特許第5854870号(P5854870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854870
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】注水式電動工具
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/05 20060101AFI20160120BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20160120BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   B24B55/05
   B25F5/02
   B24B23/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-27449(P2012-27449)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-163242(P2013-163242A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−011513(JP,A)
【文献】 米国特許第05445558(US,A)
【文献】 特開平09−001451(JP,A)
【文献】 米国特許第04102084(US,A)
【文献】 米国特許第06181032(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/05
B24B 23/02
B25F 5/02
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取付けるスピンドルが水路を有していると共に、当該水路に送水する配水管が本体外において延設されており、当該スピンドルから注水可能な注水式電動工具において、
前記本体から下方に、前後下部を有する状態でループ状に突出するループハンドルを備えており、
前記ループハンドルは、半割のハンドルハウジングを有しており、
前記配水管は、前記本体外における延設部分の全体が各前記ハンドルハウジング内に配置されており、
前記工具を覆う集塵カバーの取付部が、前記ハンドルハウジングに設けられている
ことを特徴とする注水式電動工具。
【請求項2】
前記配水管は、前記ループハンドルの前部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の注水式電動工具。
【請求項3】
各前記ハンドルハウジングの合わせ面に、組合せるとカバー取付孔となる半孔が形成されており、
当該カバー取付孔に挿入可能な突起が、前記集塵カバーに設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の注水式電動工具。
【請求項4】
前記突起が、互いに交差する方向において複数設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の注水式電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注水式グラインダや注水式サンダ等の注水式電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されるように、加工作業部位に水を供給する注水経路が設けられている注水式の電動ポリッシャーが知られている。即ち、このポリッシャーは、研磨パッドの装着部を有するスピンドルの軸線方向に延在する本体に沿った注水路と、当該注水路に連通するホースから成る注水経路を備えており、研磨パッドの装着部に注水することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−169580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の注水式ポリッシャーでは、パッドやその装着部が顕わになっているため、使用時に発生する塵が周囲に放散してしまう。
ここで、パッド装着部の周りに集塵カバーを設置することが考えられる。
しかし、パッド装着部の周りに配置するためには集塵カバーの取付部を本体に対して設ける必要があり、ホースを避けるような取付部や集塵カバーの設計に苦労するし、設計できたとしても集塵カバーの着脱が行い難くなる。
そこで、本発明は、取付がし易い集塵カバーを具備可能であり、塵や水の飛散を防止可能である注水式電動工具を提供することを主な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工具を取付けるスピンドルが水路を有していると共に、当該水路に送水する配水管が本体外において延設されており、当該スピンドルから注水可能な注水式電動工具において、前記本体から下方に、前後下部を有する状態でループ状に突出するループハンドルを備えており、前記ループハンドルは、半割のハンドルハウジングを有しており、前記配水管は、前記本体外における延設部分の全体が各前記ハンドルハウジング内に配置されており、前記工具を覆う集塵カバーの取付部が、前記ハンドルハウジングに設けられていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記配水管は、前記ループハンドルの前部に配置されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、各前記ハンドルハウジングの合わせ面に、組合せるとカバー取付孔となる半孔が形成されており、当該カバー取付孔に挿入可能な突起が、前記集塵カバーに設けられていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記突起が、互いに交差する方向において複数設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載の発明によれば、集塵カバーの取付部が、電動工具の本体ではなく前記配水管又はそのハウジングに設けられ、配水管の本体外延設部分の全体がハンドルハウジング内に配置されているため、配水管を保護可能であるし、当該取付部を設け易いし、塵や水の飛散を防止する集塵カバーを着脱容易にすることができる。
