同期には、一般的にCP(Cyclic Prefix)信号の相関検出、特定のサブキャリアを同期専用に使用するなどがある。
特に、OFDM変調方式ではないが、スペクトラム拡散通信方式においてマッチドフィルタが用いられている。
その延長として、プリアンブル信号にユニークな符号を使用して、マッチドフィルタを使用する。
【0004】
一般的なCP信号の相関検出方式では、狭帯域信号が非希望波として入った場合に、非希望波信号と通常の信号との分離ができない。
また、特定のキャリアを同期専用にした場合、その帯域に非希望波が混入すると、同様の結果となってしまう。
【0005】
また、スペクトラム拡散通信は、耐非希望波用として使用されるが、拡散利得が必要なため、情報速度を落とさざるえなく、通信帯域の有効利用に問題がある。
また、プリアンブル信号によるマッチドフィルタは、ユニークな符号を使用するため、特定の通信系(プリアンブル信号が分かっている相手)でないと使用できない。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2008−109450号公報「OFDM通信方式のフレーム同期方法及び受信機」(京セラ株式会社)[特許文献1]がある。
特許文献1には、OFDM通信方式のフレーム同期方法において、無線基地局から送信されるOFDMシンボル毎に含まれる自己相関要素を利用してシンボル内の相関演算を実行し、OFDMシンボル毎の同期タイミングを得て、報知チャネルが含む固有シンボルに対する相関演算を実行して報知チャネルのタイミングを得て、該相関演算で得られた相関度の最も高いタイミングに基づき報知チャネルの復号を実行することが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る受信装置は、OFDM変調方式における耐妨害、耐混信通信に対して、全サブキャリアの包絡線波形の連続点を抽出してフレームの区切りを抽出する第1の系統の構成と、シンボルの基本波成分のゼロクロス点からフレームの区切りを抽出する第2の系統の構成を備え、第2の系統でのフレームの区切りを第1の系統でのフレームの区切りで補間して、確実にフレームの区切りを変換点パルスで得るものであり、フレーム同期を安定して行うことができるものである。
【0020】
[本受信装置:
図1]
本発明の実施の形態に係る受信装置について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る受信装置の全体の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る受信装置(本受信装置)は、
図1に示すように、結合部3と、DC除去部4と、AFC補正・直交歪補償等処理部5と、フレーム区切り抽出処理部6と、フレーム同期部7と、CP除去部8と、直並列変換部9と、FFT処理部10と、補間処理部11とを基本的に有している。
【0021】
[本受信装置の各部]
本受信装置の各部について具体的に説明する。
結合部3は、OFDMの受信信号を直交検波して得られた同相(I相)信号と直交(Q相)信号を入力し、両信号を合成してベースバンド信号に変換し、DC除去部4に出力する。
DC除去部4は、結合部3から入力した信号から直流成分(DC成分)を除去し、AFC補正・直交歪補償等処理部5とフレーム区切り抽出処理部6に出力する。
【0022】
AFC(Auto Frequency Control)補正・直交歪補償等処理部5は、周波数の自動調整及び補正の処理を行い、更に直交歪補償の処理を行う。AFC補正・直交歪補償等処理は、通常の受信装置で一般的に用いられている技術である。
【0023】
フレーム区切り抽出処理部6は、本実施の形態における特徴部分であり、DC除去部4から出力された信号からフレームの区切りとなる部分を抽出し、その区切りのタイミング信号をフレーム同期部7に出力する。
尚、フレーム区切り抽出処理部6の具体的な構成及び動作は後述する。
【0024】
フレーム同期部7は、フレーム区切り抽出処理部6からのフレーム区切りタイミング信号に基づき、フレーム同期を確立し、同期確立後のタイミング信号をCP除去部8に出力する。
また、フレーム同期部7は、フレーム同期確立に基づいて直並列制御信号を直並列変換部9に出力する。
【0025】
