特許第5855203号(P5855203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5855203
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】帯状樹脂の端面融着接合装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
   B29C65/20
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-215438(P2014-215438)
(22)【出願日】2014年10月22日
【審査請求日】2015年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399133707
【氏名又は名称】株式会社八光電機
(73)【特許権者】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】木内 賢二
(72)【発明者】
【氏名】久慈 怜
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭52−020502(JP,B1)
【文献】 特開昭64−009722(JP,A)
【文献】 特開2000−211028(JP,A)
【文献】 実開昭61−151943(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を設けて対向配置して、断面が同一形状の2つの帯状樹脂の端面を対面させた態様でそれぞれに保持する2つのステージと、該ステージの少なくとも一方を対面方向に往復可動するスライド手段と、前記ステージを設置する載置台と、前記双方の帯状樹脂の対面する端部を各々のステージに保持するそれぞれのクランプ部と、該各々のクランプ部によるクランプのさい、各々の帯状樹脂を上方からそれぞれ保持するクランプブロックと、前記各々のステージの所定位置に取り付け、双方の帯状樹脂を特定位置に設定する位置決めブロックと、前記対向する2つのステージ間に出退する昇降方向に往復可動する発熱体を内蔵するひとつの溶融ブロックと、該溶融ブロックの温度設定及び制御、並びに、樹脂への加熱時間の設定及び制御が可能な制御手段より構成し、前記クランプブロック、及び/あるいは、位置決めブロックはそれぞれが着脱自在で、選択的に換装可能であることを特徴とする帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項2】
前記クランプブロックはクランプ部との当接部となるブロック本体と、帯状樹脂との当接部となる弾性プレートよりなる請求項1帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項3】
前記該弾性プレートは段差のある複数のプレートに分割されるか、樹脂当接面に段差を形成してなる請求項の帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項4】
前記クランプブロックは、長さ方向の一端部を軸にステージ上を回動可能で、かつ、特定位置で固定可能な請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項5】
前記クランプブロックは、対面側の側面端部が前記ステージの対面側端部と平行で、かつ、ほぼ同位置に設定されて保持できる請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項6】
前記各々のステージには、前記帯状樹脂のステージ対面側端面からの突出の長さを規定する位置出し板をそれぞれ備える請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項7】
前記位置出し板は、ステージ上を回動可能で、かつ、固定可能な請求項の帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項8】
前記2つのステージの少なくとも一方は、帯状樹脂の幅方向に所定の範囲で可動可能な請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項9】
前記各々のステージには、発熱体及び温度センサーを備える請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項10】
前記ステージの一方を可動ステージとし、他方を固定ステージとして、対面方向へのスライドを可動ステージのみとした請求項1乃至のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項11】
前記溶融ブロックは、前記昇降方向への可動に加え、可動ステージのスライドに伴って対面方向に往復可動される請求項10の帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項12】
前記溶融ブロックの対面方向への往復可動は、ガイドレール上をスライダーが摺動するリニアガイド、及び、ばね弾性体の組合せによりなり、該弾性体の伸縮により可動される請求項11の帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項13】
前記載置台は、全体としてボックス形状を形成する基台の上面と平行に配設され、該基台の底部にはキャスターを備える請求項1乃至12のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項14】
前記ステージを含む融着動作部分には開閉可能な安全カバーを備える請求項1乃至13のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項15】
