(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装置内部で支持されるマスクの表面で半田を移動させることで、前記マスクのパターン孔を介して前記マスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置において、
前記マスクを支持する支持部材と、前記装置内部へ送風する送風口から前記支持部材に支持される前記マスクへ向かう気流を遮る遮蔽部材とを有するマスク保持手段を備え、
前記送風口からの風によって装置内部が冷却されることで、前記マスクの表面の半田が冷却されることを特徴とする印刷装置。
2個の前記マスク保持手段が並べて配置されており、1台の送風機から前記送風口に送られる風によって前記2個のマスク保持手段それぞれの前記遮蔽部材を冷却可能である請求項2に記載の印刷装置。
装置内部で支持されるマスクの表面で半田を移動させることで、前記マスクのパターン孔を介して前記マスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置の温度調整方法において、
送風口から前記装置内部へ風を送って前記装置内部を冷却することで、前記マスクの表面の半田を冷却する送風工程を備え、
前記印刷装置では、前記マスクを支持する支持部材と遮蔽部材とを有するマスク保持手段が設けられており、
前記送風工程において前記送風口から前記支持部材に支持される前記マスクへ向かう気流は前記遮蔽部材によって遮られていることを特徴とする印刷装置の温度調整方法。
前記印刷装置では2個の前記マスク保持手段が並べて配置されており、1台の送風機からの風によって前記2個のマスク保持手段それぞれの前記遮蔽部材を冷却可能である請求項9に記載の印刷装置の温度調整方法であって、
前記送風機による送風を制御して、前記マスクの表面の温度を調整する印刷装置の温度調整方法。
前記2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられた温度センサの検出結果に基づいて、前記送風機による送風を制御する請求項10に記載の印刷装置の温度調整方法。
前記2個のマスク保持手段それぞれは、他方の前記マスク保持手段の反対側を向いて開口する開口部を有しており、前記印刷装置では、前記開口部を開閉する扉が前記2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられている請求項11に記載の印刷装置の温度調整方法であって、
前記扉が開いている前記マスク保持手段に設けられた前記温度センサの検知結果を無視しつつ、前記扉が閉じている前記マスク保持手段に設けられた前記温度センサの検知結果に基づいて前記送風機による送風を制御する印刷装置の温度調整方法。
前記2個のマスク保持手段それぞれは、他方の前記マスク保持手段の反対側を向いて開口する開口部を有しており、前記印刷装置では、前記開口部を開閉する扉が前記2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられている請求項10または11に記載の印刷装置の温度調整方法であって、
前記印刷装置では、前記2個のマスク保持手段のそれぞれに対して前記送風口が設けられており、前記遮蔽部材は、それが属する前記マスク保持手段に対して設けられた前記送風口からの風によって冷却される印刷装置の温度調整方法。
前記送風機は、気体を冷却する冷却部を有するとともに、前記冷却部が冷却した気体の温度を調整するヒータを前記送風口毎に有しており、前記ヒーターで温度調整された気体を前記送風口から前記装置内部へ送る請求項13または14に記載の印刷装置の温度調整方法において、
前記扉が開いた場合は、前記扉が開いている前記マスク保持手段に対して設けられた前記送風口が送る風の温度を調整する前記ヒーターを停止する印刷装置の温度調整方法。
マスクの表面で半田を移動させることで前記マスクのパターン孔を介して前記マスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置と、前記印刷装置に設けられた送風口から前記印刷装置の内部へ送風する送風機とを備えた印刷装置の温度調整システムにおいて、
前記印刷装置は、前記マスクを支持する支持部材と、前記送風口から前記支持部材に支持される前記マスクへ向かう気流を遮る遮蔽部材とを有するマスク保持手段を備え、
前記送風口からの風によって前記印刷装置の内部が冷却されることで、前記マスクの表面の半田が冷却されることを特徴とする印刷装置の温度調整システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半田印刷を良好に行うためには、マスク表面の半田が適切な粘性を有することが重要となる。しかしながら、装置内部の熱源からの熱によってマスクの温度が上昇することで、マスク表面の半田が温められてその粘性が大きく変化してしまい、良好な半田印刷を行えないおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、マスクの温度上昇に起因する半田の粘性変化を抑えて、良好な印刷を実現する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる印刷装置は、装置内部で支持されるマスクの表面で半田を移動させることで、マスクのパターン孔を介してマスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置であって、上記目的を達成するために、マスクを支持する支持部材と、装置内部へ送風する送風口から支持部材に支持されるマスクへ向かう気流を遮る遮蔽部材とを有するマスク保持手段を備え、送風口からの風によって装置内部が冷却されることで、マスクの表面の半田が冷却されることを特徴としている。
【0007】
この発明にかかる印刷装置の温度調整方法は、装置内部で支持されるマスクの表面で半田を移動させることで、マスクのパターン孔を介してマスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置の温度調整方法であって、上記目的を達成するために、送風口から装置内部へ風を送って装置内部を冷却することで、マスクの表面の半田を冷却する送風工程を備え、印刷装置では、マスクを支持する支持部材と遮蔽部材とを有するマスク保持手段が設けられており、送風工程において送風口から支持部材に支持されるマスクへ向かう気流は遮蔽部材によって遮られていることを特徴としている。
【0008】
この発明にかかる印刷装置の温度調整システムは、マスクの表面で半田を移動させることでマスクのパターン孔を介してマスクの裏面に重ね合わされた基板に半田を印刷する印刷装置と、印刷装置に設けられた送風口から印刷装置の内部へ送風する送風機とを備えた印刷装置の温度調整システムであって、上記目的を達成するために、印刷装置は、マスクを支持する支持部材と、送風口から支持部材に支持されるマスクへ向かう気流を遮る遮蔽部材とを有するマスク保持手段を備え、送風口からの風によって印刷装置の内部が冷却されることで、マスクの表面の半田が冷却されることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(印刷装置、印刷装置の温度調整方法および印刷装置の温度調整システム)では、送風口からの風によって装置内部が冷却され、その結果、印刷装置内部において支持部材に支持されるマスク表面の半田の温度を低く維持することが可能となっている。ただし、このような送風冷却を採用するにあたっては、送風口からの風が半田に当たって半田を乾燥させるといった問題が別途発生するおそれがある。これに対して、この発明では、送風口からマスクへ向かう気流を遮る遮蔽部材が設けられており、マスク表面の半田に送風口からの風が当たらないようにして、送風口からの風による半田の乾燥が抑制されている。このようにして、半田の乾燥を抑制しつつ半田を冷却しており、その結果、半田の粘性変化を適切に抑えて、良好な印刷を実現することが可能となっている。
