特許第5854891号(P5854891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5854891-浮玉の異物除去装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854891
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】浮玉の異物除去装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20060101AFI20160120BHJP
   A01K 75/04 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   A01K61/00 Z
   A01K75/04 Z
   A01K61/00 V
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-51267(P2012-51267)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-183692(P2013-183692A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−342376(JP,A)
【文献】 特開平7−284359(JP,A)
【文献】 特開2004−275160(JP,A)
【文献】 特開2003−18934(JP,A)
【文献】 米国特許第04682558(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
A01K 75/00−04
B08B 1/00−04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮玉に付着した異物を除去するための装置であって、
前記浮玉の表面のいずれかの位置において前記浮玉を支持する円周部を含み、内部に空間を有する、浮玉支持部材と、
前記浮玉支持部材の前記空間内に配置され、前記浮玉に対向する回転面を有する、回転テーブルと、
前記回転面上に配置され、前記浮玉の表面から前記異物を除去するための刃部を各々が有する、1つ又は複数の異物除去部材と、
前記回転テーブルを支持するとともに、前記回転テーブルを前記浮玉の方向に押し付ける押付力を前記回転テーブルに与える、支持機構と、
前記回転テーブルを回転させる、駆動機構と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記支持機構は、前記浮玉の方向から前記回転テーブルに加わる力に応じて前記回転面を水平面に対して傾斜させるように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持機構は、前記押付力を発生する弾性部材によって構成され、
前記回転面は、前記浮玉の方向から前記回転テーブルに加わる力に応じて前記弾性部材が変形することによって水平面に対して傾斜し、前記浮玉の方向から前記回転テーブルに加わる力が取り除かれたときに前記弾性部材の復元力によって水平状態に戻ることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記刃部は、前記浮玉の表面の曲率半径に対応する曲率半径の円弧状刃部であり、前記1つ又は複数の異物除去部材は、前記円弧状刃部が、前記回転面側から見たときに前記回転面の半径に沿って放射状に延在するように、前記回転面上に配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、
モータと、
前記回転テーブルの下方に配置され、前記モータの動力が伝達されることによって水平面内で回転する回転体と、
一方の端部が、前記回転体の回転軸心から縁部までの間における1つ又は複数のいずれかの位置に連結され、他方の端部が、前記回転テーブルの回転軸心から縁部までの間における1つ又は複数のいずれかの位置に連結されることによって、前記回転体の回転力を前記回転テーブルに伝達する、1つ又は複数の回転伝達部材と、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回転体は、前記1つ又は複数のいずれかの位置に開口部を有し、
