【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。なお、実施例及び比較例における各種測定および評価方法は以下の通りである。
【0046】
1.PI−03の純度および特定不純物の濃度評価
得られたPI−03粗体又はその精製品をアセトニトリルに溶解させて試料溶液を調製し、当該試料溶液について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行い、その結果に基づいてPI−03の純度および特定不純物濃度を決定した。具体的には、HPLC測定により得られたクロマトクラム(チャート)に基づき当該クロマトグラムに現れた測定試料に由来する全てのピークの総面積に対する、各物質に由来するピーク面積の百分率で表した割合(HPLC面積%)としてこれら値を決定した。HPLC測定に使用した装置および測定条件を以下に示す。
装置:ウォーターズ社製2695
検出器:紫外吸光光度計(ウォーターズ社製2489)
検出波長:269nm
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相流量:毎分1.0mL
移動相および送液方法:以下の示す移動相A及びBを用い、試料注入後の経過時間に従い両者の混合比が下記表1に示す混合比となるように変化させることにより、移動相の濃度勾配制御して送液した。
移動相A:酢酸ナトリウム2.3gを水1500mLに添加し溶解させた後、アセトニトリル1500mL、酢酸60mLを加えた混合液。
移動相B:酢酸ナトリウム1.8gを水1200mLに添加し溶解させた後、アセトニトリル1800mL、酢酸60mLを加えた混合液。
【0047】
【表1】
【0048】
2.PI−03の水層中への抽出効率
PI−03の水層中への抽出効率は、分液したときに得られた水層全体に含まれるPI−03量と有機層全体に含まれるPI−03量との比(水層/有機層)として評価した。なお、水層/有機層は、水層及び有機層から同様にして調製した各試料溶液を、同様にしてHPLC測定し、得られたPI−03のHPLC面積値と下記式から算出した。ここで、下記式における「S
O」および「S
w」は、それぞれ有機層および水層から調製した試料溶液についてHPLC測定を行った時に得られたクロマトグラムにおけるPIO−03のピーク面積を意味し、「V
O」および「V
w」はは、それぞれ分液したときに得られた有機層全体の体積(mL)および水層全体の体積(mL)を意味する。
水層/有機層=(S
w×V
w)/(S
O×V
O) 。
【0049】
3.PIO純度および特定不純物に由来する不純物の濃度評価
PIOの純度及びN、N’−ジメチル−4−ニトロアニリン(特定不純物)に由来する不純物の量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。HPLC測定に使用した装置、測定の条件は、下記の装置、条件を採用した。なお、該条件によるHPLC分析では、PIOの保持時間は5.0分付近であり、特定不純物に由来する不純物の保持時間は4.5分付近である。
装置:ウォーターズ社製2695
検出器:紫外吸光光度計(ウォーターズ社製2489)
検出波長:269nm
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相:酢酸ナトリウム2.3gを水1500mLに添加し溶解させた後、アセトニトリル1500mL、酢酸60mLを加えた混合液。
流量:毎分1.0mL
カラム温度:25℃付近の一定温度
【0050】
実施例1(PI−03の製造実施例)
(4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ニトロベンゼンの粗体の製造)
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、2−(5−エチル−2−ピリジル)エタノール30.0g(198.4mmol)、及び4−フルオロニトロベンゼン29.4g(208.4mmol)をN,N’−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、0℃に冷却した。次いで、反応液の温度が0〜5℃となるように、少しずつ水酸化ナトリウム11.9g(297.5mmol)を加えた後、0〜5℃で9時間反応させた。反応終了後、冷やした水360mLを加え、析出した結晶を濾別した。得られた黄褐色結晶を40℃で12時間、減圧下乾燥し、黄褐色結晶としてPI−03の粗体50.9g(186.9mmol)を得た。(収率:94.2%、HPLC純度:89.52%、特定不純物:2.33%)
