(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1に示す軌道1は、車両2が走行する通路(線路)である。軌道1は、車両2の車輪4aを支持し案内してこの車両2を走行させるレール1aなどを備えている。車両2は、軌道1に沿って走行する鉄道車両である。車両2は、例えば、電車、気動車又は機関車などである。車両2は、
図1に示す車体3と、台車4と、
図1〜
図4に示すけん引装置5などを備えている。車体3は、旅客又は貨物などの積載物を輸送するための構造物である。車体3は、図
2に示すように、けん引装置5の連結部材9Bに連結される車体側連結部3aなどを備えており、この車体側連結部3aは車体3に装着されている中心ピンに固定されている。
図1に示す台車4は、車体3を支持して走行する装置である。台車4は、
図1に示すように、レール1aと転がり接触する車輪4aと、台車4の主要構成部である台車枠4bと、
図2に示すようにこの台車枠4bに固定されておりけん引装置5の連結部材9A,9Bに連結される台車側連結部4cなどを備えている。
【0045】
図1〜
図4に示すけん引装置5は、車体3と台車4とを弾性部材7A,7Bを介して連結する装置である。けん引装置5は、車体3と台車4との間で前後方向の力を伝達させる。
図1〜
図5に示すけん引装置5は、車体3と台車4とをゴム筒を介して一本のけん引リンクによって連結した一本リンク式けん引装置である。けん引装置5は、車体3と台車4との間の上下、左右及び回転運動を許容し、これらの間の前後運動を拘束する。けん引装置5は、
図1〜
図4に示すリンク部材6と、
図2及び
図4に示す弾性部材7A,7Bと、
図2に示す外筒8A,8Bと、
図2及び
図4に示す連結部材9A,9Bと、
図2に示す固定部材10A,10Bなどを備えている。
【0046】
図1〜
図4に示すリンク部材6は、車体3と台車4との間で荷重を伝達するために、連結部材9Aと連結部材9Bとを連結する部材である。リンク部材6は、車体3と台車4との間で駆動力及び制動力などの前後力を伝達する。リンク部材6は、けん引装置5の本体部分(一本リンク本体)を構成しており、外観が棒状の連結管であり引張棒として機能する。リンク部材6は、
図2に示すように、保持筒6a,6bとブシュ孔6c,6dなどを備えている。保持筒6aは、外筒8A、弾性部材7A及び連結部材9Aを保持する部分であり、保持筒6bは外筒8B、弾性部材7B及び連結部材9Bを保持する部分である。保持筒6a,6bは、リンク部材6の両端部にそれぞれ円筒状に形成されており、保持筒6aはリンク部材6の台車4側に形成されており、保持筒6bはこのリンク部材6の車体3側に形成されている。ブシュ孔6c,6dは、リンク部材6の両端部を貫通する貫通孔であり、ブシュ孔6cは保持筒6aに形成されており、ブシュ孔6dは保持筒6bに形成されている。
【0047】
図2及び
図4に示す弾性部材7Aは、リンク部材6のブシュ孔6cと連結部材9Aの外周部との間で伝達する振動を緩和する部材である。弾性部材7Bは、リンク部材6のブシュ孔6dと連結部材9Bの外周部との間で伝達する振動を緩和する部材である。弾性部材7Aは、外筒8Aと連結部材9Aとの間で伝達する振動を緩和するとともに、これらの間に作用する衝撃を緩和する。弾性部材7Bは、外筒8Bと連結部材9Bとの間で伝達する振動を緩和するとともに、これらの間に作用する衝撃を緩和する。弾性部材7Aは、台車4側の連結部材9Aと外筒8Aとの間に配置されており、弾性部材7Bは車体3側の連結部材9Bと外筒8Bとの間に配置されている。弾性部材7A,7Bは、けん引装置5の緩衝ゴム部分(一本リンクゴム)を構成している。弾性部材7A,7Bは、軸回りの回転変位であるねじり方向及び軸直角回りの回転変位であるこじり方向には柔らかい性質を有し、軸方向の引張及び圧縮には硬い性質を有するゴム筒(ゴムブシュ)である。弾性部材7A,7Bは、いずれも同一構造であり、
図2に示すように外周部7aと内周部7bなどを備えている。
図2に示す外周部7aは、外筒8A,8Bの内周部8bと接合する部分であり、内周部7bは連結部材9A,9Bの外周部9bと接合する部分である。弾性部材7A,7Bは、外筒8A,8Bの内周部8bと連結部材9A,9Bの外周部9bとの間にゴムを流し込むことによって略円筒状に成形されており、外筒8A,8Bの内周部8bと連結部材9A,9Bの外周部9bとに加硫接合してこれらと一体となる。
【0048】
図2に示す外筒8Aは、リンク部材6のブシュ孔6cに挿入される部材であり、外筒8Bはリンク部材6のブシュ孔6dに挿入される部材である。外筒8A,8Bは、例えば、機械構造用炭素鋼管などを円筒状に加工して形成されており、いずれも同一構造であり弾性部材7A,7Bをそれぞれ収容する。外筒8A,8Bは、ブシュ孔6c,6dに圧入されてこのブシュ孔6c,6dと嵌合する外周部8aと、弾性部材7A,7Bの外周部7aと接合する内周部8bなどを備えている。
【0049】
図2及び
図4に示す連結部材9Aは、台車4に連結される部材であり、連結部材9Bは車体3に連結される部材である。
図2に示すように、連結部材9Aは台車側連結部4cに連結されており、連結部材9Bは車体側連結部3aに連結されている。連結部材9A,9Bは、外観が棒状の部材(心棒)であり、弾性部材7A,7Bの内周部7bと接合した状態でこの内周部7bに収容されている。連結部材9A,9Bは、例えば、機械構造用炭素鋼などを所定の形状に加工して形成されている。連結部材9A,9Bは、いずれも同一構造であり、
図2及び
図4に示す軸部9aと、
図2に示す外周部9bと、
図2及び
図4に示す取付部9cと、取付孔9dなどを備えている。
【0050】
図2及び
図4に示す軸部9aは、弾性部材7A,7Bに収容される部分であり、断面が略円形に形成されている。
図2に示す外周部9bは、弾性部材7A,7Bの内周部7bと接合する部分である。外周部9bは、弾性部材7A,7Bの内周部7bと一体となって接合することによって、連結部材9A,9Bの軸方向に荷重が作用したときに、弾性部材7A,7Bから軸部9aが抜け出すのを防止する。
図2及び
図4に示す取付部9cは、固定部材10A,10Bを取り付けるための部分である。取付部9cは、軸部9aと一体に板状に形成されており、軸部9aの両端部から所定の長さで形成されている。取付孔9dは、軸部9aの端部に形成された貫通孔である。
【0051】
図2に示す固定部材10Aは、連結部材9Aを台車4に固定する部材であり、固定部材10Bは連結部材9Bを車体3に固定する部材である。固定部材10Aは、台車側連結部4cに連結部材9Aを着脱自在に固定しており、固定部材10Bは車体側連結部3aに連結部材9Bを着脱自在に固定している。固定部材10A,10Bは、例えば、ボルト頭部10aを有する締結ボルトであり、このボルト頭部10aと取付部9cとの間で座金を挟み込むように、この取付部9cに装着される。固定部材10Aは、
図4に示す連結部材9Aの取付孔9dに雄ねじ部を挿入して、台車側連結部4cの雌ねじ部にこの雄ねじ部の先端部がねじ込まれる。固定部材10Bは、連結部材9Bの取付孔9dに雄ねじ部を挿入して、車体側連結部3aの雌ねじ部にこの雄ねじ部の先端部がねじ込まれる。
【0052】
図4に示す加振装置11は、けん引装置5に加振力を作用させる装置である。加振装置11は、例えば、使用者の操作によってけん引装置5を打撃して、このけん引装置5に加振力(打撃加重)を作用させるインパルスハンマである。加振装置11は、
図2に示す固定部材10Bを車体側連結部3aから取り外して、
図4に示すようにけん引装置5を車体3側から取り外し台車4側のみに連結した状態で、車体3と台車4との間で伝達される荷重の方向にけん引装置5を加振させる。加振装置11は、固定部材10Aのボルト頭部10a及びリンク部材6の保持筒6aをリンク部材6の長手方向(車両2の前後方向(図中A方向))に使用者の操作によって打撃し、けん引装置5に加振力を作用させる。加振装置11は、けん引装置5に打撃を加えるハンマー部11aと、使用者が操作するときに把持する把持部11bと、けん引装置5にハンマー部11aが衝突したときに発生する打撃荷重(加振力)を検出する荷重検出部(ロードセル)11cなどを備えている。加振装置11は、固定部材10A側(台車4側)のボルト頭部10aの加振点P
Aに加振力を作用させる。加振装置11は、
図5に示すように、けん引装置5に加えた加振力に応じた出力信号(加振力信号)を信号処理部15に出力する。
【0053】
図4及び
図5に示す振動検出装置12A〜12Cは、けん引装置5を加振させたときにこのけん引装置5に発生する振動を検出する装置である。振動検出装置12A〜12Cは、加振装置11によってけん引装置5が加振されたときに、このけん引装置5に発生する振動を検出する。振動検出装置12A〜12Cは、例えば、けん引装置5の加速度を検出する加速度センサである。振動検出装置12A〜12Cは、
図4に示すように、けん引装置5の表面に着脱自在に装着されている。振動検出装置12Aは、固定部材10A側(台車4側)のボルト頭部10a上の測定点V
1(リンク部材6の中心軸に対して加振点P
Aとは対称位置)において、このボルト頭部10aの振動を検出する。振動検出装置12Bは、リンク部材6の台車4側の保持筒6a上の測定点V
2において、この保持筒6aの振動を検出する。振動検出装置12Cは、連結部材9B側(車体3側)の取付部9c上の測定点V
3において、この取付部9cの振動を検出する。振動検出装置12A〜12Cは、
図5に示すように、けん引装置5に発生する振動に応じた出力信号(振動検出信号)を信号処理部15に出力する。
【0054】
図5に示す評価装置13は、けん引装置5を評価する装置である。評価装置13は、加振装置11によってけん引装置5に加振力を作用させてこのけん引装置5を振動させることによって、このけん引装置5を評価する。評価装置13は、
図4に示す装着部14と、
図5に示す信号処理部15と、振動伝達量測定部16A〜16Cと、振動伝達量情報記憶部17と、共振周波数同定部18A〜18Cと、共振周波数情報記憶部19と、ばね定数演算部20A,20Bと、演算条件設定部21と、演算条件情報記憶部22と、ばね定数情報記憶部23と、劣化状態評価部24A,24Bと、評価情報記憶部25と、評価プログラム記憶部26と、表示部27と、制御部28などを備えている。評価装置13は、加振装置11によって加振されたけん引装置5の振動を振動検出装置12A〜12Cによって検出して、この検出結果に基づいてけん引装置5の振動特性を測定し、弾性部材7A,7Bの劣化状況などを判定する。評価装置13は、パーソナルコンピュータなどを中心として構成されており、評価プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0055】
