(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂、着色剤及び正帯電性荷電制御剤を含有してなる正帯電性トナーであって、前記結着樹脂がチタン化合物を含有し、そのチタン含有量が0.16〜0.40重量%である正帯電性トナー。
正帯電性荷電制御剤が、ニグロシン染料及びスチレンアクリル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の正帯電性荷電制御剤を含有してなる、請求項1〜3いずれか記載の正帯電性トナー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の正帯電性トナーは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、かつ、結着樹脂がチタン化合物を含有し、そのチタン含有量が0.10〜0.40重量%である点に特徴を有しており、初期の帯電量が高く、初期のカブリや現像ゴーストが抑制されるという効果を奏する。かかる効果が奏される理由は定かではないが、結着樹脂中のチタン化合物と正帯電性荷電制御剤との相互作用により、トナー粒子の帯電量が向上するものと推定される。さらに、チタン化合物が結着樹脂中に分散していると、トナー粒子間での帯電量のばらつきが抑制される。このように、トナー粒子の帯電量が向上し、かつ、トナー粒子間の帯電量のばらつきが抑制されるために、初期のカブリや現像ゴーストが抑制されると考えられる。
【0014】
<結着樹脂>
結着樹脂中のチタン含有量は、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、0.10重量%以上であり、0.20重量%以上がより好ましく、0.25重量%以上がさらに好ましい。また、樹脂の着色を抑制する観点から、0.40重量%以下であり、0.35重量%以下が好ましく、0.30重量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、0.10〜0.40重量%であり、0.20〜0.35重量%がより好ましく、0.25〜0.30重量%がさらに好ましい。
【0015】
結着樹脂はポリエステル樹脂を含有する。チタン化合物は、結着樹脂に混合しておいてもよいが、ポリエステル樹脂を製造する際のエステル化触媒として用いられ、ポリエステル樹脂中に含まれていることが好ましい。
【0016】
従って、本発明におけるポリエステル樹脂は、チタン触媒の存在下で、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られたポリエステル樹脂が好ましい。チタン化合物を触媒として用いることにより、チタン化合物をポリエステル樹脂中により均一に分散させることができ、トナー粒子間での帯電量のばらつきを抑制することができる。
【0017】
チタン触媒としては、エステル化触媒として機能するチタン化合物であれば特に限定されないが、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、テトラブチルチタネート等のチタン化合物が挙げられる。
【0018】
チタン触媒の使用量は、原料モノマーの総量、すなわちカルボン酸成分とアルコール成分の総量100重量部に対して、0.7〜4.5重量部が好ましく、1.0〜4.0重量部がより好ましく、1.5〜3.5重量部がさらに好ましく、2.0〜3.0重量部がよりさらに好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂は、原料モノマーとして2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分とを用い、これらを縮重合させて得られる。
【0020】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0022】
(式中、R
1O及びOR
1はオキシアルキレン基であり、R
1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20のジオールとして、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0023】
アルコール成分としては、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、式(I)で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。さらに、同様の観点から、式(I)で表されるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%であることがよりさらに好ましい。
【0024】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0025】
一方、2価のカルボン酸化合物としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、さらに好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的なジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸としては、炭素数10〜16のアルケニル基で置換されたコハク酸が好ましく、テトラプロペニルコハク酸がより好ましい。なお、カルボン酸化合物とは、カルボン酸、カルボン酸のエステル、カルボン酸の無水物から選ばれた少なくとも1種の化合物をいう。カルボン酸のエステルとしては、低級アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0026】
3価以上のカルボン酸化合物としては、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、さらに好ましくは炭素数4〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)等が挙げられる。
【0027】
カルボン酸成分としては、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、アジピン酸化合物、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸化合物が好ましく、アジピン酸化合物及び炭素数10〜16のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸化合物がより好ましく、アジピン酸化合物及びテトラプロペニルコハク酸化合物から選ばれた少なくとも1種のカルボン酸化合物がさらに好ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、前記チタン触媒等のエステル化触媒及び必要に応じて重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて得られる。
【0029】