前記溶融ブロックの樹脂当接部となる表面には、溶融された樹脂の付着を防止するフッ素樹脂を含む表面処理を施した請求項1乃至14のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【請求項16】
前記帯状樹脂の形態により、予め融着時間がプログラムされた選択可能な切り替えスイッチを備える請求項1乃至15のいずれかの帯状樹脂の端面融着接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、下水道更生材など樹脂により長尺に形成された帯状部材の端面同士を加熱融着し一体化するための付合せ面の融着接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管などの老朽化への対策として、既設管を新たな管に取り替えることなく、該既設管の内周面に新たな通路となる更生管を敷設し内側から包み込み、既設管と更生管の隙間に裏込め材を注入して一体化して再生しようとする工法が確立されている。この工法の代表的なものは、硬質塩化ビニル樹脂よりなる長尺な帯状更生材を、隣接する側面同士のロック部(オス部とメス部)を嵌合させながら螺旋状に巻回し、既設管の内周面に沿って新たな管状体を連続して形成していくもので、道路を掘り起こす必要が無く、また、通水しながら施行できるなど下水道の更生のための優れた工法として知られている。
【0003】
そして、本工法に使用される長尺な帯状更生材は、ドラムに巻かれて提供されており、前記の通り端部から順次引き出され下水道の内面に巻回され更生管として形成されるが、隙間なく連続して敷設するためは、ドラムを切り替えるさい等に現場で端面同士を付き合せて接合する必要が生じる。
【0004】
このように同一形状の樹脂の端面同士を接合するための従来の融着装置としては、被接合面となる2つの面を対面させ、各々を対向配置して保持する一対の載置台と、該載置台に前記樹脂端部を位置決め保持するクランプ手段と、該載置台(樹脂端部接合面)の間に出退自在に設ける樹脂を溶融するための加熱手段と、加熱溶融された接合面同士を接合するための押圧手段として、前記載置台の少なくとも一方を対面方向に往復可動するスライド手段より基本構成される合成樹脂の溶着装置が提案されている。(例えば、特許文献1〜3)
【0005】
前記構成の装置による溶着は、対向保持された樹脂の間に加熱手段を突出させ、樹脂を加熱手段に押し付けてその表面を溶融し、次いで加熱板から樹脂を引き離し、樹脂の間から加熱板を取り除いた後、樹脂端面を互いに押し付けて融着するもので、帯状樹脂に限らず樹脂パイプ等の端面付き合せ融着接合装置として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−2618号公報
【特許文献2】特公昭61−50769号公報
【特許文献3】特公平7−45184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記に挙げた下水道管の帯状更生材9(一例の断面図を図12に示す)は、帯状で肉薄に形成されており、また、螺旋状に巻回して更生管を形成していくさいに隣接する側面同士を嵌合するための接続部がオスロック部92、メスロック部93として両端部に凹凸が形成されていたり、既設管と更生材とを強固に一体化するため、該既設管と更生管との間を埋めるモルタルなどの裏込め材を注入する隙間となる突起状のリブ95が適当な間隔に備えられたりするため、帯状とは言っても接合端面を含む断面は凹凸した複雑な形状となっている。また、更生材9には複数の種類(図12に4種類を示す)があり、ロットごとに微妙に寸法が異なるといったこともあり、当然、従来の装置でも樹脂の取付け時にはクランプ等を用いて位置合わせが行われてはいるが、このように肉薄で、また、接合面が複雑で種類により異なるものでは、該接合面にずれが生じてしまう可能性があり、ずれが生じた場合、肉薄な帯状形状という事情から強度が著しく低下してしまい、また、該接続部と隣接する更生材との嵌合が合致しなくなってしまう等、融着接合が上手くいかないことでの問題が発生する懸念がある。
【0008】
更に、この融着接合作業は現場での作業であり、現場まで装置を運搬し、作業する場所に配置する必要があることから極力軽量、コンパクトで移動しやすいことが求められ、また、屋外作業であることから季節による外気温等の環境の影響を受けやすく、気象条件によっては融着温度が安定せずに接合が不十分になってしまうことも懸念される。
【0009】
そこで、本発明は帯状樹脂の端部を付き合せて融着接合するさい、例えば、下水道更生材のような肉薄で複雑な接合端面(断面形状)を持つ帯状樹脂であっても接合面のずれを抑えることができ、また、野外作業での使い勝手が良く、また、安定した融着接合ができる帯状樹脂端面の融着接合装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の帯状樹脂の端面融着接合装置は、間隔を設けて対向配置して、断面が同一形状の2つの帯状樹脂の端面を対面させた態様でそれぞれに保持する2つのステージと、該ステージの少なくとも一方を対面方向に往復可動するスライド手段と、前記ステージを設置する載置台と、前記双方の帯状樹脂の対面する端部を各々のステージに保持するそれぞれのクランプ部と、該各々のクランプ部によるクランプのさい、各々の帯状樹脂を上方からそれぞれ保持するクランプブロックと、前記各々のステージの所定位置に取り付け、双方の帯状樹脂を特定位置に設定する位置決めブロックと、前記対向する2つのステージ間に出退する昇降方向に往復可動する発熱体を内蔵するひとつの溶融ブロックと、該溶融ブロックの温度設定及び制御、並びに、樹脂への加熱時間の設定及び制御が可能な制御手段より構成し、前記クランプブロック、及び/あるいは、位置決めブロックはそれぞれが着脱自在で、選択的に換装可能に形成した。