図4に示す装着部14は、振動検出装置12A〜12Cをけん引装置5に着脱自在に装着する手段である。装着部14は、例えば、磁気吸引力を発生する磁石であり、振動検出装置12A〜12Cの端部に取り付けられている。装着部14は、保持筒6aの表面、ボルト頭部10aの表面及び連結部材9Bの表面に振動検出装置12A〜12Cを着脱自在に取り付ける。
【0056】
図5に示す信号処理部15は、加振装置11が出力する加振力信号を処理するとともに、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号を処理する手段である。信号処理部15は、例えば、加振力信号及び振動検出信号を増幅する増幅回路などを備えている。信号処理部15は、処理後の加振力信号及び振動検出信号を制御部28に出力する。
【0057】
図6に示すグラフは、
図4に示すような車体3側のみが取り外された状態の新品のけん引装置5を加振点P
Aで加振したときの振動伝達量の測定結果である。
図6に示す縦軸は、振動伝達量(振動伝達スペクトル)(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。
図6に示す実線の波形は、測定点V
2-V
1間の振動伝達量の測定結果であり、太点線の波形は測定点V
3-V
1間の振動伝達量の測定結果であり、細点線は測定点V
3-V
2間の振動伝達量の測定結果である。
【0058】
図6に示すグラフは、衝撃加振試験(打撃試験)によって測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間の振動加速度のスペクトル(パワースペクトル)を求めた後に、この振動加速度のスペクトルをレベル化し、測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間のレベル差(以下、振動伝達量という)で評価した振動伝達スペクトル(振動伝達量の周波数特性)である。
図6に示すf
1,f
2は、加振点P
Aを加振したときにこの加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを介して連結部材9Bまで伝達される振動の共振周波数(共振点)である。f
3は、共振点f
1と共振点f
2との間の谷に発生する反共振周波数(反共振点)である。
【0059】
図5に示す振動伝達量測定部16A〜16Cは、振動検出装置12A〜12Cの検出結果に基づいて振動伝達量を測定する手段である。
図4に示すように、振動伝達量測定部16Aは、振動検出装置12A,12Bが出力する振動検出信号に基づいて、測定点V
2-V
1間の振動伝達量を測定する。振動伝達量測定部16Aは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに、
図6に実線で示すような測定点V
2-V
1間の振動伝達量の波形を生成する。振動伝達量測定部16Bは、振動検出装置12A,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、測定点V
3-V
1間の振動伝達量を測定する。振動伝達量測定部16Bは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに、
図6に太点線で示すような測定点V
3-V
1間の振動伝達量の波形を生成する。振動伝達量測定部16Cは、振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、測定点V
3-V
2間の振動伝達量を測定する。振動伝達量測定部16Cは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに、
図6に細点線で示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形を生成する。
図5に示す振動伝達量測定部16A〜16Cは、
図6に示すような振動伝達量を測定し、この測定結果を振動伝達量測定信号(振動伝達量情報)として制御部28に出力する。
【0060】
図5に示す振動伝達量情報記憶部17は、振動伝達量測定部16A〜16Cが測定した振動伝達量を記憶する手段である。振動伝達量情報記憶部17は、例えば、振動伝達量測定部16A〜16Cが出力する測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間の振動伝達量情報をけん引装置5毎に記憶するメモリなどである。
【0061】
共振周波数同定部18A〜18Cは、けん引装置5の共振周波数を同定する手段である。共振周波数同定部18A〜18Cは、振動伝達量測定部16A〜16Cの測定結果に基づいて、振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3を同定する。共振周波数同定部18A〜18Cは、けん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、このけん引装置5の共振周波数f
1〜f
3を同定する。共振周波数同定部18A〜18Cは、
図6に示すように、振動伝達量測定部16A〜16Cが測定した測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間の振動伝達量に基づいて、これらの振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3を同定する。
【0062】
図5に示す共振周波数同定部18Aは、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aが出力する振動検出信号と、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号とに基づいて、けん引装置5の共振周波数f
1,f
2を同定する。共振周波数同定部18Aは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときの測定点V
2-V
1間の振動伝達量に着目して、
図6に実線で示すような測定点V
2-V
1間の振動伝達量の波形に基づいて、けん引装置5の共振周波数f
1,f
2を同定する。
【0063】
図5に示す共振周波数同定部18Bは、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、けん引装置5の共振周波数f
1,f
2を同定する。共振周波数同定部18Bは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときの測定点V
3-V
1間の振動伝達量に着目して、
図6に太点線で示すような測定点V
3-V
1間の振動伝達量の波形に基づいて、けん引装置5の共振周波数f
1,f
2を同定する。
【0064】
図5に示す共振周波数同定部18Cは、固定部材10Aを加振したときに、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、けん引装置5の共振周波数f
3を同定する。共振周波数同定部18Cは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに、
図6に細点線で示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形に基づいて、けん引装置5の共振周波数f
3を同定する。
図5に示す共振周波数同定部18A〜18Cは、同定後の共振周波数f
1〜f
3を共振周波数信号(共振周波数情報)として制御部28に出力する。
【0065】
図5に示す共振周波数情報記憶部19は、共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数を記憶する手段である。共振周波数情報記憶部19は、例えば、共振周波数同定部18A〜18Cが出力する共振周波数情報をけん引装置5毎に記憶するメモリなどである。
【0066】
ばね定数演算部20A,20Bは、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数を演算する手段である。ばね定数演算部20A,20Bは、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数を演算する。ばね定数演算部20A,20Bは、
図4に示すように、車体3と台車4との間で伝達される荷重の方向(図中A方向)に、車体3から連結部材9Bを取り外した状態でけん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数を演算する。
【0067】
図7に示す記号は、打撃試験におけるけん引装置5の振動モデルを2質点系モデルと仮定したときに想定されるこの振動モデルの各要素である。x
1は、台車4側の固定部材10Aの変位(測定点V
1の変位)(m)である。x
2は、リンク部材6の変位(測定点V
2の変位)(m)である。x
3は、台車4側の連結部材9Bの変位(測定点V
3の変位)(m)である。M
1は、リンク部材6及び外筒8A,8Bの重量である。M
2は、車体3側の連結部材9Bの重量(kg)である。K
1は、台車4側の弾性部材7Aのばね定数(N/m)である。K
2は、車体3側の弾性部材7Bのばね定数(N/m)である。C
1は、台車4側の弾性部材7Aの減衰定数(Ns/m)である。C
2は、車体3側の弾性部材7Bの減衰定数(Ns/m)である。
【0068】
(ばね定数K
2の演算方法)
ばね定数演算部20Aは、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
2,V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、
図4に示すように、固定部材10Aを加振したときに、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、車体3側の弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに共振周波数同定部18Cが同定した
図6に示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量における共振周波数f
3に基づいて、車体3側の弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。
図4に示す加振点P
