(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明を具体化した一実施形態について、
図1〜
図11を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態の表面実装機10は、基台12上の基板固定位置に搬送されたプリント基板Pに対して電子部品を実装する装置である。尚、本明細書において、プリント基板Pの搬送方向(
図2の上下方向)をX方向とし、搬送方向に直交する方向(
図2の左右方向)をY方向とする。
【0010】
1.表面実装機の全体構造
表面実装機10は、部品供給部11から基板固定位置上のプリント基板Pへ、電子部品を移送して実装作業を行うヘッドユニット(本発明の「実装部」の一例)50を備えている。ヘッドユニット50は複数(本実施形態では4つ)が備えられており、各ヘッドユニット50が独立して各プリント基板Pに対する部品の実装作業を行うことが出来る。
【0011】
表面実装機10の基台12には、プリント基板PをX方向に搬送するとともに、所定の基板固定位置で停止させることが可能なコンベア70が備えられている(
図2参照)。コンベア70は、
図2の上下方向(X方向)に延びており、プリント基板PをX方向に搬送する。この実施形態では、コンベア70は、
図2の左右方向(Y方向)に2列設けられており、プリント基板Pを2列同時に搬送することが出来るようになっている。
【0012】
部品供給部11は、自在に移動可能とされた一括交換台車であり、コンベア70の両側(
図2の左右両側)の着脱スペースSに着脱可能とされている。各部品供給部11には、IC、トランジスタ、コンデンサ等の電子部品を供給する部品フィーダー(図略)が、多数セットされている。
【0013】
表面実装機10は、基台12の両端部(
図2の上下両端)にY方向(
図2の左右方向)に延設された2本のYフレーム15と、2本のYフレーム15の間においてX方向に延びるXアーム30とを備える。
【0014】
Xアーム30は、Yフレーム15に片持ち支持され、各Yフレーム15に一対ずつ、計4つが備えられている。各Xアーム30は、Yフレーム15から基台12の中心に向かって延び、一方のYフレーム15に支持されたXアーム30と、他方のYフレーム15に支持されたXアーム30とが、基台12の中心を挟んで、向かい合うように配置されている。各Xアーム30のYフレーム15からの突出寸法は、対向する一対のXアーム30A,30BがX方向に並んだ場合に、その自由端同士が接触しないように設定されている。
【0015】
Xアーム30は、Yフレーム15に沿ってY方向に往復移動可能とされている。具体的に説明すると、Yフレーム15には、その全長にわたり上下一対のY方向レール22が備えられ、Xアーム30には、Y方向レール22に嵌合した状態でY方向レール22に沿って移動可能なY方向スライダ32が備えられている。そして、Yフレーム15の内側面に、固定永久磁石で構成されたマグネットプレート21が取り付けられ、Xアーム30の基端側に、複数のコイルで構成された可動部31が取り付けられている。これらマグネットプレート21と可動部31は、リニアモータ(Y軸モータ)を構成している。そのため、リニアモータを駆動させると、Y方向の推進力が生じ、Y方向レール22に沿ってXアーム30をY方向に往復移動させることが出来る。
【0016】
また、Xアーム30には、ベースプレート52がX方向に往復移動可能に取り付けられている。具体的に説明すると、Xアーム30には、X方向レール34が設けられている。X方向レール34は、
図4に示すように、上下に一対が設けられ、ともにXアーム30のX方向の略全長にわたって延びている。一方、ベースプレート52には、X方向レール34に嵌合した状態でX方向レール34に沿って移動可能なX方向スライダ(図略)が備えられている。
【0017】
また、Xアーム30には、X方向に延びるボールねじ軸35と、このボールねじ軸35を駆動するX軸モータ(サーボモータ)33とが備えられている。ボール螺子軸35にはボールナット(図略)が螺合している。詳しく図示していないが、ボールナットは周り止めされた状態で、ベースプレート52に固定されている。以上のことから、サーボモータ33を駆動させると、X方向レール34に沿ってベースプレート52をX方向に往復移動させることが出来る。
【0018】
そして、ベースプレート52には、次に説明するヘッドユニット50と撮影装置(カメラ)60が取り付けられている。そのため、リニアモータ(Y軸モータ)によりXアーム30をYフレーム15に沿ってY方向に移動させ、サーボモータ(X軸モータ)33により、ベースプレート52をXアーム30に沿ってX方向に移動させることで、ヘッドユニット50及び撮影装置60を基台12にて平面方向(XY方向)に移動させることが出来る。
