(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合、車体の一対のモヒカン溝と一対の塗布ヘッドとの車幅方向位置を一致させるためには、車体と一対の塗布ヘッドとの車幅方向中央同士を正確に一致させる必要がある。しかし、車体のような大型部品はパレット上に正確に載置することが現実的には不可能であるため、搬送される車体ごとに車幅方向中央位置はばらつく。また、車種の異なる複数の車体が順次搬送される混流ラインの場合、車種が変わると一対のモヒカン溝の車幅方向間隔が変化するため、上記特許文献1の方法では対応できない。
【0006】
例えば、搬送される車体ごとにモヒカン溝の位置をセンサで検知し、この位置に塗布ヘッドを位置決めすることも考えられる。しかし、上記のように、モヒカン溝の車幅方向位置は、車体の車種と載置精度に起因して大きくばらつくため、検出範囲の広いセンサが必要となり、コスト高を招く。
【0007】
以上のような問題は、モヒカン溝にシーラを塗布する場合に限らず、車体の所定箇所に設けられた被処理部に作業装置で何らかの作業を施す場合に同様に生じる。
【0008】
本発明の解決すべき課題は、混流ラインに搬送される車体の被処理部に対して、作業装置を低コストな方法で正確に位置決めすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、車種の異なる複数の車体を順次搬送する混流ラインにおいて、車体を搬送しながら車体の被処理部に対して作業装置により作業を施すにあたり、被処理部に対して作業装置を位置決めするための方法であって、車体に関する情報を記憶したIDタグの情報を読み取り、この情報から車体の被処理部の理想位置を取得し、この理想位置に作業装置を位置決めする第1位置決め工程と、作業装置に設けたセンサにより被処理部の実際の位置を検知し、この実際の位置に作業装置を位置決めする第2位置決め工程とを順に行うものである。
【0010】
このように、本発明では、作業装置の位置決めを、IDタグに記憶された情報に基づく第1位置決め工程と、センサの検知結果に基づく第2位置決め工程とに分けて行うようにした。第1位置決め工程では、IDタグの情報から、その車種における被処理部の理想位置、すなわち、車体を搬送装置上の所定位置に正確に配置した状態における被処理部の位置を特定し、この理想位置に作業装置を位置決めする。しかし、実際には、所定位置に正確に車体が載置されることはなく、所定位置からずれた状態で載置されるため、第1位置決め工程が完了した段階では、実際の車体の被処理部と作業装置の位置は一致していないことが多い。そこで、第2位置決め工程では、センサにより、実際の車体の被処理部の位置を検知し、検知した実際の位置に作業装置を位置決めする。このとき、車種の違いによる被処理部のばらつきは第1位置決め工程でキャンセルされているため、第2位置決め工程のセンサは車体の載置精度に起因した位置ズレのみを検知できればよいため、検知範囲が比較的小さい安価なセンサを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の塗布装置によれば、混流ラインに搬送される車体の被処理部に対して、作業装置を低コストな方法で正確に位置決めすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に、搬送装置によって車体100を矢印A方向に搬送しながら、車体100に対して作業装置で作業を施す生産ラインを示す。この生産ラインは、異なる車種の車体100が同一ラインに搬送される、いわゆる混流ラインである。各車体100は、パレットP上に載置された状態で搬送され、当該車体100に関する情報を記憶したIDタグ110と共に搬送される。図示例では、各車体100のパレットPにIDタグ110が貼り付けられる。
【0015】
本実施形態では、作業装置としてのシーラ塗布装置1により、
図1に示すライン上を搬送される車体100のモヒカン溝101(被処理部)にシーラが塗布される。車体100のモヒカン溝101は、
図2に示すように、ルーフパネル102とサイドパネル103との接合部に設けられ、車体100の上面の車幅方向両側端部付近で前後方向に延びている。詳しくは、モヒカン溝101の溝底101aにルーフパネル102とサイドパネル103との板合わせ部が設けられ、この板合わせ部をスポット溶接によって接合した後、ルーフパネル102とサイドパネル103との継ぎ目105にシーラ塗布装置1でシーラが塗布される。継ぎ目105は、溝底101aの上側のパネル(図示例ではルーフパネル102)の端縁に沿って設けられ、モヒカン溝101の幅方向外側(