又、請求項2に記載の発明によれば、配水管がループハンドルの前部に配置されるため、上記効果に加え、電気部品を保護することができ、又配水管の通らないハンドル後半部を確保してハンドルの操作性を向上することができ、更に一層集塵カバーの取付部を設け易くすることができる。
更に、請求項3に記載の発明によれば、半孔を合わせて成るカバー取付孔に挿入可能な突起が集塵カバーに設けられているので、上記効果に加え、更に取付部が設置容易とし、又より簡単確実な着脱を提供することができる。
加えて、請求項4に記載の発明によれば、突起が互いに交差する方向において複数設けられているので、上記効果に加え、集塵カバーをより確実に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る注水式グラインダの工具取付状態に係る全体斜視図である。
図2図1の工具取外し状態に係る前面図である。
図3図2のA−A線断面を含む側面図である。
図4図1におけるハンドルハウジングの(a)右側のものの前面図,(b)上面図,(c)左面図,(d)左側のものの前面図である。
図5図1における集塵カバーの(a)後面図,(b)下面図,(c)一部側面図,(d)(a)のC−C線断面図,(e)斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は注水式電動工具の一例である注水式グラインダ1の工具取付状態に係る全体斜視図であり、図2は注水式グラインダ1の工具取外し状態に係る前面図であり、図3図2のA−A線断面を含む側面図である。
注水式グラインダ1は、前後方向に沿う本体2と、その下側に形成されたループハンドル4と、本体2の側部から側方に突出するグリップ5を備えている。
ループハンドル4は、本体2の後方下部から下方へ突出させたハンドル後半部6と、ハンドル後半部6の下部から本体2の前部にかけて渡された側面視L字状のハンドル前半部8を有している。
ループハンドル4は、ハンドル後半部6を後部とし、ハンドル前半部8の前辺を前部とし、その下辺を下部とした状態で、本体2下側からループ状に突出している。
【0009】
本体2やループハンドル4のハウジングは、次の通りに分かれている。
即ち、本体2とハンドル後半部6は、中間ハウジング11と後部ハウジング12で覆われる。
中間ハウジング11の前側には、これより細径の筒状部分を有する前部ハウジング13が接続され、その前部外側及びハンドル前半部8は、図4に示す左右のハンドルハウジング14,15で挟んで覆われる。
ハンドルハウジング14,15は、互いにほぼ対称の形状を呈している半割のものとなっている。
ハンドルハウジング15は、前部ハウジング13を受け入れる半円筒状の上側受け部16を、上端縁において有すると共に、ハンドル後半部6(中間ハウジング11及び後部ハウジング12)の下端縁を受け入れる下側受け部17を、下後端縁において有している。
【0010】
本体2の内部には、図示しないモータが組み込まれており、その回転軸と接続されたスピンドル20が、ベアリング21を介して本体2の前部内に取付けられている。ベアリング21は、前部ハウジング13内に設置される。
上記モータは、コード22からの給電により駆動し、そのスイッチ23がハンドル後半部6において露出して設けられる。
又、スピンドル20には、工具(例えば研磨パッド27)が取付けられ、スピンドル20の前部には、水路24が内設されている。水路24は、スピンドル20の中間に位置する放射方向の導入路25と、これに連通しこれより前側に位置する軸方向の案内路26を含む。
スピンドル20の案内路26は、散水用のピン28を固定するための穴でもあり、ピン28の内部にも、ピン水路29が設けられている。
又、スピンドル20の導入路25の周囲に接触する孔付きの周囲部材30が設けられると共に、当該孔に連通する孔32が、前部ハウジング13の下部において、ハンドルハウジング14,15に覆われた状態で設けられる。
【0011】
加えて、ハンドル前半部8の内部には、水路24に水を供給する配水管40が配置されている。配水管40の上端には、孔32に接続されるコネクタ42が設けられており、配水管40の下端には、流量を調節するバルブ44に対するコネクタ46が設けられている。
又、バルブ44の反対側(下側)には、水を通すホース(図示せず)の接続部48が接続されている。接続部48の下部は、ハンドル前半部8の角部下側から露出している。
【0012】
そして、スピンドル20の周囲に配置可能な集塵カバー50が、配水管40を収めるハンドル前半部8に取付けられている。
集塵カバー50は、図5に示すように、半分に縦割りした平底の碗形状の底中央に対し、より小径の半円板を延設して、小径の円孔51を半円板と同心で開け、更に円孔51の上半ないしその下方を囲むリブ52を立設した形状を呈している。尚、リブ52内方は外方より上げ底となっている。又、集塵カバー50の碗形状内部(前面)にも、リブ53,53・・が、放射状に複数配置されている。