CP除去部8は、フレーム同期部7からのフレーム同期確立後のタイミング信号に基づいてCP信号部分を除去する。フレーム同期確立によってCP信号の位置が特定されるので、その位置部分でCP信号部分を除去するものである。
【0026】
直並列変換部9は、フレーム同期部7から入力される直並列制御信号に従い、CP除去部8から出力されたCP信号部分が除去された信号の直列・並列変換を行う。
FFT処理部10は、直並列変換部9で直列・並列変換された信号をFFT(Fast Fourier Transform)処理し、補間処理部11に出力する。
補間処理部11は、FFT処理部10からの信号を入力し、補間処理を行って、OFDM信号の復調出力を得る。
【0027】
[本受信装置の特徴部分:
図2]
次に、本受信装置の特徴的な構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本受信装置の特徴部分の回路図である。
本受信装置の特徴部分は、
図2に示すように、結合器103と、LPF(Low Pass Filter)104と、絶対値変換回路105と、微係数算出回路106と、閾値判定回路107と、立ち下がり検出器108と、遅延補正器109と、BPF(Band Pass Filter)110と、ゼロクロス検出器111と、電力値処理回路112と、閾値検出回路113と、ゲート回路114と、論理和回路115と、フレーム同期回路116とを備えている。
【0028】
[本受信装置の特徴部分の各部]
本受信装置の特徴部分の各部について具体的に説明する。
結合器103は、受信信号を直交検波したI相信号、Q相信号を入力し、合成してベースバンド信号に変換し、LPF104に出力する。
LPF104は、低周波帯域の信号を通過させ、絶対値変換回路105とBPF110に出力する。このLPF104のカットオフ周波数はシンボルレートより高く、OFDMのサブキャリアの内、最低の周波数より低い周波数に設定する。
LPF104を通過した信号は、全サブキャリア信号からシンボルの基本成分と全サブキャリアの包絡線の成分となる。
【0029】
絶対値変換回路105は、LPF104からの信号を入力し、絶対値(|u(t)|)波形に変換して微係数算出回路106に出力する。
微係数算出回路106は、絶対値変換回路105から入力された絶対値波形から入力信号の微係数(du(t)/dt)の波形(微分波形)を形成して閾値判定回路107に出力する。
【0030】
閾値判定回路107は、微係数算出回路106からの微分波形について閾値を超えた信号を判定し、閾値を超えた信号を抽出して立ち下がり検出器108に出力する。
この閾値判定回路107は、変化点の小さい信号を除き、閾値を超えた、変化点の大きい信号を抽出するものである。
【0031】
立ち下がり検出器108は、閾値判定回路107から出力された信号の立ち下がりを検出し、その立ち下がりを基準にパルスを生成して遅延補正器109に出力する。このパルスは、全サブキャリアの包絡線の不連続点出力となる。
遅延補正器109は、BPF110〜ゲート回路114の処理時間を考慮して、立ち下がり検出器108からのパルス信号を遅延させる。
遅延補正器109における遅延により、検出信号とゲート回路114から出力される信号とが同期される。
【0032】
BPF(Band Pass Filter)110は、LPF104からの信号を入力し、狭い帯域の周波数を通過させる帯域フィルタであり、通過させた帯域の周波数信号をゼロクロス検出器111と電力値処理回路112に出力する。
BPF110の周波数通過帯域は、LPF104の通過帯域の中でシンボルの基本波成分を通過させる帯域であり、BPF110の中心周波数は、基本波成分の中心周波数となっている。
BPF110は、LPF104から信号を入力するようにしているが、結合器103から信号を入力するようにしてもよい。
【0033】
ゼロクロス検出器111は、BPF110から入力された信号についてゼロ点を交差(クロス)する点を検出し、検出のタイミングでゼロクロス点パルスを生成してゲート回路114に出力する。
【0034】
電力値処理回路112は、BPF110から信号の電力を計算し、計算した電力値を閾値検出回路113に出力する。
閾値検出回路113は、電力値処理回路112から入力された電力値が特定のレベル(閾値)以上であるか否かを判定し、特定レベル以上の電力値を検出してパルスを生成し、ゲート回路114に出力する。