図2では右側)の内壁101bに近接して設けられる。
【0016】
シーラ塗布装置1は、レール120に沿って前後方向に移動可能とされ、
図1の矢印B方向に進行しながらシーラを吐出することにより、車体100のモヒカン溝101にシーラを塗布する。シーラ塗布装置1は、
図3及び
図4に示すように、レール120に対して前後方向にスライド可能に取り付けられたフレーム2と、フレーム2に対して車幅方向(
図4の左右方向)にスライド可能に取り付けられた一対のベースプレート3と、各ベースプレート3に対して車幅方向にスライド可能に取り付けられたスライドプレート4と、各スライドプレート4に対して昇降可能に設けられたシーラ塗布部5とを備える。尚、以下の説明では、シーラ塗布装置1がシーラを吐出しながら進行する方向(
図1の矢印B方向)を前方と言い、その反対側(
図1の矢印A方向)を後方と言う。
【0017】
フレーム2は、図示しない駆動手段(例えば油圧シリンダ)により前後方向に駆動される。フレーム2の下面には、車幅方向に延びるスライドレール2aが設けられる。フレーム2には、車体100の前後方向位置を検知する第1センサ(図示省略)が設けられる。
【0018】
ベースプレート3は、フレーム2のスライドレール2aに対して車幅方向にスライド可能に取り付けられる(
図4参照)。ベースプレート3は、駆動手段(図示例ではサーボモータ6)により車幅方向に駆動される。各ベースプレート3の下面には、車幅方向に延びるスライドレール3aと、スライドプレート4の車幅方向内側へのスライドを所定位置で規制するストッパ3bとが設けられる。図示例では、スライドレール3aの車幅方向内側端部にストッパ3bが設けられる。ベースプレート3には、車体100のモヒカン溝101の車幅方向位置を検知する第2センサ(図示省略)が設けられる。
【0019】
スライドプレート4は、ベースプレート3のスライドレール3aにスライド可能に取り付けられる(
図4参照)。スライドプレート4は、第1付勢手段(図示例ではスプリング7a)によりベースプレート3に対して車幅方向外側に付勢され、第2付勢手段(図示例ではエアシリンダ7b)によりベースプレート3に対して車幅方向内側に付勢される。スライドプレート4は、スプリング7aにより常に車幅方向外側に付勢され、エアシリンダ7bをONにしてピンを伸長させると、スプリング7aの付勢力に抗してスライドプレート4が車幅方向内側にスライドし、ストッパ3bに当接した位置で停止する。エアシリンダ7bをOFFにすると、スプリング7aの付勢力によりスライドプレート4が車幅方向外側にスライドする。
【0020】
シーラ塗布部5は、シーラを吐出するノズル8とガイド部材9とを有し、スライドプレート4に対して昇降可能に設けられる。本実施形態では、スライドプレート4に対して回転可能に取り付けられたアーム10の先端に、シーラ塗布部5が設けられる(
図3参照)。具体的には、
図5に示すように、アーム10の先端にノズル8及びガイド部材9が固定され、アーム10の基端付近が、車幅方向の回転軸11を介してスライドプレート4(
図5では省略)に回転自在に取り付けられる。アーム10は、回転軸11よりもさらに基端側まで延び、アーム10の基端部を押圧手段(図示例ではエアシリンダ12)により下方に押し下げることにより、アーム10の先端に取り付けられたシーラ塗布部5が上昇し、図示しないストッパにより水平状態で停止する(
図5の実線参照)。押圧手段による押し下げ力を解除すると、アーム10の先端がシーラ塗布部5の自重により下降する(
図5の点線参照)。
【0021】
ノズル8は、シーラが流通する流路を内部に有する中空筒状をなし、上端に図示しない配管が接続され、下端に吐出口8aを有する。本実施形態のノズル8は、
図6に示すように、上下方向に延びる円筒部8bと、円筒部8bの下側に設けられ、おおよそ前後方向と直交する平面と平行な扁平部8cとを有し、扁平部8cの下端に吐出口8aが設けられる。吐出口8aは、真下方向に対して若干後方に傾斜し(
図6(b)参照)、且つ、車幅方向外側に傾斜した方向を向いている(
図6(a)参照)。
【0022】
ガイド部材9は、金属より硬度が低い材料で形成され、例えば樹脂で形成される。ガイド部材9は、
図6(b)に示すように、下方ほど前後方向寸法を小さくした先細りの形状をなし、その下端をノズル8の吐出口8aに近接させている。ガイド部材9の下端9aは、ノズル8の吐出口8aより僅かに下方で、且つ、僅かに前方(
