特許第5855300号(P5855300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5855300被覆研磨物品及び被覆研磨物品をアブレーションする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855300
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】被覆研磨物品及び被覆研磨物品をアブレーションする方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20160120BHJP
   B24D 11/02 20060101ALI20160120BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20160120BHJP
【FI】
   B24D3/00 340
   B24D3/00 310D
   B24D11/02
   B23K26/382
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-41382(P2015-41382)
(22)【出願日】2015年3月3日
(62)【分割の表示】特願2012-522914(P2012-522914)の分割
【原出願日】2010年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-128819(P2015-128819A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】61/229,091
(32)【優先日】2009年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, エドワード ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ウ, ピンファン
(72)【発明者】
【氏名】フレミング, パトリック アール.
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン, イアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュクネクト, シェーン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラプラント, フレデリック ピー.
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−246473(JP,A)
【文献】 特表2008−546555(JP,A)
【文献】 特開平01−159178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B23K 26/382
B24D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆研磨物品であって、
裏材に固定された研磨層であって、該研磨層が、少なくとも1種の結合剤によって該裏材の第1の主表面に固定され、かつ3〜30マイクロメータの平均粒径を有する研磨粒子を含む、研磨層と、
前記研磨層の少なくとも一部に配置されるスーパーサイズと、を含み、
前記被覆研磨物品が、前記被覆研磨物品の縁部に隣接する溶融流れゾーンを有し、該溶融流れゾーンが、100マイクロメータ未満の最大幅を有し、該溶融流れゾーンが、40マイクロメータ未満の最大高さを有し、該溶融流れゾーンの高さが前記研磨粒子の平均粒径より低い、被覆研磨物品。
【請求項2】
少なくとも1種の結合剤によって裏材の第1の主表面に固定され、かつ3〜30マイクロメータの平均粒径を有する研磨粒子を含む被覆研磨物品を用意することと、
前記被覆研磨物品の第1の構成要素に対応する第1の吸収スペクトルの少なくとも一部を得ることと、
前記第1の吸収スペクトルの第1の吸光帯と一致する第1の波長を有する第1の赤外線レーザービームを用意することであって、前記第1の構成要素は、前記被覆研磨物品の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01である、第1の波長における第1の吸光度を有し、
前記第1の構成要素の一部を、前記第1の赤外線レーザービームでアブレーションすることと、
前記被覆研磨物品の第2の構成要素に対応する第2の吸収スペクトルの少なくとも一部分を得ることと、
前記第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の赤外線レーザービームを用意することとであって、前記第2の波長は、前記第2の吸収スペクトルの第2の吸光帯と一致し、前記第2の構成要素が、前記第2の構成要素の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01である、第2の波長における第2の吸光度を有し、
前記第2の構成要素の一部を、前記第2の赤外線レーザービームでアブレーションすることと、を含み、