【0035】
ゲート回路114は、ゼロクロス検出器111からのゼロクロス点パルスと閾値検出回路113からの特定レベル以上の電力値のパルスを入力し、論理積(AND)をとって、論理積のパルスを論理和回路115に出力する。
ゲート回路114は、BPF110を通過した信号のゼロクロス点パルスの内、電力値が小さい信号を排除し、電力値が閾値以上のゼロクロス点パルスを抽出するものである。
【0036】
論理和回路115は、遅延補正器109からのパルス信号とゲート回路114からのパルス信号を入力し、論理和(OR)をとって論理和のパルスを「変換点パルス」としてフレーム同期回路116に出力する。変換点パルスは、フレームの区切りを示す信号となる。
フレーム同期回路116は、論理和回路115からの論理和の信号を入力し、フレーム同期の処理を行う。
【0037】
尚、請求項における、結合部は結合器103に、直流成分除去部はLPF104に、基本成分抽出部はBPF110に、ゼロクロス検出部はゼロクロス検出器111、ゲート回路114に相当している。
また、請求項における、不連続点抽出部は絶対値変換回路105、微係数算出回路106、閾値判定回路107、立ち下がり検出器108に相当している。
また、請求項における、除去部は電力値処理回路112、閾値検出回路113、ゲート回路114に、補間部は遅延補正器109、論理和回路115に相当している。
【0038】
[本受信装置の動作:
図3〜10]
次に、
図2に示した本受信装置における動作について
図3〜10を参照しながら説明する。
図3は、I相、Q相の合成信号を示す波形図であり、
図4は、絶対値波形を示す図であり、
図5は、微分波形を示す図であり、
図6は、不連続点出力を示す図であり、
図7は、BPF出力の波形図であり、
図8は、ゲート回路通過後のゼロクロス点パルスを示す図であり、
図9は、全体のタイムチャートであり、
図10は、論理和回路からの出力である変換点パルスを示す図である。
【0039】
[合成信号:
図3]
本受信装置において、OFDM信号を直交復調したI相信号とQ相信号が結合器103で合成され、ベースバンド信号に変換されて出力された信号(1)が
図3に示すような信号となる。
そして、LPF104で、OFDM信号のサブキャリア成分(DC成分)を除去し、CPが挿入されたシンボルの基本成分と全サブキャリアの包絡線成分を通過させて絶対値変換回路105とBPF110に出力する。
このLPF104では、OFDM信号のサブキャリア成分に含まれる妨害信号を除去している。
【0040】
絶対値変換回路105に出力された信号は、波形の不連続点を抽出してフレームの区切りを抽出する系統(第1の系統)の処理対象であり、BPF110に出力された信号は、シンボルの基本波成分のゼロクロス点からフレームの区切りを抽出する系統(第2の系統)の処理対象である。
【0041】
[絶対値波形:
図4]
第1の系統における絶対値変換回路105では、LPF104からの信号を入力し、絶対値波形に変換する。絶対値変換回路105から出力される波形が
図4に示す絶対値波形(5)である。
【0042】
[微分波形:
図5]
そして、微係数算出回路106は、絶対値波形(2)を入力して微分し、微分波形を閾値判定回路107に出力する。微係数算出回路106から出力される波形が
図5に示す微分波形(3)である。
微分波形は、閾値判定回路107で閾値判定して閾値を超えた信号を抽出して立ち下がり検出器108に出力する。
【0043】
[不連続点出力:
図6]
立ち下がり検出器108では、閾値判定回路107からの信号について立ち下がり検出を行い、不連続点のパルスを出力する。立ち下がり検出器108から出力される不連続点パルスが
図6に示す不連続点出力(4)である。
そして、不連続点出力は、遅延補正器109で、第2の系統の処理時間を考慮して遅延させ、ゲート回路114からの出力と同期するようタイミング調整が為される。
【0044】
[BPF出力波形:
図7]
また、第2の系統では、LPF104からの信号をBPF110が更に帯域制限を行う。BPF110の振幅特性は、信号に含まれる基本成分を抽出するものであるから、中心周波数がシンボルレートの基本周波数である。BPF110から出力される波形が
