【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 地熱発電技術研究開発/地熱発電の導入拡大に資する革新的技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1流体が流通可能な第1流路と、前記第1流体との間で熱交換を行う第2流体が流通する第2流路を有し、電源から所定の電位が付与される陽極板と陰極板により前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一部が区画された電解槽と、
前記陽極板と前記陰極板に対して通電を開始して前記所定の電位を付与した後に当該所定の電位とは極性が反転した電位を付与し、その後に前記通電を解除する洗浄処理を、所定の周期毎に繰り返す制御を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記所定の電位及び前記極性が反転した電位を付与する期間よりも、前記通電を解除した後に再び通電を開始して前記所定の電位を付与するまでの期間の方が長くなるように、前記陽極板と前記陰極板に対してそれぞれ電位を付与する制御を行うことを特徴とする発電システム用の熱交換器。
前記熱交換器又は前記熱交換器を経た前記第1流体が流通する第1配管に接続されるとともに、前記陽極板と前記陰極板の極性が反転した後の前記第1流体が流通可能な排出管をさらに備える請求項3乃至8のいずれか一項に記載のバイナリー発電システム。
【背景技術】
【0002】
世界的な地球環境保護の高まりを受け、地熱や産業製品の生産過程から生じる産業排熱を利用した発電は、二酸化炭素の排出量が極めて少ないことから注目度が増している。
このうち地熱発電方式では、以下の2つの方式が存在する。すなわち、1つ目の方式は、地下深部で加圧・加熱された気液二相状態の熱流体を用い、この熱流体を地上へ井戸を介して噴出させたときの地熱蒸気をタービンに導いて発電を行うフラッシュサイクル方式である。また、2つ目の方式は、熱流体を熱交換器にいったん導いてこの熱交換器で作動流体と熱交換を行い、この熱流体で加熱された作動流体の蒸気をタービンに導いて発電を行うバイナリーサイクル方式である。
【0003】
バイナリーサイクル方式を用いた発電では、近年では熱流体の一例として例えば温泉水などの地熱水を用いたバイナリー発電システムの開発が進められている。
地熱水は地下においても相対的に浅い深度に存在することが多く、従来の地熱発電に比して発電システムの導入コストやリスクが高くないといった利点がある。なお地熱水は通常100℃以下の温度を有するものも多く存在するため、沸点が低い代替フロン(HFE)やペンタン(C
5H
12)、あるいはアンモニア等のような低沸点媒体が作動流体として用いられている。
【0004】
このバイナリー発電システムにおいては、地熱水を地上に備えられた熱交換器へ導入し、別途この熱交換器へ導入された低沸点媒体と熱交換を行って低沸点媒体の蒸気を発生させる。そしてこの低沸点媒体の蒸気を蒸気タービンに導入してタービンを回転させ、この回転を利用して発電機で発電が行われる。
蒸気タービンから排出された低沸点媒体の蒸気は、凝縮器において冷却されて液化された後に、再び熱交換器に送られて地熱水により加熱されて低沸点媒体の蒸気として蒸気タービンに導入されることが繰り返される。
【0005】
上記したバイナリー方式の発電システムについては、下記特許文献1に例示されるごとき熱流体が持つエネルギーの利用効率を高めることに着目された技術が提案されている。
例えばこの特許文献1によれば、熱流体の蒸発温度などを変えたり、蒸発器と予熱器等の組み合わせを変えたり、あるいは作動流体にアンモニアと水の混合液を用いるなどして、発電システムの効率を高めることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、地熱水を用いた場合には以下の課題が生ずることが想定される。すなわち温泉水にはカルシウムなどのミネラル分や硫黄分などの成分が含まれており、熱交換器を含んだ循環系における配管の内壁や熱交換器内部に析出する。この析出物が例えば熱交換器表面に付着した場合、熱流体(地熱水)と作動流体(ペンタンなど)の熱交換効率を著しく低下させてしまい、最悪のケースでは配管の詰まりや熱交換器の故障に繋がる恐れもある。
【0008】
一方で熱交換器や配管を定期的に人海戦術で清掃すれば配管の詰まりや熱交換器の故障は低減されることになるが、そのためのコストが上昇することでバイナリー発電の利点が損なわれてしまうことは避けねばならない。