前記第1の構成要素及び前記第2の構成要素をアブレーションすることにより、前記被覆研磨物品が、前記被覆研磨物品の縁部に隣接する溶融流れゾーンを有し、該溶融流れゾーンが、100マイクロメータ未満の最大幅を有し、該溶融流れゾーンが、40マイクロメータ未満の最大高さを有し、該溶融流れゾーンの高さが前記研磨粒子の平均粒径より低くなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆研磨物品、及び該研磨物品をアブレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆研磨物品は、一般に、裏材の主表面に固定された研磨粒子と1種以上の結合剤とを含む研磨層を有する。多くの場合、典型的には研削助剤を含む、スーパーサイズ(supersize)と呼ばれる追加コーティングが、研磨層の上に含まれる。裏材及び/又は研磨層は、1つ以上の層を含んでもよい。例えば、裏材は、その上に1種以上の裏材処理剤を任意に有する積層裏材であってもよい。
【0003】
一部の被覆研磨材では、研磨層は、メイク層と、メイク層に埋め込まれかつサイズ層で覆われた研磨粒子と、を含んでもよく、サイズ層は、研磨粒子を保持するのを助ける。
【0004】
他の被覆研磨材では、研磨粒子は、高分子結合剤全体におおよそ均一に分散される。例えば、これは、研磨層が、典型的には裏材上に所定の形状(例えば、緻密な形状)と配列とを有する成形された研磨複合体で形成される場合に、一般的なことである。このような研磨材は、典型的には、対応の結合剤前駆体及び研磨粒子のスラリーを、成形キャビティを有する工具にコーティングし、裏材を工具に積層し、裏材に固定された成形研磨複合体を形成するために結合剤前駆体を硬化し、次に、工具を除去することによって調製される。
【0005】
被覆研磨材ロール物品を、消費者に販売するのに適したシート及び/又はディスクに変換するために、例えば、10.6マイクロメータの波長で作動する二酸化炭素(即ち、CO)レーザーなどの赤外線レーザーを使用することは、研磨材の分野で既知である。しかしながら、裏面粘着式の被覆研磨材にこの変換方法(即ち、赤外線レーザーで誘起されるアブレーションによって穿孔及び/又は切断する)を用いると、粘着剤による縁部の汚れが生じて、関連剥離ライナーを剥離するのが困難になる可能性がある。更に、粘着剤の一部が研磨層と被加工物との間の境界面にとどまり、スクラッチを形成する可能性があり得る。
【0006】
COレーザーは、9.2〜12マイクロメータに中心を置き、かつこの範囲内で同調可能な主波長を有する長波長赤外(LWIR)光ビームを生成する。COレーザーの平均出力電力は、典型的には、10.6マイクロメータで最高となり、他の波長に同調されると下降する。したがって、商業的なCOレーザー加工の圧倒的多数は、単一波長の10.6マイクロメータで行われる。
【0007】
場合によっては、赤外線レーザー変換は、レーザーによって形成された切れ目及び穿孔に隣接した研磨層内に形成される、硬化した、隆起した、及び/又は鋭角の縁部を生じさせる可能性がある。このような硬化した縁部は、被覆研磨材の性能に悪影響を与える可能性もある。
【0008】
粉末状スーパーサイズ(例えば、ステアリン酸亜鉛スーパーサイズ)を含むコーティングされた研磨材の場合、赤外線レーザーアブレーションにより、研磨粒子が溶融したスーパーサイズで覆われ、それによって、スーパーサイズの抗ローディング性能が低下し、かつ研磨表面にスクラッチを誘起する可能性があり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、赤外線レーザーアブレーション中の問題が、被覆研磨物品のアブレーション(即ち、蒸発)に関連した過度の発熱に原因があるという認識によって、前述の欠陥に対する解決方法を用意する。したがって、本開示は、付随する発熱量を軽減しながら、アブレーションの速度(ひいては処理効率)を増加させる方法を用意する。広くは、これは、アブレーションされる被覆研磨材の材料の吸収プロファイルと適切に一致させられたレーザー波長を使用することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、
被覆研磨物品の第2の構成要素に対応する第2の吸収スペクトルの少なくとも一部を得ることと、
第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の赤外線レーザービームを用意することとであって、第2の波長は、第2の吸収スペクトルの第2の吸光帯と一致し、第2の構成要素が、第2の構成要素の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01である、第2の波長における第2の吸光度を有し、
第2の構成要素の一部を、第2の赤外線レーザービームでアブレーションすることと、を更に含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、
少なくとも1種の結合剤によって裏材の第1の主表面に固定される研磨粒子を含む被覆研磨物品を用意することと、