前記1つ又は複数の回転伝達部材は、前記一方の端部が前記回転体の前記開口部を貫通しており、前記開口部から貫通した部分には、前記一方の端部の前記開口部からの抜けを防止する係止部材が設けられたことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記支持機構は、前記駆動機構の前記1つ又は複数の回転伝達部材を兼ねることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮玉の表面に付着した異物を除去するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浮玉は、漁業において海中に垂下された網や篭を係留するために用いられる中空の球体であり、近年は、プラスチック製のものが用いられることが多い。浮玉は、その用途に応じて様々な大きさのものが存在し、ホタテ、カキ、昆布などの養殖漁業では、一般に、直径約300mm〜約430mmのものが用いられる。
【0003】
浮玉の表面には、使用の過程で、フジツボ、ムラサキガイ、海草などの異物が付着する。特に養殖漁業においては、海中におけるホタテやカキの位置を養殖に適した水深や水温の位置に調整する必要があるが、浮玉の表面に異物が付着すると、浮玉の浮力が変化し、海中におけるホタテやカキの位置が本来の位置から移動して養殖に悪影響を与えるおそれがある。したがって、浮玉の表面に付着した異物を定期的に除去することが必要となる。こうした異物は、従来、例えばナイフや、直径10cm程度のパイプを5cm程度に切断した道具などを用いて手作業で除去されていたが、これは手間と時間を要する作業であった。
【0004】
こうした問題を解決するために、幾つかの装置が提案されている。
特許文献1(特開平7−284359)に開示された装置は、浮玉の直径よりやや大きい半円球形状の鉄輪の内側に歯を形成し、回転している鉄輪の中に浮玉を入れて手で押し付けることによって、付着物を除去するものである。この装置においては、浮玉を回転する歯に押し付けることによって歯の回転と同方向に浮玉の付き回りが生じるため、この回転力に逆らいながら浮玉を手で固定しなければならない。したがって、浮玉の表面の異物を除去するためには大きな力で浮玉を固定しなければならず、作業性が悪いだけではなく、危険性が高いという問題がある。
【0005】
特許文献2(特開2003−18934)に開示された装置は、浮玉の耳部を押さえ金物で押さえて、押さえ金物を回転させ、掻き取り刃物を浮玉に沿って滑動して異物を除去する装置である。この装置においては、浮玉の耳部を押さえ金具で押さえるとともに、この耳部に対して浮玉の反対側を正確に固定しなければならない。したがって、この固定位置がずれると浮玉の回転中に浮玉が装置から外れるおそれがあるとともに、掻き取り刃物との接触むらが生じるため異物除去効率が低下する。また、浮玉によっては耳部が存在しないものもあり、こうした浮玉にはこの装置は使用できない。さらに、この装置は、掻き取り刃物で異物を除去する際に浮玉が回転するため、ロープが絡まないように、耳部に硬く縛られたロープを耳部から取り外すか、又は何らかのロープ処理を施す必要があり、作業性が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−284359号公報
【特許文献2】特開2003−18934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、浮玉の表面に付着した異物を安全かつ効果的に除去することが可能な異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、浮玉に付着した異物を除去するための装置を提供する。本発明に係る装置は、浮玉の表面のいずれかの位置において浮玉を支持する円周部を含み、内部に空間を有する、浮玉支持部材と、浮玉支持部材の空間内に配置され、浮玉に対向する回転面を有する、回転テーブルと、回転面上に配置され、浮玉の表面から異物を除去するための刃部を各々が有する、1つ又は複数の異物除去部材と、回転テーブルを支持するとともに、回転テーブルを浮玉の方向に押し付ける押付力を回転テーブルに与える、支持機構と、回転テーブルを回転させる、駆動機構とを備える。
【0009】
本発明の一実施形態においては、回転テーブルの支持機構は、浮玉の表面に固着した異物に刃部が当たったときに、刃部が異物と噛み合うことなく異物から逃げることができるように、浮玉の方向から回転テーブルに加わる力に応じて、回転面を水平面に対して傾斜させるように構成することができる。本発明の別の実施形態においては、支持機構は、押付力を発生する弾性部材によって構成され、回転テーブルの回転面は、浮玉の方向から回転テーブルに加わる力に応じて弾性部材が変形することによって水平面に対して傾斜し、浮玉の方向から回転テーブルに与えられる力が取り除かれたときに、すなわち刃部が固着した異物を通過したときに、弾性部材の復元力によって水平状態に戻る。
【0010】
本発明の一実施形態においては、1つ又は複数の異物除去部材の刃部は、浮玉の表面の曲率半径に対応する曲率半径を持つ円弧状刃部とすることができる。また、1つ又は複数の異物除去部材は、回転面側から見たときに刃部が回転面の半径に沿って放射状に延在するように、回転面上に配置することができる。