【0011】
また、各部は次のように構成あるいは形成されることが好ましい
前記クランプブロックはクランプ部との当接部となるブロック本体と帯状樹脂への当接部となる弾性プレートにより構成した。
・前記弾性プレートは段差のある複数のプレートに分割されるか、樹脂当接面に段差を形成してなる1枚のプレートかのいずれかにより形成される。
・前記クランプブロックは、長さ方向の一端部を軸にステージ上を回動可能に、かつ、特定位置で固定可能に形成する。
・前記クランプブロックは、対面側の側面端部が前記ステージの対面側端部と平行で、かつ、ほぼ同位置に設定されて保持可能に形成される。
・前記各々のステージには、前記帯状樹脂のステージ対面側端面からの突出の長さを規定する位置出し板をそれぞれ備え、該位置出し板は、ステージ上を回動可能に、かつ、固定可能に形成される。
・前記ステージの少なくとも一方は、対面方向に対して帯状樹脂の幅方向に所定の範囲で可動可能に形成される。
・前記の各々のステージには、発熱体及び温度センサーを備える。
・前記ステージの一方を可動ステージとし、他方を固定ステージとして、対面方向へのスライドを可動ステージのみに限定する。
・前記溶融ブロックは、昇降方向への可動に加え、ステージのスライドに伴って対面方向に往復可動する。
・前記溶融ブロックの対面方向への往復可動は、ガイドレール上をスライダーが摺動するリニアガイド、及び、ばね弾性体の組合せによりなり、該弾性体の弾性伸縮により可動される。
・前記載置台は、全体としてボックス形状を形成する基台の中に基台上面と平行に配設され、該基台の底部にはキャスターを備える。
・前記ステージを含む融着動作部分には開閉可能な安全カバーを備える。
・前記溶融ブロックの樹脂当接部となる表面には、溶融された樹脂の付着を防止するフッ素樹脂を含む表面処理を施す。
・前記帯状樹脂の形態により、予め融着時間がプログラムされた選択可能な切り替えスイッチを備える。
【0012】
(作用)
本手段によると、樹脂が保持された一対の対向配置するステージの間に、溶融手段(溶融ブロック)が出退して、樹脂接合面に溶融ブロックを押圧して溶融し、溶融した端部同士を押圧接合する融着接合装置において、帯状樹脂をステージに保持するさいに、該ステージに着脱自在で選択的に換装可能なクランプブロックや位置決めブロックを、使用する帯状樹脂の形状、サイズに合わせて選択して用いることにより、肉薄で複雑な形状の樹脂であっても、保持する位置(対面する樹脂端面が一致する位置)を正確に設定することができ、結果、接合面を正確に合致させての融着接合ができる。
【0013】
クランプブロックの樹脂への当接面を弾性プレートとすることにより、クランプによる樹脂への押圧が直接伝わらずに圧が吸収されるため、樹脂を押し潰して変形させるなど過剰な押圧を避けることができる。また、弾性プレートを樹脂の形状に適合させて複数に分割して形成したり、樹脂の形状に適合する段差を形成したりすると、凹凸があるなど複雑な形状の樹脂に対しても、不均一な押圧とならず樹脂の一部を変形してしまうことがなく、形状に適合して均一な押圧での保持ができる。
【0014】
クランプブロックが一方端部を軸としてステージ上で回動可能に設けると、帯状樹脂の取付け、取り替えのさいにブロック全体を取り外す必要が無く操作が容易となる。また、クランプブロックの側面端部をステージの対面側端部と平行に、ほぼ同じ位置となる特定位置に揃え設定、固定されると、帯状樹脂へのクランプが幅方向いっぱいに、かつ、樹脂端面に極めて近い位置でクランプできるため、樹脂の曲がりぐせなど、ずれの要因を排除した安定した接合位置での保持ができる。
【0015】
ステージに帯状樹脂を取付けるさい、樹脂のステージ対面側端部からの突出長さを規定する位置出し板を備えると、予め規定した溶融接合面の溶融ブロックへの押圧を正確に負荷させることができ、結果、溶融接合を安定した確実なものとすることができる。また、該位置出し板をステージ上で回動可能とすると、樹脂の取付け時にステージより突出させて該取付け位置のストッパーとし、位置設定後は回動してステージ内に納めて置くことにより樹脂の端面を合致させての融着接合のさいには邪魔にならない。
【0016】
ステージの少なくとも一方が、帯状樹脂の幅方向に所定の範囲で可動可能とすると、前記クランプブロックや固定ブロックでは合わせきれないような、例えば、帯状樹脂のロットによる寸法の誤差のような、対面する樹脂接合面の僅かな幅方向へのずれに対しても微調整することができる。
【0017】
ステージに発熱体及び温度センサーを備えてステージの温度を制御することで、セットされた帯状樹脂を予め適度に予熱しておくことができ、また、寒い時などに溶融から接合までの間に融着面の温度が低下するのを防止するなど、寒暖によらず同一条件での融着が可能になる。
【0018】
ステージの一方側のみを可動ステージとしてスライドすることにより、該スライドに関わる部材を一方のみとすることで装置をコンパクトなものにすることができる。
【0019】
溶融ブロックが昇降方向への可動に加え、可動ステージのスライドにより対面方向に可動されることにより、一方側のステージのみが移動される場合でも、両側のステージの樹脂端面を溶融ブロックに確実に接触押圧させることができ、また、溶融後には剥離することができる。
【0020】
前記溶融ブロックの対面方向への可動をリニアガイドとばね弾性体とにより、弾性伸縮により可動するものとすると、該可動に可動ステージのスライド手段を利用することができ、他の動力源を必要としない。また、可動ステージと同一の可動源となることで可動タイミングを合わせる別の手段が必要ない。
【0021】