第1の波長を有する第1の赤外線レーザービームを用意することとであって、被覆研磨物品は、第1の構成要素の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01である、第1の波長における第1の吸光度を有する第1の構成要素を有し、
第1の構成要素の一部を、第1の赤外線レーザービームでアブレーションすることと、
第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の赤外線レーザービームを用意することとであって、被覆研磨物品は、第2の構成要素の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01である、第2の波長における第2の吸光度を有する第2の構成要素を有し、
第2の構成要素の一部を、第2の赤外線レーザービームでアブレーションすることと、
を含む方法を用意する。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の赤外線レーザービームは、少なくとも60ワットの第1の平均出力と第1の平均ビーム強度とを有し、第1の赤外線レーザービームは、第1の赤外線レーザービームが被覆研磨物品と接触する第1のスポットに集束され、第1の平均ビーム強度の少なくとも半分の強度を有する第1のスポットの全ての部分の合計は、0.3平方ミリメート以下の面積を有し、第1のスポットは、被覆研磨物品の第1の経路を、被覆研磨物品に対して、少なくとも毎秒10ミリメートルの第1の速度でトレースする。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の赤外線レーザービームは、少なくとも60ワットの第2の平均出力と第2の平均ビーム強度とを有し、第2の赤外線レーザービームは、第2の赤外線レーザービームが被覆研磨物品と接触する第2のスポットに集束され、第2の平均ビーム強度の少なくとも半分の強度を有する第2のスポットの全ての部分の合計は、0.3平方ミリメート以下の面積を有し、第2のスポットは、被覆研磨物品の第2の経路を、被覆研磨物品に対して、少なくとも毎秒10ミリメートルの第2の速度でトレースする。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2のスポットは、第1の経路に重ねられた第2の経路をトレースする。いくつかの実施形態では、第2の構成要素は、少なくとも1種の結合剤の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、第1の構成要素は、裏材の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、3〜30マイクロメータの範囲内の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、第1の赤外線レーザービームはパルスレーザービームである。いくつかの実施形態では、被覆研磨物品は、第1の主表面の反対側である裏材の第2の主表面上に配置される感圧接着剤層を更に含む。
【0015】
更に別の態様では、本開示は被覆研磨物品を用意し、該研磨物品は、裏材に固定された研磨層であって、該研磨層が、少なくとも1種の結合剤によって裏材の第1の主表面に固定される研磨粒子を含み、研磨層の少なくとも一部に配置されるスーパーサイズと、を含み、被覆研磨物品は、被覆研磨物品の縁部に隣接する溶融流れゾーン(melt flow zone)を有し、溶融流れゾーンは、100マイクロメータ未満の最大幅を有し、溶融流れゾーンは、40マイクロメータ未満の最大高さを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、溶融流れゾーンは、80マイクロメータ未満の最大幅を有し、溶融流れゾーンは、15マイクロメー未満の最大高さを有する。いくつかの実施形態では、研磨材層は、メイク層とサイズ層とを含む。いくつかの実施形態では、研磨層は、複数の成形された研磨複合体を含む。いくつかの実施形態では、溶融流れゾーンは、赤外線レーザービームによって生じる。
【0017】
有利には、本開示に従ってアブレーションされる被覆研磨物品は、被覆研磨材の分野で実施される従来のレーザー変換方法を用いる場合にしばしばみられるような粘着剤残留物の問題を、ほとんど又は全く有さない。更に、本開示に従ってアブレーションされる被覆研磨物品は、一般に、これも同様に被覆研磨材の分野で実施される従来のレーザーアブレーション方法を用いる場合にしばしばみられるような、被覆研磨物品の縁部の近くの固まった残留物に起因する不都合なスクラッチの低減を示す。
【0018】
本明細書で使用する場合、
「アブレーション」とは、レーザー誘起蒸発によって除去されることを意味する。
「吸光度」とは、電磁放射線を吸収する物質の能力を指し、透過率の逆数の常用対数として表わされる。
被覆研磨物品に関する「縁部」とは、被覆研磨物品の対向する主表面を、例えば、穿孔の周辺部で又は穿孔に隣接して、に接続する表面を指す。