【0011】
本発明の一実施形態においては、駆動機構は、モータと、回転テーブルの下方に配置され、モータの動力が伝達されることによって水平面内で回転する回転体と、回転体の回転力を回転テーブルに伝達する1つ又は複数の回転伝達部材とを有する。1つ又は複数の回転伝達部材は、一方の端部が、回転体の回転軸心から縁部までの間における1つ又は複数のいずれかの位置に連結され、他方の端部が、回転テーブルの回転軸心から縁部までの間における1つ又は複数のいずれかの位置に連結されることによって、回転体の回転力を回転テーブルに伝達する。
【0012】
本発明の一実施形態においては、回転体には、1つ又は複数のいずれかの位置に開口部を設けることができる。1つ又は複数の回転伝達部材は、一方の端部が回転体の開口部を貫通しており、開口部から貫通した部分には、一方の端部の開口部からの抜けを防止する係止部材を設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る異物除去装置は、浮玉をその表面のいずれかの位置で支持する浮玉支持機構と、浮玉の表面に異物除去部材の刃部を押し付ける力を生じる支持機構と、回転テーブルを水平面から傾斜させる傾斜機構とを採用することによって、浮玉を僅かな力で装置に固定することができるとともに、固定のための力を加減する必要がないため、効果的に異物を除去することができ、作業性が著しく向上する。また、本発明に係る異物除去装置は、異物除去部材が浮玉支持部材の内部の空間内に配置されており、異物の除去中に刃部が浮玉支持部材に隠れているため、作業者の安全性を向上させることができる。さらに、本発明に係る異物除去装置は、装置への浮玉のセットが容易であること、種々の大きさの浮玉にも対応が容易であること、ロープ処理やロープの取り外しが不要であり海上での作業も可能であることといった特徴を有しており、作業性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る異物除去装置の斜視図を示す。
図2】本発明の一実施形態に係る異物除去装置の主要構成部を、図1に示される装置の背面からみた図を示す。
図3】回転テーブルの回転面が水平面から傾斜したときの状態を、図1に示される装置の背面からみた図を示す。
図4】本発明の別の実施形態に係る異物除去部材の模式図を示す。
図5】本発明の別の実施形態に係る異物除去装置の主要構成部を、図1に示される装置の正面からみた図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[装置全体の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る異物除去装置1を示し、図2は、異物除去装置1の主要構成部を示す。図2において、部材20及び54は、開口部を説明する目的で、断面図として示されている。異物除去装置1は、回転する1つ又は複数の異物除去部材30が、浮玉Tの表面に付着したフジツボ、ムラサキガイ、海草などの異物Fを除去するように構成された装置である。異物Fが付着した浮玉Tは、浮玉支持部材10の上に配置される。浮玉支持部材10に配置された浮玉Tは、浮玉支持部材10とは反対の方向から(すなわち、図1の上方から)、作業者又は他の何らかの手段によって、適当な力で押さえられることが好ましい。1つ又は複数の異物除去部材30は、駆動機構50によって回転する回転テーブル20に固定されている。1つ又は複数の異物除去部材30は、回転テーブル20の回転に伴って、その刃部32が、浮玉Tの表面に沿って移動しながら表面の異物Fを削ぎ落とす。回転テーブル20は、その下方から支持機構40によって支持される。支持機構40は、回転テーブル20に対して、浮玉Tの方向に押し付ける押付力を与えることができる。異物除去装置1は、全体が架台によって支持されることが好ましい。
【0016】
異物除去装置1は、回転テーブル20の回転面22が水平面から傾斜するように構成されることがより好ましい。図3は、回転テーブル20の回転面22が水平面から傾斜したときの状態を示す図である。浮玉Tの表面に強固に固着した異物Fが存在する場合に、その異物Fに異物除去部材30の刃部32が当たったときには、回転テーブル20の回転面22が水平面から傾斜することによって、刃部32が異物Fから逃げることが可能になる。回転面22が傾斜する機構及び機能の詳細については後述する。
【0017】
[浮玉支持部材]