Aを加振する打撃試験は、測定点V
2(変位x
2)を強制振動(調和励振)させたときに、測定点V
3(変位x
3)に伝わる振動を計測する試験とみなせる。ばね定数演算部20Aは、
図6に示すように、加振点P
Aを加振したときの測定点V
3-V
2間の振動伝達量に着目して、以下の数1によってばね定数K
2を演算する。
【0070】
ここで、数1に示すω
3は、角周波数(rad/s)であり、
図4に示す加振点P
Aにおける測定点V
3-V
2間の共振周波数f
3を角速度に変換した値ω
3=2πf
3である。
図5に示すばね定数演算部20Aは、演算条件設定部21が設定した重量M
2、及び共振周波数同定部18Cが同定した共振周波数f
3を角周波数に変換した値を数1に代入することによって、ばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、演算後のばね定数K
2をばね定数演算信号(ばね定数情報)として制御部28に出力する。
【0071】
(ばね定数K
1の演算方法)
図5に示すばね定数演算部20Bは、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7Aを通じてこのけん引装置5の測定点V
2まで伝達する振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Aのばね定数K
1を演算する。ばね定数演算部20Bは、
図4に示すように、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aが出力する振動検出信号と、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Aのばね定数K
1を演算する。
【0072】
図5に示すばね定数演算部20Bは、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
1,V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12A,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Aのばね定数K
1を演算する。ばね定数演算部20Bは、
図4に示すように、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Aのばね定数K
1を演算する。
【0073】
ばね定数演算部20Bは、
図4に示す加振点P
Aに加振力を作用させたときに共振周波数同定部18A,18Bが同定した
図6に示す測定点V
2-V
1間及び測定点V
3-V
1間の振動伝達量における共振周波数f
1,f
2に基づいて、車体3側の弾性部材7Aのばね定数K
1を演算する。
図7に示すx
1〜x
3は、加振点P
Aを加振したときの各測定点V
1(変位x
1)、測定点V
2(変位x
2)及び測定点V
3(変位x
3)の振動を調和振動と仮定すると、以下の数2によって置き換えることができる。
【0075】
ここで、数2に示すtは、時間(s)であり、ωは角周波数(rad/s)であり、iは複素数である。
図7に示す振動モデルの運動方程式は、以下の数3によって表される。
【0077】
但し、ばね定数K
1を演算する過程では、減衰定数C
1,C
2が十分に小さいものとして無視する。この場合には、
図7に示す振動モデルの運動方程式は、以下の数4によって表される。
【0079】
数4を解くと、測定点V
2-V
1間の振動伝達量X
2/X
1、測定点V
3-V
1間の振動伝達量X
3/X
1及び測定点V
3-V
2間の振動伝達量X
3/X
2は、それぞれ以下の数5〜数7によって表される。
【0083】
数5〜数7に示す振動伝達量X
2/X
1,X
3/X
1,X
3/X
2は、伝達関数に相当し、数5〜数7において分母をゼロとする周波数が各振動伝達量の共振周波数であり、分子をゼロとする周波数が反共振周波数となる。例えば、数7の分母をゼロとすると、測定点V
3-V
2間の振動伝達量の角周波数(共振角周波数)ω
3は数1に示す通りとなる。数4より以下の数8が成り立つ周波数が共振周波数f
1,f
2である。
【0085】
数8を満たす角周波数ωの解は、以下の数9によって表される。
【0087】
数9によって得られた2つの解(ω
1,ω
2)は、
図4に示す測定点V
2-V
1間及び測定点V
3-V
1間の2つの共振周波数f
1,f
2を角速度に変換した値ω
1=2πf
1,ω
2=2πf
2である。ここで、ω
12及びω
22を足し合わせると以下の数10によって表される。
【0089】
ばね定数K
1を求めるために、数10を以下の数11に変形する。
【0091】
ばね定数演算部20Bは、演算条件設定部21が設定した重量M
1、重量M
2、ばね定数演算部20Aが演算したばね定数K
2、及び共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数ω
1,ω
2を数11に代入することによって、ばね定数K
1を演算する。ばね定数演算部20Bは、演算後のばね定数K
1をばね定数演算信号(ばね定数情報)として制御部28に出力する。
【0092】
図5に示す演算条件設定部21は、ばね定数K
1,K
2を演算するために必要な演算条件を設定する手段である。演算条件設定部21は、
図7に示す重量M
1,M
2などのばね定数K
1,K
2の演算に必要なけん引装置5の緒元をけん引装置5毎に演算条件情報として設定する。演算条件設定部21は、例えば、使用者の手動操作によってけん引装置5の種類(形式)毎に演算条件情報を入力する入力装置又は補助入力装置などである。演算条件設定部21は、設定後の演算条件を演算条件信号(演算条件情報)として制御部28に出力する。
【0093】
図5に示す演算条件情報記憶部22は、演算条件設定部21が設定した演算条件情報を記憶する手段である。演算条件情報記憶部22は、例えば、演算条件設定部21が出力する演算条件情報をけん引装置5の種類(形式)毎に記憶するメモリなどである。
【0094】
ばね定数情報記憶部23は、ばね定数演算部20A,20Bが演算したばね定数情報を記憶する手段である。ばね定数情報記憶部23は、例えば、ばね定数演算部20A,20Bが出力するばね定数情報をけん引装置5毎に記憶するメモリなどである。
【0095】
劣化状態評価部24Aは、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2の変化に基づいて、この弾性部材7A,7Bの劣化状態を評価する手段である。劣化状態評価部24Aは、例えば、新品のけん引装置5を加振させたときの弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2、又は新品の状態から所定時間経過後の使用済みのけん引装置5を加振させたときの弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2などを基準ばね定数(基準値)とし、ばね定数演算部20A,20Bが演算したばね定数K
1,K
2とこの基準ばね定数とを比較する。劣化状態評価部24Aは、ばね定数演算部20A,20Bが演算したばね定数K
1,K
2が基準ばね定数よりも大きく、かつ、このばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7A,7Bが経年によって硬化し劣化状態であると判定する。また、劣化状態評価部24Aは、ばね定数演算部20A,20Bが演算したばね定数K
1,K
2が基準ばね定数よりも小さく、かつ、このばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7A,7Bが損傷し劣化状態であると判定する。一方、劣化状態評価部24Aは、ばね定数演算部20A,20Bが演算したばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲内であるときには、弾性部材7A,7Bが未劣化状態であると判定する。劣化状態評価部24Aは、弾性部材7A,7Bの判定結果を劣化状態判定信号(劣化状態判定情報)として制御部28に出力する。
【0096】
劣化状態評価部24Bは、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3の変化に基づいて、弾性部材7A,7Bの劣化状態を評価する手段である。劣化状態評価部24Bは、例えば、新品のけん引装置5を加振させたときのこのけん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3、又は新品の状態から所定時間経過後の使用済みのけん引装置5を加振させたときのこのけん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3を基準共振周波数とし、共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数f
1〜f
3とこの基準共振周波数とを比較する。劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数f
1〜f
3が基準共振周波数よりも高く、かつ、この共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7A,7Bが経年によって硬化し劣化状態であると判定する。また、劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数f
1〜f
3が基準共振周波数よりも低く、かつ、この共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7A,7Bが損傷し劣化状態であると判定する。一方、劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18A〜18Cが同定した共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲内であるときには、弾性部材7A,7Bが未劣化状態であると判定する。劣化状態評価部24Bは、弾性部材7A,7Bの判定結果を劣化状態評価信号(劣化状態評価情報)として制御部28に出力する。
【0097】
評価情報記憶部25は、劣化状態評価部24A,24Bが評価した劣化状態判定情報を記憶する手段である。評価情報記憶部25は、例えば、劣化状態評価部24A,24Bが出力する劣化状態評価情報をけん引装置5毎に記憶するメモリなどである。
【0098】