また、薬剤を熱交換器や配管に導入して洗浄することも考えられるが、近年では環境汚染防止という観点からこのような薬剤の使用が自粛されるようになっている。
なお、この問題は不純物を含む熱流体に留まらず熱交換器等に流入する流入液体に等しく生じ得ることであり、如何にしてコストを抑制しつつ流体間のエネルギー伝達効率を低下させないかが今後重要となってくる。
【0009】
本発明は、上記した問題を鑑みて、たとえ不純物を含有する流入液体が用いられたとしても、低コストで高効率な発電を持続することが可能な熱交換器などの浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる
発電システム用の熱交換器は、第1流体が流通可能な第1流路と、前記第1流体との間で熱交換を行う第2流体が流通する第2流路を有し、電源から所定の電位が付与される陽極板と陰極板により前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一部が区画された電解槽と、前記陽極板と前記陰極板に対して通電を開始して前記所定の電位を付与した後に当該所定の電位とは極性が反転した電位を付与し、その後に前記通電を解除する洗浄処理を、所定の周期毎に繰り返す制御を行う制御部と、を含
み、前記制御部は、前記所定の電位及び前記極性が反転した電位を付与する期間よりも、前記通電を解除した後に再び通電を開始して前記所定の電位を付与するまでの期間の方が長くなるように、前記陽極板と前記陰極板に対してそれぞれ電位を付与する制御を行うことを特徴とする。
【0011】
なお、前記した熱交換器においては、前記電解槽内では前記陽極板と陰極板が対向して交互に複数配置されることが好ましい。
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかるバイナリー発電システムは、前記した熱交換器と、前記電源を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、所定のタイミングで前記陽極板と前記陰極板の極性を反転させることを特徴とする。
【0012】
なお、前記したバイナリー発電システムでは、前記陽極板と前記陰極板の間を流れる電流を計測する電流計を備え、前記制御装置は、前記電流計の計測値に基づいて前記極性を反転させることが好ましい。
また、前記した各バイナリー発電システムでは、前記第2流体から生じる蒸気の圧力を計測する圧力計を備え、前記制御装置は、前記圧力計の計測値に基づいて前記極性を反転させることが好ましい。
また、前記電解槽へ流入する前記第1液体の温度と、前記電解槽から流出した前記第1液体の温度とを検出する温度計を備え、前記制御装置は、前記温度計の計測値に基づいて前記極性を反転させることが好ましい。
【0013】
また、前記した各バイナリー発電システムでは、前記第2流体が蒸発して生じた媒体蒸気によって駆動される第1蒸気タービンと、前記第1蒸気タービンと、前記陽極板および前記陰極板とを電気的に接続する電力供給系とを備え、前記制御装置は、前記第1蒸気タービンにより発電された電力の少なくとも一部を前記電源として利用することが好ましい。
また、前記したバイナリー発電システムでは、前記第1流体を減圧して水蒸気と熱水に分離する減圧気液分離器と、前記減圧気液分離器により分離された前記水蒸気によって駆動される第2蒸気タービンと、をさらに含むことが好ましい。
【0014】
また、前記した各バイナリー発電システムでは、前記熱交換器又は前記熱交換器を経た前記第1流体が流通する第1配管に接続されるとともに、前記陽極板と前記陰極板の極性が反転した後の前記第1流体が流通可能な排出管をさらに備えることが好ましい。
また、前記したバイナリー発電システムでは、前記排出管と前記第1配管とを切り替えるバルブを備え、前記制御装置は、前記陽極板と前記陰極板の極性を反転させるときに前記バルブを切り替えて前記熱交換器に導入された前記熱流体を前記排出管へ流入させる制御を行うことが好ましい。
【0015】
また、前記した各バイナリー発電システムでは、前記第1流体として、ミネラル分又は硫黄分を含む温泉水が適用可能である。
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる
発電システム用の熱交換器の制御方法は、電源から所定の電位が付与される陽極板と陰極板が配置された熱交換器内へ、前記陰極板と接触するように第1配管を介して第1流体を流通させることと、前記熱交換器内で前記第1流体とは隔離されるように、前記第1流体と熱交換を行う第2流体を前記熱交換器内へ第2配管を介して流通させることと、前記陽極板と前記陰極板に対して通電を開始して前記所定の電位を付与した後に当該所定の電位とは極性が反転した電位を付与し、その後に前記通電を解除する洗浄処理を、所定の周期毎に繰り返すことと、を含
