特許第5854811号(P5854811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854811
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 5/04 20060101AFI20160120BHJP
   B23B 21/00 20060101ALN20160120BHJP
   B23B 29/24 20060101ALN20160120BHJP
   B23B 3/22 20060101ALN20160120BHJP
   B23C 1/04 20060101ALN20160120BHJP
【FI】
   B23Q5/04 510Z
   !B23B21/00 C
   !B23B29/24 D
   !B23B3/22
   !B23C1/04
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-276899(P2011-276899)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-126700(P2013-126700A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】山根 雅浩
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−346870(JP,A)
【文献】 特開2002−361543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 5/00−5/58
B23B 1/00−25/06
B23C 1/04
B23B 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する第1ワーク把持機構と、該第1ワーク把持機構に対して相対的に移動可能であり、かつ工具を回転駆動する第1工具駆動機構と、前記第1ワーク把持機構及び第1工具駆動機構の何れに対しても相対的に移動可能であり、かつ工具を回転駆動する第2工具駆動機構とを備えた工作機械であって、
前記第1工具駆動機構と前記第2工具駆動機構とを、第2工具駆動機構の駆動力が第1工具駆動機構の駆動力に加算されるように連結する連結機構を備え、
該連結機構は、前記第1工具駆動機構の一部として形成された第1連結部と前記第2工具駆動機構の一部として形成された第2連結部とを有し、前記第1工具駆動機構と第2工具駆動機構とを前記ワーク把持機構の軸線方向に相対移動させることにより、前記第1,第2連結部同士を係脱可能に直接連結させるように構成されている
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク把持機構と、複数の工具駆動機構とを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
2組の主軸台(ワーク把持機構)と、2組の刃物台(工具駆動機構)を備え、主軸台に把持されたワークを刃物台に装着された工具により加工する工作機械として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記工作機械において、刃物台は、ワークの加工に必要な駆動力を発生できるように構成されている。この場合、切削性の良好なワークの加工を常用的に行う機械の場合、当然この切削性の良好なワークの加工に必要な駆動力を発生できるモータ等が採用される。従って、同じ機械により難切削性のワークを加工しようとすると、駆動力不足となり、加工速度が低下する。このような難切削性ワークにも対応可能の駆動力を持たせると、常用加工時には駆動力が過剰となる。
【0005】
このような問題への対応を可能とするため、駆動モータを複数設け、必要な駆動力に応じて使用するモータ数を変えるようにした工作機械が考えられる。
【0006】
しかし、前記工作機械においては、常用加工時には駆動モータ数が削減されるので発生する駆動力自体には過剰はないものの、潜在的には必要以上の駆動力を有するにも関わらず、常用加工時には残りの駆動モータの駆動力は他に利用されないので、費用対効果に乏しい機械であるといった問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、必要駆動力の小さい例えば切削性の良好なワーク及び、必要駆動力の大きい例えば難切削性のワークの何れにも対応できる工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ワークを把持する第1ワーク把持機構と、該第1ワーク把持機構に対して相対的に移動可能であり、かつ工具を回転駆動する第1工具駆動機構と、前記第1ワーク把持機構及び第1工具駆動機構の何れに対しても相対的に移動可能であり、かつ工具回転駆動する第2工具駆動機構とを備えた工作機械であって、
前記第1工具駆動機構と前記第2工具駆動機構とを、第2工具駆動機構の駆動力が第1工具駆動機構の駆動力に加算されるように連結する連結機構を備え、