「赤外線」とは、760ナノメートル〜1ミリメートルの波長範囲内の電磁放射線を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による代表的な被覆研磨物品の横断端面図。
図2】本発明による代表的な被覆研磨材物品の横断端面図。
図3A】10.6マイクロメータの波長で作動するCOレーザーを使用して調製された、比較のための被覆研磨物品の電子顕微鏡写真。
図3B】10.6マイクロメータの波長で作動するCOレーザーを使用して調製された、比較のための被覆研磨物品の電子顕微鏡写真。
図4A】9.3マイクロメータの波長で作動するCOレーザーを使用して調製された、本開示よる代表的な被覆研磨物品の電子顕微鏡写真。
図4B】9.3マイクロメータの波長で作動するCOレーザーを使用して調製された、本開示よる代表的な被覆研磨物品の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0020】
被覆研磨物品は、一般に、少なくとも1種の結合剤により裏材の第1の主表面に固定された研磨粒子を含む。
【0021】
一実施形態では、研磨粒子は、メイク層及びサイズ層の組み合わせにより、裏材に固定される。このような被覆研磨物品の1つが、図1に示されている。ここで、図1を参照すると、代表的な被覆研磨物品100は裏材110を含む。研磨層114は、裏材110の第1の主表面115に固定され、その中に研磨粒子118が埋め込まれるメイクコート(make coat)116と、メイクコート116及び研磨粒子118を覆うサイズコート(sizecoat)117と、を含む。任意のスーパーサイズ119は、サイズコート117を覆う。溶融流れゾーン130aは、周辺縁部132に隣接して配置され、溶融流れゾーン130bは、穿孔134に隣接している。任意の感圧接着剤層160は、第1の主表面115と反対側である裏材110の第2の主表面125上に配置される。任意の剥離ライナー170は、任意の感圧接着剤層160の上に配置される。
【0022】
メイク層及びサイズ層を有する被覆研磨物品の製造に関する詳細は、被覆研磨材の分野で周知であり、例えば、米国特許第4,734,104号(Broberg);米国特許第4,737,163号(Larkey);米国特許第5,203,884号(Buchananら);米国特許第5,152,917号(Pieperら);米国特許第5,378,251号(Cullerら);米国特許第5,417,726号(Stoutら);米国特許第5,436,063号(Follettら);米国特許第5,496,386号(Brobergら);米国特許第5,609,706号(Benedictら);米国特許第5,520,711号(Helmin);米国特許第5,954,844号(Lawら);米国特許第5,961,674号(Gagliardiら);米国特許第4,751,138号(Bangeら);米国特許第5,766,277号(DeVoeら);米国特許第6,077,601号(DeVoeら);米国特許第6,228,133号(Thurberら);及び米国特許第5,975,988号(Christianson)に見出すことができる。
【0023】
別の実施形態では、研磨粒子は、裏材に固定される結合剤全体に分散される。かかる被覆研磨物品は、研磨材表面に付与された所望のトポグラフィーを有してもよい。例えば、研磨層は、成形された研磨複合体を含んでもよく、いくつかの実施形態では、この成形された研磨複合体は、精密に成形されて裏材に固定される。構造化された研磨物品はこの部類に入る。
【0024】
ここで図2を参照すると、被覆研磨物品200(構造化された研磨物品)は、裏材210の第1の主表面215に固定された成形された研磨複合体220を含む研磨層214を有する。成形された研磨複合体220は、結合剤250中に分散された研磨粒子218を含む。スーパーサイズ219は、研磨層214を覆う。溶融流れゾーン230aは、周辺縁部232に隣接して配置され、溶融流れゾーン230bは、穿孔234に隣接している。任意の感圧接着剤層260は、第1の主表面215の反対側である裏材210の第2の主表面225上に配置される。任意の剥離ライナー270が、任意の感圧接着剤層260の上に配置される。
【0025】
被覆研磨物品のかかる種類に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,152,917号(Pieperら)、同第5,378,251号(Cullerら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,672,097号(Hoopman)、同第5,681,217号(Hoopmanら)、同第5,851,247号(Stoetzelら)、同第5,942,015号(Cullerら)、同第6,139,594号(Kincaidら)、同第6,277,160号(Stubbsら)、及び同第7,344,575号(Thurberら)に見出すことができる。
【0026】