み、前記所定の電位及び前記極性が反転した電位を付与する期間よりも、前記通電を解除した後に再び通電を開始して前記所定の電位を付与するまでの期間の方が長くなるように、前記陽極板と前記陰極板に対してそれぞれ電位が付与されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発電システムなどに流入する流入液体としての第1液体に含まれて能力低下の原因となる成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのミネラル分など)を除去することができ、これにより例えば発電能力の低下を抑制しつつ熱交換処理などを実行できる。さらに、このような電解処理によって、環境負荷の大きな薬液を使用することなく第1液体が流れる配管などの汚染も防止でき、低コストで高効率なシステムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施形態を、バイナリー発電システムを一例にして説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明中において適宜X方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ規定したが、本発明の権利範囲を減縮するものでないことは言うまでもない。
【0019】
≪第1実施形態≫
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るバイナリー発電システム1Aの全体構成図である。
本実施形態のバイナリー発電システムBES1は、第1配管L
1、熱交換器(蒸発器)1、第2配管L
2、蒸気タービン2、発電機3、凝縮器4、および全体制御装置5を含んで構成されている。なお、以下で詳述する構成以外については、例えば特開2013−170553号等の公知の地熱発電システムを適宜参照してもよい。
【0020】
第1配管L
1は、地下に存在する熱流体源と熱交換器1、さらには熱交換器1と河川などとを結ぶパイプである。この第1配管L
1と、図示しないポンプなどを介して、熱流体源から熱流体を汲み上げて熱交換器1へ流通させるとともに、熱交換器1で熱交換された熱流体を河川などへ還元(排水)させる。なお、熱交換器1で熱交換された熱流体を排水せずに再び熱流体として再利用してもよい。
【0021】
後述する実施形態でも説明されるとおり、本発明が適用可能な「第1流体」は熱流体に限られないが、以下ではまず熱流体を一例として説明する。この熱流体としては種々適用が可能であるが、本実施形態では例えば50℃〜150℃程度の温泉水を熱流体として用いる。なお、本実施形態で適用が可能な熱流体としては、温泉水以外にも例えば産業廃棄水(温水洗浄など工業生産の過程で生じた廃棄温水)や従来の地熱発電で用いられている高圧地下水など(これらを総称して適宜「熱水」と称する)がある。
熱交換器1は、電解槽11、電極板12、および制御部13を含んで構成され、第1配管L
1を介して熱流体源から汲み上げられた熱流体と後述する作動流体との熱交換を行う。
【0022】
図2に熱交換器1の構成図を示す。電解槽11は、熱流体を電解処理しつつ作動流体と熱流体とが熱交換されるための電解槽体であり、複数(4枚)の電極板12が所定の距離だけ隔てて対向して配置される。そして、この電解槽11中に配置される電極板12には、図示しない電源から配線(e1、e2)を介して所定の電位が付与される。電源は公知の機器を使用することができ、例えば所定の電位として、電極板12の間に例えば50V以下の直流電圧を印加することができる。
【0023】
なお、必要に応じて電極間の距離を一定に保つための絶縁体を電極板12の間に配置してもよい。
また、交互に配置される陰極板と陽極板は2枚ずつ計4枚配置する例に限られず、例えばそれぞれ3枚以上ずつを交互に配置してもよいし、1枚ずつそれぞれ配置してもよい。また、陰極板と陽極板を同数ずつ配置しなくともよく、例えば陰極板の枚数を陽極板よりも多くして交互に配置してもよい。
【0024】
そして電解槽11内では、電解槽11の壁面と電極板12とによって熱流体又は作動流体が流通する流路が形成されている。
図2においては、電解槽11の壁面と陰極板12
1、および陽極板12
2と陰極板12
3、陽極板12
4と電解槽11の壁面によって、それぞれ作動流体が流通する第2流路R2が形成されている。また、陰極板12
1と陽極板12
2、陰極板12
3と陽極板12