図6(b)の左側)に位置し、モヒカン溝101の溝底101aと当接する。ガイド部材9の車幅方向両側の側面9bは、ノズル8の扁平部8cよりも若干車幅方向外側に位置している。ガイド部材9の前面9cは、下方に向けて後方側に傾斜した傾斜面である。図示例では、ガイド部材9の前面9cが、略直線状に傾斜した平坦部9c1と、直線部の下方に設けられた略円弧状の曲面部9c2とからなり、この曲面部9c2に、モヒカン溝101の溝底101aと当接する下端9aが設けられる。ガイド部材9の後面9dは、下方に向けて後方に若干傾斜した傾斜面であり、図示例ではノズル8に沿った傾斜曲面である。
【0023】
以下、上記シーラ塗布装置1を用いて、車体100のモヒカン溝101にシーラを塗布する手順を説明する。本実施形態では、搬送装置により車体100を後方(
図1の矢印A方向)に一定速度で搬送しながら、シーラ塗布装置1でシーラを塗布する場合を示す。
【0024】
まず、シーラ塗布装置1を、レール120の後方端部(
図1の右側端部)に配置する。この状態で、シーラ塗布装置1の第1センサ(図示省略)が、後方(
図1の矢印A方向)に向けて搬送される車体100の所定位置(例えば車両前方端部)を検知したら、次にシーラを塗布すべき車体100のモヒカン溝101の車幅方向位置にシーラ塗布部5を配置する。本実施形態では、
図7に示すように、シーラ塗布部5の車幅方向の位置決めを、IDタグ110に記憶された車種情報に基づく第1位置決め工程と、第2センサ(図示省略)の検知結果に基づく第2位置決め工程とに分けて行う。
【0025】
第1位置決め工程では、まず、これからシーラを塗布する車体100のIDタグ110の情報を、読取器111(
図1参照)で読み取る(ステップS1)。この情報が、シーラ塗布装置1の駆動を制御する制御部(図示省略)に伝達され、この情報に基づいて制御部が車体100の車種を特定し(ステップS2)、その車種における車体100のモヒカン溝101の車幅方向の理想位置を取得する(ステップS3)。この理想位置にシーラ塗布部5が配されるように、サーボモータ6を駆動してベースプレート3を車幅方向にスライドさせる(ステップS4)。これにより、当該車体100をパレットP上の所定位置に正確に載置したと仮定した場合におけるモヒカン溝101の車幅方向位置に、シーラ塗布部5が配置される。
【0026】
しかし、実際には、パレットP上の所定位置に正確に車体100が載置されることはなく、所定位置からずれた状態で載置されるため、第1位置決め工程が完了した段階では、実際の車体100のモヒカン溝101とシーラ塗布部5との車幅方向は一致していないことが多い。そこで、第2位置決め工程では、ベースプレート3に設けられた第2センサにより、実際の車体100のモヒカン溝101の車幅方向位置、特に、モヒカン溝101の後方端部(シーラ塗布開始側端部)の車幅方向位置を検知する(ステップS5)。第2センサの検知結果から制御部が実際のモヒカン溝101の車幅方向位置を取得し(ステップS6)、このモヒカン溝101の実際の車幅方向位置にシーラ塗布部5が配されるように、サーボモータ6を駆動してベースプレート3を車幅方向にスライドさせる(ステップS7)。このとき、車体100の車種の違いによるモヒカン溝101のばらつきは第1位置決め工程でキャンセルされているため、第2センサは車体100の載置精度に起因したズレのみを検知できればよいため、検知範囲が比較的小さい安価なセンサを用いることができる。
【0027】
こうしてシーラ塗布部5とモヒカン溝101の車幅方向位置が一致したら、アーム10の基端を押し下げているエアシリンダ12の押圧力を解除し、シーラ塗布部5の自重によりアーム10の先端を下降させる(
図5の点線参照)。その後、シーラ塗布装置1を前方にスライドさせて、シーラ塗布部5をモヒカン溝101の内部に嵌合させ、ガイド部材9の下端9aをモヒカン溝101の溝底101aに当接させる(
図8参照)。このとき、ノズル8の吐出口8aとモヒカン溝101の溝底101aとの間には、上下方向の微小な隙間δが形成される。
【0028】
そして、フレーム2に設けられた第1センサ(図示省略)が、車体100の所定位置(例えばルーフの車両前方端部)を検知したら、スライドプレート4を付勢するエアシリンダ7bをOFFにする。これにより、スライドプレート4がスプリング7aにより車幅方向外側に付勢され、モヒカン溝101の車幅方向外側の内壁101bにシーラ塗布部5のガイド部材9が当接する(
図9参照)。これと同時に、シーラ塗布部5のノズル8の吐出口8aからシーラを吐出する。このとき、シーラ塗布部5のガイド部材9の下端9a及び車幅方向外側の側面9bが、それぞれ、モヒカン溝101の溝底101a及び車幅方向外側の内壁101bと摺動することで、ノズル8と車体100との摺動が回避され、ノズル8の摩耗や変形を防止できる。
【0029】