評価プログラム記憶部26は、けん引装置5を加振させてこのけん引装置5を評価する評価プログラムを記憶する手段である。評価プログラム記憶部26は、情報記録媒体から読み取った評価プログラム、又は電気通信回線を通じて取り込まれた評価プログラムなどを記憶するメモリである。
【0099】
表示部27は、種々の情報を表示する手段である。表示部27は、例えば、
図6に示すような測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形を表示したり、弾性部材7A,7B毎のばね定数K
1,K
2及び共振周波数f
1〜f
3を表示したり、ばね定数K
1,K
2の演算条件情報を表示したり、弾性部材7A,7Bの劣化状態の判定結果などを表示したりする。
【0100】
図5に示す制御部28は、評価装置13に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部28は、例えば、評価プログラム記憶部26から評価プログラムを読み出してこの評価プログラムに従って所定の評価処理を実行したり、信号処理部15が出力する加振力信号に基づいてけん引装置5に適正な加振力が作用しているか否かを判断したり、信号処理部15が出力する振動検出信号に基づいて振動伝達量測定部16A〜16Cに振動伝達量の測定を指令したり、振動伝達量測定部16A〜16Cが出力する振動伝達量情報の記憶を振動伝達量情報記憶部17に指令したり、振動伝達量測定部16A〜16Cが出力する振動伝達量情報に基づいて共振周波数同定部18A〜18Cに共振周波数f
1〜f
3の同定を指令したり、共振周波数同定部18A〜18Cが出力する共振周波数情報の記憶を共振周波数情報記憶部19に指令したり、ばね定数演算部20A,20Bにばね定数K
1,K
2の演算を指令したり、演算条件設定部21が出力する演算条件情報の記憶を演算条件情報記憶部22に指令したり、共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を読み出してばね定数演算部20A,20Bに出力したり、演算条件情報記憶部22から演算条件情報を読み出してばね定数演算部20A,20Bに出力したり、ばね定数情報記憶部23からばね定数情報を読み出して劣化状態評価部24Aに出力したり、共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を読み出して劣化状態評価部24Bに出力したり、劣化状態評価部24A,24Bに劣化状態の評価を指令したり、表示部27に劣化状態の評価結果などの表示を指令したりする。制御部28には、信号処理部15、振動伝達量測定部16A〜16C、振動伝達量情報記憶部17、共振周波数同定部18A〜18C、共振周波数情報記憶部19、ばね定数演算部20A,20B、演算条件設定部21、演算条件情報記憶部22、ばね定数情報記憶部23、劣化状態評価部24A,24B、評価情報記憶部25、評価プログラム記憶部26及び表示部27などが相互に通信可能なように接続されている。
【0101】
次に、この発明の第1実施形態に係る連結装置の評価装置の動作を説明する。
以下では、
図5に示す制御部28の動作を中心として説明する。
図8に示すステップ(以下、Sという)100において、評価プログラム記憶部26から評価プログラムを制御部28が読み込む。図示しない電源が使用者にON操作されると評価装置13に電力が供給されて、評価プログラム記憶部26から評価プログラムを制御部28が読み込み、一連の評価処理を制御部28が実行する。
【0102】
S110において、振動検出装置12B,12Cから振動検出信号が入力したか否かを制御部28が判断する。
図4に示す加振点P
Aに使用者が加振装置11を操作して加振力を作用させる。その結果、固定部材10A上の加振点P
Aから弾性部材7Aを通じてリンク部材6上の測定点V
2まで伝達する振動を振動検出装置12Bが検出する。同時に、固定部材10A上の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じて連結部材9B上の測定点V
3まで伝達する振動を振動検出装置12Cが検出する。このため、振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号が信号処理部15を通じて制御部28に入力する。振動検出装置12B,12Cから振動検出信号が入力したと制御部28が判断したときにはS120に進み、振動検出装置12B,12Cから振動検出信号が入力していないと制御部28が判断したときには一連の評価処理を終了する。
【0103】
S120において、測定点V
3-V
2間の振動伝達量の測定を振動伝達量測定部16Cに指令する。振動検出装置12B,12Cから振動検出情報が制御部28に入力するとこの振動検出情報を振動伝達量測定部16Cに制御部28が出力し、振動伝達量測定部16Cに振動伝達量の測定を制御部28が指令する。その結果、
図6に細点線で示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形を振動伝達量測定部16Cが生成し、振動伝達量情報を制御部28に出力すると、この振動伝達量情報を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が出力する。振動伝達量情報の記憶を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が指令すると、この振動伝達量情報が振動伝達量情報記憶部17に記憶される。
【0104】
S130において、測定点V
3-V
2間の振動伝達量の共振周波数f
3の同定を共振周波数同定部18Cに制御部28が指令する。振動伝達量情報記憶部17から振動伝達量情報を制御部28が読み出して、この振動伝達量情報を制御部28が共振周波数同定部18Cに出力するとともに、共振周波数f
3の同定を共振周波数同定部18Cに制御部28が指令する。その結果、
図6に示すような共振周波数f
3を共振周波数同定部18Cが同定し、共振周波数同定部18Cが共振周波数情報を制御部28に出力すると、この共振周波数情報を共振周波数情報記憶部19に制御部28が出力する。共振周波数情報の記憶を共振周波数情報記憶部19に制御部28が指令すると、この共振周波数情報が共振周波数情報記憶部19に記憶される。
【0105】
S140において、ばね定数K
2の演算をばね定数演算部20Aに制御部28が指令する。共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を制御部28が読み出して、この共振周波数情報を制御部28がばね定数演算部20Aに出力する。また、演算条件情報記憶部22から演算条件情報を制御部28が読み出して、この演算条件情報を制御部28がばね定数演算部20Aに出力する。ばね定数K
2の演算をばね定数演算部20Aに制御部28が指令すると、ばね定数演算部20Aが重量M
2及び共振周波数ω
3を数1に代入してばね定数K
2を演算して、ばね定数演算部20Aがばね定数情報を制御部28に出力する。ばね定数情報の記憶をばね定数情報記憶部23に制御部28が指令すると、このばね定数情報がばね定数情報記憶部23に記憶される。
【0106】
S150において、振動検出装置12A,12Bから振動検出信号が入力したか否かを制御部28が判断する。
図4に示す加振点P
Aに加振力が作用すると、一方の固定部材10A上の加振点P
Aから他方の固定部材10A上の測定点V
1まで伝達する振動を振動検出装置12Aが検出するとともに、一方の固定部材10A上の加振点P
Aから弾性部材7Aを通じてリンク部材6上の測定点V
2まで伝達する振動を振動検出装置12Bが検出する。その結果、振動検出装置12A,12Bが出力する振動検出信号が信号処理部15を通じて制御部28に入力する。振動検出装置12A,12Bから振動検出信号が入力したと制御部28が判断したときにはS160に進み、振動検出装置12A,12Bから振動検出信号が入力していないと制御部28が判断したときには一連の評価処理を終了する。
【0107】
S160において、測定点V
2-V
1間の振動伝達量の測定を振動伝達量測定部16Aに指令する。振動検出装置12A,12Bから振動検出情報が制御部28に入力するとこの振動検出情報を振動伝達量測定部16Aに制御部28が出力し、振動伝達量測定部16Aに振動伝達量の測定を制御部28が指令する。その結果、
図6に実線で示すような測定点V
2-V
1間の振動伝達量の波形を振動伝達量測定部16Aが生成し、振動伝達量情報を制御部28に出力すると、この振動伝達量情報を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が出力する。振動伝達量情報の記憶を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が指令すると、この振動伝達量情報が振動伝達量情報記憶部17に記憶される。
【0108】
S170において、測定点V
2-V
1間の振動伝達量の共振周波数f
1,f
2の同定を共振周波数同定部18Aに制御部28が指令する。振動伝達量情報記憶部17から振動伝達量情報を制御部28が読み出して、この振動伝達量情報を制御部28が共振周波数同定部18Aに出力するとともに、共振周波数f
1,f
2の同定を共振周波数同定部18Aに制御部28が指令する。その結果、
図6に示すような共振周波数f
1,f
2を共振周波数同定部18Aが同定し、共振周波数同定部18Aが共振周波数情報を制御部28に出力すると、この共振周波数情報を共振周波数情報記憶部19に制御部28が出力する。共振周波数情報の記憶を共振周波数情報記憶部19に制御部28が指令すると、この共振周波数情報が共振周波数情報記憶部19に記憶される。
【0109】
S180において、ばね定数K
1の演算をばね定数演算部20Bに制御部28が指令する。共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を制御部28が読み出して、この共振周波数情報を制御部28がばね定数演算部20Bに出力する。また、演算条件情報記憶部22から演算条件情報を制御部28が読み出して、この演算条件情報を制御部28がばね定数演算部20Bに出力する。ばね定数K
1の演算をばね定数演算部20Bに制御部28が指令すると、重量M
1,M
2、ばね定数K
2及び共振周波数ω
1,ω
2をばね定数演算部20Bが数11に代入してばね定数K
1を演算して、ばね定数演算部20Bがばね定数情報を制御部28に出力する。ばね定数情報の記憶をばね定数情報記憶部23に制御部28が指令すると、このばね定数情報がばね定数情報記憶部23に記憶される。