円孔51は、ハンドルハウジング14,15の上側受け部16,16の外径と同様の径を有している。
又、円孔51の下方であってリブ52の内方には、茸状の突起54が後方へ突設されており、円孔51の上側であってリブ52の下面には、茸状の突起56が下方へ突設されている。
【0013】
更に、ハンドル前半部8の前辺中央上部には、突起54に対応するカバー取付孔60が開けられており、ハンドル前半部8の上端には、突起56に対応するカバー取付孔62が開けられている。
カバー取付孔60は、ハンドルハウジング14,15の前壁(における合わせ面)に設けられた半孔64,64がハンドルハウジング14,15の組付けにより合わせられて形成され、カバー取付孔62は、ハンドルハウジング14,15の上壁に設けられた半孔66,66が合わせられて形成される。
【0014】
このような注水式グラインダ1は、例えば次のように動作する。
即ち、コード22を電源に接続してループハンドル4のスイッチ23を入れると、スピンドル20が回転し、これに取付けられた研磨パッド27が回転して、適宜グリップ5も握りながら研磨パッド27をワークに当てることで研磨を施すことができる。
又、接続部48に水源からのホースを接続し、バルブ44をレバー操作により開くと、ループハンドル4内の配水管40やコネクタ42ないし前部ハウジング13下部の孔32や周囲部材30を通じて、スピンドル20の水路24に水が供給され、ピン水路29を介して研磨パッド27やその研磨面に注水される。
【0015】
更に、研磨パッド27取付前において、集塵カバー50をループハンドル4に取付けることができる。即ち、ハンドルハウジング14,15の上側受け部16,16に対して集塵カバー50の円孔51を嵌めてリブ52の内側を上側受け部16,16外面に沿わせ、更にハンドル前半部8の上側のカバー取付孔62に対し集塵カバー50の突起56を下方へ挿入すると共に、ハンドル前半部8の前辺のカバー取付孔60に対し集塵カバー50の突起54を後方へ入れ込む。
集塵カバー50を取付けると、研磨パッド27の下半分の周囲が覆われるため、ユーザ側に向かおうとする塵や水を跳ね返してこれらを集塵カバー50内に集め、塵や水がユーザ側に飛散する事態を防止することができる。又、集塵カバー50が半碗状で研磨パッド27の上半分を覆わないため、塵や水のユーザ側へ飛散を防止しながら、集塵カバー50をコンパクトにすることができるし、研磨状態等工具やワークの様子を視認することができる。
【0016】
そして、集塵カバー50が配水管40を収めるハンドル前半部8に対し取付けられるため、吸排気口やグリップ5等の設けられる本体2に取付ける場合に比べ、それらを避けることを要しない分集塵カバー50の取付部を設置し易い。又、注水元のスピンドル20に水を供給するため、スピンドル20の近くに配水管40が配置されることから、スピンドル20ないし研磨パッド27を覆う集塵カバー50を着脱し易く構成できる。
又、ハンドル前半部8がループハンドル4の一部となっているため、配水管40を含むハンドル前半部8につきスイッチ23を含むハンドル後半部6と独立させることができ、電気部品のない(少ない)箇所にて送水して万一の水漏れに対処することができるし、スイッチ23等の操作やハンドル後半部6の握りを行い易くすることができるし、集塵カバー50をより着脱し易くすることができる。
更に、配水管40を覆うハンドルハウジング14,15が設けられるため、配水管40を保護すると共に、集塵カバー50の取付部をより設置し易くし、又集塵カバー50を一層着脱容易にすることができる。
【0017】
加えて、集塵カバー50に突起54,56を設けると共に配水管40側にカバー取付孔60,62を設け、突起54,56をカバー取付孔60,62に入れることで集塵カバー50を装着するので、取付機構をシンプルで設け易いものとしながら、簡単確実に取付可能にすることができ、カバー取付孔60,62はハンドルハウジング14,15の各半孔64,66が合わさって成るため、更に取付機構が設置容易で簡単確実な着脱を提供することができる。
又、突起54,56が複数有り、それらは互いに交差する方向を向いているため、集塵カバー50が装着時に様々な方向から外力を受けても、少なくとも何れかの突起で抗することができ、より確実な取付を提供することができる。
【0018】
なお、本発明は、上記形態に限定されるものではない。例えば、上記形態は、次のようにそれぞれ変更することができる。ハンドルハウジングを設けず配水管を露出させ、あるいはループハンドルの前辺・下辺・後辺のそれぞれについて別のハウジングとしたり、あるいは共通のハウジングとしたり、中間ハウジングと後部ハウジングを共通化したり、これらを半割のものとしたりする等、ハウジングの構成を適宜変更する。ループハンドルの形態につき、オーバル状としたり、曲線を含んで構成したものとしたりする。集塵カバーの形態につき、碗状としたり、各種リブや突起を省略しあるいは増減したりする等、適宜変更する。又、電池駆動のものや、注水式サンダ等、他の種類の注水式電動工具に適用する。
【符号の説明】
【0019】
1・・注水式グラインダ、4・・ループハンドル、6・・ハンドル後半部、8・・ハンドル前半部、14,15・・ハンドルハウジング、16・・上側受け部、27・・研磨パッド(工具)、40・・配水管、50・・集塵カバー、51・・円孔、54,56・・突起、60,62・・カバー取付孔(集塵カバーの取付部)、64,66・・半孔。
図1
図2
図3
図4
図5