【0019】
ヘッドユニット50は、電子部品を吸着し得る複数本の実装ヘッド(吸着ノズル)51を備えている。実装ヘッド51は、電子部品を、ピックアップまたは実装する際に下降するとともに、電子部品をピックアップまたは実装する向きにあわせて垂直方向の軸線周りに回転する。実装ヘッド51は、X方向に複数本(本実施形態では6本)並べられた列が、Y方向に複数列(本実施形態では2列)並べられている。実装ヘッド51は、
図4に示すように、ヘッドユニット50の幅方向の両端寄りの位置に、半数ずつに分かれて配置されている。実装ヘッド51はリニアモータ(Z軸モータ)の駆動により、個別に昇降可能とされている。
【0020】
そして、この実施形態の表面実装機10は、ヘッドユニット50を4組備えているので、基台12上にプリント基板Pを4枚に搬入して、4枚同時に部品の実装作業を行うことが出来る。また、ベースプレート52には、ヘッドユニット50と共に撮影装置60が取り付けられている。撮影装置60は、撮像面を下に向けた状態で、ベースプレート52に対して固定されており、ヘッドユニット50とともに一体的に移動する構成とされている。この撮影装置60は、基板固定位置に停止したプリント基板Pや、次に説明するコンベア上に設けられたマーク77を撮影するものである。
【0021】
2.コンベアの構成
コンベア(本発明の「搬送装置」に相当)70は、
図5に示すようにY方向に向かい合う一対のコンベアフレーム71A、71Bを備える。コンベアフレーム71A、71Bは、プリント基板Pの搬送方向であるX方向に長い形状をしている。コンベアフレーム71A、71Bの内壁面であって、X方向の両側にはそれぞれローラ73、74が取り付けられており、それら2つのローラ73、74間にはコンベアベルト75A、75Bが架け渡されている。
【0022】
この実施形態では、
図6に示す手前側のローラ73が駆動ローラ、奥側のローラ74が従動ローラとなっている。そして、左右の駆動ローラ73は、連結軸85により連結されている。そして、連結軸85の外周面に設けられた歯車86とコンベアモータ(サーボモータ)81のモータ軸82の間には伝達ベルト83が掛けられており、コンベアモータ81を駆動させると、連結軸85の両側に取り付けられた左右の駆動ローラ73が同期回転する。以上のことから、コンベアモータ(本発明の「駆動部」に相当)81を駆動させると、左右のコンベアベルト75A、75Bが同期を保った状態で、X方向に循環駆動するので、ベルト上面にセットされたプリント基板PをX方向に送ることが出来る。
【0023】
尚、この実施形態は、コンベア70をX方向に2分割してあり、
図5に示すように、分割された2台のコンベア70を中継しながら、プリント基板PをX方向に搬送する構成となっている。コンベア70をX方向に2分割しているのは、Yフレーム15上にXアーム30を介して2組のヘッドユニット50をX方向の前後に搭載してあるからである。すなわち、この実施形態では、4組の各ヘッドユニット50がそれぞれ独立して部品の実装作業を行うことが出来るので、4つのヘッドユニットに対応して4つの実装ステージ(
図5では、2つの実装ステージのみ示す)Sがある。そのため、各実装ステージSごとにコンベア70を分割して、プリント基板Pをその実装ステージSの基板固定位置に搬送する構成をとっている。
【0024】
また、
図6に示す右側のコンベアベルト75Bは連結軸85に沿ってY方向に位置を変更できる構成となっており、基板幅に応じてコンベアベルト75Bの位置を変更することで、コンベア幅(すなわち、左右のコンベア間の幅寸法)を調整できる構成となっている。
【0025】
3.表面実装機の電気的構成
次に、表面実装機1の電気的構成を、
図7を参照して説明する。
表面実装機10はコントローラ(本発明の「制御装置」に相当)210により装置全体が制御統括されている。コントローラ210はCPU等により構成される演算処理部211を備える他、実装プログラム記憶手段212、搬送系データ記憶手段213、モータ制御部215、画像処理部216、記憶部217、入出力部218を設けている。演算処理部211には、操作パネル220が接続されていて、操作パネル220を介して、各種の入力操作ができるようになっている。
【0026】