【0110】
S190において、振動検出装置12A,12Cから振動検出信号が入力したか否かを制御部28が判断する。加振点P
Aに加振力が作用すると、一方の固定部材10A上の加振点P
Aから他方の固定部材10A上の測定点V
1まで伝達する振動を振動検出装置12Aが検出するとともに、一方の固定部材10A上の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じて連結部材9B上の測定点V
3まで伝達する振動を振動検出装置12Cが検出する。その結果、振動検出装置12A,12Cが出力する振動検出信号が信号処理部15を通じて制御部28に入力する。振動検出装置12A,12Cから振動検出信号が入力したと制御部28が判断したときにはS200に進み、振動検出装置12A,12Cから振動検出信号が入力していないと制御部28が判断したときには一連の評価処理を終了する。
【0111】
S200において、測定点V
3-V
1間の振動伝達量の測定を振動伝達量測定部16Aに指令する。振動検出装置12A,12Cから振動検出情報が制御部28に入力すると、この振動検出情報を振動伝達量測定部16Bに制御部28が出力し、振動伝達量測定部16Bに振動伝達量の測定を制御部28が指令する。その結果、
図6に太点線で示すような測定点V
3-V
1間の振動伝達量の波形を振動伝達量測定部16Bが生成し、振動伝達量測定部16Bが振動伝達量情報を制御部28に出力すると、この振動伝達量情報を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が出力する。振動伝達量情報の記憶を振動伝達量情報記憶部17に制御部28が指令すると、この振動伝達量情報が振動伝達量情報記憶部17に記憶される。
【0112】
S210において、測定点V
3-V
1間の振動伝達量の共振周波数f
1,f
2の同定を共振周波数同定部18Bに制御部28が指令する。振動伝達量情報記憶部17から振動伝達量情報を制御部28が読み出して、この振動伝達量情報を制御部28が共振周波数同定部18Bに出力するとともに、共振周波数f
1,f
2の同定を共振周波数同定部18Bに制御部28が指令する。その結果、
図6に示すような共振周波数f
1,f
2を共振周波数同定部18Bが同定し、共振周波数同定部18Bが共振周波数情報を制御部28に出力すると、この共振周波数情報を共振周波数情報記憶部19に制御部28が出力する。共振周波数情報の記憶を共振周波数情報記憶部19に制御部28が指令すると、この共振周波数情報が共振周波数情報記憶部19に記憶される。
【0113】
S220において、ばね定数K
1の演算をばね定数演算部20Bに制御部28が指令する。共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を制御部28が読み出して、この共振周波数情報を制御部28がばね定数演算部20Bに出力する。また、演算条件情報記憶部22から演算条件情報を制御部28が読み出して、この演算条件情報を制御部28がばね定数演算部20Bに出力する。ばね定数K
1の演算をばね定数演算部20Bに制御部28が指令すると、重量M
1,M
2、ばね定数K
2及び共振周波数ω
1,ω
2をばね定数演算部20Bが数11に代入してばね定数K
1を演算して、ばね定数情報を制御部28に出力する。ばね定数情報の記憶をばね定数情報記憶部23に制御部28が指令すると、このばね定数情報がばね定数情報記憶部23に記憶される。
【0114】
S230において、弾性部材7A,7Bの劣化状態の評価を劣化状態評価部24A,24Bに制御部28が指令する。ばね定数情報記憶部23からばね定数情報を制御部28が読み出して、このばね定数情報を劣化状態評価部24Aに出力し、弾性部材7A,7Bの劣化状態の評価を劣化状態評価部24Aに制御部28が指令する。その結果、ばね定数K
1,K
2が基準ばね定数よりも大きく、かつ、このばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲を超えているときには、弾性部材7A,7Bが経年により硬化し劣化状態であると劣化状態評価部24Aが判定する。また、ばね定数K
1,K
2が基準ばね定数よりも小さく、かつ、このばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲を超えているときには、弾性部材7A,7Bが損傷により劣化状態であると劣化状態評価部24Aが判定する。一方、ばね定数K
1,K
2と基準ばね定数との差が所定範囲内であるときには、弾性部材7A,7Bが未劣化状態であると劣化状態評価部24Aが判定する。
【0115】
また、共振周波数情報記憶部19から共振周波数情報を制御部28が読み出して、この共振周波数情報を劣化状態評価部24Bに出力し、弾性部材7A,7Bの劣化状態の評価を劣化状態評価部24Bに制御部28が指令する。その結果、共振周波数f
1〜f
3が基準共振周波数よりも高く、かつ、この共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲を超えているときには、弾性部材7A,7Bが経年により硬化して劣化状態であると劣化状態評価部24Bが判定する。また、共振周波数f
1〜f
3が基準共振周波数よりも低く、かつ、この共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲を超えているときには、弾性部材7A,7Bが損傷により劣化状態であると劣化状態評価部24Bが判定する。一方、共振周波数f
1〜f
3と基準共振周波数との差が所定範囲内であるときには、弾性部材7A,7Bが未劣化状態であると劣化状態評価部24Bが判定する。劣化状態評価部24A,24Bが評価情報を制御部28に出力すると、この評価情報を評価情報記憶部25に制御部28が出力する。評価情報の記憶を評価情報記憶部25に制御部28が指令すると、この評価情報が評価情報記憶部25に記憶される。
【0116】
この発明の第1実施形態に係る連結装置の評価装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、けん引装置5を加振させたときにこのけん引装置5に発生する振動を検出する振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2をばね定数演算部20A,20Bが演算する。このため、けん引装置5を加振させるだけで複数の弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2を簡単に同定することができる。
【0117】
(2) この第1実施形態では、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2をばね定数演算部20A,20Bが演算する。このため、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3を同定することによって、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2を簡単に演算することができる。
【0118】
(3) この第1実施形態では、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2の変化に基づいて、この弾性部材7A,7Bの劣化状態を劣化状態評価部24Aが評価する。このため、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2の変化を評価して、弾性部材7A,7Bのき裂などの損傷や経年による硬化を簡単に判定することができる。
【0119】
(4) この第1実施形態では、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3の変化に基づいて、弾性部材7A,7Bの劣化状態を劣化状態評価部24Bが評価する。このため、弾性部材7A,7Bの振動伝達量の共振周波数f
1〜f
3の変化を評価して、弾性部材7A,7Bのき裂などの損傷や経年による効果を簡単に判定することができる。
【0120】
(5) この第1実施形態では、車体3と台車4との間で伝達される荷重の方向にけん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2をばね定数演算部20A,20Bが演算する。このため、簡単な衝撃加振試験をけん引装置5に実施するだけで弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2を容易に演算することができる。
【0121】
(6) この第1実施形態では、台車4に連結される連結部材9Aを固定部材10Aが台車4に固定するとともに、車体3に連結される連結部材9Bを固定部材10Bが車体3に固定し、台車4と車体3との間で荷重を伝達するために、連結部材9Aと連結部材9Bとをリンク部材6が連結している。また、この第1実施形態では、リンク部材6のブシュ孔6cと連結部材9Aの外周部との間で伝達する振動を弾性部材7Aが緩和するとともに、リンク部材6のブシュ孔6dと連結部材9Bの外周部との間で伝達する振動を弾性部材7Bが緩和する。さらに、この第1実施形態では、車体3から連結部材9Bを取り外した状態でけん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12A〜12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7A,7Bのばね定数K
1,K
2をばね定数演算部20A,20Bが演算する。このため、車両基地内の検修車庫などで車両2を検修するときに、けん引装置5全体を取り外さずにこのけん引装置5を車体3側から取り外すだけで、狭い検査ピットから検査員が簡単に衝撃加振試験を実施して、ばね定数K
1,K
2を簡単に演算することができる。
【0122】
(7) この第2実施形態では、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
2,V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7A,7Bのばね定数K
2をばね定数演算部20Aが演算する。このため、例えば、けん引装置5に衝撃加振試験を実施することによって弾性部材7Bのばね定数K
2を簡単に演算することができる。
【0123】