4によって、それぞれ熱流体が流通する第1流路R1が形成されている。このように、電源から所定の電位が付与される電極板12(陽極板と陰極板)によって、熱流体または作動流体が流通する流路の少なくとも一部が電解槽11内に区画される。
【0025】
これにより、熱流体と作動流体とが隔離されて熱交換器1内をそれぞれ流通することになる。
なお、
図2においては、第1流路R1と第2流路R2をそれぞれ流れる流体の向きは互いに逆向きであるが、第1流路R1と第2流路R2をそれぞれ流れる流体の向きを同じ方向としてもよい。また、電解槽11の壁面と電極板12との境界に公知のシール材を介在させて、隣り合う流路間での流体漏出を防止してもよい。この場合、シール材の材質は、絶縁性樹脂などが好ましい。
制御部13は、熱交換処理時に図示しない商用電源などから電極板12へ所定の電位を付与する制御を行うとともに、陰極板(
図2では陰極板12
1と陰極板12
3)表面の洗浄処理(後述)を行う。
【0026】
第2配管L
2は、「第2流体」の一例としての作動流体が流通する配管であり、本実施形態では熱交換器1内、蒸気タービン2内、凝縮器4内を作動流体が循環するために用いられる。すなわち、作動流体は、これらの装置間を閉ループとして循環する。なお、作動流体としては、熱流体よりも沸点が低い流体が用いられる以外に特に限定はなくブタン(C
4H
10)や代替フロン(HFE)など種々の流体が適用可能である。本実施形態では、作動流体として沸点が約36℃のペンタン(C
5H
12)を用いている。
作動流体としてのペンタンは、熱交換器1内で温泉水から伝熱を受けて蒸発(気化)して作動気体に変換され、第2配管L
2を介して蒸気タービン2に導入される。
【0027】
蒸気タービン2は、第2配管L
2を介して熱交換器1と蒸気タービン2とに接続され、熱交換器1から第2配管L
2を介して導入された蒸気状態のペンタンを用いて仕事を行う。
発電機3は、蒸気タービンと接続されており、蒸気タービン2の仕事に応じて発電を行う。発電機3により発電された電力は、例えば図示しない変圧器を介して電力会社の変電所や家屋などへ供給される。
凝縮器4は、第2配管L
2を介して蒸気タービン2と熱交換器1に接続されている。そして凝縮器4では、水または空気などを用いて蒸気タービン2を経た蒸気状態のペンタンを凝縮して(熱交換を行って)液状のペンタンに変換する。そして変換した液状のペンタンを、作動流体として第2配管L
2や図示しないポンプなどを介して再び熱交換器1へ導入させる。
【0028】
<熱交換器1内における析出について>
本実施形態のバイナリー発電システムBESでは、熱流体として熱水が第1配管L
1内および熱交換器1内の一部を流通している。
例えば熱水が温泉水の場合、通常、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどのミネラル分や、硫黄分などの成分が含まれている。
【0029】
例えばカルシウムを多く含む炭酸水素塩泉の場合、温度やpHなどの諸条件が変化すると、下記式1に示される化学反応によって温泉水内の溶解成分の一部が固形物(C
aCO
3など)となって第1配管L
1や熱交換器1内に析出する。
Ca
2+ + 2HCO
3− → CaCO
3↓ + H
2O + CO
2↑ ・・・(1)
したがって、本実施形態では、温泉水を熱流体として用いた地熱発電を長時間行う場合においても、上述した析出物による熱交換効率の低下が抑制できる機能を熱交換器1に備えることとした。
【0030】
<熱交換時における浄化処理>
すなわち本実施形態では、
図3(a)および(b)に示すとおり、熱交換器1の制御部13は、所定のタイミングで陽極板と陰極板の極性を反転させる反転処理を行う。
より具体的には
図3(a)に示される通り、制御部13により陽極板と陰極板の極性が反転されると、陰極板に付着していた付着物(カルシウムなど)が洗浄水中に溶け出す。このとき陰極板となった電極板には新たにカルシウムなどの成分が付着し始めるが、反転処理を含めた洗浄処理を工夫することで陰極板に付着物が付着する量よりも相対的に洗浄水に溶け出す付着物の方を多くすることができ、トータルで見た場合に電極板は浄化されることになる。
【0031】
この反転処理の際、制御部13は、第1配管L
1に設置された三方弁などのバルブVbを用いて温泉水から洗浄水へ供給系統を切り替え、熱交換器1へ洗浄水を供給する制御を行ってもよい。また、洗浄に使用した洗浄水は、熱交換器1に別途接続される排出管を介して河川等で排水してもよいし、温泉設備へ供給してもよい。所定期間だけ洗浄水を供給した後は、熱交換器1前後の第1配管L
1に設けられた三方弁等のバルブVbを元に戻して発電を再開する制御を行ってもよい。
【0032】