本発明の正帯電性トナーは、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点、低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点の異なる2種のポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0030】
正帯電性トナーの製造において、2種のポリエステルの軟化点を一定の範囲に制御することにより、原料の溶融混練時に適切なシェアを付与することができ、荷電制御剤の分散を良好に保つことができ、結果として、初期の帯電量が高くなり、初期のカブリや現像ゴーストの発生がより効果的に抑制される。
【0031】
上記観点から、前記軟化点の異なる2種のポリエステルのうち、軟化点が高い方のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂A、軟化点が低い方のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Bとすると、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの軟化点の差は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させ、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、65℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの軟化点の差は、10℃以上が好ましく、10〜65℃がより好ましく、15〜50℃がさらに好ましく、20〜40℃がよりさらに好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂Aの軟化点は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点及び荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させ、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、170℃以下が好ましく、165℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリエステル樹脂Aの軟化点は、140〜170℃が好ましく、145〜165℃がより好ましく、150〜160℃がさらに好ましい。
【0033】
一方、ポリエステル樹脂Bの軟化点は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させ、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、105℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、115℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリエステル樹脂Bの軟化点は、105〜140℃が好ましく、110〜130℃がより好ましく、115〜125℃がさらに好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂の軟化点は、例えば、ポリエステル化の反応時間を長くしたり、3価以上の原料モノマーを用いたりすることによって、上げることができる。また、例えば、1価の原料モノマーを用いることによって、軟化点を下げることができる。なお、ここで、ポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの両方を意味する。以後の記載においても同様である。
【0035】
さらに、2種のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が異なっていることが好ましい。ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は、トナーの保存安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、55℃を超えることが好ましく、57℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、75℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は、55℃を超えて75℃以下が好ましく、57〜70℃がより好ましく、60〜65℃がさらに好ましい。
【0036】
ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bのガラス転移温度の差は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、5℃以上が好ましく、7℃以上がより好ましく、9℃以上がさらに好ましい。また、正帯電性荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させ、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bのガラス転移温度の差は、5〜40℃が好ましく、7〜30℃がより好ましく、9〜20℃がさらに好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、例えば、原料モノマーの組成により制御することができる。また、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量を減らすことにより、ガラス転移温度を上げることができる。また、炭素数の大きい、例えば、炭素数が6以上の2価の原料モノマーや、1価の原料モノマーを用いることによってガラス転移温度を下げることができる。
【0038】
ポリエステル樹脂Aのカルボン酸成分中のアジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、18モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの保存安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂Aのカルボン酸成分中、35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、27モル%以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Aのカルボン酸成分中、10〜35モル%が好ましく、15〜30モル%がより好ましく、18〜27モル%がさらに好ましい。なお、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量とは、アジピン酸化合物又は炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量、又は両者が併用されている場合には両者の総含有量を意味する。
【0039】