融着動作部分を搭載した載置台をボックス形状に形成する基台に配設し、基台底面にキャスターを備えると、搬送のさいに移動が容易で扱いやすい。また、形成するボックス内に制御ボックスなどを収容する構成として全体をコンパクトにまとまった構造とすることができる。
【0022】
ステージを含む融着動作部分に開閉可能な安全カバーを備えると、野外での使用のさいに加熱部などへの風雨を避けることができ、また、作業者の操作中の意図しない発熱部分やスライド部分への接触を避けることができる。
【0023】
溶融ブロックの樹脂端面との接触部に、溶融した樹脂の付着を防止する表面処理を施しておくと、溶融ブロックに樹脂が付着して残り、樹脂表面が凸凹になって接合が上手くいかなくなる事態を防止することができる。また、溶融ブロック表面に樹脂の付着が無いきれいな状態を保つことができる。
【0024】
融着時間が予め設定された選択可能な切り替えスイッチを備えると、作業現場での条件設定が簡素化され作業が効率化される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の帯状樹脂の端面融着接合装置によると、下水道更生材のような肉薄で複雑な接合端面を持つ帯状樹脂であっても、端面同士を融着接合する際に、該端面の位置を微調整可能なため、接合面のずれを抑えることができる。
また、現場作業に適用して、運搬、移動等で扱いやすく、外気温が低いなどの気象条件であっても安定した融着接合できる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態の帯状樹脂の端面融着接合装置の全体構成を示す正面図。
図2】前記形態の全体構成の側面図。
図3】前記形態のステージ、スライド手段、及びクランプ部等の溶融ブロックを除く主要部を示す正面図。
図4】前記形態の主要部の上面図。
図5】前記形態の主要部の可動ステージ側の上面図。
図6】前記形態の主要部の固定ステージ側の上面図。
図7】前記形態の溶融ブロックを示す正面図。
図8】前記形態の溶融ブロックの側面図。
図9】前記形態の帯状樹脂設置に関わる設定部を示す構成図。
図10】前記形態の樹脂と溶融ブロックの発熱体との位置関係を示す説明図。
図11】前記形態のクランプブロックと位置決めブロックを示す構成図。
図12】帯状樹脂の一例となる下水道更生材の種類を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参考にしながら詳細に説明する。
図1及び図2は、本形態の帯状樹脂の端面融着接合装置を示す全体構成図で、図1が正面図、図2が側面図を示している。
本装置は、例えば、老朽化した下水道管等を更生するさい、既設管の内周面に更生管を敷設するため、帯状更生材9を前記内周面に連続して螺旋状に巻回し新たな管を形成する工法に使用され、ドラムに巻かれて提供される長尺な硬質塩化ビニルの帯状更生材9の端面同士を、溶融し、互いに突き合せて接合するために用いられる。
【0028】
本形態の装置の説明の前に、本装置に好適となる帯状樹脂である下水道管の更生材に付いて簡単に説明する。図12Aは本例に適用となる下水道更生材の断面図を示しており、ここでは形状やサイズが異なる4種類を示している。いずれも全体として長尺な帯状に形成されており、ドラムに巻かれて提供され、修復される下水道管等の形状、大きさなどにより使い分けられている。
該更生材9は硬質な塩化ビニル樹脂により形成され、内面となる側(下水道管の表面側)はほぼ凹凸のない水平面91に形成され、幅方向の一方端側のみ螺旋状に巻回するさいに隣接する更生材のオスロック部92と嵌合させるメスロック部93として凹部が形成され、該メスロック部93に延設して裏側面方向に適当な角度に折り曲げ、接続を補強するサブロックのためのオス部94を端部として形成している。一方、外面となる側(下水管の既設管側)は、前記メスロック部93と反対側の側端部に該メスロック部93と嵌合するオスロック部92の突起が形成され、更に、既設管との隙間にモルタル等の裏込め材を注入して管を強固に一体化するためのT字状の突起として形成するリブ95を適当間隔で備えて形成している。
図12Bは、更生材9の側面同士がロックされた状態を示し、オスロック部92とメスロック部93による嵌合と、サブロックのためのオス部94とメス部951によりダブルロックされる構造となっている。
【0029】
本形態の融着接合装置は、前記更生材9の取り付け部となる、間隔を設けて対向して設ける可動ステージ11及び固定ステージ12と、可動ステージ11を対面方向(更生材9の軸方向)に往復可動させるスライド手段2と、固定ステージ12を幅方向へ所定の範囲可動するスライド手段2aと、該対面方向へのスライド手段2及び幅方向へのスライド手段2aを介して前記ステージ1を取り付けた載置台3と、前記更生材9の端部をステージ1に固定、保持するクランプ部4と、該クランプ部4による固定のさい、更生材9の長さ方向(軸方向)の取り付け位置を設定し、上方から押圧保持するクランプブロック5と、前記ステージ1に配置して、更生材9の幅方向の取り付け位置を設定する位置決めブロック6と、前記可動ステージ11と固定ステージ12の間に出退可能で、昇降方向及び対面方向に往復可動する溶融ブロック7と、前記載置台3を搭載してボックス状に形成される、底面にキャスター36を備えた基台34と、前記ステージ1を含む融着機能部を覆って開閉可能に設ける安全カバー37と、前記溶融ブロック7の温度設定及び制御、並びに、樹脂への加熱時間を設定及び制御が可能な制御手段や、対応する更生材9により溶融時間が予めプログラムされた切り替えスイッチ82等を収容する制御ボックス81により構成する。
【0030】