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、黄褐色結晶として得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体5.0g(18.4mmol)とジイソプロピルエーテル20mLを加え攪拌し、40℃に加温し溶解させた。続いて、別途、水10mLと10%塩酸9.4g(25.7mmol、1.4当量)を混合し調製した酸水溶液を加えて1時間攪拌した。攪拌終了後、有機層と水層とを分液した。得られた水層をHPLCで測定したところ、PI−03の純度は97.03%で、特定不純物は0.43%であった。また、各層に含まれるPI−03の比率は、水層/有機層=1.0/0.0であった。
【0051】
実施例2〜13(PI−03の製造実施例)
実施例1の酸の種類及びその量、有機溶媒の種類及びその量、並びに温度を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例14(PIOの製造実施例)
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、PI−03の塩酸塩を含む水層、ジイソプロピルエーテル20mLを加え攪拌し、40℃に加温した。続いて、10%水酸化ナトリウム11.0g(27.5mmol)を加えて、40℃で30分間攪拌した。攪拌終了後、有機層と水層を分液した。得られた有機層を減圧濃縮し、PI−034.8g(17.7mmol)を得た。
【0054】
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、このPI−034.8g(17.7mmol)、メタノール40mL、10%Pd−C0.5gを加え、25℃で1時間攪拌した。攪拌終了後、不溶固体を濾別し、得られた溶液を濃縮した。残留した油状物に、メタノール20mL及びアセトン20mLを加え、攪拌した後、−8℃に冷却した。47%臭化水素酸9.5g(55.2mmol)を加えた後、亜硝酸ナトリウム1.4g(20.8mmol)及び水2.5mLから調製した水溶液を少しずつ滴下した。全量滴下後、−5℃付近で30分間攪拌し、続いて、アクリル酸メチル18.3g(212.2mmol)を加えた。得られた混合物を50℃に加温した後、酸化第一銅0.32g(2.3mmol)を加え、50℃付近で3時間攪拌した。攪拌終了後、20℃まで冷却し、濃縮した。得られた残渣に、酢酸エチル20mL及び水10mLを加えた後、5℃以下に冷却した。20%アンモニア水5mLを、5℃以下で加えた。15分間攪拌後、有機層と水層とを分液し、得られた有機層に、20%塩化ナトリウム水溶液10mLを加え、15分間攪拌後、有機層と水層とを分液した。得られた有機層に、硫酸マグネシウム1gを加え、攪拌後、不溶固体を濾別し、得られた溶液を濃縮し、黒色油状物5.2gを得た。
【0055】
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、上記の黒色油状物5.2g、メタノール25mLを加え、攪拌し黒色溶液を得た。続いて、チオ尿素1.2g(15.8mmol)及び酢酸ナトリウム1.2g(15.0mmol)を加え、70℃に加温した。70℃付近で4時間攪拌した後、25℃付近まで冷却した。析出した固体を濾別し、茶褐色固体1.8gを得た。得られた茶褐色固体に、ジメチルアセトアミド5mL、エタノール1mLを加え、115℃に加温した。続いて、25℃付近まで冷却し、析出した固体を濾別し、茶褐色固体1.3gを得た。
【0056】
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、上記の茶褐色固体1.3g、水15mL、濃塩酸1.5gを加え、攪拌した。得られた混合物を110℃に加温し、110℃付近で4時間攪拌した。攪拌終了後、25℃付近まで冷却した。析出した固体を濾別し、薄い茶褐色固体として、PIOの粗体1.9gを得た。
【0057】
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、上記の(±)−5−{4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ベンジル}チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩の粗体1.9g、メタノール5mL、濃塩酸0.25gを加え、攪拌した。得られた混合物を70℃に加温した後、25℃まで冷却した。続いて、25℃付近で3時間攪拌し、析出した固体を濾別した後、40℃で乾燥し、白色固体として、PIO1.2gを得た。