また、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、ポリエステル樹脂Aの原料モノマー総量中、すなわち、カルボン酸成分とアルコール成分の総量中、3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、7モル%以上がさらに好ましく、トナーの保存安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、20モル%以下が好ましく、17モル%以下がより好ましく、14モル%以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Aの原料モノマー総量中、3〜20モル%が好ましく、5〜17モル%がより好ましく、7〜14モル%がさらに好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂Bのカルボン酸成分中のアジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度を下げ、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、ポリエステル樹脂Bのカルボン酸成分中、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの保存安定性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂Bのカルボン酸成分中、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Bのカルボン酸成分中、15〜60モル%が好ましく、20〜55モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。
【0041】
また、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度を下げ、トナーの低温定着性及び耐低温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、ポリエステル樹脂Bの原料モノマー総量中、すなわち、カルボン酸成分とアルコール成分の総量中、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、13モル%以上がさらに好ましく、トナーの保存安定性、耐高温オフセット性を向上させる観点から、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましく、22モル%以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、アジピン酸化合物及び炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂Bの原料モノマー総量中、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましく、13〜22モル%がさらに好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂の酸価は、トナーの正帯電性の観点、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、20mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0043】
結着樹脂におけるポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの重量比(ポリエステル樹脂A/ポリエステル樹脂B)は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点、トナーの初期の帯電量を高くする観点、初期のカブリや現像ゴーストを抑制する観点から、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、70/30〜30/70さらに好ましく、60/40〜40/60がよりさらに好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂には、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂B以外のポリエステル樹脂が、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよいが、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bの総量は、ポリエステル樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0045】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0046】
結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、定着性を向上させる観点から、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましい。
ポリエステル樹脂以外の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0047】
本発明の正帯電性トナーは、結着樹脂以外に、少なくとも着色剤及び正帯電性荷電制御剤を含有する。
【0048】
[着色剤]
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が用いることができる。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0049】
[正帯電荷電制御剤]
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」、「ボントロンP-52」(以上、オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGE PXVP435」(ヘキスト社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等の正帯電性荷電制御剤が挙げられる。
【0050】
また、正帯電性荷電制御剤として、さらに、ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;スチレンアクリル系樹脂等の高分子化合物の正帯電性荷電制御剤(以後、正帯電性荷電制御樹脂と記す)が挙げられる。
【0051】
スチレンアクリル系樹脂としては、下記式(II)で表される単量体、下記式(III)で表される単量体及び式(IV)で表される単量体の混合物を重合して得られる第4級アンモニウム塩基含有共重合体が好ましい。
【0053】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基である)
【0055】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は炭素数1〜6のアルキル基である)
【0057】
(式中、R
5は水素原子又はメチル基であり、R
6、R
7及びR
8は炭素数1〜4のアルキレン基である)
【0058】
式(II)において、帯電性を向上させる観点から、R
2は水素が好ましい。
式(III)において、帯電性を向上させる観点から、R
3は水素であり、R