図7に示すBPF出力波形(5)である。
【0045】
BPF110の出力波形は、ゼロクロス検出器111でゼロクロスを検出することによりゼロクロス点パルスを生成し、ゲート回路114に出力する。
また、BPF110の出力波形は、電力値処理回路112に入力され、電力値が計算され、電力値が閾値検出回路113に出力される。
閾値検出回路113では、電力値の閾値判定を行い、閾値を超えた電力値の場合はHighレベルを、閾値を超えない電力値の場合にはLowレベルの信号をゲート回路114に出力する。
【0046】
[ゼロクロス点パルス:
図8]
ゲート回路114では、閾値検出回路113からの信号がHighレベル(電力値が閾値を超えた場合)のときに、ゼロクロス検出器111からのゼロクロス点パルスを出力し、閾値検出回路113からの信号がLowレベル(電力値が閾値を超えない場合)のときに、ゼロクロス検出器111からのゼロクロス点パルスを出力しないようになっている。ゲート回路114から出力されるゼロクロス点パルスが
図8に示すゲート通過後のゼロクロス点パルス(6)である。
図8において、パルスが空白になっている部分は、閾値検出回路113からの信号がLowレベル(電力値が閾値を超えない場合)のときに相当する。
【0047】
[全体のタイムチャート:
図9]
以上説明内容を分かり易くするために、
図9の全体のタイムチャートを用いて説明する。
図9に示すように、Aの波形が絶対値波形であり、Bの波形が微分値波形であり、Cのパルスが不連続点出力であり、Dの波形がBPF出力波形であり、Eのパルスがゼロクロス点パルスである。
【0048】
尚、Dの波形において、電力値が閾値より低い部分(ゲート回路で出力が禁止される部分)については点線枠でマスキングしてあり、その部分はEのパルス出力が為されていない。
Eに示したゼロクロス点パルスが、ゲート回路114から出力されることになる。
【0049】
[変換点パルス:
図10]
図9において、遅延補正器109を介して立ち下がり検出器108から出力されるCの不連続点出力であるパルス(不連続点パルス)とゲート回路114から出力されたEのゼロクロス点パルスが論理和回路115で論理和されると、
図10の変換点パルス(7)となる。
【0050】
ここで、ゼロクロス点パルスにおいて電力値が小さくマスキングされた部分は、不連続点パルスで補間される。
図10では、ゼロクロス点パルスと不連続点パルスを区別するために、ゼロクロス点パルスをバーで表し、不連続点パルスを上向きの矢印で表している。
【0051】
[実施の形態の効果]
本受信装置によれば、OFDM変調方式における耐妨害、耐混信通信に対して、全サブキャリアの包絡線波形の連続点を抽出してフレームの区切りを抽出する第1の系統の構成と、シンボルの基本波成分のゼロクロス点からフレームの区切りを抽出する第2の系統の構成を備えて、第2の系統でのフレームの区切りを第1の系統でのフレームの区切りで補間して、確実にフレームの区切りを変換点パルスで得ることができるので、フレーム同期を安定して行うことができる効果がある。
【0052】
本受信装置によれば、特殊なタイミング(プリアンブル信号時等)、ユニークワード(既知の信号等)による信号を使用せず、OFDM信号の全電力(全帯域信号)を利用するため、有効な検出が可能となる効果がある。
【0053】
本受信装置によれば、同期のための特殊なタイミング、ユニークワード等を使用しないため、情報速度(通信速度)を落とすことがなく、安定な同期を行うことができる効果がある。
【0054】
本受信装置によれば、通常のOFDM信号の特性を利用するための耐妨害・耐混信通信と通常通信の切替を行う必要がない。
また、送信/受信のシステムで、妨害・混信の状態を監視し、OFDM信号のサブキャリア等のON/OFF制御を行う場合でも、そのまま使用可能である。
【0055】
また、本受信装置では、第1の系統でフレームの区切りを補間しているが、第2の系統で得られたフレームの区切りに基づき、第2の系統でのマスキング部分を補間してもよい。つまり、マスキング部分の前後におけるフレームの区切りからマスキング部分内のフレームの区切りを予想するものである。
【0056】
更に、本受信装置では、信号波形の不連続点を検出して同期を得るものであるため、CP符号を含まない通信にも利用することができる。