広くは、被覆研磨物品は、事実上あらゆるサイズの研磨粒子を有することができるが、図2に示される被覆研磨物品の場合には、研磨粒子は、典型的には、小さな粒径を有する。例えば、本開示による被覆研磨粒子は、平均粒径が少なくとも3〜30マイクロメータの範囲内の研磨粒子を有してもよい。そのような場合、研磨効果が低減しないように、あらゆる溶融流れゾーンの高さを、研磨粒子及び/又は成形された研磨複合体の平均粒径よりも低く保つのが特に望ましい。
【0027】
本発明の被覆研磨物品は、例えばベルト、テープ、ロール、ダイス(穿孔ダイス)、及び/又はシートに変換され得る。ベルト用途の場合、研磨材シートの2つの自由端が、既知の方法を用いて共に接合されて、継ぎベルトを形成してもよい。
【0028】
被覆研磨物品(例えば、上述のようなもの)の種々の層を考慮し、被覆研磨物品の各構成要素は、典型的には、異なる赤外吸収スペクトルを有することが認識される。したがって、レーザーから供給される赤外線を吸収する各構成要素の能力は、構成要素ごとに、場合によっては大幅に異なることになる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステル(一般的な裏材材料)は、典型的なCOレーザー加工波長である10.6マイクロメータの波長で、実質的な基礎吸収(即ち、赤外線をほとんど吸収しない)を示すが、約9〜9.3マイクロメータの波長範囲をカバーする実質的な吸収帯域を有し、また、約9.8マイクロメータの波長でより弱い吸収帯域を有する。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「構成要素」とは、例えば、感圧接着剤層、又は感圧接着剤層と剥離ライナー及び裏材の組み合わせといった、被覆研磨物品の一部を形成する1つ以上の隣接する要素を指す。
【0030】
特定の波長又は複数の波長の赤外線の吸収を容易にするため(例えば、特定のレーザーと一致するように)、被覆研磨物品の種々の構成要素の1つ以上は、赤外線吸収材料を含有してもよい。例えば、特定波長の赤外線の吸収を高めるために、カーボンブラック及び/又は別の赤外線吸収剤を、粘着剤層、樹脂/結合剤、又は裏材に含ませることができる。これは、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステル、ポリエチレン、及びポリプロピレンの場合に特に有用であり得る。一実施形態では、被覆研磨物品は、その構成部品が、融解温度によって、又は所与の赤外波長における吸光度によって配置されるように構成されてもよい。
【0031】
吸収スペクトルは、一般に、赤外線レーザーの周波数を赤外吸収帯域と一致させるために、赤外線スペクトルの少なくともある部分を含まなければならないが、全赤外線スペクトルを含む必要はなく、また、電磁スペクトルの短波長側及び/又は長波長側の1つ以上の領域を任意に包含してもよい。広範囲の材料の吸収スペクトルは既知であり、標準的基準の研究において列挙されている。これに加えて、普通では入手可能でない材料の吸収スペクトルは、標準的な技術に従って赤外分光計を使用して容易に得ることができる。有用な赤外分光計としては、走査型及びフーリエ変換型赤外(FTIR)分光計が挙げられ、例えば、透過法及び/又は反射法によって吸光度を測定することができる。
【0032】
赤外線レーザーは、被覆研磨物品の構成要素(1つ又は複数)が、構成要素の厚さの1マイクロメートル当たり少なくとも0.01の吸光度、より典型的には、厚さの1マイクロメートル当たり0.1、又は更に、構成要素の1マイクロメートル当たり少なくとも1の吸光度を有するように選択されるべきである。例えば、PET及びアクリル樹脂の場合、赤外線レーザーは、吸収が典型的には強い9.3〜9.6マイクロメータの範囲内で動作するように選択されることができ、ポリプロピレンの場合、赤外線レーザーは、10.28〜10.3マイクロメータの範囲内で動作するように選択されることができる。
【0033】
本開示を実施する際には、任意の赤外線レーザーを使用することができる。赤外線レーザーは、同調可能な波長又は固定波長であってもよく、及び/又はパルス波又は連続波(CW)であってもよい。材料をアブレーションするのに十分なパワーを有する赤外線レーザーの例としては、二酸化炭素(CO)レーザーが挙げられる。赤外波長範囲で動作するその他のレーザーとしては、例えば、固体結晶レーザー(例えば、ruby、Nd/YAG)、化学レーザー、一酸化炭素レーザー、ファイバーレーザー、及び固体レーザーダイオードが挙げられる。典型的には、パルス赤外レーザー(例えば、超高速パルスレーザーなど)は、一般に、同じ平均出力電力を有する連続波(CW)赤外線レーザーよりも高いピーク放射照度を送達するので、極めて効率が高い。COレーザーは、ダイオードレーザーの次に安価な赤外線レーザー光子の供給源であり、紫外線レーザーの代替品よりも実質的に安価である。
【0034】