該連結機構は、前記第1工具駆動機構の一部として形成された第1連結部と前記第2工具駆動機構の一部として形成された第2連結部とを有し、前記第1工具駆動機構と第2工具駆動機構とを前記ワーク把持機構の軸線方向に相対移動させることにより、前記第1,第2連結部同士を係脱可能に直接連結させるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ワーク加工に必要な駆動力が各工具駆動機構の有する保有駆動力より小さい場合は、各工具駆動機構によってそれぞれワークを加工する。そして前記必要な駆動力が前記保有駆動力より大きい場合は、前記連結機構により、前記第1工具駆動機構に第2工具駆動機構を連結し、前記第1工具駆動機構により必要駆動力の大きいワークを加工する。
【0010】
このように本発明では、必要な駆動力に応じて各工具駆動機構を独立して、又は連結してワークを加工できるので、各工具駆動機構の保有駆動力を小さいものに設定しながら、必要な駆動力が大きいワークの加工にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る工作機械の正面図である。
図2】前記工作機械の連結機構を示す断面正面図である。
図3】本発明の実施例2に係る工作機械の正面図である。
図4】前記工作機械の連結機構を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1及び図2は、本発明の実施例1に係る工作機械を説明するための図である。
【0014】
図において、符号1はタレット旋盤(工作機械)を示している。このタレット旋盤1は、スラントタイプのベッド(図示せず)と、該ベッドの、左部分に配設され、ワークを把持する第1主軸台(第1ワーク把持機構)3と、右部分に配設され、ワークを把持する第2主軸台4と、機械正面から見て奥の高所部分に配設された第1刃物台(第1工具駆動機構)5と、手前の低所部分に配設された第2刃物台(第2工具駆動機構)6とを有する。
【0015】
前記第1主軸台3及び第1刃物台5により第1加工ユニット7が構成され、また前記第2主軸台4及び第2刃物台6により第2加工ユニット8が構成されている。
【0016】
前記第1主軸台3は、前記ベッド上に固定配置された主軸台本体3aと、該主軸台本体3aに回転可能に支持され、図示しない主軸モータにより回転駆動される主軸3bと、該主軸3bの先端部に装着されたチャック3cとを有し、該チャック3cによりワークWが把持される。同様に、第2主軸台4は、主軸台本体4a,主軸4b,チャック4cを有し、Z軸方向に移動可能に配置されている。前記第1主軸3bと第2主軸4bは、それぞれの軸心aが水平方向に延び、かつ同一直線をなすように同軸配置されている。なお、この実施例における加工時には、第2主軸台4のチャック4cにはワークは把持されていない。
【0017】
前記第1刃物台5は、前記ベッド上に、前記Z軸方向,該Z軸と直交して前後方向に延びるX軸方向及び垂直方向に延びるY軸方向に移動可能に配設された刃物台本体5aと、該刃物台本体5aにより割出し軸b回りに回転可能に支持されたタレット5bと、該タレット5bの外周部に所定角度間隔毎に配設された複数の工具保持ケース5dと、該各工具保持ケース5dにより回転可能に支持された工具軸5eとを有する。
【0018】
また、図示していないが、前記刃物台本体5a内には前記タレット5bを所定角度位置に割り出す割り出し機構が収容されている。また、前記タレット5b内には前記工具軸5eを回転駆動する駆動部が収容されている。この駆動部は、前記タレット5bの中心部に配設された駆動モータ(図示せず)と、該駆動モータで回転駆動される駆動軸5gと、該駆動軸5gの回転を前記工具軸5eに伝達する傘歯車機構5hとを有する。この傘歯車機構5hは、前記駆動軸5gにより駆動される入力歯車5jと、これに噛合し、前記工具軸5eに固定された出力歯車5kとを有する。
【0019】
前記第2刃物台6は、前記第1刃物台5と同様に構成されており、刃物台本体6a、タレット6b、工具保持ケース6d、工具軸6e,駆動軸6g,及び入力歯車6j,出力歯車6kからなる傘歯車機構6hを有し、さらに前記同様の割り出し機構を有する。
【0020】
このようにして、第1刃物台5は、第2刃物台6及び第1,第2主軸台3,4に対して相対的に移動可能となっており、同時に第2刃物台6は、該1刃物台5及び第1,第2主軸台3,4に対して相対的に移動可能となっている。
【0021】
前記第1刃物台5の前記工具軸5eは、工具保持ケース5dから第1主軸台3側及び第2主軸台4側に突出しており、前記工具軸5eの第1主軸台3側への突出部に工具ジョイント5iを介して工具Tが取付けられている。同様に、前記第2刃物台6の前記工具軸6eは、工具保持ケース6dから第1主軸台3側及び第2主軸台4側に突出しており、前記工具軸6eの第2主軸台4側への突出部に工具ジョイント6iを介して工具Tが取付けられている。
【0022】