浮玉Tは、異物除去装置1の浮玉支持部材10の上に配置される。図1においては、浮玉支持部材10は、内部の機構が見えるように点線で描かれている。浮玉支持部材10は、一実施形態においては中空の円筒形部材であり、側面12と、浮玉を支持する円周部14とを有する。浮玉支持部材10は、円周部14が円形であれば、他の部分の形状は限定されるものではない。材質は、限定されるものではなく、浮玉Tを支持するための強度が得られるものであればよい。図1に示されるように、円周部14は、浮玉Tを浮玉支持部材10の上に配置して浮玉Tを押さえたときに、浮玉Tの半球のいずれかの表面において浮玉Tを支持する。円周部14の直径は、浮玉Tの直径より10〜20%程度小さいことが好ましい。円周部14の直径を浮玉Tに対してこの程度の大きさにすることによって、浮玉Tがぐらつくことなく僅かな力でも確実に固定される。円周部14の直径が浮玉Tの直径に対して小さすぎる場合には、浮玉Tを上から押さえても安定しないおそれがある。浮玉支持部材10の側面12は、浮玉Tから除去された異物Fの飛散を防止する目的で、側壁によって覆われていることが好ましい。
【0018】
浮玉支持部材10は、中空の円筒形部材であるため、内部には空間16が存在する。その空間16内に、少なくとも、後述する回転テーブル20と、回転テーブル20の回転面22に配置された1つ又は複数の異物除去部材30とが配置される。図1の実施形態においては、直径の異なる2つの円筒が上下に重ねられているが、浮玉Tを支持する部分すなわち円周部14から浮玉支持部材10の下部まで、同一の直径の円筒形部材で構成されてもよい。浮玉支持部材10は、直径の異なる浮玉Tに対応が容易となるように、異なる直径の円周部14を有する幾つかの種類を準備しておくことが好ましい。
【0019】
[回転テーブル]
異物除去装置1は、回転テーブル20を有する。図2は、本発明の一実施形態に係る異物除去装置1の回転テーブル20と、1つ又は複数の異物除去部材30と、支持機構40と、駆動機構50の一部とを示す。回転テーブル20は、浮玉支持部材10の空間16内に配置され、浮玉Tの表面に対向する回転面22を有する。回転面22上には、後述する1つ又は複数の異物除去部材30が配置される。回転テーブル20は、好ましくは円形の板状体であるが、これに限定されるものではなく、浮玉支持部材10の空間16内で回転し、浮玉Tに対向する部分に1つ又は複数の異物除去部材30を配置することができるものであればよい。回転テーブル20の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置には、後述される1つ又は複数の回転伝達部材55の一方の端部が連結される。この位置は、回転伝達部材55の力が回転テーブル20に効率よく伝達される位置であればよい。回転テーブル20と回転伝達部材55とは、溶接等などによって固定することができる。しかし、回転テーブル20に開口部を設け、その開口部に回転伝達部材55の一方の端部を通し、端部をナットなどで固定することによって、回転テーブル20と回転伝達部材55とを連結することがより好ましい。このように連結することによって、図3に示されるように回転テーブル20の回転面22が水平面から傾斜したときに回転伝達部材55と回転テーブル20との間に角度が生じた場合でも、機能を損なわずに装置1を稼働することができる。
【0020】
[異物除去部材]
浮玉Tの表面の異物Fは、1つ又は複数の異物除去部材30によって除去される。一実施形態においては、異物除去部材30は、図1図3に示されるように、浮玉Tの表面の曲率半径に対応する曲率半径の円弧状の刃部32を有する板状体である。このように浮玉Tに対応する曲率半径を有することによって、刃部32は、浮玉Tの表面に概ね均等に当たって異物Fを除去することになる。異物除去部材30の数は限定されるものではないが、作業性及び効率的な異物除去の観点から、3つであることがより好ましい。異物除去部材30の数が多すぎると、異物除去部材30の回転に伴って浮玉Tの付き回りが強くなるため、浮玉Tを押さえるための力をより大きくすることが必要となる。異物除去部材30の数が少なすぎると、異物除去の効率が低下する。
【0021】
一実施形態においては、異物除去部材30は、回転テーブル20の回転面22側から異物除去部材30をみたときに、回転面22の半径に沿って放射状に延在するように回転テーブル20の回転面22上に配置される。異物除去部材30は、好ましくは、図1図3に示されるように、刃部32が回転テーブル20の回転軸心又はその近傍から、回転テーブル20の半径に沿って、回転テーブル20の外周部又はその近傍まで延在するように、回転テーブル20上に配置される。他の実施形態においては、異物除去部材30は、刃部32が回転テーブル20の回転軸心から外周方向に向かう半径線と所定の角度で交差して延在するように、回転テーブル20の回転面22上に配置することもできる。
【0022】