4はブチル基が好ましい。
また、式(IV)において、帯電性を向上させる観点から、R
5はメチル基であり、R
6、R
7及びR
8はエチル基が好ましい。
【0059】
初期帯電量を向上させ、初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点、定着性を向上させる観点、耐湿性を向上させる観点から、式(II)で表される単量体の含有量は、単量体混合物中、60〜95重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、78〜90重量%がさらに好ましい。
【0060】
初期帯電量を向上させ、初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点、定着性を向上させる観点、耐湿性を向上させる観点から、式(III)で示される単量体の含有量は、単量体混合物中、2〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、10〜15重量%がさらに好ましい。
【0061】
初期帯電量を向上させ、初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点、定着性を向上させる観点、耐湿性を向上させる観点から、式(IV)で示される単量体の含有量は、単量体混合物中、3〜35重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜25重量%がさらに好ましい。
【0062】
正帯電性荷電制御樹脂として用いられるスチレンアクリル系樹脂としては、例えば、「FCA-201-PS」(藤倉化成社製)が挙げられる。
【0063】
正帯電性荷電制御剤としては、初期帯電量を向上させ、初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、ニグロシン染料及びスチレンアクリル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ニグロシン染料とスチレンアクリル系樹脂を併用することがより好ましく、ニグロシン染料と、式(II)で示される単量体、式(III)で示される単量体及び式(IV)で示される単量体の混合物を重合して得られる第4級アンモニウム塩基共含有重合体を併用することがさらに好ましい。
【0064】
正帯電性荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電量を適性にして、トナーの初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、結着樹脂100重量部に対して、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、6.0重量部以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、正帯電性荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜15重量部が好ましく、1.0〜10重量部がより好ましく、1.5〜6.0重量部がさらに好ましい。
【0065】
正帯電性荷電制御樹脂以外の正帯電性荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電量を適性にして、トナーの初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜5.0重量部がより好ましく、1.5〜3.0重量部がさらに好ましい。
【0066】
また、正帯電性荷電制御樹脂の含有量は、トナーの帯電量を適性にして、トナーの初期カブリ、現像ゴーストを抑制する観点から、結着樹脂100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましく、1.5〜6.0重量部がより好ましく、2.0〜4.0重量部がさらに好ましい。
【0067】
トナーの帯電量を適性にして、トナーの初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、正帯電性荷電制御樹脂以外の正帯電性荷電制御剤と正帯電性荷電制御樹脂を併用することが好ましい。その場合、正帯電性荷電制御樹脂以外の正帯電性荷電制御剤の含有量は、同様の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜5.0重量部がより好ましく、1.5〜3.0重量部がさらに好ましい。また、正帯電性荷電制御樹脂の含有量は、同様の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましく、1.5〜6.0重量部がより好ましく、2.0〜4.0重量部がさらに好ましい。正帯電性荷電制御樹脂以外の正帯電性荷電制御剤と正帯電性荷電制御樹脂を合わせた含有量は、同様の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1.5〜15重量部が好ましく、2.0〜10重量部がより好ましく、3.0〜7.0重量部がさらに好ましく、4.0〜6.0重量部がよりさらに好ましい。
【0068】
さらに、正帯電性トナーにおいては、トナーの正帯電性を損なわない範囲で負帯電性荷電制御剤が併用されていてもよいが、負帯電性荷電制御剤は含まれていないことが好ましく、含まれていても、結着樹脂100重量部に対して、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましい。
【0069】
本発明のトナーには、さらに、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させ、定着温度領域を広げる観点から、離型剤を含有していることが好ましく、トナーの画像耐久性を向上させる観点から、離型剤として、アミド化合物が含有されることがより好ましい。
【0070】
本発明におけるアミド化合物としては、トナーの画像耐久性を向上させる観点から、脂肪酸アミド化合物が好ましく、脂肪酸ビスアミドがより好ましく、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドがさらに好ましい。
【0071】
アミド化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点、画像耐久性を向上させる観点、結着樹脂中への分散性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜5重量部が好ましく、2〜4重量部がより好ましい。
【0072】
アミド化合物以外の離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。
【0073】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜160℃が好ましく、70〜150℃がより好ましい。
【0074】
アミド化合物以外の離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点、結着樹脂中への分散性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がより好ましく、1.5〜5重量部がさらに好ましい。