(8) この第2実施形態では、固定部材10Aを加振したときに、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bの振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cの振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Bのばね定数K
2をばね定数演算部20Aが演算する。このため、例えば、検修車庫の検査ピットのような狭い場所で、比較的打撃が容易なリンク部材6に加振力を加えて、弾性部材7Bのばね定数K
2を簡単に演算することができる。
【0124】
(9) この第1実施形態では、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7Aを通じてこのけん引装置5の測定点V
2まで伝達する振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Aのばね定数K
1をばね定数演算部20Bが演算する。このため、例えば、けん引装置5に衝撃加振試験を実施することによって弾性部材7Aのばね定数K
1を簡単に演算することができる。
【0125】
(10) この第1実施形態では、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aが出力する振動検出信号と、リンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Aのばね定数K
1をばね定数演算部20Bが演算する。このため、例えば、検修車庫の検査ピットのような狭い場所で、比較的打撃が容易な台車4側の固定部材10Aに加振力を加えて、弾性部材7Aのばね定数K
1を簡単に演算することができる。
【0126】
(11) この第1実施形態では、けん引装置5の加振点P
Aから弾性部材7A,7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
1,V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12A,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Aのばね定数K
1をばね定数演算部20A,20Bが演算する。このため、例えば、けん引装置5に衝撃加振試験を実施することによって弾性部材7Aのばね定数K
1を簡単に演算することができる。
【0127】
(12) この第1実施形態では、固定部材10Aを加振したときに、この固定部材10Aの振動を検出する振動検出装置12Aの振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cの振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Aのばね定数K
1をばね定数演算部20Bが演算する。このため、例えば、検修車庫の検査ピットのような狭い場所で、比較的打撃が容易な台車4側の固定部材10Aに加振力を加えて、弾性部材7Aのばね定数K
1を簡単に演算することができる。
【0128】
(13) この第1実施形態では、振動検出装置12A〜12Cをけん引装置5に着脱自在に装着部14が装着する。このため、振動検出装置12A〜12Cをけん引装置5の表面に簡単に着脱可能になり、評価作業の効率化及び省力化を図ることができる。例えば、けん引装置5が鉄製であり装着部14が磁力を発生する場合には、振動検出装置12A〜12Cをけん引装置5に接着剤などによって固定する場合に比べて、振動検出装置12A〜12Cをけん引装置5に現場で簡単に固定することができる。
【0129】
(第2実施形態)
以下では、
図1〜
図5に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図10に示す加振装置11は、固定部材10Aのボルト頭部10a及びリンク部材6の保持筒6aをリンク部材6の長手方向(車両2の前後方向(図中A方向))に使用者の操作によって打撃し、けん引装置5に加振力を作用させる。加振装置11は、固定部材10A側(台車4側)のボルト頭部10aの加振点P
Aに加振力を作用させるとともに、リンク部材6の台車4側の保持筒6bの加振点P
Bに加振力を作用させる。
【0130】
図9に示す評価装置13は、
図5に示す評価装置13とは異なり、
図4に示す加振点P
Aを加振したときの振動伝達量を測定する振動伝達量測定部16Cを備えておらず、
図10に示す加振点P
Bを加振したときの振動伝達量を測定する振動伝達量測定部16Dを備えている。振動伝達量測定部16Dは、振動検出装置12B,12Cの検出結果に基づいて振動伝達量を測定する手段である。振動伝達量測定部16Dは、振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、測定点V
3-V
2間の振動伝達量を測定する。
【0131】
図11に示すグラフは、
図10に示すような車体3側のみが取り外された状態の新品のけん引装置5を加振点P
Bで加振したときの測定点V
3-V
2間の振動伝達量の測定結果である。
図11に示す縦軸は、振動伝達量(振動伝達スペクトル)(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。
図11に示すグラフは、
図6に示すグラフと同様に、衝撃加振試験によって測定点V
3-V
2間の振動加速度のスペクトルを求めた後にこの振動加速度のスペクトルをレベル化し、測定点V
3-V
2間のレベル差で評価した振動伝達スペクトル(振動伝達量の周波数特性)である。
図11に示すf
3'は、加振点P
Bを加振したときにこの加振点P
Bから弾性部材7Bを介して連結部材9Bまで伝達される振動の共振周波数(共振点)である。加振点P
Aによる測定点V
3-V
2間の振動伝達量では、100〜1000Hzの範囲に明確なピーク(共振点)が1つ(f
3')発生している。
【0132】
図9に示す振動伝達量測定部16Dは、振動検出装置12B,12Cの検出結果に基づいて振動伝達量を測定する手段である。振動伝達量測定部16Dは、
図10に示す加振点P
Bに加振力を作用させたときに、
図11に示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形を生成する。
図9に示す振動伝達量測定部16Cは、
図11に示すような振動伝達量を測定し、この測定結果を振動伝達量測定信号(振動伝達量情報)として制御部28に出力する。
【0133】
図9に示す共振周波数同定部18Dは、けん引装置5の共振周波数を同定する手段である。共振周波数同定部18Dは、振動伝達量測定部16Dの測定結果に基づいて、振動伝達量の共振周波数f
3'を同定する。共振周波数同定部18Dは、車体3と台車4との間で伝達される荷重の方向(図中A方向)にけん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、このけん引装置5の共振周波数を同定する。共振周波数同定部18Dは、振動伝達量測定部16Dが測定した測定点V
3-V
2間の振動伝達量に基づいて、これらの振動伝達量の共振周波数f
3'を同定する。
【0134】
共振周波数同定部18Dは、リンク部材6を加振したときに、このリンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、けん引装置5の共振周波数f
3'を同定する。共振周波数同定部18Dは、
図10に示す加振点P
Bに加振力を作用させたときの測定点V
3-V
2間の振動伝達量に着目して、
図11に示すような測定点V
3-V
2間の振動伝達量の波形に基づいて、けん引装置5の共振周波数f
3'を同定する。
図9に示す共振周波数同定部18Dは、同定後の共振周波数f
3'を共振周波数信号(共振周波数情報)として制御部28に出力する。
【0135】
図9に示すばね定数演算部20Aは、けん引装置5の加振点P
Bから弾性部材7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、けん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
3'に基づいて、弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、
図10に示すA方向にけん引装置5を加振させたときに、振動検出装置12B,12Cが出力する振動検出信号に基づいて、弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。
【0136】
ばね定数演算部20Aは、
図10に示すように、リンク部材6を加振したときに、このリンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、車体3側の弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。
図9に示すばね定数演算部20Aは、
図5に示すばね定数演算部20Aとは異なり、
図10に示すように加振点P
Bに加振力を作用させたときに共振周波数同定部18Dが同定した測定点V
3-V
2間の振動伝達量における共振周波数f
3'に基づいて、車体3側の弾性部材7Bのばね定数K
2を演算する。
図10に示す加振点P
Bを加振する打撃試験は、測定点V
2(変位x
2)を強制振動(調和励振)させたときに、測定点V
3(変位x
3)に伝わる振動を計測する試験とみなせる。ばね定数演算部20Aは、
図11に示すように、加振点P
Bを加振したときの測定点V
3-V
2間の振動伝達量に着目して、
図4に示す加振点P
Bにおける測定点V
3-V
2間の共振周波数f
3'を角速度に変換した値ω
3=2πf
3'に基づいて、数1によってばね定数K
2を演算する。ばね定数演算部20Aは、演算条件設定部21が設定した重量M
2、及び共振周波数同定部18Dが同定した共振周波数ω
3を数1に代入することによってばね定数K
2を演算する。
【0137】
劣化状態評価部24Bは、例えば、新品のけん引装置5を加振させたときのこのけん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
3'、又は新品の状態から所定時間経過後の使用済みのけん引装置5を加振させたときのこのけん引装置5の振動伝達量の共振周波数f
3'を基準共振周波数とし、共振周波数同定部18Dが同定した共振周波数f
3'とこの基準共振周波数とを比較する。劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18Dが同定した共振周波数f
3'が基準共振周波数よりも高く、かつ、この共振周波数f