異物除去部材30は、底部34が回転テーブル20の回転面22に固定される。固定方法は、限定されるものではなく、例えば溶接によって固定することができる。本発明の一実施形態においては、底部34の一部に突起35を設け、その突起35を、回転テーブル20に設けられた対応する異物除去部材固定孔24に挿入した上で、底部34を回転テーブル20に溶接することによって、異物除去部材30をより強固に回転テーブル20に固定することができる。また、異物除去部材30は、種々の曲率半径の刃部32を有するものを浮玉Tのサイズに応じて適切な曲率半径の刃部32を用いることができるように、回転テーブル20に着脱可能に固定されることがより好ましい。このための固定方法として、例えば、図2に示されるように、異物除去部材30の突起35の上部に開口部36を設けておき、異物除去部材30の突起35を回転テーブル20に設けた異物除去部材固定孔24に挿入した後、開口部36に異物除去部材固定具37を通すことによって、異物除去部材30を回転テーブル20に固定することができる。この場合には、異物除去部材30をより強固に回転テーブル20に固定するために、ボルト(図示せず)などを用いて異物除去部材固定具37を回転テーブル20に固定してもよい。
【0023】
<異物除去部材の別の形態>
図4(a)〜(c)は、上述の形態とは異なる本発明の別の実施形態に係る異物除去部材30を示す。図4(a)〜(c)の各々において、右側の図は、異物除去部材30を回転面22の上方から見たときの模式図であり、左側の図は、回転面22の半径に沿って配置された異物除去部材30を横から見たときの模式図である。図4(a)は、異物除去部材30の回転面22上での配置は、図1図3に示される形態と同じであるが、刃部32が一続きの刃ではなく、櫛歯状に形成された形態を示す。図4(b)は、各々の異物除去部材30を図1図3に示される形態より小型のものとし、複数の小型の異物除去部材30を回転面22上に配置した形態を示す。この場合には、複数の異物除去部材30の刃部32によって形成される全体の形状が、異物Fが除去される浮玉Tの表面の曲率半径に対応する曲率半径を有する形状となる。図4(c)は、複数の針状の異物除去部材30を回転テーブル20上に配置した形態を示す。この場合にも図4(b)の場合と同様に、複数の異物除去部材30の先端(刃部32に相当する)によって形成される全体の形状が、異物Fが除去される浮玉Tの表面の曲率半径に対応する曲率半径を有する形状となる。
【0024】
[支持機構]
回転テーブル20は、支持機構40によって支持される。支持機構40は、図1図3に示されるように、回転テーブル20の回転軸心と同軸上に配置され、回転テーブル20を回転面22とは反対側(すなわち、裏面)から支持するとともに、浮玉Tを装置1に載置して上から押さえたときに回転テーブル20(すなわち、異物除去部材30)を浮玉Tの方向に押し付けるための押付力を回転テーブル20に与えるように構成される。本発明に係る異物除去装置は、こうした押付力を発生させる構成と、浮玉を浮玉支持部材によって支持する構成とを採用したことによって、浮玉を僅かな力で装置に固定することができるとともに、浮玉を固定するために浮玉を押さえる力を加減する必要がなく、効果的に異物を除去することができ、作業性が著しく向上する。一実施形態においては、支持機構40は、弾性部材42によって構成されることが好ましく、弾性部材42は、例えば金属製のコイルバネとすることが好ましい。別の実施形態においては、弾性部材42は、例えばゴムスプリングを用いることもできる。一実施形態においては、支持機構40は、弾性部材42の一方の端部を回転テーブル20の裏面に固定し、他方の端部を回転体54の上面に固定することによって構成される。別の実施形態においては、支持機構40は、回転テーブル20の裏面と回転体54の上面とに弾性部材42の受け部を設け、弾性部材42の両端部をそれらの受け部内部に配置することによって構成することができる。この場合には、両端部は、回転テーブル20及び回転体54に固定されなくてもよい。
【0025】
支持機構40の弾性部材42の復元力によって発生する押付力は、浮玉Tを装置1に載置して異物Fを除去するときに浮玉Tを押さえるための力と、異物除去部材30の刃部32が浮玉Tの表面に当たる力とのバランスを考慮して決定することができる。押付力が強すぎると、刃部32が浮玉Tの表面に当たる力が強くなるため、浮玉Tの付き回りに抵抗するようにより大きな力で浮玉Tを押さえることが必要となり、作業性が低下する。一方、押付力が弱すぎると、刃部32が浮玉Tの表面に当たる力が弱くなるため、異物除去の効率が低下する。
【0026】
[駆動機構]