洗浄で用いた洗浄水は高濃度のミネラル分を含み、基本的には有害な物質が添加されるわけではないため、商用の温泉水として活用することや飲料水として使用してもよい。なお、洗浄水としては特に限定はないが、本実施形態では例えば水道水などの水を用いている。また、洗浄水を排出する排出管は省略が可能であり、この場合は上述した熱交換器1と河川などを結ぶ第1配管L
1をそのまま用いてもよい。
【0033】
また、所定のタイミングとしては、例えば1時間置き、1日置き、1週間置き、一カ月や半年置きなど任意のタイミングを設定してもよく、熱交換器1への温泉水の供給流量や流速なども考慮することが好ましい。例えば温泉水を約1m/sの速度で第1配管L
1内に流した場合、およそ30分で0.1mm厚の析出が確認された。
また、洗浄水の供給期間についても、所定のタイミングに応じて決定してもよく、反転処理の間が長期間空く場合は洗浄水の供給期間も長時間取ることが好ましい。
【0034】
一例として、各電極における具体的な洗浄処理時間と反転処理との関係を
図3(b)に示す。なお、
図3(b)では例えば陰極板12
1における通電状態を示している。
図示されるとおり、本実施形態では陰極板には常時通電がなされておらず、消費電力削減と洗浄効率向上の観点から所定の周期T
1ごとに洗浄処理が行われる。なお周期T
1としては、上述した通り特に制限はないが、本例では例えば3時間毎として説明する。この例では一回の洗浄処理において、まず期間T
2だけ+の電圧が陰極板12
1に加わり、その後に極性が反転して期間T
3だけ−の電圧が陰極板12
1に加わる。
なお本実施形態では、期間T
2および期間T
3は同じ30秒間としているが、とくにその長さに制限はなく30秒以外の時間でもよいし、期間T
2と期間T
3とで異なる時間を設定してもよい。また、期間T
2の後で直ちに期間T
3が開始されているが、これに限らず期間T
2と期間T
3の間に電圧が加わらない期間があってもよい。
【0035】
本実施形態によれば、熱交換器1の電極板12へ付与する電位を制御して所望の電解処理を実行することで、温泉水から電極板表面に析出する量、電極板表面から洗浄水へ溶解する析出物の量、およびこれらが発生するタイミングを制御することができる。また、上記した析出物を特別な薬品を使用せずに安価な洗浄水で浄化することができる。したがって、温泉水を用いたバイナリー発電システムを低コスト且つ高効率で実現することが可能となる。
【0036】
≪第2実施形態≫
図4は、本発明の第2実施形態に係るバイナリー発電システムBES2の全体構成図である。バイナリー発電システムBES2は、上記第1実施形態のバイナリー発電システムBES1に比べて発電機3と熱交換器1の構成が主として異なるので、以下相違点のみについて説明し、バイナリー発電システムBES1と同じ構成及び機能を有する要素については第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図4に示すとおり、第2実施形態のバイナリー発電システムBES2は、発電機3で発電した電力の一部を、配線e3を介して熱交換器1へ導く。より具体的には、熱交換器1の制御部13は、発電機3で発電した電力の一部を受けて電極板12(陰極板と陽極板)の電位付与に用いる制御を行う。
【0038】
本実施形態によれば、熱交換器1の電極板12への電位付与のため特別の電源を用意することなく発電機3で発電した電力を使用するので装置システムを簡略化できるだけでなく装置コストやエネルギーコストも抑制することが可能となる。
【0039】
≪第3実施形態≫
図5は、本発明の第3実施形態に係るバイナリー発電システムBES3の全体構成図である。バイナリー発電システムBES3は、上記第1実施形態のバイナリー発電システムBES1および第2実施形態のバイナリー発電システムBES2に比べ、減圧気液分離器6、蒸気加減弁7、第2蒸気タービン8および第2発電機9の構成が主として異なるので、以下相違点のみについて説明し、既述した各バイナリー発電システムと同じ構成及び機能を有する要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図5に示すとおり、第3実施形態のバイナリー発電システムBES3は、いわゆるフラッシュ方式の地熱発電システムとバイナリー発電システムとを結合した発電システムとなっている。
より具体的には、第1液体としての熱流体を汲み上げる第3配管L
3が減圧気液分離器6に接続され、この減圧気液分離器6には更に第1配管を介して熱交換器1と、第4配管L
4を介して蒸気加減弁7が接続される。このうち、蒸気加減弁7は第4配管L
4を介して第2蒸気タービン8と接続される。