次に各部に付いて詳細に説明する。図3図6は、ステージや該ステージのスライド手段等、溶融ブロックを除いた主要部を示しており、図3が該主要部の正面図、図4が上面図で、図5図4の可動ステージ、図6が固定ステージを拡大した図である。また、図7及び図8は、溶融ブロックを示しており、図7は正面図、図8は熱板側からの側面図で対面方向への可動手段については省略されている。そして、図9及び図10は、本装置に更生材を取付けたさいの取付け部を示しており、図9Aは上面図、図Bは装置の側面方向からの図を示し、図10は、更生材が溶融ブロックと当接しされるさいの溶融ブロックに内挿される発熱体との位置関係を示している。また、図11は、図12の更生材に適合して換装されるクランプブロック、位置決めブロックを示しており、図12の更生材9aから9dが各々図11のクランプブロック、位置決めブロック5a、6aから5d、6dに適合するものとなっている。
【0031】
ステージ1は、長尺な更生材9の端面96を対面させて固定しておく取付け部で、スライド手段2により軸方向に往復可動する可動ステージ11と、軸方向へ可動ぜず、スライド手段2aにより僅かな範囲で幅方向に可動する固定ステージ12よりなり、可動ステージは11、載置台3に取り付けたスライド手段2のスライドシャフト21とブッシュハウジング22を介して該載置台3取り付けられ、固定ステージ12は、載置台3に取り付けた幅方向に可動可能なスライド手段2aの摺動シャフト13とシャフト接続部17を介して該載置台3に取り付けられて、初期状態(ステージ同士が開いた状態)で溶融ブロック7が出退可能な十分な間隔を備えて対向配置して設けられる。本形態のようにステージ1の一方側のみを軸方向、あるいは、幅方向に可動する形態にすることにより、後記するスライド手段2を一方側に備えれば良いなど装置をコンパクトにすることができる。
【0032】
また、双方のステージ11、12には、樹脂を予熱、また、先端の溶融温度を維持するため、金属保護管内に発熱体を入れ絶縁剤を充填し、保護管を封入して形成されたカートリッジヒーター(発熱体)15と、熱電対(温度センサー)16が組み込まれており、これによる溶融前の樹脂の予熱効果や、溶融後の温度低下防止効果により、外気温が低いときなど外部条件が変わっても融着時間などの設定条件を変更することなく、安定して樹脂先端面96が融着温度を維持できるようになっている。
【0033】
そして、前記、固定ステージ12を幅方向へ所定の範囲可動するスライド手段2aは、固定ステージ12の下方に載置台3に取り付けて設けられ、該ステージ12を幅方向に摺動可能に保持する摺動シャフト13と、シャフト13に覆着されたシャフト13に対して摺動するシャフト接続部17と、ステージ12側面側に螺合され、枠体31に保持された、固定ステージ12を幅方向に左右させるアジャスターボルト14により基本構成される。
摺動シャフト13は、前記固定ステージ12の幅方向を軸として平行に2本が設置され、双方の両端には可動の幅を限定するためのセットカラー131がストッパーとして備えられている。そして、前記の通り載置台3に固定される一方、シャフト13に覆着するシャフト接続部17を摺動可能に取り付けて形成される。
【0034】
固定ステージ12には、前記アジャスターボルト14に螺合するネジ穴18が備えられており、該アジャスターボルト14の締め込みの程度により、シャフト13に対して固定ステージ12のシャフト接続部17が幅方向に摺動して左右し、更生材9の幅方向に数ミリ程度(本例においては2.5mm)可動させることができ、更生材9を対面して取り付けたとき、ロット等による接合面の僅かなずれを微調整することができる機能となっている。
そして、微調整された後は、固定ステージ12が調整された位置から動かないように、ステージ12を貫通する長穴を通して枠体31にスリ―ロブノブ19を用いてねじ留め固定される。尚、ここで用いられる、アジャスターボルト14やスリーロブノブ19は工具を使用することなく、調整や固定ができるため作業効率が良く、特に、現場での作業には有効となっている。
【0035】
可動ステージ11を更生材9の対面方向(軸方向)に往復可動するスライド手段2は、可動ステージ11の下方に載置台3に取り付けて設けられ、該ステージ11を摺動可能に保持するスライドシャフト21と、同じく可動ステージ11の下方に載置台3に固定して設ける往復可動の動力となるエアシリンダー23により基本構成される。
スライドシャフト21は、可動ステージ11の軸方向に平行に2本が設置され、前記の通り載置台3に固定される一方、可動ステージ11に固定され、スライドシャフト21に覆着して設けるブッシュハウジング22により該ステージ11を摺動可能に取り付けて形成する。
【0036】
エアシリンダー23は一般的な汎用のものを用いれば良いため、構造や作動原理等の説明は省略し、本形態での動作のみを説明する。本例では、シリンダーボディー231を、シリンダー台24を介し載置台3に固定し、ピストンロット232に接続されたフローティングジョイント233を介して、可動ステージ11下部に固定されているシリンダープレート(可動体)234を軸方向に前後往復可動することにより、可動ステージ11のブッシュハウジング22がスライドシャフト21に摺動して動き、可動ステージ11が軸方向に往復可動される。
【0037】
載置台3は、前記ステージ1を摺動するスライド手段2や、前記固定ステージ12を範囲可動するスライド手段2aや、後述する溶融ブロック等が設置され、枠体31に取り付けられており、前記移動ステージ11を初期状態に配置したさい固定ステージ12との間に溶融ブロック7を出退させるための開口部33が設けられている。そして、本例においては、該載置台3が後記する基台34の上部フレーム341aの上に、前記軸方向や幅方向へのスライド手段の構成部を設置する空間を設けて平行に配置される。
【0038】