回転テーブル20は、駆動機構50によって回転する。図1に示されるように、駆動機構50は、一実施形態においては、浮玉支持部材10と併置されたモータ51と、モータ51の動力を回転軸53に伝達するチェーン52と、回転軸53が接続され、回転テーブル20の下方に配置された回転体54と、回転体54の回転力を回転テーブル20に伝達する1つ又は複数の回転伝達部材55とによって構成することができる。別の実施形態においては、駆動機構50は、モータ51を回転軸53の下方に配置して、モータの軸出力を回転軸53に伝達するようにしてもよく、この場合には、チェーン52は不要である。回転体54は、好ましくは円形状の板状体であるが、これに限定されるものではなく、水平面内で回転してモータ51の動力を回転伝達部材55に伝達することができるものであればよい。
【0027】
一実施形態においては、1つ又は複数の回転伝達部材55の端部は、回転体54の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置において回転体54に連結される。回転体54と回転伝達部材55とは、溶接等などによって固定することができる。しかし、図1図3に示されるように、回転体54の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置に、1つ又は複数の回転伝達部材55の径より大きい直径の開口部58を設け、この開口部58に、1つ又は複数の回転伝達部材55の端部を通し、端部をナット及びワッシャを含む係止部材56で締結することによって、回転体54と回転伝達部材55とを連結することが好ましい。このとき、支持機構40の弾性部材42は、好ましくは係止部材56によって復元力が抑制されている。このような構成を採用することによって、回転テーブル20は、異物除去部材30を介して浮玉Tからの力によって下向きに押されたときに、回転伝達部材55に邪魔されることなく下方に移動することができる。この構成においては、複数の回転伝達部材55を用い、各々の間隔が回転体54の周方向に均等になるように配置することによって、回転テーブル20を水平に維持することができる。
【0028】
[回転テーブルの傾斜機能]
図3に示されるように、異物除去装置1は、回転テーブル20の回転面22を水平面から傾斜させることが可能な傾斜機能を有することがより好ましい。異物除去装置1においては、傾斜機能を有することによって、浮玉Tの表面に強固に固着した異物Fが存在する場合に、この異物Fに異物除去部材30の刃部32が当たったときには、回転テーブル20の回転面22が水平面から傾斜して刃部32の異物Fからの逃げが可能になる。言い換えると、異物除去装置1においては、異物除去部材30の刃部32が固着した異物Fに当たったときに、回転軸53の回転軸心に対する回転テーブル20の回転面22の回転軸心の角度が直角ではない角度となった状態で、回転面22が回転することになる。異物除去装置1は、こうした傾斜機能をさらに設けることによって、浮玉を押さえる力がより小さくても浮玉を確実に固定することができるとともに、より効果的に異物を除去することができる。回転テーブル20の傾斜機能がない場合には、固着した異物Fと刃部32とが噛み合い、回転テーブル20の回転に伴って浮玉Tが回転するため、より強い力で浮玉Tを上から押さえることが必要になり、作業性が著しく低下することがある。場合によっては、異物Fの除去作業中に浮玉Tが異物除去装置1から外れ、作業者に危険を及ぼすことも考えられる。
【0029】
この回転テーブル20の傾斜機能は、支持機構40、回転体の開口部58、回転伝達部材55、及び係止部材56の組み合わせによって実現される。回転テーブル20が回転し、異物除去部材30が浮玉Tの表面に沿って異物Fを除去しているときに、刃部32が浮玉Tの表面に固着した異物Fに当たった場合には、支持機構40の弾性部材42が変形(屈曲)することによって、回転面22が水平面から傾く(図2の状態から図3の状態に変化する)。この変形の大きさは、浮玉Tの方向から回転テーブル20に与えられる力に応じて決まる。このとき、回転伝達部材55のうち、回転テーブル20の水平面から下がった部分に近い回転伝達部材55(例えば、図3においては、図面の左側の回転伝達部材55a)は、その下方部分が、回転体54の開口部58内を下向きに移動して、図3に示されるように回転体54の下面から突出する。一方、それ以外の回転伝達部材55(例えば、図3においては、図面の右側の回転伝達部材55b)は、係止部材56が回転体54の下面に当たることによって、回転伝達部材55の下端部分が開口部58から抜けないようになっている。このように、回転伝達部材55の一部が開口部58の内部を上下することによって、回転伝達部材55の回転力伝達機能が損なわれることなく、回転面22の自在な傾斜が可能になる。その後、さらに回転テーブル20が回転して刃部32が異物Fを通過したとき、すなわち、浮玉Tの方向から回転テーブル20に与えられる力が取り除かれたときには、回転テーブル20は、弾性部材42の復元力によって回転面22が水平状態に復帰し、図2に示される状態に戻る。
【0030】
<支持機構及び駆動機構の別の実施形態>