【0010】
この際、遮蔽部材は、支持部材
との間に熱伝導性を有しており、送風口からの風によって遮蔽部材が冷却されることで、遮蔽部材との間に熱伝導性を持つ支持部材によって支持されたマスクの表面が冷却されて、マスクの表面の半田が冷却されるように印刷装置を構成しても良い。このように、送風口からの風を遮る遮蔽部材に、支持部材との間の熱伝導性を持たせた構成では、送風口からの風によって遮蔽部材が冷却されると、支持部材に支持されたマスクの表面も冷却されることとなり、その結果、マスク表面の半田を効率的に冷却することができる。したがって、半田へ送風口からの風が当たらないようにして半田の乾燥を抑制しつつも半田を確実に冷却することができ、半田の粘性変化を適切に抑えて良好な印刷を実現するといった効果をより効果的に奏することができる。
【0011】
また、2個のマスク保持手段が並べて配置されており、1台の送風機から送風口に送られる風によって2個のマスク保持手段それぞれの遮蔽部材を冷却可能であるように印刷装置を構成しても良い。このように、1台の送風機からの風によって2個のマスク保持手段それぞれの遮蔽部材を冷却可能にした印刷装置は、遮蔽部材の温度を調整する送風機を2個のマスク保持手段毎に設けた場合に比べて、送風機の台数を抑えることができる。そのため、送風機の設置面積やコストを抑えるのに有利となる。
【0012】
また、2個のマスク保持手段それぞれは、他方のマスク保持手段の反対側を向いて開口する開口部を有するように構成した上でさらに、開口部を開閉する扉が2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられているように印刷装置を構成しても良い。このような印刷装置では、マスク保持手段のマスクを交換する等の段取り作業を行なう場合は、扉を開けることで、作業者が開口部を介してマスク保持手段にアクセスして段取り作業を行える一方、基板への半田印刷を行う場合は、扉を閉じることで、外気温によらず装置内部の温度を安定させることができるため、適切な粘性の半田による良好な印刷を効果的に実現することができる。
【0013】
この際、2個のマスク保持手段それぞれは、他方のマスク保持手段の側において閉塞しているように印刷装置を構成しても良い。このように構成することで、2個のマスク保持手段の間で雰囲気を分離することができ、一方のマスク保持手段の雰囲気温度が、他方のマスク保持手段の雰囲気温度に影響することを抑えることができる。したがって、一方のマスク保持手段に対して段取り作業を行いつつも、安定した雰囲気温度下で他方のマスク保持手段による半田印刷を実行できる。よって、一方のマスク保持手段への段取り作業のために、他方のマスク保持手段による印刷を停止する必要が無く、基板への半田印刷を効率的に行うことができる。
【0014】
また、送風口は、2個のマスク保持手段のそれぞれに対して設けられており、遮蔽部材は、それが属するマスク保持手段に対して設けられた送風口からの風によって冷却されるように印刷装置を構成しても良い。このような構成は、マスク保持手段にこれに対して設けられた送風口を近接して配置できる等のレイアウトの自由度が向上するといった利点がある。
【0015】
なお、送風口の配設態様は上記のものに限られない。そこで例えば、2個のマスク保持手段それぞれの遮蔽部材は、互いに対向して配置されており、送風口は、互いに対向する2個の遮蔽部材の間を臨むように設けられており、送風口から2個の遮蔽部材の間に送られた風によって2個の遮蔽部材が冷却されるように印刷装置を構成しても良い。
【0016】
また、印刷装置の温度調整方法に対しても、種々の変形が可能である。例えば、印刷装置では2個のマスク保持手段が並べて配置されており、1台の送風機からの風によって2個のマスク保持手段それぞれの遮蔽部材を冷却可能であるように構成した上で、送風機による送風を制御して、マスクの表面の温度を調整するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。このように送風機による送風を制御することで、マスク表面の温度、延いてはマスク表面の半田の温度を安定させることができ、適切な粘性の半田による良好な印刷を効果的に実現することができる。
【0017】
そして、遮蔽部材は、支持部材
との間に熱伝導性を有しており、送風口からの風によって遮蔽部材を冷却されることで、遮蔽部材との間に熱伝導性を持つ支持部材によって支持されたマスクの表面を冷却して、マスクの表面の半田を冷却するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。これによって、半田へ送風口からの風が当たらないようにして半田の乾燥を抑制しつつも半田を確実に冷却することができ、半田の粘性変化を適切に抑えて良好な印刷を実現するといった効果をより効果的に奏することができる。
【0018】
この際、2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられた温度センサの検出結果に基づいて、送風機による送風を制御するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。このように温度センサの検出結果に基づいて送風機による送風を制御することで、マスク表面の半田の温度をしっかりと安定させて、適切な粘性の半田による良好な印刷をより効果的に実現することができる。
【0019】
さらに、2個のマスク保持手段それぞれは、他方のマスク保持手段の反対側を向いて開口する開口部を有しており、印刷装置では、開口部を開閉する扉が2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられている印刷装置に対して温度調整を行う場合には、扉が開いているマスク保持手段に設けられた温度センサの検知結果を無視しつつ、扉が閉じているマスク保持手段に設けられた温度センサの検知結果に基づいて送風機による送風を制御するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。このような構成では、扉が開いており印刷に用いられないマスク保持手段の雰囲気温度の影響を排して、扉が閉じており印刷に用いることができるマスク保持手段の雰囲気温度を調整することができる。したがって、扉が開いているマスク保持手段の雰囲気温度が外気の影響で大きく変動しても、扉が閉じているマスク保持手段は、この温度変動に依らず安定した温度で印刷に供することができる。その結果、マスク表面の半田の温度を安定させて、適切な粘性の半田による良好な印刷を効果的に実現できる。
