【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘進機の側断面図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3はセグメントピースの説明図、
図4はシールドジャッキの油圧回路図、
図5はセグメント組立の工程図、
図6はセグメント組立の工程図、
図7は同時施工のフローチャート、
図8は同時施工のフローチャート、
図9はモニタの説明図で、同図(a)は目標着力点と制御着力点を示すモニタ、同図(b)はシールドジャッキの状態を示すモニタである。
【0020】
図1及び
図2に示すように、泥土圧式シールド掘進機10のシールド本体11は、ほぼ同径の円筒形状をなす前胴12と後胴13とが図示しない連結軸によって左右に屈曲自在に連結され、両者の間に架設された複数本の中折れジャッキ15によって屈曲可能となっている。この前胴12の前部には回転リング16が回転自在に支持され、この回転リング16には連結ビーム17を介してカッタヘッド18が連結されている。
【0021】
このカッタヘッド18は、中心部から複数本のカッタスポーク19が放射状をなして配設され、各先端部が外周リング20によって連結されて構成されている。そして、カッタヘッド18の中心部にはフィッシュテールカッタ21が装着される一方、各カッタスポーク19の両側部には複数のカッタビット22がその長手方向に沿って装着され、所定のカッタスポーク19の先端部には余掘りを行うコピーカッタ23が出没自在に設けられている。
【0022】
また、回転リング16の後部にはリングギア24が固定される一方、シールド本体11の前胴12には複数のカッタ旋回モータ25が装着されており、この各カッタ旋回モータ25の駆動ギア26がこのリングギア24にそれぞれ噛み合っている。従って、カッタ旋回モータ25を駆動して駆動ギア26を回転駆動すると、リングギア24、回転リング16、連結ビーム17を介してカッタヘッド18を回転することができる。
【0023】
また、前胴12の前部には、カッタヘッド18の後方に位置してバルクヘッド27が設けられ、カッタヘッド18とこのバルクヘッド27との間に掘削土砂を充満させるチャンバ28が形成されている。バルクヘッド27の前面側には複数本の固定式攪拌棒29が突設される一方、カッタヘッド18の後面側には複数本の旋回式攪拌棒30が突設されている。固定式攪拌棒29の一部にチャンバ28内の掘削土砂に対して加泥材を注入する図示しない加泥材注入口が設けられると共に、薬液(固結材)を注入する図示しない薬液注入管が設けられている。そして、シールド本体11内には、掘削土砂を外部に搬出するためのスクリューコンベヤ33が配設されており、前部が下方に傾斜してバルクヘッド27を貫通してチャンバ28内に開口している。
【0024】
シールド本体11の後胴13には、その内周面に沿ってリング
ガータ34が固定されており、このリングガータ34には複数本のシールドジャッキ(推進ジャッキ)35がシールド本体11の周方向に沿って装着されており、このシールドジャッキ35を後方に伸長してスプレッダ36を既設セグメントSに押し付けることで、その反力によりシールド本体11が前進することができる。また、後胴13の後部内周面はテールシール31を介して既設セグメントSの外周面に嵌合している。
【0025】
このセグメントSは、
図3に示すように、複数個(図示例では6個)のセグメントピースA1,A2,A3,B1,B2,Kがトンネルの内壁面(地山Gの周壁)に沿ってリング状に組み付けられるものであり、これがトンネルの長手方向へ連続して組み付けられることでトンネルが覆工されるのである。
【0026】
また、リングガータ34には旋回リング38がトンネル内壁面の周方向に沿って旋回自在に支持され、リングガータ34に固設された複数の駆動モータ37により駆動旋回可能となっており、この旋回リング38にセグメントSを組み立てるエレクタ39が設けられている。エレクタ39のグリッパ39aはトンネルの径方向に加えて長手方向にも移動可能になっている。
【0027】
さらに、リングガータ34には左右一対の支柱40が固定され、この支柱40からは後方に向かってほぼ水平な架台41が延設されており、この架台41にはセグメントSの組立てを補助する図示しない形状保持装置がシールド本体11の前後方向に移動自在に装着されている。
【0028】
従って、例えば通常の地山等のトンネル施工下にあっては、カッタヘッドを所定方向へ回転させた状態でシールド本体11がシールドジャッキ35により既設セグメントSに掘進反力をとって掘進(推進)することにより、断面が略円形のトンネルが掘削される。掘削されてチャンバ28内に取り込まれた掘削土砂は、スクリューコンベヤ33により外部に搬出される。