図5は、支持機構40と駆動機構50の一部とについて、別の実施形態を示す。図5(a)に示される実施形態は、支持機構40の弾性部材42として、図1に示される実施形態と比べて直径の大きい大口径コイルバネを用いるものである。この実施形態は、大口径コイルバネの両端を、それぞれ回転テーブル20の下面と回転体54の上面とに固定するものであり、図1図3に示される実施形態の駆動機構50のうち回転伝達部材55が用いられていない。したがって、弾性部材42(大口径コイルバネ)によって、回転テーブル20を支持する機能と、回転体54の回転力を回転テーブル20に伝達する機能と、回転テーブル20の傾斜機能とが実現されることになる。
【0031】
図5(b)に示される実施形態は、支持機構40が、図1図3に示される位置ではなく、回転伝達部材55の位置にある形態である。すなわち、支持機構40の弾性部材42が複数(例えば、3つ)用いられ、各々の弾性部材42の一方の端部が、回転テーブル20の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置あり、他方の端部が、回転体54の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置にある。これらの端部は、回転テーブル20及び回転体54に固定されてもされなくてもよい。各々の弾性部材42の内部には、回転伝達部材55が貫通している。回転テーブル20は、回転テーブル20の回転軸心ではなく、これらの複数の弾性部材42によって支持される。
【0032】
図5(c)に示される実施形態は、支持機構40が、図1図3に示される位置ではなく、図1図3における回転伝達部材55の位置にあり、かつ、回転伝達部材55が用いられない形態である。すなわち、支持機構40の弾性部材42が複数(例えば、3つ)用いられ、各々の弾性部材42の一方の端部が、回転テーブル20の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置に固定され、他方の端部が、回転体54の回転軸心から縁部までの間におけるいずれかの位置に固定される。したがって、複数の弾性部材42によって、回転テーブル20を支持する機能と、回転体54の回転力を回転テーブル20に伝達する機能と、回転テーブル20の傾斜機能とが実現されることになる。
【0033】
[異物除去装置を用いた浮玉の異物除去方法]
以下に、本発明に係る異物除去装置1を用いた浮玉Tの異物除去方法の一例を説明する。まず、好ましくは、異物を除去しようとする浮玉Tの大きさに対応する大きさの浮玉支持部材10と、浮玉Tの表面の曲率半径に対応する曲率半径を有する刃部32を持つ異物除去部材30とを選択し、異物除去装置1に取り付ける。次いで、養殖桁から外された浮玉Tを、異物除去装置1にセットする。このとき、浮玉Tの耳部には、浮玉Tと養殖桁とを連結するロープが取り付けられたままでもよい。異物除去装置1を船に積み込み、浮玉Tを養殖桁から外すことなく船上で異物を除去することもできる。
【0034】
浮玉Tが異物除去装置1にセットされたときには、浮玉Tの表面は、異物除去部材30の刃部32に当たった状態となり、円周部14から少し離れた位置にあることが好ましい。浮玉Tは、作業時に浮玉Tの上方から(すなわち、異物除去部材30とは反対の側から)作業者等によって下方に押し付けられることによって、表面が円周部14に当たって固定されるとともに、表面には、支持機構40の押付力によって異物除去部材30の刃部32が押し付けられる。
【0035】
次いで、異物除去装置1の電源が入れられ、異物除去部材30が回転して刃部32が浮玉Tの表面に沿って移動することによって、表面の異物Fが削り取られる。表面に固着した異物Fが存在する場合に、刃部32がその異物Fに当たったときには、回転テーブル20が傾斜することによって刃部32がその異物から逃げることになる。しかし、刃部32は、異物Fから逃げるときでも弾性部材42の復元力によって異物Fに押し付けられているため、異物Fの表面を少しずつ削り取ることができる。これを繰り返すことによって、異物Fは、浮玉Tの表面から除去される。浮玉支持部材10の内部16内における浮玉Tの表面の異物除去が終了すると、浮玉Tの別の表面が刃部32に当たるように浮玉Tを回転させ、この表面の異物除去が再び開始される。
【符号の説明】
【0036】
1:異物除去装置
10:浮玉支持部材
12:側面
14:円周部
16:内部空間
20:回転テーブル
22:回転面
24:異物除去部材固定孔
30:異物除去部材
32:刃部
34:底部
35:突起
36:開口部
37:異物除去部材固定具
40:支持機構
42:弾性部材
50:駆動機構
51:モータ
52:チェーン
53:回転軸
54:回転体
55:回転伝達部材
56:係止部材
58:開口部
T:浮玉
F:異物
図1
図2
図3
図4
図5