【0020】
また、2個のマスク保持手段それぞれは、他方のマスク保持手段の反対側を向いて開口する開口部を有しており、印刷装置では、開口部を開閉する扉が2個のマスク保持手段それぞれに対して設けられている印刷装置に対して温度調整を行うにあたっては、印刷装置では、2個のマスク保持手段のそれぞれに対して送風口が設けられており、遮蔽部材は、それが属するマスク保持手段に対して設けられた送風口からの風によって冷却されるように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。
【0021】
この際、扉が開いた場合は、扉が開いているマスク保持手段に対して設けられた送風口からの送風を停止するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。このような構成では、扉が開いており印刷に用いられないマスク保持手段に対する無駄な送風を停止して、省エネルギー化を図ることができるため好適である。
【0022】
あるいは、送風機は、気体を冷却する冷却部を有するとともに、冷却部が冷却した気体の温度を調整するヒータを送風口毎に有しており、ヒーターで温度調整された気体を送風口から装置内部へ送る印刷装置の温度調整方法においては、扉が開いた場合は、扉が開いているマスク保持手段に対して設けられた送風口が送る風の温度を調整するヒーターを停止するように印刷装置の温度調整方法を構成しても良い。このような構成は、扉が開いており印刷に用いられないマスク保持手段に対する風の温度をヒータで無駄に調整することがなく、省エネルギー化を図ることができるため好適である。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、この発明によれば、半田の乾燥を抑制しつつ半田を適切に冷却することができ、その結果、半田の粘性変化を抑えて、良好な印刷を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な印刷装置の全体概要を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す印刷装置内部の構成を示す斜視図であり、
図1からハウジングを取り除いた状態が示されている。
図3は、
図1に示す印刷装置内部の部分的構成を模式的に示した平面図である。これらの図および以下の図面では、装置各部の位置関係を示すためにXYZ直交座標軸を適宜示す。また必要に応じて、各座標軸の矢印方向を正側として取り扱い、各座標軸の矢印逆方向を負側として取り扱う。
【0026】
印刷装置100は、Y軸方向に並ぶ2つの印刷ユニット200、200と、これらに一対一で対応して設けられてY軸方向に並ぶ2つの基板搬送ユニット300、300とをハウジング400内に収容した概略構成を備える。そして、印刷ユニット200、200のそれぞれが、対応する基板搬送ユニット300、300により搬入された基板Sに対して印刷を行う。
【0027】
印刷装置100は印刷ユニット200、200および基板搬送ユニット300、300を支持するために、略直方体形状の基台1と、基台1の上面に取り付けられた2つの支持フレーム2、2からなる支持機構を備える(
図2)。これら支持フレーム2、2のそれぞれは、基台1のY軸方向の両端部に設けられた柱部材2a、2aにY軸方向に延びる梁部材2bを架け渡した門型フレームである。
図2に示すように、これら2つの支持フレーム2、2のうち、一方の支持フレーム2は基台1のX軸方向中央部に配置されており、他方の支持フレーム2は基台1のX軸正方向端部に配置されている。そして、印刷ユニット200、200は、Y軸方向に並ぶ2つの支持フレーム2、2の間で基台1の上面に支持される。一方、基板搬送ユニット300、300は、門型の支持フレーム2、2をくぐるようにしてX軸方向に延設されて、基台1の上面に支持される。
【0028】
図3に示すように、印刷装置100のX軸方向の両外側には、搬入コンベア対C1、C1および搬出コンベア対C2、C2が設けられている。これら搬入コンベア対C1、C1および搬出コンベア対C2、C2は、印刷装置100が備える2つの基板搬送ユニット300、300に一対一で対応する形で2対ずつ設けられている。そして、搬入コンベア対C1、C1は、印刷装置100のX軸負側に配置されて、対応する基板搬送ユニット300に向けて基板Sを搬入する。一方、搬出コンベア対C2、C2は、印刷装置100のX軸正側に配置されて、対応する基板搬送ユニット300から搬出された基板Sを受け取る。なお、搬入コンベア対C1、C1および搬出コンベア対C2、C2はいずれもY軸方向に移動自在に構成されており、基板搬送ユニット300や印刷ユニット200との基板Sの受け渡しの際には、受け渡し相手のこれらとX軸方向に直線的に並ぶ位置に移動する。
【0029】
基板搬送ユニット300、300それぞれは、対応する搬入コンベア対C1、C1から搬入した基板Sを、対応する搬出コンベア対C2、C2にまで搬送するとともに、その途中の待機位置Pwや印刷位置Ppで基板Sを適宜停止することができる。具体的には、基板搬送ユニット300は、X軸方向に延設された2本のスライド機構301、301の上部に、基板テーブル302を支持した構成を具備している。そして、この基板テーブル302がその上面で基板Sを保持した状態でX軸方向に移動することで、搬入コンベア対C1、C1から受け取った基板Sを印刷ユニット200手前の待機位置Pwで待機させたり、印刷ユニット200内の印刷位置Ppへ搬送したり、印刷位置Ppで印刷を受けた基板Sを搬出コンベア対C2、C2に搬出したりする。
【0030】
一方で、印刷ユニット200、200のそれぞれは対応する基板搬送ユニット300、300の搬送してきた基板Sに対して印刷を行う。続いては、この印刷動作を実行する構成の詳細を、
図1ないし
図3に
図4を加えて説明する。なお、印刷装置100では、印刷ユニット200と基板搬送ユニット300からなるペアが2つ設けられているが、これらのペアの構成は同一であるので、以下では一のペアを示して説明を行うこととする。
【0031】
図4は、
図1に示す印刷装置内部の構成を示す側面図である。上述のとおり、印刷装置100は、基台1の上面に設けられた基板搬送ユニット300を備える。この基板搬送ユニット300は、Y軸方向に所定間隔を空けて配置された2つのスライド機構301、301と、これらスライド機構301、301に対してX軸方向に移動自在に支持された基板テーブル302を有する。また、スライド機構301、301は、図示を省略する駆動機構によってX軸方向へ移動可能となっている。そのため、基板テーブル302は、X軸方向のみならずY軸方向へも移動することができる。この基板テーブル302には、上方に延びる複数のピン(図示省略)が取り付けられており、これら複数のピンに基板Sが載置される。そして、基板テーブル302は、これらのピンに載置された基板Sを支持しつつ、適宜移動することができる。
【0032】
また、印刷装置100は、基板搬送ユニット300の上方でマスクMを昇降させるマスク昇降機構20を備える。このマスク昇降機構20は、基台1の上面でY軸方向に並ぶ上述の支持フレーム2、2の間に配置されており、マスクMを保持するマスク保持フレーム21をフレーム駆動部22で昇降させることで、マスクMを昇降させる概略構成を備える。このフレーム駆動部22は、マスク保持フレーム21から下方(Z軸負方向)に延びる4本のボールネジ軸23それぞれに螺合するプーリ24を、ベルト25を介してサーボモータ26により回転させることで、マスク保持フレーム21を昇降させるものである。