【0029】
そして、本実施例では、シールド掘進機10をその円周方向に設けた多数(図示例では24本)のシールドジャッキ35で掘進させながら、同時にその後方でセグメントSを組み立てる、所謂シールド掘進組立同時施工が実施されるようになっている。
【0030】
そのために、シールド掘進機10のテールシール31の前端部とシールドジャッキ35の最縮退位置との間のシールド掘進機10のセグメント組立部の長さ2Lをセグメント幅Lの2倍以上(図示例では2倍)とし(
図1及び
図5参照)、シールド掘進機10の掘進中(推進中)に1リングのセグメント組立が完了し得るようになっている。
【0031】
また、シールドジャッキ35の各ストロークに少なくとも2種類以上の長さを持たせ、最小ストロークを「セグメント幅+Kセグメント挿入代+組立余裕代」以上、最大ストロークを「セグメント幅×2倍+組立余裕代」以下に設定して、上述したようにシールド掘進機10の掘進中(推進中)に1リングのセグメント組立が完了し得るようになっている。
【0032】
図5及び
図6に示す例では、セグメント挿入代を500mmとして、シールドジャッキ35の最小ストロークを1750mmに、最大ストロークを2200mmに設定している。
【0033】
即ち、セグメント組立部の長さ2Lをセグメント幅Lの2倍(2400mm)とした状態から掘進を開始し、シールドジャッキ35のストロークが1300mmになってからセグメントSの組立てを開始する(工程(a)及び工程(b)参照)。
【0034】
ここで、1ピースを組み立てるのに、1ピース組立時間を5分、掘進速度を30mm/minとすると150mm推進するので、A1セグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが1450mmとなり(工程(c)参照)、次いでA2セグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが1600mmとなり(工程(d)参照)、A3セグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが1750mmとなる(工程(e)参照)。
【0035】
そして、B1セグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが1900mmとなり(工程(f)参照)、次いでB2セグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが2050mmとなる(工程(g)参照)。最後に、Kセグメントピースの組立てが終了する時はシールドジャッキ35のストロークが2200mmとなる(工程(h)参照)。尚、1リングの組立終了後、シールド本体11は300mm推進される。
【0036】
従って、本実施例では、
図1に示すように、セグメントSの組立前半に作動する下側のシールドジャッキ35は、前記最小ストロークに対応して短いストローク(短尺)のものが装備され、セグメントSの組立後半に作動する上側のシールドジャッキ35は、前記最大ストロークに対応して長いストローク(長尺)のものが装備されている。
【0037】
そして、
図4に示すように、前記各シールドジャッキ35は、1本或いは2本以上(図示例では3本)のグループに分けて油圧制御してそれぞれの推進力の合力点である目標着力点(制御着力点)の位置を任意に制御可能とし、かつシールド掘進機10の掘進中に各シールドジャッキ35を伸縮させる別の油圧回路を設けている。
【0038】
即ち、推進用パワーユニット51からの圧油が、電磁比例減圧弁52と電磁制御パイロット操作弁(電磁方向制御弁)からなる推進伸縮弁53を介して、各シールドジャッキ35に対し給排される第1の油圧回路50Aと、セグメント組用パワーユニット54からの圧油が、電磁操作弁(電磁方向制御弁)からなるセグメント組伸縮弁55を介して、各シールドジャッキ35に対し給排される第2の油圧回路50Bとを有しているのである。
【0039】
尚、
図4中56は圧力発信器、57及び58はオンロード弁、59はパイロット圧ラインである。
【0040】
次に、シールド掘進組立同時施工の動作(施工手順)を
図7及び
図8のフローチャートに沿って説明する。
【0041】
先ず、ステップP1で掘進が開始される。この際の各シールドジャッキ35の圧力制御は、シールド掘進機10の方向を決定する「回転モーメントの着力点」(目標着力点)の座標を設定することにより行う。この「目標着力点」は、操作者によりタッチパネルで入力され、