また、ガイド部材9をモヒカン溝101の車幅方向外側の内壁101b、すなわち継ぎ目105が近接した内壁101bに当接させることで、シーラ塗布部5を常に継ぎ目105の上方に配することができるため、ノズル8の吐出口8aから吐出したシーラを継ぎ目105に直接塗布することができる。このとき、ノズル8から真下にシーラを吐出すると、シーラが溝底101aに供給されるため、シーラの粘性により、シーラの車幅方向端部の上下方向厚さが薄くなる。この場合、シーラの車幅方向外側の端部の薄い部分で継ぎ目105を覆うことになるため、継ぎ目105をシーラで封止できない恐れがある。本実施形態では、
図9に示すように、ノズル8の吐出口8aが車幅方向外側に傾斜した斜め下方向を向いていることで、モヒカン溝101の車幅方向外側の内壁101bに向けてシーラが吐出されるため、車幅方向外側の内壁101bと溝底101aとで形成される角部にシーラを供給し、溝底101aの車幅方向外側の端部におけるシーラの上下方向寸法を厚くすることができる。これにより、溝底101aの車幅方向外側の内壁101bに近接した継ぎ目105を、シーラで確実に覆って封止することができる。
【0030】
また、ガイド部材9がモヒカン溝101の溝底101aと当接していることで、ノズル8の吐出口8aと溝底101aとの間の上下方向隙間δ(
図8参照)を一定に維持することができるため、シーラの塗布状態を安定させることができる。また、ガイド部材9の前面9cが傾斜面であるため、溝底101aに形成された溶接部やスパッタ等による凹凸を滑らかに乗り越えていくことができ、シーラの塗布状態をさらに安定させることができる。特に、図示例では、ガイド部材9の下端9aが略円弧状の曲面部9c2に設けられるため、よりスムーズに溝底101a上を摺動させることができる。
【0031】
ところで、通常、モヒカン溝101の溝底101aは平坦ではなく、
図10に誇張して示すように前後方向中央部付近を高くした湾曲形状をなしていることが多いため、ガイド部材9’の下面が平坦であると、ガイド部材9’の前後方向中間部がモヒカン溝101の溝底101aに当接する。このため、ノズル8’の吐出口8a’と溝底101aとの間に形成される上下方向隙間δ’が大きくなり、シーラの塗布状態が不安定となる恐れがある。
【0032】
これに対し、本実施形態では、
図8に示すように、ガイド部材9を先細り形状とし、その下端9aをノズル8の吐出口8aに近接させる。この場合、ガイド部材9と溝底101aとの当接箇所を、常にノズル8の吐出口8aの近傍に設けることができるため、ノズル8の吐出口8aと溝底101aとの間に形成される上下方向隙間を安定させることができ、これによりシーラの塗布状態を安定させることができる。
【0033】
そして、フレーム2に設けた第1センサ(図示省略)が車体100の所定位置(例えばルーフの車両後方端部)を検知したら、ノズル8の吐出口8aからのシーラの吐出を停止する。その後、エアシリンダ12を伸長させてアーム10の基端を押し下げ、アーム10の先端に設けられたシーラ塗布部5を上昇させ(
図5実線参照)、シーラ塗布部5を車体100から離反させる。以上により、シーラ塗布工程が完了する。
【0034】
尚、シーラ塗布部5をモヒカン溝101から離反させる際、モヒカン溝101に沿って移動させたシーラ塗布部5が車体100に取り付けられたバックドアと干渉する恐れがあるが、本実施形態ではガイド部材9の前面9cを傾斜面としているため、バックドアを滑らかに乗り越えることができる。
【0035】
また、シーラ塗布部5を上昇させたとき、ノズル8の吐出口8aに付着したシーラが滴下し、車体100や周辺設備を汚してしまう恐れがあるが、本実施形態ではガイド部材9の下端をノズル8の吐出口8aの近傍に設けているため、吐出口8aから垂れたシーラをガイド部材9の下端で受けてシーラの滴下を防止することができる。
【0036】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、車体100を後方側(
図1の矢印A参照)に搬送しながら、シーラ塗布装置1を前方側(
図1の矢印B参照)に移動させる場合を示したが、これに限らず、例えば車体100を停止させ、シーラ塗布装置1を前方側に移動させながらシーラを塗布してもよい。あるいは、シーラ塗布装置1を停止させ、車体100を後方側に搬送しながらシーラを塗布してもよい
【0037】
また、上記の実施形態では、作業装置がシーラ塗布装置である場合を示したが、これに限らず、本発明は、車体の所定位置に設けられた被処理部に対して何らかの作業を施す作業装置の位置決めに適用することができ、特に、車体の搬送方向と直交する方向における位置決めに適用できる。