【0041】
また、第2蒸気タービン7は、第2発電機9、および排出管としての第4配管L
4にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では熱流体として地下の比較的深部に存在する高圧地下水を用いている。
まず第3配管L
3を介して減圧気液分離器6に供給された高圧地下水は、そこで減圧されて高圧水蒸気と高圧熱水とに分離される。減圧気液分離器6で分離した高圧水蒸気は、蒸気加減弁7を介して第2蒸気タービン8に送られて仕事を行うことにより第2発電機9で所望の電力が生成される。第2蒸気タービン8で仕事をした後の低圧蒸気は、配管などを介して河川等へ還元(排出)される。
【0042】
一方、減圧気液分離器6で分離した高圧熱水は、第1配管L
1を介して熱交換器1へ送られることで、上記各実施形態で説明したバイナリー発電が実行される。
蒸気加減弁7を介して第2蒸気タービン8に送られて仕事を行うことにより第2発電機9で所望の電力が生成される。発電機3で発電した電力の一部を、配線e3を介して熱交換器1へ導く。より具体的には、熱交換器1の制御部13は、発電機3で発電した電力の一部を受けて電極板12(陰極板と陽極板)の電位付与に用いる制御を行う。
【0043】
本実施形態で用いる高圧地下水は、地下に存在するマグマの成分の一部がイオンとして存在していることもあり、上記した熱交換器1の電極12表面でマグマに含まれるレアメタルが析出することも考えられる。
したがって、熱交換器1の電極12表面でレアメタルなどの非鉄金属が析出する場合には洗浄水を用いて河川へ排出せずに、非鉄金属(レアメタル)が付着した陰極板を交換するとともに、採取したレアメタルを産業用途に利用してもよい。
【0044】
本実施形態によれば、洗浄のために特別な薬品を使用せずに熱交換器1や配管の詰まりを抑制できるので熱交換効率の低下を抑制できる。さらに、二段階の熱交換を用いた発電を行うので比較的大きな電力を生成することができる。また、場合によってはレアメタルなどの貴重な非鉄金属も採取することができる。
【0045】
≪第4実施形態≫
図6(a)は、本発明の第4実施形態に係るバイナリー発電システムBES4を示す図である。バイナリー発電システムBES4は、上記の各バイナリー発電システムに比べて洗浄装置が熱交換器1としてではなく別体としてバイナリー発電システムに組み込まれている点が異なっている。すなわち、上記各実施形態では熱交換器1が浄化機能を有していたが、本実施形態では熱交換器と浄化装置が別体で構成されて互いに接続されている。
よって、以下相違点のみについて説明し、既述したバイナリー発電システムと同じ構成及び機能を有する要素については第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態の洗浄装置が組み込まれるシステムは、バイナリー発電システム以外の発電システムでもよく、さらには発電システム以外の流体を用いる他の公知のシステムを適用してもよい。
【0046】
図6(a)に示す通り、本実施形態のバイナリー発電システムBES4は、熱交換器100と、洗浄装置101を含んで構成されている。このうち熱交換器100には、第1流体として例えば地下から吸い上げた地熱水が第1配管L
1および洗浄装置101を介して流入される。換言すれば、第1配管L
1を介して接続される熱水源と熱交換器100との間には洗浄装置101が介在しており、この洗浄装置101によって洗浄された第1流体(本例では地熱水)が熱交換器100へと流入される。
【0047】
図6(b)に本実施形態の洗浄装置101の詳細構成を示す。
洗浄装置101は、電解槽としての容器102内に、電極板12aおよび電極板12bがそれぞれ配置されており、これら電極板12aおよび電極板12bとにより地熱水が流通する流路の少なくとも一部が形成されている。このうち、初期状態では例えば電極板12aが陽極として、電極板12bが陰極として機能している。そしてシステム稼働から所定時間が経過した後は、第1実施形態で説明した洗浄処理(電極の極性反転動作など)が実施される。なお、洗浄処理の際は、熱交換器100へ地熱水を送出せずにバルブVbを介して系外に排出してもよい。また、洗浄処理の際は地熱水以外の水道水などを洗浄水として用いてもよい。また、本実施形態では2枚の電極板12を用いたが、既述した上記各実施形態のように、例えば4枚など2枚以外の電極板12を用いてもよいことは言うまでもない。
【0048】
≪第5実施形態≫
図7は、本発明の第5実施形態に係るバイナリー発電システムBES5を示す図である。バイナリー発電システムBES5は、上記の各バイナリー発電システムに比べ、熱交換器が一次熱交換器200と二次熱交換器201の二段構成となっている点が主として異なっている。