3'と基準共振周波数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7Bが経年によって硬化し劣化状態であると判定する。また、劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18Dが同定した共振周波数f
3'が基準共振周波数よりも低く、かつ、この共振周波数f
3'と基準共振周波数との差が所定範囲を超えるときには、弾性部材7Bが損傷し劣化状態であると判定する。一方、劣化状態評価部24Bは、共振周波数同定部18Dが同定した共振周波数f
3'と基準共振周波数との差が所定範囲内であるときには、弾性部材7Bが未劣化状態であると判定する。
【0138】
制御部28は、例えば、信号処理部15が出力する振動検出信号に基づいて振動伝達量測定部16Dに振動伝達量の測定を指令したり、振動伝達量測定部16Dが出力する振動伝達量情報の記憶を振動伝達量情報記憶部17に指令したり、振動伝達量測定部16Dが出力する振動伝達量情報に基づいて共振周波数同定部18Dに共振周波数f
3'の同定を指令したり、共振周波数同定部18Dが出力する共振周波数情報の記憶を共振周波数情報記憶部19に指令したりする。制御部28には、振動伝達量測定部16D及び共振周波数同定部18Dなどが相互に通信可能なように接続されている。
【0139】
この発明の第2実施形態に係る連結装置の評価装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、けん引装置5の加振点P
Bから弾性部材7Bを通じてこのけん引装置5の測定点V
3まで伝達する振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号に基づいて、この弾性部材7Bのばね定数K
2をばね定数演算部20Aが演算する。このため、例えば、けん引装置5に衝撃加振試験を実施することによって弾性部材7Bのばね定数K
2を簡単に演算することができる。
【0140】
(2) この第2実施形態では、リンク部材6を加振したときに、このリンク部材6の振動を検出する振動検出装置12Bが出力する振動検出信号と、連結部材9Bの振動を検出する振動検出装置12Cが出力する振動検出信号とに基づいて、弾性部材7Bのばね定数K
2をばね定数演算部20Aが演算する。このため、例えば、検修車庫の検査ピットのような狭い場所で、比較的打撃が容易なリンク部材6に加振力を加えて、弾性部材7Bのばね定数K
2を簡単に演算することができる。
【実施例】
【0141】
次に、この発明の実施例について説明する。
(試験品の概要)
試験品の一本リンクは、
図4に示すけん引装置5と同一構造である。一本リンクは、2本の心棒とこれらの心棒を連結する一本リンク本体とから構成されており、一方の心棒が台車に接続されており、他方の心棒が車体に接続されている。心棒と一本リンク本体との間には一本リンクゴムが挿入されており、心棒と一本リンク本体との間を振動絶縁する。以下では、一本リンクゴムのうち台車側に取付けるものを台車側ゴムとし、車体側に取付けるものを車体側ゴムとする。試験品の一本リンクの諸元は、設計図の記載によると一本リンク本体(12.8kg)、心棒(7kg)、ゴム(0.62kg)、外筒(0.74kg)及びばね定数(7.85〜9.81MN/m)(材料試験機によって測定)である。試験品の一本リンクの設計図では、軸方向に静的に圧縮荷重を載荷した際に、δ(20.6kN)-δ(2.45kN)=1.85〜2.31mmと規定されている。ここで、δ(20.6kN)及びδ(2.45kN)は、一本リンクゴムに20.6kN及び2.45kNを載荷した際の変位量を示す。
【0142】
(衝撃加振試験によるばね定数の算出)
一本リンクゴムのばね定数を簡易に推定する方法として、衝撃加振試験の適用を検討した。衝撃加振試験は、振動体の振動特性を簡便に評価する代表的な試験方法の1つである。また、新品及び現車から回収した試験品に衝撃加振試験及び材料試験機を用いた試験を実施して両試験結果を用いたばね定数を比較した。
【0143】
衝撃加振試験は、加振力の大きさと周波数特性が測定できるインパルスハンマで測定部位を打撃した際の振動の伝達経路における各部位の振動応答(振動加速度)を測定する試験である。インパルスハンマで打撃する利点は、適正な加振力の大きさ及び2度打ちなどの不適切な加振を評価できることである。衝撃加振試験に用いるインパルスハンマは、このインパルスハンマの先端をスチール、プラスチック及びゴムの3種類のチップから選択可能である。予備試験の結果、一本リンクでばね定数の算出のために注目すべき振動の周波数はすべて100Hz〜1kHzの範囲内にあるため、この周波数領域の測定に適したプラスチックのチップを用いた。
【0144】
(衝撃加振試験の方法)
衝撃加振試験では、公益財団法人鉄道総合技術研究所内に留置されている台車に一本リンクを取り付けたが、検修場での適用を想定して台車単体状態とし、一本リンクの一端を台車に取り付け、一本リンクの他端を車体から取り外して、一本リンクの車体側を自由端とした。インパルスハンマは、GK-3100((株)小野測器製)を用い、加振力をインパルスハンマによって測定し、振動加速度を振動加速度ピックアップPV-95(リオン(株)製)によって測定した。衝撃加振試験では、磁石アタッチメントを用いて振動加速度ピックアップを測定部位に磁力固定したが、1kHz以下の周波数範囲では磁力固定した場合でも接着した場合と同等の精度で振動測定が可能であることを確認した。
図4に示すように、加振点P
Aは台車枠と台車側心棒を連結する取付けボルトとし、加振方向は一本リンクの取付けボルトの軸方向(車両の加減速方向)とした。振動加速度の測定点V
1は、加振点P
Aと反対側の取付けボルトとし、振動加速度の測定点V
2は一本リンク本体とし、振動加速度の測定点V
3は車体側心棒とした。
【0145】
(衝撃加振試験の結果)
図4に示す測定点V
1〜V
3の振動加速度の測定結果を周波数分析した上でレベル化し、以下に示す数12によって各測定点V
1〜V
3の値のレベル差(振動伝達量)を周波数毎に求めた。
【0146】
【数12】
【0147】
ここで、数12に示すL
Vijは、測定点V
i-V
j間の振動伝達量(dB)であり、α
Viは測定点Viにおける振動加速度(ms
-2)であり、α
Vjは測定点Vjにおける振動加速度(ms
-2)である。
【0148】
図12に示すL
V21は、測定点V
2-V
1間の振動伝達スペクトルであり、L
V31は測定点V
3-V
1間の振動伝達スペクトルであり、L
V32はV
3-V
2間の振動伝達スペクトルである。
図12に示す縦軸は、振動伝達量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。
図12に示すように、振動伝達スペクトルL
V21では、100Hz〜1kHzの範囲に明確なピーク(共振点)が2つ(周波数の低い順にf
1,f
2)発生し、これらの共振点f
1,f
2の間に谷のピーク(反共振点)が1つ(f
3)発生している。振動伝達スペクトルL
V31では、振動伝達スペクトルL
V21の共振点(f
1,f
2)と同じ周波数に2つの共振点が発生するが、反共振点(f
3)は明確ではない。振動伝達スペクトルL
V32では、振動伝達スペクトルL
V21の反共振点(f
3)であった周波数付近に共振点が発生するが、共振点(f
1,f
2)であった周波数付近には共振点及び反共振点ともに発生していない。
【0149】
図12に示す振動伝達スペクトルL
V31の実測値から求めた共振周波数f
3=222.5Hzを角周波数に変換した値(ω
3=2πf
3=1398rad/s)及び
図7に示す重量M
2=7kgを数1に代入すると、ばね定数K
2=13.7MN/mが求められた。また、
図12に示す振動伝達スペクトルL
V21,L
V31の実測値から求めた共振周波数f
1,f
2を角周波数に変換した値(ω
1=766rad/s),ω
2=1806rad/s)、
図7に示す重量M
1=14.28kg、重量M
2=7kg及び数1によって求めたばね定数K
2=13.7MN/mを数11に代入すると、ばね定数K
1=13.4MN/mが求められた。
【0150】
図13に示す点線は、算出したばね定数K
1,K
2及び各共振周波数f
1〜f
3における振動伝達量の半値幅などから算出した減衰定数C
1,C
2を運動方程式に代入して求めた計算結果である。
図13に示す縦軸は、振動伝達量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)であり、実線は試験結果であり、点線は計算結果である。
図13に示すように、試験結果と計算結果とが良く一致することから、
図7に示す振動モデルが妥当であることが確認された。
【0151】
(材料試験機を用いた試験によるばね定数の算出)
次に、衝撃加振試験で算出したばね定数K
1,K
2の妥当性を判断するために、材料試験機を用いた試験で算出したばね定数と比較した。材料試験機を用いた試験(以下、材料試験という)は、一本リンクゴムに対して静的に圧縮及び引張方向に力を加えた際の荷重と変位の関係からばね定数を算出する試験である。
【0152】
(材料試験の方法)
2つの一本リンクゴムを一本リンクに組み込んだ状態で万能材料試験機AG-300KNIS((株)島津製作所製)に専用のジグを用いて固定した。試験機に固定した後、速度6mm/minで-25kN(圧縮)〜25kN(引張)の荷重範囲で軸方向に載荷し、その時の変位及び荷重を測定した。材料試験では、ジグと試験品とのガタツキなどによる誤差を防止するため、-25kN〜25kNまで荷重を一度変化させた後、2回目の試験で得られた荷重−変位曲線から以下の数13を用いてばね定数Kを求めた。
【0153】
【数13】
【0154】
ここで、数13に示すKは、静的ばね定数(MN/m)であり、F
2はばね定数算出の上限荷重(-2.45kN)であり、F
1はばね定数算出の下限荷重(-20.6kN)であり、δ
2は上限荷重F
2の際の変位(mm)であり、δ
1は下限荷重F
1の際の変位(mm)である。材料試験の際に2つの一本リンクゴムが同時に変形するが、個々の一本リンクゴムで変位を測定し、個々のばね定数Kを求めた。
【0155】
(材料試験の結果)
図14に示すグラフは、新品の一本リンクの材料試験による荷重-変位曲線である。
図14に示す縦軸は、荷重(kN)であり、横軸は変位(mm)である。材料試験の結果から求められた新品の一本リンクゴムのばね定数Kは、台車側ゴムが9.7MN/mであり、車体側ゴムが9.4MN/mである。その結果、新品では材料試験の結果より求めた2個の一本リンクゴムのばね定数Kの差異が小さいことが確認された。衝撃加振試験の結果によるばね定数K