クランプ部4には、下方押え型のトグルクランプ40が用いられ、各々のステージ11、12上で、該ステージ1の対面側の端部、即ち、更生材9の融着接合面96付近をクランプできる位置にクランプベース41を固定して設置し、操作レバー42の回動操作によりアーム43が回動して、該アーム43に取り付けられたアタッチメント44がクランプブロック5を押圧して、結果、更生材9をステージ1とクランプブロック5で挟持してクランプする構造となっている。尚、本例においては、アタッチメント44は、ネジ状の長さ調整部441を備えており、押圧の強さを自在に変えることができるものとしており、先端の当接部442はカップ状として広い面に当接されるものとしている。
【0039】
クランプブロック5は、クランプしたさい、更生材9のT字型のリブ95等凹凸のある側に当接され、更生材の融着接合面96にずれが生じないように、更生材9の形状に適合して特定位置を保持するもので、金属等の硬質材よりなりクランプ側に位置するブロック本体51と、弾性ゴム材よりなる樹脂への当接面となる弾性プレート52により構成され、対面側となる側面端部53が前記ステージ1の対面側の端部と平行に、かつ、ほぼ同位置に端部面を位置させ、極力更生材9の融着接合される端面96に近い部分を押えられるようにステージ1に着脱自在に取り付けられる。そして、更生材9a〜9dの形状による種類ごとに適合するクランプブロック5a〜5dが用意されており、形状に適合したものが選択され付け替えられて使用される。また、本例では弾性プレート52を複数のプレートに分割(本例では、3分割)して、樹脂の形状に適合して当接される段差を備えてブロック本体51に接続している。例えば、図9に示すように、更生材9はサブロック部のオス部94、T字状のリブ95、オスロック部92で高さが異なるため、押え部となる各々の弾性プレート521、522、523に段差を設けて構成している。このように、種類によりブロック本体51や弾性プレート52の厚さが異なるため、また、適用する更生材9a〜9dにより付替えを必要とするため、ステージ1への取付けは、極力工具を使用せず手指でも容易にできるように、長さ方向の一方側にはローレットノブ541、他方にはスリーロブノブ55を用いている。
【0040】
また、該クランプブロック5は、スリーロブノブ55をステージ1から外した状態でローレットノブ54のシャフト540を軸としてステージ1上を自在に可動することができ、更生材9の取付けや、取り替えのさいにローレットノブ541側を取り外すことなく設置することができる。また、クランプブロック5を、更生材9を保持する特定位置に設定するためのブロック位置決めピン57が設けられており、該ピン57により、取り外したり、回動させたりしても容易にかつ確実に予め決められた特定位置に該ブロック5を設定することができ、ローレットノブ541及びスリ―ロブノブ55の締め付けにより容易に固定することができる。尚、図面では、クランプブロック5が、可動ステージ11の側はステージ対面側と平行に設置されている状態、固定ステージ12側は90°回動してステージ対面側と直角に置かれた状態が示されている。
【0041】
また、クランプブロック5のローレットノブ54のシャフト540にはステージ1に接して、更生材9のステージ1の対面側端面からの突出長さを規定するためのストッパーとなるL字型に形成される位置出し板56が、該シャフト540を軸として回動可能に設けられており、更生材9の設置のさいに、ステージ1から突出した状態に置かれ(図4の移動ステージ側参照)、樹脂端面96をこれに当接するまで突出させて設定される、樹脂の長さ方向へのストッパーとなっている。尚、ステージ1上には、回動する位置出し板56を前記設定位置に特定するための位置決めピン58を備えており、常に設定位置で回動を留めて正確にかつ容易に位置出し板56の設定位置を特定することができる。そして、樹脂が特定位置に設定された後は、回動してステージ1内に納めておくことで融着接合中に動作の邪魔になることはない。また、ローレットノブ54はクランプブロック用541と位置出し板用542を同軸に2つを設けて、回動操作や固定が、別々にできるように形成されている。
【0042】
前記クランプブロック5、位置出し板56と共に、更生材9の融着接合面にずれが生じないように、更生材9の幅方向の取付け位置を特定する位置決めブロック6は、本形態ではステージ1上の凹み部100に嵌着する態様で着脱自在に取り付けられ、更生材9a〜9dの形状ごとに適合する位置決めブロック6a〜6dが用意されており、形状に適合したものが選択され付け替えられて使用される。例えば、図11に示すように更生材9のサブロックのオス部94に適合した傾斜61と、該更生材9のメスロック部93の凹部に適合する凸部62を設けて形成される。尚、位置決めブロック6の形状は保持する樹脂の形状により特定の位置を保持することができ、また、該形状に沿うものであればどのようなものでも良い。
【0043】
前記可動ステージ11と固定ステージ12間に出退して、更生材9の端面96を溶融するための溶融ブロック7は、内部に発熱体となるカートリッジヒーター711と温度センサーとなる熱電対712を組み込んだ熱板71と、該熱板71を昇降方向に可動する昇降手段72と、対面方向に可動する平行摺動手段75より構成し、熱板71はアルミニウムやステンレスなどの金属よりなるブロック体よりなり、該熱板71が樹脂と接触するさい、樹脂と同じ高さに位置する様にカートリッジヒーター711を幅方向に水平に設け(図10参照)、また、熱板71の適当な位置に熱電対712を内蔵させて形成した。また、熱板71表面には、溶融した樹脂の付着により樹脂の端面が凸凹になってしまうことを防止するため、溶融した樹脂が付着して残りにくいフッ素樹脂を含む表面処理を施して形成されている。
【0044】