一方、前記工具軸5eの前記第2主軸台4側への突出部には、係合凹凸部(第1連結部)5fが形成されている。同様に、工具軸6eの、前記第1主軸3側への突出部には、係合凹凸部(第2連結部)6fが形成されている。前記第1,第2刃物台5,6を前記X軸,Y軸,Z軸方向に適宜移動させることにより、前記両係合凹凸部5f,6fは、互いに係脱可能となっている。これにより、第1刃物台5と第2刃物台6とを、一方の工具軸の駆動力が他方の工具軸に伝達されるように連結する連結機構9が構成されている。
【0023】
本実施例に係るタレット旋盤1では、ワークWの加工に必要な駆動力が、前記第1,第2刃物台5,6のそれぞれが有する保有駆動力より小さい場合には、第1,第2加工ユニット7,8は、それぞれ第1,第2主軸台3,4によりワークW,Wを把持し、第1,第2刃物台5,6により独立して必要な加工を施す。
【0024】
一方、ワークWの加工に必要な駆動力が、第1,第2刃物台5,6のそれぞれが有する保有駆動力より大きい場合には、例えば第1加工ユニット7の第1主軸台3によりワークWを把持し、第1刃物台5の工具軸5eと第2刃物台6の工具軸6eとを連結機構9により連結し、第1刃物台5の駆動力に第2刃物台6の駆動力を加算しつつ前記ワークWの加工を行う。
【0025】
このように本実施例では、ワーク加工に必要な駆動力に応じて各工具軸5e,6eを独立して、又は連結してワークを加工できるので、各加工ユニット7,8の保有駆動力を小さいものに設定しながら、必要な駆動力が大きいワークWの加工にも対応できる。
【0026】
また、必要な駆動力が保有駆動力より小さい場合には、各加工ユニット7,8により別個のワークW,Wを独立して加工できるので、第1,第2加工ユニット7,8の両方を効率的に使用できる。
【0027】
なお、前記実施例では、連結機構が、係合凹凸部同士を係脱させるものであったが、本発明の連結機構の構造は前記実施例に限定されないのは勿論であり、要は一方の工具軸の駆動力が他方の工具軸に伝達されるように構成すれば良い
【0028】
また、前記実施例では、刃物台を2組備えている場合を説明したが、本発明は、刃物台を3組以上備えている場合にも適用できる。例えば、前記第1,第2刃物台に加えて第3刃物台を第1刃物台と直列に配置している場合には、第1刃物台と第3刃物台とを連結するように構成することもでき、さらに第2刃物台と、第1又は第3刃物台とを連結することも可能である。
【0029】
さらにまた、前記実施例では、タレット旋盤の場合を説明したが、本発明の適用範囲は、タレット旋盤に限定されないのは勿論であり、要は、工具駆動機構を複数備えておれば何れの場合にも適用できる。
【実施例2】
【0030】
図3図4は、実施例2を説明するためのものであり、図1,2と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0031】
図において、15,16は工具駆動機構としての第1工具主軸,第2工具主軸である。第1工具主軸15は、ベッド上に、X軸,Z軸方向に移動可能に立設されたコラムにより主軸頭15aをY軸方向に移動可能に支持し、該主軸頭15aにより主軸15bを回転自在に支持し、該主軸15bにより工具保持ケース5dを着脱可能に支持した構造を有する。傘歯車機構15hの入力歯車15cに一体形成された雄テーパ部15dが前記主軸15bの先端に形成された雌テーパ部15eに着脱可能に嵌合するようになっている。
【0032】
前記第2工具主軸16は、第1工具主軸15と同様の、主軸頭16a,主軸16bを有し、傘歯車機構16hの入力歯車16cの雄テーパ部16dを前記主軸16bの雌テーパ部15eに着脱可能に嵌合させることにより工具保持ケース6dを主軸16bに着脱可能となっている。
【0033】
そして前記実施例1と同様に、第1刃物台15と第2刃物台16とを、一方の工具軸の駆動力が他方の工具軸に伝達されるように連結する係合凹凸部5f,6fからなる連結機構9が構成されている。
【0034】
本実施例2においても、前記実施例1と同様に、各加工ユニット17,18の保有駆動力を小さいものに設定しながら、必要な駆動力が大きいワークWの加工にも対応できる。また、必要な駆動力が保有駆動力より小さい場合には、各加工ユニット17,18により別個のワークW,Wを独立して加工でき、両加工ユニット17,18を効率的に使用できる。
【0035】
さらにまた、本発明は、実施例1における刃物台と実施例2における工具主軸とを備えた工作機械においても適用可能であり、前記各実施例と同様の作用効果が得られる。
【0036】
なお、前記実施例1,実施例2では、ワーク把持機構としての主軸台を2組備えている場合を説明したが、本発明では、ワーク把持機構は1組備えていればよく、この場合にも、各工具駆動機構の保有駆動力を小さいものに設定しながら、必要な駆動力が大きいワークWの加工にも対応できる。
【符号の説明】
【0037】
1 タレット旋盤(工作機械)
3 第1主軸台(第1ワーク把持機構)
5,6 第1,第2刃物台(第1,第2工具駆動機構)
9 連結機構
T 工具
W ワーク
図1
図2
図3
図4