【0033】
そして、基板Sに印刷を行う際には、マスク昇降機構20はマスクMを下降させる。これによって、マスク保持フレーム21に保持されるマスクMの下方の印刷位置Ppに搬送・固定された基板Sの上面に、マスクMの下面が重ね合わされる。一方、基板Sへの印刷後は、マスク昇降機構20はマスクMを上昇させることで、基板Sの上面からマスクMの裏面を離間させる(
図4の状態)。
【0034】
さらに、印刷装置100は、支持フレーム2、2の梁部材2b、2bにより支持される印刷機構30を、マスク昇降機構20の上方に備える。この印刷機構30は、基板SにマスクMが重ね合わされた状態で、半田が供給されたマスクMの上面にスキージ40をY軸方向に摺動させることで、マスクMに形成されたパターン孔を介して基板Sに半田を印刷するものである。
【0035】
図4に示すように、印刷機構30は、Y軸正方向にマスクMを摺動するためのスキージ40(
図4左側のスキージ)と、Y軸負方向にマスクMを摺動するためのスキージ40(
図4右側のスキージ)とを有する。さらに、印刷機構30は、上下方向に伸縮可能なロッド41を介してこれらのスキージ40それぞれを保持する印圧付加部31を有する。この印圧付加部31は、印刷の際に、2つのスキージ40、40のうち摺動方向に応じたスキージ40を下降させて、マスクMの上面に所定の印圧で押圧するものである。
【0036】
また、印刷機構30では、マスクMの上面に半田を供給する半田供給部32が印圧付加部31に取り付けられており、印圧付加部31と半田供給部32はボールネジ機構によって一体的にY軸方向に移動可能となっている。具体的には、Y軸方向に延びるボールネジ軸33に螺合するナット部材34が半田供給部32に取り付けられており、サーボモータ35によってボールネジ軸33が回転すると、印圧付加部31と半田供給部32がY軸方向に移動する。したがって、スキージ40をマスクMの上面に押圧しつつ、サーボモータ35を動作させることで、ペースト状の半田SP(クリーム半田)の供給されたマスクMの上面にスキージ40をY軸方向に摺動させて、基板Sに半田を印刷することができる。なお、ボールネジ軸33の軸方向の両端部は、梁部材2bの上面でY軸方向の両端部に取り付けられた固定部材36、37に回転自在に支持されているとともに、サーボモータ35は、固定部材36に固定されている。
【0037】
ところで、
図1に示したように、上述した印刷装置100の内部構成は、ハウジング400の内部に収容される。このハウジング400には、待機位置Pwに対応する部分を開閉する扉410と、印刷位置Ppに対応する部分を開閉する扉420とが設けられている。したがって、作業者は、各扉410、420を開いて、待機位置Pwや印刷位置Ppに対して所定の段取りを行うことができる。
【0038】
また、ハウジング400には、作業者との各種インターフェースが設けられている。具体的には、印刷位置Pp用の扉420の側方には、表示パネル430と操作パネル440とが縦に並んで設けられている。表示パネル430は、印刷ユニット200による基板Sへの印刷状況や、基板搬送ユニット300による基板Sの搬送状況を表示する機能を果たす。一方、操作パネル440には、扉410、420を開閉するための扉開閉スイッチ440aが設けられている。したがって、作業者は、印刷ユニット200が所定枚数の基板Sへの印刷を終えたのを表示パネル430で確認した場合に、扉開閉スイッチ440aにより扉410、420を開けて所定の段取りを行って、この段取りが終了すると扉開閉スイッチ440aにより扉410、420を閉じて、続く印刷動作に備えることができる。なお、扉開閉スイッチ440aは扉410、420それぞれに対して設けられており、対応する扉開閉スイッチ440aを操作することで扉410、420の一方を選択的に開閉できる。
【0039】
また、操作パネル440には、印刷ユニット200や基板搬送ユニット300の動作を緊急的に停止させるための非常停止ボタン440bも設けられている。したがって、作業者は、何かしらの異常を表示パネル430で確認した場合は、非常停止ボタン440bにより印刷ユニット200および基板搬送ユニット300を停止させるとともに、扉開閉スイッチ440aにより扉410、420を開けて所定の修復作業を行うことができる。なお、扉410、420や表示パネル430、操作パネル440は、印刷ユニット200と基板搬送ユニット300からなるペア毎に設けられている。その他に、ハウジング400には、印刷装置100から離れた位置にいる作業者に、印刷装置100の異常を報知するための表示灯450も設けられている。
【0040】
さらに、ハウジング400の上面には、3つの送風口50、50、50がY軸方向に並んで貫通形成されている。これら送風口50、50、50は、ハウジング400内部でY軸方向に並ぶ2つの印刷ユニット200、200のZ軸方向(鉛直方向)の上方に位置しており、後述するようにエアコンディショナからの気流をハウジング400内部に送るためのものである。なお、送風口50、50、50は未使用状態では送風孔カバーによって閉じられており、
図1では、3つの送風口50、50、50の全てが送風孔カバーで閉じられた状態が示されている。
【0041】
そして、第1実施形態の印刷装置100では、送風口50から送風される空気によって、ハウジング400内を冷却することができる構造を備える。続いては、上述の
図2に
図5を加えて、これの詳細について説明する。ここで、
図5は、印刷装置のハウジング内を冷却する構造を説明する説明図であり、X軸方向から見た印刷装置100にエアコンディショナが接続された様子が示されている。なお、同図では、印刷機構20等の一部の部材の記載は省略されている。
【0042】
図5に示した例では、3つの送風口50、50、50のうち、中央の送風口50にエアコンディショナから延びるダクトが取り付けられる一方、両端の送風口50は送風孔カバーにより閉じられている。そして、エアコンディショナ60から吹き出された空気が、ダクト61を通過した後に送風口50を介してハウジング400内に送られる。これによって
図5の矢印に示したような、送風口50から鉛直下方に向かうダウンフローの気流がハウジング400内に発生して、ハウジング400内全体が冷却される。
【0043】
なお、送風口50からの風が、マスクM上面の半田に直接当たると、半田に含まれるフラックスに含有される揮発性物質が蒸発して、半田が乾燥してしまうおそれがある。そこで、第1実施形態では、送風口50からマスク保持フレーム21(のマスクM)に向う風を遮るマスクカバー71が、2つの印刷ユニット200、200それぞれにおいて設けられている。このマスクカバー71は、マスク保持フレーム21のY軸方向の端から鉛直方向(Z軸方向)上側に延びる壁板72と、壁板72の上端からY軸方向に延びてマスク保持フレーム21を上方から覆う天板73とで構成される。そして、2つの印刷ユニット200、200が備えるマスクカバー71、71は、それぞれの壁板72、72がハウジング400の内側を向いて互いに対向するように配置されている。したがって、これらの壁板72の間に鉛直上方から臨むようにして設けられた送風口50からの風は、送風口50とマスク保持フレーム21の間に設けられたマスクカバー71、71(の壁板72、72)により遮られて、マスク保持フレーム21に保持されるマスクM上面の半田に直接当たらない。一方、このようなマスクカバー71、71を設けたことで、作業者による作業性が損なわれないように、2つの印刷ユニット200、200が備えるマスクカバー71、71は、ハウジング400の外側に向けては開口している。