【0075】
本発明のトナーには、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0076】
本発明において、トナーは、混練粉砕法、スプレイドライ法、重合法等の公知の方法により製造することができるが、生産性や着色剤の分散性の観点から、混練粉砕法による粉砕トナーが好ましい。具体的には、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級してトナーを製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
【0077】
トナーの体積中位粒径(D
50)は、トナー消費量を削減する観点、画像品質を向上させる観点から、3.0〜11μmが好ましく、3.5〜10μmがより好ましく、4〜9μmがさらに好ましい。
【0078】
本発明のトナーは、トナーの帯電量を適性にして、トナーの初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、トナーの粉砕、分級工程後に得られたトナー粒子(トナー母粒子)に、さらに外添剤を付着させる外添処理が施されていてもよい。
【0079】
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を有する攪拌装置を用いることが好ましく、より好適な攪拌装置として、ヘンシェルミキサーが挙げられる。
【0080】
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらの中で、シリカを用いることが好ましく、2種以上のシリカを併用することがより好ましく、平均粒子径が8nm以上20nm未満のシリカと20nm以上50nm以下のシリカを、90/10〜10/90の重量比で併用することがさらに好ましい。
【0081】
本発明の正帯電性トナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、一成分現像方式及び二成分現像方式のいずれの画像形成装置にも用いることができる。
【0082】
本発明の正帯電性トナーは、正帯電性トナー用画像形成装置に用いられる。特に、初期帯電量を向上させ、初期カブリ及び現像ゴーストを抑制する観点から、クリーナーレス現像システムを具備する画像形成装置に好ましく用いられる。従って、本発明は、上記トナーと正帯電性トナー用画像形成装置、特にクリーナーレス現像システムを具備する正帯電性トナー用画像形成装置を用いた画像形成方法を提供することができる。
【実施例】
【0083】
〔樹脂の軟化点(Tm)〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0084】
〔樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で-10℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0085】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0086】
〔樹脂中のチタン(Ti)含有量〕
樹脂中のTi含有量は以下の方法で測定する。
ICP発光分析
装置 :パーキンエルマー Optima5300
プラズマ出力 :1.0KW
プラズマガス :18L/min
ネブライザーガス流量:0.2L/min
キャリアガス圧 :1.0bar
補助ガス :1.6L/min
シースガス :0.1L/min
測定波長 :334.94nm
前処理工程(湿式分解):
専用フラスコに試料1.0gを採取し硫酸2mlを加える。電気コンロで加熱し炭化させる。その後、液が透明になるまで過酸化水素(H
2O
2)を添加する。湿式分解終了後、定容(50ml)を行い測定用サンプルとする。
【0087】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0088】
〔トナー(トナー母粒子)の体積中位粒径(D
50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0089】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径とは平均一次粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。
【0090】
樹脂製造例1[樹脂A1〜A4、a1、B1〜B4、b1]
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃で7時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応を行った。その後、210℃へ冷却し、無水トリメリット酸を投入し、1時間常圧で反応させた後、8.3kPaにて反応を行い、所望の軟化点に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂A1〜A4、a1、B1〜B4、b1)を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例1〜7及び比較例1〜4
(実施例4は参考例である)
表2に示す結着樹脂100重量部、正帯電性荷電制御樹脂「FCA-201-PS」(藤倉化成社製)3.0重量部、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」(オリエント化学工業社製)2.0重量部、カーボンブラック「REGAL 330R」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製)6.0重量部、及び離型剤「三井ハイワックス NP055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2.0重量部、及び離型剤「カオーワックス EB-P」(花王社製、エチレンビスステアリン酸アミド、融点:144℃)3.0重量部を75L容のヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて1分間攪拌混合後、二軸押出機「PCM-45」(池貝社製)を用いて溶融混練した。
【0093】
得られた溶融混練物を、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粗粉砕し、IDS粉
砕分級機(日本ニューマチック社製)にて粉砕・分級を行い、体積中位粒径(D
50)が7.6μmの正帯電性のトナー母粒子を得た。
【0094】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「TG-7120」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、平均粒子径:16nm)0.7重量部及び疎水性シリカ「NA-50Y」(日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0重量部を10L容のヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2500r/min(27m/sec)で3分間混合し、トナーを得た。