迅速加工をもたらすために、本開示を実施する際に使用される赤外線レーザービームは、典型的には、少なくとも60ワット(W)、例えば70W、80W、又は90W以上の平均出力を有する。同様に、切断されるべき基材における赤外線レーザービームの断面(即ち、スポットサイズ)は、典型的には面積が非常に小さいのが望ましい。例えば、赤外線レーザービームは、平均ビーム強度の少なくとも半分の強度を有するスポットの全ての部分の合計が、0.3平方ミリメートル(mm)以下、約0.1mm未満、又は更に0.01mm未満の面積を有するように、スポット(赤外線レーザービームが被覆研磨物品と接する場所)に集束されるが、より小さな及びより大きなスポットサイズを用いることも可能である。上記条件を用いて、毎秒少なくとも10ミリメートル(mm/秒)、又は更に少なくとも20mm/秒のトレース速度(即ち、ビームが基材を横切って走査される速度)で良好なアブレーションを達成することが典型的には可能であるが、より遅いトレース速度を用いることも可能である。
【0035】
被覆研磨物品のレーザーアブレーションは、レーザービームの単一トレース又は複数の重ねられたトレースを用いて達成され得る。複数のレーザービームを、同時に又は連続して使用することができる。複数のレーザービームを使用する場合、それらは同じ又は異なる波長を有してもよい。一実施形態では、被覆研磨物品の個々の構成要素は、それぞれが各構成要素(例えば、裏材及び研磨層)の吸光帯に同調された赤外線レーザービームを使用して、連続的に取り外される。別の実施形態では、被覆研磨物品の個々の構成要素は、被覆研磨物品の別々の構成要素(例えば、裏材及び研磨層)の吸光帯に同調された複数の赤外線レーザービームを使用して、同時に取り外される。例えば、追加の構成要素が存在する場合には、追加の赤外線レーザーを使用してもよい。複数の赤外線レーザービームを使用する場合、それらのトレースは、典型的には、最大限の効果を得るために重ねられるが、これは要件ではない。
【0036】
レーザービームの吸収は、単一光子又は多光子吸収であり得る。典型的には、吸収は単一光子吸収である。
【0037】
赤外線レーザーアブレーションは、被覆研磨物品を完全に貫通しないように行われてもよいが、最も典型的には、完全に切断する。更に、赤外線レーザーアブレーションは、被覆研磨物品のあらゆる方向(例えば、前側(研磨材)表面から裏側表面に向かって、又は反対方向)に行われてもよい。
【0038】
有利には、本開示に従ってアブレーションされる典型的な被覆研磨物品は、現在の工業的手法に見られるように10.6マイクロメータで動作するCOレーザーを使用してアブレーショされる場合よりも、研磨層の露出面上に溶融流れ特徴部(feature)を形成する傾向が少ない。
【0039】
このことは、例えば、研磨材表面側から見た穿孔された被覆研磨ディスクを示す図3A図4Bから分かる。図3A図3Bは、10.6マイクロメータの波長で作動するCOレーザー(平均出力:1キロワット;スポットサイズ:0.018mm;パルス繰り返し数:約10キロヘルツ(kHz);パルス幅:約100マイクロ秒;トレース速度=2メートル/秒)を使用して、3M 260L HOOKIT FINISHING FILM DISC(3M Companyから入手可能な被覆研磨ディスクで、PET裏材に接着剤で取り付けられたループ織物、メイク/サイズ層、及びステアリン酸亜鉛スーパーサイズを含む)を穿孔した結果を示している(比較例A)。図4A図4Bは、レーザーが9.3マイクロメータの波長に同調されたことを除いては、同じCOレーザー条件を用いて、同一の被覆研磨物品を穿孔した結果を示しているを示している(実施例1)。いずれの場合にも、レーザービームは、研磨ディスクのループ側に衝突し、ディスクまで貫通するようにアブレーションし、研磨層側で出射した。図3A図3Bを参照すると、比較例Aに関して形成された溶融流れゾーン330の寸法は、対応する図4A図4Bに示される実施例1の溶融流れゾーン430よりも実質的に大きくかつより隆起しているのが明らかである。
【0040】
本開示の方法に従って、溶融流れゾーンに形成される隆起特徴部の高さを減少させながら、被覆研磨物品、特に、例えば、ステアリン酸亜鉛(融解範囲120〜130℃)などの低融点スーパーサイズを有する研磨物品をレーザーアブレーションすることが可能である。例えば、本開示による溶融流れゾーンは、100マイクロメータ未満、80マイクロメータ未満、又は更に50マイクロメータ未満の最大幅、及び、40マイクロメータ未満、15マイクロメータ未満、又は更に5マイクロメータ未満の最大高さを有してもよい。研磨粒子が溶融流れゾーンの隆起特徴部よりも小さい場合があり、このことは結果として粗いスクラッチを生じさせるので、隆起特徴部の高さを減少させながらレーザーアブレーションすることは、例えば、ステアリン酸亜鉛スーパーサイズ及びP800〜P1500の研磨粒度を有する被覆研磨ディスクのようなより小さな砥粒寸法にとって、特に重要であり得る。
【0041】
本明細書に引用した全ての特許及び刊行物は、その全文を参照することにより本明細書に組み込むこととする。本明細書に示される全ての実施例は、特に指示がない限り、非限定的であると考慮されるべきである。当業者は、本開示の様々な修正及び変更を、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、また、本開示は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B