溶融ブロック7の昇降手段72は、前記可動ステージ11のスライド手段2と同様にエアシリンダー721を動力として用いており、シリンダーボディー722をシリンダー固定プレート74、溶融ブロック設置テーブル73及びリニアガイド76を介して載置台の下方に固定し、ピストンロット723に接続されるフローティングジョイント724により、断熱構造材よりなる可動体725を昇降方向に可動して、該可動体725に接続された熱板71を上下に往復可動する。尚、この往復可動は、制御手段により移動距離、移動停止時間が制御されて動作される。
【0045】
一方、溶融ブロック7の対面方向への水平摺動手段75は、ガイドレール761の溝762を、スライダー763が摺動して可動するリニアガイド76と、該リニアガイド76と平行に設け連動して可動するばね弾性手段77により基本構成され、該ばね弾性手段77は、シャフト771に覆着して設ける伸縮するスプリング772の一方端部を前記スライダー763と溶融ブロック設置テーブル73を介して連接、連動して水平可動するスプリング受け773に取り付け、他方端部を載置台3の下方に接続した可動しないストッパーブロック774に固定して形成された。
この往復可動は、可動ステージ11に取り付けられた更生材9の端面96により押圧された熱板71が固定ステージ12側に可動すると、熱板71に連結されているリニアガイド76のスライダー763が同方向にスライドすると共に、スプリング受け773が可動してスプリング772が収縮した状態になる。そして、可動ステージ11が元の位置に戻ると、更生材9による押圧の解除によりスプリング772が復元力により伸長してスプリング受け773と共にスライダー763が元の位置に戻って、熱板71が固定ステージ12側の更生材9から離されることになる。
【0046】
基台34は、本装置のステージ1を含む更生材の取付け部を設置した載置台3を搭載してボックス状に形成され、本構成においては、フレーム341で組まれた矩形の枠体にパネル342を取り付け、前面には開閉する扉35を設け、上面には基台34の内部を保護するなどの目的でプレート32を設けた。また、前記の通り、該基台34の上部となる上部フレーム341aには載置台3が取り付けられる。そして、少なくとも融着接合部となる更生材9の取付け部や溶融ブロック7には、該部位を覆い風雨を避けたり、不慮の接触を防止したりするため、蝶番により開閉可能な安全カバー37を設け、更に、現場への搬送、移動を考慮して、装置上面部には車への積み下ろしを容易とする吊フック38を、底部には移動を容易とするキャスター37を備えて構成した。また、ボックス内には装置への条件性や制御を行なう制御ボックス81が搭載されており、装置全体がボックス化されコンパクトで搬送しやすいものとして形成されている。
【0047】
溶融ブロック7の溶融温度やステージ1の予熱温度は、溶融する樹脂の種類等により制御ボックス81内の設定装置により適当に設定され、前記熱電対16、712により計測され制御ボックス81内の制御装置で制御される。また、溶融時間は樹脂の種類や溶着面の大きさにより自在に設定することもできるが、頻繁に使用される、例えば下水道の更生材9の数種類については、予めプログラムされた時間を選択的に設定できる切り替えスイッチ82を備えた。また、各可動部の動作、及び、タイミングについても予めプログラムしておくこともでき、設定温度及び溶融時間の設定、あるいは、切り替えスイッチ82の設定により容易に操作することができる。
【0048】
次に、本装置への帯状樹脂の取付けと、融着接合の動作に付いて、帯状樹脂として前記した下水道更生材9を例として説明する。尚、溶融温度や溶着時間は予め設定して置くが、本装置では、融着接合中での温度低下による接合強度の低下を考慮して、硬質塩化ビニルの溶融温度より高く(本例においては、260℃)設定し、溶融時間を更生材の端面の表面積の大きさにより10秒から20秒程度に設定した。尚、この時間の設定は前記の通り、予めプログラムされている更生材9であれば切り替えスイッチ82を合せるだけで設定される。
【0049】
本装置でのステージへの更生材の取付けは、次の手順により行われる。
1.融着する更生材9の形状に適合する位置決めブロック6を選択し、ステージ1に設ける嵌合凹み部100に嵌着して固定し、位置出し板56を回動してステージ1より突出させた特定位置(更生材端面の長さ方向の設定位置)にセットする。
2.前記位置決めブロック6の凸部62に更生材9のメスロック部93を嵌合し、位置出し板56に端面96を当接させて更生材9を設定位置に置く。
3.前記更生材9と適合するクランプブロック5を選択し(必要であればブロック本体51と弾性プレート52を組み合わせ)、更生材9をステージ1と挟むようにステージ1に、ローレットノブ541やスリーロブノブ55を用いて取り付け、位置出し板56を回動してステージ1内に納める。
4.トグルクランプ40の操作レバー42を回動して、アタッチメント44によりクランプブロック5を押圧することで更生材9が特定位置に固定される。必要があればアタッチメント44の上下操作により押圧の程度を調整する。
5.必要に応じて固定ステージ12に対し、アジャスターボルト14を用いて幅方向に微調整を行ない、更生材9の僅かなずれを調整する。
【0050】
ステージに更生材9を対面して取り付けた後、融着接合は、次の工程で動作される。
1.スタートスイッチを押すと、溶融ブロック用エアシリンダー721により熱板71が上昇し、ステージ1間(更生材の端面96間)に位置される。
2.溶融ブロック7が上昇すると、ステージ用エアシリンダー23により可動ステージ11が対面側にスライドして、該ステージ11に取り付けられた更生材の端面96が熱板71に接触する。
3.可動ステージ11が更にスライドして、熱板71を押圧することにより、溶融ブロック7のリニアガイド76のスライダー763がスライドしてスプリング772が収縮し、熱板71が対面方向に可動して固定ステージ12に取り付けられた更生材9の端面96に接触、押圧される。