【0095】
試験例1〔初期帯電量〕
クリーナーレス現像システムを具備するプリンター「HL-2040」(ブラザー工業製)にトナーを充填し、全面黒ベタ画像を1枚印刷した。q/mメーター「MODEL 210HS」(TRek社製)を用い、現像ロール上のトナーを10ヶ所吸引して、電荷とトナーの質量を測定し、帯電量(μC/g)を算出した。値が大きいほど、初期帯電量が優れることを意味する。結果を表2に示す。
【0096】
試験例2〔初期カブリ〕
クリーナーレス現像システムを具備するプリンター「HL-2040」(ブラザー工業製)にトナーを充填し、印字率1%の画像を20秒毎に1枚の速度で印字した。10枚印字後に白ベタ画像を印字し、その途中で電源を切った。感光体表面のトナーをメンディングテープに付着させ、画像濃度測定器「SPM-50」(Gretag社製)にて着色濃度を測定し、トナーを付着させる前のテープの着色濃度との差を求めた。これを5回繰り返し、5回の測定値の平均値を求めた。値が小さいほど、カブリが抑制されていることを意味する。結果を表2に示す。
【0097】
試験例3〔現像ゴースト〕
クリーナーレス現像システムを具備するプリンター「HL-2040」(ブラザー工業製)にトナー充填し、印字率1%の画像を20秒毎に1枚の速度で印字した。10枚印字後に全面黒ベタ画像を印刷し、得られた画像の先頭部と中間部を画像濃度測定器「SPM-50」(Gretag社製)にて画像濃度を測定し、画像の先頭部と中間部の画像濃度との差を求めた。値が小さいほど、現像ゴーストが抑制されていることを意味する。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
以上の結果より、実施例1〜7のトナーは、比較例1〜4のトナーと比べて、初期帯電量が高く、初期カブリ、現像ゴーストが抑制されていることが分かる。
【0100】
実施例8
正帯電性荷電制御樹脂「FCA-201-PS」3.0重量部、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」2.0重量部に代えて、正帯電性荷電制御樹脂「FCA-201-PS」2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、トナーを得た。トナー母粒子の体積中位粒径(D
50)は7.6μmであった。
【0101】
実施例9
正帯電性荷電制御樹脂「FCA-201-PS」3.0重量部、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」2.0重量部に代えて、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、トナーを得た。トナー母粒子の体積中位粒径(D
50)は7.6μmであった。
【0102】
実施例8、9のトナーの試験例1〜3の結果を実施例1の結果と合わせて、表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
樹脂製造例2[樹脂C1、樹脂c1]
表4に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、エステル化触媒及びジターシャリーブチルカテコール4gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃から210℃まで5時間かけて昇温して反応させた後、8.3kPaにて1時間反応を行った。その後、無水トリメリット酸を投入し、1時間常圧で反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達した時点で反応を終了し、表4に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂C1、樹脂c1)を得た。
【0105】
樹脂製造例2[樹脂C2、樹脂c2]
表4に示す原料モノマー、エステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達した時点で反応を終了し、表4に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂C2、樹脂c2)を得た。
【0106】
【表4】
【0107】
参考例1、2
表5に示す結着樹脂100重量部、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製)3.0重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-84」(オリエント化学工業社製)1.0重量部、及び離型剤「三井ハイワックス NP-056」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2.0重量部を75L容のヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて1分間攪拌混合後、二軸押出機「PCM-45」(池貝社製)を用いて溶融混練した。
【0108】
得られた溶融混練物を、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粗粉砕し、IDS粉
砕分級機(日本ニューマチック社製)にて粉砕・分級を行い、体積中位粒径(D
50)が8μmの負帯電性のトナー母粒子を得た。
【0109】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm) 1.0重量部を10L容のヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2500r/min(27m/sec)で3分間混合し、負帯電性トナーを得た。
【0110】
試験例4〔初期帯電量〕
プリンター「MicroLine 5400」(沖データ社製)にトナーを充填し、全面黒ベタ画像を1枚印刷した。q/mメーター「MODEL 210HS」(TRek社製)を用い、現像ロール上のトナーを10ヶ所吸引して、電荷とトナーの質量を測定し、帯電量(μC/g)を算出した。値が大きいほど、初期帯電量が優れる。結果を表5に示す。
【0111】
試験例5〔初期カブリ〕
プリンター「MicroLine 5400」(沖データ社製)にトナーを充填し、印字率1%の画像を20秒毎に1枚の速度で印字した。10枚印字後に白ベタ画像を印字し、その途中で電源を切った。感光体表面のトナーをメンディングテープに付着させ、画像濃度測定器「SPM-50」(Gretag社製)にて着色濃度を測定し、トナーを付着させる前のテープの着色濃度との差を求めた。これを5回繰り返し、5回の測定値の平均値を求めた。値が小さいほど、カブリが抑制されている。結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
以上の結果より、負帯電性トナーにおいては、チタン化合物を含んでいないポリエステル樹脂を用いた参考例2のトナーの方が、チタン含有量の高いポリエステル樹脂を用いた参考例1のトナーよりも、初期帯電量、初期カブリが良好であり、本発明の効果は得られないことが分かる。