【0058】
得られたPIOをHPLCで測定したところ、PIOの純度は99.64%で、特定不純物に由来する不純物は0.02%であった。
【0059】
比較例1(PI−03の製造比較例:特許文献1に記載された方法に相当する)
攪拌翼、温度計を取り付けた50mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体5.0g(18.4mmol)とジエチルエーテル10mL、ヘキサン25mLを加え攪拌し、50℃に加温し溶解させた。4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ニトロベンゼンが全て溶解したのを確認した後、徐々に5℃以下まで冷却し、2時間保持した。析出した固体を濾別し、ケークをヘキサン5mLで2回洗浄した。得られた黄色結晶を40℃で12時間、減圧下乾燥し、黄色結晶としてPI−032.5g(9.2mmol)を得た。(回収率:50.0%、HPLC純度:96.57%、特定不純物:2.58%)
【0060】
比較例2(PI−03の製造比較例:特許文献2に記載された方法に相当する)
攪拌翼、温度計を取り付けた50mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体5.0g(18.4mmol)とメタノール10mL、水10mLを加え攪拌し、50℃に加温し溶解させた。PI−03が全て溶解したのを確認した後、徐々に5℃以下まで冷却し、2時間保持した。析出した固体を濾別し、ケークを水5mLで2回洗浄した。得られた黄色結晶を40℃で12時間、減圧下乾燥し、黄色結晶としてPI−032.8g(10.3mmol)を得た。(回収率:56.0%、HPLC純度:96.77%、特定不純物:2.67%)
【0061】
比較例3(PI−03の製造比較例:特許文献3に記載された方法に相当する)
攪拌翼、温度計を取り付けた50mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体10.0g(36.4mmol)とジイソプロピルエーテル20mLを加え攪拌し、50℃に加温し溶解させた。PI−03が全て溶解したのを確認した後、徐々に5℃以下まで冷却し、2時間保持した。析出した固体を濾別し、ケークをジイソプロピルエーテル10mLで2回洗浄した。得られた黄色結晶を40℃で12時間、減圧下乾燥し、黄色結晶としてPI−037.4g(27.2mmol)を得た。(回収率:73.9%、HPLC純度:97.00%、特定不純物:2.64%)
【0062】
比較例4(PI−03の製造比較例)
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体5.0g(18.4mmol)とジイソプロピルエーテル20mLを加え攪拌し、40℃に加温し溶解させた。続いて、別途、水10mLと10%塩酸13.2g(36.8mmol、2.0当量)を混合し調製した酸水溶液を加えて1時間攪拌した。攪拌終了後、有機層と水層を分液した。得られた水層をHPLCで測定したところ、4−[2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ]ニトロベンゼンの純度は77.72%で、特定不純物は2.90%であった。また、水層と同様にして、有機層もHPLCで測定を行った。各層の測定において得られた、PI−03の面積値より、各層に含まれるPI−03の比率は、水層/有機層=1.0/0.0であった。
【0063】
比較例5(PI−03の製造比較例)
攪拌翼、温度計を取り付けた100mLの三つ口フラスコに、実施例1において得られた、特定不純物を2.33%含むPI−03の粗体5.0g(18.4mmol)とジイソプロピルエーテル20mLを加え攪拌し、40℃に加温し溶解させた。続いて、別途、水10mLと10%塩酸2.0g(5.5mmol、0.3当量)を混合し調製した酸水溶液を加えて1時間攪拌した。攪拌終了後、有機層と水層を分液した。得られた水層をHPLCで測定したところ、PI−03の純度は94.11%で、特定不純物は2.48%であった。また、水層と同様にして、有機層もHPLCで測定を行った。各層の測定において得られた、PI−03の面積値より、各層に含まれるPI−03の比率は、水層/有機層=1.0/7.7であった。
【0064】
比較例6(PIOの製造比較例)
PI−03の粗体4.8gを使用して、PI−03の塩酸塩をPI−03に戻す工程を除く、実施例14と同様の方法を行い、PIO1.1gを得た。得られたPIOをHPLCで測定したところ、PIOの純度は99.02%で、特定不純物に由来する不純物は0.21%であった。