4.このように熱板71の両面に端面96を接触した状態で所定時間保持され、更生材9が溶融される。
5.所定時間接触して溶融工程が終了すると、可動ステージ11が元の位置まで戻り、可動ステージ11側の更生材9が熱板71から剥離されると、同時に、更生材端面96の押圧から開放されてスプリング772が元の形状に伸長して、固定ステージ12側の更生材9も熱板71から剥離される。
6.可動ステージ11が戻ると、溶融ブロック7が下降して元の位置に戻り、可動ステージ11と固定ステージ12間から熱板71が排除される。
7.溶融ブロック7が下降すると、可動ステージ11が再び固定ステージ12側にスライドして、溶融された更生材の端面96同士を接触させ所定時間保持して融着接合ができる。
8.接合され一体化した更生材9は、クランプブロック5を回動し、あるいは外して装置から取り外される。
【0051】
本形態の装置によると、更生材9の形状に合わせてクランプブロック5や位置決めブロック6を選択してのクランプ保持ができること、また、固定ステージ12が幅方向に可動することで僅かな位置ずれも微調整できることにより、更生材9の端面96を対面配置したとき、可動ステージ11側と固定ステージ12側の端面をずれなく保持させることができ、肉薄で複雑な形状の帯状樹脂であっても確実な融着接合が可能で、ずれに起因する融着強度の低下を排除することができる。一方で、前記クランプブロック5、位置決めブロック6、及び、固定ステージ12の脱着、微調整など、非効率とも思える作業も工具等を使わずに、あるいは、使っても容易に可能な取付け手段などとしており、作業の効率を悪くすることがない。
また、溶融ブロック7の熱板71表面には融着樹脂付着防止の表面加工が施されていることにより、樹脂表面が粗となり融着強度不良となることが防止できる。
更に、装置をボックス化し、ステージ1のスライド機構2を一方側のみに設ける等のコンパクト化を図っており、また、搬送のための吊上げフック38やキャスター36を設けたり、安全カバー37を備えたりする等、現場作業に好適な装置となっている。
加えて、更生材9の違いによる溶融時間が、使用頻度の高いものに付いては予めプログラムされており、それらに付いては、切り替えスイッチ82を合せることで設定作業なしできるなど作業を効率的にできる機能を備えた装置となっている。
【符号の説明】
【0052】
1. ステージ
100.位置決めブロック嵌着凹部
11. 可動ステージ
12. 固定ステージ
13. 摺動シャフト
131.セットカラー
14. アジャスターボルト
15. カートリッジヒーター
16. 熱電対
17. シャフト接続部
18. アジャスターボルト用ネジ穴
19. スリーロブノブ
2. スライド手段(可動ステージ)
2a. スライド手段(固定ステージ)
21. スライドシャフト
22. ブッシュハウジング
23. エアシリンダー
231.シリンダーボディー
232.ピストンロット
233.フローティングジョイント
234.シリンダープレート
24. シリンダー台
3. 載置台
31. 枠体
32. プレート
33. 開口部
34. 基台
341.フレーム
341a.上部フレーム(フレーム上部)
342.パネル
35. 扉
36. キャスター
37. 安全カバー
38. 吊フック
4.(40.)クランプ部(トグルクランプ)
41. クランプベース
42. 操作レバー
43. アーム
44. アタッチメント
441.長さ調節部
442.先端当接部
5. クランプブロック
51. ブロック本体
52.(521、522、523)弾性プレート
53. 側面端部
54. ローレットノブ
540.シャフト
541.(クランプブロック用)ローレットノブ
542.(位置出し板用)ローレットノブ
55. スリーロブノブ
56. 位置出し板
57. ブロック位置決めピン
58. 位置出し板位置決めピン
6. 位置決めブロック
61. 傾斜部
62. 凸部
7. 溶融ブロック
71. 熱板
711.カートリッジヒーター
712.熱電対
72. 昇降手段
721.エアシリンダー
722.シリンダーボディー
723.ピストンロット
724.フローティングジョイント
725.可動体
73. 溶融ブロック設置テーブル
74. シリンダー固定プレート
75. 平行摺動手段
76. リニアガイド
761.ガイドレール
762.溝
763.スライダー
77. ばね弾性手段
771.シャフト
772.スプリング
773.スプリング受け
774.ストッパーロック
81. 制御ボックス
82. 切り替えスイッチ
9. 更生材
91. 水平面
92. オスロック部
93. メスロック部
94. サブロックオス部
95. リブ
951.サブブロックメス部
96. 端面
【要約】
【課題】下水道更生材のような肉薄で複雑な端面を持つ帯状樹脂であっても接合面のずれを抑えることができ、また、野外作業で使い勝手が良く、安定した融着接合ができる帯状樹脂端面の融着接合装置を提供すること。
【解決手段】融着接合装置は、帯状樹脂の端面を対面させて保持し、所定間隔を設けて対向配置する2つのステージ11、12と、該ステージの少なくとも一方を対面方向に往復可動するスライド手段2と、前記ステージを設置する載置台3と、前記樹脂の端部をステージ上に保持するクランプ部4と、該クランプ部によるクランプのさい、帯状樹脂を上方から保持するクランプブロック5と、樹脂をステージの特定位置に設定する位置決めブロック6、及び、前記ステージ間に出退する昇降方向に往復可動する発熱体を内蔵する溶融ブロック7と該溶融ブロックの温度設定及び制御、並びに、樹脂への加熱時間の設定及び制御が可能な制御手段により構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12