【0044】
換言すると、マスク保持フレーム21とマスクカバー71でマスク保持機構70が構成されている。そして、このマスク保持機構70は、ハウジング400の内側を向く部分を壁板72により閉塞して送風口50からの風を遮る一方、ハウジング400の外側を向く部分を開放している(開口部70a)。したがって、印刷ユニット200、200では、対応して設けられた扉420を開閉することでそれぞれの開口部70aを開閉することができ、作業者にしてみれば、扉420を開けることで、開口部70aからマスク保持フレーム21にアクセスして、マスクMの取り換え等の段取りを実行することができる。
【0045】
また、このように構成されたマスク保持機構70は、マスク保持フレーム21に支持されたマスクM上面の半田を効率的に冷却する機能も有する。つまり、マスク保持機構70の壁板72は、送風口50からの風の流路に対向しているため、送風口50からの風を受けて冷却される。これに対して、マスク保持機構70を構成するマスク保持フレーム21とマスクカバー71の壁板72および天板73は、相互間に熱伝導性を有するように互いに接続されている。したがって、送風口50からの風によって壁板72が冷却されると、これと熱伝導性を有する天板73やマスク保持フレーム21が冷却され、これによってマスク保持フレーム21のマスクM上面の半田も冷却される。この際、マスク保持フレーム21、壁板72および天板73を熱伝導率の高い金属で構成すれば、マスクM上面の半田の冷却効率をさらに向上することができる。
【0046】
以上に説明したように、この実施形態では、送風口50からの風によって印刷装置100のハウジング400内部が冷却され、その結果、ハウジング400内部においてマスク保持フレーム21に支持されるマスクM表面の半田SPの温度を低く維持することが可能となっている。ただし、このような送風冷却を採用するにあたっては、送風口50からの風が半田SPに当たって半田SPを乾燥させるといった問題が別途発生するおそれがある。これに対して、この実施形態では、送風口50からマスクMへ向かう気流を遮るマスクカバー71が設けられており、マスクM表面の半田SPに送風口50からの風が当たらないようにして、送風口50からの風による半田SPの乾燥が抑制されている。このようにして、半田SPの乾燥を抑制しつつ半田SPを冷却しており、その結果、半田SPの粘性変化を適切に抑えて、良好な印刷を実現することが可能になっている。
【0047】
さらに、この実施形態では、マスクカバー71は、マスク保持フレーム21の間に熱伝導性を有しており、送風口50からの風によってマスクカバー71が冷却されることで、マスクカバー71との間に熱伝導性を持つマスク保持フレーム21によって支持されたマスクMの表面が冷却されるように構成されている。このように、送風口50からの風を遮るマスクカバー71に、マスク保持フレーム21との間の熱伝導性を持たせた構成では、送風口50からの風によってマスクカバー71が冷却されると、マスク保持フレーム21に支持されたマスクMの表面も冷却されることとなり、その結果、マスクM表面の半田SPを効率的に冷却することができる。したがって、半田SPへ送風口50からの風が当たらないようにして半田SPの乾燥を抑制しつつも半田SPを確実に冷却することができ、半田SPの粘性変化を適切に抑えて良好な印刷を実現するといった効果をより効果的に奏することができる。
【0048】
特に上述のような印刷装置100では、ハウジング400内に設けられたサーボモータ26、35等が熱源となって、マスクM上面の半田SPが加熱されて粘性を変化させやすい。これに対して、この実施形態では、半田SPの乾燥を抑制しつつ半田SPを冷却しているため、熱源の存在に拘わらず半田SPの粘性変化を適切に抑えて、良好な印刷を実現することが可能となっている。
【0049】
また、この実施形態では、2個のマスク保持機構70が並べて配置されており、1台のエアコンディショナ60からの風によって2個のマスク保持機構70それぞれの壁板72が冷却可能となっている。このように、1台のエアコンディショナ60からの風によって2個のマスク保持機構70それぞれのマスクカバー71を冷却可能にした印刷装置100は、マスクカバー71の温度を調整するエアコンディショナーを2個のマスク保持機構70毎に設けた場合に比べて、エアコンディショナ60の台数を抑えることができる。そのため、エアコンディショナ60の設置面積やコストを抑えるのに有利となる。
【0050】
また、この実施形態では、2個のマスク保持機構70、70それぞれは、他方のマスク保持機構70の反対側を向いて開口する開口部70aを有するように構成した上でさらに、開口部70aを開閉する扉420が2個のマスク保持機構70それぞれに対して設けられている。このような構成では、マスク保持機構70のマスクMを交換する等の段取り作業を行なう場合は、扉420を開けることで、作業者が開口部70aを介してマスク保持機構70にアクセスして段取り作業を行える一方、基板Sへの半田印刷を行う場合は、扉420を閉じることで、外気温によらずハウジング400内部の温度を安定させることができるため、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷を効果的に実現することができる。
【0051】
また、この実施形態では、2個のマスク保持機構70、70それぞれは、他方のマスク保持機構70の側において閉塞している。このように構成することで、2個のマスク保持機構70、70の間で雰囲気を分離することができ、一方のマスク保持機構70の雰囲気温度が、他方のマスク保持機構70の雰囲気温度に影響することを抑えることができる。したがって、一方のマスク保持機構70に対して段取り作業を行いつつも、安定した雰囲気温度下で他方のマスク保持機構70による半田印刷を実行できる。よって、一方のマスク保持機構70への段取り作業のために、他方のマスク保持機構70による印刷を停止する必要が無く、基板Sへの半田印刷を効率的に行うことができる。
【0052】
第2実施形態
第2実施形態の印刷装置100は、2つのマスク保持機構70、70それぞれに1個ずつ設けられた温度センサSc、Sc(
図6)の検知結果に基づいてエアコンディショナ60を制御することで、マスクM表面の温度を調整する。なお、第2実施形態のその他の構成は上記実施形態と共通するため、以下では上記実施形態との差異点を中心に説明を行なう。ちなみに、第2実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0053】
図6は、
図1の印刷装置と当該装置の温度調整を行うエアコンディショナとで構成された印刷装置の温度調整システムが備える電気的構成を示すブロック図であり、第2実施形態での制御動作は