実装プログラム記憶手段212にはX軸モータ、Y軸モータ、Z軸モータなどからなるサーボ機構を制御するための実装プログラムが格納され、搬送系データ記憶手段213には、コンベア70など搬送系を制御するためのデータが記憶されている。モータ制御部215は演算処理部211と共に各種モータを駆動させるものであり、同モータ制御部215には各種モータが電気的に連なっている。
【0027】
また、画像処理部216には、撮影装置60が電気的に連なっており、撮影装置60から出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれるようになっている。そして、画像処理部216では、取り込まれた撮像信号に基づいて画像の解析がそれぞれ行われるようになっている。記憶部217は、実装プログラムが格納されているほか、コンベア70を含む表面実装機を制御するのに必要な各種のデータが記憶されている。入出力部218はいわゆるインターフェースであって、表面実装機10に設けられる各種センサ類から出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。
【0028】
3.バックアップピンの段取り替え作業
図5に示すように、各コンベア70には、平板状のバックアッププレート85がそれぞれ設けられている。このバックアッププレート85には、
図8に示すようにバックアップピン87と称される支持ピンが設置されるようになっていて、部品の実装時、プリント基板Pを下から支える機能を果たす。
【0029】
一方、表面実装機10は、多品種の基板(サイズが異なる基板)を生産することが可能となっている。実装ステージS上におけるプリント基板Pの基板固定位置は、
図9に示すように、基板の品種に関係なく、ヘッドユニット50の可動範囲Hの中心Lに、プリント基板PのX方向の中央を一致させることが好ましい。これは、部品実装時、ヘッドユニット50に搭載された2列、6本の実装ヘッド51をもっとも効率よく使用することが出来ると共に、ヘッドユニット50の移動量を最小にできるからである。
【0030】
ところで、品種切り替えの際には、そのプリント基板Pの基板固定位置に合わせて、バックアップピン87の配置を変える作業(以下、バックアップピンの段取り替え作業)を行う必要がある。従来は、品種の切り替え時に行う、バックアップピン87の段取り替え作業を、基板固定位置がどこかはっきりしない状態で行っていたので、作業性が悪かった。
【0031】
そこで、本実施形態では、コンベアベルト75Bのベルト表面に外部から視認可能な三角形状のマーク(本発明の「目印」)77を印刷等により形成し、品種の切り替えに伴うバックアップピン87の段取り替え作業を行う際に、そのマーク77を使って作業者に基板固定位置を認識させるようにしている。
【0032】
具体的には、その品種のプリント基板Pを基板固定位置に置いたときの、基板先頭位置(本発明の「基板固定位置に対応した停止位置」に相当)にマーク77を停止させるようにしている。例えば、
図9に示すように、品種を小基板P1に切り替える場合には、基板先頭位置S1にマーク77を停止させ、品種を中基板P2に切り替える場合には、基板先頭位置S2にマーク77を停止させ、品種を大基板P3に切り替える場合には、基板先頭位置S3にマーク77を停止させる。このようにすれば、マーク77に基板先端を合わせるようにしてプリント基板Pを置けば、その基板Pの基板固定位置を認識できるので、バックアップピン87の段取り替え作業を効率的に行うことが可能となる。
【0033】
そして、本実施形態では、コントローラ210の記憶部217に対して、各品種P1〜P3の基板先頭位置S1〜S3の位置情報(基台上の位置データ)を予め記憶してある。従って、コンベアベルト75上のマーク77の位置(X方向の位置)さえ分かれば、基板先頭位置Sとマーク位置の差分を演算処理部211にて計算することが出来るので、差分に相当する量、コンベアモータ81を回転させることで、目標とする基板先頭位置Sにマーク77を停止させることが出来る。
【0034】
尚、コンベア上のマーク77の位置を認識するには、コンベアモータ81が、原点からどれだけ回転したかをデータとして記憶しておき、モータ81の回転量から求める方法や、ベースプレート52に搭載された撮影装置60を使用してコンベアベルト75上のマーク77の位置(X方向の位置)を画像で認識する方法がある。
【0035】
以下、
図10を参照してバックアップピン87の段取り替え作業の流れを簡単に説明する。ここでは、小基板P1から中基板P2に品種が切り替えられる場合を例にとって説明を行うものとする。
【0036】
まず、作業者により、生産される基板Pのデータが入力される。ここでは、中基板P2に品種が切り替えられるので、中基板P2の全長(X方向の長さ)や幅寸法(Y方向の長さ)など基板の形状に関するデータや、実装される部品の情報が操作パネル220を通じて入力される(S10)。