1,K
2と同様に、材料試験の結果についても新品の一本リンクゴムの2個の値の差異が小さくなることが確認された。
【0156】
(衝撃加振試験の結果と材料試験の結果との比較)
次に、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2と材料試験の結果から求めたばね定数Kを比較した。試験品は、新品に加えて都市近郊線を走行する通勤電車から回収した使用品を用いた。また、新品及び使用品ともに試験品の製造メーカは1社に限定した。
【0157】
図15に示すグラフは、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2と材料試験の結果から求めたばね定数Kとの比較結果である。
図15に示す縦軸は、材料試験の結果(MN/m)であり、横軸は衝撃加振試験の結果(MN/m)である。
図15に示すように、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2は、材料試験の結果から求めたばね定数Kに対して最大で約2倍程度大きな値となることが確認された。これは、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2が動的ばね定数であるのに対して、材料試験の結果から求めたばね定数Kが静的ばね定数であるためであると考えられる。一般的なゴム材料の場合、動的ばね定数を静的ばね定数で割った値である動倍率は1よりも大きく、1〜3程度であることが多い。
【0158】
図15に示すように、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2と材料試験の結果から求めたばね定数Kの分布は、図中点線の範囲内に収まっており、それぞれの結果には相関があることが確認された。この相関性及び動倍率を考慮すると衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2が合理的な値であり、衝撃加振試験から求めたばね定数K
1,K
2が妥当な値であることが確認された。その結果、図中点線の範囲を示す以下の数14によって、衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2を用いて材料試験から求められるばね定数Kを予測可能である。
【0159】
【数14】
【0160】
ここで、数14に示すK
mは、材料試験の結果から求められるばね定数Kの予測値(MN/m)であり、K
iは衝撃加振試験の結果から求めたばね定数K
1,K
2 (MN/m)である。例えば、衝撃加振試験の結果が20MN/mであった場合には、材料試験の結果は9.3〜11.7MN/mの範囲内の値を示すと想定される。
【0161】
(ばね定数の変化による一本リンクゴムの損傷判断)
図16に示すグラフは、衝撃加振試験の結果から求めた一本リンクゴムのばね定数の経年変化である。
図16に示す縦軸は、ばね定数(MN/m)であり、横軸は使用期間(年)である。
図16に示すように、新品と比較するとM車(電動車)及びT車(付随車)の使用品ともに経年によってばね定数が増加している。特に、M車の使用品についてはばね定数の増加が大きい。これはM車では、荷重条件が厳しいため経年によって劣化して硬化する程度が大きいためと考えられる。一方、使用品(使用期間が不明)の中には、図中点線に示すように新品よりも低いばね定数を示すものがあった。この使用品に対して材料試験を実施した結果、ばね定数が6MN/mであった。さらに、荷重無負荷の状態では判別できなかったが、材料試験によって荷重を負荷すると、心棒の近傍に深い損傷が発見された。
【0162】
図17に示すように、一本リンクゴムのばね定数は、圧縮に対する復元力のばね定数と引張に対する復元力のばね定数を加算したものである。
図17(A)に示すように、一本リンクゴムが正常な状態である場合には、圧縮に対する復元力の変化が小さく、引張に対する復元力の変化も小さいため、圧縮及び引張に対する復元力のばね定数が変化せず、一本リンクゴムのばね定数が変化しない。一方、
図17(B)に示すように、一本リンクゴムに損傷がある場合には、圧縮に対する復元力の変化は小さいが、引張に対する復元力が低下するため、引張に対する復元力のばね定数が低下し、一本リンクゴムのばね定数が低下する。このため、新品のばね定数に比べて使用品のばね定数が低かった要因が一本リンクゴムの損傷によるものであることが確認された。その結果、衝撃加振試験によって一本リンクゴムの損傷の有無を判断可能であることが確認された。
【0163】
(共振周波数の変化による一本リンクゴムの損傷判断)
図18に示すグラフは、一本リンクゴムが新品である場合と損傷品である場合の測定点V
3-V
2間の振動伝達スペクトルL
V32の実測値の一例である。
図18に示す縦軸は、振動伝達量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)であり、実線は新品の試験結果であり、点線は損傷品の試験結果である。
図18に示すように、新品のばね定数に比べて損傷品のばね定数が低下しているため、新品の共振周波数に比べて損傷品の共振周波数が低周波数側に移動している。このため、使用品の共振周波数が新品の共振周波数の前後%の幅を超えて低周波数側に存在する場合には、一本リンクゴムに損傷がある可能性が高く、共振周波数の変化が検修時の損傷判断基準となることが確認された。また、一本リンクの諸元が同じである場合には、ばね定数を演算する必要がなく、振動伝達スペクトルの共振周波数の変化によって一本リンクゴムの損傷を判断可能なことが確認された。
【0164】
以上より、衝撃加振試験の結果から求めた一本リンクゴムのばね定数K
1,K
2は妥当であり、一本リンクゴムの弾性が衝撃加振試験の結果に基づいて評価できることが確認された。また、ある程度の使用期間があるにも関わらず、新品よりも低いばね定数を示す使用品については、一本リンクゴムに大きな損傷がある可能性が高いことも確認された。また、一つの一本リンクゴムのばね定数K
1,K
2の測定のために要する時間で比較すると、材料試験が30分程度であるのに対して、衝撃加振試験が5分程度であり極めて短時間でばね定数K
1,K
2の測定が可能であることが確認された。さらに、材料試験の場合には、一本リンクを台車から取り外して試験機に設置する必要があるが、衝撃加振試験では一本リンクを台車に取り付けたまま試験を実施することができ作業性が良いことが確認された。
【0165】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、一本リンク式けん引装置のようなけん引装置5を連結装置の例に挙げて説明したが、このようなけん引装置5に連結装置を限定するものではない。例えば、車両のまくらばりと車体又は台車枠とを弾性部材によって連結するボルスタアンカ装置、車両の車体と台車枠とを弾性部材によって連結するヨーダンパ装置、軸箱と一体の軸ばりと台車枠とを弾性部材によって連結する軸ばり式の軸箱支持装置などの連結装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、2つの弾性部材7A,7Bを備えるけん引装置5を連結装置の例に挙げて説明したが、1つの弾性部材を備える連結装置や3つ以上の弾性部材を備える連結装置についてもこの発明を適用することができる。
【0166】
(2) この実施形態では、連結装置が2質点系モデルである場合を例に挙げて説明したが、連結装置が多質点系の場合や連結装置が1質点とみなされる1つのゴムと質体からなる部品についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、共振周波数f
1〜f
3,f
3'の同定から弾性部材7A,7Bの劣化判定までを評価プログラムに従って自動的に処理する場合を例に挙げて説明したが、このような処理方法に限定するものではない。例えば、評価基準に従って使用者が加振力の状態を判定したり、共振周波数f
1〜f
3,f
3'を使用者が読み込み評価装置13に入力したり、ばね定数K
1,K
2の変化や共振周波数f
1〜f
3,f
3'の変化を使用者が確認して弾性部材7A,7Bの劣化状態を判定したり、自動的に処理せずに手動入力によって判定作業を実施することもできる。
【0167】
(3) この実施形態では、ばね定数演算部20A,20Bによってばね定数K
1,K
2を演算する場合を例に挙げて説明したが、ばね定数K
1,K
2のいずれか一方のみをばね定数演算部20A又はばね定数演算部20Bによって演算することもできる。また、この実施形態では、共振周波数同定部18A,18Bによって共振周波数f
1,f
2を同定する場合を例に挙げて説明したが、共振周波数同定部18A又は共振周波数同定部18Bのいずれか一方のみによって共振周波数f
1,f
2を同定することもできる。同様に、この実施形態では、共振周波数同定部18A,18Bが同定した共振周波数f
1,f
2に基づいてばね定数演算部20Bがばね定数K
1を演算する場合を例に挙げて説明したが、共振周波数同定部18A又は共振周波数同定部18Bのいずれか一方が同定した共振周波数f
1,f
2に基づいてばね定数演算部20Bがばね定数K
1を演算することもできる。さらに、この実施形態では、衝撃加振試験による動的ばね定数をばね定数K
1,K
2としてばね定数演算部20A,20Bが演算しているが、材料試験による静的ばね定数にこの動的ばね定数を数14によってばね定数演算部20A,20Bが変換して静的ばね定数を推定することもできる。
【0168】
(4) この実施形態では、振動伝達量測定部16A〜16Dが測定点V
2-V
1間、測定点V
3-V
1間及び測定点V
3-V
2間の振動の大きさ(振動応答)を振動加速度の比(伝達関数)によって測定する場合を例に挙げて説明したが、振動速度の比又は変位の比などによって測定することもできる。また、この実施形態では、使用品の弾性部材7A,7Bの劣化状況を劣化状態評価部24A,24Bによって評価する場合を例に挙げて説明したが、新品の弾性部材7A,7Bの新製時に要求される性能を劣化状態評価部24A,24Bによって評価することもできる。さらに、この実施形態では、加振装置11としてインパルスハンマを例に挙げて説明したが、加振装置11をインパルスハンマに限定するものではない。例えば、けん引装置5に落下させる落下物の内部に荷重検出部11cを配置して、この荷重検出部11cが出力する加振力信号を無線によって制御部28に送信することもできる。