図6の電気的構成によって実行される。
図6に示すように、印刷装置100には、コントローラ500が設けられている。このコントローラ500には、CPU(Central Processing Unit)で構成されて印刷装置100各部の動作を統括的に制御する演算処理部510の他に、印刷動作を制御するための印刷プログラムを記憶するプログラム記憶部520が設けられている。そして、演算処理部510は、プログラム記憶部520に記憶された印刷プログラムに基づいて、印刷ユニット制御部530や基板搬送ユニット制御部540を制御して、基板Sへの半田印刷を実行する。
【0054】
印刷ユニット制御部530は、上述した印刷ユニット200の制御を司るものであり、具体的にはサーボモータ26、35等に適宜指令を出すことでマスクMの昇降動作やスキージ40の摺動動作を制御して印刷の実行等を行なう。一方、基板搬送ユニット制御部540は、上述した基板搬送ユニット300による基板搬送を制御する機能を司るものである。また、外部入出力部550は、コントローラ500と外部とのインターフェースとして機能する。
【0055】
そして、上述の扉開閉スイッチ440aや非常停止ボタン440bがオンとなった場合には、印刷装置100に設けられた非常停止回路部441が、外部入出力部550を介してコントローラ500の演算処理部510に印刷停止信号を出力するように構成されている。したがって、演算処理部510は、この印刷停止信号を受信すると、基板搬送ユニット制御部540および印刷ユニット制御部530を制御して、実行中の印刷を停止させる。
【0056】
一方、エアコンディショナ60内には、エアコンディショナ60の各部の動作を統括的に制御するエアコン制御部610と、エアコン制御部610とエアコンディショナ60外部とのインターフェースとして機能する外部入出力部620が設けられている。具体的には、エアコンディショナ60の外部入出力部620は、印刷装置100の外部入出力部550に接続されており、これら外部入出力部620、550を介してエアコンディショナ60と印刷装置100の間で情報のやり取りが行なわれる。例を挙げると、印刷装置100は、装置内部における印刷動作の実行状況や扉420の開閉状態等を示す情報をエアコンディショナ60に送る。一方、エアコンディショナ60は、温度調整の実行状況や当該温度調整でのエラーの発生等を示す情報を印刷装置100に送る。さらに、エアコンディショナ60の外部入出力部620は、印刷装置100内において2つのマスク保持機構70それぞれに設けられた温度センサSc、Scに接続されている。これら温度センサSc、Scのそれぞれは、対応するマスク保持機構70が支持するマスクMの表面温度を検出した結果を、外部入出力部620を介してエアコン制御部610へと出力する。そして、このエアコン制御部610が、温度センサSC、SCから入力されてきた検出結果に基づいて、エアコンディショナ60の動作を制御して、ハウジング400内の温度調節を行なう。
【0057】
図7は、第2実施形態で実行されるハウジング内の温度調整動作を示すフローチャートである。2つの印刷ユニット200、200の両方で基板Sへの半田印刷が実行されている間は、エアコン制御部610は、2つの温度センサSc、Scの検出結果の平均値に基づいて、エアコンディショナ60の動作を制御する(ステップS101)。これによって、2つの印刷ユニット200、200それぞれのマスク保持機構70、70において、マスクM上面の半田SPを冷却することができ、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷を実行できる。
【0058】
これに対して、2つの印刷ユニット200、200のうち、一方の印刷ユニット200での印刷が終了して(ステップS102)、作業者が段取り作業のために、印刷が終了した印刷ユニット200の扉420を開いた場合(ステップS103)には、ステップS104が実行される。このステップS104では、エアコン制御部610は、開いた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に設けられた温度センサScの検出結果を無視して、閉じた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に設けられた温度センサScの検出結果にのみ基づいてエアコンディショナ60の動作を制御する。
【0059】
つまり、開いた扉420側のマスク保持機構70の雰囲気温度は、印刷装置100外部からの空気の流入等により大きく変動する場合がある。このような場合、外気によって雰囲気温度の変化したマスク保持機構70の温度センサSCの検出結果をエアコンディショナ60の動作に反映させると、扉420が閉じられており印刷動作に供しているマスク保持機構70の雰囲気温度が不安定になってしまう。これを避けるために、ここでは、開いた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に設けられた温度センサScの検出結果を無視して温度調節が実行される。これによって、閉じた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70、70において、マスクM上面の半田SPを冷却することができ、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷を実行できる。そして、作業者による段取り(ステップS105)が終了して、開いていた扉420が閉じられると(ステップS106)、ステップS101による温度調整動作に戻る。
【0060】
以上に説明したように、この実施形態では、エアコンディショナ60による送風を制御して、マスクMの表面の温度を調整するエアコン制御部610が設けられている。このようにエアコンディショナ60による送風を制御するエアコン制御部610を具備することで、マスクM上面の温度、延いてはマスク上面の半田SPの温度を安定させることができ、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷を効果的に実現することができる。
【0061】
また、この実施形態では、2個のマスク保持機構70、70それぞれに対して設けられた温度センサSC、SCが設けられており、これら温度センサSC、SCの検出結果に基づいて、エアコンディショナ60による送風が制御されている。このように温度センサSC、SCの検出結果に基づいてエアコンディショナ60による送風を制御することで、マスクM上面の半田SPの温度をしっかりと安定させて、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷をより効果的に実現することができる。
【0062】
また、この実施形態では、扉420が開いているマスク保持機構70に設けられた温度センサSCの検知結果を無視しつつ、扉420が閉じているマスク保持機構70に設けられた温度センサSCの検知結果に基づいて、エアコンディショナ60による送風が制御されている。このような構成では、扉420が開いており印刷に用いられないマスク保持機構70の雰囲気温度の影響を排して、扉420が閉じており印刷に用いることができるマスク保持機構70の雰囲気温度を調整することができる。したがって、扉420が開いているマスク保持機構70の雰囲気温度が外気の影響で大きく変動しても、扉420が閉じているマスク保持機構70は、この温度変動に依らず安定した温度で印刷に供することができる。その結果、マスクM上面の半田SPの温度を安定させて、適切な粘性の半田SPによる良好な印刷を効果的に実現できる。