【0037】
生産される基板Pのデータが入力されると、S20では、入力された基板Pの幅寸法に合わせてコンベア幅が変更される。その後、S30では、基板先頭位置Sのデータが記憶部217から読み出される。ここでは、中基板P2が生産されるので、基板先頭位置S2のデータ(X方向に関する位置のデータ)が読み出される。
【0038】
続く、S40では、コンベア表面に形成されたマーク77の位置(X方向の位置)を認識する処理が行われる。具体的には、
図11の(a)に示すように、ヘッドユニット50に装着された撮影装置60を、まず、コンベアベルト75Bの上方に移動させ、その後、コンベア70を駆動させながら、コンベアベルト75Bの画像を撮影装置60にて連続的に撮影する。これにより、コンベア70上のマーク77は、X方向に移動するので、やがて、撮影装置60にて撮影される。
【0039】
表面実装機のコントローラ210は、撮影装置60から得られる画像を連続的に解析しており、画像中央(X方向の中央)にマーク77が検出されると、そこでコンベア70の駆動を停止させる。これにより、マーク77の位置をコントローラ210にて認識することが出来る。具体的には、撮影装置60の真下に、マーク77があると、コントローラ210にて認識することが出来る。
【0040】
尚、この実施形態では、ヘッドユニット50の可動範囲Hの中心Lに撮影装置60を停止させて撮影を行っているので、
図11に示すように、マーク77は、可動範囲Hの中心Lにて位置検出されることになる。
【0041】
そして、S40でマーク位置を認識する処理が行われると、続くS50では、S30で読み出した基板先頭位置S2までマーク77を移動させる処理がコントローラ210により実行される。具体的には、S40で認識したマーク77の位置からS30で読み出した基板先頭位置S2までの距離Dが計算される。そして、コントローラ210の制御によりコンベアモータ81が駆動され、コンベアベルト75A、75Bが距離Dだけ進められる。これにより、ベルト上のマーク77は可動範囲Hの中心Lから距離D移動して、
図11の(b)に示すように、基板先頭位置S2にて停止する。
【0042】
その後、S60では、作業者により、表面実装機10の非常停止スイッチが押されたことで各モータへの電源供給が停止され、表面実装機10は停止状態となる。表面実装機10を停止させるのは、バックアップピン87の段取り替え作業を安全に行う必要があるからである。
【0043】
そして、S70では、
図11の(c)に示すように、基板先端をマーク77に合わせるようにして、中基板P2がコンベア70上にセット(作業者の手作業によりセット)される。マーク77に合わせて中基板P2をセットするのは、中基板P2の基板固定位置を認識するためである。その後、S80では、S70でセットしたプリント基板P2の真下にバックアップピン87を配置する作業が、作業者により行われる。
【0044】
4.効果説明
本実施形態では、マーク77に合わせて基板Pを配置することで(S70)、その基板Pの基板固定位置を認識することが出来る。そのため、バックアップピン87の段取り替え作業を効率的に行うことが可能となる。また、この実施形態では、撮影装置60を利用してマーク77の位置を認識するようにしているので、例えば、コンベアベルト75が伸び縮みした場合であっても、ベルト上におけるマーク77の位置を正確に認識することが出来るので、マーク77を目標とする基板先端位置S1〜S3に正確に停止させることが可能となる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、コンベアベルト75上に付す目印の一例に、三角形型のマーク77を例示したが、例えば、
図12に示すように、コンベアベルト上の一部の色を変え、色の境界を目印に使用することも可能である。尚、
図12では、エリアB1を白色、エリアB2を黒色としており、両エリアB1、B2の境界を目印としている。
【0047】
(2)上記実施形態では、マーク77を基板先頭位置に停止させて、マーク77に先端を合わせるように基板Pをセットすることにより、その基板Pの基板固定位置
を認識した例を示したが(S70、S80)、マーク77を基板後端位置に停止させて、マーク77に後端を合わせるように基板Pをセットするようにしてもよい。また、上記実施形態では、基板固定位置の一例として、ヘッドユニットの可動領域Hの中心Lにプリント基板の中心を一致させる例を示したが、それ以外の位置を基板固定位置としてもよい。