よって、以下相違点のみについて説明し、既述したバイナリー発電システムと同じ構成及び機能を有する要素については第1実施形態と同一の符号を付して説明を適宜省略する。なお、本実施形態の二次熱交換器201を含むバイナリー発電システムは、公知のバイナリー発電システムをそのまま適用してもよく、さらにはバイナリー以外の他の公知のシステムを適用してもよい。
【0049】
図7に示すとおり、本実施形態の発電システムは、二次熱交換器201を含むバイナリー発電システムBES5に加え、一次熱交換器200をさらに有している。このうち、二次熱交換器201と一次熱交換器200との間は、第6配管L
6を介して中間流体(例えば純水)が循環する構成となっている。この第6配管L
6は閉ループ構造となっているので、外部から異物などが混入しにくい。
また、二次交換機201には第2配管L
2を介して上述した第2流体(例えばペンタンなど)が流入され、第6配管L
6を流入する中間流体(純水)と第2流体(ペンタン)との間で熱交換が行われる。
【0050】
一方で、一次熱交換器200の構造は、例えば
図2において既述した熱交換器11の構造を応用することができる。すなわち、例えば
図2に示したように、第1配管L
1から流路R1に第1流体(地熱水など)が流れる一方で、電極12
1〜12
4で流路R1と区画された流路R2に第6配管L
6を介して中間流体(純水など)が流れる構造を採用してもよい。これにより、一次熱交換器200内では、第1配管L
1を介して流入した第1流体(地熱水など)と、第6配管L
6を介して流入した中間流体(純水など)との間で熱交換が行われることになる。
【0051】
なお、第6配管L6内に流通させる中間流体は純水に限られず、少なくとも沸点が第2流体よりも高く第1流体より低い流体であれば適宜公知の他の液体や気体を用いてもよい。
また、電極12
1〜12
4を用いた洗浄処理については上述した洗浄処理と同様であるので、その説明は省略する。
また、本実施形態ではバイナリー発電システムBES5と一次熱交換器200とを別体として説明したが、一次熱交換器200を含んではバイナリー発電システムBES5と称してもよいことは言うまでもない。
本実施形態によれば、析出の可能性のある第1流体はバイナリー発電システムBES5内を流通せずに、バイナリー発電システムBES5内を流通する流体(本実施形態では純水およびペンタン)は常に清浄な状態が保たれている。よって、比較的小規模な一次熱交換器200だけをクリーニングすればよいので、メンテナンス性の優れた発電システムを実現することができる。
【0052】
上記した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、各実施形態に適宜適用が可能な変形例について説明する。なお、以下の変形例においては既述の構成と同じ機能・作用を奏するものは同じ参照番号を付し、その説明は適宜省略する。
≪変形例1≫
図8は変形例1を説明する図であり、熱交換器1内の電極12を流れる電流を計測する電流計Iを備えている。この変形例1では、熱交換器1と制御部13との間の配線上に電流計Iが設置されている。
そして全体制御装置5は、電流計Iにより計測される電流値をモニターしており、検出した電流値に基づいて熱交換器1の制御部13を介して電極板12の極性反転動作を制御する。
【0053】
例えば電流計Iで計測された計測値(電流値)が所定の閾値より低下した場合、全体制御装置5は電極板12の極性を反転させる制御を行う。このとき、全体制御部5は、作動流体の流通を停止して上記した洗浄処理を行う制御も実行してもよい。
なお本変形例1では電流計を用いたが、陰極板と陽極板の間の電圧値を計測してこの電圧値に基づいて電極板12の極性を反転させる制御を行ってもよい。
【0054】
≪変形例2≫
図9は変形例2を説明する図であり、熱交換器1から蒸気タービン2へ送られる作動流体の蒸気の圧力を計測する圧力計Pを備えている。この変形例2では、熱交換器1と蒸気タービン2との間の配管上に圧力計Pが設置されている。
そして全体制御装置5は、圧力計Pにより計測される圧力値をモニターしており、検出した圧力値に基づいて熱交換器1の制御部13を介して電極板12の極性反転動作を制御する。
【0055】
例えば圧力計Pで計測された計測値(圧力値)が所定の閾値(例えば凝縮器4から熱交換器1内へ流入する際の圧力値を基準とした値)より低下した場合、全体制御装置5は電極板12の極性を反転させる制御を行う。このとき、全体制御部5は、作動流体の流通を停止して上記した洗浄処理を行う制御も実行してもよい。
【0056】