図9の(a)に示すように、制御着力点と共にモニタに表示される。尚、「目標着力点」が実現できない時は、最も近い点を実現するように制御する。
【0042】
次に、ステップP2で全てのシールドジャッキ35を推進させてシールド掘進機10の推進方向制御を行った後、シールドジャッキ最縮退位置と既設セグメント間に、セグメント組立が可能なスペースができ次第、ステップP3でA1セグメント(ピース)の組立制御が実施される。
【0043】
即ち、ステップP4でA1セグメント(ピース)組立位置のシールドジャッキ35が、下側に近い番号から1本ずつ例えば5秒間隔で順次停止された後、ステップP5で停止後のシールドジャッキ35が縮められるのである。この際、
図9の(b)に示すように、A1セグメント(ピース)組立位置のシールドジャッキ35(図示例ではSJ9〜SJ14)は、停止縮み中はモニタ上で点滅し、縮み終了で点灯するようになっている。尚、
図9の(b)中SJ1〜SJ24はNO1〜NO24のシールドジャッキ35を示す。また、組立位置以外のシールドジャッキ35(図示例ではSJ1〜SJ8、SJ15〜SJ24)は、同じ「目標着力点」となる圧力分布が得られるように、シールドジャッキ35を1本停止する毎に圧力傾斜を計算して圧力制御を継続的に行う。また、順次停止する毎にシールド掘進機10の推進速度が変化するため、推進用パワーユニット51の油圧ポンプ吐出流量を減少させ速度を一定に保つようにする。
【0044】
次に、ステップP6でA1セグメント(ピース)を機内操作で組み立てた後、ステップP7で組立位置のシールドジャッキ35を伸長させ全部A1セグメント(ピース)に当てる。このステップP6及びステップP7において、組立位置以外のシールドジャッキ35(図示例ではSJ1〜SJ8、SJ15〜SJ24)の圧力制御が継続される。
【0045】
次に、ステップP8でA2セグメント(ピース)の組立制御が実施される。
即ち、ステップP9でA1セグメント(ピース)位置のシールドジャッキ「停止」を解除して例えば10秒間全数推進させた後、ステップP10でA2セグメント(ピース)組立位置のシールドジャッキ35が、下側に近い番号から1本ずつ例えば5秒間隔で順次停止されるのである。
【0046】
次に、ステップP11〜ステップP13で、前述したステップP5〜ステップP7と同様の手順でA2セグメント(ピース)が組み立てられる。
【0047】
次に、ステップP14でA3セグメント(ピース)→B1セグメント(ピース)→B2セグメント(ピース)→Kセグメント(ピース)と順次組み立てられ、ステップP15で1リング分のセグメントSが組み立てられたら、ステップP16で組立終了となり、以後掘進が継続される。
【0048】
このようにして本実施例によれば、セグメント組立部の長さ2Lをセグメント幅の2倍以上とすると共にシールドジャッキ35の最大ストロークを「セグメント幅×2倍+組立余裕代」以下に設定し、セグメント組立が可能なスペースができ次第セグメント組立を開始してシールド掘進機10の掘進中に1リングのセグメント組立を完了させるようにしたので、連続した同時施工を可能にして施工期間の短縮が図れる。尚、掘進中に1リングのセグメント組立が完了しない場合は、掘進を停止して組立を続行し、1リングの組立を行う。
【0049】
加えて、シールドジャッキ35の各ストロークに2種類の長さを持たせ、必要なストロークに応じた2種類のシールドジャッキ35の使用を可能にしたので、シールドジャッキ35に掛かる費用の削減が図れる。
【0050】
また、全てのシールドジャッキ35でシールド掘進機10を掘進させてセグメント組立が可能なスペースが確保された後、セグメントSの1ピースを組み立てる位置のシールドジャッキ35を1本ずつ順番に停止させ、当該シールドジャッキ35をその都度減圧することなく、その後に当該シールドジャッキ35を順次縮めてセグメント組立を開始するようにしたので、一部の推進ジャッキを減圧して引き戻す「推進ジャッキ一部引き戻し工程」を実施する特許文献2のように、シールドジャッキ35の能動的な油圧制御を行う必要がないので、制御を簡略化でき、信頼性を高められる。
【0051】
また、セグメントSの組立において、ボルト締結を不要とした軸方向挿入セグメントを用いることで、セグメントSの1ピースを組み立てるのに要する時間が短縮され、シールド掘進機10の掘進中に1リングのセグメント組立をより確実に完了させることができ、連続した同時施工を可能にして施工期間の短縮が図れる。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、推進ジャッキ本数変更、セグメントピースの数変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。