【0063】
第3実施形態
上記実施形態では、ハウジング400に設けられた3つの送風口50、50、50のうち真ん中の送風口50にエアコンディショナ60からのダクトが接続されていた。これに対して、第3実施形態では、3つの送風口50、50、50のうち両端の送風口50、50それぞれにエアコンディショナ60からのダクトが接続されている。なお、第3実施形態のその他の構成は上記実施形態と共通するため、以下では上記実施形態との差異点を中心に説明を行なう。ちなみに、第3実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0064】
図8は、第3実施形態にかかる印刷装置のハウジング内を冷却する構造を説明する説明図であり、X軸方向から見た印刷装置100にエアコンディショナが接続された様子が示されている。なお、同図では、印刷機構20等の一部の部材の記載は省略されている。同図に示すように、3つの送風口50、50、50のうち両端の送風口50、50それぞれにエアコンディショナ60からのダクトが取り付けられる一方、中央の送風口50は送風孔カバーにより閉じられている。こうして、エアコンディショナ60からの空気を送る送風口50、50が、マスク保持機構70、70毎に設けられている。そして、エアコンディショナ60から吹き出された空気が、ダクト61、61を通過した後に送風口50、50を介してハウジング400内に送られる。これによって
図8の矢印に示したような、送風口50、50それぞれから鉛直下方に向かうダウンフローの気流がハウジング400内に発生して、ハウジング400内が冷却される。
【0065】
特にこの実施形態では、送風口50、50それぞれの直下には、マスクカバー71、71の天板73、73が配置されている。したがって、これら天板73、73は、送風口50、50からの風を直接受けて冷却される。その結果、天板73、73との間に熱伝導性を有するマスク保持フレーム21、21が冷却されて、延いてはマスク保持フレーム21、21のマスクM、M上面の半田も冷却される。また、この実施形態においても、送風口50、50からマスク保持フレーム21、21へ向かう風を遮るようにして、マスクカバー71が設けられており、マスクM、M上面の半田の乾燥が抑制されている。
【0066】
以上に説明したように、この実施形態においても、送風口50からの風によって印刷装置100のハウジング400内部が冷却され、その結果、ハウジング400内部においてマスク保持フレーム21に支持されるマスクM表面の半田SPの温度を低く維持することが可能となっている。しかも、送風口50からマスクMへ向かう気流を遮るマスクカバー71が設けられており、マスクM表面の半田SPに送風口50からの風が当たらないようにして、送風口50からの風による半田SPの乾燥が抑制されている。このようにして、半田SPの乾燥を抑制しつつ半田SPを冷却しており、その結果、半田SPの粘性変化を適切に抑えて、良好な印刷を実現することが可能になっている。
【0067】
さらに、この実施形態では、マスクカバー71は、マスク保持フレーム21の間に熱伝導性を有しており、送風口50から送られてマスクカバー71の天板73に当たる風によって、マスクカバー71が冷却されることで、マスクカバー71との間に熱伝導性を持つマスク保持フレーム21によって支持されたマスクMの表面が冷却されるように構成されている。このように、送風口50からの風を遮るマスクカバー71に、マスク保持フレーム21との間の熱伝導性を持たせた構成では、送風口50からの風によってマスクカバー71が冷却されると、マスク保持フレーム21に支持されたマスクMの表面も冷却されることとなり、その結果、マスクM表面の半田SPを効率的に冷却することができる。したがって、半田SPへ送風口50からの風が当たらないようにして半田SPの乾燥を抑制しつつも半田SPを確実に冷却することができ、半田SPの粘性変化を適切に抑えて良好な印刷を実現するといった効果をより効果的に奏することができる。
【0068】
また、この実施形態では、エアコンディショナ60からの風を送る送風口50、50は、2個のマスク保持機構70、70のそれぞれに対して設けられており、マスクカバー71、71は、それが属するマスク保持機構70、70に対して設けられた送風口50、50からの風によって冷却されるように構成されている。このような構成は、マスク保持機構70、70にこれに対して設けられた送風口50、50を近接して配置できる等のレイアウトの自由度が向上するといった利点がある。
【0069】
第4実施形態
第4実施形態の印刷装置100は、第3実施形態のそれと同様に、エアコンディショナ60からの風を送る送風口50、50を、2個のマスク保持機構70、70のそれぞれに対して設けた構成を具備する。ただし、第4実施形態では、送風口50、50それぞれとエアコンディショナ60とを接続するダクトの途中に弁が設けられており、この弁を温度センサSc、Scの検出結果に基づいて制御する点で上記実施形態と異なる。なお、第4実施形態のその他の構成は上記実施形態と共通するため、以下では上記実施形態との差異点を中心に説明を行なう。ちなみに、第4実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0070】
図9は、第4実施形態にかかる印刷装置のハウジング内を冷却する構造を説明する説明図であり、X軸方向から見た印刷装置100にエアコンディショナが接続された様子が示されている。なお、同図では、印刷機構20等の一部の部材の記載は省略されている。同図に示すように、一端が送風口50、50に接続されたダクト61、61それぞれの他端には、弁62、62が取り付けられている。そして、これらのダクト61、61は弁62、62を介して、エアコンディショナ60から延びるダクト63に接続されている。したがって、弁62、62を適宜開閉することで、対応する送風口50、50へのエアコンディショナ60からの送風を停止することができる。そして、第4実施形態では、
図9に示すような構成に対して、次のような温度調整動作が実行される。
【0071】
図10は、第4実施形態で実行されるハウジング内の温度調整動作を示すフローチャートである。2つの印刷ユニット200、200の両方で基板Sへの半田印刷が実行されている間は、エアコン制御部は、2つの温度センサSc、Scの検出結果の平均値に基づいて、エアコンディショナ60の動作を制御する(ステップS201)。なお、ステップS201では、弁62、62は両方とも開かれており、印刷ユニット200、200それぞれに対して、エアコンディショナ60からの風が送られている。
【0072】