≪変形例3≫
図10は変形例3を説明する図である。変形例3では、温度計TGを用いて、熱交換器1に流入する第1流体(例えば熱水)の温度と、熱交換器1から出る第1流体(熱水)の温度とを検出する。全体制御装置5は、温度計TGにより計測される圧力値をモニターしており、検出したそれぞれの温度を比較して、両者の差異が所定値以下となったときに熱交換器1の制御部13を介して電極板12の極性反転動作を制御する。
【0057】
より具体的には、
図10に示すとおり熱交換器1の前後における第1配管L
1上に温度計TGが配置され、熱交換器1から見て上流側の温度計TGと下流側の温度計TGとの温度が比較される。
例えば下流側で検出された温度が、上流側で検出された温度に比してさほど降下していない場合、熱交換器1の熱交換効率が低下しているものと推測される。よって全体制御装置5は、上流側の温度計TGと下流側の温度計TGの温度計TGでそれぞれ測った温度の差に応じて、熱交換器1の制御部13を介して電極板12の極性反転動作を制御する。例えばこの差分が所定の値以下であれば、電極板12の極性反転動作を行って洗浄処理に入ってもよい。このとき、全体制御部5は、作動流体の流通を停止して上記した洗浄処理を行う制御も実行してもよい。
なお、本変形例3では第1流体の温度を検出する例を用いて説明したが、熱交換器1に流入して当該熱交換器1から流出する第2流体の温度を検出するようにしてもよい。
【0058】
≪変形例4≫
図11は変形例4を説明する図であり、上述した第1実施形態のバイナリー発電システムBES1に比べて凝縮器4の構成が異なっている。すなわち、変形例4の凝縮器41は、上述した電極板12
1〜12
4に対応する電極板12
5〜12
8が電解槽としての容器内にそれぞれ配置されており、これらの電極板12によって冷たい流体が流通する流路と作動流体(概ね気液二層状態となっている)が流通する流路がそれぞれ区画されている。
本変形例が上記実施形態あるいは変形例と大きく異なる点は、浄化処理に適用される液体(第1液体)が、凝縮器4に流入する冷たい流体(例えば冷水)であることである。すなわち本発明の「第1流体」には、比較的温度の高い流体(温水・熱水など)に限られず、比較的温度の低い流体も含まれる。
【0059】
凝縮器4に第5配管L
5を介して流入する冷たい液体は、バイナリー発電においては例えば冷却塔と凝縮器との間で循環される。この冷たい液体は、例えば冷水(冷却水)や公知の冷媒(HFEなど)が適用可能である。よって、使用する冷たい液体の種類によっては、何らかの成分が析出する可能性も想定できる。
したがって、本変形例によれば、凝縮器4に流入する冷たい液体に対しても浄化処理を行うことができ、システム全体の効率を更に押し上げることが可能となる。
【0060】
上述した各実施形態および各変形例では、熱交換器1内の少なくとも一部の流路を電極板によって形成したが、これに限られず例えば熱交換器1に接続される第1配管L
1をそのまま熱交換器1内に延伸させてもよいし、第1配管L
1よりも熱伝導性が高い材質の配管を熱交換器1内に配置してもよい。
また、電極板12は
図12(a)に示すごとき平板状である必要は必ずしもなく、例えば
図12(b)や
図12(c)に示すような、蛇行する曲面を持った波面状の板でもよいし、凹部と凸部が連続して連なる凹凸状の板を電極板12として適用してもよい。なお、
図12(b)又は
図12(c)に示す電極板12を複数枚並べて採用する場合には、各々の電極間距離が、電極板12の面内においてなるべく均一となるように同種・同形状の電極板12を並行に配置することが望ましい。また、電極板12の凹部や凸部が、第1流体や第2流体の流れの方向に沿って延びるように電極板12が電解槽内に配置されることが望ましい。
【0061】
以上で説明した各実施形態および各変形例は適宜組み合わせて地熱発電システムを構成してもよい。
また、上記ではバイナリー発電システムを例にして説明したが、他の方式の地熱発電システムに本発明を適用してもよい。さらには地熱発電システムに留まらず、流体を用いて熱交換を行う他の発電方式に本発明を適用してもよい。
【解決手段】本発明の熱交換器は、第1流体が流通可能な第1流路と、前記第1流体との間で熱交換を行う第2流体が流通する第2流路を有し、電源から所定の電位が付与される陽極板と陰極板により前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一部が区画された電解槽と、所定の周期毎に、前記陽極板と前記陰極板に前記所定の電位を付与するとともに前記電位を付与した後に前記陽極板と前記陰極板の極性を反転する制御を行う制御部と、を含むことを特徴とする。