これに対して、2つの印刷ユニット200、200のうち、一方の印刷ユニット200での印刷が終了して(ステップS202)、作業者が段取り作業のために、印刷が終了した印刷ユニット200の扉420を開いた場合(ステップS203)には、ステップS204が実行される。つまり、エアコン制御部610は、開いた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に設けられた温度センサScの検出結果を無視して、閉じた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に設けられた温度センサScの検出結果にのみ基づいてエアコンディショナ60の動作を制御する。
【0073】
さらに、第4実施形態のエアコン制御部610は、開いた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に送風する送風口50に接続された弁62を閉じて、当該送風口50への送風を停止する(ステップS205)。そして、作業者による段取り(ステップS206)が終了して、開いていた扉420が閉じられると(ステップS207)、ステップS101による温度調整動作に戻る。
【0074】
以上に説明したように、この実施形態では、扉420が開いた場合は、扉420が開いているマスク保持機構70に対して設けられた送風口50からの送風を停止するように構成されている。このような構成では、扉420が開いており印刷に用いられないマスク保持機構70に対する無駄な送風を停止して、省エネルギー化を図ることができるため好適である。
【0075】
第5実施形態
第5実施形態の印刷装置100は、第3実施形態のそれと同様に、エアコンディショナ60からの風を送る送風口50、50を、2個のマスク保持機構70、70のそれぞれに対して設けた構成を具備する。ただし、第5実施形態では、エアコンディショナ60の詳細構成において上記実施形態と異なる。なお、第5実施形態のその他の構成は上記実施形態と共通するため、以下では上記実施形態との差異点を中心に説明を行なう。ちなみに、第5実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0076】
図11は、第5実施形態にかかるエアコンディショナの構成を示すブロック図である。このエアコンディショナ60は、空気を冷却機構64によって所定の冷却温度(例えば18℃)に冷やした後に、ヒータ65で加熱して所定の調整温度(例えば20℃)に調整するものである。また、
図11に示すように、同一の冷却機構64からは2つの通風路66、66が延設されており、通風路66、66それぞれの途中にヒータ65、65が設けられている。そして、これら通風路66、66それぞれが、
図8に示したダクト61、61に接続される。したがって、一方のヒータ65で温度調整された空気が一方のマスク保持機構70に対して送風され、他方のヒータ65で温度調整された空気が他方のマスク保持機構70に対して送風される。そして、第5実施形態では、
図11に示したエアコンディショナ60を用いて、次のような温度調整動作が実行される。
【0077】
図12は、第5実施形態で実行されるハウジング内の温度調整動作を示すフローチャートである。2つの印刷ユニット200、200の両方で基板Sへの半田印刷が実行されている間は、エアコン制御部610は、2つの温度センサSc、Scの検出結果の平均値に基づいて、エアコンディショナ60の動作を制御する(ステップS301)。
【0078】
また、ステップS301では、ヒータ65、65は両方とも動作しており、印刷ユニット200、200それぞれに対して、温度調整された風が送られている。ただし、ヒータ65、65が発生する熱量は、独立して制御されている。つまり、一方のヒータ65の発熱量は、一方のヒータ65が送風するマスク保持機構70に設けられた温度センサSCの検知結果に基づいて制御される。また、他方のヒータ65の発熱量は、他方のヒータ65が送風するマスク保持機構70に設けられた温度センサSCの検知結果に基づいて制御される。
【0079】
これに対して、2つの印刷ユニット200、200のうち、一方の印刷ユニット200での印刷が終了して(ステップS302)、作業者が段取り作業のために、印刷が終了した印刷ユニット200の扉420を開いた場合(ステップS303)には、ステップS304が実行される。つまり、ステップS304では、エアコン制御部610は、開いた扉420側の印刷ユニット200のマスク保持機構70に対応するヒータ65の発熱を停止させて、省エネルギーモードでエアコンディショナ60を動作させる。そして、作業者による段取り(ステップS305)が終了して、開いていた扉420が閉じられると(ステップS306)、ステップS301による温度調整動作に戻る。
【0080】
以上に説明したように、第5実施形態では、エアコンディショナ60は、空気を冷却する冷却機構64を有するとともに、冷却機構64が冷却した空気の温度を調整するヒータ65、65を送風口50、50毎に有している。そして、ヒータ65、65で温度調整された空気が送風口50、50からハウジング400内部に送られる。その上で、扉420が開いた場合は、扉420が開いているマスク保持機構70に対して設けられた送風口50が送る風の温度を調整するヒータ65が停止される。このような構成は、扉420が開いており印刷に用いられないマスク保持機構70に対する風の温度をヒータ65、65で無駄に調整することがなく、省エネルギー化を図ることができるため好適である。
【0081】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、2つの印刷ユニット200を具備する印刷装置100に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、単一の印刷ユニット200を具備する印刷装置100に対して本発明を適用することもできる。
【0082】
また、上記実施形態では、マスク保持フレーム21とマスクカバー71は相互間に熱伝導性を有しており、マスクカバー71を冷却することで、マスク保持フレーム21を冷却できるように構成されていた。しかしながら、マスク保持フレーム21とマスクカバー71の間に熱伝導性がなく、マスクカバー71を冷却してもマスク保持フレーム21が冷却されないように構成しても構わない。この場合であっても、印刷装置100のハウジング400内部は、送風口50からの風によって冷却されるため、ハウジング400内部においてマスク保持フレーム21に支持されるマスクM表面の半田SPの温度を低く維持することができる。しかも、送風口50からマスクMへ向かう気流を遮るマスクカバー71が設けられているため、この送風冷却による半田SPの乾燥も抑制されている。したがって、半田SPの乾燥を抑制しつつ半田SPを冷却することで、半田SPの粘性変化を適切に抑えて、良好な印刷を実現することが可能となっている。
【0083】
また、マスクカバー71の具体的構成や材質についても、上記のものから種々の変形を行うことができる。要するに、送風口50からの風を遮ることができるものであれば良い。
【0084】
また、上記実施形態では、マスクM上面の温度を温度センサSC、SCで検出していた。しかしながら、温度センサSC、SCが温度を検出する箇所は、マスクMの上面に限られず、マスクM上面の半田SPの温度を測定しても良い。
【0085】
また、第5実施形態では、省エネルギーモードにおいてヒータ65の発熱を停止していた。この際、省エネルギーモードにおいて、扉420が開いているマスク保持機構70に対して設けられた送風口50への送風を停止しても良い。